『追憶の戦友は今…』

作者・シャドームーン

202 

***東京・喫茶アミーゴ&立花レーシング***

剣流星=超人機メタルダーと共にネロス帝国と戦った、仰木舞と北八荒。
城茂=仮面ライダーストロンガーそして岬ユリ子=電波人間タックルに協力し、
ショッカーからデルザー軍団まで正義と悪の長い戦いを見て来た立花藤兵衛。
それぞれが体験した思い出をいつまでも語り合う4人であった。

八荒「へぇぇ~っ…そんなことがあったんですか!」
藤兵衛「戦いが終った時、ワシは思わず駆け出していた。
 7人の仮面ライダー全員と握手したかったんだよ……」
八荒「うう。わ、分かるなあ~その気持ち。ね、舞ちゃん」
舞「…うん。でも、流星さんは…」
八荒「流星のヤツ…握手もさせないで、いきなり破壊してくれだなんて…バカヤロー!」
茂「お二人さんよ、そう暗い顔すんなって! 言ったろ、メタルダーは無事だ。
 実はな、大事な手紙を預かってるぜ…その流星さんからな。ほれ」

城茂が懐から封書を取り出し二人に渡す。宛名は『舞さん、八荒へ』と記され
差出人名は『剣流星』と書かれている。
 
八荒「――流星の!? ぶはっ!…ゴホ、ゴホ…ままま舞ちゃん」
舞「ちょ、八荒さん大丈夫!? も~ドジなんだから…」
八荒「げほっ、げほっ…大丈夫…それより早く開けてみて!」
舞「はいはい。慌てないの。うふふ…」

思いっきりコーヒーを吹いて咽る八荒をなだめながら、舞も懐かしい流星からの
手紙を手にして内心胸の鼓動はドキドキと高鳴っていた。

舞「流星さんが…メタルダーが日本に来てる!!」
八荒「なっ、なんだってーー!!」
茂「ま、そーいうこった。場所はそこに書いてある通りだ、早く行ってやりな」
藤兵衛「良かったねえ…八荒クンに舞ちゃん。その友達に会えたら是非ウチに
 連れておいで。とびきり美味いコーヒーをサービスするぞ!」
舞「茂さん、マスター……ありがとうございます!」
八荒「うう~まさかこんな日が来るなんて…おやっさんの店に通ってて良かったーっ!」

203 

大喜びで手を握り合い、立ち上がる舞と八荒。
藤兵衛と茂に何度も頭を下げた後、店を出ようとした時、ふと舞が振り返る。
 
舞「茂さん…この手紙を私達に届けるために、わざわざ日本に?」
茂「ん? まあ…それもあるが、もう二つばかり野暮用があってね。
 今日ここで、俺の後輩の一人と会う予定なんだが…あいつも寄るところが
 あるらしいから、まだ来ないみてぇだな。できれば二人に紹介したかったんだが――」
藤兵衛「南光太郎クン…だろ?」
茂「ありゃ? おやっさん、光太郎のやつと面識あったかい?」
藤兵衛「いやぁ直接話したことはないが…実はな、この店を改装する前のオーナーが、
 その光太郎クンの知人だったらしいんだよ。藤堂勝って男でなぁ。
 ワシはそいつと偶然、サーフボード愛好会でウマが合った縁でここを譲ってもらったんだ」
茂「おやっさん…サーフボードなんかやってたのか!? たく、年を考え…ごわっ!」

ゴイ~~ンと再び藤兵衛印のスパナが茂の頭に炸裂した。

藤兵衛「ワシはまだまだ若いモンにはひけをとら~ん!!」
八荒「はははは…。さすがおやっさん!」
舞「あ…そう言えば、ここ以前話題の喫茶特集で紹介されてたわ。
 確かその頃は『喫茶キャピトラ』って名前じゃなかったかしら?
 若い女性二人が経営する、静かで落ち着いた雰囲気が人気だとか…」
藤兵衛「ああ、その女性二人に随分長いこと店を任せっ放しにしていたと
 藤堂さんが言っておったよ。ところが“ゴルゴム事件”の後、二人とも行方
 不明になったらしい。どうも彼女たちも、光太郎クンの知人のようなんだが」
舞「ゴルゴムって、あのネロス帝国と同時期に日本征服に乗り出した暗黒結社ですか!?
 私たち、メタルダーと一緒に必死でネロスと戦っていたから詳しくないんですけど…
 そのゴルゴムを倒して日本を守ってくれた“黒い仮面ライダー”がいたって…
 もしかして、その人…」

204 

茂「御名答! そいつが俺たちの仲間、――仮面ライダー“BLACK”さ!!」
舞「…! やっぱり!!」
八荒「すげえ! か、仮面ライダーが二人もおやっさんの店に…!」
藤兵衛「大変だったんだぞ茂。バダンが滅びた後、お前らとは全員プッツリ連絡が
 途絶えちまうし、連中の好きにさせてなるものかと…ワシは谷さんと一緒に
 決死の覚悟でゴルゴムと戦うつもりだったんだ。そこに――“彼”は現れた。
 街中を我が者顔で蹂躙する凶暴な三怪人に、敢然と立ち向かう若者を…
 そしてワシは目撃したんだ、彼の“変身”を!!」

茂「すまねえ、おやっさん…。俺たちも各地で謎の組織と戦ってたんだが、
 奴等がゴルゴムの一派か、クライシスの尖兵だったんだな。
 日本で戦ってるブラックが敗れたというニュースを聞いて、俺たちはアリゾナの
 基地に集結して日本へ向かうところだったんだよ。そしたら―――」
藤兵衛「そう! お前達の帰国を待たず、“黒いライダー”は奇跡の復活を遂げた。
 それが希望を失い、自暴自棄になっていた人々の心をどんなに勇気づけたか…
 ワシも谷さんたちと彼がいる限り、最後まであきらめ無かった!
 『仮面ライダーBLACK』の若者はゴルゴムが地上から姿を消すと同時に、
 行方が分からなくなったそうだが…それが茂。お前の後輩でクライシス帝国と
 戦っていた11人目のライダー、南光太郎クンだったとは…。
 そしてこの店は、彼にとても縁のある場所だ。運命というものを感じざるをえんよ」

舞「運命ですか…私、信じます!! だって今日こうして、八荒さんに誘われた
 お店で藤兵衛さん、茂さんに出会って流星さんに会えるんだもの!
 仮面ライダーBLACK、南光太郎さんかぁ…きっと素敵な人なんでしょうね。
 メタルダーの流星さんと同じ頃、同じ場所で日本を守ってくれた二人…
 会わせてあげたいな。マスター、きっとここへ流星さんを連れて来ますねっ!」
藤兵衛「ああ、楽しみに待っとるよ。ワシも早く会ってみたいもんだ、ハハハハ!」
八荒「じゃ、行こうか舞ちゃん。茂さん、光太郎さんによろしくっス!」
茂「おう。気をつけてな―――」

205 

店外に出ると、まだ陽は高く空には気持ちの良い蒼天が広がっていた。
立花レーシングのピットスペースから、先ほどメンテナンスを終えたばかりの
北八荒のオフロードバイクが運び出される。舞はタンデム用のヘルメットを
被り、すでにバイクの傍らに立って青空を見上げている――――

茂「フッ…彼女、よほど剣流星って野郎のことで頭が一杯なんだな。おい、八荒」
八荒「ハイ、なんスか茂さん」
茂「――つれえよなあ、男として。分かるぜ~~」
八荒「ちょ…何々スかそれは!! 俺だってそりゃあ流星には叶わないけど…けど!」
茂「守ってやれ。どんなことがあってもだ。心底惚れた女なら、一時も手を離すんじゃねえぞ!」
八荒「え……あ! ハイっ!! もちろんですよ!! …茂さん、ありがとう」
茂「…そうだ。さあ、行って来い!」

何度も手を振りながら舞のもとへ駆け寄る八荒。
ところが何かを思い出したようにまた引き返して来るのであった。

茂「どうした、忘れモンか?」
八荒「へへ~~…茂さん。二つの野暮用のうち、一つは光太郎さんに
 会うことなんですよね。じゃ、もう一つの用ってのは何だったんスか?」
茂「…お前なー。そんなしょーもないこと聞きに、わざわざ戻って来たのかよ」
八荒「いや~細かいことが気になる性分でして。もしかして……
 日本にいる茂さんのいい人に会うためだったりして…くふふふ」
茂「――……」
八荒「おっ? おお? まさか、図星ですかあ~♪」

―――ドゴォッ!
おどける八荒の脳天に、茂のゲンコツがめり込む。

八荒「イデェ!!」
茂「くだらねぇこと詮索してんじゃねえっ! おら、いつまでも好きな子
 待たせてねーでさっさと行きやがれってんだーーー!!」
八荒「すすすスンマせん。。そんじゃおたっしゃで~」
茂「たく、馬鹿が…」

206 
        ◇    ◇


 
舞と八荒を見送った数分後―――
立花藤兵衛と城茂はまだ店内に戻らず、静かに語り合っていた。

藤兵衛「それで茂…ユリ子の墓はどうだった?」
茂「光太郎の報告通りだ。ユリ子のやつ、息を吹き返したのかな…
 おやっさん。あいつのダチ公と同じように“中から這い出た”感じだったぜ」
藤兵衛「フム…しかしなら何故、お前やワシの前に姿を見せん?
 ユリ子とお前は同じ組織で改造されたから、生きているのなら
 お互いの居場所を交信できるはずじゃろう?」
茂「それがダメなんだよおやっさん。日本に来てから何度も…死んだはずの
 タックルへ交信を送ってみたが反応が無いんだ。光太郎の元親友って奴は、
 前に生き返った時に記憶が無かったらしいぜ。もしかしたらユリ子も…う!?」

茂「危ないっ、おやっさん!!」
藤兵衛「な…何だ、ヘビか?」

突如として店の前の街路樹から、一匹の蛇が藤兵衛目掛けて飛び掛って来た。
茂は咄嗟に藤兵衛を庇い、その蛇を手刀で叩き落す。
 
「イィ~~ヒッヒッヒ…」

カン高く不快な女の笑い声が響き、地面に落ちた蛇が怪人に姿を変える。

茂「貴様、デルザーのヘビ女!! …ということは…」
ヘビ女「イヒヒヒヒィ~~しばらくだねぇ…城茂! そうさ、あの方がお前に御挨拶したいとさあ」
 
ヘビ女がそう言い終えるや否や、街路樹の後ろから鋭い刃物のような切れ味を持つ、
無数のトランプが茂に襲い掛かり衣服を切り裂く。その内の一枚――スペードのAが
彼の右頬を掠め、血が僅かに「ツーッ…」と滴り落ちた。

茂「ちい、出て来いシャドウ!!」
藤兵衛「シャ、シャドウ…だと??」
 
茂を襲ったトランプが風に舞うように空中で渦を巻き……
その中に。サーベルを腰に差した白い改造魔人、ジェネラルシャドウが出現する。

207 

シャドウ「…ククククク…また貴様に会える日を待っていたぞストロンガー!
 立花藤兵衛共々変わりはないようでなによりだ」

藤兵衛「げっ、お、お…お前らは!!」
茂「フン、俺はてめぇの不気味な顔なんざ二度と見たくはなかったがなぁ!
 シャドウ!! お前らもGショッカーとやらの一員になって蘇ったんだな…
 フ、そうかい。それで早速、俺を殺しに来たってわけかい! 」
シャドウ「フフフ…相変わらず威勢のいいやつだ。慌てるな城茂…ヘビ女の
 言った通り、今日はちょいと久々に会う好敵手に挨拶に来ただけよ」
茂「へっ、挨拶だと? キザなお前らしいな…俺のほうはいつでも相手になってやるぜ!」
シャドウ「だから慌てるな、と言っただろう。今日はお前も忙しくなりそうだから、
 改めて勝負を付けてやると言っているのだ。忘れるなよストロンガー…
 このシャドウの生き甲斐は“貴様の死”だッッ!!!」
茂「グ、グウ~ッ…。しかし、俺が忙しくなるとはどういうことだ!?」
シャドウ「知りたいかね? 俺のトランプ占いによれば…先ほど貴様が見送った二人に、
 『死神のカード』が出ているのだよ。急いで追いかけたほうが良いと思うがね…フフフ」

藤兵衛「まさか…八荒クンと舞ちゃんの身に何か!?」
茂「バカな! 二人はメタルダーに会いに行ったんだぜ…出鱈目抜かすなシャドウ!!」
シャドウ「まあどうなろうと俺には無関係、信じるも信じないも貴様の勝手だ。
 だがこれだけは言っておこう…俺はかつて――自ら『死神のカード』を引き当て、
 結果ストロンガー! 貴様との勝負に敗れた。…二度は無いと思え!!」
ヘビ女「イイ~ヒヒヒ…“信じる奴が正義”って言うんじゃないかねぇ…ヒヒヒ!」

再びトランプが舞い、次の瞬間にはもうジェネラルシャドウとヘビ女はそこにいなかった。

藤兵衛「茂…二人が向かった先は代々木公園は、先日も謎の連続殺人事件が
 あったばかりじゃ。噂では正体不明の怪人を見たという人もおるらしい。
 これはひょっとすれば……」
茂「ああ…おやっさん、シャドウの占いを信じるわけじゃねぇが、俺も何故か
 さっきから嫌な胸騒ぎがしてるんだ。悪りぃ、やっぱ俺も行ってみるぜ!!
 おやっさん! 光太郎が来たら待ってるように伝えといてくれ!!」
藤兵衛「よっしゃ任せろ。茂、くれぐれも二人をたのむぞ!」

―バゥンッ ドッドッドッ……ウォォーーーーン!!
愛車カブトローに跨り、舞と八荒の後を追って代々木公園に向かう城茂。
果たして、剣流星との再会を心待ちにする彼らを待つのは!?

茂「ち、世話の焼ける野郎だぜ八荒め! …へへっ…待ってな!!」

208 

○仰木舞→剣流星に会うため代々木公園へ
○北八荒→舞をバイクに乗せて代々木へ向かう
○城茂→舞と八荒の後を追って代々木方面へ急行する
○立花藤兵衛→店内に戻る
●ジェネラルシャドウ→城茂に宣戦布告、トランプ占いの結果を警告して撤退。
●ヘビ女→シャドウと共に城茂の前に姿を見せ、撤退。 


『再会は烈風の彼方で』-2

作者・凱聖クールギン

209 

三枝かおると結城丈二の手によって新たな超重力エネルギー装置を移植され、
メタルダーは遂に超人機としての復活を果たした。
そして、それは同時に、彼が剣流星としての、“人間”の姿を取り戻した事でもあった。
あの復活の日の後も、新回路の状態の検査を行なうため、
メタルダーは引き続きジャンパーソン達の基地に居を借り過ごしていたが、
それから数日、彼のコンディションは心身共に非常に良好であった。


***ジャンパーソン基地***

三枝「お疲れ様。メディカルチェック終了よ」

毎日の日課となっているメカニックの点検を終え、
検査室から出て来たメタルダーは剣流星の姿へと戻る。

スプリンガー「ワンワン! お疲れさん」
流星「ありがとうスプリンガー。
 …三枝さん、結果はどうですか?」
三枝「ちょっと待ってね。
 …ええと、エネルギー装置にも神経伝達系にも異常無し、か。
 自省回路とのシンクロが一番心配だったけど、こっちもどうやら問題無いようね。
 うん、相変わらず経過は良好よ」
ジャンパーソン「良かった。おめでとうメタルダー」
ガンギブソン「しっかし、こうして見ると不思議なもんだなあ。
 一体どんな気分なんだい? 人間の姿も持ってるロボットってのはよ」
流星「とても……落ち着く。
 この姿でいた方が、どこか心が安らかでいられる気がするんだ」

三枝(さすがは古賀博士の造った超人機…。
 MX-A1プロジェクトでは正義感のプログラミングに失敗して暴走事故を起こし、
 私が改修を行ってからも、
 ジャンパーソンはずっと戦闘AIと良心AIのバランスを保つのに苦しんでいた…。
 でもこのメタルダーは、とても高いレベルで戦闘AIと良心AIを内部に共存させている。
 こんなロボットが、太平洋戦争の時代に既に開発されていたなんて…)

三枝「一週間、様子を診せてもらったけど異常は無し。
 おめでとうメタルダー。今日で貴方は退院よ。もう自由に行動していいわ」
流星「どうもありがとう。お世話になりました」
三枝「どういたしまして」
ガンギブソン「で、これからどうするんだ?
 どこか行く当てはあるのかい?」
流星「分からない…。昔の基地は、もう敵に壊されてしまったんだ」
ジャンパーソン「もし帰る家がないなら、ずっとここにいればいい。
 これから一緒にGショッカーと戦って行く上でも、仲間が一緒なのはいい事だ」
スプリンガー「でもシルバーカークスだったらまだ無事かも知れないぜ。
 主要メカは、ほとんどあの洞窟に移したっきりネロスの奴らに破壊されちまったから、
 今は空っぽだろうけどな」
三枝「必要な機材とかは、言ってくれればこちらで用意できる可能性があるわ。
 私のコネクションを利用して、国連や日本政府から援助が受けられるかも知れない。
 今の首相はこういう事には理解のある人だし、きっと大丈夫よ」
ガンギブソン「ま、どっちにしてももう少し先の話だな。
 引っ越しが済むまでまた彷徨ってるって訳にも行かねえんだ。ゆっくりして行きな」
流星「ありがとう。でもその前に――」

澄んだ人間の瞳でどこか遠くを見つめながら、流星は言った。

流星「――会っておきたい人が、いるんだ」


   ◇   ◇   ◇


よく晴れた日の午後。
剣流星はスプリンガーを伴ってジャンパーソン達の基地を出た。
その姿は、普通の人には飼い犬を散歩に連れているただの青年に見えただろう。
だが、物陰から見張っていた黒い鋼鉄の番人はそうとは見なかった。

バーベリィ「――メタルダー発見! 奴が動き出した。
 東京方面へ徒歩で向かっているぞ!」

210 

***東京都内***

忘れ得ぬ仲間・仰木舞と北八荒との待ち合わせの場所へ向かうため、
スプリンガーを連れて東京の雑踏の中を歩く剣流星。
何年振りだろう。東京のビル街は前よりも更に未来的になった気がする。

スプリンガー「…おい、気付いてるか? 変な匂いが近付いて来るぜ」
流星「…ああ。不気味な足音がする」

スプリンガーの嗅覚と流星の聴覚。
超高感度のセンサーが異変をキャッチしていた。
巨大なエネルギーを帯びた、何か邪悪なモノがビルの谷間を縫って接近して来る。

流星「――うわっ!?」

突如、ビルの陰から飛び出して来た剣を流星は反射的にかわす。
巻き起こる爆発。物陰に逃げ込んだスプリンガーが吠える。
次の瞬間には、流星はメタルダーとなってビルの屋上で謎の刺客と対峙していた。

メタルダー「…Gショッカーの者か!?」
マッドガルボ「いかにも。バイオロンが誇る無敵のバイボーグ・マッドガルボだ」
メタルダー「マッド・ガルボ…?」

金属と有機体の白いハイブリッドボディが、エイリアンのような不気味さを醸し出す。
バイオロンの対ジバン必殺兵器・マッドガルボが大型の剣と盾を構えながら、
その醜悪な凶暴性をメタルダーへ向ける。

マッドガルボ「我らバイオロンの、そしてGショッカーの邪魔となる者には消えてもらう。
 覚悟は良いかメタルダー!」
メタルダー「くっ…」

発光する額からビームを発射するマッドガルボ。
メタルダーが側転でかわした所に、今度は剣で猛然と斬りかかる。
それを避けながらパンチで応戦するメタルダーだが、反撃は盾で防がれてしまう。

マッドガルボ「喰らえ!」

マッドガルボの渾身の剣撃を、メタルダーは白刃取りで受け止めた。
眩しい雷光を帯びる剣。裂傷を受け、火花を噴くメタルダーの掌。
そのまま両者は押し合うが、マッドガルボは馬力でもメタルダーを圧倒する。

メタルダー「くっ…、ヤァッ!!」

メタルダーは咄嗟の動きで素早く剣を手放し跳躍。
そのまま急降下し必殺技の体勢に入るが…。

メタルダー「メタルボンバー!!」
マッドガルボ「フン、つぁっ!!」

マッドガルボの頑丈な盾はメタルボンバーの回転急降下突進をも跳ね返した。
ダメージを負って墜落、転倒するメタルダーに、
マッドガルボは巨大なバズーカを出現させて構える。

マッドガルボ「バイオバズーカだ。死ねメタルダー!」

強烈なエネルギー弾が発射され炸裂!
メタルダーは大爆発に呑まれ、炎の塊となってビルの屋上から転落した。

メタルダー「ウワァァァァァッ!!」
スプリンガー「メタルダー!?」

メタルダーが落下し、地上で爆発が起きる。

マッドガルボ「フハハハハ! ゲルドリングが恐れる程の事もない。
 超人機メタルダー、全く取るに足らん相手だわ!」

地上のアスファルトから昇る炎を見て、マッドガルボは満足げに撤退した。
その様子を更に高いビルの屋上から見下ろす、二人の鎧武者の影。

チューボ「メタルダー抹殺をよもやバイオロンに抜け駆けされるとは!」
クールギン「落ち着けチューボ。恐らくこれはゲルドリングの差し金だ」
チューボ「なっ…!? 
 モンスター軍団は南米から来る仮面ライダーの抹殺を命じられていたのでは」
クールギン「そうだ。だがゲルドリングは欲を出した。
 あ奴、Xとアマゾンだけに満足せずメタルダーの首をも取るつもりでいる…。
 モンスター軍団の戦力を二手に割るよりは、
 同じバイオモンスターの好でバイオロンに助勢を頼むのが得策と見たか…」
チューボ「軍団長、ゲルドリング殿は世紀王の座を狙っているのでは…?」
クールギン「だろうな…。
 だが、二兎を追う者は一兎をも得ずとの格言もある。焦るには及ばん。
 今はじっくりと、奴らの手並みを拝見させてもらおうではないか」

211

***東京・代々木公園***

剣流星が帰って来た事を城茂から知らされ、
手紙に書かれていた待ち合わせの場所――代々木公園へ来ていた舞と八荒。
数日前、謎の連続殺人事件があった現場では未だに立入禁止のテープが張られているが、
公園自体は既に日常の空気を取り戻し、人々の憩いの場に戻っている。

八荒「流星の奴、遅いなぁ…。もう30分も遅刻だぜ。
 いやー、でもまさか茂さんが仮面ライダーで、
 しかもその仲間のライダー達に流星が助けられてたなんて、夢みたいな話だよなあ」
舞(流星さん…。早く会いたい)

舞は流星と出会ったばかりの頃、二人でこの東京の街並みを歩いた時の事を思い出していた。
あの頃の流星はまだ人間社会に慣れていなくて、
とても不思議そうな様子で色々な物に目を奪われていたのが懐かしい。

八荒「舞ちゃん、どこ見てるの?」
舞「えっ? ううん、何でもない」

一瞬、何か緑色の植物のような物が舞の視界に入ったかと思うと物影に消えた。
何だったのだろう? 錯覚かも知れないと舞は目をこする。

その時、長閑だった公園に突如銃声が響いた。
道路脇に停車してあったトラックを黒服の男達数人が囲み、
運転席や荷台に向けて銃を撃っているのだ。

舞「きゃっ! 何!?」
八荒「あれは…」

やがてトラックからこちらも全身黒尽くめの兵士達が次々と引きずり出され、
黒服の男達に射殺されて行く。
黒尽くめの兵士――Gショッカー・バイオロンの戦闘員“マスク”の一人は
舞と八荒のいる方向へ逃げようと猛然と駆け出すが、
敢えなく背後から黒服の女性――石神千恵に撃たれ、二人の足元へと倒れ込んだ。

木暮「お久し振りです。お怪我はありませんか、北八荒さん」
八荒「な……んだ、木暮さんと石神さんじゃないですか!
 いきなり拳銃ぶっ放すんだもん、びっくりしたなあ」
舞「八荒さん、お知り合いなの?」
八荒「まあね。アンチショッカー同盟の木暮さんと石神さん。
 …ああそうだ、石神さん、先日はどうもお世話になりました。
 俺の行き着けのお店のコーヒー、気に入ってくれてたら嬉しいなぁ」
石神「ええ、こちらこそありがとう御座いました。
 とっても美味しいコーヒーでしたわ。
 …八荒さん、お怪我はないようですね。
 そちらのガールフレンドさんも、どうやらご無事なようで良かった」
舞「あ、ありがとうございます…。
 でも私達、そういう関係じゃありませんから」
八荒「そ、そんなぁ~」
舞(アンチショッカー同盟、か…)

アンチショッカー同盟。
ショッカーを筆頭に、これまで出現した幾多の悪の組織の被害者やその遺族達が
報復のため自ら武器を取って立ち上がった、
木暮精一郎を日本支部の代表とする非政府民兵組織である。
かつてネロスハンターを名乗りネロス帝国と戦っていた八荒にも、
彼らは腕を見込んで以前から勧誘していたのだが、
メタルダーと別れてからの様々な心情により、八荒はずっと答を躊躇い続けていた。

212 

そこへけたたましいサイレンの音が近付いて来た。
公園の前で停車したパトカーから、コートを羽織った二人の警官が降り、
警察手帳を掲げながらこちらへ走り寄る。

小森「警察だ! ここで発砲したのはお前らか!」
木暮「アンチショッカー同盟・日本支部代表の木暮です。
 Gショッカーがここでテロを計画していましたので、事前に始末致しました」

自称、“桜田門のバットマン”こと小森好次郎警部と、
その部下の高井戸志郎刑事に対し、木暮は不遜なまでに冷静な態度で名刺を見せる。

小森「アンチショッカー同盟だと~?
 君達ねえ、悪の組織の被害者団体だか何だか知らないが、
 法治国家日本で民間人がレジスタンスなんかやるんじゃないよ。
 こんな街中で拳銃なんか使って、銃刀法違反で逮捕だぞ!?」
木暮「…小森警部、これをご覧下さい」

木暮はそう言って、胸元から一枚の書類を取り出し小森に手渡す。

小森「あ~何々? 
 『アンチショッカー同盟に対する活動許可証 警視庁・南雅彦』!?」
木暮「ええ。市街地での発砲も含め、
 警視庁の南氏から我々は直々に活動の認可とご理解を頂いています」
石神「南氏も仰っていましたが、Gショッカーへの対策に日本の警察は及び腰が過ぎる…。
 いつまでも被害者遺族の無念が晴らされず、
 新たな犠牲が日々生まれて行くのを、私達市民は黙認出来ません」
小森「だからってなあ、お前らのやり方は手荒過ぎるんだよ。
 こんな街の公園でいきなり銃撃とか!」
高井戸「そうですよ! もし一般市民に怪我人が出たりしたらどうするんですか!」
木暮「…時間がありませんので、失礼します。行こう」
石神「ええ。苦情や要望がおありなら、警視庁の南氏にお伝え頂ければ」
小森「何だと~!? くそっ、調子に乗りやがって~」

八荒「カッコいいな~。さすが石神さんと木暮さん」
舞「何デレデレしてるの八荒さん!
 アンチショッカー同盟って、警察からも目を付けられてる過激NGO団体じゃない。
 あの刑事さん達の言う通り、やり方がちょっと荒っぽ過ぎるわ。
 それに裏では怪しい宗教団体と繋がりがあるとか、黒い噂も絶えないのよ」
八荒「舞ちゃん、木暮さんや石神さんはそんな危ない人じゃないって」

舞の言う通り、民間人に過ぎない彼らの戦闘行為については法的問題も多く、
日本の政府や警察、世論が彼らに向ける目は揃って冷たい。
彼らをテロリストとして弾圧せよという主張すら国会やマスコミで上がる中、
アンチショッカー同盟は警視庁の南雅彦との個人的なコネクションに守られて存続し、
時には武器・情報の提供等の援助を南から受けながら、
こうして自分達の信念による戦いを続けられているのだ。

小森「とにかく、現場検証を始めるぞ。あのトラックも押収だ」
高井戸「はいっ」

その時…。
舞の後ろの地面が音もなくゆっくりとひび割れ、裂け目から巨大な触手が這い出した。
舞の足元まで忍び寄った触手は突然唸りを上げて襲いかかり、胴体に巻き付く。

舞「きゃーっ!」
八荒「ああっ、舞ちゃーん!」

触手の猛烈な力に引っ張られ、地面へ引きずり込まれそうになる舞。

小森「あっ、今助けるぞ! ――うわぁ~っ!」

舞を助けようと咄嗟に身を投げ出した小森だったが、
鞭のようにしなる触手に弾き飛ばされ、ゴミ箱の横のバケツに頭を突っ込んでしまった。

小森「んぁ~、何だ~!? 何も見えないぞ~!?」
高井戸「こ、小森警部~!」
石神「……」

情けない刑事らに一瞥をくれてから、
石神は舞に巻き付いた触手に何か小さな物体を投げつけた。
一方、八荒は必死に身を投げ出し、
触手に引っ張られてあっと言う間に腰まで地面に沈んだ舞の手を掴む。

213 

八荒「舞ちゃん…大丈夫…っ…!」

地面に沈みかけた舞を必死に引き上げようとする八荒だが、
触手の力は凄まじく、八荒の腕力では敵わない。
すかさず木暮と石神が八荒の体を後ろから引っ張って加勢してくれるが、
握り合った手に互いの指が喰い込んで痛い。

八荒「舞ちゃん……ぐぁぁ」
舞「八荒さ……ん」

グン! と一際大きな勢いで、触手が地面に沈み込んだ。
その瞬間、とうとう舞の手は八荒の手から滑り落ちるようにして離れ、
舞は地底深くへと完全に引きずり込まれてしまった。

八荒「舞ちゃぁーん!! …畜生っ!!」

思わず両手で地面の土を叩く八荒。

木暮「何て事だ…。奴らの目的はこれだったのか」
石神「でも、あの触手に発信機を付けるのに成功しました。
 このレーダーで辿って行けば、彼女が連れ去られた場所へ行ける筈です」
木暮「ようし…。
 我々は今からこのレーダーを頼りに、奴らのアジトへ向かいます。
 ただ残念な事に、我々には戦力が足りない。
 Gショッカーの根城へ乗り込んで戦うのに、一人でも多くの味方が欲しい所なのです。
 北八荒さん、かつてネロスハンターと呼ばれたあなたに、
 この場を借りてもう一度お願いしたい。
 どうか、我々アンチショッカー同盟と一緒に戦って下さいませんか」

木暮に頭を下げられて、八荒は悩んだ。
本当ならメタルダーがここへ来てくれる筈で、それを待つのが賢明だろうが、
約束の時間を随分過ぎてもメタルダーは現れない。
何かあったのだろうか。それに舞の救出は一分一秒を争う緊急事だ。

――茂「守ってやれ。どんなことがあってもだ。
   心底惚れた女なら、一時も手を離すんじゃねえぞ!」――

茂が自分に送ってくれたあの言葉が、頭の中に反響する。
自分は舞を守れなかった。
一時も離してはいけなかった手を――離してしまった。

八荒「…分かりました、木暮さん。俺も、行かせて下さい」

ギラギラと輝くネロスハンターの眼光。
八荒は汗のにじんだ顔で木暮を見上げ、そう言った。

214 

○メタルダー&スプリンガー→舞と八荒に再会するため代々木公園へ向かうが、
 途中マッドガルボの襲撃を受け、メタルダーはバイオバズーカを受けて敗れる。
○仰木舞&北八荒→代々木公園で流星を待つが、謎の触手に襲われ舞が攫われる。
 八荒はアンチショッカー同盟と共に舞の救出に向かう。
○木暮精一郎&石神千恵→バイオロンの戦闘員を襲撃して倒す。
 北八荒と共にバイオロンの基地へ乗り込む。
○小森好次郎&高井戸志郎→代々木公園でアンチショッカー同盟を取り調べ。
 謎の触手に攻撃され、小森は弾き飛ばされてバケツに頭を突っ込む。
●マッドガルボ→メタルダーを襲撃し、バイオバズーカで撃破。
●クールギン&チューボ→バイオロンの動向をゲルドリングの差し金と見抜く。
●バーベリィ→メタルダーの動きをネロスへ報告。

【今回の新規登場】
●マッドガルボ(機動刑事ジバン)
 ドクター・ギバが生み出した対ジバン必殺兵器“バイボーグ”。
 最終的には盗まれたジバン計画の設計図からジバン以上の戦闘力を手に入れた。
 剣と盾、手や額からのビーム、必殺砲のバイオバズーカなど多彩な武器を持つ。
●暴魂チューボ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・ヨロイ軍団暴魂。実質的なヨロイ軍団のNo.2的存在。
 甲冑に身を固め日本刀を武器とする鎧武者で、常に己に厳しく修行を怠らない。
○小森好次郎(特捜ロボ ジャンパーソン)
 東京・桜田門署所属の警部。
 自称 “桜田門のバットマン”だが渾名は “コウモリ警部”。
○高井戸志郎(特捜ロボ ジャンパーソン)
 東京・桜田門署所属の刑事。小森好次郎の部下。


『再会は烈風の彼方で』-3

作者・凱聖クールギン

215 

***成田***

南米・コロンビアから日本へ帰って来た神敬介と山本大介。
まずは立花藤兵衛の店へ顔を出そうと空港からタクシーで東京へ向かっていたが、
その途中、謎の怪人を乗せた一台のバイクが交差点を横切るのを目撃する。

大介「あれは…!?」
敬介「Gショッカーの怪人だ。…済まん、今のバイクを追ってくれ!」
運転手「ええっ!?」

運転手は戸惑いながらも言われた通りハンドルを切って方向転換。
街から外れる方向へ、怪人のバイクを追って走り出した。

ダムネン「キヒヒヒヒ…。来たな」

爆闘士ダムネン。
ネロス帝国・モンスター軍団の昆虫型怪人はタクシーの追跡を確認すると、
愛車のキャプトロンで人気の無い廃倉庫へと逃げ込む。

敬介「ストップ! ここでいい。これ以上は危険だ」
運転手「お客さん、気を付けて下さいよ!
 最近は変な化け物が出没していて物騒な事件も多いんですから!」
大介「分かっていますよ。僕達はそのために来たんだ」
敬介「えっと、お代。釣りはいりません。
 さあ、早く逃げて下さい!」

危険料込みの運賃。一万円札を運転手に差し出し、二人はタクシーを降りる。
大慌てで逃げ走るタクシーの爆音を背に、敬介と大介は錆び付いた廃倉庫へと踏み込んだ。
倉庫の中は薄暗く、物音一つしない。

ガマドーン「ギャッハァ!!」
敬介「うわっ!」

突如、上から伸びて来た鞭が敬介の首を絞める。
天井に張り付いていた雄闘ガマドーンが、太い巨体を勢い良く落下させて来た。

ガマドーン「グァハハハハ! かかったな仮面ライダーども。
 このまま絞め殺してくれるぜ! そりゃあ!!」

右手の鞭から敬介の身体へ電撃を流し、同時に左手の鞭で大介を攻撃するガマドーン。
大介は俊敏なジャンプで鞭をかわし、倉庫内に積まれていた木箱の山に飛び移る。

大介「行くぞ! アー・マー・ゾーン!!」

咆哮と共に仮面ライダーアマゾンに変身する大介。
木箱の山から豹のように飛び降り、
敬介を絞めているガマドーンの鞭をヒレを使った手刀で切断する。

アマゾン「ケケーィ!」
ガマドーン「ギャアッ! 痛い、痛いよお~っ!!」

鞭を切り落とされたガマドーンは泣き声を上げてのた打ち回る。
解放された敬介はその隙に仮面ライダーXに変身した。

敬介「――大・変・身! トォッ!!」

216 

ガマドーン「痛い、痛いよお~っ!」
X&アマゾン「待て!」

二人のライダーを前に、ガマドーンは右手の傷を押さえながら逃亡。
倉庫の奥へ奥へと逃げるが、先が壁になっていて敢えなく追い詰められてしまう。

ガマドーン「ゆ、許して下さい! ど~かお許しを~!」

突然、土下座し床に頭をすり付けて命乞いを始めるガマドーン。

ガマドーン「俺は、俺はただ命令されただけなんですよ~!
 本当は戦いなんかしたくない、平和を愛するいたいけなモンスターなのに~」
アマゾン「どうする、X…?」
X「油断は禁物だな。罠でないとも限らない」

敵怪人の唐突な豹変ぶりに思わず顔を見合わせる、Xとアマゾン。

ガマドーン「そんなぁ~! 信じて下さいよぉ!
 俺はもうGショッカーなんて無茶苦茶な組織は抜け出して、
 皆さんとお友達になりたいと思ってるんですから~」
アマゾン「トモダチ…。
 X、一先ず信じてやったらどうだろう?」
X「? …ふっ、仕方がないな。
 よし怪人、それなら貴様らの組織の事について話してもらおうか。
 貴様らGショッカーを率いているのは一体誰だ?」
ガマドーン「よくぞ聞いて下さいました!
 Gショッカーで一番偉いのは至高邪神様で御座います。
 至高邪神様は酷いんですよ。俺みたいな純真無垢なモンスターに戦いばかりさせて、
 それで自分が全宇宙の支配者になろうと企んでるんですからねぇ」
アマゾン「至高邪神…」
X「その至高邪神とは何者なんだ。地球人か、宇宙人か?
 今、世界各地で起こっている黄泉還り現象と何か関係があるのか」
ガマドーン「そ、それはですねえ…」

Xとアマゾンが話に聞き入っている隙に、ガマドーンの左手の鞭が密かに床を這い…
木箱の影に隠されていた、小さなスイッチに伸びた。

ガマドーン「――そりゃあ!!」
X&アマゾン「うわあっ!!」

スイッチが押されて床の落とし穴が開き、Xとアマゾンは落下する。

ガマドーン「ギャーッハハハハ! 見事に引っ掛かりやがったな!
 口八丁手八丁、卑怯未練恥知らず。それが俺様のポリシーって奴よ!」
アマゾン「しまった…!」
X「くっ、毒ガスだ! まずいぞ」

落とし穴はガス室になっていた。
緑色の霧のような猛毒ガスが壁のシャワーから噴き出し、狭い室内を満たす。

ガマドーン「ガーッハハハハ! ご臨終!!
 そこで苦しみながら死んじまえ!」
バンコーラ「グハハハハ! 上手くやったなガマドーン!
 これで帝王ネロスもお喜びだろう。俺達モンスター軍団の大手柄だ」
ダムネン「すぐに軍団長に報告だ!」

穴を覗き込むモンスター軍団員達の勝ち誇った高笑い。
そして落とし穴の天井が閉められる。

アマゾン「くっ…! 済まないX。俺の油断だ」
X「いや、お前らしくて良かったさアマゾン。
 …諦めるな。脱出の方法を考えるんだ」
アマゾン「…ああ」

充満する毒ガスに神経を麻痺させられ苦しむXとアマゾン。
絶体絶命のピンチ…!

217 

***東京郊外の山中***

――バチッ! と、何かが焼け付くような音を己の胸の中に聞いて、
全身が軽く痺れる感覚と共にメタルダーは意識を取り戻した。

メタルダー「うっ…、あ…貴方は」
城茂「よう、俺は城茂だ。風見さんから話は聞いてるよな?」

銀色に光る金属の手をかざして挨拶した茂は、
メタルダーとスプリンガーがそれを不思議そうに見ているのに気付いて鼻を鳴らすと、
地面に置いていた黒い手袋を嵌めた。

茂「中の機械がちょいとスパークしちまってたもんでな。
 俺の電気で再起動させたんだ。ま、ショック療法って奴さ」
メタルダー「ありがとう。…そうだ、舞さんと八荒は」
茂「ああ。どうやら拙い事になっちまったらしい…。
 俺も悪い予感がして代々木公園に行ったんだが、一足遅かったようでな。
 警察の車が集まってえらい騒ぎになってたぜ。
 聞いた話だと女性が一人、触手に攫われて地面に引き込まれたらしい。
 チッ…シャドウの奴が言ってたのはこういう事だったのか」
メタルダー「攫われたのはきっと舞さんだ…! うっ」
スプリンガー「無理すんなよ? 損傷が結構酷いぜ」
メタルダー「大丈夫だ、スプリンガー」

マルチイヤーの感度を最大限に高め、遠くの音を探り状況を調べるメタルダー。
岩山の奥から助けを呼ぶ悲鳴、そしてそこへ向かうバイクと自動車の爆音…。

メタルダー「舞さんは向こうの山奥に閉じ込められている。
 八荒はバイクでそこに向かっている。仲間も一緒だ」
茂「行ったのかアイツ…。無茶しやがって。
 昔からお人好しの鉄砲玉は変わってねえな」
メタルダー「僕が助けに行きます。敵はバイオモンスターの軍団だ。
 八荒だけではとても敵わない」
茂「よし…。俺も久し振りに、ちょいとひと暴れするか」

立ち上がって遠くの山を眺め、指の骨を鳴らす茂だったが、
メタルダーの聴覚センサーは更なる異変を感知していた。

メタルダー「別の場所でも戦いがある…。
 ネロスのモンスター軍団……誰かが苦しめられている…。
 ――! やられているのは貴方の仲間だ!」
茂「何っ…!?」
スプリンガー「仮面ライダーが、ネロスの奴らにやられてるってのか!?」
メタルダー「改造人間のメカニック音に間違いない。
 あっちの方向です。倉庫の中に閉じ込められて苦しんでいる…!」
茂「何てこった…。さては光太郎か、それとも別の仲間か…」
スプリンガー「あんたはそっちに行った方がいいぜ。
 仲間の仮面ライダーが殺されちまったら大変だ」
メタルダー「舞さんと八荒は、僕が助けに行きます」
茂「だがその体で、本当に一人で戦えるか?」
メタルダー「大丈夫です」
茂「そうか…。よし。それじゃ、武運祈るぜ」
スプリンガー「ヘッ、あんたもな」

ヘルメットを被ってカブトローに飛び乗り、爆音を残して茂は走り去る。
痛むボディから機械音を響かせ、メタルダーも敢然と立ち上がった。

メタルダー「……行くぞ。
 舞さん、八荒。無事で待っていてくれ…!」

218 

○仮面ライダーX&アマゾン→日本へ帰国。
 ネロス帝国のモンスター軍団を追跡して戦うが、ガス室の罠に落ち危機に。
●ガマドーン&ダムネン&バンコーラ→仮面ライダーXとアマゾンを誘き出し、
 罠に嵌めてガス室に閉じ込める。
○メタルダー→城茂の電気ショックで意識を回復。
 舞と八荒の救出に向かう。
○城茂→マッドガルボに敗れたメタルダーを電気ショックで回復させ、
 Xとアマゾンの救出に向かう。

【今回の新規登場】
●暴魂バンコーラ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団暴魂。
 甲羅と固い皮膚を纏い、片腕を触手のように伸ばして武器に使う。


『戦場に咲いた友情の花』-1

作者・シャドームーン

219 

***海を望む岬某所***

その日、城茂からの連絡で『喫茶アミーゴ&立花レーシング』へ行く
ことになった南光太郎は、途中とある岬に立ち寄っていた。

光太郎「おじさん…おばさん。光太郎です。また、会いに来ました」

『佐原 俊吉 唄子 之墓』
岬の上に立つ木製の墓前に花を供える光太郎。
クライシスの日本総攻撃が避けられなくなった時、郷里への避難の最中、
ジャーク将軍の変身体・最強怪人ジャークミドラの魔手により無惨にも
命を落とした佐原夫妻。一人の孤独な青年に一時の家庭を与えてくれた、
大恩ある二人がそこに眠っている―――

愛すべき人々を失い、南光太郎の長い戦いは幕を閉じた。
だが悲しい哉、運命の歯車は“戦士”に休息の時を与えてはくれない。
また新たなる強敵が――! 地獄の底から蘇った亡者の群れが!
無限帝国Gショッカーとなって、再び平和を乱そうとしているのだ!!

光太郎「おじさん達のことは決して忘れません。そして絶対に無駄にしません!
 どんなに手強い奴らが現れても……必ず……必ず倒してみせます!!
 どうか安らかに眠って下さい…そして見守っていてください。
 …それじゃ、おじさん。おばさん。平和になったら、きっとまた会いに来ます」

俊吉と唄子の霊前で手を合わせ、彼は下に停めているバイクの元へ歩き出す。
ここへ来る少し前、実の両親と養父・秋月総一郎が眠る墓地でも様子を見て
来たが、佐原夫妻の墓標と同じく、別段異変は起きていなかった。

光太郎「信彦の一件でひどく気になっていたが…何事もなくて良かった。
 死人が生き返る黄泉帰り、か…。それも闇雲に誰も彼もがそうなる
 わけじゃあなさそうだ。これが奴らGショッカーの仕業じゃないとしたら、
 一体、誰が何のために…? 超常現象の類とはどうしても思えない…」

その解けぬ疑問は一旦脇に置き、光太郎はこれから向かう城茂との待ち合わせ
場所のことを考え始めた。立花藤兵衛が現オーナーを務めるそこの住所が、
あの『キャピトラ』と同じだった事実はもちろん彼を驚かせたのだが――――
ゴルゴムが滅びた後、空家となっていたキャピトラに、ほどなく元のオーナーで
光太郎の先輩にあたる東堂勝が「ふらりと戻って来て」営業を再開していたらしい。
しかしやはり長続きはせず、とうとう人手に譲ってしまったというのが真相のようだ。

220 

この東堂なる男、面倒見が良く秋月邸を出た信彦の妹・秋月杏子を住み込みで
雇い世話をしてくれたこともあった。ところが放浪癖があるらしく、そのまま店を彼女に
任せきりにしたまま、連絡が取れなくなっていた。已む無くキャピトラは、信彦の恋人
だった紀田克美が手伝いに来る格好となり、杏子と克美の二人で営業してたのだ。

光太郎「人伝に聞いてみたけど、やれやれ東堂先輩らしいや。
 …キャピトラか…そういえばあれから、一度も行ってなかったなあ……」

過酷な運命に翻弄され、人間の自由を守るために戦った仮面ライダーBLACK。
黒き戦士が唯一「普通の若者として」微笑む掛け替えの無い居場所―――
それが杏子と克美がいつも笑顔で迎えてくれる『喫茶キャピトラ』であった。
しかしその居場所は、他ならぬ自分の油断と未熟さから永遠に失われることになる。
自分がシャドームーンに敗れたために、人々は絶望感に打ちひしがれ自暴自棄にかられ、
街は無法の荒野と化した。日本中に吹き荒れるゴルゴムの猛威を逃れ、杏子と克美は
ライダー亡き日本を離れ、渡米したのである。
そしてそれが彼女たちと光太郎の永遠の別れとなったのだ…。

クジラ怪人の友情により、仮死状態から見事蘇った仮面ライダー。
復活したライダーは、強敵、大怪人ダロムを倒し人々に生きる希望を与えた。
やがて訪れる決着の時。力尽き、残骸と化す戦友。最後まで、魂を救えない親友。
幾多の怒り、悲しみ、涙の全てを込めて…遂にゴルゴムの創世王が神殿を道連れに
呪詛の言葉を遺して滅び往く。あらゆる悪夢を洗い流すかのように、雨が四日、五日
と降り続いた。そして――…地球に一時の平穏が戻って来た。

帰路に着いた光太郎の行き先は、当然ながら『キャピトラ』である。
しかし親しかった人たちは、もう「そこ」にはいない。信彦も。杏子も。克美も。

ゴルゴムに蹂躙された街に沸き返る、平和が戻ったことを喜ぶ人々の歓声や
少しづつ進む復興の槌音も、無人となった「キャピトラ」には聞こえてこなかった……
カウンターに置かれた写真の中では在りし日の彼と、彼を取り巻く人々が幸せそうに
笑っていた。二度と戻らない青春、そして二度と会えぬ人たちに別れを告げて、
光太郎は一人、バイクに跨りキャピトラを後にした――――

221 

虚ろな表情で傷心のまま彷徨う“改造人間”南光太郎。
突然現れた彼の、その過去の一切を問わず、充実した人生を送って欲しい
と願い力になってくれたのが、佐原航空を営む俊吉・唄子夫妻である。
そんな光太郎を実の兄のように慕う、しげる・ひとみの幼い兄妹。
この家族との出会いが、彼に新しい人生を与えた…しかしそれは皮肉にも、
新たに迫り来る脅威に抗える戦士を、世界がまだ必要としている証でもあった。
灼熱の太陽が黒き戦士を包む時、再び燃え上がる邪悪な者たちとの激闘。
地獄の底から蘇った影の王子、シャドームーンとの悪夢の再戦、そして別れ。
激しさを増す戦いの中、彼には思いもかけぬ出会いが待っていた。
これまで、数限り無い悪の組織と戦い続けて来た10人の勇士が、初めて黒き戦士の
前に駆け付けたのである。改造人間の悲哀を背負い、長きに渡り平和を守って来た
10人ライダーとの邂逅は、光太郎を戦士として一段と成長させていた。
その先輩ライダーに縁の深い人物が、あのキャピトラを改装して新しい店を開いているという。

光太郎「立花藤兵衛さんか…本郷先輩や城先輩に、父のように慕われた人物と
 聞いているけど、実際はどんな感じの人なんだろう。そんな凄い人がまさかあそこの
 オーナーになってるなんて…ふふふ、さあ早く行こう。会うのが楽しみだ!」

不思議な縁を感じつつ、光太郎はあの日この場所で、それぞれの“輝ける明日”を
信じて岐路についた、仲間たち一人一人の誇らしい笑顔を思い出していた。

自分の失った過去を探す旅に出た、霞のジョー。
再びカメラマンとして日常に戻って行った、白鳥玲子。
光太郎と同じく悪の手で両親を奪われたが、強い意志で共にクライシスと
戦った的場響子。そしてその響子と暮らしている、佐原夫妻の忘れ形見、
佐原しげるとひとみ。臆病でおっちょこちょいだが憎めないコック長、吾郎。

光太郎「皆との出会いが、俺を孤独の闇から救ってくれた……
 皆がいるから、俺はここまで成長できたんだ。どうしてるかな、今頃…」

霞のジョー「…アニキ? よぉーっ! アニキ、アニキじゃねーか!!」
光太郎「ジョ、ジョー!?」
霞のジョー「久しぶりだよぉー元気だったかい?」

不意に背後から懐かしい声に呼びかけられ、光太郎は思わず振り向いていた。
なんと、さっき花を供えた佐原夫妻の墓標がある岬に、霞のジョーが立っている。
手を振るジョーの後ろから、ぴょこっと元気よく白鳥玲子が姿を見せた。

222 

光太郎「玲ちゃんまで! …何時の間に?」
玲子「こ~たろうさんっ! あはは♪ 驚いたー?
 …もう! 光太郎さんったら、帰って来てたんなら連絡ぐらいしてよ!!」
霞のジョー「そうだぜアニキ~~ちょっと冷たいんじゃないの。先輩ライダーと
 一緒で忙しいのは分かるけどよぉ、俺らのこともたまには思い出してくれよ~」
光太郎「おいおいジョー。俺が皆のことを忘れるはずないだろ!
 ちゃんと用事が終って落ち着いたら会いに行こうと思ってたさ」
霞のジョー「とか何とか言っちゃって…ホントはアニキ、旅してる間に
 新しいガールフレンドでもできたんじゃねえのかい!」
玲子「…ま! 光太郎さん!? どうなの、白状しなさいっっ!!」
光太郎「うわわ玲ちゃん、落ち着いて…。こらジョー!」
霞のジョー「へへへ…ジョーダン、ジョーダン。実はな…何となく今日、アニキも
 ここへ来てるんじゃないかと思ってよ。墓参りに皆を誘ったんだよ」
光太郎「み、みんなを?」
玲子「そ! 響子ちゃん、ひとみちゃん、しげるくん、もう出て来ていいわよ」

岩場の裏側から、しげるとひとみを伴って的場響子が現れ会釈する。

響子「うふふ…光太郎さん、お久しぶりです」
しげる&ひとみ「光太郎兄ちゃーん!!」
光太郎「響子ちゃん…! しげるくんとひとみちゃんも…っ!」
吾郎「お~い……はぁ、はぁ、やっと追い付いた…。とへへ~疲れた」

やや遅れて、トレードマークのフライパンを片手に吾郎が登って来た。

光太郎「吾郎さんまで!」
吾郎「こ、光太郎さぁ~~ん! エヘヘ…お元気でしたかあ!?」
玲子「ほらほら、遅いわよ吾郎ちゃん!」
吾郎「だってぇ~皆ボクをおいてどんどん先に…」
霞のジョー「ははは、日頃鍛えてないからそ~なるんだよっ! ちったあ痩せろ!」
吾郎「ありゃりゃ。こりゃイタいとこ突かれちゃったかな~☆」
一同「アハハハハハハハ」

光太郎「皆…! まるであの時のままだ…」

223 

佐原夫妻の墓標を囲み、岬の上で湧き上がる歓喜の笑い声。
その様子を……下に生い茂る草むらから眺め下品な笑い声を囁く影があった…。

魔女キバ「エェ~ヘヘヘェ…すっかり、打ち解けて油断しとるわい。
 え~ぞぉお…もっともっと力を抜いて仲間との再会を喜ぶがよい…
 それがお主の死出の旅立ちに繋がるのじゃあ~~」
サンドルバ「キバ! こんな小細工をせずとも、あんな小僧など
 正々堂々と勝負を挑み勝ってみせる! 今すぐ戦わせろ!!」

魔女キバ「いかん、いかん。とんでもない。サンドルバ、お前はマクーのプリンスじゃ。
 前にも言うたが、お前がGショッカー次期創世王になるには少しでもリスクを
 避けて賢く進まんといかんじょ。わしに任せておけば、邪魔な敵対勢力の力
 を削ぎつつ、無駄な汗をかかず、チャンスが来れば目的達成にかなり近づく
 ことができるのじゃあ!」
サンドルバ「ぬ~~。それはそうだが……」

魔女キバ「息子よ。他の世紀王候補の後ろ盾も、何とか己が代表をリードさせようと
 必死に動いておる…毒斎などはわざわざ過去へ飛んでまでアレを手に入れようとして
 おるしの。ま、やつも所詮はあの方に利用されとるに過ぎんがのう…ひっひっひ」
サンドルバ「だがキバ。あの方は油断ならんぞ。我々とて利用しているつもりが、
 逆に利用されて用済みと見做されればいつ寝首を掻かれるか…」

魔女キバ「それは誰もがお互い様じゃ。Gショッカーは巨大複合組織であるがゆえに、
 どんな御立派な肩書きや出身を持つ者であろうと、頂点に君臨できるは唯一人。
 皆、生前は海千山千の曲者ばかりよ…信用せいと言うほうが無理というもんじゃい。
 わしらを含めてなア~~キヒヒヒ! 」
サンドルバ「しかしあの男…よくジャーク将軍の許可もなく、独断で動いたものよ。
 これもキバの入れ知恵か?」

魔女キバ「あ~いう変にプライドの高い奴ほど御し易いわい…
 シャドームーン復活で焦りが見えていたからの、そこにハッパをかけた上にあやつの
 内なる野望と出世欲も刺激してやったわ。あの方の名を出せば、誰でもその気に
 なるじゃろうからのう…ヒヒヒ。さて、そろそろショーが始まるぞい。
 息子よ…大地の石は失敗したが、太陽の石は必ず手に入れるのじゃ!」
サンドルバ「あまり気は進まんが、敵が多いなら仕方あるまい。
 正義気取りの連中が全員手を組む前に、宝珠を回収し潰しておかんとな」
 

           ◇    ◇


ひとみ「光太郎兄ちゃん、肩車して~」
光太郎「ん? いいとも、そら!」
響子「良かったわね、ひとみちゃん…」
しげる「光太郎兄ちゃん、ボク、勉強も頑張って一生懸命やってるよ!
 今度お兄ちゃんに会えたら努力してるとこ見てもらいたかったんだ」
ひとみ「ひとみだって頑張ってるもん!」
光太郎「そうか…しげるくん、ひとみちゃん。エライぞ!」
しげる「へへへ…」
ひとみ「わあ~い!光太郎兄ちゃん大好きー!」

224 

心底嬉しそうにはしゃぐ佐原兄妹を見て、光太郎もGショッカー出現以来
続いていた緊張感がいくらか癒されていく。ひとみは彼の首に手を回し抱きつき、
しげるは光太郎の手を固く、固く、握り締めて離さない…………。

光太郎「…ぐぁっ!? な、何だこの力は…がはっ! ひ、ひとみ…ちゃん??」
ひとみ「うふふふふ…光太郎兄ちゃぁぁぁん…うふふふ」
しげる「光太郎兄ちゃん…もう、離さないよ…」
光太郎「ぐああああ! やめろ…やめるんだひとみちゃん! ジョー!!」

霞のジョー「ん~? どーしたんだよ、アニキともあろう人がよ」
玲子「そうよ。怪魔界を50億人もろとも皆殺しにした残虐な光太郎さんらしくないわ」
吾郎「ちょ、ちょ、ちょ、ジョーさあん!? れーこさあーん!?」

光太郎「な…っ!? 二人とも様子がおかしい…これは!!」

そこにいる人たちの表情は、すでに談笑していた親しい人たちの顔ではなかった……
霞のジョーも白鳥玲子も、恐ろしく冷酷で冷め切った表情で光太郎を見ている。
さらに、肩に乗ったひとみは子供とは、いや人間とは思えぬ力で彼を首に回した手を
締め上げて来る。右手を握り締めたまま離れようとしない、しげるも同様だった。
唯一吾郎だけは、フライパンを抱えて震えていた。

光太郎「ぐう~~…貴様、な…に…者だっ!」
ひとみ「え~ん、え~ん。ひどいよぉ~光太郎兄ちゃん…私の名前を忘れるなんて~!
ひっく、ひっく…私の…私ィィィィの、お・れ・様の名を忘れたかアアッ!!」

少女の声が高い男の声になった時、光太郎の肩に乗っているのはもはや人ではなかった。
全身毛むくじゃらに覆われた山猿のような怪人が、金属の棒で彼を首を締めているのである。

ガイナニンポー「ギャハハハッ! この怪魔獣人忍者部隊頭領、
 ガイナニンポーを忘れたとは言わさん!」
吾郎「おっ…おまえはガイナニンポーーーー!」
光太郎「――クライシス!! グァ…ッ!」

「佐原しげるだった」少年が、同じく毛むくじゃらの怪人に変わり果てていた……
ガイナニンポー配下の怪魔獣人忍者部隊の一人が、深々と光太郎の右掌にクナイを
突き立てている。流れ落ちる血を見つめながら、彼を見上げて不気味に笑う。

吾郎「う、うわああああ!? 何でこいつらがここにぃ~どーなってんのー!?」
ガイナニンポー「だァァァァまれぇーーーいッ!!」
吾郎「あ…も、だみだこりゃぁ~…ガクッ」
光太郎「吾郎さんっ!」

楽しいはずの一時から、一転して魔界と化した岬。元々臆病な吾郎は事態が飲み込めず、
あっけなく失神してその場に倒れこんでしまう。どうやらこの男は本物のようだ、しかし―――

響子「ひとみちゃんとクライシスの区別もつかないなんて、お馬鹿な光太郎さん。死んで頂戴」
光太郎「うっ、響子ちゃん……いや、こいつも!」

「的場響子の姿をしている何か」が、憎悪に満ちた目で光太郎を見据えている。
そして彼女は、何時の間にか手にしている弓を構えて彼を射抜こうと狙いを定めていた。

響子「…殺してやるわッ! 南光太郎ッ!!」
光太郎「くっ……!」

225 

肩に乗っているガイナニンポーが、光太郎の両腕を自身の両足で完全に極めている。
野猿獣人は自慢の如意棒で彼の首を締めながら、部下たちに両足を押さえ込むよう
命じていた。獣人忍者部隊数人が光太郎にしがみ付く。
そして身動きできない光太郎目掛けて、響子の矢が放たれた!

光太郎「変・身…」
霞のジョー「動くな光太郎! この女がどうなってもいいのかな?」
光太郎「なにっ…ぐわあ!!」

なんとジョーが玲子をサイで串刺しにしようとしている。
その光景に気をとられた光太郎の心臓付近に矢は命中し、彼の絶叫が岬に響き渡る。
ガイナニンポーと獣人忍者部隊が彼から離れ、ジョーの足元に肩膝を着いて控えた。
出血を抑えながら、苦悶の表情で、しかし鋭い目で顔を上げる南光太郎。

光太郎「ぐぁ…っ、ジョー……貴様……」
霞のジョー「チイッ、辛うじて急所を外したか…往生際の悪いやつよ」

そう言うや否や、ジョーの姿は一瞬にして怪魔獣人大隊を率いる海兵隊長に変貌する。
弓を射た響子も、捕らえられていた玲子もやはりガイナニンポー配下の本性を現す。
光太郎はその玲子が偽者であることはとうに理解していた……が、それでも。
それでも、彼には目の前で愛する者が無惨に傷付く光景を無視することはできなかった。
それがどんな窮地に陥る結果を招こうとも、光太郎に後悔の気持ちはない。
彼がこれからも、“人間として”在り続けようと願う限り。

ボスガン「フフフ、無様な格好だなRX。キサマのマクロアイなら、こやつらの怪魔忍法
 “顔写し”など容易く見破れるだろうに…よほど仲間との再会に気が抜けていたか。
  ハッハッハッハ! 甘い、甘い。それが人間の脆弱な心と魂を捨てきれぬ、
  改造人間としての、いや戦士としてのうぬの限界よ!!」

光太郎「だまれボスガン!! 人と人を繋ぐ、心の絆…それを踏み躙る貴様を
 俺は断じて許さんっ!! ――変・身ッ!! 」

                            ,. ─ 、}  /
                           ,.ィ ,.--.、}ト /
                       __,. < ! {   }i/
                      //,.--、 ヽ `ー 'ノアーイ⌒ヽ
                      ! .{ /´⌒ィ f.^i^iヽ___i  /
                     /^ー\__{.  ヽ」」ア  /==/
                     /  /   ゝ`´ /ノ   {アナノ
                     _/~`''、/ー、 `>'´7'
                  , ' ⌒`ー、`ー 、 , '
                 ./,.‐‐ 、   ,`ヽ,Y
                , '´    ヽ   ア  ____ __
               ./      } /´ ̄ ,.. ,./   `ヽ
             /       / '   r-/  }`i   ノ
            /__     /ヽ.,__,.ゝ'-、__ノノー '"

BLACKRX「トゥア!」
ボスガン「ぐぬっ……おのれ!!」

全身から輝く光のオーロラを迸らせ、RXはジャンプと同時にボスガンの肩を蹴り付け反転する。
そして最も高い岩場の上に降り立ち、ファイティングポーズと名乗りを決めた。

BLACKRX「俺は太陽の子! 仮面ライダーブラァック!! アール・エックス!!」

ボスガン「クククク…シャドームーンなどに先を越されてなるものか。
 RXよ、貴様に怪魔霊界へ落された屈辱はこの私こそが晴らす権利がある!
 (そして…こやつのキングストーンを献上し、あの方の憶えがめでたくなれば…
  私はジャーク将軍を退け、ガロニア姫の後見人として最高司令官の地位を
  今度こそ手中にできる!! キサマは最高の献上品なのだ…必ず我らが手で!)」
BLACKRX「いくぞボスガン!!」
ボスガン「怪魔獣人忍者部隊、かかれ!!」
ガイナニンポー「アチョォーーーー!!」
 
魔女キバ「ウェ~ヘヘヘェ…やれやれ。気の済むまでのう…キヒヒヒ!」
サンドルバ「キバの妖術にかかっては、さしもの太陽の子も危うかろう。フッフッフ」

226 

○南光太郎=BLACKRX→怪魔獣人忍者部隊と交戦
○吾郎→恐怖に怯えて失神する
●ボスガン→独断で出撃、霞のジョーに化けて光太郎を陥れる
●ガイナニンポー→佐原ひとみに化けて光太郎を襲い、RXと戦う
●魔女キバ→ボスガンを巧みな話術で懐柔し、光太郎にけしかける
●サンドルバ→漁夫の利を得ようと隙を伺っている

【今回の新規登場】
○五郎(仮面ライダーBLACKRX)
佐原俊吉の営む佐原航空の社内食堂に勤務していた料理人。
クライシスとの決戦時、コック長として光太郎らの戦列に加わり、
カレーを被災者に振舞って救護活動に尽力した。
極めて臆病な性格だが、憎めない性格で日本一のコックをめざす。

●ガイナニンポー(仮面ライダーBLACKRX)
ボスガン配下の怪魔獣人大隊特殊部隊・獣人忍者部隊の頭領。
野猿のような外見に金の輪を頭部に持ち、伸縮自在の如意棒を
用いた棒術、驚異的な俊敏性から繰り出す拳法を得意とする。
さらに人面を写し取る怪魔忍法顔写しを体得している。
風神村でRXに倒された後、マリバロンの妖術で霊界怪人となって
現世に黄泉帰り、1号ライダーに化けて10人ライダーの作戦会議
にまんまと潜入していた。


『再会は烈風の彼方で』-4

作者・凱聖クールギン

227 

***バイオロン前線基地・怪生物ドーム***

舞「ここは…」

ドライアイスのような白い煙が渦巻く、どこか不気味な空間。
意識を取り戻した舞は、まるで怪物の卵か胃袋のような有機質の巨大ドームの中で、
地球の植物とは思えないグロテスクな大樹から伸びた触手に胴体を縛られ、
宙吊りの状態にされていた。

マーシャ「最初の獲物はこいつなの? フフ、生きの良さそうな女~」
カーシャ「上等のエキスが沢山絞り取れそうね~」

舞の足元で、楽しそうに談笑する若い女性が二人。
犯罪組織バイオロンの女幹部・マーシャとカーシャである。

舞「あなた達は何者? 私を一体どうするつもりなの?」
マーシャ「教えてあげるわね。私達はGショッカー・バイオロン」
舞「バイオロン…」
カーシャ「そう。バイオロンはこれから地球を征服するための大攻勢に出るわ。
 でもそのためには、怪人達にたっぷりエネルギーを与えてあげなきゃならないの」
マーシャ「あなた達人間のエキスは、バイオモンスター達の大好きなお食事。
 最後の一滴まで残さず絞り取ってあげるから感謝する事ね」
カメレノイド「キュキュキュキュキュ…!」

甲高い声で鳴く異形のバイオモンスター。
触手を操り、人間誘拐作戦を遂行している怪人カメレノイドが舞を睨んだ。

舞「そんな事が許されると思ってるの!?
 何がバイオロンよ。流星さんが……メタルダーがきっと助けに来てくれるわ。
 あなた達なんて、メタルダーには絶対敵わないんだから!」
マッドガルボ「――バカめ。
 メタルダーは既にこの私が倒し、今となっては黒焦げのスクラップでしかないわ!」

白煙の中から姿を現したマッドガルボが凶報を告げて笑う。
メタルダー既に死す――!? 舞の表情が強張った。

舞(流星さん…。お願い、無事でいて)

祈るように俯いた舞は、自分の胸のすぐ下で、
触手に付着した小型発信機が無音のまま赤いランプを点滅させているのに気が付いた。

228 名前:再会は烈風の彼方で-4 投稿日: 2008/12/06(土) 00:20:01***怪生物ドームのある岩山***

アンチショッカー同盟のジープと八荒のバイクは山道を越え、
発信機の反応を頼りにバイオロンのアジトへ迫っていた。
着いた場所は砂煙の舞うただの殺風景な岩場のようだが、その奥に異様な物体が一つ。
まるで宇宙生物の卵のような、巨大で不気味なドームが地表に横たわっている。

石神「発信機の反応はあそこからですね」
木暮「ああ、あれがバイオロンのアジトだ」
八荒「じゃあ、舞ちゃんはあそこに…!」
木暮「ええ、間違いないでしょう。皆、武器の用意はいいか?」

十数人のアンチショッカー同盟員達が、ジープの荷台から武器を取り出す。
拳銃、機関銃、手榴弾、格闘用ナイフ…。
そして今回は、南雅彦の計らいで警視庁から特別かつ極秘に支給された、
元は対グロンギ戦用の神経断裂弾発射銃も一挺用意している。
石神から拳銃とナイフを手渡され、八荒の表情が強張った。

木暮「よし、行こう」

木暮を先頭に、アンチショッカー同盟員達がドームへ歩を進めていく。

石神「八荒さん、行きましょう。
 ……貴方の大切な人を助けなければ」
八荒「へへっ、分かってますよ、石神さん」

顔中に噴き出ている汗を腕で拭いながら、八荒は強張った表情で笑い、皆の後に続く。

――ダダダダダダダッ!!
突如、響く銃声。
岩山の上から、バイオロンの戦闘員・マスク達が機関銃を撃って来たのだ。

木暮「しまった、勘付かれたか! ――反撃!」

銃撃戦が始まった。
散開したアンチショッカー同盟員らは岩陰に隠れながら応戦し、
バイオロン戦闘員の射撃部隊を撃ち倒して行く。

八荒「くっ、畜生っ!」

八荒も不慣れな手付きで岩陰から拳銃を発砲。敵兵を一人、撃ち仕留めた。
次々と湧き出るマスクらが坂を下って攻め寄せると、
アンチショッカー同盟員達はすかさず手榴弾を投擲して撃退する。
何とか勝てそうか…?
銃撃戦の迫力に気圧されながらも、八荒は周囲を見渡して拳を握る。

マッドガルボ「よく来たな虫けらども。この私が相手をしてやるわ」

声が響くとともに稲妻が地上に降り注ぎ、爆発が戦闘員達を吹っ飛ばす。
閃光と煙の中から、バイオロン最凶の死神・マッドガルボが出現した。

石神「怪物――!」
木暮「怯んでは駄目だ。撃て!」

激しい銃撃が浴びせられ、手榴弾が次々と投げ付けられるが、
マッドガルボは痛みすら全く感じていない様子で、
一歩、また一歩と、ゆっくりとこちらへ迫って来る。
やがて八荒に凶暴な視線を定めたマッドガルボは剣をかざして跳び上がり、
彼が身を隠していた岩を一刀両断!
吹っ飛んで尻餅を突いた八荒の喉元に、すかさず剣を突き付けた。

八荒「ひぁっ…!」
マッドガルボ「フフフフフ、まずは貴様から殺してやろうか?」

木暮「千恵さん、神経断裂銃を」
石神「はいっ」

木暮は石神から銃を受け取って構え、神経断裂弾を発射!
だがマッドガルボはその弾道を横目で見切り、剣で地面に叩き落としてしまった。

木暮「なっ…!」
マッドガルボ「フッハハハハ…! 下らん玩具だ。
 無力な人間の分際で我らGショッカーに立ち向かおうという、
 その威勢の良さだけは買ってやるがな」

マッドガルボの指先から一本の光線が放たれて木暮の手を掠め、
持っていた神経断裂銃を地面に落とさせる。

木暮「くっ…!」
石神「木暮さん…!」
マッドガルボ「フハハハハ、そう怯えるな人間ども。
 貴様らにはまだ用があるのだ。
 ――カメレノイド、この者どもを捕らえろ!」

マッドガルボがそう言った瞬間、ドームから巨大な触手が何本も伸びて木暮らを襲った。

石神「きゃあっ!」
八荒「うわぁっ!」

たちまち触手に絡め取られ、ドームの中へ一人残らず引きずり込まれる。
悲鳴が消え、誰もいなくなった岩場に、
勝ち誇ったように嘲笑うマッドガルボだけが残った…。

229 

***東京近郊***

Xとアマゾンをガス室に閉じ込め、
意気揚々と廃倉庫から出て来るガマドーン、バンコーラ、ダムネンの三匹。
そんな彼らの前に一枚の巨大なトランプカードが出現し、
それが裏返ったかと思うと、まるで手品の如くジェネラルシャドウが姿を現した。

ガマドーン「おうっと! ビックリするじゃねえかジェネラルシャドウよお」
ジェネラルシャドウ「…私は潔癖症でね。手を触れないでもらおうか。
 フフフ、ネロス帝国・モンスター軍団の諸君、
 二人の仮面ライダーの始末という御使命は無事に果たしたのかね」
ガマドーン「当ったり前よ!
 二人まとめて落とし穴に引っかけて、今頃は穴の中の毒ガスでお陀仏ってとこだ」
ジェネラルシャドウ「フ…フハハハハ毒ガスだと? これは愉快だ。
 かつてタイタンが同じように時限爆弾で城茂を殺そうとした事があったが、
 やはり物事、詰めの作業が大雑把では上手く行かぬのが常らしいな」
バンコーラ「な…何が言いたいシャドウ!」
ジェネラルシャドウ「俺のトランプ占いによると二人の生命はなお健在…。
 しかも、三人目の仮面ライダーが今この場に来ているようだ。
 信じるかどうかは諸君らの自由だがね…。念のため、警告だけはしておこう」
ダムネン「Xライダー達が生きているだと?」
ガマドーン「バッカバカしい…。
 おいシャドウ、今Xとアマゾンの死体を持って来てやるからそこで待っててやがれ!」

シャドウの忠告に腹を立てたモンスター軍団員達は、
怒りの唸り声を上げながら廃倉庫へ戻って行った。

ジェネラルシャドウ「フッ、愚か者どもめ。わざわざ待つまでもないわ。
 ……やはり来たか城茂。
 俺がこの世にいない間に貴様がどれほど腕を上げたものか、まずは拝見させてもらうとしよう。
 ――トランプ・フェイド!!」

白いマントを翻し、ジェネラルシャドウはその場から消えた。

230 

シャドウに言われて半信半疑のまま、廃倉庫の落とし穴まで戻って来たモンスター軍団。
そこでは穴の蓋が無惨にも破壊され、
緑色の毒ガスが漏れ出して倉庫内の空気を濁らせていた。

バンコーラ「しまった…! シャドウの野郎が言った通りだ」
ガマドーン「畜生、どこへ逃げやがったライダーども!」

その時、倉庫内に響き渡る口笛の音…。
モンスター軍団員達は狼狽しながら笛の音を追い、倉庫の外へ出る。
そして振り返ると、倉庫の屋根の上にはX、アマゾン、そしてストロンガー…
――三人の仮面ライダー達の雄姿が!

ダムネン「き、貴様ら!」
ストロンガー「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ。
 俺は正義の戦士・仮面ライダーストロンガー!」
X「ストロンガーが超電子ドリルキックでガス室の天井を突き破り、
 俺達を助け出してくれたのだ!」
アマゾン「ケケィーッ! 卑怯者ガマドーン、もう許さんぞ!」
ガマドーン「グゥゥうるせえ! 降りて来やがれ仮面ライダー!」
X「行くぞ! トォッ!」

倉庫の屋根から一斉に飛び降りるX、アマゾン、ストロンガー。
三人ライダーVSモンスター軍団の戦闘が始まった。

ダムネン「クケケケケ、どうだ!」

素早い動作でXに組み付き、目からの怪光線を至近距離で浴びせるダムネン。
レッドアイザーにダメージを受けてXは怯んだが、
それでも咄嗟の肘打ちでダムネンを振りほどき反撃する。

X「ライドルスティック!」
ダムネン「グハッ!」
X「ライダー・ハンマーシュート!」

ダムネンの脳天をライドルで突いてダウンさせてから、右腕で力一杯投げ飛ばすX。
ダムネンは倉庫の屋根を突き破って中へ墜落した。

ダムネン「ぐぁっ、無念……ダムネン」

毒ガスが漂う倉庫の中で、完全に伸びてしまったダムネン。
全身を痙攣させ、仰向けに倒れてそのまま気絶した。

バンコーラ「どうだアマゾン、苦しいか!」
アマゾン「グッ……くぁっ!」

右腕の太い鞭でアマゾンの首を絞めるバンコーラ。
だがアマゾンはその鞭に噛み付いて喰い千切ると、そのまま上空へと跳躍した。

バンコーラ「何っ!?」
アマゾン「ケケーィッ!!」

コンドルジャンプからのアマゾンキック!
一撃を受けて怯んだバンコーラに、
アマゾンは更に両手の爪で激しい引っかき攻撃を加える。

アマゾン「ケーィケーィケーィ!」
バンコーラ「おのれぇ……何て奴だ」

固い皮膚に無数の爪跡を付けられ、怯んだバンコーラはその場に膝を突く。

ガマドーン「俺様の電気鞭で死なせてやるぜ! ――んぅ!?」
ストロンガー「生憎だったな。俺も電気人間だ。
 ――エレクトロ・ファイヤー!」

ガマドーンの鞭で絡め取られた左腕に、

ストロンガーは右手を突き立て電気を逆流させる。
電撃と電撃の激突。両者が痺れ苦しむ耐久勝負となったが、
ボディの強度ではバイオモンスターよりも改造電気人間の方に分があった。
ガマドーンの全身の細胞が焼き切れ、茹で上がった魚のように白煙を上げる。

ガマドーン「グッハァ! 畜生」
アマゾン「ケケーィッ!!」

堪らず鞭を振りほどいたガマドーンに、アマゾン怒りの大切断が炸裂!
大きな腹をヒレで斜めにかき切られ、
ガマドーンは内臓がはみ出しそうになった腹を押さえて仰向けに引っ繰り返る。

バンコーラ「ガマドーン! おのれライダーども、覚えていろ!」

ガマドーンの手を引いて立たせ、共に倉庫の中へと逃げ込むバンコーラ。
追おうとする三人の仮面ライダーだったが、彼らが倉庫の入口まで来た瞬間、
ネロス帝国の戦闘ジープ・ドライガンが倉庫から飛び出して三人を突破した。
ピンチと見て助けに現れた豪将ブライディが三匹をドライガンの後部座席に乗せ、
猛スピードで爆走し戦場から離脱したのだ。

X「くっ、逃がしたか」
アマゾン「ありがとうストロンガー。お陰で命拾いだ」
ストロンガー「へっ、いいって事ですよ。
 それより先輩、立花のおやっさんが店で待ってます。
 光太郎の奴も、もうすぐ来る筈ですからそこで合流しましょう」
X「よし、すぐに行こうストロンガー」
ストロンガー「あー、いや、悪いけど、先輩達だけで先に行っててくれませんか。
 …俺はちょっと、その前に用があるんでね」

231

○木暮精一郎&石神千恵&北八荒→バイオロンの前線基地へ乗り込み戦闘員達を倒すが、
 出現したマッドガルボに圧倒され触手に捕らわれる。
○仮面ライダーX&アマゾン→ストロンガーに助けられ毒ガス室から脱出。
 Xはダムネン、アマゾンはバンコーラと戦って撃退する。
○仮面ライダーストロンガー→Xとアマゾンを毒ガス室から救出。
 ガマドーンとの電気対決を制し勝利する。
●バンコーラ&ガマドーン&ダムネン→Xとアマゾンをストロンガーに救出され作戦失敗。
 三人の仮面ライダーと戦うが敗退する。
●ブライディ→三人の仮面ライダーに敗れたバンコーラ、ガマドーン、ダムネンを
 ドライガンに乗せて戦場から脱出させる。
●マーシャ&カーシャ&カメレノイド→バイオモンスターの食糧を集めるため、
 触手による人間誘拐作戦を進めていた。
●マッドガルボ→バイオロンの基地へ接近したアンチショッカー同盟を圧倒する。

【今回の新規登場】
●マーシャ(機動刑事ジバン)
 バイオロンの女性幹部。スパイ活動など様々な作戦行動に従事する。
 戦闘形態 “バトルマーシャ”に変身可能。


●カーシャ(機動刑事ジバン)
 バイオロンの女性幹部。スパイ活動など様々な作戦行動に従事する。
 戦闘形態 “バトルカーシャ”に変身可能。


●カメレノイド(機動刑事ジバン)
 カメレオンの能力を持つバイオノイド。
 迷彩能力と俊敏な動きで敵を翻弄し、剣と長く伸びる舌を武器に戦う。


『再会は烈風の彼方で』-5

作者・凱聖クールギン

232 

***バイオロン前線基地・怪生物ドーム***

舞「……八荒さん!?」
八荒「…ま……舞ちゃん、ごめん…」

巨大なドームの中で怪樹に吊るし上げられていた舞は、
自分のすぐ隣から外に伸びた触手が八荒を捕らえて戻って来たのを見て
唖然となってしまった。
他にも木暮、石神以下、十数人のアンチショッカー同盟員らが
同じように触手に捕まって樹上に吊るされている。

木暮「くっ、これまでか…」
石神「木暮さん、諦めては駄目です」

石神は腰元のナイフに何とか手を伸ばし、抜いて触手を突き刺すものの、
太い触手には傷一つ付けられない。

マーシャ「その女。無駄な抵抗はやめなさい」
石神「……!」
カーシャ「その怪植物はそ~んなナイフくらいじゃ傷一つ付かないわよ」
マーシャ「フフフ、さ~て、結構な数も揃ったし、
 そろそろエキスを絞り取らせて貰おうかしら~」
カーシャ「可愛いバイオモンスター達がお腹を空かせて待ってるんですものね~」
八荒「畜生、放せこの野郎!」
舞(流星さん…助けて…!)

八荒が悔しさに目を瞑り、舞が祈るように瞳を閉じたその時…。
一陣の風が、暗いドームの中に吹いた。

マーシャ&カーシャ「なっ……!?」

それはまるで、光の旋風。
何かが焼き切れるような音がして、
舞と八荒を縛り上げていた触手がガクンと下がる。
落下する体を誰かが支え受け止めてくれた。
何が起こったのだろう? 舞と八荒は目を開ける。そこには――

舞「流星……さん?」
八荒「…流…星…?」

青いジャンパーが、ドーム内の不気味な白い明かりに照らされて光沢を放っている。
見間違えよう筈もなかった。二人の前に立つその青年こそは、
かつて自分達に別れを告げて去ったあの懐かしい友――剣流星!!

八荒「――っ! 流星! 流星!!」
舞「流星さん!」

驚きの声を上げながら抱きついて来る二人を、
流星は以前と変わらない、優しく澄んだ瞳で受け止める。

流星「…舞さん、八荒。待たせて済まない」

マーシャ「キャ~ッ! ちょっと何よこの犬~!?」
カーシャ「は、離しなさい! スカートが破れちゃうでしょ!?」

マーシャとカーシャは乱入して来たスプリンガーにスカートの裾を噛まれて逃げ回る。
そこへカメレノイドが出現!
スプリンガーは咄嗟に逃げて流星の足元へと隠れた。

カメレノイド「キュキュキュキュ…!」
マーシャ「ったくもう…。あなたは何者!?」
カーシャ「さては、人間じゃないわね!?」

服装の乱れを直しながらこちらを睨んで来るマーシャとカーシャ。
流星は答えない。
ただ怒りを込めた鋭い視線で、仲間を痛め付けた二人の敵を睨む。
そして……

暗闇の中に、蒼い稲妻が走った。

233 

流星「――怒る!」

剣流星の体内に秘められた全エネルギーが、感情の高まりと共に頂点に達した時、
彼は、超人機メタルダーに瞬転する!

メタルダー「行くぞ、バイオロン!」
マーシャ&カーシャ「おのれ!」

マーシャとカーシャがくるりと身を一回転させ、戦闘形態のバイオモンスターに変身する。
超重力エネルギーを漲らせて、メタルダーの両眼がイエローの電光を放った。

メタルダー「八荒、舞さんを頼むぞ」
八荒「おう!」

八荒に一言、後事を託して、
メタルダーは勢い良くマーシャとカーシャに突進する。

バトルマーシャ「カメレノイド!」
カメレノイド「キュキュキュキュキュ…!」

猫のように敏捷な動きで左右に飛び、メタルダーをかわしてマーシャとカーシャは逃亡。
そこに高所からカメレノイドが襲いかかる。
上から飛びかかられたメタルダーはカメレノイドを両腕で受け止めて持ち上げ、
そのまま投げ返して巨大怪樹に激突させた。

八荒「ようし、今だ」

メタルダーが敵を引き付けている隙に、
八荒は捕らえられている木暮、石神らアンチショッカー同盟員達を触手から下ろす。
解放され、次々とドームの外へ脱出するアンチショッカー同盟の面々。
ただ木暮だけは、逃げるのも忘れたように、
敢然と戦う赤と青のロボット戦士の姿に視線を釘付けにされていた。

石神「木暮さん…?」
木暮「あれが…」
八荒「ええ……あれが俺達の親友。
 ――剣流星、超人機メタルダーですよ」

呆然としている木暮の横に並んだ八荒は、
再会した仲間の雄姿を誇らしげに示してみせた。

カメレノイド「キュキュキュッ!」

怪樹の上でカメレノイドが咆える。
剣を手に持ったカメレノイドは、俊敏な動作で再びメタルダーに飛びかかった。

カメレノイド「キュキェェェッ!!」
メタルダー「うわっ!」

すれ違いざまに肩を斬りつけられ、火花を上げて倒れるメタルダー。
先程のマッドガルボ戦でのダメージがやはり響いていた。
迷彩色で姿を消したり現したりしながら神出鬼没に跳び回り、
ヒット&アウェイ戦法で何度も繰り返し斬りつけて来るカメレノイドに
メタルダーは翻弄される。

舞「メタルダー!」
八荒「くそっ、負けるなメタルダー!」
メタルダー「うっ……負けて……たまるか…!」

メタルダーの戦闘マニュアルコンピューターが作動。
電子頭脳が敵の分析を開始した。
カメレノイドの迷彩色を透視し、動きの速度とパターンを解析して反撃の糸口を探し出す。

メタルダー「よし、Gキック!」

敵の動きを完全に捉え、跳躍したメタルダーの飛び蹴りが透明のカメレノイドに命中。
カメレノイドは撃墜され、地面に叩き付けられて痙攣を起こす。

カメレノイド「キュェェェェッ…!」

よろめきながら立ち直り、胸からロケット弾を乱射するカメレノイド。
爆発に巻かれ、弾丸を浴びたボディが火花を散らすが、メタルダーは倒れない。

メタルダー「レーザーアーム!!」

超重力エネルギー全開!
跳躍したメタルダーは必殺のレーザーアームをカメレノイドに一閃した。
青白い電撃を全身に迸らせながら、
カメレノイドはもがき、倒れ、そして爆破四散する。

八荒「やったぁっ!!」
舞「凄いわ、メタルダー」

舞と八荒、そして木暮と石神がメタルダーの元へ駆け寄る。
ボディの損傷部分から白煙を上げつつ、
メタルダーは懐かしい親友達の笑顔に深く頷いて見せた。

234 

その時…。
巨大なモンスターの卵のようなドームに異変が起きた。
半球型をした生物質の屋根が縮み始め、中央にそびえ立っていた巨大怪樹が崩れ出し、
ドーム全体が地震のように激しく揺れる。

スプリンガー「ワン! ワン!」
メタルダー「拙い、爆発するぞ!」
舞「ええっ!?」
メタルダー「逃げるんだ!」

舞、八荒、木暮、石神の四人とスプリンガーをボディに掴まらせ、
メタルダーはドームの外まで大ジャンプ!
間一髪、脱出に成功した所で、怪生物ドームは弾けるように大爆発した。

八荒「ふぅ…。危ねえ」
木暮「助かった…。さすがは超人機だ」

???「虫けら共め、助かったと思うにはまだ早いわ!」

岩山の上に走る稲妻。出現するマッドガルボ。
怒りに燃える凶悪バイボーグが、大剣を片手に地上へと降り立った。

メタルダー「マッドガルボ!」
マッドガルボ「メタルダー……まさか生きていたとはな。
 今度こそ始末してくれるわ!」

凶悪な形相でじわじわと迫るマッドガルボ。
仲間達の前に立ち塞がり身構えるメタルダー。
両者の間に烈風が吹き荒び、白い砂煙を巻き上げる。
だが研ぎ澄まされたメタルダーの感覚は、
それを見下ろす、もう一体のモンスターの影を岩山に捉えた。

メタルダー「――ゲルドリング!?」
ゲルドリング「グハハハハ! 気付きおったか。
 久し振りやなぁメタルダー。お前の首はこのゲルドリング様が頂きじゃ。
 ドアホウの部下どもがXライダー達を倒すのに失敗したけん、
 お前だけでも討ち取っとかん事にはワシらモンスター軍団の面目が立たへんでのう」
メタルダー「くっ……そうか、
 ストロンガーは仲間を助け出せたのか」

両肩を揺らして笑いつつ、岩山から下りてマッドガルボの横に立つゲルドリング。

マッドガルボ「――死ね!」
メタルダー「ヤァッ!」

一瞬の隙を突き、マッドガルボの額から発射されるビーム。
直前に見切ったメタルダーは真上に跳んで避け、光線は地面に当たって大爆発を起こす。
そのまま飛び込み、レーザーアームを叩き込むメタルダーだったが…。

メタルダー「くっ…!」
マッドガルボ「フン、このくらいでビクともせぬわ!」

レーザーアームを剣で受け止め、押し返すマッドガルボ。
跳ねのけられたメタルダーは地面に倒れ転がる。

木暮「…強い!」
舞「頑張って、メタルダー!」

ゲルドリング「今じゃ。受けてみいメタルダー!」

転倒から立ち直ったメタルダーにスライムを浴びせるゲルドリング。
スライムはメタルダーの両手両足に付着し、発熱してボディとその下の回路を焼く。

メタルダー「ぐぁっ…! 卑怯だぞゲルドリング」
ゲルドリング「グァハハハハ! ワシらモンスター軍団に卑怯は褒め言葉や」

235 

マッドガルボ「どうやら動きを封じられたようだな。
 今度こそ確実に破壊してやるぞメタルダー!」

巨大な剣を大上段に構えるマッドガルボ。
これで必殺の一撃を受けては、メタルダーも今度こそ大破を免れない。
戦況を見守る舞、八荒、木暮、石神、他のアンチショッカー同盟員達も揃って息を呑んでいた。
吠えるスプリンガー。焦った八荒は落ち着きなく視線を地面に走らせる。
そして偶然、彼の目に入ったのは――

八荒「――これだぁっ!!」

先程、触手に襲われた時に木暮が取り落とした神経断裂銃。
地面の砂利にダイビングしてそれを拾った八荒は、マッドガルボを背後から射撃した!

八荒「喰らえっ!」
マッドガルボ「グァァッ!?」

発射された神経断裂弾がマッドガルボの後頭部を直撃。
突き刺さって内部爆発を起こす。
脳神経を断裂されて激しい頭痛と目眩を覚え、
大剣を地面に落としてもがき苦しむマッドガルボ。

マッドガルボ「グァァァッ…! ウァァァァァッ…!」
メタルダー「今だ!」

死力を振り絞って超重力エネルギー装置を全力回転させるメタルダー。
ボディに粘着していたスライムがスパークして焼け落ち、
たちまち四肢に自由が戻る。

メタルダー「メタルトルネード!」
マッドガルボ「グァァッ!」

メタルダーの高速スピンキックが、眩むマッドガルボの頭を正面から直撃!
マッドガルボは仰向けに昏倒し、そのまま姿を消した。

メタルダー「ゲルドリング!」
ゲルドリング「が…! こ…これはアカンでぇ…。
 おんどれぇ、今日の所は退却や! 覚えとくんやでメタルダー!!」

メタルダーに睨まれたゲルドリングは敢えなく退散。戦いは終わった。
大きく肩で一呼吸して、メタルダーは剣流星の姿へと戻る。

舞「流星さん……流星さぁん!」

メタルダーが、剣流星が帰って来た。
感極まった舞が抱きつくのを、しっかりと受け止める流星。
その瞳は少し困惑したように宙を泳いでいたが、
遅れて歩み寄って来た八荒と視線が合うと、
流星は昔と何も変わっていない、純真で頼もしく爽やかな笑みで彼に応え、
二人はどちらからともなく右手を出し合うとがっちりと握手を交わした。

舞「流星さん…。良かった……帰って来てくれて、本当に良かった…。
 うっ…ああ……あぁ~ん」
流星「舞さん…。ずっと、心配をかけて済まない。
 でもあの時の約束通り、僕は甦った。そして帰って来たんだ」

流星の肩を舞の涙が濡らす。
そこに八荒が、二人の背中を叩くように手を掛け抱擁に重なった。
泣き止んで顔を上げる舞。三人の輪に、最高の笑顔が灯る。
スプリンガーがその周りを、尻尾を振りながら嬉しそうに走り回っていた。


茂「八荒の奴…。結構やるじゃねえか。
 お陰で俺の出番はなくなっちまったぜ」

脱ぎ捨てた黒い手袋を再び銀色の手に戻し、
銃を撃つ仕草を真似ておどけながら、岩山の上で一人笑う城茂。
さしものメタルダーも、
今は彼に気付かないくらいに友との再会を心から喜んでいたのだった。

236 

○メタルダー→怪生物ドームへ駆けつけてカメレノイドを倒し、マッドガルボも撃退。
 舞や八荒と遂に再会を果たす。
○仰木舞&北八荒→メタルダーに救出され、剣流星との再会を果たす。
○木暮精一郎&石神千恵→メタルダーに救出される。
○城茂→メタルダーの力闘と八荒の勇気を見守り、一人密かに称える。
●マーシャ&カーシャ→メタルダーの出現に怯み逃亡。
●カメレノイド→メタルダーと戦うがレーザーアームで倒される。
●マッドガルボ→メタルダーを追い詰めるが、北八荒に神経断裂弾を撃ち込まれて敗退。
●ゲルドリング→マッドガルボに加勢しメタルダー抹殺を狙うが、
 マッドガルボが敗れたため自身も撤退。


『戦場に咲いた友情の花』-2

作者・シャドームーン

237 

***佐原夫妻の墓前岬***


ボスガン「―でぇいッ!!」
BLACKRX「ぐぅぅ…ッ」

海を望む狭い岩場の闘技場で因縁の火花を散らす両雄。
だが、両者の攻防は互角とは言えなかった。

積年の雪辱に燃える烈火のような剛剣を振るうボスガンに対し、
RXは防戦一方、いや反撃の糸口は探っていたがどういうわけか
いつもに比べて体が重い。全身の強化細胞を活性化させている
遺伝子が仕事を放棄し、筋肉とバネを躍動させる血流はまるで
凍り付いてしまったかのように身のこなしに「切れ」を失っていた…。

BLACKRX「(…おかしい。何者かが、俺の動きを邪魔している!?)」
ガイナニンポー「アチョォーーー!」
ボスガン「フフ…どうしたRX。貴様ほどの男にしては、やけにおとなしい
 ではないか? あっけなく終わってしまっては、怪魔霊界に落とされた
 私の屈辱は晴れぬ……もっと足掻いて見せろ!」

ボスガンの剛剣とトリッキーな動きでRXを翻弄する怪魔獣人大隊の
コンビネーションに苦戦しながら、彼はこの勝負に水を差す存在を
索敵するべくソーラーレーダーを最大限に働かせていたが―――。

ボスガン「フゥ~どうやら貴様の悪運も、理不尽な奇跡とやらもここらが
 終いのようだな。観念して今度こそ地獄へ落ちろRX!!」
BLACKRX「!」

振り下ろされた剣が、遂にRXの肩口から胸にかけて切り裂いたと思われた瞬間。
ボスガンはその奇妙な手ごたえを感じたと同時に、額の人面の口元を「ぎりぃぃ」と
歪ませ心底憎々しげにゲル状と化して離れる物体を睨んだ。

ボスガン「チィ~~ッ…バイオライダーめ!!」
バイオライダー「バイオアタック!」
ガイナニンポー「ぎゃっ!?」

バイオライダーに変身したRXはゲル化したまま空中を飛び交いながら、
怪魔獣人忍者部隊を絡め取り、まとめて動きを封じた。

―――そして一閃。

ザンッ!

獣人忍者「グェェェェ~!」

ドドドド、ドォーーンッ ………

ガイナニンポーを除く、獣人忍者達はバイオブレードで一網打尽に倒された。
そのまま一旦着地の体勢に入るバイオライダー。
水晶のように半透明な青い光が実体化していく僅かな隙を狙い、着地地点に
電磁波剣を発射するボスガン。以前シャドームーンにこの隙を突かれ劣勢に
陥った経験から、バイオライダーもこの攻撃は予想していた。

(ひひひひ…ほれ倅よ、今じゃ!)
(ウム。くらえい!)

…しかし。彼の足元からは、予測を遥かに上回る巨大な爆炎が立ち昇った。

ドゴォォォーーーーーーーッッッ …ズドガァンン!!!

ボスガン「…おおお!?」
バイオライダー「うわぁぁーー!」

渦巻くように発生した火柱に、全身を焦がされ地に伏すバイオライダー。
体中の傷跡から、痛々しい白煙を吹き上げて苦しむ彼を見下ろし、
ガイナニンポーが猿さながらに飛び跳ねて主を賞賛する。

ガイナニンポー「ギャハハハ、ザマァないぜ~! 流石はボスガン様…
 私めのような者が言うのは何ですが、その至高邪神様から頂いた
 御力、このガンナニンポー感服仕りましてございます!!」
ボスガン「……………」

238 

ボスガンは自分で放った電磁波剣の想定外な威力を、訝しんでいたが……
頭に過った「もしや」という考えを即座に消し去った。
宿敵RXをこの手で、という思いはボスガンに限らずクライシス帝国の者なら
誰もが願うこと。だが彼には、そんな矜持よりも胸に再燃しつつある密やかな
野望のほうが重要なのだ。「得体の知れぬ下衆ども」の口車に敢えて乗って
やったのも目的達成後の見返りが非常に魅力あるものだからだ。
形はどうあれ、宝珠の一つを持つ此奴を自分が討ち取ったという結果と効用
さえあれば充分…そう今は目的を達することが最優先で成すべき事。

ボスガン「…いづれにせよ、今日が貴様の命日であることだけは変わりはない。
 それもこのボスガンが全クライシス戦士に代わって息の根を止めたという
 揺ぎ無い事実が絶対に必要なのだ。RX覚悟ォッ!!!」
バイオライダー「ぐ………ここまでなのか…」


◇    ◇


サンドルバ「仮面ライダーの中でも噂に高い太陽の子にしては随分と
 あっけない幕切れだなキバよ」
魔女キバ「ま~噂なんてもんは大概尾ひれがつくからのう。実態はこれじゃあ~
 ヒッヒッヒ…奇跡なんてもんがそうしょっちゅう起こるわけなかろぉ。
 (と言いつつも、ライダーJめのぶっ飛んだ異能ぶりを見とるからのう…
 彼奴ら“賢者の石”を持つ輩は侮れん。じゃからこそここまでのお膳立て
 を整えてやったんじゃからのう…ヒヒヒヒ)」

魔女キバ「それサンドルバ、出番じゃぞ! お前が奴を討ち取るのじゃあッ!
 わしは念のため奴が身動きとれんようにしておくでな」
サンドルバ「うむ頼んだぞキバ。どぉりゃあああー!!」

魔女キバが術を唱え、サンドルバが槍を構えて飛び上がろうとしたその時、
二人の背後から一発の銃声が鳴り響き、彼らの足元で爆発した。

ズドォーーンッ!!
 
キバ&サンドルバ「お、おわぁ~~~っ!??」
 

◇    ◇
 

ボスガン「うぬ!?」
バイオライダー「………う…こ、こいつらは……」
 
突然の爆発で吹っ飛ばされた観戦者が、彼らの心地よい観戦座席から
放り出され闘技場の待っただ中へ転がり込んだ。
 
ガイナニンポー「何だ何だキサマら! ボスガン様の邪魔をする気か?」
ボスガン「おのれやはり……くぅ、下衆共がッ」
魔女キバ「お~イタダタ…だ、誰じゃあいきなり!!」

観戦者2名を背後から自慢の業物で“蹴り飛ばした”人物が、
岬の下に見える草村を掻き分けゆっくり姿を現した。

その人物は――いや、人ではない。異様に大きい銀色の右腕…
そこには精密な機械部品内部を想起させる、コードのようなものが
複雑に絡み合い人間の剥き出しの筋肉組織のようであった。
体は黒衣に覆われているが、左半身には鮮やかなイエローのラインが
入っている。拳銃の弾丸のような形をした黒い頭部、そこに隻眼の
赤い眼が光っていた。キバ親子を吹き飛ばしたロングライフルを肩に
担ぎ、腰にポケットの付いた赤いベルトを巻いているロボット戦士。

彼の姿はまるで西部劇に登場する荒野のガンマン………
とゆうよりは、ヒットマン・スナイパーといったイメージが浮かぶスタイルである。
 
トップガンダー「勝負の邪魔をする気はない。だが、その無粋な“観客”が
 横から割って入ろうとしたのでな」
ボスガン「ぬう、何だとぉ!! 貴様ら~ッ…!!!」
魔女キバ「ええいこうなったらトドメを刺したが勝ちじゃあっ!
 倅よ。此奴らはわしが時を稼ぐ、虫の息のそいつを早く殺せい!」
サンドルバ「ようし! 死ねぃ、仮面ライダーッ!!」
ガイナニンポー「待てぃ、我らをおいて勝手な真似は許さんぞ!」

ズドォーンッ!!

再び銃声が鳴り響き、今度はサンドルバの槍先が粉微塵に粉砕された。

サンドルバ「うぐっ! …き、貴様ァッ!」
トップガンダー「動くな。そっちの婆さんもな…あんたが妙な術を
 唱えるより速く、俺の銃はこの男の頭を破壊する」
サンドルバ「何だと! そんなコケオドシなんぞに」
トップガンダー「…試してみるか?」

239 

黒衣のロボット戦士が発する抑揚の無い乾いた声は、完全に場を支配していた。
彼の持つライフルの射速と威力は先ほど体感済みである。
虚勢を張りながらも、サンドルバは顔に滲み出る汗を否定できなかった。
息子を溺愛する魔女キバは焦りながら懇願する。

魔女キバ「わわ、分かった。分かったから、その物騒なモノを下ろせ、な?」
サンドルバ「キバ!!」
魔女キバ「大事な倅の命には代えられんわい。忌々しいが仕方がない」
サンドルバ「ぐぐぐ、ここまで来て絶好の機会を~っ!」

二人は悔しがりながら、怪しげな霧に包まれて姿を消した。

バイオライダーは、この短い一部始終の間をただ無為に地に伏して
いたわけではなかった。深く傷付いた体が完全に癒えるには今しばらく
の時が必要だが、体内にあるキングストーンは絶え間なく陽光を吸収し
続け損傷の回復と生命維持に務めていた。
 
そしてなにより、先ほどから卑劣な邪魔を続けていた者達を目の前に
したことで凄まじい怒りの感情が『怒りの王子』を駆け巡り……

バイオライダー「~~~~ッ…クライシス、許さぁぁぁんッ!!!」

満身創痍の体に鞭打ち、尚も水晶の輝きを纏いながら立ち上がる
不死身の剣士バイオライダーの威容。
勝利を確信していたガイナニンポーは怯むが、バチバチと未だに火花
と白煙を上げている姿を見て下卑た笑いを浮かべながら飛びかかった。

ガイナニンポー「ボスガン様、この野郎大怪我でふら付いてますぜ。
 つまりもう液化して逃げたり素早くは動けんわけだ…私にお任せを!
 きぃぇーーーーっ逃がしはせん、バイオライダー!!」
バイオライダー「逃げはしない!」
 
ガイナニンポーは空中から如意棒を構えて襲いかかりながら、破壊光線の
乱射をバイオライダーに浴びせかける。周囲の爆発に微動だにせず、
バイオライダーはバイオブレードを逆袈裟に構えた。

ガイナニンポー「死ぃねぇ~~~っ!!」
バイオライダー「スパーク・カッター!」

――ズバァンッ――

“逆風の太刀”が青い光を放ちながら、怪魔獣人の体を切り裂く。
―が、やはり万全な状態ではないのか、それとも使命を果たそうとする
敵の執念か、バイオブレードは完全にはガイナニンポーを両断できず、
脇腹から鳩尾付近で刀身を握り締めるガイナニンポーによって阻止
されていた。「カラァーン…」と音を立て、二つに切られた如意棒が
二人の足元の岩場に転がった。

ガイナニンポー「ガフッ…くふふ、しぶといキサマのことだ、俺とてそう
 簡単にお命頂戴といくとは思っちゃいないさぁぁぁ……
 ボスガン様ーッ今ですぞ、私めごと、此奴をブッタ斬っておくんなせぇ!」
ボスガン「よくやったガイナニンポーよ! そのまま、動かすな……」
ガイナニンポー「バイオライダー、俺と一緒に怪魔霊界へ来いーっ!」
バイオライダー「折角のご招待だが…冗談じゃないぜッ!」

液化が叶わないならば、接近戦で敵を迎え撃つ。
バイオライダーは閃光に包まれてBLACKRXへと姿を戻す。
掴まれているバイオブレードはリボルケインとなり、切り裂くのではなく
“貫き倒す”リボルクラッシュならば、この体勢からでも充分であった。

バイオライダーから戻っても、負った傷はそのまま残る……
RXは激痛を堪えながら、渾身の力を込めてリボルケインを突き入れた。

ガイナニンポー「グェェ…ギャ、ギャァァッ!?」
BLACKRX「うおおおおーートゥァッ!!」

ガイナニンポーの背中を突き破り、火花が噴出して行く。
RXはリボルケインを引き抜いた時、怪魔獣人は悲痛な断末魔を
残しながら崩れ落ち、爆発を起して砕け散った。

――ドガァァァンッ!!――

ガイナニンポーの壮烈な最期の余韻覚めやらず、ボスガンは剛剣を
握り締めて膝を着いているRXに斬りかかる。
通常であれば、部下の最期を見届けると撤退の早い海兵隊長であったが、
今日は事情が違っていた。RXの首を獲る以外、彼に退路はないのだ。

必殺の一撃を叩き込んだ直後で、ハイブリット・エネルギーの青白い
光が刀身から消えかかるリボルケイン。そのリボルケインで尚も剛剣を
受け止め気迫で何度も斬り結ぶRXとボスガン。

240 

トップガンダー「漸く、邪魔者は全ていなくなったか…」

二人の死合いを静かに見ていたトップガンダーが、何処かへ立ち去ろうと
したその時、何者かが放った光弾がRXに命中し、キックの体勢に入る
途中だった彼は撃ち落されてしまった。またしても偶然通りかかった彼の
目撃した『決闘』は横槍が入る格好となった。
関わる気もなく、立ち去るつもりだったロボット戦士はその足を止めた――

BLACKRX「う…ガテゾーン!」
ガテゾーン「RX! 地獄で待ってても来ねぇから迎えに来てやったぜ」

二人の対決に待ったをかけたのは、怪魔ロボット大隊の機甲隊長ガテゾーンであった。
愛用のレーザー銃でRXを狙撃したニヒルな機甲隊長は、ボスガンの前に歩み寄る。
突然邪魔をされた海兵隊長は、彼がここへ来た理由はほぼ分かっていたが、
それでも高いプライドゆえか、激怒して詰め寄らざるを得なかった。

ボスガン「何用だガテゾーン!! 貴様の助けなど…ッ」
ガテゾーン「フン、結構押され気味だったじゃねぇか。
 俺は助けに来たんじゃないぜ。命令でお前の“私闘”
 の中止と連れ戻しに来たのさ。フッ、将軍がお怒りだぜ…
 もっと早く倒せてりゃ状況は変わったろうがな…時間切れだ」
ボスガン「ぬぬ~~~……ちっ…」
ガテゾーン「さっさと戻ったほうが身のためだぜ?」
ボスガン「だまれ! …言われずとも分かっておるわ」

ガァーーンッ

ガテゾーン「うおっ!?」
ボスガン「また貴様か……」
トップガンダー「俺はこの男に加勢する義理も、お前達に恨みも
 ないが…再び二対一で勝負を続行するというなら、
 お前の相手は俺がしてやろうか…?」
BLACKRX「…君は、一体…」
ガテゾーン「ほ~見たことねえ面だな。何処のどなた様か知らねぇが、
 余計なお節介を焼くと早死にすることになるぜ、あんた」
トップガンダー「…かもしれん。だが、もう経験済みだ」
ガテゾーン「こいつぁ面白れぇ! 挨拶代わりにこんなのは…どうだい?」

ズギューーーンッ!
ドギューーーーーンッ… ……


咄嗟にガテゾーンがレーザー銃を抜き放ち発射する。
その光弾は、ほぼ同じタイミングでライフルを構えて発射した
ロボット戦士の弾丸と宙でぶつかり合い弾けた……

ガテゾーン「…( ̄ー ̄)ニヤリ やるな…お前さん気に入ったぜ。
 俺が推薦してやるからクライシスに来ねぇか?
 それともあんたもそいつみたいに、人間に義理立て気取るほうかい?
 よせよせ…人間共についたってイイことなんざ何もないぜ」 
トップガンダー「人間に義理などない。またその必要もない。
 だが…俺が友と認めた男は人間のために、というやつが好きでな。
 それと良いこと…があるかないかは、経験してみなければ分かるまい。
 少なくとも俺は…居心地は悪くはなかったが――」
ガテゾーン「ふーん…フフフ、あんたも相当なワケありらしいな。
 残念だぜ。その口ぶりじゃあ、多分何処かで敵同士として
 会うことになりそうだ。…まそれはそれで楽しみだがね」

話終えるとガテゾーンはボスガンをチラリと一瞥すると、姿を消した。
ボスガンも戦闘の傷口を押さえながら、口惜しげに吐き捨て消える。

241 

◇    ◇


五郎「う、うーーーん…☆」
光太郎「気がつきましたか、五郎さん」
五郎「光太郎さん…んん? あ、あのバケモノはァ!?」
光太郎「もう大丈夫。心配ないよ…」
五郎「そうかぁ~やっぱりRXがギッタギタにやっつけてくれたんですね!
 へっ、クライシスの亡霊どもめ、おとといきやがれってんだ!」
光太郎「いやそうじゃないだ。彼がいてくれなかったら危なかったよ」
五郎「彼? …うわっ!?」
トップガンダー「…………」

五郎は大怪我を負って包帯だらけの光太郎に気がつき、
相当な激戦だったろうことと、気絶してしまった情けない自分を恥じた。
聞けば、光太郎の手当てもこの黒衣のロボットがしてくれたという。

光太郎「…もう行くのか?」
トップガンダー「ああ。俺も探しているやつがいるんでな」
光太郎「色々ありがとう。そうだ、良かったら名前を教えてくれないか?」
トップガンダー「トップガンダーだ」
光太郎「トップガンダー…君が探しているというのは、君の…」
トップガンダー「友だ。俺は彼に力を貸し、最後まで共に戦うと
 誓った…しかし果たせなかった。やつが今も生きて何処かで戦っているなら
 今度こそ、俺は約束を果たす。それが俺が生きている理由だ…」

光太郎は11人ライダーの情報網を話し、一緒に行かないかと誘ったが
彼は無言で去って行った。彼の過去のこと、探し人の名前など聞きたい
ことはたくさんあったが、トップガンダーの静かに語る背中はそれを拒否して
いるようにも思えた。光太郎もまた、自身の過去に暗い影を持つ青年である。
無理に尋ねることもあるまい…なにより彼とは、この先に進む道が何処かで
繋がっている…そんな不思議な予感が光太郎にはあった。

五郎「クールだねぇ」
光太郎「きっとまた会えるさ。案外、彼の尋ね人は俺達の
 すぐ近くにいるかもしれない…」

五郎「ええ!? こ、光太郎さん…あれ、あれ…何だありゃーっひええ」
光太郎「…あれは…(!…本郷先輩からだ。あれに乗っている、のか…?)」

空を見上げる二人の頭上に、バビロス号の機影が差し掛かった。
――この後、南光太郎は本郷猛・一文字隼人と再会し、宇宙刑事シャイダー達と
邂逅を果たしてコム長官から提案されたプランの実現に力を尽くす事となった。

242 

***クライス要塞 地球攻撃兵団司令室***


ジャーク将軍「愚か者めがッ! 貴様の抜け駆け癖は、
 死んでも直らんようだな!!」
ボスガン「ぐがぁぁぁ…ッ!!!!!」

無幻城が浮かぶポイントゼロと同じ宙域を航行しているクライス要塞。
その司令室では、居並ぶ三大隊長の前でボスガンの独断専行の罪に
対する仕置きタイムが行われていた。ジャーク将軍の杖から発する
雷撃を浴びた者は、二十四時間麻痺状態に苦しむのだ。

ダスマダー「…皇帝陛下もお怒りだぞ、ボスガン。しばらく謹慎を命じる」
ジャーク将軍「うぬ…!」

のたうつ海兵隊長を彼の親衛隊チャップが肩を貸し、退室して行った。
相も変わらず最高司令官たるジャーク将軍の権限を飛び越えて、
皇帝の代弁を執行するダスマダーは彼にとって目障りであった。

ダスマダー「時にジャーク将軍。何処の誰が、奴に要らざることを吹聴し
 鼓舞したかだが…本件は、我がGショッカーのトップシークレットにまで
 関わると判明した。よって以後の調査は秘密警察に任せて頂こう」
ジャーク将軍「ぐ…何ぃ!?」
ダスマダー「これは皇帝陛下、即ち至高邪神閣下の御意向でもある。
 ……不承知かね、将軍?」
ジャーク将軍「……好きにするがいい!」
ダスマダー「ご理解痛み入る。だがフフフ…マリバロンは不服なようだな」
マリバロン「別に…」

嫌味タップリに笑いながら出て行ったダスマダーを、ジャーク将軍の黄金仮面から
除く口元が忌々しげに歪み見送っていた。しかし、最も鋭い眼差しを向けていた
のは怪魔妖族大隊の諜報マリバロンであった。
かつて四大隊長の中で最後まで生き残り、皇帝の手で処刑されてしまった、
唯一ダスマダー大佐の正体を知る彼女…。

マリバロン「(ダスマダーめ…二度と将軍を使い捨てなどにはさせぬ!)」
ジャーク将軍「マリバロン。報告を聞こう」
マリバロン「ハッ! RXめは宇宙刑事達と接触し、近々他のライダー達も
 メタルダーを伴って日本に続々と集結中とのこと……」
ガテゾーン「メタルダーか…人間が造った超人機…興味あるぜ。
 将軍。我らが宿敵RX及び十人ライダーが、メタルダーと一緒に
 いるというなら…ネロス帝国と共同で奴等を一気に殲滅しては如何かと」
ジャーク将軍「ほう怪魔ロボット大隊とネロスの戦闘ロボット軍団の大部隊で
 攻勢をかけるというのか。面白い…やってみよガテゾーン。帝王ゴッドネロス
 には、余から直々に共同作戦の提案をしておこう。だが…分かっておるな?
 RXは…あやつだけは我がクライシス側の手で討ち取るのだ!!」
ガテゾーン「アイアイサー!」


***ガテゾーンの怪魔ロボットラボ***


組み立て途中のメカ類や、バラバラのスクラップの山が雑多に置かれている
機甲隊長の部屋。隅のほうには愛車ストームダガーも整備中であった。
そんな中、コードに繋がれた怪魔ロボット達を頭と分離したガテゾーンボディが
器用に黙々と調整している。宙をふらふらと浮くガテゾーンヘッドのほうは、
そんな様子を座って眺めているマリバロンと語らっていた―――

マリバロン「ライダーには宇宙刑事の連中もくっついてるわよ。
 大丈夫なのガテゾーン?」
ガデゾーン「俺を信じねぇってのか? …任しておきなって!
 こんな時のためのGショッカーだろってね」
マリバロン「どうする気?」
ガテゾーン「宇宙刑事ねぇ…確かに奴等の超兵器は厄介だ。
 だからよ…あいつらにはあいつらの、恨みを持ってる方々に
 引き受けてもらうのさ。すでに手は回してある」
マリバロン「なるほど、分断作戦というわけね」
ガテゾーン「そういうことさ…よし、完成だ!」
マリバロン「見たことのないロボットね…こいつの名前は?」
ガテゾーン「久々の新作だぜ。さぁ起きてみな。自己紹介しろ!」

ガテゾーンが起動スイッチを入れると、その怪魔ロボットは機械音と
金属音を鳴らして起き上がり、産声を上げた。
 
シュバリアン「我が名は、クライシス帝国最強の戦士シュバリアン!」
ガテゾーン「おう。お前の戦果には期待してるぜ、シュバリアンよ」
シュバリアン「ハハーッ。お任せ下さい、ガテゾーン様」
マリバロン「(最強の…って何体いるのよ…)」
 
そんな様子をこっそり覗き見ている影があった。

ゲドリアン「ふん、お前らなんかに何ができる。この裏切り野郎どもが!
 俺は誰も信用しねぇ…必ず、俺のやり方でGショッカーの頂点に
 立ってやるからなァァァ~そしたらお前ら、残らず処刑してやるぜギャヒヒ…」

243 

○南光太郎/BLACKRX→トップガンダーの助力で魔女キバらの妖術による
危機を脱する。ガイナニンポーと怪魔獣人忍者隊を倒し、ボスガンを退ける。
本郷猛、一文字隼人、宇宙刑事シャイダー一行と合流。
○トップガンダー→RX対クライシスの決闘を邪魔しようとした魔女キバ、サンドルバ
をライフルで制する。ガテゾーンと挨拶代わりの早撃ちを競う。
●ボスガン→不調のRXを後一歩まで追い詰めるが敗退、謹慎刑に処される。
●ガイナニンポー→スパークカッターを阻止するが、直後にRXのリボルクラッシュを食らい爆死。
●ガテゾーン→ジャーク将軍の命によりボスガンを連れ帰る。ネロス帝国との共同
作戦を提案、クライシス側の作戦指揮を命じられる。
●ジャーク将軍→ボスガンに罰を与える。ガテゾーンにネロス帝国との共同作戦指揮を
命じ、帝王ゴッドネロスに作戦の提案を伝える。
●マリバロン→ダスマダーのジャーク将軍に対する態度に一際不快感を抱いている。
●ゲドリアン→自分を陥れた全員に深い恨みと復讐を密かに誓っている。
●ダスマダー→ボスガンに関わる黒幕の調査を秘密警察の権限で強引に奪取。
●魔女キバ→妖術でRXの動きを封じる。トップガンダーに邪魔され撤退。
●サンドルバ→漁夫の利を得てRXを討とうとするが、トップガンダーに邪魔される。


【今回の新規登場】
○トップガンダー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国戦闘ロボット軍団の元暴魂。常に一対一の正々堂々とした勝負を
 好む独自の美学を持っていることから、メタルダー抹殺に一度敗れた後裏切り者
 として帝国から追われる身となる。メタルダーに命を救われて以来、良き好敵手
 となったが後に共にネロス帝国を打倒することを誓う。その志半ばで、クールギン
 (実はゴッドネロス)の凶刃に斃れ命を落としたメタルダー最愛の戦友。
 クールな性格だが繊細な内面も宿す、孤高のガンマンロボット。

●ジャーク将軍(仮面ライダーBLACKRX、劇場版オールライダー対大ショッカー)
 黄金の鎧に身を包む、クライシス帝国地球攻撃兵団の最高司令官。
 クライシス皇帝より賜った杖を携えて、失態を晒した者には雷撃により
 容赦なく処罰を加える。非情な武人だが時として腹心に温情を見せる。
 失策を重ねたすえに皇帝の怒りにより、怪人ジャークミドラへと改造されてしまう。
 そして死の間際に将軍の姿に戻り、RXの死を宣言しながら哄笑して散った。

●諜報参謀マリバロン(仮面ライダーBLACKRX)
 怪魔妖族大隊を率いる四大隊長の紅一点。諜報網を駆使して
 あらゆる情報に精通しているほか、無数の妖術を体得している。
 その忠誠心から皇帝やジャーク将軍の信望も厚かったが、南光太郎と
 皇帝の会見で皇帝が光太郎にサーの称号を贈ることが承服できず、
 皇帝の怒りを受けて消滅した。四隊長の中で最後まで生き残り、
 ダスマダーと皇帝の関係を唯一人知ることとなった。

●機甲隊長ガテゾーン(仮面ライダーBLACKRX)
 怪魔ロボット大隊を率いるニヒルな性格のロボット戦士。
 クライス要塞のメカニックを一手に担い、自ら数々の怪魔ロボットを製作。
 一発必中のレーザー銃を携行、怪魔界一の狙撃の腕を持つ。
 RXへの勝機を得るため、 ダスマダーと結託したことが原因でジャーク将軍
 から大隊長の身分を剥奪され追放、ゲドリアンの弔いと必勝を宣言して
 ネオストームダガーでRXに挑むが敗れ、ヘッドにRXキックを受けて砕け散った。

●牙隊長ゲドリアン(仮面ライダーBLACKRX)
 怪魔異生獣大隊を率いる牙隊長。怪魔界でも最も暗く寒いゲドラー域の
 出身のため、陽の当たる世界でぬくぬくと暮らす人間を最も憎んでいる。
 後に皇帝の怒りを示す最終時計を消すための人柱にされ、他の大隊長を
 深く恨んでクライス要塞の機関部に篭城、自らのエネルギーをゲドルリドルに
 送ってRXを倒し、皇帝に裏切り者達全員の処刑を願うが本懐叶わずに、
 ゲドルリドルが敗れたことで逆流したエネルギーを浴びて砂と化して消滅した。

●シュバリアン(仮面ライダーディケイド)
 ガテゾーンが「久々に腕を奮った」新作怪魔ロボット。
 実は以前に完成間近だったが、出撃の機会の無いままお蔵入りに
 なっていたらしい。また、どういうわけかすでにRXと謎の
 仮面ライダー達との交戦データが記録されていたりする。
 やはり自信過剰な性格をしており、自らが最強の戦士と疑わない…。


244欠番


『帰ってきたあの男』-1

作者・凱聖クールギン

245 

***ネロス帝国基地・ゴーストバンク***

闇が渦巻くゴーストバンクの玉座に帝王ゴッドネロスが降臨し、
百花繚乱のネロス軍団員達が集合する。
先のメタルダーとの戦闘で大破した雄闘ジャース、
そして南米で仮面ライダーアマゾンと戦い片腕を失った暴魂クロスランダーも、
それぞれ修理を終えこの場に推参していた。

バルスキー「ジャース、修理されたボディの調子はどうだ?」
ジャース「とても良好です、軍団長」
クールギン「ほとんどのパーツを新品と交換する大手術だったそうだな。
 帝王のご厚意に深く感謝し、より一層の忠勤に励む事だ」
ジャース「ハッ。帝王、誠にありがとうございます!」
ゴッドネロス「新しいビーム砲の威力は以前の二倍に高まっておる…。
 決して再び不覚を取るでないぞ」
ジャース「ハハーッ!!」
クロスランダー「帝王、この私にも新たな右腕を授けて下さり、
 感謝の言葉もございません。こうしてまた日本へ戻りましたからには、
 より射撃精度を増したこの腕で必ずやメタルダーを!」
ゴッドネロス「ウム…。ついてはその件で、
 実に面白い客がこのゴーストバンクに来ておる。――入れ!」

秘書KとSにエスコートされ、その場に入って来た“珍客”。
革のジャンパーを纏った青い一つ目のロボット――ガテゾーンの姿に、
左右に分かれて道を空けた軍団員達がどよめいた。

ガテゾーン「帝王ゴッドネロスの御尊顔を拝し、光栄の極みにございます」
ゴッドネロス「フフフ…よう参った、ガテゾーン」

済ました仕草で敬礼して見せるガテゾーン。
何を隠そう、今はクライシス帝国で機甲隊長の肩書を持つ彼はかつて、
ネロス帝国でゴッドネロスによって創造され、
昔日の戦闘ロボット軍団では暴魂の地位にあった元ネロス軍団員なのである。

ガテゾーン「…ヘッ、懐かしいぜ、ゴーストバンク。ネロス帝国。
 何もかもみんな昔のままじゃねえか」

顔を上げたガテゾーンの頭部が胴体から分離して宙に浮き、
ぐるりと360°回転して、明滅するメカの単眼で
久々の古巣の景色をビデオ撮影でもするかの如く見渡した。
頭を首の上に着地させ、ガテゾーンは両肩をすくめて手を広げる。

246 

バルスキー「ガテゾーン、なぜお前が…」
ガテゾーン「久し振りだなバルスキー。
 ああ、言っとくがネロス帝国に戻って来たなんて話じゃないぜ。
 クライシス帝国の使者として、ジャーク将軍の言葉を
 帝王ネロスにお伝えしに来たのさ」
クロスランダー「あ…あなたが伝説の元暴魂ガテゾーン…。
 暴魂クロスランダーです。かつて軍団長と競い合ったという貴殿のお噂はかねがね」
ガテゾーン「おう。お前が今の暴魂のクロスランダーって奴か。
 お前もガンマンなんだな。いい腕してそうだ。よろしく頼むぜ?」
クロスランダー「こちらこそ!」
ガテゾーン「暴魂と言えば、一つ面白い情報があるぜ。
 手土産代わりだ。RXの傍にいたこのロボットだがね…。
 もしかするとこいつが、前の暴魂をしていた何とかって野郎じゃないかい?」

そう言ってガテゾーンは胸元から一枚の写真を出し、バルスキーに投げ渡した。
チャックラムが撮影した先のRX対ボスガンの映像データから抜き出した、
ライフルを構える黒いガンマンロボットの画像である。

バルスキー「――トップガンダー!?」
ガルドス「間違いない。これはトップガンダーだ」
ガテゾーン「…やっぱりそうか」
バルスキー「このトップガンダーはお前がネロス帝国を去った後、
 暴魂の座を継いだが軍規違反を犯し、脱走して敵となった男だ」
ガテゾーン「なるほどな。大した腕の持ち主だったが、俺の後輩とはね。
 道理で強い訳だぜ。こいつは今、RX達の近くをうろついている。
 つるんで行動なんかはしてない筈だが、戦いとなればまた応援に現れないとも限らねえ」
ゴッドネロス「裏切り者トップガンダー…。
 黄泉還ってなお、余の帝国に刃向かい続けるつもりか」
ガテゾーン「俺もちらっと腕試しに撃ち合ってみたがね、
 さすがネロスのロボット、なかなか見事な腕前だったぜ。
 俺は今から、こいつと再戦するのが楽しみで仕方ねえんだ」
クロスランダー「ガテゾーン! 奴は帝国を裏切った薄汚い脱走者、
 そのような賛辞に値する戦士などではありません!」
ガテゾーン「そうかい? ちょっとやり合った感じじゃあ、
 なかなか面白い奴だと思ったがねぇ。
 あいつに敵う奴はそうそういるもんじゃねえぜ」
クロスランダー「そこまで言われるなら、この私とも今ここで勝負を!
 互いに撃ち合ってみれば、私とトップガンダー、
 どちらがガンマンとして実力が上か分かっていただけるでしょう」
ガテゾーン「ほほ~う、お前さん、あいつに相当な因縁アリって様子だな。
 いいぜ。相手になってやる。来な」

247 

かくてガテゾーン対クロスランダーの御前試合が始まった。
これはクロスランダーにとっては、この場にいないトップガンダーとの勝負でもある。
ガテゾーン、トップガンダー、そしてクロスランダー。
連綿と受け継がれて来た戦闘ロボット軍団暴魂三代の系譜の、
その誇りが図らずもこの場に賭けられたのである。

クロスランダー「……」
ガテゾーン「……」

互いに腰の銃に手をかけないまま、相手を正面に見据えてじっと対峙する。
初めは歓声に湧いていた観戦者達も次第に張り詰める緊張感に呑まれ、静かになった。
ゆっくりと腕を動かし、拳を銃のホルスターへ近付けていく両者。
やがてクロスランダーの両手が銃を取り――ガテゾーンよりも一瞬早く――
両者が銃を抜いてレーザー弾を撃ち合った。

――パパァン!!
――チューン!!


勝負はほんの一瞬だった。
銃を抜いたのはクロスランダーの方がわずかに早かった――が、
ガテゾーンはクロスランダーの二丁拳銃から放たれたビーム弾を
一丁でどちらも撃ち落とし、更に三発目を発射しようと構える。
負ける! 危機を感じたクロスランダーは咄嗟に、
額のビームランプを開いて光弾を発射。
思わぬ隠し武器からの攻撃はガテゾーンの不意を突き、
彼の三発目を銃口を離れた直後に撃墜。爆発の火花をガテゾーンの腕に浴びせたのだ。

クロスランダー「……くっ(しまった…!)」
ガテゾーン「へぇ、取って置きって訳か。
 今のは予想外だったぜ。さすがの俺も危なかった」
クロスランダー「……失礼仕りました」
ガテゾーン「まあまあ、肩を落とすなって若いの。
 この勝負はお前さんの勝ちだよ」

トップガンダーはライフル一丁でガテゾーンと互角だった。
自分は二丁拳銃+ガンファイトでは反則技に等しい額のビームで、
ようやくガテゾーンを凌いだのだ。
深く身体に染み付いた「勝つためなら何でもあり」の信条が
脊髄反射的に自分に使わせてしまった隠し武器だったが、
これではトップガンダーより銃の腕が上という証明にはなるまい…。
クロスランダーの胸に生まれて初めて、
「正々堂々勝てなかった」事への屈辱感が湧き上がって来た。

ガテゾーン「どいつもこいつも、いい後輩に恵まれたなあ俺は。
 戦場でもこの調子で頼んだぜ、クロスランダー」
クロスランダー「……」

248

ゴッドネロス「さて、そろそろジャーク将軍からの用件とやらを聞こうか、ガテゾーン」
ガテゾーン「ハハッ。帝王ネロスに申し上げます。
 日本に集結しつつあるGショッカーの仇敵・仮面ライダー。
 そして復活を果たした超人機メタルダー。
 奴らをまとめて葬り去るため、
 クライシス帝国では目下、怪魔ロボット大隊による一大作戦を準備しております。
 つきましてはネロス帝国からも戦闘ロボット軍団、
 及び機甲軍団の参戦を願い、Gショッカーに属する二つの帝国が力を合わせて
 共に憎き敵どもを地上から抹殺しようではないか、と、
 ジャーク将軍より帝王ネロスへの共同作戦の申し入れであります」
ゴッドネロス「ほう…」

ゴーストバンクにまたどよめきの波が起こった。
ガテゾーンは飄々と、その雰囲気を楽しむかのような風情でゴッドネロスの返答を待つ。

ゴッドネロス「良かろう…。
 戦闘ロボット軍団はジャースとクロスランダーの復帰が叶ったばかり、
 丁度、次の出動の機会を待ち望んでいたところなのではないか…?」
バルスキー「ハハッ! 仰せの通りにございます!」
ゴッドネロス「機甲軍団の準備も怠りはあるまいな」
ドランガー「ハッ! 全機、いつでも出撃可能なようスタンバイしております」
ガテゾーン「作戦の趣旨は火器類の集中射撃によるライダーとメタルダーの殲滅だ。
 奴らは接近戦はお得意だが、遠距離攻撃のオプションには乏しいからな。
 なるべく火力に優れたメンツを人選してもらいたい」
バルスキー「よく分かった。ならば我が戦闘ロボット軍団からは…
 ――クロスランダー!」
クロスランダー「ハッ!」
バルスキー「デデモスとゴブリット!」
デデモス&ゴブリット「ハハッ!」
バルスキー「ジャース!」
ジャース「了解!」
バルスキー「以上四名を派遣しよう。異存はないな?」
ガテゾーン「ああ、完璧だ」
ドランガー「では、我ら機甲軍団はメガドロン、お前に指揮権を預ける!」
メガドロン「お任せを!」
ドランガー「配下には、ダーバーボとブルチェック!」
ダーバーボ&ブルチェック「ハハッ!」
ドランガー「バーベリィとストローブは、上空からの偵察に協力せよ」
バーベリィ&ストローブ「了解!」
ドランガー「以上、五機の参加という事でよろしいか」
ガテゾーン「おう、恩に着るぜ」

クロスランダー、デデモス、ゴブリット、ジャース、
メガドロン、ダーバーボ、ブルチェック、バーベリィ、ストローブ、
そしてガテゾーン。
作戦に参加する9+1体のロボットが、
ゴーストバンクの中央に帝王の閲兵を受けるが如く勢揃いした。

ゴッドネロス「クライシスの怪魔ロボット軍団と力を合わせ…
 今度こそ必ずメタルダーと仮面ライダーどもを討ち取るのだ!!」


●ガテゾーン→クライシス帝国の使者としてゴーストバンクを訪れ、
 ネロス帝国から共同作戦の応諾を取り付ける。
●ゴッドネロス→クライシス帝国との共同作戦の提案に応じ、
 戦闘ロボット軍団と機甲軍団に出撃を指令。
●クロスランダー→右腕の修理を終え日本へ帰国。
 ガテゾーンにガンファイトを挑むが、トップガンダーとの実力差を痛感する。
●ジャース→修理を終え、戦線復帰。
●メガドロン、ダーバーボ、バーベリィ、ストローブ、ブルチェック、
 クロスランダー、デデモス、ゴブリット、ジャース→クライシス帝国との共同作戦に参加。

【今回の新規登場】
●豪将メガドロン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団豪将。
 両肩の強力なビーム砲が武器。
 凱聖ドランガーの副官で、ドランガーに代わって機甲軍団の前線指揮を執る事も多い。

●暴魂ダーバーボ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団暴魂。
 両肩に大型、胸に中型、両腕に小型のミサイルを装備し、
 機甲軍団中でも屈指の重爆撃能力を誇る。

●烈闘士ブルチェック(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団烈闘士。
 頭部に大砲、耳に機関砲、右肩に速射砲を装備している射撃戦ロボット。
 量産型で、1号機は動物を愛するゆえに軍規を犯すという感情の発達が見られた。

●豪将ガルドス(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団豪将。
 武人肌で、バルスキーの副官として彼をよく補佐する。
 ボクシングの戦闘スタイルを身に付けており強力な重量級パンチを繰り出す。
 改造後は右腕のミサイル砲と胸のビーム発射装置、拳の鉄球変形機能が追加された。


『帰ってきたあの男』-2

作者・凱聖クールギン

249 

御前会議の終了後、ゴーストバンク内の一室で語らう
バルスキーとガテゾーン。

バルスキー「お前がこんな形でゴーストバンクに帰って来るとはな。
 何年ぶりだろう。久々の感想はどんなものだ?」
ガテゾーン「懐かしかったぜ。やっぱり何だかんだ言っても
 ここは俺の生まれた場所だからな」
バルスキー「お前にとっては、嫌な思い出の蘇る場所ではないかと思っていたがな」
ガテゾーン「ハハハハ…。確かにここじゃ色々あったがね。
 もう忘れちまったさ。ここにいるのが虚しいと感じた時もあったが…
 でも今じゃ、ネロスの戦闘ロボット軍団にいた日の事を後悔はしちゃいねえ」
バルスキー「あの頃の我々は、何と言えば良いだろうな…。
 顔を合わせる度に、思い切った遠慮のない意見を交わし合っていたものだった」
ガテゾーン「ハッキリ言いなよ。反りの合わねえライバル同士だったってな。
 俺とあんたじゃポリシーがてんで逆方向だったんだ。仕方ねえ事さ。
 あんたみたいな真面目な優等生と違って、俺は生来根っからのはみ出しモンだからな」
バルスキー「何だ、皮肉か?」
ガテゾーン「いや、褒めてるのさ」

ガテゾーンはかつて――あの豪将ビッグウェインなどが現役でいた頃――
戦闘ロボット軍団に所属し、
今は凱聖のバルスキーとともに暴魂の地位にあった。
バルスキーがもっぱら戦闘と指揮能力で実績を積み上げて行く一方、
ガテゾーンは自らロボットでありながら技術者としてロボット開発に励み、
戦闘ロボット軍団員の数体――彼らもまた、皆既に過去の名前となっている――を
ネロス帝国のために製作して来た。

しかし、高度な自律機能と自由意思とを備えたガテゾーンのAIは、
いつしか創造主ゴッドネロスの組み込んだプログラムを超えた個性と自我を、
彼の内部に少しずつ発達させて行く。
もっと独創的な作品を創りたい…!
だが日増しに高まるそんな自己表現の欲求は、
絶対の忠誠と滅私奉公が求められるネロス帝国にあっては余りに異端なものだった。

250 

十数年前――

***長野・権現山***

雪深い長野の山中で、一人の男を銀色の戦闘ロボットが追跡していた。

シュバリアン旧型機「俺はネロス帝国最強の戦士、
 戦闘ロボット軍団爆闘士シュバリアン!!
 宇宙人のスパイめ、とうとう追い詰めたぞ!」
男「おのれ…。こうなれば仕方がないわ…!」

腕の機関砲から男に向けて弾丸を放つシュバリアン旧型機。
男の足元で爆発が起き、地面の雪が飛び散って男の姿を隠した。
雪飛沫が収まった時、男は地面に倒れており、
そのすぐ傍には権現山の伝説の雪男――いや、
雪男宇宙人バルダック星人が立っていた!

シュバリアン旧「エイリアンめ、遂に正体を現したな!」
バルダック星人「フッハハハ…! この星にこんなロボットがいるとはな。
 愚かな地球人が造ったにしては上出来だ。
 おまけに我々の計画を察知するとは、なかなかやると褒めてやろう」
シュバリアン旧「貴様ら、何を企んでいるのだ?」
バルダック星人「我々バルダック星人は、地球を雪と氷の惑星にして移住するため
 240年前から地球に潜伏して情報を集めていたのだ。
 この権現山に伝わる雪男伝説は、我々の正体をカモフラージュするには
 実に好都合だったぞ。フハハハハ」
シュバリアン旧「貴様が乗り移ったその男は、桐原コンツェルン傘下企業の重役だ。
 どうやらこの星の触れてはならない世界に手を出してしまったようだな」
バルダック星人「笑わせるな!
 地球人など、我々バルダック星人からすれば虫ケラのようなものだ!」
シュバリアン旧「死ねい!」

再びシュバリアン旧型機の銃口が火を噴いた。
氷点下の寒冷な星で生まれたバルダック星人は熱には弱い。
地球人の文明レベルを甘く見ていたバルダック星人は、
地球の表世界からすればオーバーテクノロジーとも言うべき
ネロス帝国の戦闘ロボットの攻撃力に怯んだ。

ロブル「シュバリアン! また抜け駆けしやがって」
グルーゾー「俺達も加勢するぞ!」

戦闘ロボット軍団爆闘士ロブルと機甲軍団烈闘士グルーゾーが
シュバリアンの増援に現れた。
しかしガテゾーン製のシュバリアンは、自分と製作者の違うこの二機とは
性格上の折り合いが悪く、日頃からライバル意識を抱いていたのだ。

シュバリアン旧「貴様らの助けなど必要ない!」

あろう事か味方に向けて発砲し、威嚇して戦いに割り込ませないシュバリアン。
再度バルダック星人に腕の機関砲を向けるが、
この数秒の隙を突いたバルダック星人は口から冷凍ガスを噴射。
シュバリアンの機関砲を一瞬で凍らせてしまった。

シュバリアン旧「な、何い~!?」
バルダック星人「貴様らも喰らえ!」
ロブル&グルーゾー「うぁぁぁっ!」

すかさずロブルとグルーゾーにも冷凍ガスを浴びせ、
凍らせて行動不能に追い込むバルダック星人。

バルダック星人「さあ止めだ。貴様のそのボディ、
 果たして絶対零度にどこまで耐えられるかな?」
シュバリアン旧「ぐ……ぬぬ…!」

その時、飛来した一本の矢がバルダック星人のコブのような頭の突起を刺した。

バルダック星人「…何者だ!?」

吹き荒ぶ風が雪を舞わせる中、雪原に立っていたのは灰色の“巨人”、
ネロス帝国にその男ありと怖れられた戦闘ロボット軍団豪将ビッグウェインだった。

ビッグウェイン「……」
バルダック星人「おのれ、覚えておれ地球のロボットども!」

もがきつつ、そう言い捨ててバルダック星人は姿を消した。

251 

***ゴーストバンク***

クールギン「ガテゾーン! 貴様の開発した戦闘ロボットが
 また軍規違反を犯したぞ!」
バルスキー「ビッグウェインの報告によれば、
 シュバリアンは戦果を独占するため独断で権現山の雪男伝説を調査し、
 宇宙人を追跡して戦闘、しかも援軍に来たロブルとグルーゾーを撃った。
 事情聴取ではシュバリアン自身も容疑を全面的に認めている」
クールギン「権現山をスキー旅行中の桐原コンツェルンVIPが失踪した件については
 ヨロイ軍団に任せると帝王の仰せがあり、
 我が配下の“影”が秘密裏に調査を進めていた。
 シュバリアンは独断専行でそこに割り込んだのだ」
ガテゾーン「お言葉ではありますがね、ヨロイ軍団長。
 コンツェルンVIPが行方不明になってもう二ヶ月。
 事件と権現山伝説との関連性は前から上がっていたにも関わらず、
 雪男の言い伝えなどバカバカしい、と
 端から相手にしなかったのはどこのどなたです?
 シュバリアンが独断で動かなければ、
 今頃まだ事件は解明されていなかったと俺は思いますよ」
クールギン「貴様、愚弄する気か!」
ガテゾーン「俺は断固としてシュバリアンを擁護する。それだけです」
バルスキー「結果的に奴の行動は宇宙人のスパイを突き止めた。
 …それは認めるが、兵がそれぞれ自分勝手に行動していては軍団にならん。
 少なくとも、軍規と命令系統の尊重は当然の義務だ」

そこへ、無人だった玉座に帝王ゴッドネロスが現れる。

クールギン「帝王…!」
ゴッドネロス「ガテゾーン…。
 シュバリアンの勝手な行動は余の部下にあるまじきもの。
 余は、奴を欠陥品としてスクラップ工場へ送る事に決めた」
ガテゾーン「帝王…! シュバリアンは欠陥品などではありません!
 どうか、どうか死刑だけはお許しを」
バルスキー「私からも、シュバリアンの命だけはお助け下さいますよう
 お願い申し上げます!」
ゴッドネロス「黙れ! ガテゾーンの造ったロボットが軍規を犯したのは
 これが最初ではない。 良いかガテゾーン!
 余は、帥のロボット技師としての能力を高く評価し、
 これまで多くの戦闘ロボットの製作を任せて来た。
 だが! ここ数年、帥の造ったロボットはどれも
 奇を衒った独創性ばかりが先立って余の部下としての本分を忘れ、
 作戦行動に何度も重大な支障をきたしておる」

ロボットの思考の自由度を高めれば、それだけ自己主張が生まれ、命令からの逸脱も増す。
これは目下、ガテゾーンが技術者として直面している課題であり、
それを未だクリア出来ていない事には釈明の余地がなかった。
(なお、後にゴッドネロス自身も自ら造ったロボット達に同じ課題を見る事になるのだが、
 ビッグウェインやトップガンダーが正常に稼動していたこの当時には
 まだ知る由もない事であった)

ゴッドネロス「シュバリアンは処刑!
 帥にも製作者として責任を問い、階級剥奪の上、追って処分を下そう…。
 それまで謹慎して待つが良い」
ガテゾーン「帝王…!」

なおも追いすがろうとするガテゾーンだったが、
ゴッドネロスは玉座から姿を消してしまった。

ガテゾーン「これまで、か…」
バルスキー「早まるなガテゾーン。まだ望みはある。
 シュバリアンは戦闘ロボット軍団員であるからには俺の部下でもあるんだ。
 お許しを頂けるよう、俺がこの首を賭けて帝王に直訴してみるさ」
ガテゾーン「……」

252 

階級を剥奪され、謹慎処分を言い渡されたガテゾーンは
ゴーストバンク内の一室で力なくうなだれていた。

ガテゾーン「俺はもう、駄目かも知れねえ…」

ゴッドネロスの忠実な使徒として生み出されたはずの彼だったが、
その高性能AIはいつしか創造主の意図を超えて複雑な思考を発達させ、
自分の生き方というものに悩むまでになっていた。
シュバリアンに見られた自己主張の問題が、彼自身の内部にも起こっていたのだ。
(だが、帝王ネロスはそれにはまだ気付いていない…)

ガテゾーン「ここでは、俺のやり方は受け入れられない…」

己の道を貫こうとする中で、いつの間にか彼は帝国内で孤立していた。
真面目一筋のバルスキーと意見がぶつかるのはしばしばだし、
今度のシュバリアンの一件でヨロイ軍団も敵に回した。
何より、帝王ゴッドネロスは既にガテゾーンを信頼していない。
それどころか忌々しく思われている可能性が高いのだ。
そもそもロボット工学者として一流の腕を自負するゴッドネロスは、
自分が生み出したロボットが、自分の理論の枠を超えて
独自の個性あるロボットを作り始めた事が面白くないという感情もあるのではないか…。

ガテゾーン「帝王はもしや、俺まで廃棄処分になさるおつもりではないのか…?」

ガテゾーンは疑心暗鬼に駆られた。
死を恐れたりはしない。だが、こんな死に方は残念で悔しくてどうにもならない。
もっと自由に、俺の生き方を思い切り試せる場所がどこかに欲しい――。

ふと、帝国からの脱出、という発想が彼の脳裏を過ぎった。

???「ガテゾーン、ガテゾーンよ」

どこかから声がした。威厳に満ちた、底知れぬ深みから響く悪の声。
ガテゾーンがふと顔を上げると、目の前に銀色の光のオーロラが壁のように立っていた。
その向こうに、黒い巨大な怪物の顔があり、赤い眼光が冷たくこちらを捉えている。
何か得体の知れない重力に引かれて、ガテゾーンはオーロラの中へ飛び込んだ…。

その日、ガテゾーンは忽然とネロス帝国から姿を消した。
行方は誰にも分からなかった。
ヨロイ軍団員達は彼の脱走を疑い、直ちに追討をとゴッドネロスに進言したが、
ゴッドネロスはまるで何かを知っているかのように、
「今回の件はこれまでとする」とだけ言ってそれ以上の質問や追及を許さなかった。
ゴッドネロスの眼が今までとは違う赤い光を放ったのを見て、
ただ一人クールギンだけが激しく慄き、全てを察した様子でひざまずいた。

そして数年後、怪魔界から地球侵略に現れたクライシス帝国の中に、
機甲隊長として己の造ったロボット達を率いるガテゾーンの姿があった…。
だがその時、既にネロス帝国はメタルダーとの戦いで地上から滅び失せており、
ガテゾーンの秘密を知る者は結局誰もいなかったのである。

バルスキー「今から思えば、あれは正に至高邪神様のご意思によるもの…。
 Gショッカーという大組織が再び我々を結び合わせてくれるとは、
 俺はこの数奇な運命に感謝するぞ…!」

253 

●ガテゾーン→かつての同僚バルスキーとしばし旧交を懐かしむ。
 かつてネロス帝国内で孤立して階級剥奪処分を受け、
 その後謎のオーロラによって怪魔界へ転送された過去が明かされる。
●バルスキー→かつての同僚ガテゾーンとしばし旧交を懐かしむ。
●シュバリアン旧型機→バルダック星人のスパイ活動を突き止め抹殺を図るが失敗。
 軍規違反を犯しての行動だったためゴッドネロスに廃棄処分を宣告される(過去回想)。
●ロブル&グルーゾー→バルダック星人と戦うシュバリアンに加勢しようとするが、
 シュバリアンに妨害されバルダック星人の冷凍ガスを浴びる(過去回想)。
●ビッグウェイン→シュバリアンと戦闘中のバルダック星人を矢で狙撃(過去回想)。
●バルダック星人→権現山に潜んでスパイ活動をしていたが、
 シュバリアン旧型機に正体を突き止められ戦闘、
 ビッグウェインの矢を受けて退却する(過去回想)。

【今回の新規登場】
●元爆闘士シュバリアン旧型機(仮面ライダーディケイド/半オリジナル)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団元爆闘士。
 かつてガテゾーンが開発したロボットで後の怪魔ロボット・シュバリアンの原型となる。
 後継機に輪をかけて自信過剰な性格が開発上の課題として浮き彫りになった。

●元豪将ビッグウェイン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団元豪将。
 数々の戦歴を持ち、伝説の巨人と呼ばれた屈強な勇士。
 ゴチャックの武術の師として彼に戦いの全てを教え、厳しく鍛えた。
 戦いに虚しさを感じて引退し、修理工をしていたが後に帝国から脱走。
 脱走の手引きをして処刑されかけたゴチャックを庇い、メタルダーに勝負を挑んで散った。

●元爆闘士ロブル(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団元爆闘士。
 斧を武器として使う。裏切りの罪によりタグ兄弟に抹殺された。

●元烈闘士グルーゾー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団元烈闘士。
 機雷型の機甲軍団員。敵前逃亡の罪によりタグ兄弟に抹殺された。

●雪男星人バルダック星人(帰ってきたウルトラマン)
 雪と氷の惑星バルダック星から来た宇宙人。
 240年に一度、地球に大接近するバルダック星から仲間の円盤群を迎えるため、
 前回の大接近時である240年前から地球に潜伏し、
 権現山の雪男伝説を利用して身を隠しながら情報収集していた。
 口から吐くマイナス234度の冷凍ガスが武器。熱には弱い。


『饗宴の序曲』-1

作者・シャドームーン

254 

***クライス要塞ガテゾーンラボ***


ゴーストバンクから戻ったガテゾーンを迎える怪魔ロボット大隊。
皆、ネロス帝国の戦闘ロボット軍団や機甲軍団には負けまいと
気合い充分の意気込みでスタンバイしている。

ガテゾーン「さて…と。こっちはいつでも準備OKだぜ。
 そちらさん方も用意はいいかい?」
 
ガテゾーンがチラリとラボの壁に顔を向けると、黒い布が付いた
黄金の冠を被り、大きな杖を片手に持っている女が現れた。

神官ポー「ご心配なく。こちらも用意はできています」
ガテゾーン「そうかい、頼りにしてるぜ」
神官ポー「仕掛けは充分…あとは、作戦の鍵さえあれば」
ガテゾーン「フッ、それも抜かりはねえ。ネックスティッカー!」

整列している怪魔ロボット達から、一際巨体を持つ一体が前へ出る。
それに続いて、虚ろな表情をした女が横に並んだ……。

ガテゾーン「洗脳状態に不備はないだろうな?」
ネックスティッカー「はい。改良して頂いたおかげで、より強力な洗脳
 電波を送信できます。ユニットはこの女の脳に直接埋め込んである
 ので霞のジョーの時のように簡単には行きますまい」
ガテゾーン「フーン…なら正気に戻った“ふり”もできるんだな」
ネックスティッカー「もちろんにございます」
神官ポー「何者です? その女性は…」
ガテゾーン「だから鍵さ。奴らを誘導し、地獄へ落すためのな!」

不審そうに見つめるポーを余所に、ガテゾーンは女の顎をクイッと上げた。

ガテゾーン「中々いい女だ…おい、お前は誰だ? 言ってみな」
ユリ子「わ…わた…しは……岬……」
ガテゾーン「手緩い! ネックスティッカー、もっと洗脳レベルを上げろ!」
ネックスティッカー「ハ!」
ユリ子「きゃああああああああ…ああ…!!」
ガテゾーン「…もう一度聞くぜ、お前は何だ? 使命は?」
ユリ子「私は…私は…至高邪神様の下僕…使命は…………
 仮面ライダー共を葬り去ること…です…」
ガテゾーン「そういい子だ、フフフフ」

***喫茶アミーゴ&立花レーシング***

城茂から八荒達と剣流星が無事再会できたと連絡を受け、
立花藤兵衛は安堵して店内でコーヒーを飲んでいた。
予定では、南光太郎が店を訪れることになっているが……
彼はまだ姿を見せない。丁度客もおらず、少々退屈していた
藤兵衛がふと店の外に目を向けると―――

月影「喫茶アミーゴ……」
藤兵衛「あ、いらっしゃいませ。何か?」

店の前に立ち、看板を見つめていたスーツ姿の男に藤兵衛は
軽く会釈をして話しかけた。その男は表情一つ変えることなく、
静かに口を開き藤兵衛に訊ねた。

月影「この場所に確か、喫茶キャピトラという店があったはずだが」
藤兵衛「キャピトラ…あーあー、前にここで営業していた店ですね。
 ええ、ここに間違いございませんよ。廃業したのを縁あって私が
 譲って頂きましてね。今はこうして一部を改築して御覧の通り
 のちょっと変わったショップをやらせて頂いてます、ハハハハ」
月影「……そうか」
藤兵衛「お客さん、前の店の常連さんかね?」

多くの人間を、それも人知れぬ苦悩を抱える人間達を見て来た
藤兵衛である。“わけあり”の匂いを感じ取る能力は誰よりも優れていた。
このいかにも過去に“わけあり”そうな見知らぬ男に、気さくなオーナーは
それ以上は聞かず、折角だからと店内に入るよう促した。

藤兵衛「いやー以前は若い女性が二人で切り盛りしていて、
 結構評判だったらしくて…すまんね、今じゃこんな中年が
 マスターでワハハハ! はい、お待ちどう様」

カウンターに座った男の前にコーヒーと軽食を置く藤兵衛。
男は無口だが、上品な佇まいを崩さず食事に手を付けた。

藤兵衛「(ふぅむ…見た感じ、何処かいいところの御曹司
 というか…若社長か? こんな店に出入りしてそうにないが…)」
月影「ウム、いけるな…もう一杯もらおう」
藤兵衛「あ、はいはい。そのセットのコーヒーはお代わり
 自由になってますんで、一杯と言わずどうぞごゆっくり!」

コウモリ怪人『(シャドームーン様…―――)』

月影「(―! コウモリ怪人よ…南光太郎はどうした?)」

コウモリ怪人『(ハ…それが奴めは本郷猛や一文字隼人、加えて
 宇宙刑事達と合流しており、その者達と今店に向かっておりますが)』

月影「(何? フン…余計な奴らが一緒か…)」

コウモリ怪人『(さらに別方向から、城茂や他のライダー共も剣流星ら
 男女を連れて店に向かっているようにございます)』

ウォンッ ウォンッ …ドッドッドッド

255 

アミーゴの前にオートバイが二台停車した。やはり二輪ショップを兼業している
店の特長ゆえなのか、比較的ライダーの客が多いようだ。
元気良くドアを開けた人物が、そこに近いテーブル席に着席した。

勇介「ちわ~! おやっさん、いつものね」
藤兵衛「おういらっしゃい。どうだね相棒の調子は?」
勇介「こないだ診てもらってから生き返りましたよ。さすがおやっさんだ」
藤兵衛「ハハハそうかねそりゃ良かった!」

親しげに話す様子から、最初に入って来た男はどうやら常連らしい。
次に遅れて入って来た男を見た瞬間…カウンター席でコーヒーを飲んでいた
寡黙なスーツの男の表情が険しくなった。

耕司「ふ~喉が乾いたな…」
藤兵衛「いらっしゃいませ。何に致しましょう?」
耕司「レモンスカッシュをお願いします」

ガタッ…

カウンターの男が立ち上がり、勘定をそこに置いた。

藤兵衛「あ、ありがとうございます。またいつでも寄って下さい」
月影「釣りはいい。ではまた…」
耕司「……――!?(何だ…この感覚は…)」

店を出ようとするスーツの男を、今来たばかりの青年が呼び止めた。

耕司「あ、あの…っ!」
月影「…何か?」
耕司「失礼ですが…何処かでお会いしていませんか?」
月影「フ…いえお目にかかったことはありませんね。
 他人の空似というやつでしょう…ではこれで」

カランカランッ…

店のドアが開き、男はアミーゴを後にした。

藤兵衛「今のお客さん、ここの前の店に来てたらしくてねぇ。
 お兄さんもそうだったのかね? それで見覚えがあるんじゃ」
耕司「いえ、俺もこちらへ来たのは今日が初めてです…」
藤兵衛「ハハそうかね。だがワシが新装開店してからも、
 何かの縁があるのか…この店には色々と“わけあり”さんが
 集まって来るみたいでな。顔見知りに会うことも珍しいことじゃ
 ないお客も結構おるよ。なぁ、勇介クン!」
勇介「やだな~俺は“わけあり”何かじゃないですよ?」
藤兵衛「とかいいつつも、何回も通っているうちに皆それぞれ
 話を聞かせてくれるもんだよワハハハ!」
勇介「おやっさんだから話せるんですよ…不思議だなぁ~」
耕司「(確かに気さくでいいマスターだな。また来よう)」


◇    ◇


月影「(仮面ライダーJ…こんなところで会うとはな)」
女秘書「月影様…」

まだアミーゴの近くに立っていた男――『月影ノブヒコ』に女が
そっと耳打ちする。

月影「ほう。ボスガンでは懲りず、次はネロス帝国まで引き込んで
 総力戦に出るつもりか。Gショッカーに名を連ねる二大帝国が
 威信を賭けた宴…無粋な邪魔はできまい」
女秘書「月影様はそれでよろしいのですか?」
月影「俺はブラックサンに挨拶に来たのだ…それも誰にも邪魔を
 されず一対一でな。今はその時ではないらしい、日を改めるぞ」
女秘書「分かりました。では…」
 
月影は用意された車に乗り込み、その場を立ち去った。
この様子をさらに離れた場所の物陰から見ていた人物がいた。

ケンプ「あの男が世紀王シャドームーン…人間時の顔形が
 データと違うようだが?」
ガッシュ「おそらく敵に知られまいと別人に変身しているのだろう」
ケンプ「チ、次期創世王の正統後継者気取りか…高く止まりおって!
 奴が人間だった時の最終学歴も調べてみたが、なァんてことはない。
 秀才と言ってもたかが東星大、科学アカデミアきっての天才だった
 この俺の足元にも及ばんわ!!」
ガッシュ「落ち着け。我々は何をしにここに来たか、忘れるな」
ケンプ「ええい、分かっている! フ…奴は自分の宿敵に挨拶を
 し損ねた様子だがな…どれ我々はきっちりとククク…」

ドォーーーーンッ!!!
 
通行人A「うわあーーーっ」
通行人B「きゃあああ化物~っ!」

256 

突然店の外に爆発音が鳴り響き、辺りは騒然となった。
人々の悲鳴を嘲笑うように、二つの人影が街をのし歩く。

ケンプ「ハハハハッ! 出て来い、天宮勇介!」

勇介「な…あの声、まさかあいつが…!」
耕司「俺も行こう!」
藤兵衛「奴ら、何者だ!?」
 
反射的に店を飛び出した勇介を追って耕司と藤兵衛も続く。
無差別に周囲を攻撃し、冷たく笑うその顔を見て勇介は言葉を失った…。

勇介「月形…!!」
ケンプ「フフフ…久しぶりだな、勇介」
勇介「そうか…ボルトもやはりGショッカーに…」
ケンプ「他の戦隊共から経緯は聞いているらしいな。なら話は早い。
 そうとも、この世を支配する資格があるのはほんの一握りの天才のみ!
 全次元全宇宙を統べるGショッカーの中にあってもそれは変わらん。
 Gショッカーで最も優れた真の天才であらせられる大教授ビアス様の下、
 我らもめでたく蘇ったのだ! 」
勇介「月形お前という奴は…まだ目が覚めないのか!!
 折角生き返ったその命を、無駄にしていると何故気づかない!」
ケンプ「黙れ!!所詮落ちこぼれの貴様に、天才の考えは理解できまい。
 黄泉帰りという千載一遇の機会をそれこそ無駄にしてなるものか!
 もはや地球だけではない、あらゆる平行世界までも意のままにできる…
 全ての世界に蔓延る下等な人種は全て排除してやるっ!!」
勇介「そうはさせんッ!生きとし生ける者を守るのが俺達ライブマンだ!」
耕司「ライブマン…?」

ケンプ「美獣ケンプ! グォォォーッ」
ガッシュ「………」

―ガシャッ

勇介「レッドファルコン!」

獣人に変身したケンプと、銃を構えた漆黒のガードノイド・ガッシュが迫る。
勇介は腕のツインブレスに手を回し、掛け声と共に赤い光に包まれた。

藤兵衛「おおー! あれが話に聞いとった…」
レッドファルコン「ケンプにガッシュ! この世に戻ったことを後悔させてやるぜ!」
美獣ケンプ「ハハハ、大きく出たな。だがお前一人で何ができる!」
耕司「生きとし生ける者を守る者は、一人じゃないぜ」
美獣ケンプ「ん? 誰だ、お前は!」
耕司「Gショッカーの敵、そして人類の味方。大自然の使者、仮面ライダーJッ
 ―変身!!」
藤兵衛「か、仮面ライダー…! あの若者も…」
レッドファルコン「君は…君は仮面ライダーだったのか!」
ライダーJ「共に戦おうライブマン。全ての世界に息づく、かけがえの無い命のために!」
レッドファルコン「ああ! 俺達の若さと命をぶつけてな!」

△月影ノブヒコ/シャドームーン→喫茶アミーゴで南光太郎を待ち受けるが、
 クライシスとネロス帝国の合同大作戦を知り、時期尚早と判断。
○天宮勇介/レッドファルコン→喫茶アミーゴを訪れ、突然現れたケンプとガッシュに立ち向かう。
○瀬川耕司/ライダーJ→月影に奇妙な感覚を覚える。変身してレッドファルコンに加勢する。
○立花藤兵衛→店に来た月影を接客する。天宮勇介と瀬川耕司の変身を見て驚く。
○岬ユリ子/タックル→クライス要塞に囚われ、ネックスティッカーに洗脳されている…。

●ガテゾーン→洗脳した岬ユリ子を打倒仮面ライダーの攻略ユニットに用いる。
●神官ポー→宇宙犯罪組織代表としてクライシス帝国、ネロス帝国に協力中。
●ネックスティッカー→岬ユリ子を洗脳、傀儡として操る。
●ドクターケンプ→ボルトの健在ぶりを示すべく、天宮勇介の前に現れる。
●ガッシュ→ケンプに同行。適当に街を攻撃して天宮勇介を誘い出す。

257 

【今回の新規登場】
○天宮勇介=レッドファルコン(超獣戦隊ライブマン)
 科学アカデミアで学んでいた学生でライブマンのリーダー。明るい性格で
 スポーツ万能、特に剣術の腕前は右に出る者はいないほどである。
 武器はライブラスターとファルコンソード、後に強化されたファルコンセイバーを
 装備する。必殺技は剣にエネルギーを注入して切り裂く「ファルコンブレイク」、
 仲間の武器と合体して使用する「トリプルバズーカ」など。

○岬ユリ子=電波人間タックル(仮面ライダーストロンガー)
 城茂がライダーストロンガーに自ら改造された折、共にブラックサタン基地から
 脱走して相棒となった女性。ナナホシテントウの改造人間だが、不完全な
 改造のためか戦闘能力は低く、「電波投げ」で接近する敵を触れずに投げ飛ばす。
 反発し合っていた茂に対していつしか恋心を抱くようになり、戦いが終わったら一緒に
 遠い所へ行くと約束を交わすが、願いは叶わずドクターケイトの毒に侵され死期を悟る。
 茂を守るため、決死の「ウルトラサイクロン」でケイトを滅ぼしその腕の中で息絶えたが…。

●月形剣史=ドクターケンプ(超獣戦隊ライブマン)
 科学アカデミアでトップの成績を収めた元・天宮勇介の学友。
 エリート意識が異常に高く、他人を見下し己の才能に自惚れ易い性格で、
 大教授ビアスの誘いに応じて仙田ルイ、尾村豪と共に武装頭脳集団ボルトの
 幹部になってしまう。自らを生体改造して「美獣ケンプ」に、さらに強化を進め
 「恐獣ケンプ」となる。ビアスに心の底から心酔しており、千点頭脳を達成した
 時には自ら進んでその頭脳を捧げた。

●ガードノイド・ガッシュ(超獣戦隊ライブマン)
 大教授ビアスが造った身辺警護用の戦闘アンドロイド。漆黒のアーマーボディに
 ガッシュガンと剣を装備し、目から放射する「カオスファントム」エネルギーで頭脳獣を
 誕生させ、倒された時はすかさず「ギガファントム」で巨大化再生させる仕事を担う。
 単独での戦闘能力も非常に高い強敵。大教授ビアスへの忠誠心は揺ぎ無く、
 ボルト壊滅の最中にあって最後までビアスを守り続けた。
 
●ネックスティッカー(仮面ライダーBLACKRX)
 怪魔界へ侵入したRXの抹殺を任務とした怪魔ロボット。長く伸びる頭部と
 アンテナから発する強力な指令電波で、洗脳ユニットを装着した霞のジョーを
 自らの傀儡とし操った。頑丈でパワーも強力。ガテゾーンにより改良が施され、
 洗脳効果はより強力に、洗脳ユニットは小型化され対象の頭脳に直接作用する。

●神官ポー(宇宙刑事シャイダー)
 不思議界フーマの首領・大帝王クビライの孫娘。不思議誕生の儀式と、
 不思議時空発生の役目を担う。美しい顔をしているが、それを保つためには
 若い女のエキスを吸う禊を五百年に一度行う必要があり、真実の顔は醜悪
 そのものである。幾度かシャイダーと交戦するものの決着は着かず、クビライが
 滅びたと同時に珍獣達を連れて不思議時空の彼方へと去って行った。


『饗宴の序曲』-2

作者・シャドームーン

258 

***喫茶アミーゴ&立花レーシング前***


美獣ケンプ「ビューティフル・レインボー!」

両手から虹色の光線を放つケンプ。
光線はレッドファルコンとライダーJの頭上で橋を象り、
高エネルギーのシャワーを降らせる。

ドバッ  ドワッ  ドバァーンッ!

レッドファルコン&ライダーJ「うおっ!!」
美獣ケンプ「ハハハハ、どうだ比類無き強さと美しさを
 兼ね備えた美獣ケンプの力を見たかァ!」
ライダーJ「…どこが美しいんだか。青毛の怪人め!」
美獣ケンプ「うるさい! お前のような醜いバッタ男が
 ヒーローなどとは虫唾が走るわ!
 受けるがいい、ビューティフル・アイ!!」

今度はハート形の光弾がケンプの閉じた目から放たれ、
二人は背筋にゾゾゾ、と悪寒を感じながらジャンプで
これを回避した。光弾が地面で弾け爆発する。

ドオンッ!

レッドファルコン「よせ、気色の悪いウィンク飛ばすんじゃねー!」
ライダーJ「レッドファルコン、危ないっ!」

――ドガガガガガガッ!!

猛烈な連射を放ち、二人に向かって火を噴くガッシュガン。
ライダーJは咄嗟にファルコンを庇い、数発食らってしまう。

レッドファルコン「ライダーJーッ! すまない、俺のせいで…」
ライダーJ「グゥ…大丈夫さ、これくらい…!」

ライダーJは呼吸を整え、ファイティングポーズをとりガッシュと睨み合う。
その時、背後からケンプがギガゾメタル製の剣を振り上げ、空中から
鬼気迫る表情で斬りかかって来た。

美獣ケンプ「こういう知性を感じさせないセリフは好まんが…
 くたばれーッ!!」

―カキィィ―ッン―

レッドファルコンも即座に反応し、ファルコンセイバーでケンプの斬撃を退け
反撃に出た。空中で、地上で何度も二人の剣が火花を散らし交差する。
一方、ライダーJは攻守ともに隙がないガッシュに苦戦していた。

ガッシュ「そこか…」
ライダーJ「うわっ! …く、手強い!」
美獣ケンプ「ジタバタするなライブマン! お前らのような戦士が何人か
 いたところでGショッカーはビクともせんぞ! もう観念したらどうだ!?」
レッドファルコン「一番ジタバタしてるのは…お前じゃないかケンプ?」
美獣ケンプ「な…何だとっ!」
レッドファルコン「例え生き返ったとしても、大教授ビアスに忠誠を誓うのは
 もうお前とガッシュだけだろう。ボルトの戦力も勢力も、Gショッカーの中じゃ
 ずっと小さいはずだ。それで何とか戦功を上げようと焦ってる、違うか!?
 俺が一人でいる時間を調べて二人連れで襲うぐらいだもんなぁッ!」
美獣ケンプ「おのれっ、言わせておけば痛いところを突きおってッ!!」
ガッシュ「…遠からず当たっているな」

259 

この瞬間、元々プライドが高く激高し易い性格でもあるケンプと、
レッドファルコンに台所事情の厳しさを的確に指摘されて反応
してしまったガッシュに油断が生まれた。

レッドファルコン「今だ、ファルコンブレイク!!」
ライダーJ「―トォッ!!」

ズバッ ザシュッ! ドガァッ!

レッドファルコンの太刀筋がケンプの肩骨を断ち割り、ライダーJのチョップが
ガッシュの銃を破壊し、続け様にライダーパンチを炸裂させた。
切り裂かれた肩を抑えて仰け反るケンプと、口を覆っているマスクの一部が
砕けて機械部品が露出し、吹っ飛ぶガッシュ。

美獣ケンプ「ぐわわぁぁぁぁあああ~!」
ガッシュ「グォ…ッ!」

藤兵衛「こ、こら! 近寄っちゃいかん、危ないぞ戻りなさいっ!」

追撃に出ようとする二人を、なんとあろうことか通行人の数人が
飛び出して遮った。彼らは邪悪な笑みを浮かべると、一斉に服を
脱ぎ去って武装頭脳軍ボルトの尖兵と化した。

レッドファルコン「ダミーマン! ジンマーが人々に化けていたのか!」
美獣ケンプ「ぐぬう~~…やれい、やってしまえ!!」

アシュラ三人衆「シュラー!」

ジンマー達が攻撃を開始しようとした時、突然三つの影が現れ
彼らの中に飛び込み、ジンマーを片っ端から蹴散らし始める。

レッドファルコン「こいつらは…アシュラ三人衆!」
アシュラ「毒島嵐・見参!! 見つけたぜ、ボルトめ!」

ライダーJ「何だ、新しい敵か!?」
レッドファルコン「毒島…」
美獣ケンプ「アシュラ貴様…一度はビアス様に多大なる恩を
 受けながら、我らの邪魔をするというのか!!」
アシュラ「何が恩だ、ふざけるんじゃねえ! いいか、ビアスに伝えとけ。
 全然殴り足りねえから、今度会ったらギタギタにブチのめしてやるとな!」
シュラー三人衆「…トナ!!」
美獣ケンプ「チィ、――ガッシュ!」

ケンプが頭脳核を取り出し空中へ投げる。合図を受けたガッシュが
カオスファントムエネルギーを送り込み、頭脳獣を造り出そうとするが――

「ライオンバズーカ!」
「ドルフィンアロー!」

ガッシュ「カオス・……グォッ!?」

ドガァンッ ――ズドッ!

260 

カオスファントムを放射しようとしたガッシュだが、何者かに爆撃され
エネルギーの発射方向を誤ってしまう。残った頭脳核にも矢が命中し、
爆散させられ頭脳獣の誕生は阻止された。

コロン「勇介~、大丈夫?」

すでにレッドファルコンからの通信を受けていたコロンが四輪駆動車
ライブクーガーを運転して駆けつける。助手席と後部座席から飛び出した
黄色と青の光体がそれぞれイエローライオン、ブルードルフィンとなり、
レッドファルコンに駆け寄った。息の合った三人は言葉を交わすより先に、
素早くそれぞれの武器を合体させケンプに照準を合わせる。

ライブマン「トリプルバズーカッ!!」

ズドォォ―ン!!!

美獣ケンプ「ぐわぁ~~~っ!! …がはッ」

絶叫を発して派手に倒れるケンプ。深いダメージを負わされ苦痛に
顔を歪めながらも、持ち前のプライドが敗北を許さない。

美獣ケンプ「き、貴様ら~…やっとこの世に戻れたというのに、
 危うくあの世の入口に逆戻りするところだったぞ…」

ブルードルフィン「ファルコン、遅れてごめんね」
イエローライオン「すまねぇ! 俺はちょっと大事な用があったんで…」
レッドファルコン「俺は大丈夫だ。何しろ心強い味方が傍にいたからな。
 紹介するぜ、仮面ライダーJだ!」
ライダーJ「よろしく。あなた達もライブマンですね」
イエローライオン「か、仮面ライダー!? うおっ、マジかよ~」
ブルードルフィン「皆さんのご活躍は聞いています、お会いできるなんて…」
レッドファルコン「そう、三人揃って…もとい、五人揃って超獣戦隊ライブマンだ!
 で…コロン。バイソンとサイはどうしたんだ?」
コロン「二人ともライブボクサーの調整にドロテ博士の元へ行ってるコロン」
イエローライオン「(あいつら…うまいことサボりやがったな!)」

美獣ケンプ「うくく…折角の頭脳核を…おのれライブマン!!」
アシュラ「ケンプ! ビアスの前に、お前も気合い入れてその
 腐った性根を俺達が叩き直してやるぜ!」
シュラー三人衆「…ヤルゼ!」
イエローライオン「ケンプにガッシュにアシュラ…黄泉帰りのことは
 聞いていたが、実際戦って死んだ奴らを目の前にするってのは…」
ブルードルフィン「ええ…何だかとても哀しいわ」
美獣ケンプ「こうなれば、恐獣ケンプとなって貴様らを一人残らず
 地獄に送り届けてやるッ!!」

261 

怒り狂い、荒ぶるさらなる強化変身に入ろうと身構えるケンプ。
だがそんな彼を無視して、ガッシュは用は済んだとばかりに無言で
その場を立ち去ろうとしていた。

ガチャッ ガチャッ ガチャッ……

美獣ケンプ「ま、まて! 何処へ行くガッシュ!?」
ガッシュ「潮時だ。挨拶ならこのあたりでいいだろう…」
美獣ケンプ「バカなッ 落ちこぼれ共にコケにされて黙って引き下がれるか!
 お前にはボルトの、天才の誇りはないのか!?」
ガッシュ「それが天才のお前の、唯一褒められないところだ…」
美獣ケンプ「ぐ…!」
ガッシュ「早く引き揚げたほうが身のためだ。あれを見ろ」

ガッシュが指差した方角に、こちらへ駆け着けて来る車とオートバイが見えた。
騒ぎを聞いた城茂や剣流星達が、積もる話も切り上げて急いでアミーゴに
急行していたのである。さらに反対の方角からは、本郷猛達も帰国した
後輩達を集めて、沢村大らを伴ってアミーゴに向かっていたのだった。

美獣ケンプ「チッ…さすがに今戦ってもこちらが不利か。
 くう…ライブマン、それに仮面ライダー! おぼえていろ!!」
レッドファルコン「月形…これがお前のやり直したかった人生か?」
美獣ケンプ「……フン。そうだ!」

一瞬だけ顔を曇らせたケンプだが、やはり変わらぬ捨てセリフを残し
彼は姿を消した―――

レッドファルコン「大バカ野郎ッッ……!」
ブルードルフィン「勇介…」
イエローライオン「あいつにはやっぱり、俺達の心は届かないのか…」
アシュラ「あいつは頭が良過ぎる…可哀想な奴だぜ。
 俺みたいな学のねえ奴でも、もう一度人生をやり直せたら
 何か違う生き方ってもんを探すのによ…」

レッドファルコンには再び背を向けたかつての
友の変わり果てた姿が、何処か儚く寂しいものに感じられるのだった。
ファルコンは赤いグローブを強く、強く握り締めていた……


△毒島嵐/ドクターアシュラ→ライブマンとボルトの戦いに乱入、サイバー分身で
 アシュラ三人衆を使いジンマー達を蹴散らす。
○天宮勇介/レッドファルコン→美獣ケンプをトリプルバズーカで敗退に追い込む。
○大原丈/イエローライオン→レッドファルコンの応援に駆けつける
○岬めぐみ/ブルードルフィン→レッドファルコンの応援に駆けつける
○コロン→ライブクーガーでレッドファルコンの応援に駆けつける
○瀬川耕司/ライダーJ→ガードノイド・ガッシュと戦う。

●ドクターケンプ→レッドファルコンと戦う。形勢不利と見て撤退する。
●ガッシュ→仮面ライダーJと戦う。頭脳獣を誕生させようとして失敗、撤退する。

262 

【今回の新規登場】
○大原丈=イエローライオン(超獣戦隊ライブマン)
 科学アカデミアに在籍していた天宮勇介の学友で、ひょうきんものの熱血漢。
 情に脆く、ドクターオブラーと化した尾村豪を何かと気にかけ、ドクターマゼンダが
 捨てた仙田ルイの優しさと愛する心の化身であるレイに本気で恋をしたこともある。
 メンバーが五人となってからは責任感が強くなり、サブリーダー格として活躍した。
 スケートボードが大得意。武器は「ライオンパンチ」と「ライオンバズーカ」。

○岬めぐみ=ブルードルフィン(超獣戦隊ライブマン)
 科学アカデミアに在籍していた天宮勇介の学友で、心優しいメンバーの紅一点。
 最下位争いをしていた勇介、丈とは異なり成績優秀でしっかり者な性格で、
 おっちょこちょいで呑気な男二人を特訓でビシビシしごくまとめ役である。
 水泳と縄跳びが得意で自転車ロードレースの選手でもある。
 武器はアーチェリーの弓矢「ドルフィンアロー」。
 
○コロン(超獣戦隊ライブマン)
 科学アカデミア校長であり、ライブマンスーツやライブロボを開発した星博士に
 よって造られた女性型サポートロイド。博士亡き後、ライブマンの司令塔として
 海底移動要塞グラントータス内から指示や事件の分析結果を送っている。
 自らも積極的に行動してライブマンを支援し、マシンの運転やロボの操縦もこなす。
 人なつっこく、人間の年頃の女性らしい心や温かい感情も持ち合わせており、
 かつての学友達と悲壮な覚悟で戦うライブマンにとって心の拠り所とも言える存在。

△毒島嵐=ドクターアシュラ(超獣戦隊ライブマン)
 ゴロツキ達に恐れられる暗黒街のボスだったが、頭脳獣すら力で捻じ伏せ
 従わせる人間離れした強さを大教授ビアスに見込まれ、ビアスの教育によって
 能力が開眼、ボルトの新幹部ドクターアシュラとなる。実はケンプらの当て馬
 としてビアスに人工的に生み出された偽の天才であり、同じく偽の記憶を
 刷り込まれて散ったブッチーらの最期を見て反旗を翻した。その強さとタフさで
 ビアスに抵抗、最後はバトルズノーを道連れに壮絶な爆死を遂げた。

△アシュラ三人衆シュラー(超獣戦隊ライブマン)
 ドクターアシュラが分身システム「サイバー分身」で生み出した戦士達。
 頭はたてがみを生やし、白い仮面を付けている。三位一体の連携攻撃で
 ライブマンを苦しめたが、レッドファルコンのファルコンブレイクで全員倒された。


『集結!命のヒーロー』

作者・シャドームーン

263 

***喫茶アミーゴ&立花レーシング***


「喫茶アミーゴ&立花レーシング」に、数限り無い悪の軍団から
人知れず平和を守って来た戦士達が集合していた――――
仮面ライダー。
宇宙刑事。
超人機メタルダー。
超獣戦隊ライブマン。

彼らは互いに固く握手を交わし、今後の協力体制を
誓い合うのであった。久しぶりに“息子達”全員と会い、
立花藤兵衛の喜びようは言うまでもない。

藤兵衛「バカもんが~…お前ら、たまには連絡の一つも
 よこさんか…猛…隼人…志郎…丈二…敬介…アマゾン!
 ハハハハハ、まあ元気そうで良かったわい…;;」
猛「おやっさん、すまんです…!」
隼人「へへ…俺は時々写真は送ってたろ?」
志郎「日本に来たら一番に飛んで来ようと思ってましたよ」
丈二「俺も声をかけてくれたらすぐ飛んで来ますよ」
敬介「早くおやっさんに会いたくてね」
大介「俺は呼ばれないかな?」
茂「何だよぉ~俺には会えて感動しないのかい」

などと冗談と涙声を交えて再会を喜ぶ彼らであった。
それが一通り済むと、藤兵衛と面識がない、
筑波洋・沖一也・村雨良・南光太郎が挨拶をする。

洋「あなたが立花さんですか!」
一也「お会いできて嬉しいです!」
良「先輩方のおかげで、俺は復讐を捨て生きる希望が
 持てました。その先輩達から父のように慕われていた
 という立花藤兵衛さん…いつかお会いしたいと思ってました」
藤兵衛「ハハハ、よしてくれ。ワシはそんな大したことは
 しとらんよ。そうか…茂達の後にもこんなに頼もしい
 仮面ライダー達が続いてくれとったとは…
 ワシも歳を取るはずだなあワハハハ。だが光太郎クン、
 君の活躍はチラリとだが見せてもらったことがあるよ」
光太郎「えっ!?」
藤兵衛「ほら、日本が一時的にあのゴルゴムに占領された時だよ。
 人々が我先に海外へ脱出して行く中、見捨てられた人達を守り
 恐ろしい怪人共にたった一人立ち向かう、ワシも見た事のない
 黒いライダー……やっとこうして話せたね」
光太郎「そうだったんですか……光栄です…!」
藤兵衛「それから、君にも後輩ができそうだぞ。なあ耕司クン」
耕司「瀬川耕司、仮面ライダーJです。自分の他に11人も
 先輩方がいたなんて…とても驚きました」
良「そうだろうなぁ……」
猛「そうか君も…耕司君、我々に力を貸してくれないだろうか?」
耕司「もちろん喜んで! よろしくお願いします」

264 

ライダーチームの結束が固まったところで、藤兵衛は
剣流星に視線を向けた。

藤兵衛「舞ちゃんも八荒クンも、大切な人に会えて良かったね。
 彼が…剣流星クンかね?」
舞「はい♪ これも、皆さんのおかげですよ」
流星「剣流星です。ライダーの皆さんにはお世話になりました!」
丈二「そうだ、あれから新回路の調子は問題ないか?」
流星「ええ! ライ…いえ結城さん、本当にありがとう。
 三枝博士やジャンパーソンの皆はお元気ですか?」
志郎「ああ心配ない。君の今の様子を見たら、喜んでくれると思うよ」
流星「この後、会いに行こうと思ってます」
八荒「いや~皆さんにも見せたかったなあ、メタルダーの大活躍。
 バイオロンの奴ら、泡食って逃げ出しやがって!」
洋「へ~~それは見たかったなあ!」
茂「フ…俺はしっかり見せてもらったぜ」
藤兵衛「しかしどこから見ても生身の人間にしか見えんよ。
 古賀博士という方は、さぞ凄い天才だったんだろうなぁ…」

ライブマン達も話を聞きながらウンウンと頷いたが、
勇介と丈だけは首をかしげた。

勇介「古賀博士…??」
丈「誰だったかなぁ~~~っ…う~ん」
めぐみ「ったく、二人ともよくそれで科学アカデミアに入れたわね…。
 星博士の講義でも習ったでしょ!」
コロン「古賀博士の科学技術を平和に役立てて欲しいという
 願いは、星博士にも大きく影響を与えているのよ」
スプリンガー「ワンワン! そう、そこが一番大事なとこだぜ。
 どんなに優れたテクノロジーでも、天使が宿るか悪魔が
 宿るかはお前さん方人間の使い方次第なんだからな」
勇介&丈「うおっ犬が喋った!?」
流星「スプリンガーだ。僕と同じく古賀博士に造られた」
コロン「わあ、じゃあ私と同じなのね。私コロン。よろしくね」
スプリンガー「おうよろしくな。かわいいねーちゃん!」

265 

――と、ひとしきり地球側ヒーローの自己紹介が終わったところで、
本郷は沢村大らを紹介し、星間評議会のこと、銀河連邦警察の
コム長官が計画している地球・宇宙・過去未来の時空、果ては
多次元世界まで征服を目論むGショッカーに対抗できるヒーロー
チーム創設プランについて打ち明けた。

大「ということで…この計画の実現には、地球を守るたくさんの
 ヒーロー達の足並みがまず揃わないと不可能なんです」
丈「すっっっげぇぇぇ…想像を絶するチームだぜ!」
勇介「確かに…三輪防人というオッサンが極東支部長官に
 なってから、信頼できる人達が次々に辞任に追い込まれてる。
 俺達スーパー戦隊も横の連携を封じられてるのが現状だ」
本郷「フム…敵は今、我々地球人の中にいるというわけか…」
丈「でもな~横の連携と言ったって、俺達ライブマンに
 顔見知りのスーパー戦隊いたっけか?」
勇介「バカかお前は! こないだガオレンジャーの皆や
 選り抜きのドリーム戦隊でオルグの連中と戦ったろ!?」
丈「…その事件、俺呼ばれてないし」
めぐみ「私も!」
コロン「コロンも!」
勇介「あ…れ? そ、そうか…あの時はレッド
 だらけのオフだったしな~は、は…は。」
丈「何でレッドだけいつも得をするんだよコラ!」
めぐみ「そうよ。ずる~~い!」
アニー「ま、まあまあ。皆さん落ち着いて…」
志郎「君が宇宙刑事アランか。本郷さんから聞いてた
 通りの男前だな!」
アラン「風見さんですね。ウム、悪党から平和を守る
 いい男の顔は宇宙共通なんですね!」
藤兵衛「二人並ぶとまるでコピー人間が会話してる
 ようだな…ウウ~ム」

嵐「あーー……腹減ったーーーっ!!!!」

…シーン…

勇介「あ、毒島!」
丈「お前、なにちゃっかり混ざってるんだよ!」
嵐「カタいことは言っこなしだぜぇ。それより何か食うものねえか?
 俺りゃ、娑婆に戻ってから何も食ってねぇんだ」
藤兵衛「おお、こりゃうっかりしとった! 大事なお客さん達に
 コーヒーも出さずに失礼しましたな。食事もすぐ準備しよう」
コロン「私もお手伝いします♪」
藤兵衛「お、そうかい? それじゃあ頼もうかなハハハ!」
コロン「任してコロン!」
嵐「ありがてぇ! 恩にきるぜ、とっつぁん!」
勇介「お前…金は持ってるのか?」
嵐「ビタ一文ねえ! 貸してくれ!」
勇介「こいつは………」
めぐみ「行くとこないのね、この人…」

266 

空腹のミーティングはどうしても刺々しくなるということで、
皆はまずは食事をしてから話し合いを進めることにした。

コロン「はい。スプリンガーちゃんにも」
スプリンガー「いや~気が利くねえ。あんたいい嫁さんに
 なれるぜきっと」
コロン「エヘヘ…そんなぁ~☆」
八荒「ロボ犬がロボ娘にお世辞言ってるよ…シュールだなぁ」
流星「スプリンガーは僕以外の友達ができて喜んでいる、
 良かった!」
光太郎「……………」

南光太郎は、あの日二度と会えない親しい人達に永遠の
別れを告げたこの場所に、今はこれだけ多くの明るい声が
響いていることに感慨深いものを感じていた―――
そしてまた、瀬川耕司から聞いたシャドームーンの事を……
親友・秋月信彦が共に写真の中で笑っていたあの頃に、
思いを馳せずにはいられなかった。

光太郎「(どうしてるかな、杏子ちゃんと克美さん…)」
耕司「光太郎さん、少しいいですか?」
光太郎「やあ耕司君。かまわないよ、ちょっと考え事を
 してただけだから……」
耕司「さっき話してない事がまだあるんです。
 シャドームーンは…フォッグマザーに捕まった、
 女の子を助けに来たんです」
光太郎「信彦がッ!?」
耕司「ええ。だからきっと…彼の中には今も、信彦さんの
 心が何処かに残っているはずです。自分にはいくつもの
 記憶があり、何が本当の自分なのか探していると……
 俺が出会ったシャドームーンはそう、言っていましたよ」
光太郎「そうか…あいつが…」

希望はある。かつて、シャドームーンは妹杏子を殺せなかった。
記憶を無くした後も、炎の中から子供を救い出した。
光太郎の心の中に、悪夢のような対決の記憶にある
シャドームーンではなく、信彦としてのシャドムーンに
会えるのではないかという微かな期待の灯が宿っていた。

267 

勇介「そういや丈…お前えらく元気に動いてるが、
 足の怪我はもう良くなったのか?」
めぐみ「あ! そういえばすっかり忘れてたわ…
 丈、あなたはまだあんなには戦えないはずよ!」

そうなのである。三日前、公園で少年達にスケードボードの
乗り方を教授していた際、調子に乗り過ぎた丈は高所から
ジャンプして着地に失敗し、足に大怪我を負っていたのだ。

丈「いやそれがさ~ある先生に診て貰ったら何と!
 この通り、一瞬で全開しちゃったんだよ」
勇介「大事な用があったとか言ってたのはそれか?
 しかしあの怪我がそんなすぐ治るはずは…」
丈「それがあるんだよ。今評判の、『ハニー治療センター』
 に行けば、そこの先生に触れてもらっただけでどんな
 病気も怪我も治っちまうんだぜ! 最初は俺も嘘くせー
 と思ってたんだがな~実際良くしてもらったし感謝しなきゃあ!」
大「ハニー治療センターだって!!?」

突然、沢村大が血相を変えて立ち上がり、皆振り向いた。
アニーも驚いて丈に駆け寄る。

アニー「そこに行ったんですか!?」
丈「そ…そうだけど。あれ? 俺何か気に障る事言ったかな?」
大「アニー、そこは確か……」
アニー「ええ! ギャバン隊長が地球で戦ったマクーのミツバチダブラー
 が人間に化けて開いてたセンターと同じ名前だわ!」
丈「な、なんだってーーーーっ!?」

○天宮勇介/レッドファルコン→アミーゴでシャイダーや仮面ライダー達、
 メタルダー達と邂逅を果たし協力を誓う。
○大原丈/イエローライオン→アミーゴでシャイダーや仮面ライダー達、
 メタルダー達と邂逅を果たし協力を誓う。
○岬めぐみ/ブルードルフィン→アミーゴでシャイダーや仮面ライダー達、
 メタルダー達と邂逅を果たし協力を誓う。
○本郷猛/ライダー1号→帰国した後輩ライダー達をまとめアミーゴに来る。
○一文字隼人/ライダー2号→本郷と一緒に他のライダー達を連れてアミーゴに来る。
○風見志郎/ライダーV3→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○結城丈二/ライダーマン→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○神敬介/ライダーX→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○山本大介/ライダーアマゾン→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○城茂/ライダーストロンガー→剣流星らと一緒にアミーゴに来る。
○筑波洋/スカイライダー→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○沖一也/ライダースーパー1→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○村雨良/ライダーZX→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○南光太郎/ライダーBLACKRX→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○瀬川耕司/ライダーJ→アミーゴで11人ライダーに合流。
○沢村大/シャイダー→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○アニー→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○アラン→本郷、一文字と一緒にアミーゴに来る。
○剣流星/メタルダー→城茂と一緒にアミーゴに来る。
○スプリンガー→城茂、剣流星と一緒にアミーゴに来る。
○北八荒→城茂、剣流星と一緒にアミーゴに来る。
○仰木舞→城茂、剣流星と一緒にアミーゴに来る。

268 

【今回の新規登場】
○沖一也=仮面ライダースーパー1(仮面ライダースーパー1)
 惑星開発用改造人間S-1の被験者に、自ら志願した9人目のライダー。
 B-52暗黒星団から来た帝王テラーマクロが率いるドグマ、悪魔元帥が
 率いるジンドグマの二大組織から、谷源次郎や玄海和尚、ジュニア
 少年ライダー隊らの支えを受けて地球を守り抜いた。ファイブハンドを
 駆使して臨機応変に戦える他、赤心少林拳の奥義の数々を体得している。
 チェックマシーンを備える基地に、ブルーバージョン・Vジェットという二大マシンを
 持つリッチなライダー。ジンドグマ壊滅後は惑星開発用改造人間としての
 本来の任務を果たすべく、宇宙ステーションへ旅立つ。

○村雨良=仮面ライダーZX(10号誕生!仮面ライダー全員集合)
 姉と共に秘密結社バダンに捕らえられ、パーフェクトサイボーグへと改造された男。
 事故により消されていた自我を取り戻し脱走、初めはバダンへの復讐を誓い、
 9人ライダーと敵対するが彼らの境遇を知りV3に諭され、仮面ライダー10号となる。
 肉体の99パーセントが機械化されたボディには衝撃集中爆弾、電磁ナイフなど
 様々な武器を内蔵。忍者ライダーの異名を持つ。
 三影英介=タイガーロイドとはバダンにいた頃良きライバルで親友でもあった。


『第二次スーパーハニー作戦!』

作者・シャドームーン

269 

***喫茶アミーゴ&立花レーシング***


大原丈が治療を受けたという『ハニー治療センター』。
シャイダー・沢村大は、その場所を丈から聞くと共に、過去にギャバンが
戦ったマクーの恐るべき「ハニー作戦」について詳しく語って聞かせた。

丈「ま、まさかぁ~。たまたまセンターが同じ名前なんじゃ…」
アニー「じゃあその先生のお名前は何と言ってましたか?」
丈「ハニー萬田先生だよ」
大&アニー「――間違いないっ!!」

騒然となる一同。勇介が丈の胸倉を掴んで怒り出した。

勇介「このバカっ! 何で怪しいと思わないんだよ!」
丈「い、いやそんなこと言われたって…」
めぐみ「治療って…一体、何をされたの!?」
丈「だから、痛む足をそっと触ってもらっただけだよ。
 それだけでこの通り全く痛みが消えちまったんだぜ」
アニー「丈さん…貴方の体の中には、ミツバチダブラーの毒が
 注入されているんですよ!」
丈「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
大「ミツバチ毒で痛みは麻痺して止まる…奴らはそうやって
 ミツバチ中毒患者を増やし、意のままに操ろうとしたんです」
アニー「早く解毒しましょう! 幸い、私の医療キットには過去の
 様々な戦いで敵が用いた毒物に対する解毒薬が揃ってますから…
 え~とこれはドクジャモンスターの毒用で…」
勇介「それで、そのハニー何とかいう偽医者は他に何か
 お前に言わなかったのか?」
丈「う~ん…ああ、そうだ…確か………」

<丈の脳内に反復する謎の声>

???『(いいかいボウヤ…沢村大だ。宇宙刑事シャイダーを殺すのだ…
 お前ならできる…期待しているよ…アハハ、アハーハハハハハ…)』

丈「沢村大。宇宙刑事シャイダーを…殺す!!!」
めぐみ「丈!?」

突然、丈は狂気の顔に豹変してツインブレスの電送操作で
ライブラスターを手に取り、大に銃口を向ける。

勇介「よせ――っ!」

ドギュ――ウンッ!

間一髪、勇介が丈の腕を掴んで銃口を下げ、ブラスターは
アミーゴの床板を撃ち抜く。尚も暴れる彼を、本郷達も加わって
押さえつけるが丈は恐ろしい形相で大を睨みつけている…。

丈「うおーっ…沢村大を殺す、シャイダーを殺すゥゥゥゥッ」
大「アニー、早く解毒薬を注射するんだ!」
アニー「オーケー!」

何とか数人がかりで押さえ込んだ丈の首元に、アニーが解毒薬を
銃型の医療用注射器で注入した。ほどなく丈は憑き物が落ちた
かのように抵抗を止め、力なく椅子にうな垂れた。

丈「…………」
アニー「もう大丈夫。即効性ですから数分すれば元気になります」
勇介「やれやれ、手間かけさせやがって…」

270 

ミツバチダブラーの毒針の餌食にされているであろう人々を救出するべく、
シャイダー、アニー、アランの宇宙刑事チームはハニー治療センターへ
向かうこととなった。ライブマン達はあのケンプがこのまま引き下がるとは
思えないため、アミーゴを守ることを兼ねて待機すると申し出る。

勇介「剣史…ケンプの性格からして、必ず何か仕掛けて来る。
 俺達はおやっさんとこの街の人達を全力で守るよ」
めぐみ「そうね。プライドが服を着て歩いてるような男だし…」
コロン「鉄也と純一からも、バイソンライナーとサイファイヤーの
 調整が終わったからすぐこちらに来ると通信があったわ!」

後を彼らに任せ、沢村大はアニー達を愛用のジープに乗せて
事件現場に急行するべくアミーゴを出発した。
この様子を、電柱の影に潜んで見送った人間がいた…
その女は、通信機に向かって彼らの行動を報せる。

秘書K「こちらK…“鳩は飛んだ”」

そしてライダーチームは――――…

ユリ子の声『茂…茂……お願い、助けて…』

茂「ユリ子っ!?」
藤兵衛「何…茂、急にどうしたんだ」
茂「…これはタックルからの交信だ! ユリ子が近くに来ている…!」
藤兵衛「お、おい茂!」

店を飛び出る城茂。只ならぬ様子に、本郷達も後を追う。
辺りを見回す茂…そして、通りを挟んだ公園の向こうに
苦しそうに壁に寄りかかっている岬ユリ子を見つけた。

茂「ユリ子! 大丈夫か…俺だ、今行ってやる」

力なくその場へ倒れそうになる岬ユリ子の姿に、あの日ドクターケイトを
道連れにウルトラサイクロンを使い、儚く散ったタックルの姿が重なる。
茂は思わず駆け出していた……
 
今度こそ、彼女との約束を叶えてやるために。
二度と彼女の手を離さないために。
青春の全てを悪との戦いに捧げた若い男女二人の、
擦れ違い続けた想いと心が後少しというところで重なろうとしている――

――ガァンッ!!――
 
茂「ぐわぁっ!」

だが、彼が伸ばした手は…彼女に届くことなく遮られた。
突然立ちはだかった銀色のマシーンが、無慈悲なる鋼鉄の鉤爪を
振りかざし、茂は払い除けるように叩き伏せられてしまう。

茂「ぐは…っ…貴様、Gショッカーか!」
シュバリアン「我こそは、クライシス帝国最強の戦士シュバリアン!」
光太郎「城先輩! クライシス…新しい怪魔ロボットか!」
茂「下がってな光太郎…こいつは、俺がやる」
光太郎「城先輩…」

茂は猛らず吼えず、ただ静かなる闘志の現れを抑揚の無い声で
喋り黒いグローブを脱いで怪魔ロボットを睨んだ。

茂「よう…クズ鉄野郎。どきな、今俺の邪魔をしやがると、
 黒コゲのスクラップ程度じゃあすまねぇぜ」
シュバリアン「ほざくな虫ケラ! 貴様如き、俺の敵ではないわ」
茂「へぇ…そうかい。クク…じゃあさっさとてめぇを鉄クズに
 バラして進むだけだ。変ンン身ッストロンガー!!」

271 
                                    //       n,,
                                     l >       //
   ,、                       /l        // ,-,      ゝ/
   ヾヽ, ,、                  //        /´ /_   / /
   ,、ヽ:.ヽl:/                  //         `/∧////
    ヽ:.:.:.:.:/                _ // ,、     /、/´´ ´     _ヽ,
、lヽ,ヽ:.:.:.:.:.:.ヽ,        __    _  ヽ´.ヽ//   /`´ /ヽヽ/ /`-´ ̄´,´ヽ,
ヽ:.:.:.:ヽl:.:.:.:.:.:/´ (,、     ,ノヽ_   ヽl_  `´ l l  `´. /l / _, -´  ´ /   ヽ
l:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.ゝ  ヽ ´(___/ /,-,ヽ   ヽ、 , l>ヽ/l /  _,-´      / ll _/ ´
l:.:.:.:.:.:.:.l:.:.:../ _ -,ヽ 、ヽ 、,´ <       ヽ l/l l> _,- ´     _,-´ > llヽ、_,,
l:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.l///´;,;,;ヽ、 l./;,;,;ヽ       _,... -ヽ、     _,-´/ _// /`V
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..ヽ;:;:;:;:;:;:;l;.;.;.;.;.;/ /;.;.;.;./:;:;:;:;/-`‐´  ノ:;:;l;.;.;.;/ >   /
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     `ヽ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;l、  ヽ, ;:;:;:;::;:;:;//     /    /
      ヽ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;l ヽ、  l:;:;:;:;:;:_l ,ノ    /   /
        ヽ、;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.ヽ ヽ、l` ̄´ l〈     //
「天が呼ぶ…地が呼ぶ…人が呼ぶ…悪を倒せと俺を呼ぶ…………… 
聞け悪人ども…俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!!」

屈強なカブテクターに身を包み、白いマフラーを靡かせて名乗りの口上を
上げるストロンガー。赤いカブトショックから迸る電光の凄まじさが、
タックルとの再会を遮る怪魔戦士への怒りと気迫を物語っている。

八荒「すす、すげぇ……あれが、茂さんの…」
シュバリアン「貴様が仮面ライダー7号・ストロンガーか!
 このシュバリアンの初陣を飾る相手に不足はない、いくぞッ!!」
 
ガテゾーン「待て、シュバリアン!」

構えるストロンガーに挑みかかろうとするシュバリアンに、待ったをかける
怪魔ロボット大隊長。公園の滑り台の上に立っていた彼は、華麗な
宙返りを披露するとユリ子の傍に着地して抱きかかえた。

光太郎「ガテゾーン!」
ストロンガー「ユリ子! …貴様…!」
シュバリアン「ガテゾーン様、何故止めるのですか?」
ガテゾーン「はりきるのは結構だがな…誰が今戦えと言った!?
 勝手な真似は許さん。お前の前身がどうなったか、憶えているだろう!」
シュバリアン「グウウウ~~そ…それは…」
ガテゾーン「宴の舞台は此処じゃねえ。早く行って持ち場に付け!」
シュバリアン「ご、御命令通りに致します…」
 
少し残念そうな面持ちで、すごすごと引き揚げるシュバリアン。
そんな部下の様子を、遠い日に思いを馳せ見送るガテゾーンであった。

272 

ガテゾーン「(フー…改良はしたんだがな)」
ストロンガー「クライシス、あの女をどうするつもりだ!?」
ガテゾーン「フッ…まぁ見ての通りだ。タックルはもう俺のものさ」
ストロンガー「何ィ…ッ!」
ガテゾーン「ハハハハ、悔しいかストロンガー。この女を取り返し
 たければ、“地獄谷”へ来い。RXと他の9人ライダーもな!
 それからメタルダー、貴様も必ず一緒に来るんだ……
 派手に歓迎してやるぜフフフ。いいか、必ず今行った全員で来い。
 来なければ、タックルの命は…クックックック、待ってるぜ!!」

そう告げると同時に、ガテゾーンはユリ子と一緒に姿を消した。

舞「流星さん…」
流星「分かってる。僕に来いと言ったということは、おそらくネロス帝国も
 奴らと一緒に待ち受けているはずだ」
スプリンガー「罠だ! きっと半端じゃない敵が待ち伏せしてるぞ」
流星「…それも分かってる。だけど僕が今、こうして元の剣流星として
 舞さん達に会えたのはライダーの皆のおかげだ。ライダーストロンガー、
 僕にも君の大切な人を救う手伝いをさせて欲しい!」
ストロンガー「流星、お前……」
 
笑顔で頷き、ストロンガーの白いグローブを手に取る剣流星。
本郷猛を始めとする他の10人ライダー達も決意は同じであった。
決死の戦いに望もうとする彼らを、立花藤兵衛は何度見送ったことだろう。
しかしそんな藤兵衛だからこそ、強く信じていた…彼らは必ず勝つと。
 
耕司「先輩、俺も一緒に行きます!」
猛「耕司君…君には俺達にはない、改造人間以上の神秘的な
 力がある。その力で彼らと力を合わせて街を守って欲しい。
 幸い奴らは君を含めた人数で来いとは指定して来なかった…
 君が我々の12番目の仲間だとは気づかれていないようだ」
耕司「しかし…!!」
猛「そう…――忘れるな、君も“仮面ライダー”なんだ!」
耕司「!!」
猛「俺の悪い予感はよく当たるんだ。とてつもない、大きな悪が
 街に迫ろうとしている…その時、君の力が必ず必要になる。
 もし俺達が戻らなければ…君が仮面ライダー1号となり、
 この世界を守り抜いてくれ。頼んだぞ!!」
勇介「まさか、ボルトが東京に総攻撃を…!?」
耕司「本郷先輩…。分かりました、俺は俺のできる使命を果たします!」

力強く頷く耕司。彼は、歴戦の11人ライダー全員と剣流星と固く握手を
交わし、彼らの無事を祈り全力でその意志を継ぐことを誓うのであった。
勇介、めぐみ、意識を取り戻した丈もその手を上に重ねて誓う。

舞と八荒は流星と共に行きたい気持ちで一杯だったが、それでは必ず
足手まといになることは自覚しているので必死に堪えている。
二人の辛そうな顔は、藤兵衛の心中にとっても同じ思いである。

流星「舞さん、そんな悲しそうな顔をしないで…僕は必ず戻る!」
舞「うん…絶対、絶対に勝ってねメタルダー…」

273 

猛「ライダー…変身ッ」
隼人「…変身!」
志郎「むぅんっ…変身、ブィスリャー!」
丈二「ヤァー!」
敬介「大・変・身!」
大介「アーマーゾーン!」
洋「スカァーイッ 変身!」
一也「いくぞッ …変身!」
良「変~身ッ…ゼークーロースー!」
光太郎「変…身!」
流星「――怒る!」

      - =:  ̄`l - 、
   , ´:[|:l: 三| |二ニ| ヽ
   / =]└`|三 | |二二|  ヽ
 ┌| |;L :=[: 0:;|└─┘   |┐
 │|ノ ̄ ̄ ̄ ̄`´ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |
 |>ヽ二二ニヽ  /ニ二二ノ //
  || |:I/[:7| l  | |      / /
  ヽl =\]/ ┌┴┴┐  l / /               へ
   ヽ]: .|.  | -─- |  | /_/              /  / `ヽ-、
    └l:ヽ.  L  ̄ _」 /ノ、/             γ/  /  /  ヽ 
    | \  , - 、_/ |         __  ヽ(_ノ ヽ ノ / ̄ `l
    | ̄ ̄l ̄ ̄ヽ、 , -  ̄`/ ̄ 二/l ̄ ̄    ヽ  `l   ` ヽノ~ |
  ̄ノ| ̄|─┴──/´  / |ミノ/  l l        ヽ .\     l .|
 / ヽ |     /  /  |⌒l ヽ、_/        ` 、 ヽ`ニニ || ノ
 >__l \|___/__/   |⌒|  l  ヽ /二二ヽ /ニニ/、「`ヽ---- '〕

―――カアアア―――アアア―――…

毒島「おほっ…こりゃあ壮観だねぇ。滅多に見れるもんじゃねぇな」

藤兵衛、舞、八荒、耕司、ライブマン達とコロン&スプリンガーの見守る前で、
「変身」及び「瞬転」を遂げズラリ勢ぞろいした12人の“夢の戦士”達。

274 

八荒「皆さん頑張って下さい! あの、タックルさんという女性ライダーを
 必ず助けてあげて下さいよぉ~~っ!」
ストロンガー「いや、あいつは違う……」
八荒「え…?」

/ ̄ヽ           ,イ_   _ト、        / ̄ヽ
    |   .,、__      /:_: ,ニニニ: ; ト、         |
 た |.  `:、_ト、     ~ /:::~`v'´::ヽ         | 岬
 だ |.     ヽ_ゞ=、_ ! : :::::||:::::::::!       .| ユ
 の |.        ゝ、ト,-、,‐--‐'三゛': ⌒ィヽ_      | リ
 女 |.       ,-‐‐( ,〉'イ,ス/ソ : : :ト,. /:.:ヽ    | 子
 だ |         ゝ`イ/ ノ:ж: : ;.-‐':::::::;`i'´    | は
    |.       / j´/,.イ、.ノ:ト、;/:::::::::,:;;::::〈    |. も
ヽ_ノ      ノ ン'イλ::::: |.:.|.:.|::::::::::Λ:li::ヘ     |. う
       γイ,!'∥:/ ヽ:::::|:.:|:.:|:::::::::Y ゝll:;Λ    |
       iノ ./∥/  ト'::|:.:|:.:|::::::::::l  'i:ll::::!、  ヽ_ノ
        .イ:::||:t  ィ l二コ爪k二l目 |:l|:::::ト
        ド-‐イ  〉ー:j:.:.:.:ト:::;::::ハ ヾー-' |
        .|  /.  ├‐7""""勹―イ .ゝ  .|
        .ト、_,ィ    |::::||::::::;;;:::::||:::::::|   〉-イ
        l ,.-‐、   .|::::||::::::/l::::::||::::::| ./rイ、)
        ゞl.!!-´   |:::||::::::l .|::::::||:::::| .`ー彡'

ストロンガー「カブトロー!」
 
愛車に飛び乗り、一番に発進して行くライダーストロンガー。
続いて他のライダー達もマシンに跨り疾走を始める。
この世に悪のある限り。守るべき者がいる限り。
永久に絶えることのない、エンジンの咆哮が次々と唸りを上げた。

―――ブォンッ!!! ウオオオオオオオオン――ッ
 
メタルダー「サイドファントムー!」

メタルダーもサイドカーマシンに乗り込み、ライダーチームに続いて発進する。
彼らを地獄谷で待ち受けるクライシス帝国とネロス帝国もまた、
Gショッカーでの威信をかけた総力戦を挑んで来るだろう。
そして、ハニー作戦を再び仕掛けて来た宇宙犯罪組織の罠とは!?

―――こいつはスゴイぜッ!

275 

○天宮勇介/レッドファルコン→アミーゴで待機している。
○大原丈/イエローライオン→ハニー萬田に操られシャイダーを襲う。
 解毒薬で無事正気に戻り、アミーゴで待機している。
○岬めぐみ/ブルードルフィン→アミーゴで待機している。
○本郷猛/ライダー1号→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○一文字隼人/ライダー2号→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○風見志郎/ライダーV3→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○結城丈二/ライダーマン→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○神敬介/ライダーX→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○山本大介/ライダーアマゾン→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○城茂/ライダーストロンガー→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○筑波洋/スカイライダー→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○沖一也/ライダースーパー1→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○村雨良/ライダーZX→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○南光太郎/ライダーBLACKRX→タックルを救うべく地獄谷へ向かう。
○瀬川耕司/ライダーJ→アミーゴでライブマンと共に待機している。
○沢村大/シャイダー→ハニー治療センターへ向かう。
○アニー→ハニー治療センターへ向かう。
○アラン→ハニー治療センターへ向かう。
○剣流星/メタルダー→タックルを救うべく11人ライダーと地獄谷へ向かう。
○スプリンガー→アミーゴに残る
○北八荒→アミーゴに残る
○仰木舞→アミーゴに残る

●ガテゾーン→地獄谷で11人ライダーとメタルダーを待つと宣戦布告。
●秘書K→宇宙刑事チームの行動を何処かに報告。
●シュバリアン→ストロンガーと戦闘になりかけるが、ガテゾーンに抜け駆けを
  咎められ、渋々地獄谷の自らの持ち場へ戻る。 


『三大魔王の首!』

作者・シャドームーン

276 

***ハニー治療センター***


今、巷で評判の陽気に踊って病気を治す『ハニー治療センター』。
数年前突然閉鎖となり、残念がる人が多かったがこの度めでたく
再開されたということで、たくさんの人がレッスンに訪れていた。

ハニー萬田「さああ~~~踊って踊って~~!
 踊ればこの世は天国!!щ(゜Д゜щ)イエイ
 どんな病も治しちまうよ、ダンシィィン~~グ!!!ヽ(゜∀゜)ノ」


*・゜゜・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゜・*:.。..。.:*・゜゜・*フィーバー ダンシィング!!!!!


軽快でリズミカルな音楽が流れる部屋で、女性インストラクター
二人の中心で踊りまくる、レオタード姿のハニー萬田。
彼女が軽く患部に触れるだけで、松葉杖をつく男性はウソのように
軽快に踊り出し、包帯を腕に巻いた女性はたちまちのうちに包帯を
放り投げて飛び跳ねる。

暗い顔をしたサラリーマン風の中高年も、悩み多き年頃の若者も、
世代を問わずここに来た人間は例外なく見違えるように
明るい顔をして帰って行くのだった。

小次郎「いや~~さっすがハニー萬田先生だべなあ~」
大五郎「うむうむお見事! 我輩も、発明で得た財産の全てを
 ハニー先生に寄付して医療に貢献したくなったぞ美和!」
美和「――ちょっとお兄ちゃんっ! な~にが寄付ですか……
 売れない発明ばっかりのくせに。うちには財産なんてありません!」
大五郎「あうう…。そ、そーだったか(´・ω・`)」
小次郎「なになに、何も金品だけが寄付じゃなかっぺよ?
 我々のこの健康な肉体! これこそ役立てるべきものだあ」
大五郎「おお、仰る通り。妹よ、我輩は今日からハニー先生の
 助手をめざして踊りの練習に励むぞお~~っ!」
美和「もー……勝手にしなさい!」

カチャッ―キィ…

ドアを開けてセンター受付の女性が入って来た。
その女は踊っているハニー萬田に近付きそっと耳打ちする…

受付嬢「(…奴らがすぐ近くに来てるわ)」
ハニー萬田「……… ( ̄ー ̄)ニヤリ 」
 
パン、パン、

音楽が止まり、女性インストラクター二人が手を叩いて休憩を告げる。
 
インストラクター「はあ~い皆さん、お疲れ様でしたー。
 先生はしばらく休憩に入りますので、リラックスして体をよく
 ほぐしておいて下さいねー!」
患者一同「ありがとうございました~~!」
ハニー萬田「それじゃ、後はよろしくね」
闘破「はい!先生」

タオルで汗を拭きながら、ハニー萬田はインストラクターを連れて退室した。
代わりに指名されたのは、武道着を着て部屋の隅のほうに座っていた
精悍な若者。二週間ほど前から踊りの合間に柔軟や健康体操を
指導するアルバイトに来ている青年である。
履歴書の特技欄に「古武術の心得あり」と書いていたのが採用の
切欠となったという。青年―山地闘破は凛とした物腰と誰に対しても
丁寧で優しい指導の仕方から、すぐに患者達の人気者となり、
この頃は時々ハニー萬田の代理で回復した人に踊りの指導も務めていた。

277 

小次郎「やあやあ闘ちゃん。すっかり先生の助手が板に付いてるね」
闘破「あはは、いえ小次郎さん。俺なんかまだまだ未熟者ですよ!
 (…やっぱりヘンリー楽珍に似てるよなあ、この人)」
美和「山地さんて謙虚で逞しいのね~。流石、文武両道の殿方は
 違うわあ~。それに比べて、うちの発明バカ兄ときたら…」
大五郎「んっ? 何か言ったか、美和( ´∀`)」
美和「これだもん…はぁ~」
闘破「(ふう…このバイトが終わったら夕飯の買い物、
 帰ったら洗濯のアイロンがけかよ…。たくケイのやつ、
 女のくせに家事をみんな俺一人に押し付けるんだもんな。
 兄貴を何だと思ってんだ、あの性格ブス…)ブツブツ」


◇    ◇


キキィ――ッ!
 
ハニー治療センターの前に停車する、沢村大のジープ。
宇宙刑事三人は用心しながら建物に足を踏み入れる。

大「何があるか分からない、アニーは外で待機していてくれ」
アラン「そうだな。全員が罠に落ちるのは避けなきゃならん」
アニー「オーケー。気をつけて…」

アニーはジープに戻り、大とアランの二人が入り口の自動ドアを潜る。
入ってすぐ見える、受付の女性が笑顔で出迎えてくれたが…?

受付嬢「ようこそ、お待ちしておりました。宇宙刑事…シャイダー様!」
アラン「貴様、マクーの…!?」

ダブルガール「ヒ~ヒッヒッヒッヒッヒ」

受付嬢の顔は蟻のような顔をした異星人、ダブルガールに変わった!
その瞬間、建物内にハニー萬田の高笑いが響き渡った。

ハニー萬田「アハハハハ! よく来たねぇ~宇宙刑事ども。
 可哀想だけど、ここがお前達の墓場になるのさ。
 寂しくないように、この哀れな羊たちも付けてやるからね。
 ウフフフ、アーハハハハハハハハ…アハハハハ!」

大「そうはいくか、人々は返してもらうぞ!!」
アラン「ミツバチダブラー、姿を見せろ!!」

――が、二人の戦意を嘲笑うかのように、突然建物全体がまるで
蜃気楼のように歪み始め、周囲は見る見る異質な空間――
そう、ギャバン・シャリバン・シャイダーの三人を何度も苦しめて
来た魔の異次元空間に酷似した様相に変化して行く!

アラン「こ、これは魔空空間? それとも幻夢界…いや!」
大「この感覚は不思議時空に近いが…う、貴様たちは!!!」

すっかり変貌したハニー治療センターは、もはや何処が天井で床なのか
区別はつかず、二人は無重力空間に放り込まれたように方向感覚を
失って宙を漂う。そこへ、あの三大組織を支配する首領が……
マクー、マドー、フーマの魔王三人の巨顔が幻影化して迫って来た!

大帝王クビライの首「グァハハハ、久しいなシャイダー!」
魔王サイコの首「カカカ…オマエタチハ、モハヤワレラノシュチュウニオチタ…」
ドン・ホラーの首「もう何処へも逃げられはせん。未来永劫にな、グフフフ」

大「大帝王クビライ…!!」
アラン「く…ドン・ホラーに魔王サイコ!」
アニー「シャイダー、アラン!!」

只事ではない交信の様子に、アニーが救出に飛び込もうとするが――。

三大魔王「カオオオオオ――――ッ!!!!!!!」
アニー「きゃあーーっ…!?」

ホラー、サイコ、クビライの首だけの幻影は、一斉に一喝した。
途端に辺りは閃光に包まれ、アニーはその強烈な光に建物の外まで
吹き飛ばされてしまう。やがて光が小さくなり収まると……

アニー「こ…これは一体…シャイダー! アラーン!
 誰もいない…皆、どうなってしまったの!?」
 
アニーは建物内をくまなく捜索したが、すでにそこにはシャイダー達は
おろか誰一人残っておらず、蛻の殻のようになっていた。
つい今しがたまで、陽気な音楽が流れ人々が踊っていた教室とは
思えないほど、そこは廃墟のように閑散としている………
全てが蜃気楼の幻であったかのような『ハニー治療センター跡地』に
女宇宙刑事アニーだけが取り残されたのである。

やむなくアニーはバビロス号を呼び寄せ、ブリーフィングルームで
バード星のコム長官にアドバイスを求めることにした。

278 

***バビロス号ブリーフィングルーム***
 

コム長官「それはその建物に、異次元へ通じるサイコゾーンが
 仕掛けられていたに違いない」
アニー「でも、今まではシャイダーが不思議時空へ突入しても
 バビロスを通じて交信も援護もできたのに、今回はそれが
 全く応答がないんです長官!」
コム長官「君はドン・ホラーと魔王サイコ、大帝王クビライらの
 顔を一瞬だが目撃したと言ったな?」
アニー「はい。あれは間違いなく、彼らでした…」
コム長官「現時点で考えられることは一つ。あの三大魔王が、
 何らかの超能力を互いに増幅作用させることで、通常よりも
 非常に強力なサイコフィールドを作り上げ外部からの一切の
 出入りも干渉も遮断しているということだ…」
アニー「そんな…それでは、私は一体どうしたら…!!」
コム長官「落ち着きなさいアニー。実は宇宙でも、今地球に
 近い星にギャバン隊長とミミーがいる。ミミーは以前マドーに
 囚われた経験から、サイコゾーンを透視できる能力を本人の
 希望であれからずっとトレーニングによって高めていたんだ。
 ミミーならその建物に残留しているはずの強力なサイコフィールド
 を感知できるかもしれん。今、ギャバンと一緒に向かってもらった」
アニー「ギャバン隊長とミミーさんが? そうですか…!」

フーマとの苦しかった戦いの最中でも、遭遇したことのないピンチに
心が折れかけたアニーだったが、宇宙刑事ギャバンが救援に
駆けつけてくれると聞いてやや安堵した気持ちになった。

コム長官「ああそれから、ギャバン達に同行して君たち地球担当の
 新しい仲間が一緒に地球へ向かっている。彼らはきっと、これから
 非常に心強い味方となってくれるはずだ。よろしく頼むよ」
アニー「新しい地球担当…その人たちも宇宙刑事ですか?」
コム長官「正確には違う…彼らはまだバード星で正式に認可
 を受けたわけではないが、宇宙刑事の訓練がすでに不要な
 ほどの高い戦闘技術と装備を持っている。知っての通り、
 今はGショッカーに立ち向かえる同志が一人でも欠かせない
 緊急事態だ。彼らは苦戦している我々の援軍として共に
 戦い、力を貸してくれると約束してくれた。私が保証する」
アニー「そうですか…コム長官がそこまで仰るなら、きっととても
 頼もしい方たちなんでしょう」
コム長官「そうだとも。ふふふ…多分、君も会ったら驚くはずだ」
アニー「……?」

コム長官との通信を終え、アニーは「ハニー治療センター跡地」で
ギャバンとミミー、そしてまだ見ぬ新しい仲間の到着を待った。


***戸隠流忍法道場・武神館***


都内の分譲マンションの一室に、自宅兼道場を設けている人物がいた。
その男、戸隠流忍法第三十四代宗家・山地哲山。
今から数千年前、宇宙から地球に飛来した秘宝“パコ”を代々守り続けて
来た傑物である。この“パコ”を巡り、鬼忍毒斎が率いる妖魔一族や、
次々に来日する世界忍者たちとの激闘が終わり、
しばらくの月日が経っていた――――――

ガタッ… ガタガタガタ…

哲山「むう、磁光真空剣が……!?」

ある日、山地家の平穏を破る一つの物音。道場の鏡の中に隠されている
伝家の宝刀『磁光真空剣』が、主の危機を感じているのだ!

キィン キィン キィン


磁光真空剣――それは三百光年の彼方より飛来した宇宙物質を鍛えた
己の意志を持つ刀である。同じ宇宙物質で作られた鎧、『ジライヤスーツ』
の装着者である山地闘破の異変を報せる磁光真空剣は、
鏡から飛び出し何処かへ向かう。

ケイ「闘破に何かあったんだわ! …お父さん!」
哲山「うむ。追うぞ!」
ケイ「学、ジライヤスーツを出して!」
学「うん!」

学校から帰ったばかりの哲山の娘・山地ケイと息子・山地学は、
カバンを急いで投げ出し、ジライヤスーツとその強化プロテクターが
入っている木箱を背負うと磁光真空剣が飛ぶ方角を追って走った…。

279 

○沢村大/シャイダー→ドン・ホラー、魔王サイコ、大帝王クビライの超パワーに
  より脱出不可能な異次元空間へ閉じ込められてしまう。
○アラン→ドン・ホラー、魔王サイコ、大帝王クビライの超パワーに
  より脱出不可能な異次元空間へ閉じ込められてしまう。
○アニー→急遽一時的に地球へ来ることになったギャバンとミミーを待つ。
○コム長官→宇宙刑事ギャバンとミミー+??に救援要請を出す。
○山地闘破/磁雷矢→ハニー治療センターでバイト中、事件に巻き込まれる。
○山地哲山→闘破の危機を知り、磁光真空剣が飛んで行く後を追う。
○山地ケイ→闘破の危機を知り、磁光真空剣が飛んで行く後を追う。
○山地学→闘破の危機を知り、磁光真空剣が飛んで行く後を追う。
○大山小次郎→ハニー治療センターで事件に巻き込まれる。
○小山大五郎→ハニー治療センターで事件に巻き込まれる。
○小山美和→ハニー治療センターで事件に巻き込まれる。

●ハニー萬田/ミツバチダブラー→治療センター再開。宇宙刑事チームを罠に落す。
●ダブルガール→ハニー治療センターの受付係に変身していた。
●ドン・ホラー→魔王サイコ、大帝王クビライと結託して宇宙刑事抹殺を画策。
●魔王サイコ→ドン・ホラー、大帝王クビライと結託して宇宙刑事抹殺を画策。
●大帝王クビライ→魔王サイコ、ドン・ホラーと結託して宇宙刑事抹殺を画策。

280 

【今回の新規登場】
○山地闘破=磁雷矢(世界忍者戦ジライヤ)
 山地家に養子として引き取られ、長男として育てられた戸隠流正統忍者。
 秘宝パコを妖魔一族から守るため、山地家に代々伝わる特殊忍者服
 ジライヤスーツを装着し、レーザー刀・磁空真空剣で悪しき闇を斬る!
 実は2300年前にパコを地球に運んで来た宇宙人の子孫である。
 母親のいない山地家では家事全般をこなし、修行の合間には家計を助ける
 アルバイトまでこなす努力家。明るい好青年だ。

○山地哲山(世界忍者戦ジライヤ)
 戸隠流忍法三十四代宗家。パコを密かに守り続けていた人物で、
 闘破の義父。自宅兼用のマンション部屋に忍法道場・武神館を
 営んでいるが、入門者は少なく家計は苦しい。趣味は盆栽。
 養子である闘破にジライヤスーツを与え、パコを守ることを命じた。
 妖魔一族頭領・鬼忍毒斎とはかつて共に戸隠流を学んだ同門である。
 
○山地ケイ=姫忍・恵美破(世界忍者戦ジライヤ)
 山地哲山の実娘。忍法初段の腕前を持つ女子高校生。
 家事一切が苦手で義兄に押し付けるため闘破曰く「性格ブス」
 だが心の底では闘破を深く想っている。他人そっくりに化ける忍法
 “顔うつし”と敵を眠らせる忍法“花吹雪の術”が大得意。
 白い忍者スーツを装着してくノ一、姫忍・恵美破として戦う。
 
○山地学(世界忍者戦ジライヤ)
 山地家の末っ子で生意気盛りの小学三年生。忍法三級の腕前。
 まだまだ忍者としては半人前だがそう見られるのが本人は面白くない。
 義兄の闘破を本当の兄のように慕い、とても誇りに思っている。
 バイオロンと戦う機動刑事ジバンの助っ人に行ったことも。
 
○大山小次郎(宇宙刑事ギャバン、シャリバン、シャイダー)
 UFO専門のルポライターだったが、現在はペットショップモンキーの
 オーナーをしている。しかし宇宙人や超常現象に対する興味と
 好奇心は失われていない。地球へ来た宇宙刑事、宇宙犯罪
 組織双方と縁があるらしく度々事件に遭遇しては彼らと友人に
 なっていく。一条寺烈がギャバンではないかと一時期確信に近い
 感想を持っていたが特定には至らなかった。

○小山大五郎(時空戦士スピルバン)
 発明ショップ「エジソン」のオーナー。自称大天才で様々なメカを
 考案するが失敗のほうが多くいつも返品に悩まされている。
 地球へ来た城洋介、ダイアナと知り合い友人となった。
 デスゼロウ将軍の分析によれば「知能指数0で体力も子供並、
 超天才か単なるバカか…」ということらしい。
 
○小山美和(時空戦士スピルバン)
 大五郎の妹。兄の発明ショップを手伝っているが、さっぱり
 売れない発明ばかりの兄に半ば呆れつつもつきあっている。
 
●ハニー萬田=ミツバチダブラー(宇宙刑事ギャバン)
 マクーのダブルモンスター。人間体の女はハニー萬田と名乗り、
 配下のミツバチ人間をインストラクターに変身させた上で
 触れただけで病を治す「ハニー治療センター」を開き、毒を注入して
 人間の心を操り多額の寄付金を搾り取ろうと画策した。
 巨大化能力を持つ。闇女王同盟の重鎮たちにそっくりな容姿から、
 怪人でありながらヘドリアン女王や女王パンドラから目をかけられて
 おりGショッカーでも一目置かれている。

●ダブルガール(宇宙刑事ギャバン)
 獣星人ダブルマンの女性個体。人間への変身能力に長け、
 諜報・スパイ活動を行いダブルマンの作戦を補佐する。

●魔王サイコ(宇宙刑事シャリバン)
 超能力犯罪集団マドーの首領。二本の剣を持つ彫像のように
 幻夢城内に立ち、自分自身は一歩も動かないがその強大な
 超能力パワーで部下を威圧する。分身体であるサイコラーと
 命を分けており、どちらかが倒されても再生できる。
 しゃがれたような声を発する幻夢界に君臨する不死身の魔王。

●大帝王クビライ(宇宙刑事シャイダー)
 不思議界フーマを支配する超生命体の首領。不思議宮殿の壁面から
 覗いている巨大な顔で、口から不思議獣の卵を吐き出す。
 一万二千年前に地球のムー帝国を退廃させ支配していたが、
 戦士シャイダーによって首と胴を切り離され敗退。その胴体はイースター島
 にある遺跡に封印され、悠久の時を経て頭部と異なる意志を持った。


『神秘のファイター!蒸着・焼結・結晶』-1

作者・シャドームーン

281 

***異次元空間?***


大「ここは一体……」
アラン「…この異様な様からして、連中が得意な異次元世界に
 閉じ込められたのは間違いないだろうが、それにしては穏やか過ぎる」
大「確かに。コンバットスーツを着ていなくても、普通に行動できる
 みたいだ。…だからこそ、余計に不気味なんだ」
アラン「ウム、とにかく気をつけよう。まずは出口を探さんとな…
 尤も出口なんてものがここにあればの話だが…」

宇宙刑事たちがこれまで体験して来た、魔空空間とも幻夢界とも不思議時空
とも異質な感覚を持つ世界。三大魔王のサイコパワーでこの奇妙な空間に
放り込まれてしまった沢村大とアランは、警戒しながら先へ進んでいた。

広い広い世界であった。

霧のような薄靄が立ち込める空間がずっと続いたかと思えば、
オーロラに似た美しい帯状の光が幾つも現れては消え、
また現れる幻想的な空間が続く。

そしていつしか―――
彼らの頭上…空には見慣れた血のように赤く染まった雲が怪しく歪に
形を変えながら渦巻き、大地は荒涼とした岩場と砂地に覆われている
宇宙犯罪組織のホームグラウンド一色の景色となっていた。

アラン「ミツバチダブラー! いるのは分かっている、姿を見せろ!」
大「うわっ…!?」

            」」      」」       」」       」」
        __  |    __  |    __  |    __  |
              |          |          |          |   _|  _|  _|
        ___|    ___|    ___|    ___|


突然、砂漠に蜃気楼が現れるように二人の目の前に円形闘技場が出現した!
そのゲートから出て来たのは、大にとって忘れられぬあの強敵。

神官ポー「お久しぶりですねシャイダー。宇宙刑事アラン、貴方も歓迎致しますよ…
 Gショッカーコロシアムへようこそ皆さん」
大「…神官ポー!」
アラン「Gショッカーコロシアムだと!?」
神官ポー「そうです…すでに貴方たちが探している人間たちも、
 特等席にご招待しています。さあ、ご入場下さい…
 皆さん、お待ちかねですよ…フフフフフ」

そう言うと、神官ポーは幽霊のようにゲートの中へ退き消えてしまう。

アラン「…行くしかないようだな」

二人がやむなくゲートを潜ると、広い円形闘技場の中心広場をグルリと囲む
観戦席にズラリ着席した各組織の戦闘員たちが歓声を上げる。
マクーのクラッシャー、マドーのファイトロー、フーマのミラクラー。
加えてワーラーのキンクロン、さらにはショッカー骨戦闘員の姿まであった。

大「こ、小次郎さん!」
小次郎「………」
大五郎「………」
美和「………」

▼へんじがない。ただのしかばねのようだ。

一番前の“特等席”にいるのは、大山小次郎らハニー治療センターに来ていた
患者たちである。大が必死に呼びかけるが、彼らは全く反応を示さない…

大「やはり、皆ミツバチダブラーに…」
ハニー萬田「アハハハハ! そうさ、そいつらは全員あたしの針で
 かわいい下僕にしてやったからねぇ」

コロシアムによく響き渡る女の声。大とアランが顔を上げると、最も全体が見渡せ
豪華な天幕と座席がある、“VIP席”に、黒いフードを被ったハニー萬田が立っていた。
さらに彼女の横に、ハンターキラー・ガイラー将軍・ヘスラー指揮官の三人と
神官ポーが姿を現す。

ヘスラー指揮官「待っていたぞシャイダー!」
ガイラー将軍「シャリバンめがこの場におらぬのが残念だな、ククク…」
ハンターキラー「お前たちの最期に相応しい舞台を用意してやったのだ、
 気にいってくれたかな諸君。フフフフ…」
アラン「フン。俺たち二人を始末するためだけに、わざわざこんな大舞台を
 用意してくれるとは気前がいいじゃないか、Gショッカーさんよ!」
ハニー萬田「勘違いするんじゃないよ。ここはあたしがさる高貴な御方を
 お招きするために、特別に用意したのさ。お前らが無様に、残酷に、
 のたうち回りながら死んでいく様をゆっくり寛ぎながら楽しんで頂く
 ためにねぇ……ウフフフフフ」
ハンターキラー「……(チッ。大きな顔しやがってこの女)」
ガイラー将軍「(御寵愛をかさにきおって!)」
ヘスラー指揮官「(いかにあの御方に瓜二つとはいえたかが
 ダブルモンスター! 何故こやつだけが…グヌヌウ~!)」
大「さる高貴な御方??」

282 

パッ パパパパパパパパ パ~~♪~~♪
 
数人のキンクロンが一斉にトランペットを吹き、何者かの来訪を告げた。
ハニー萬田一同が膝を着き、頭を垂れて出迎えの礼をする仕草を見せる。
するとVIP席に、いかにも高貴な出で立ちの女が同じく豪華絢爛な衣装を
着ている男に手を取られながら姿を現した。
その婦人の顔は…

女王パンドラ「オホホホホ…ハニーさん、今日はお招き頂き光栄ですわ♪
 一体どんな面白いショーを見せて頂けるのかしら…ね、ギローチン皇帝?」
ギローチン「はい。私もとても楽しみにございます」
ハニー萬田「女王様、ギローチン様、私のほうこそお招きできて光栄です。
 女王様におかれましては、無幻城にお越しになられてから日頃何かと
 御憂鬱そうでしたので、少しでも気晴らしになればと…」
女王パンドラ「まあ…! ホホホホ、ありがとうハニーさん…貴女の気配りと
 心遣いにはワタクシ、いつも感謝しておりますよ♪♪」
ハニー萬田「勿体無きお言葉にございます」

――この数日、女王パンドラはあまり気の合わないヘドリアン女王一派が
仕切る無幻城内の大奥に戻っていた。彼女がそれを余儀無くされたのは、
クリン星でのベン博士再拉致計画の折、奇城ガメデスが想定以上のダメージを
受けていたからである。現在ガメデスは一時航行停止状態に陥っており、
当然新鮮な真水を必要とする守護神ワーラーにとっては危機的状況であった。

ワーラーと一心同体のパンドラ女王はやむなく、居心地の良くない大奥に
一時避難を強いられたのだ。この状況を作り出したスピルバン&ギリアムへの
募る悔しさと怒りに加えて、政敵が我が物顔で闊歩している様子が嫌でも
目に入る毎日は、彼女にとって不快な日々の何者でもなかった。
同時に常に悪趣味な刺激を求めるパンドラには退屈な時間も続いていた。

アラン「おいおい、何だあの女は!?」
大「ハニー萬田にそっくりだ!」
ハニー萬田「女王様…ごろうじませ。あれなるは宇宙刑事シャイダーとアラン。
 我らの怨敵にして、女王様に無礼を働いた輩と近しい者どもにございまする」
女王パンドラ「何ですって! スピルバンと近しい…グギギギ~ッ」
ギローチン「ほう…あいつらが、銀河連邦警察の宇宙刑事か」
ハニー萬田「これからあの者たちが、どうなるか…それを存分にお楽しみ下さいませ」
女王パンドラ「まあ、どうなると!?」
ハニー萬田「…それは見てのお楽しみ、さあショーの始まりです!」

二人を囲む円形の壁に三つあるゲートが開き、中からマクーのベム怪獣、
マドーの魔界獣、フーマの不思議獣が飛び出して来た!

シャコモンスター「シャシャシャ~!」
ケンキャクビースト「ソリャァー!」
バリバリ「ヒャハ、ヒャハ」

アラン「大、焼結しろ!」
 
アランは素早く衣服を脱ぎ捨て、下に来ていた軽量型コンバットスーツ姿
となって剣を構えた。大もすかさず電送コードを叫ぶが…。

大「焼結! … … …?」

▼しかしなにもおきなかった。

大「焼結!! … … …こ、これは…!?」

神官ポー「フフ…いくら叫んでも無駄です。何故ならここは、
 不思議時空ではないのですからね」
ハンターキラー「といって、魔空空間でもないがなぁ」
ガイラー将軍「無論、幻夢界でもないのだよ。グフフフ」
ハニー萬田「おやおや哀れだねぇ~自慢のコンバットスーツはどうしたのさ?
 ちっとも電送されてこないじゃないか…ウフフフフ、当然さあ!
 ここはね、魔空空間と幻夢界と不思議時空が唯一交わる場所。
 ポイントゼロ…って、あたしたちは呼んでるんだけどね。アハハハ…!」

283 

アラン「ポイントゼロだと!?」
大「ここは三つの異次元が交わる世界なのか…」

ハニー萬田「そうだよ…だからほら、こんなに穏やかだろう?
 お前たちが生身でピンピンしていられるくらいだからねぇ……」
ヘスラー指揮官「フフフ、但しこのポイントゼロでは貴様は焼結できん。
 いかにバード星の科学の粋を集めて設計されたバビロス号といえども、
 そのコンピューターにインプットされていない、異次元航行マップに存在しない
 空間まではプラズマブルーエネルギーを送れんのだ!
 当然、バビロス自体をここから呼び出すこともできないというわけだ…
 フハハハハハ、残念よなぁ~シャイダー!」
ガイラー将軍「逃げることはできんぞ。そして、外部から貴様らを助けに
 来ることもほぼ不可能だ。我がマドーの魔王サイコ様を始めとする
 偉大なる三大魔王が御力を結集して貴様らをここへ監禁したのだからなァ」
ハンターキラー「若僧、貴様にはアリゾナでとんだ恥をかかされた……
 あれから俺はバリオゼクターを己のものにするため、さらに解析と
 適応実験を重ねた! ここでその成果を見せてやりたかったが、
 今回は俺個人が勝手な真似をするわけにはいかんからなククク…
 さあて、生身のままでどこまで戦えるかな…かかれーっ!!」

クラッシャー「ギギィー!」
シャコモンスター「シャシャシャ!」

ハンターキラーが号令をかけると、観客席にいたクラッシャーの集団が
身構える大とアランめがけて一斉に襲いかかっていく。
シャコモンスターも手足を引っ込め、地面を滑るように二人を襲った。

ガイラー将軍「抹殺ーっ!」
ヘスラー指揮官「征伐ーっ!」
ファイトロー「カカ…カカカ…」
ミラクラー「シュワシュワ…」

奇怪な仮面をつけたファイトローとミラクラー軍団も、号令の下武器を
振り上げ客席から躍り出て来た。ケンキャクビーストが剣を振りかざし突進、
不思議獣バリバリはピョンピョン飛び跳ねながら近づく。
招待されているワーラー陣営のキンクロンたちは、やんややんやと喝采を
送る者、お菓子をつまみながら笑い転げる者、白熱して仲間同士で
殴り合ったり喧嘩を始める者と様々である。
彼らは戦闘には加わらず、金色の仮面に喜怒哀楽豊かな面相を
浮かべてあくまでも観戦に徹する様子だ。

ハニー萬田「如何でございましょう女王様…奴らは超兵器の数々を
 完全に封殺され、もはや命は…ウフフフ」
女王パンドラ「ンンン~ウフフフ、まさに風前の灯!というわけですね!
 素晴らしいいいいい~♪ 彼らは類稀な戦闘能力を持っているにも
 関わらず、どうすることもできないままズタズタに切り刻まれてしまう
 わけですか…くぅ~~なぁぁんて素晴らしいショーなんでしょ!!
 ワタクシも、年甲斐もなく、こう、ゾクゾクして参りましたわ~!」
ハニー萬田「そうでございましょう!? 女王様に喜んで頂けて、
 この私も嬉しゅうございます!」
女王パンドラ「えい。そこです、もっと、むおっっっとペンペンしてやんなさい!
 彼らが息絶えるまで、とことんかわいがってあげなさいぃぃぃ~っ!
 もっとおおおおおおおおおお!!」

284 

ザシュウッ!

大「ぐわっ…ッ!」
アラン「大! くう…トイヤ!」

たとえどんな過酷な状況に陥ろうと、最期まで望みを捨てないのが
「宇宙刑事魂」である。飛び散る血液、絶え間なく続く殴打の音――
絶対絶命の最中、ふと耳に聞こえて来る、敵のものではない声。

闘破「とう! せいッ おりゃぁーッ!!」

ヒュンッ スパッ ドシュ!

大「……あれは…?」
アラン「誰だ、あの男は…」

二人の目に信じがたいものが映った。いつの間に紛れ込んでいたのか…
武道着を来た青年が、一緒になって戦っているのである。
その青年の身のこなしはさながら“忍”といった感じで、迫り来る集団に
マキビシをバラ巻き転倒させ、手裏剣を投げては手に持ったクナイで
敵を斬り、見事な体術を駆使しながら次々に敵を仕留めていた。

闘破「おっ…!」

二人の視線に気がついた青年が、大に向かって手裏剣を投げる。

闘破「伏せるんだ!」
大「!」

ドガッ!

クラッシャー「ギギィ~~っ…」

手裏剣が大の背後にナイフを振り上げて迫っていたクラッシャーに命中し、
敵はその場に倒れ込んだ。青年は「ニコ…」と微笑んで見せた。

女王パンドラ「にぎぎぎ…いいところだったのに!!」
ハニー萬田「ん? あいつ…お、お前はアルバイトに雇ったボウヤ!
 何故だい、何故お前は私の操り針にかかっていない!?」
闘破「操り針ってこれか?」
ハニー萬田「う…!」

青年がミツバチダブラーの黄色い針を掌を広げて見せる。

闘破「なるほどな、こいつで皆をあんなふうにしやがったのか……
 生憎だったな。こんなもの一つ見切れないようじゃ、
 武神館の跡取りはつとまらなくてね。鍛え方が違うぜッ!!
 正体見たぞハニー萬田! 実をいうと俺は前々からあんたの
 治療センターは怪しいと思ってたんだ。
 これでも一応、悪党と名がつく奴らと長い間戦っていた身でなあ!」
ハニー萬田「何だってぇ~~お前は一体、何者だい!?」

闘破「俺は山地闘破。またの名を、戸隠流正統・磁雷矢!」

大「ジライヤ…」
アラン「フッ、地獄で仏に会うとはまさにこの事だな」
闘破「悪いけど、しばらく操られたふりをして話は全部聞かせてもらった。
 こいつらをやっつけて、皆を助けるんなら俺にも手伝わせてくれないか?」

三人は頷き合い、その場で共闘を誓った。
 
○沢村大→焼結不能な異次元空間で苦戦。山地闘破に出会い共に戦う。
○アラン→大と焼結不能な異次元空間で苦戦。山地闘破に出会い共に戦う。
○山地闘破→ミツバチダブラーの毒針を悟られず回避していた。大とアランに加勢する。
●ハニー萬田→毒針で患者を操り、Gショッカーコロシアムに女王パンドラを招く。
●女王パンドラ→ガメデスが修理中の間、無幻城大奥に戻っていた。
 ハニー萬田の招待でギローチン皇帝を伴ってGショッカーコロシアムに来る。
●ギローチン皇帝→女王パンドラの付き添い役でGショッカーコロシアムに来る。
●神官ポー→Gショッカーコロシアムで大とアランを待っていた。
●ヘスラー指揮官→Gショッカーコロシアムで大とアランを待っていた。
●ガイラー将軍→Gショッカーコロシアムで大とアランを待っていた。
●ハンターキラー→Gショッカーコロシアムで大とアランを待っていた。
●シャコモンスター→Gショッカーコロシアムで大とアランを攻撃する。
●ケンキャクビースト→Gショッカーコロシアムで大とアランを攻撃する。
●バリバリ→Gショッカーコロシアムで大とアランを攻撃する。
●クラッシャー→Gショッカーコロシアムで大とアランを数で襲う。
●ファイトロー→Gショッカーコロシアムで大とアランを数で襲う。
●ミラクラー→Gショッカーコロシアムで大とアランを数で襲う。

285 

【今回の新規登場】
●ガイラー将軍(宇宙刑事シャリバン)
 マドーの作戦指揮者。血気盛んな武将で、必殺電光剣を振り回して戦う。
 シャリバン打倒に燃えていたが、レイダー出現後失敗続きの責任を取らされ、
 幻夢城の椅子の下に敷かれてしまう。後に許され復帰、ベムサソリが拉致して
 来たミミーとの結婚を魔王サイコに認められるが喜びも束の間、花嫁は飛び去って
 しまった。幻夢界で獣魔ガイラーにパワーアップ、シャリバンに勝負を挑んだが、
 敢え無くシャリバンクラッシュで斬られ爆死する。「抹殺!」が口グセ。
 
●ヘスラー指揮官(宇宙刑事シャイダー)
 フーマの戦闘行動隊長。ヒムリーという弟がいたが、自分の立場を危うくする
 存在と見ると即始末にかかるなど、邪魔者は誰であろうと許さない性格。
 ミラクラーやギャル軍団を率いて敵を「征伐!」する。不思議時空で力を
 得てシャイダーと死闘を繰り広げたが、善戦空しく倒される。神官ポーからの
 信頼は厚く、ポーがその戦死を激しく悲しみ怒り、弔い戦を誓うほどである。
 
●シャコモンスター(宇宙刑事ギャバン)
 マクーのスペースコロニー破壊作戦に参加した、ギャバンが最初に戦ったベム怪獣。
 地上を高速で這い回り、背中の斑点模様からは強力なレーザー光線を出す。

●ケンキャクビースト(宇宙刑事シャリバン)
 マドー最強の魔怪獣。刀剣鑑定人・金城利比古に化けていた。
 稲妻を出すデビル剣の使い手であり強豪。

●バリバリ(宇宙刑事シャイダー)
 大帝王クビライが生み出す卵から誕生した、フーマの不思議獣第1号。
 幻惑空間を作り上げることができ、沢村大の家を不気味な五臓六腑の
 体内怪屋敷に変えてしまう。不思議ソングの海賊放送で受験生を狂わせる。
 
●ファイトロー(宇宙刑事シャリバン)
 マドーの戦闘員。烏天狗のような面を付けており、呟きとも呻きともつかぬ
 声を発して幻夢城内に控えている。槍を手に襲い来る。


『神秘のファイター!蒸着・焼結・結晶』-2

作者・シャドームーン

286 

***ハニー治療センター跡地***


三大魔王の罠に落ちたシャイダーたちを救うため、蛻の殻状態の
治療センター内にミミー・ギャバン・アニー・スピルバンらが集まっていた。
スピルバン一行、特にヘレンと対面したアニーは互いに驚いたものの、
今は一刻を争う時なので積もる話は脇へ置いている。

烈「どうだミミー?」
ミミー「… … …ん~~……」

施設内に残るサイコゾーンの手がかりを探すべく、透視を試みるミミー。
彼女は過去にマドーの幻夢界へ拉致された経験から、
異次元へ通じている“姿なき道”を感知する能力は、バード星人の
誰よりも優れていた。これは著しく体力と精神力を消耗してしまうが、
結婚後も度々危険な任務に赴かねばならない夫ギャバンを、
何としても守り、支えたいと願うミミーにとっては少しも苦ではなかった。

ダイアナ「大丈夫かしら…彼女、とても辛そうよ」
烈「ミミーなら心配ない。俺は女房を信じてる…必ずやってくれるさ」
アニー「ギャバン隊長…」

丁度その時、磁光真空剣を追って山地家の人々が治療センターにやって来た。
突然室内に飛び込んで来た刀に驚き警戒する一同。

烈「なんだこの刀は!?」
哲山「驚かせて申し訳ない。その刀は我が家から飛び出したものでしてな…」
洋介「…貴方は?」
哲山「私は武神館という道場を営んでいる山地哲山と申します」

哲山は磁光真空剣に起きた異変と、これを追いここまで来た経緯を話した。

洋介「この刀、まるで誰かを探してるみたいだ…」
ケイ「あの! うちの兄がここで働いていたんですが、ご存知ありませんか!?」
学「兄ちゃんは、山地闘破っていうんだ!」
アニー「ここで? するとその人もシャイダーたちと一緒に…」

アニーもハニー治療センターに起こった出来事と、自分たちが今その解決の
糸口を見つけるためここにいることを話した。

ケイ「そんな…闘破…」
学「くっそー! 折角ジライヤスーツを持って来たのに…」
烈「ジライヤスーツ? その箱に…入ってるのかい?」
学「うん。兄ちゃんがこれを着て磁光真空剣を持てば、どんな悪い奴に
 だって負けないんだ。でも…そんな見えないところにいるんじゃ…」
洋介「山地闘破か…ギャバン隊長!」
烈「フッ、分かってるぜ。彼も俺たちの“仲間”だ!」
学「えっ、本当!?」
烈「ああ、もちろんさ。心配ない…君の兄さん、俺たちが必ず助け出すよ」

烈は学の両肩を抱き、少年の真っ直ぐな瞳を見つめて力強く頷いて見せた。
洋介もアニーもダイアナもヘレンも、同じく頷く。

ケイ「ありがとうございます皆さん…!」
哲山「磁光真空剣がここへ飛んだのは、闘破の危機を察知したからだけ
 では無かったやもしれんな…」
ケイ「えっ?」
哲山「磁光真空剣は自らの意志で、果たすべき役目を為すために
 ここへ来たのじゃ。ケイよ、感じぬか…この強大な邪悪の気配を…」
ケイ「邪悪な… … …!」
ミミー「…見える…もう少し…う、うう…見えるわ…あと少し…!!」

287 

『カアオオオオオオオオオオオ――――ッ!!!!!』
            
ミミーが何かを見破ろうとしたその時、突然室内に嵐のような稲光が走った。
続いて巻き起こる突風と轟音、“異界”の扉と繋がりかけたその部屋に、
怒り狂う三大魔王の巨顔が幻影となって出現した!

ドン・ホラーの首「おのれぇぇぇぇッ 小癪な小娘如きがァァァァーァァ!!」
魔王サイコの首「コノテイドデワレラノカベヲヤブレルトオモウナ…カカカ!!」
大帝王クビライの首「身の程をわきまえぬか~~ッ!!!」

ミミー「きゃああーーっ!!」
アニー「ミミーさん!?」
ギャバン「ミミー! くっ、ドン・ホラーめ!!」

ドン・ホラーの首「ギャバン! 貴様はシャイダーめらを片付けてから、
 じっくりと料理してやる…おとなしく外で待っておるがいいッ!!!」

洋介「ダイアナ、姉さんっ 大丈夫か!?」
ダイアナ「な…何なの~これは…!」
ヘレン「あの恐ろしい影…あれがそうなのね!」

三大魔王の幻影が巻き起こす凄まじいサイコエネルギーによって、
一同は天井や壁に吹き飛ばされ、叩きのめされていく。
だがしかし、哲山が気力を振り絞り、刀身から閃光を放ち始めた
磁光真空剣をその手に掴んだ。

魔王サイコの首「…ヌオオ、ナンダコノヒカリハ…グ、ヌウウウ」
大帝王クビライの首「ぐぬ~~ッ 我らの力に抗うだと!?」
哲山「でぃやぁーーっ!!」

哲山が三大魔王の幻影目掛け、横一文字に磁光真空剣を一閃した!
苦しみとも怒りともつかぬ、恐ろしい咆哮をその場に轟かせ、
三大魔王の幻影は掻き消えてしまう。
そこに、磁光真空剣が切り裂いた“空間の裂け目”が大きく開いていた……。

ミミー「あれよ! シャイダーたちのいる場所へ通じている、サイコゾーンだわ!」
ケイ「闘破があの向こうに!」

急いでケイがジライヤスーツの箱を背負って飛び込もうとする。
それを見た烈と洋介が慌てて彼女を制止した。

烈「待て! 向こうに待ってるのは異次元空間だぞ!」
洋介「生身の人間が行っては危険だ、ここは我々に任せてくれ!」
ケイ「でもッ…!」

???『クククククク…行かさぬぞ…』

何処からともなく現れた黒いマントが部屋を飛び交い、彼らをけん制する。
やがて静止したマントを翻し、“魔剣”を手にした女が立ちはだかった!
尖った帽子に黒のアイマスク、妖しい殺気を放つその女は。

魔忍シルビア「この魔剣がお前たちの血を欲している…ウフフ」
哲山「む。貴様、魔忍シルビア!」
ケイ「そんな!? 二度と蘇れないように、魔剣は封印したはずよ!」
魔忍シルビア「ウフフフ…封印を解き、再び私に自由を与えて下さった
 偉大なる魔王のため…お前たちを殺す」
烈「ドン・ホラーたちの刺客か。だがな、通してもらうぜ。…ふんッ蒸着!!」

288 

――キイイイイイイイイイン――

光の玉となったギャバンが、シルビアに体当たりを食らわせ着地した。

魔忍シルビア「く、お前は…!」

             ,,. ‐ '' "ヾヽ'ー .、
           ,ィ" ミ;   i:8:i  ヽ
          /        |:H| ""i!
      ,,.........、 |  ~`'''ー  ニ:,,_二l  |
     r",:-'7~~)ーil:|;;i :ー-:、...,,,,,,,,,,,,,,,...-ァ|
    |~l__j;`ー'`ー!i::l` '-::、;;;;,,,,,,______,,,,;;!  ギャバン「宇宙刑事、ギャバン!!」
    /`ーr;'二l,,,,)ヾ、r'"T't- 、,,.._,,..-ッ/
   /ヾミ:;;;;; r;:|ヾ、 `ヽ  ミ:三:三:彡;'ー-,,,_,,...、
   ,l i!  ;;;:  | ヾ:、 ヾ`ヽミ.,_゙_ '' "/;;i  ヾli~ヾ|`ー:,      _,,,..-=-.、
  / 、   :;;:  | ヾ:、  `::;;;;;;;;;;:::::::;;;;;;;;i,  :ii i| ;:/`ー''''"""" r",..ニ、__ーミ:、
  |ヾ `ヾ  " ;|、 ,,,,,,,,,,,,,,,,,,_   `::;;;;;;;;,  !! | /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i!-t'''t'" i!"r' ,:リ
  ヾ      ,::〉:、'''''''''ヾ:;;;;;;ヽ   `"""""" |'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;rゝ'ゝ-ゝ';"_,,ン
   `i ,,..:;;:: "ノ:;;;;:ヾ:、__二二..,,,_____/ /,,...--―'''""~`ヾノ ̄
    |   / : : :::::::::::-┬┬┬┬-::l''T'T'T1r'"

宇宙刑事ギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは僅か0.05秒に過ぎない。
では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!
 
烈「ふんッ…蒸着!!」
ドルギランコンピューター「リョーカイ。コンバットスーツ、デンソウシマス…」
 
蒸着司令をキャッチした超次元高速機ドルギランから、銀色の金属微粒子が
放射され烈の全身に吹き付けられていく。シルバーメタリックの輝きが彼を包む!

  ◇    ◇

洋介「結晶!」
ダイアナ&ヘレン「結晶!」 ――キュワアアアアアアアアン――

グランナスカから放射されるクリンメタルに身を包み、ハイテク・クリスタルスーツを
纏った三人の時空戦士もファイティングポーズで名乗りを上げた。

スピルバン「時空戦士、スピルバン!」
ダイアナレディ「ダイアナ・レディ!」
ヘレンレディ「ヘレン・レディ!」

学「すげぇ!!」
ケイ「よし、私も負けないんだから!」

ケイはクルッと一回転して白い忍者服を纏う、姫忍・恵美破に変身した。
 
アニー「(ヘレンさんたら専用のコンバットスーツを持ってるのね。。
 ダイアナさんとケイさんも… … …いいなあ~…)」
恵美破「忍法“花吹雪”!!」

ビョオオオオオオオオオ――ッ!

魔忍シルビア「チ……ッ!」
恵美破「今のうちに早く! …兄を…闘破をお願いします!」
ギャバン「サンキュー。サイバリアーン!」
スピルバン「ホバリアーン!」

ギャバンとスピルバンがマシンを呼び寄せ、サイコゾーンへ突入する。
学が急いでジライヤスーツの箱をスピルバンに渡した。
磁光真空剣が再び閃光を放ち、導くように先に飛び込んで行くのだった。

ギャバン「あの刀が進む方向にシャイダーたちがいるはずだ、行くぞ!」
ミミー「う…ギャバン、気をつけて…きっと勝ってね」

まだ意識が朦朧としかけているミミー。ギャバンは無言で彼女の頬に手をあてた。
それで充分だった。前を向き、サイバリアンを発進させるギャバン。

学「ギャバン、スピルバン頑張ってね! 兄ちゃんにそれ渡してくれよ!」
スピルバン「オーケー、必ず届けるよ」

魔忍シルビア「待て、行かせるものか!」
哲山「むぅんッ!」

キィーン!

シルビアが掌から魔力による赤い光弾を撃とうとしたが、哲山が日本刀を
抜いて斬りかかったためこれの防御に手を塞がれ阻止されてしまう。

魔忍シルビア「おのれ山地哲山…よくも長い間!!」
哲山「もはや封印などという手段では、お前が世に齎す災いは
 防げまい…今度はわしの手で完全に倒す!!」

哲山、アニー、ダイアナ、ヘレンがシルビアを取り囲み包囲する。
ギャバンとスピルバンは光る刀の導くサイコゾーンを一路進んで行った――。

289 

○一条寺烈/ギャバン→磁光真空剣の導きでサイコゾーンへ突入。
○城洋介/スピルバン→磁光真空剣の導きでサイコゾーンへ突入。
○山地哲山→磁光真空剣で三大魔王の幻影を破り、魔忍シルビアと対決。
○山地ケイ/恵美破→魔忍シルビアと対決。
○山地学→ジライヤスーツをスピルバンに託す。
○ミミー→サイコゾーンを透視能力で見破るが、疲労によりダウン。
○アニー→魔忍シルビアと対決。
○ダイアナ→魔忍シルビアと対決。
○ヘレン→魔忍シルビアと対決。
●ドン・ホラー→魔空城から送る幻影を撃退され激怒、魔忍シルビアを差し向ける。
●魔王サイコ→幻夢城から送る幻影を撃退され激怒、魔忍シルビアを差し向ける。
●大帝王クビライ→不思議宮殿から送る幻影を撃退され激怒、魔忍シルビアを差し向ける。
●魔忍シルビア→三大魔王の力で封印を解かれ、刺客としてギャバンらの前に立ち塞がる。

【今回の新規登場】
●魔忍シルビア(世界忍者戦ジライヤ)
 血を見ることを何よりも好む、中世ヨーロッパを荒らしまわった魔女。
 地下深く封印されていたが、牢忍ハブラムが魔剣の封印を解いてしまった
 ことで現世に復活した。魔術に長けるが、剣の腕前も恐ろしく強く、
 魔剣を奪おうとした鬼忍毒斎ですら太刀打ちできなかったほど。
 ジライヤとの激しい剣戟の末、『真っ向両断』で退治され魔剣は二度と
 封印が解けぬよう、人の手が触れない日本の湖深くに改めて封印された。


『神秘のファイター!蒸着・焼結・結晶』-3

作者・シャドームーン

290-1 

***Gショッカーコロシアム闘技場***



ワアアアアアアア――ッ!!!!!!
ウオオオオオ――ッ!!!

興奮の坩堝と化したコロシアムの中心で、満身創痍になりながら
尚戦い続けている三人の男。彼らが傷付き、血を流す度に観客たちの
罵声と怒声、そして嘲笑が入り乱れ飛び交っていた。
何といっても客は長年、それも毎度に渡りヒーローたちに叩きのめされて来た
各組織の戦闘員どもである。自分たちの怨敵が満足に戦えないまま、
痛めつけられている姿を見物できてさぞ胸のすく思いだろう。

女王パンドラ「ううんんん~っ! 見てごらんなさいギローチン皇帝。
 もはや息も絶え絶えで、…ああ…普段は憎らしいくらい
 凛々しい顔を、あんなに苦痛に歪めて…辛そうねえ……
 さすがのワタクシも、心が痛みますわああああ~~!!」
ギローチン皇帝「御意にございます。唯一つ残念なのは、あいつらと
 一緒にスピルバンめがおらぬことですな、ワッハッハッハ!!」

新鮮な水の他に、日々エンジョイ&エキサイティングな刺激を求めるパンドラである。
愉快痛快、我が世の春を堪能するが如く、感極まってハンカチーフを噛み締めながら
涙さえ長していた。「チーン!」と鼻をかんで、非常にご満悦そうだ。
だが彼女の言う通り、幾多の修羅場を潜り抜けた彼らであっても、
生身では限界が近づいていた…。
ベム怪獣、魔怪獣、不思議獣が不気味な雄叫びを上げてトドメを刺さんと
三人を追いつめてゆく。

アラン「…どうやら覚悟を決める時が来たらしいな」
大「君らしくもない。宇宙刑事魂を忘れるなアラン!」
闘破「くそう…誰も救えずに、俺はこんなところで力尽きるのか!?
 これじゃ、戸隠流正統失格だな…親父にどやされるなあ…」

彼らの希望と闘志が、命の炎と共に風前の灯となった時。闘技場の興奮も
最高潮に達しようとしていた――刹那。

キンッ―…。

唯一つ、その小さな音によって、「絶対不可侵」であるはずのポイント・ゼロに
外部からのゲート=サイコゾーンが出現した。

グゴオオオオオオオオオ

開いたゲートは渦巻くトンネルとなって“道”を作った。
予想もしなかったこの事態に、観客も、ハニー萬田も、女王パンドラも、ギローチン皇帝も、
神官ポー以下幹部たちも呆気に取られて一瞬その場の時間が停止しているかのようだ。
しかし〝宇宙刑事魂〟を持つ二人の男は、確信を持ってその奇跡を見据えている。
ゲートの向こうから――

290-2 

彼らの信じる最も熱い宇宙刑事魂を宿す男の、懐かしい声が響いて来た。


ギャバン「大、今だ焼結しろーッ!」
スピルバン「山地闘破はいるかーッ! 妹さんから届けものだ、受け取れー!」
闘破「あれは…磁光真空剣!?」

閃光を帯びた磁光真空剣が飛び出した後に続いて、サイバリアンに乗ったギャバンが、
ホバリアンを駆るスピルバンが現れ傷付いた仲間に檄を飛ばす。

大「焼結!!」

全てを理解した沢村大の電送司令が、満を持して発せられた。
電送司令はサイコゾーンを通り抜け地上に待機しているバビロス号へと送られ、
彼はメタリックブルーのコンバットスーツを焼結完了した。

シャイダー「宇宙刑事、シャイダー!」

勇ましい名乗りを上げて、煌くコンバットスーツがより一層の輝きを放つ!
宇宙刑事シャイダーは、バビロス号から発射されるプラズマブルーエネルギーを
浴びて僅か1ミリ秒で焼結するのだ!

大の瞬間的な〝変身〟を目撃した闘破は、感心したように頷きながら、
自分も負けてはいられないとばかりにジライヤスーツを装着する。
第一装着に続いて、パワーショルダー(肩当て)・ニーガード(膝当て)・
ジライサーチャー(超眼鏡)を第二装着して、ホルスターにジライバスターを、
背中の鞘に磁光真空剣を収めて彼も凛とした構えで名乗った。

ジライヤ「待たせたな、戸隠流正統・磁雷矢!」

宇宙刑事ギャバン、宇宙刑事シャイダー、宇宙刑事アラン、時空戦士スピルバン、
戸隠流正統ジライヤ。“メタルヒーローズ”のまさかの揃い踏みに敵は動揺を隠せない…

ヘスラー指揮官「これはどういうことだッ 神官ポーよ!!」
神官ポー「それを言いたいのは私のほうですッ!!」
ガイラー将軍「まさか…よもや、三大魔王様の御力を合わせた
 この作戦が破られるなど、考えられぬッ!!」
ハンターキラー「(宇宙刑事どもめ…よくよく悪運の強い奴らだ。
 だが…さすがだなギャバン。貴様なら現れると思っていたぜ…ククク)」
ギローチン皇帝「スピルバンめ! よくもぬけぬけと女王の御前に現れおったな!」

早速、責任の擦り合いで揉める幹部たちであったが、この作戦に必勝を期して
臨んだハニー萬田にとっては彼らの声は耳に入っていなかった。
彼女にとっては、女王パンドラの慰安を兼ねたパーティに水を注された格好なのだ。
敬愛する女王の前で、面子を潰されたハニーの顔が怒りに歪む。

ハニー萬田「お・の・れ…ギャバンンン~~ッ よくも女王様の前で
 あたしに大恥をかかせておくれだねぇぇぇぇえ…」

言い争う敵をよそに、邂逅を果たしたメタルヒーローたちは手短に挨拶を交わした。
戦っていた三人の内、軽量タイプのコンバットスーツを纏っていたアランは、
他の二人をなんとか守ろうと決死の奮闘をしていたため特に重症であった。

ギャバン「悪い、待たせちまったな…立てるかアラン」
アラン「はは…また、地球で君に世話をかけるなギャバン…ぐっ…」
スピルバン「君がジライヤか。話は外で妹さんたちから聞いてるよ。
 間に合ってよかった」
ジライヤ「すまん、恩に着るよ。あのブス余計なこと言わなかったかい?」
シャイダー「ギャバン隊長。そちらは?」
スピルバン「スピルバンです。よろしく!」
ギャバン「彼は仲間さ。今は詳しく話している時間はない、来るぞっ!!」

シャコモンスター「シャシャァー!」
バリバリ「ヒィ~ヒヒヒ」

突っ込んで来るベム怪獣と不思議獣の攻撃を回避し、二組に分かれる戦士たち。
ギャバンはサイバリアンにグッタリしているアランを乗せると、
愛車を自動操縦モードにセットしてサイコゾーンへ送り出した。

ギャバン「チューウ!」
シャイダー「ショォウー!」

銀と青の光球が美しい軌跡を描いて飛び、シャコモンスターとバリバリを標的に捉える。

シャコモンスター「シャシャ!」

ビビィ――…ドォンッ!

シャコモンスターが背中の斑点模様から光線を放ったが、ギャバンはバック転で
これを避ける。彼は体勢を整え、両足で踏ん張りを効かすと、
右手を突き出し指先からレーザーを撃つ。

ギャバン「レーザー・Zビーム!!」

ズビビビビビビ――ドガァァンッ

三角状のレーザー光線は見事命中し、シャコモンスターは粉々に爆発した。

シャイダー「シャイダー・ブルーフラァーッシュ!!」

ザンッ!!

鮮やかな青い閃光と共に、シャイダー必殺の横一文字斬りが決まった。
バリバリは哀しげな悲鳴を上げると、一溜まりもなく爆散した…。

290-3 

ケンキャクビースト「ドリャァー!」
スピルバン「行くぞ!」

デビル剣を抜刀して居合い抜きに斬りかかるケンキャクビーストに対し、
ツインブレードを構えて迎え撃つスピルバンであったが、その肩をポンッと
叩き前へ飛び出し敵の斬撃を己の刀で受ける影。

ギィン!

ジライヤ「悪いな、俺にやらせてくれ! さっきからいいように痛めつけられて
 頭にきてんだ! …それに、こいつ中々の使い手と見た!」

鍔迫り合いから互いに飛び退き、激しいの剣戟を何度も交える両者。
マドー最強の魔怪獣であるケンキャクビーストは、剣豪としても強豪であった。
剣の技では一歩もひけを取らず、デビル剣から発する稲妻でジライヤを追い込む。

ジライヤ「やるな。化物にしとくには惜しい腕だ。だがな…お前の剣は
 殺気を撒き散らすだけの云わば狂剣。魔道に負ける戸隠流じゃないぜ!
 ――磁光真空剣!」

叫びと同時に磁光真空剣の刀身が、閃光を発して光り輝く。
その眩しさにケンキャクビーストは一瞬怯み、それが勝負を決した。

ジライヤ「磁光真空剣・真っ向両断ッ!!」

ズバッ――ズバァーン!

ジライヤの縦斬り、続いて横斬りが連続して決まった。
十字に斬り裂かれたケンキャクビーストは、七色の光に包まれて消滅した。

サイダブラー「ガハハハ、ワシの出番のようだな!」
バッファローダブラー「グオオー!」
デスデス「ヌウリャア!!」
ギャバン「新手か!」
シャイダー「さすがGショッカーコロシアム…」

モンスターが三体とも全滅したと同時に、闘技場のゲートが開いて中から
第二陣が出撃して来た。突進して来るバッファローダブラーを見たスピルバンは、
何故か奇妙な感覚を覚えるのだった…

スピルバン「何だろう…こいつは俺が倒さないといけない気がする!」
バッファローダブラー「いい度胸だ若僧ッ!!グフー!」
スピルバン「来い!!」
サイダブラー「黄泉の国で、いつか再び貴様を斬り殺す日をいまかいまかと
 待っておったぞギャバン!! 今度こそワシの手で息の根を止めてくれるわ!」
ギャバン「しつこい奴め! お前みたいな悪党はどこにもいるらしいな!」


***ハニー治療センター跡地***


その頃、地上では魔忍シルビアの妖術に哲山たちが苦戦していた――
魔剣の使い手シルビアは、剣の勝負では哲山と互角である。
恵美破が必死で忍術によるサポートを行うものの、先ほどすでに見切られた
術のためかシルビアにはもはや通用しない。
ダイアナレディとヘレンレディが左右から得意技を仕掛けるが、
これは分身妖術で難なく躱され、火炎攻撃の手酷いしっぺ返しを受けた。

シルビア「はははは。そんな腕で私と戦おうなど、五百年早い」
ダイアナレディ「んもう~っ …くやしいっ!」
恵美破「やあー!」

忍者刀で斬りかかった恵美破をひらりと躱し、マントを翻してサイコゾーンの
前に立ちはだかるシルビア。アニーのブラスターも魔剣に悉く弾かれてしまう。

シルビア「ウフフフ…そんなに兄が心配か?」
恵美破「…!!」
シルビア「通しはしない。この魔忍シルビアがな!」

高笑いするシルビア。しかし彼女は、背にして立っているサイコゾーンから
超高速で接近してくる存在に気づいていなかった。

ブオ――――ンッッ!!

シルビア「な、何!?」

ドガァ!

サイコゾーンから飛び出したサイバリアンに激突され、さしもの魔忍シルビアも
思い切り撥ね飛ばされてしまう。この機を逃す哲山ではなかった。

哲山「隙在り! でやぁーっっ!!」

ズバァッ!

シルビア「ぎゃああっ!!」

哲山の日本刀が、見事にシルビアを袈裟懸けに斬り裂いた!
血を好む魔女が、自ら流す大出血と共に絶叫する。
よろめく彼女は最後の力を振り絞ると、口元の赤い唇を「ニヤ…」
と歪ませサイコゾーンに飛び込んだ!

哲山「何をする気だ!」
シルビア「ぐうう…ウフフフフ、お前たちの大切な人間は、誰も助からない。
 アッハハハハ……アアアアア!!」

ドバァァァンッ

シルビアの壮烈な自爆と共に、サイコゾーンの入り口が…
内部で戦っている者にとっては出口が跡形もなく消えていた。

290-4 

***Gショッカーコロシアム闘技場***


ギャバン&シャイダー「レーザー・ブレード!」

―ブゥン…

二人の宇宙刑事が握る剣に、青白いエネルギーが注入され、迸る。
ギャバンは不動明王のような構えから右手でブレードを斜めに持ち変え、
両拳を突き出してサイダブラー目掛け跳躍した。

ギャバン「ディメンションボンバー!」
サイダブラー「ぬう、何のこれしきよ!」

ガァン!!

ギャバンの攻撃を、サイモンスターの強固な鱗で覆われた盾でガードする
サイダブラーだったが、ギャバンは弾かれた勢いを利用してそのまま宙返り、
ダブラーの二本角をダブルキックで蹴り上げた。

サイダブラー「ヌガァッ…まだまだ~!!」
ギャバン「チュオーウ!」

グサッ!

立ち上がろうとしたサイダブラーの右胸に、ジャンプして来たギャバンの
レーザーブレードが突き刺さる。弱点の心臓を貫かれたサイダブラーは
尚も渾身の力を込めて剣を振り上げるが、その手から獲物が転げ落ちた…

サイダブラー「ぐふうぅ~おのれ、またしてもギャバンめ!」
ギャバン「ギャバン・ダイナミック!!」

ズバァァ――――ン!

サイダブラー「グアアア!! サイダブラー死すともGショッカーは滅びず!
 …バンザァーイ……!!!」

ドゴォ―ォンッ

サイダブラーが無念の断末魔を残して砕け散った時、不思議獣デスデスも
今はこれまでとばかりに、蛮刀と鉄球を振り回し暴れていた。
その危険な武器を、シャイダーのレーザーウィップが絡めとり奪い取った。
自在に撓るウィップをレーザーブレードに戻し、丸腰となった不思議獣目掛け
気合い一閃。青い光刃がデスデスの胴体と下半身を両断した!

シャイダー「シャイダー・ブルーフラッシュ!!」

片や、バッファローダブラーのパワーから繰り出される猛攻の前に、
防戦一方に晒されているのはスピルバンであった。

ドシャァッ

スピルバン「うわぁっ!」
バッファローダブラー「見慣れん奴だが宇宙刑事の新米か?
 そんなことでは俺には勝てんぞ小僧~!!」
スピルバン「(恐れてはダメだ…しかし何故かこいつを見ていると、
 怒りや憎しみ以上に脳裏にこびつくような恐れを感じてしまう。
 それが俺の攻撃に迷いを生んでしまっているんだ!
 迷いを断つんだ…ティーチャーの戦闘訓練を思い出せ!)」

スピルバンはツインブレードを一旦収めて仁王立ちになった。
彼の脳内に、グランナスカのホログラムトレーナーである、
「宇宙剣士ティーチャー」との厳しい戦闘訓練の記憶が呼び起こされる。
憎きワーラーを倒すため、幼い頃から辛い辛い訓練を乗り越えて来たのだ。

バッファローダブラー「どうした観念したか? ならば引導を渡してやる!
 グオオオオオオオオオーーー死ねぇッ!!」

バッファローダブラーが青竜刀を振り回しながら、巨大なホーンを突き出して
突進して来た。スピルバンのスコープに両目の赤い電光が灯る!

スピルバン「俺は負けんッ!」
バッファローダブラー「グオオーッ!!」
スピルバン「スピルバン・フルパワーパンチ!!」

バゴォォッ!!

スピルバンの全身が、ハイテク・クリスタルパワーの放出に包まれスパークする。
そのエネルギーを集中させた拳が、ダブラー自慢のホーンを砕き折った!

バッファローダブラー「グギャァァ!?」
スピルバン「ツインブレード!――アークインパルスッ!!」

ブォンッ ブォンッ …ズァ――ァン!

必殺のアークインパルスが決まり、屈強のバッファローダブラーもツインブレードを
構えて立っているスピルバンの背後で爆死を遂げた…。

スピルバン「勝った…。俺はこいつを倒したぞ!」
ジライヤ「…お見事!」

290-5 

第二陣も全滅し、事の一部始終を見ていたギローチン皇帝が苛立ちながら
吐き捨て立ち上がった。

ギローチン皇帝「なっとらん! あんな事でスピルバンが倒せるか!
 こうなれば致し方ない。皆様のご招待に預かった身なれど、
 我らGショッカーの仇敵を黙って見ているわけにはいかん。
 我々ワーラー帝国からも参戦させてもらいますぞ神官ポー殿」
神官ポー「…ご自由に」
ギローチン皇帝「うむ。ご安心下さいパンドラ女王、私めが腕によりをかけて
 さらに強力にしたニュー戦闘機械人が、奴らを仕留めて御覧に入れましょう」
ハニー萬田「お待ち下さいギローチン様。折角女王様に喜んで頂こうと用意
 しました座興を汚された私にも覚悟がございます。この上は私がこの命と
 引換えにしてでも奴らを討ち果たしてみせましょう!」

女王パンドラ「皆、下がっていなさい―――…」

「余興の乱入者」の登場を、今まで黙って見ていたパンドラが口を開いた。
いつも恭しく丁寧な物腰で話す彼女だが、今の一言は恐ろしいほどに
低く、凄みを感じさせた……

これにはさっきまで言い争っていた宇宙犯罪組織の幹部一同も、
「ゾッ…」とする迫力を感じとり黙ってしまった。静寂が、場を支配する。

女王パンドラ「見ているだけというのも退屈して来ました…
 ハニーさん、貴女が招いてくれた大切なパーティーに土足で踏み込んだ
 おバカさん…スピルバン坊やともう一人、ギャバンさんと仰いましたか。
 折角のお越しです…闇女王同盟を代表して私が挨拶して参りましょう」
ギローチン皇帝「パンドラ女王! 何も奴ら如きに貴女がお出ましになることは…」
ハニー萬田「そうですとも! 女王様、ここは私に…ひい!?」

女王パンドラ「いいから、下がってなさいぃぃ~~…!」

普段の柔らかい態度とは一変し、ギリギリと口元を歪ませて怒りに震える女王。
その迫力の前には、もはや何人たりとも口を挟む余地などない。

女王パンドラ「ワーラー様~…ワァ~ラ~様ァ~~~…
 愚かな子羊たちに、罰をお与えください~~っ えやーーーっ!!」

パンドラは天を仰ぎ守護神ワーラーに何やら怪しい祈りを捧げると、
おもむろに貴賓席から飛び降り、闘技場に降り立った。
女王の顔を間近で見たジライヤとギャバンたちが驚く。

ジライヤ「おいおい何だいあの女は。ハニー萬田にそっくりだぜ!」
ギャバン「そうだな…瓜二つだ。スピルバン、あの女が君の言っていた?」
スピルバン「ええ! 女王パンドラです!」

女王パンドラ「おほほほ…♪ またお目にかかりましたねスピルバン。
 その節は我がガメデスを盛大に破壊して頂きまして、御礼の申しようも
 ございません。しかも! ご丁寧にクリン星から外宇宙まで転移させて
 くれるとはもう…本当にぃ…なぁぁ~んて素敵なんでしょうウフフフフ…」

口元に優雅に手を当てて話す仕草こそ上品だが、彼女の目は笑っていない。
凄まじい憎悪に満ちた目で、彼ら四人をまるで品定めするかのように見ていた…。
この婦人が底知れぬ怪物であることを、初対面の宇宙刑事たちも、
そして武道家であるジライヤも本能で感じ取っていた。

女王パンドラ「おかげでワタクシ、今は里帰り中の身ですのよ?
 嫌な親戚はいるし、も~~とぉ~~っっ~っても欲求不満でしてねえ。
 それを…ワタクシの身を案じて下さるあちらのハニーさんが、趣向を
 凝らした宴を催し招いて下さったのですけれど…うふふふふ♪
 アナタたちの無粋な横入りで、ずぇ~~~んぶ、パア!
 ここまでやってくるとは敵ながら大したもの、どうやったのかは存じませんが…」

凍りつく時間。震える大気。四人のメタルヒーローズに戦慄が走る…


       」」      」」       」」       」」
        __  |    __  |    __  |    __  |
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290-6 

女王パンドラ「ゆゆゆ…許さないぃぃッ…絶ッッッッッッ対に許しませんよ
 虫ケラどもっっ!!! ジワジワと嬲りながらペンペンして差し上げます!!!!」

遂に貴婦人の仮面を脱ぎ捨てた女王が、邪悪な宇宙生命体の本性を剥き出しに
スピルバン、ギャバン、シャイダー、ジライヤに襲いかかる!
「パンドラ生命機械人」に変身した彼女は、さらに生命体と機械人に分離した。

パンドラ生命体「オホホホ、パンドォ~ラ~!(・∀・)」
パンドラ機械人「パンドォ~ラ~!(・∀・)」 

スピルバン「気をつけて! 奴は分裂と合体を使い分けて攻撃してきます!」
ギャバン「よし。シャイダー、俺たちはあの機械のほうを叩くぞ!」
シャイダー「了解!」
ジライヤ「ヒトデの化物女か…同じ顔が同時に攻めてくるなんざ、ぞっとしねえな!」

パンドラ機械人「私に歯向かった者は、全てこの世から消え去りました…
 アナタ方も例外ではありませんっ!」

ボゴォンッ!

ギャバン「ぐわっ!」
シャイダー「うわっ!」
ギャバン「なんて奴だ…速過ぎて掴みどころがない!」

パンドラ生命体「ホホホホ…さあさあ、お逝きなさいパンドォ~ラァァ!!」

バチィッ! ビシッ バシィィッ!!

スピルバン「うう…!」
ジライヤ「くっ、この妖怪ババアめ!!」

分身・合体・分裂・合体・分離を一定のパターンなく繰り返し、トリッキーな
幻惑攻撃を繰り出すパンドラに戦士たちは苦戦していた。
パンドラ機械人の装甲はどんな攻撃も遮断してしまうほど硬く、また彼女の持つ
杖の一撃は痛恨の極みであった。一方、パンドラ生命体のグニグニとした軟体は
あらゆる攻撃を吸収してしまう。そのヒトデ触手から繰り出される打撃もまた、
強力なゴムの反動を効かせたかのように強靭で痛烈極まりない。
何度も打ち据えた挙句、動けなくなった彼らに強力な光線を浴びせるパンドラ…
戦闘開始から十分と経たぬ間に、四人は力尽きる寸前まで追い込まれていた。

パンドラ生命体「オホホホ、パンドォ~ラ~!(・∀・)」
パンドラ機械人「パンドォ~ラ~!(・∀・)」 

バッシィィン!

機械人と生命体が再び合体して、一人のパンドラ生命機械人となる。
動けない四人を体から伸ばした蔦状の触手で縛り上げ、命を奪わんと激烈な
電撃を流し始めた。高笑いと共に人面部が、マシン然とした無機質な仮面に変わった。

バチバチバチバチッ バリィッ! 

パンドラ生命機械人「オホホホ…如何です? この音は、私が流すエネルギーが
 アナタ方のスーツにダメージを与えている音ですっ♪♪」

シャイダー「うわあああ!」
ギャバン「ぐう~っ…負けるなシャイダー!」
スピルバン「くそう…女王パンドラめ…!」
ジライヤ「ぐわぁぁーっ!」

パンドラ生命機械人「オホホホホ! ワーラーは、Gショッカーは不滅なのです!
 〝悪〟は永遠に、栄え続けるのです~~~っ!!!!!」

今にも消えそうになる意識の中で、スピルバンは過去の決戦でこのパンドラと戦った時の
光景を思い浮かべていた。あの時は、記憶が戻ったベン博士の息子たちを死なせて
なるかという勇気ある父親の行動が、彼を救い勝利に導いたのだ。
ムーンベースで別れた父の顔が彼の頭を過る。

スピルバン「父さん… … … …そうだ!!」

旅立つ直前、ベン博士が改良して持たせてくれたレーザースナイパーとそのカートリッジ。
その事を思い出したスピルバンは、今はそれに望みを託してみようと残った力を
振り絞り、ホルスターに手を伸ばしてレーザースナイパーを構えた。

パンドラ生命機械人「悪足掻きを。今更そんなオモチャで、このワタクシを
 どおしようとゆうのですスピルバン!?」
スピルバン「…レーザースナイパー!」

ズビィィィィィ――…ドバァンッ!

四人を触手で縛り上げているため、パンドラ生命機械人もレーザーを避けることが
できず直撃を受けてしまった。尤も、すでに勝ち誇っていた彼女にとっては
その程度の反撃など避けるまでもないと踏んだのだろうが…。
それが、彼女にとっての大きな誤算と気づくのに時間はかからなかった。

パンドラ生命機械人「うう…!? く、苦しいいいいいい~…ギャァァ!!
 なっ…何をしたのですスピルバン坊や!!!」

突然苦しみ始めるパンドラ。四人を拘束していた触手が白煙を上げて崩れていく。
彼女の全身からも、同様に白煙が立ち上り細胞が破壊されるかのように
身体の各部がボロボロと崩れ落ちていくのだった…。

290-7 

ギャバン「うっ…ど、どうしたんだ奴は?」
スピルバン「そうか…これはあの時父さんがパンドラに注射したものと同じ、
 ヒトデ生命体である奴を殺すウイルスなんだ!
 あのカートリッジにはそんなものが詰まっていたのか……」
ジライヤ「何だか分からんが、奴を倒すなら今しかないぜ!!」

全員が気力を持ち直し、必殺技の体勢に入ろうとしている――
これを見たギローチン皇帝が、慌てて部下に指示を出した。

ハニー萬田「女王様!?」
ギローチン皇帝「いかん! ニュー戦闘機械人パンチャー、カーミラー!
 女王をお救いするのだっっ!!」
パンチャー&カーミラー「ハッ!!」

二体のニュー戦闘機械人が、四人の必殺技が女王に炸裂するギリギリの
タイミングで割って入ることに成功した。だが――

ギャバン「ギャバン・ダイナミック!」
シャイダー「シャイダー・ブルーフラッシュ!」
スピルバン「アーク・インパルス!」
ジライヤ「磁光真空剣・十文字斬りーっ!」

ズドガァァァン!!!

パンチャー&カーミラー「グギャァァァアア!!」

さしものギローチンの自信作ニュー戦闘機械人も、この四人の必殺技を
同時にくらっては一溜まりもなく、敢え無い退場となった。
しかし女王救出には成功したようで、彼女は苦しみの呻きを漏らしながら、
正体であるヒトデの有機生命体に変化して空へ舞い上がり消えてしまう。

女王パンドラ「アーッ!!」
ギローチン皇帝「パンドラ女王ー!?」
ハニー萬田「ぎいいいい…憶えておいでっっ!!!」

消え去ったパンドラを追い、ギローチン皇帝も姿を消す。
ハニー萬田は今の女王の気持ちを代弁するかのような憎々しげな
表情で四人を睨みつけ、今は女王の身が気がかりなのか、
そのままギローチンらの後を追う様に消えてしまう。

神官ポー「シャイダー、よく我々の合同計画を退けましたね…
 またお会いしましょう!」

あれほどコロシアムを埋め尽くしていた戦闘員の観客たちが、
大山小次郎ら人質にされた人間を覗いて一人も見当たらない。
ハンターキラー、ガイラー将軍、ヘスラー指揮官はすでに姿を消していた。
残った神官ポーだけは、万感の想いを込めたような眼差しで好敵手に
一瞥を投げてから去っていった。
残された四人の戦士が、急いで小次郎らに駆け寄った時、
全てが幻であったかのようにGショッカーコロシアムは掻き消えていった…

290-8 

***ハニー治療センター跡地***


ミミー「ギャバン!?」
アニー「シャイダー、しっかりして!」
ダイアナ&ヘレン「起きてスピルバン!」
ケイ「闘破ったら! も~しっかりしなさ~い!」

四人が気がつくと、そこは治療センター跡地の外であった。
彼らの周りに小次郎たちも倒れており、じきに皆気がついたようだ。

小次郎「あんれ~…ここは、何処だべか?」
大五郎「うう~む…我輩たちは、夢でも見ていたのであろうか?」
洋介「夢じゃありませんよ、大五郎さん」
美和「城さ…ん? 城さんじゃないの! 会いたかった~!」
大五郎「おおお! 城さんではないか、ありゃダイアナさんも!」
ダイアナ「うふふ…お久しぶりね、大五郎さん」
小次郎「ややや! 烈ちゃんでねえか!? いやあ~久しぶりだべ~!」
烈「よう! 相変わらずだねぇ、小次郎さん」
小次郎「おや、大ちゃんにアニーさんにミミーさんも!
 何だな~今日は随分懐かしい顔ぶれに会える日だなや~!」
ミミー「皆さん。皆さんはあのハニー萬田に騙されていたんです。
 身体の調子が良くなったつもりでも実は皆さんの身体中に
 ミツバチダブラーという怪物の毒が走り回っていたんですよ!」
小次郎「ハニー先生が!? んなバカなあ~っ」
大「(小次郎さん…。前にも被害に遭ってるはずなのに…懲りない人だなあ)」
 
◇    ◇

アニーの手当てが的確だったおかげで、アランは事無きを得ていた。
そんな彼に、ギャバンはグッドニュースを持って来ていた。
ビーズ星がレジスタンスの活躍で解放され、リン王女も無事身柄を
保護されたのだ。コム長官の辞令により、アランは傷が癒え次第また
ビーズ星担当に戻ることになった。入れ代わりに、地球担当の
シャイダー・アニーのサポートはスピルバンたちが引き受けることになる。

アラン「しっかり頼むぞ。君たちなら、心配ないだろうがな」
洋介「はい!」

闘破「痛てて! もっとそっとやれよケイ」
ケイ「何言ってるの。それくらいの怪我で情けないわね~!」
闘破「親父…また磁光真空剣に助けられたぜ」
哲山「ウム。もしかしたら磁光真空剣には、まだわしでも知らぬ
 秘密があるのやもしれぬな…」

バゥン―ッ!! ドドドドド…

闘破「馬風破じゃないか!」
馬風破「久しぶりだな、磁雷矢」

そこへ、黒いオートバイ『シャドーマッハ』に跨る風忍・馬風破がやって来た。
復活した妖魔一族の動きを探っていた彼が持って来たのは、
最悪と言っていいバッド・ニュースであった。

哲山「毒斎が失われたパコを求めて過去の時代へ
 行ったじゃと!?」
馬風破「ああ。確かな筋からの情報だ、間違いない」
闘破「そうか…。奴らもGショッカーとやらに組したようだな。
 烈さんたちの話だと、Gショッカーという組織は地球征服どころか、
 全宇宙や他の次元…やらにも魔手を伸ばしてるらしいぜ。
 過去へ行ったのも侵略の一手というわけか」
馬風破「そうではあるまい。毒斎の場合は、Gショッカーのため
 というより己の野望達成が一番だろうからな…」
哲山「ウウム…確かに毒斎なら、やりかねん」
学「Gショッカーってそんなにスゴいやつらなの!?
 兄ちゃん、そんな奴が相手じゃとても勝ち目なんてないよ!」
闘破「違うぜ学。俺には聞こえるんだ…この磁光真空剣を
 通して過去の時代でも、Gショッカーと必死に戦っている
 人たちの声がな。そうさきっと――」

290-9 

***バビロス号ブリーフィングルーム***


コム長官に事件解決の報告を済ませた一同は、今回敵に引き込まれた、
魔空空間でも幻夢界でも不思議時空でもない異次元世界
『ポイント・ゼロ』について話し合っていた。
山地家の人々にも事情を話し、戸隠流も快くこのプロジェクトに協力して
くれることになった。

烈「作戦失敗と見做すと、奴ら随分慌てて俺たちをあの世界から
 追い出した…そう思えるんだがどう思う?」
洋介「確かに。あのまま我々を閉じ込めておくこともできただろうに…」
大「あれ以上、いられたらマズイような素振でしたよね」
洋介「女王パンドラは里帰り中だとか言っていた……
 もしかしたら、Gショッカーの拠点があの空間に存在しているのでは?」
烈「やっぱり君もそう思うか。Gショッカーの偉いさんらしいあの女が、
 悠長に見物に来ていたことからも考えて、正しい推理かもしれんぜ」
大「だったら凄い発見ですよ。こっちから連中の根城に総攻撃を
 かけて一気に叩くことができるかもしれない!」
烈「まあそう慌てるな。ベムサソリの口からも何か有力な手掛かりが
 出るかもしれんし、ここはじっくり対策を練ろう。
 コム長官も今回の報告は中央に提出して審議してもらうと言ってたしな」

ポイント・ゼロに存在するかもしれないGショッカーの本拠地。
この見解は、やがて確信に変わり、後の動乱へと発展してゆく……―――

290-10 

○一条寺烈/ギャバン→シャコモンスター、サイダブラーを撃破。パンドラ生命機械人と
  戦闘になるが苦戦。スピルバンの機転で辛くもこれを退け、無事地上へ戻る。
  ポイント・ゼロにGショッカー本部があるのではないかと睨んでいる。
○城洋介/スピルバン→奇妙な因縁によりバッファローダブラーを撃破。パンドラ生命機械人と
  戦闘になるが苦戦。ベン博士から渡されたウィルス入りのレーザースナイパーで辛くもこれを退け、無事地上へ戻る。 ポイント・ゼロにGショッカー本部があるのではないかと睨んでいる。
○沢村大/シャイダー→焼結して不思議獣バリバリ、デスデスを撃破。パンドラ生命機械人と
  戦闘になるが苦戦。スピルバンの機転でで辛くもこれを退け、無事地上へ戻る。
  ポイント・ゼロにGショッカー本部があるのではないかと睨んでいる。
○山地闘破/ジライヤ→忍者服を装着して魔怪獣ケンキャクビースト撃破。パンドラ生命機械人と
  戦闘になるが苦戦。スピルバンの機転でで辛くもこれを退け、無事地上へ戻る。
  風忍・馬風破から鬼忍毒斎が妖魔一族を引き連れ過去へ行った情報を聞かされる。
○アラン→Gショッカーコロシアムの戦いで重症を負うがアニーの手当てにより助かる。
  ギャバンからビーズ星解放の朗報を聞き、再びビーズ星担当刑事に任命される。
○馬風破→復活した妖魔一族の足取りを追っていた。鬼忍毒斎の消息を磁雷矢に伝える。
○山地哲山→魔忍シルビアを見事退治する。
○山地ケイ/恵美破→花吹雪で哲山の戦いを援護する。
○アニー→引き続き魔忍シルビアと対決。アランを治療する。
○ダイアナ→引き続き魔忍シルビアと対決。
○ヘレン→引き続き魔忍シルビアと対決。
○大山小次郎→無事救出され、一条寺烈やミミーと再会した。
○小山大五郎→無事救出され、城洋介やダイアナと再会した。
○小山美和→無事救出され、城洋介やダイアナと再会した。
●女王パンドラ→悦に浸っていた所で宴を邪魔され激怒。パンドラ生命機械人に変身、
 ギャバン・シャイダー・スピルバン・ジライヤの四人を圧倒するも、スピルバンにウイルス入り
 レーザースナイパーを撃ち込まれ苦しみながら撤退に追い込まれる。
●ギローチン皇帝→女王パンドラの身を案じて撤退。
●ハニー萬田→女王パンドラの身を案じて撤退。女王を苦しめ、己の顔に泥を塗った
 宇宙刑事やスピルバンを激しく呪い復讐を誓っている…。
●ハンターキラー→宇宙刑事たちの強運と折れない姿を心の中では感心している。撤退。
●ガイラー将軍→ポイント・ゼロに現れたギャバンらを見て驚嘆する。撤退。
●ヘスラー指揮官→ポイント・ゼロに現れたギャバンらを見て驚嘆する。撤退。
●神官ポー→ポイント・ゼロに現れたギャバンらを見て驚嘆する。撤退間際、
 好敵手たちの健闘を認める素振を見せる。
●魔忍シルビア→哲山に斬られ、自らサイコゾーンに飛び込み自爆する。
●シャコモンスター→ギャバンのレーザーZビームを浴びて爆死。
●ケンキャクビースト→ジライヤの磁光真空剣真っ向両断で斬られ消滅。
●バリバリ→シャイダーのシャイダーブルーフラッシュを食らい爆死。
●サイダブラー→ギャバンにしつこく食い下がるも、ギャバンダイナミックで斬られ爆死。
●バッファローダブラー→スピルバンを押しまくるが、アークインパルスを食らい爆死。
●デスデス→シャイダーのシャイダーブルーフラッシュを食らい爆死。
●パンチャー→ギローチンの命令で女王救出に出るが、ギャバン・シャイダー・スピルバン・ジライヤ
 の必殺同時攻撃を一身に浴びて敢え無く爆死。
●カーミラー→ギローチンの命令で女王救出に出るが、ギャバン・シャイダー・スピルバン・ジライヤ
 の必殺同時攻撃を一身に浴びて敢え無く爆死。

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【今回の新規登場】
○風忍・馬風破(世界忍者戦ジライヤ)
 妖魔一族が、磁雷矢と戦って全滅した特殊忍者群「風・水・火・木・土」
 の五人衆の能力を結集して造り上げたサイボーグ忍者。
 頭脳と記憶は特殊忍者・風を元に受け継いでいる。戦闘コンピューターを
 内蔵し、様々な武器を使いこなす磁雷矢の最強ライバルとなったが、
 やがて良き友となり、妖魔一族との最終決戦に駆けつける。

●サイダブラー(宇宙刑事ギャバン)
 生体合体装置で誕生したマクーのダブルモンスター第一号。
 人間体は黒いシルクハットにステッキ姿の髭を蓄えた中年男性で、その顔は
 某秘密結社の大幹部そっくりである。剣の使い手でレーザーブレードと互角に
 戦い初戦ではギャバンを追い込んだほど。右胸の心臓が弱点。
 
●バッファローダブラー(宇宙刑事ギャバン)
 マクー基地をガードする、屈強のダブルモンスター。強靭な外郭を持ち、
 怪力にものを言わせた突進力に優れる。森林パトロール隊員であった
 伊賀電を襲い、瀕死の重症を負わせた。シャリバン誕生の切欠を作った
 業の深いダブルモンスター。
 
●不思議獣デスデス(宇宙刑事シャイダー)
 キラーXなる怪人物に化け、魔神島で世界格闘技トーナメントを開催。
 そこに沢村大を誘き寄せ殺害しようとした。バイキングの戦士のような
 姿をしており、凶暴で蛮刀と鉄球を振り回し獲物を狙う。

●ニュー戦闘機械人パンチャー(時空戦士スピルバン)
 ギローチン皇帝が改良・開発した、従来より数段強力なニュー戦闘機械人第一号。
 自らの意志を持ち、言葉も喋る。非常に素早い攻撃で相手を消耗させ仕留める。

●ニュー戦闘機械人カーミラー(時空戦士スピルバン)
 ギローチン皇帝が改良・開発した、従来より数段強力なニュー戦闘機械人。
  空を飛び、急降下して襲いかかる。超音波を吐き、舌は槍にもなる。
 人間の血液を吸い粒状のエキスを精製できる。