『救世主、再び』

作者・ユガミ博士

1

***龍神池***

―僕は戦部ワタル。信じられないかもしれないけど、僕は救世主なんだ。
小学校4年の時に、この龍神池で守護龍に連れて行かれて神々の住む山
「創界山」を救う救世主に選ばれた。創界山は悪の帝王「ドアクダー」
に支配されていて、七つの虹を失っていた。僕は「魔神」である「龍神丸」
と共に七つの虹を取り戻す為、ドアクダーの軍団と戦った。ドアクダーを
倒してからしばらくすると、今度は「ドアルダー」に支配された星界山を
救う為に、再び救世主になった。その後も救世主として、僕は戦った・・・。

ワタル「・・・また、創界山に行きたいな。」

ワタルは龍神池を見ながら、創界山の事を思い出していた。
すると、龍神池が光輝いた。

ワタル「な、何だ!?」

ザパァァァン

池の中から現れたのは金色の龍だった。

ワタル「君は・・・龍神丸!」
龍神丸「久しぶりだな、ワタル。」

自分の最高のパートナーにして、親友である龍神丸に再会できた事に
ワタルは嬉しさでいっぱいだった。

ワタル「どうしたんだい、龍神丸?まさか、また創界山に危機が!」
龍神丸「ああ、ドアクダーが復活した。」
ワタル「何だって!?」
龍神丸「ドアクダーだけではない。創界山のあるアースティアに邪龍族や
 ゴブーリキ、アブラームの軍までもが甦ってしまったのだ。」
ワタル「そ、そんな・・・。」
龍神丸「ワタル、また君の力を貸してはくれないか。」
ワタル「・・・分かったよ。何たって僕は救世主だからね。」
龍神丸「ありがとうワタル。では、行くぞ!」
ワタル「うん、龍神丸。」

ワタルは龍神丸と共に神部界=アースティアへと向かった。

2

一方、その頃・・・。

***次元トンネル***

地球(=ヒューマンワールド)を含めたブレーンワールドを繋ぐ次元トンネルを
巨大な戦闘機とそれを追う12台の車両・・・甦った蛮機族ガイアークが新たに
開発した“ビッグ蛮ドーマ”とマシンワールドの住人“炎神”とそのパートナー
である“炎神戦隊ゴーオンジャー”である。

スピードル「待ちやがれ、ドルドル!」
ゴーオンレッド「マッハで捕まえてやるぜ!」

ゴーオンレッドとスポーツカー型炎神スピードルは追いつこうとスピードを
上げていった。

チラカソーネ@ビッグ蛮ドーマ「しつこいなのーね!」
バッチード@ビッグ蛮ドーマ「このままでは、追いつかれてしまうのであーる!」
キレイズキー@ビッグ蛮ドーマ「あいつらを掃除してくであります。」
ヨゴシマクリタイン@ビッグ蛮ドーマ「攻撃用意ナリナ!」
ウガッツ@ビッグ蛮ドーマ「ウガッツー!」

ドギューン!ドギューン!

ビッグ蛮ドーマの翼に取り付けてある機関砲からビームを浴びせた。

ゴーオングリーン「うわぁ、撃ってきたー!」
バルカ「大丈夫か?アミーゴ。」
ジャン・ボエール「こちらも攻撃するのであーる!」
ゴーオンブルー「行くっすよ、バスオンミサイル!」
バスオン「おう、喰らいやがれってんだすっとこどっこい!」
ゴーオンイエロー「ベアール、ブイブイミサイルお願いね。」
ベアールV「ウチに任せとき!ブイブイミサイル。」
ゴーオンブラック「ガンパードガン、発射!」
ガンパード「ガンガガーン!」
ゴーオンゴールド「トリプターパタリオットだ。」
トリプター「OK!アニキ。パタパタパター。」
ゴーオンシルバー「ジェットラストマホーク、発射!」
ジェットラス「了解だ、バディ!ギーン。」

炎神達からそれぞれミサイル等がビッグ蛮ドーマに向けて、発射された。

キャリーゲーター「あ、おとなしくお縄につくで~ござる!」
ゴーオンレッド「キシャモス、アイスエイジエクスプレスだ!」
キシャモス「パオ~!」
ティライン「ガオー!」
ケライン「ギャオー!」

連結状態のキシャモスの鼻から強烈な冷気がビッグ蛮ドーマを襲った。

3

ドゴォォォン

チラカソーネ@ビッグ蛮ドーマ「うわっとと!」

攻撃を受けたビッグ蛮ドーマが激しく揺れた。

ヨゴシマクリタイン@ビッグ蛮ドーマ「こうなれば、主砲の用意ナリナ!」

ビッグ蛮ドーマの背部から巨大な砲身が姿を現し、すぐにエネルギーを
チャージした。

ボンパー「何か来るよ!」
ジャン・ボエール「イカン!皆、すぐに散らばるのだボエー!」

だが、時は既に遅し、主砲から特大のエネルギーが撃ちだされゴーオンジャー
達に直撃した。

ドゴォォォン

ゴーオンジャー&炎神「「「「「「「うわぁぁぁぁぁぁ」」」」」」

直撃を受けたゴーオンジャー達はそのまま、次元の波に飲み込まれてしまった。

ヨゴシマクリタイン@ビッグ蛮ドーマ「ようし、今の内に離脱するナリナ。」

ビッグ蛮ドーマはそのまま、次元トンネルの先へと進んでいった。そして
次元の波に飲み込まれたゴーオンジャー達は果たして、無事なのだろうか?

ワタル「次回も面白かっこいいぜ。」
スピードル「次回もGO-ON!」

4

○江角走輔→ガイアークを追撃していたが、スピードルと共に次元の波に飲まれる。
○スピードル→ガイアークを追撃していたが、走輔と共に次元の波に飲まれる。
○香坂連→ガイアークを追撃していたが、バスオンと共に次元の波に飲まれる。
○バスオン→ガイアークを追撃していたが、連と共に次元の波に飲まれる。
○楼山早輝→ガイアークを追撃していたが、ベアールVと共に次元の波に飲まれる。
○ベアールV→ガイアークを追撃していたが、早輝と共に次元の波に飲まれる。
○城範人→ガイアークを追撃していたが、バルカと共に次元の波に飲まれる。
○バルカ→ガイアークを追撃していたが、範人と共に次元の波に飲まれる。
○石原軍平→ガイアークを追撃していたが、ガンパードと共に次元の波に飲まれる。
○ガンパード→ガイアークを追撃していたが、軍平と共に次元の波に飲まれる。
○キャリーゲーター→ガイアークを追撃していたが、次元の波に飲まれる。
○須塔大翔→ガイアークを追撃していたが、トリプターと共に次元の波に飲まれる。
○トリプター→ガイアークを追撃していたが、大翔と共に次元の波に飲まれる。
○須塔美羽→ガイアークを追撃していたが、ジェットラスと共に次元の波に飲まれる。
○ジェットラス→ガイアークを追撃していたが、美羽と共に次元の波に飲まれる。
○ジャン・ボエール→ガイアークを追撃していたが、ボンパーと共に次元の波に飲まれる。
○キシャモス→ガイアークを追撃していたが、ティライン、ケラインと共に次元の波に飲まれる。
○ティライン→ガイアークを追撃していたが、キシャモス、ケラインと共に次元の波に飲まれる。
○ケライン→ガイアークを追撃していたが、キシャモス、ティラインと共に次元の波に飲まれる。
○ボンパー→ガイアークを追撃していたが、ジャン・ボエールと共に次元の波に飲まれる。
○戦部ワタル→龍神丸に導かれ、再び創界山へ行く。
○龍神丸→ワタルを導く。●ヨゴシマクリタイン→ビッグ蛮ドーマから主砲を発射する。
●バッチード→ゴーオンジャー達から逃走中。
●チラカソーネ→ゴーオンジャー達から逃走中。
●キレイズキー→ゴーオンジャー達から逃走中。
●ウガッツ→ビッグ蛮ドーマを操縦。

【今回の新登場】
○江角走輔=ゴーオンレッド(炎神戦隊ゴーオンジャー)
元カーレーサー。「マッハで~」が口癖で、類まれなる強運の持ち主で
毎回コイン占いをしてもほとんど外れた事がないが、外れた場合は本当に
悪い事が起きる。

○香坂連=ゴーオンブルー(炎神戦隊ゴーオンジャー)
元バスの送迎手。老舗割烹旅館の跡取りだったが、レースチームのメカニック
になりたい為、家を飛び出す。ゴーオンジャーの母親的存在。「ズバリ~」が口癖。

○楼山早輝=ゴーオンイエロー(炎神戦隊ゴーオンジャー)
パティシエ志望の少女。レース場で売店のバイトしていた時にゴーオンジャー
となる。「スマイルスマイル」がモットー。

○城範人=ゴーオングリーン(炎神戦隊ゴーオンジャー)
フリーターでアルバイト感覚でゴーオンジャーとなった。楽天的でムードメーカー。
人懐っこいが反面、軽薄な所が欠点。軍平とはよくコンビを組む。

○石原軍平=ゴーオンブラック(炎神戦隊ゴーオンジャー)
元警察官。当初「刑事」を名乗っていたが、ハッタリで制服警官。(刑事に
なる辞令はきていた。)管轄の問題でガイアークに手が出せない警察を辞め
ており、プロ意識が強い。

○須塔大翔=ゴーオンゴールド(炎神戦隊ゴーオンジャー)
ゴーオンウィングスの1人である美羽の兄。冷静沈着かつクールな性格で
何でも完璧にこなせており、様々な所からスカウトがきている。実は怪談が苦手。

○須塔美羽=ゴーオンシルバー(炎神戦隊ゴーオンジャー)
ゴーオンウィングスの1人である大翔の妹。好奇心旺盛で、
兄同様、第六感が秀でている。

○炎神スピードル(炎神戦隊ゴーオンジャー)
走輔のパートナー。コンドルモチーフのスーパーカー型の炎神。
機体番号は「1」最速のスピードを持っている。

○炎神バスオン(炎神戦隊ゴーオンジャー)
連のパートナー。ライオンモチーフのバス型炎神。機体番号は「2」
江戸っ子気質。

○ベアールV(炎神戦隊ゴーオンジャー)
早輝のパートナー。熊モチーフのRV車型炎神。機体番号は「3」
大阪弁を話す。

○炎神バルカ(炎神ゴーオンジャー)
範人のパートナー。シャチモチーフのバイク型炎神。機体番号は「4」
間違ったイタリア語やスペイン語を使うラテン系。

○炎神ガンパード(炎神戦隊ゴーオンジャー)
軍平のパートナー。シェパードモチーフのパトカー型炎神。機体番号は「5」
ハードボイルドで一匹狼な所があるが、正義感は強い。

○炎神キャリーゲーター(炎神戦隊ゴーオンジャー)
ジャイアン族でワニモチーフのキャリーカー型炎神。機体番号は「6」
歌舞伎役者のような喋り方をする。パートナーはいない。

○炎神トリプター(炎神戦隊ゴーオンジャー)
大翔のパートナー。鶏モチーフのヘリコプター型炎神。機体番号は「7」
ウィング族で大翔の事は「アニキ」と呼んで慕っている。

○炎神ジェットラス(炎神戦隊ゴーオンジャー)
美羽のパートナー。虎モチーフの戦闘機型炎神。機体番号は「8」
ウィング族で美羽の事は「バディ」と呼んで慕っている。

○炎神ジャン・ボエール(炎神戦隊ゴーオンジャー)
ウィング族とジャイアン族の性質を持っている鯨モチーフのジャンボ機型炎神。
機体番号は「9」須塔兄弟の教官にして、ボンパーの開発者。

○炎神キシャモス(炎神戦隊ゴーオンジャー)
古代炎神の1体で、マンモスモチーフの蒸気機関車型炎神。機体番号は
「10」ティライン、ケラインを牽引している。

○炎神ティライン(炎神戦隊ゴーオンジャー)
古代炎神の1体で、ティラノサウルスモチーフの新幹線型炎神。機体番号は
「11」機動力に優れている。

○炎神ケライン(炎神戦隊ゴーオンジャー)
古代炎神の1体で、トリケラトプスモチーフの新幹線型炎神。機体番号は
「12」ティライン同様、機動力に優れている。

○ボンパー(炎神戦隊ゴーオンジャー)
ゴーオンジャーの水先案内ロボット。装備の開発、メンテナンス、ガイアーク
の探知等を行う。ジャン・ボエールによって造られた。

○戦部ワタル(魔神英雄伝ワタルシリーズ)
創界山、星界山を救った救世主の小学生。「おもしろ○○ぜ」が口癖。

○龍神丸(魔神英雄伝ワタルシリーズ)
ワタルのパートナーである魔神。実は創界山の守護龍。

●総裏大臣ヨゴシマクリタイン(炎神戦隊ゴーオンジャー)
ガイアークを裏で操る総裏大臣。ヨゴシュタインの父親で、息子とは違い、
冷酷な性格をしている。「テンカノボウトウ」という棒状の武器を所持し、
11次元の覇者になる野望を持っている。害地目出身。

●危官房長官チラカソーネ(炎神戦隊ゴーオンジャー)
総裏大臣の女房役で、相手の攻撃を無効化する天地羅荷死憲法の使い手。
害気目出身。

●掃除大臣キレイズキー(炎神戦隊ゴーオンジャー)
ブレーンワールド侵攻の邪魔を排除する掃除大臣。「おソウジ7つ道具」の
使い手である戦闘のプロフェッショナル。害水目出身。

●害統領バッチード(侍戦隊シンケンジャーVS炎神戦隊ゴーオンジャー銀幕BANG!!)
ガイアークの害統領。三途の川の水を使って、汚れたガスを永久に垂れ流し、
全てのワールドを汚す事の出来る「バッチリウムプラント」を完成させようと
外道衆と手を組んだ。圧倒的な戦闘力を持つが、執念深く騙し討ちや汚い手段
を平気で行う卑怯で狡猾な性格をしている。

●蛮機兵ウガッツ(炎神戦隊ゴーオンジャー)
スクラップから作り出された一般兵。


『救世主と正義のミカタ』

作者・ユガミ博士

5

***神部界(アースティア)・モンジャ村***

???「・・・タル、・・・ワタル。」
ワタル「う、う~ん。」
???「ワッタル~!」

ボゴッ!

ワタル「ぐはぁ!」

眠っていたワタルの腹に思いっきり誰かが乗った。眼を開けるとそこにいたのは、
小さな女の子だった。その女の子の名前は「忍部ヒミコ」。忍部一族という忍者
一族の頭領で、ワタルと共に創界山、星界山を救った仲間である。

ワタル「痛いなー、ヒミコ。」
ヒミコ「ワタルが起きたのだ。」
???「おお、ワタル。目が覚めたか!」
ワタル「お久しぶりです!シバラク先生。」

そこへ現れたのはカバのような顔をした男・・・ワタルの剣の師匠である
剣部シバラクという剣豪である。

ワタル「話は龍神丸に聞きました。ドアクダーが復活したというのは本当ですか?」
シバラク「うむ、創界山だけでなく海火子の報せで星界山にもその勢力を延ばして
 いるそうじゃ。星界山は海火子や父君であるイサリビ殿の尽力でどうにか抵抗して
 いるのが現状じゃ。」
???「それだけはござらん。」
ワタル「あなたは・・・月心さん!」

やって来たのは額に三日月のマークがついた大柄の男・・・リューサムライの
使い手であるヒノデ国の侍・月心だった。ワタルは創界山の旅をしている最中、
邪竜族やアブラーム軍と遭遇し、邪竜族達を追っていた戦艦「イオニア」の
メンバーと出会い、そのまま仲間となりドアクダーを倒した後は邪竜族、アブラーム
地球ではジャーク帝国や魔王ゴクアーク、機械化帝国、ドラゴ帝国等と戦っていたの
である。

月心「本来ならばアースティアを守る聖なる結界で邪竜族は入って来れぬのだが、
 奴等は何処か別の道から進入してきているのでござる。現在、パフリシア王国を
 中心に連合軍を結成しようという動きがあり、此方にいるシバラク殿達のお力を
 借りれないかと来た次第でござる。」

月心は此処へ来た目的をワタル達に説明した。
ワタル「そうだ!翔龍子様・・・虎王はどうなったの?」
シバラク「分からぬ。無事なのか、ドアクダーの手に落ちたのか行方が分からぬのじゃ。」
ヒミコ「大丈夫、虎ちゃんは無事なのだ。」
ワタル「・・・そうだね。虎王の事だもの、大丈夫さ。」
???「た、大変じゃー!」

そこへ現れたのはモンジャ村の長老・妖部オババだった。

ワタル「オババ様!どうしたんですか!?」
オババ「おおワタル。この村へ、ドアクダーの手の者が向かって来ておる!」

6

屋敷の中にいたワタル達が外へ出ると、ドアクダー軍の魔神・バトルゴリラ2号と
盗賊達が乗るソリッドだった。(※ワタルは既に救世主の衣装に着替えている。)

シュワル・ビネガー「ドアクダー様、クルージング・トム様の命令により、この
  村を制圧する。」
盗賊A「へっへっへ、協力すれば報酬はたんまりだぜ。」
盗賊B「ひゃっはー!汚物は消毒だー!」

バトルゴリラ2号に乗るドアクダー軍のシュワル・ビネガーとソリッドに
乗る盗賊達はモンジャ村を襲い始めた。

ワタル「大変だ!」
月心「ワタル殿、奴等から村を守るでござる。」
ワタル「うん!ヒミコ、オババ様と一緒に村の人達を安全な場所まで避難
 させるんだ。」
ヒミコ「分かったのだー!」
オババ「頼むぞ、ワタル。」

ヒミコは猛スピードでオババ様と一緒にその場から離れた。

ワタル「よーし、行くぞ!龍神丸ー!」
月心「リューサムライ・疾風丸ー!」

ワタルは剣を天に向かって掲げ、自分の魔神である龍神丸を呼び出し、乗り込んだ。
月心は刀からリューが封印されているミストロットを取り出し、愛機であるリュー
サムライ・疾風丸を呼び出した。

月心「チェストー!」

疾風丸に乗り込み、戦える準備は万全となった。

シバラク「ピポパっと・・・あ!もしもし、戦ちゃん?ワシ、シバラク。
 今から来てくれない?出来るだけ早くねー。」

懐から携帯電話を取り出し、自分の愛機である戦神丸を呼び出すが、時間が
かかる為、龍神丸と疾風丸はすぐさま戦闘を開始した。

月心「とりゃぁぁぁぁ!」
ワタル「飛龍拳ー!」

疾風丸の槍が突き、龍神丸の竜爪が飛び次々、ソリッドを倒していく。

シバラク「あいや、しばらくしばらく!これより剣部シバラクと戦神丸が
 お相手致すー!野牛シバラク流・×の字斬りー!」

遅れてきたシバラクも参戦し、ますますドアクダー側は劣勢となっていた。

盗賊A「だめだー、こいつら強すぎるー!」
盗賊B「勝ってこねー!」
シュワル・ビネガー「安心しろ、手は打ってある。救世主ワタル!あれを見ろー!」
ワタル「何!?」

ワタルが指差す方を見ると、兵士ゴーキントンによってヒミコ達モンジャ村の人々が
捕まっていた。

ヒミコ「ニャハハハ、捕まっちたのだ。」
月心「おのれー、何と卑怯な。」
シュワル・ビネガー「さぁ、おとなしく武器を捨ててもらおうか?」

ワタル達は村人達を助ける為、武器を捨てようした。しかし・・・。

ぎゅぉぉぉぉぉん

ゴーキントンA「ぎゃ!」
ゴーキントンB「ぐふぇ!」

まるで、F1カーが通ったような音と共にゴーキントンが倒された。

7

音が消えると、そこに立っていたのは赤いスーツにコンドルの意匠を持つメットを
被った1人の戦士(ヒーロー)が立っていた。

ワタル「あれは・・・。」
シュワル・ビネガー「貴様、何者だ!?」
ゴーオンレッド「マッハ全開、ゴーオンレッド!人質は助けたぜ。」
ワタル「やっぱりゴーオンレッドだ!」
シバラク「ワタルよ、知っておるのか?」
ワタル「うん、僕の世界でも有名なヒーローの1人だよ。」

ゴーオンジャーは人気ランキングがあるほどの有名なスーパー戦隊である。
ワタルも当然、知っていた。そして、何故ここにゴーオンレッドがいるのか?
それは少し時間を巻き戻す。

***モンジャ村の近くの森***

次元の波に飲まれたゴーオンジャー。その中、ゴーオンレッドこと江角走輔と
スピードルはモンジャ村の近くの森に落ちた。気がついた2人はここが何処
なのかを調べる為、森を歩いていた。

走輔「皆、何処いったんだ?。」
スピードル「分からないドル。何処か別の場所に落ちたか。別の世界(ワールド)か
 ・・・次元の波に飲み込まれたか。」
走輔「そう暗くなるなよ。あいつ等だったら、きっと無事さ。」
スピードル「そうだな。スマン、俺らしくなかったドルドル~。」

デフォルメ化したスピードルが暗い表情を見せたが、走輔の言葉に
元気を取り戻した。

ドドドドッ!

走輔「何の音だ!?」
スピードル「あっちだドルドル~。」

音のする方へ行くと先ほどのワタル達とドアクダー軍の戦いの場面に遭遇した。
そして、ゴーキントン達が村人達を捕まえていた。

スピードル「走輔・・・。」
走輔「ああ、あの人達を助けるぞ。」

走輔は変身ケータイ・ゴーフォンとチェンジソウルを取り出した。

走輔「チェンジソウル・セット!レッツGo―On!」

ゴーフォンにチェンジソウルをセットし、起動させると走輔の体は赤い
バトルスーツに身を包んだ。

走輔「メットオン!」

最後にヘルメットをつけて、走輔はゴーオンレッドへと変身を完了した。
変身を完了したゴーオンレッドはマンタンガンをロッドモードに変形させ、
高速で走り出し、ゴーキントン達を倒したのである。

8

人質が助け出された事で、盗賊達に動揺が走った。

盗賊A「ゲェー、もうダメだー!」
盗賊B「命あってのものダネだー。逃げろー!」
シュワル・ビネガー「ま、待てー、貴様等ー!」

盗賊達はこれ以上は付き合えないと一目散に逃げしていき、残ったのは
アーノルド・ビネガーのみになってしまった。

龍神丸「ワタル、今だ!」
ワタル「うん、登ー龍ー剣!」

龍神丸は登龍剣を振り上げ、バトルゴリラ2号を一刀両断し、爆発した。

シュワル・ビネガー「また、負けたぁ~~~!」

爆発によってシュワル・ビネガーは天高く飛ばされたのであった。

戦いが終わり、龍神丸から降りたワタルは変身を解いた走輔の元へと行った。
あのロボット(=龍神丸)に乗っていたのが小さい少年だった事に驚く走輔
とスピードルだったが、事情を知り、自分達の事をワタル達に話した。

???「お~い、ワタルー!」
シバラク「あれは、クラマか!」
ヒミコ「お~い、トリさ~ん。」

そこへ来たのは眼帯を着けた鳥・・・ワタルの仲間である渡部クラマ。元々、
人間だったが、とある事情により現在は鳥の姿になっている。クラマはヒミコ
の父・忍部幻龍斎と共にドアクダー軍の情報を収集していたのであった。

クラマ「久しぶりだな、ワタル。いい情報を持ってきたぜ。」
ワタル「どんな情報なんだい、クラマ?」

クラマが持ってきた情報というのは、創界山を開放する為のアイテムが
ドアクダーの手によってアースティア中に隠されたという情報だった。

9

その話を聞いて、ワタル達はまずは何処へ行けばいいのかという事になった。
そこで月心が「パフリシア王国を目指してみては?」と提案する。今、連合軍
を結成する為、多くの人が集まっている。その為情報が集まりやすいというわけだ。

走輔「話はだいたい、分かった。俺も一緒に行っていいか?」
ワタル「え?良いんですか。」
走輔「ああ、一緒に旅をしていれば、仲間も見つかるかもしれないからな。」
ワタル「走輔さんが仲間になってくれれば、心強いや。」

走輔とスピードルはワタル一行に加わる。

クラマ「俺はもうちょっと、情報を集めていくぜ。

 何か分かったら教えるからよ。」

クラマはそう言って、情報収集の為飛び去った。

月心「拙者はしばらくこの村にいよう。また村が襲われるかもしれないで
 ござるからな。いずれ、時が来れば合流致そう。」

月心は防衛の為、モンジャ村に残る事とした。そして、ワタル、シバラク、
ヒミコ、走輔&スピードルは一同、パフリシア王国へと目指す。果たして、
ワタルは創界山を救う事が出来るのか?走輔は仲間と合流できるのか?
それは神も知らない事である。

○戦部ワタル→龍神丸に乗り込み、ドアクダー軍と戦う。
○忍部ヒミコ→モンジャ村の人を避難させるがゴーキントンに捕まるが、
       ゴーオンレッドに助けられる。
○剣部シバラク→戦神丸に乗り込み、ドアクダー軍と戦う。
○妖部オババ→ゴーキントンに捕まるがゴーオンレッドに助けられる。
○渡部クラマ→ドアクダー軍の情報収集を行い、情報をワタル達に教える。
○江角走輔&スピードル→ゴーオンレッドとなり、モンジャ村の人達を助ける。
           そして、旅に同行する。
○月心→疾風丸に乗り込み、ドアクダー軍と戦う。しばらく、モンジャ村の護衛を
    する事になる。
●シュワル・ビネガー→モンジャ村を襲うが、ワタルに負ける。
●ゴーキントン→モンジャ村の人達を人質に取るが、ゴーオンレッドに倒される。

10

【今回の新登場】
○忍部ヒミコ(魔神英雄伝ワタルシリーズ)
忍部一族13代目頭領である女の子。天真爛漫で、怖い物知らずで能天気な性格
をしている。未完成な忍術が多いが、歴代頭領1の破壊力を持っている。

○剣部シバラク(魔神英雄伝ワタルシリーズ)
ミヤモト村出身の剣豪。野牛シバラク流の使い手。カバそっくりの顔で単純な所
がある。電話で戦神丸を呼び出して戦う。星界山では一時的にドワルダー軍の
将軍にいたが、ワタルと新生戦神丸によって魔界から解放された。

○妖部オババ(魔神英雄伝ワタルシリーズ)
モンジャ村在住の預言者。祭事を取り仕切り、救世主ワタル召還の儀式を行った。

○渡部クラマ(魔神英雄伝ワタルシリーズ)
当初、ドアクダーの呪いで鳥の姿にされた事からワタル一行のスパイとなっていたが、
ワタル達によって心が救われ仲間となる。その後、人間の姿に戻ったが、星界山の
第4星界にてDr・モロQにより再び鳥の姿になった。キザで皮肉屋だが面倒見は良い。

○月心(覇王体系リューナイト)
ヒノデ国出身の侍でリューサムライ・疾風丸の使い手。今まで旅をしてきた
ギャロップを涙し手厚く葬る優しい性格で真面目だがギャンブル好き。

●シュワル・ビネガー(魔神英雄伝ワタル)
某州知事になった映画俳優に良く似た筋肉バカ。「すごい奴がやってきた!」
が口癖。本来の姿は現場監督。

●ゴーキントン(魔神英雄伝ワタル2)
ドワルダー軍の兵士。ブリキントンのゴージャス版。


『出航不能!氷漬けの港』

作者・ユガミ博士

11

***アースティア・ヒノデ国***

モンジャ村を出たワタル、ヒミコ、シバラク、そして走輔とスピードルはパフリシア
を目指して、ヒノデ国の港へとたどり着いた。

シバラク「ようやく、港へとたどりついたようじゃのう。」
走輔「ここからパフリシアっていう国へ行けば、いいんだな?」
ワタル「早速、船を捜してパフリシアに行こう。」

ワタル達はパフリシアへ向かう船を探しに港町へと入っていた。
しばらくすると・・・

???「どうやら、あそこが港っすね。」
???「この世界に皆はいるのかしら?」
???「きっと、皆は無事にこの世界にいる筈やで。」
???「とりあえず、港町で情報を聞こうぜ!」

ワタル達の後に来た謎の彼等も港町へと入るのであった。

***ヒノデ国・港町***

ヒノデ国は江戸時代の日本のような文化を持つアースティアの国の一つである。
港町も江戸時代の頃の波止場のような風景をしていた。

走輔「へぇ~、本当に江戸時代みたいな国だな。」
スピードル「ドルドル~、まるでサムライワールドを思い出すぜ。」

走輔とスピードルは港町の光景を見ながら、サムライワールドの事を思い出す。

ヒミコ「キャハハハ、お団子がとっても美味しいのだ!」
ワタル「ヒミコ~!勝手に団子を食べるなよ。」

勝手にお団子を食べるヒミコをワタルが注意する。

シバラク「ワタル~、船はこっちだ!」
ワタル「分かりました、先生。・・・へっくし!」

シバラクは船を見つけたので、ワタル達を呼び出す。ワタルはそこへ
向かうが、くしゃみが出た。

走輔「大丈夫か、ワタル?あれ、何か急に寒くなってきたな。」
シバラク「おい、雪が降ってきておるぞ!?」

何と、急に冷え込んで港町に雪が降ってきた。

ビュ~ビュ~

あっという間に港町は吹雪となってしまった。

ヒミコ「キャハハハ、雪だ、雪なのだ!」
走輔「へっくし!この国ってこんなに天気が変わるものなのか!?」
シバラク「そ・・・そんな筈は・・・ぶぇっくし!」
ワタル「・・・ぜ、絶対おかしいよ。へっくしょん!」

ヒミコ以外は寒さでくしゃみが止まらなかった。そして寒さと吹雪で
海が凍りついていてく。そして海の方から巨大な何かが近づいてきた。

ドクトル・コスモ「は~はっはっは、久しぶりだな救世主ワタル!」
ワタル「お前はドクトル・コスモ!」

やってきたのは巨大なロボットに乗ってやってきたドアクダーの手下である
第4界層のボス、ドクトル・コスモだった。

ワタル「これはお前の仕業だな!」
ドクトル・コスモ「その通り、私が開発したお天気コントロールマシンで
 この港を氷の海に変えたのだ!」
シバラク「何故、このような事を・・・。」
ドクトル・コスモ「ふん、全てはお前達をパフリシア王国へ行かせない為だ!」

ドクトル・コスモはお天気コントロールマシンを使って海を凍らせたのだった。

走輔「くっ、だったらマッハで片付けてやるぜ。チェンジソウルセット!」

走輔はチェンジソウルとゴーフォンを取り出す。

走輔「レッツGo-On!」

走輔はゴーオンレッドに変身する。

ワタル「龍神丸ー!」
龍神丸「おぉー」
シバラク「もしもし、戦ちゃん?わしわしシバラク。今来れる?」

ワタルも龍神丸を召還し、シバラクも戦神丸を呼び出す。

12

ドクトル・コスモ「そっちがその気ならば、ゆけい!」

ドクトル・コスモも雇ったソリッドに乗る盗賊やゴーキントン、部下の
イモ川短銃郎が乗るノーチラスが出現する。

ワタル「うぉぉぉぉ!」
シバラク「野牛シバラク流・×の字斬り!」

龍神丸や戦神丸はソリッドを倒していく。

イモ川短銃郎「あ、ここで会ったが百年目~。その命~あ、頂戴いたす~!」
シバラク「させるか!」

イモ川短銃郎の乗るノーチラスが攻撃をするが、戦神丸がその攻撃を止める。

ドクトル・コスモ「死ね~、ワタル!」
龍神丸「てりゃぁぁぁ」

ドクトル・コスモも龍神丸を攻撃していく。一方、ゴーオンレッドもブリキントン
をマンタンガンを使って攻撃していった。

ゴーオンレッド「くそ~、きりがねぇぜ。」
スピードル「走輔、俺を巨大化させてくれ。今なら、海も凍っていて俺も十分走れるドルドル~。」
ゴーオンレッド「分かった。スピードルセット!」

炎神キャストに入れられて、スピードルは元の状態となり巨大化。氷の海を走り、
次々と敵を蹴散らして行った。

???「さ、寒いよ。」
???「見るっす!早輝ちゃん。」

ワタル達の後で港町に来た2人-香坂連、楼山早輝は港で戦っているスピードルと
ゴーオンレッドの姿を見た。

ブリキントン「くらえ~!」

ドギュュュン

ゴーオンレッド「!?」

ブリキントンの攻撃を受けそうになるゴーオンレッドだったが
ブリキントンは何かに撃たれ、倒される。

ゴーオンブルー「あぶなかったすね。走輔!」
ゴーオンイエロー「久しぶり、走輔!」
ゴーオンレッド「連、早輝お前等、無事だったか。」
ゴーオンブルー「詳しい話は後っす。まずはアイツを何とかするっす。」

変身をした2人はゴーオンレッドと再会し、

ドクトル・コスモのメカを倒す目標とした。

ゴーオンブルー「バスオンソウルセット!」
ゴーオンイエロー「ベアールソウルセット!」

炎神ソウルを炎神キャストに入れられ、バスオンとベアールVは巨大化した。
そして、3人はそれぞれパートナーの炎神に乗り込む。

バスオン「待たせてすまねぇ。」
ベアール「会いたかったで~、ダーリン!」
スピードル「バスオン、ベアール無事だったか。」
ゴーオンレッド「よし、久しぶりに行くぜ!」
ゴーオンジャー一同「「「炎神合体」」」

ナレーター:スピードル「3体の炎神の心が一つとなる時、炎神の王になるんだ!」

それぞれバスオンは下半身、ベアールVは腹部、そして、スピードルは上半身となり、
最後に頭部が出現して、エンジンオーとなった。

ゴーオンジャー「「「エンジンオー、チューンナップGO-ON」」

ドクトル・コスモ「な、何だそのロボットは!?」
ゴーオンレッド「ワタル、マッハでこいつを倒すぞ!」
ワタル「はい、走輔さん!登ー龍ー剣!」

ワタルは必殺の登龍剣を放ち、ドクトル・コスモのメカに直撃した。

ドクトル・コスモ「ぬぉぉぉ!」
ゴーオンレッド「まだまだ行くぜ!ゴーオングランプリ」

ズガァァァン

ドクトル・コスモ「うわぁぁぁ、覚えてろよ!」

エンジンオーは高速で突撃し、ドクトル・コスモのメカを破壊した。そして、
ドクトル・コスモは空の彼方へと飛ばされる。

シバラク「野牛シバラク流・×の字斬り!」
イモ川短銃郎「絶景かなぁぁぁ」

シバラクもイモ川短銃郎のノーチラスを倒した。倒した事で、吹雪はやみ、
瞬く間に港は元の状態に戻った。

13

***船の上***

走輔「そうか、他の皆とはまだ会ってないのか。」
連「俺達はヒノデ国のあちこちを探したけど、見つからなかったっす。」
早輝「だから、船で他の国を探そうとしたの。」
走輔「そうか、でも無事で良かったぜ。」

再会したゴーオンジャー達はそれまでの経緯を話し合った。

スピードル「俺もまた会えて嬉しいぜ。」
バスオン「心配かけてすまなかったぜ。」
ベアール「寂しかったで、ダーリン(ハート)」
スピードル「俺もだぜ(ハート)」

一方で、炎神達も再会を喜びあった。特に夫婦であるスピードルとベアール
は久しぶりに再会できたので、ラブラブな雰囲気を出していた。そして、
一同はパフリシアへと目指すのであった。

○戦部ワタル→龍神丸を召還し、ドクトル・コスモを倒す。
○剣部シバラク→戦神丸でイモ川短銃郎を倒す
○江角走輔→連、早輝と再会しエンジンオーでドクトル・コスモを倒す。
○香坂連→走輔と再会し、エンジンオーでドクトル・コスモを倒す。
○楼山早輝→走輔と再会し、エンジンオーでドクトル・コスモを倒す。
●ドクトル・コスモ→港を凍りつかせるがワタルとゴーオンジャーに敗北する。
●イモ川短銃郎→ノーチラスに乗り込み、戦いを仕掛けるが剣部シバラクに敗北する。

【今回の新登場】
●ドクトル・コスモ(魔神英雄伝ワタル)
第4界層のボス。お尻のような頭部が特徴的な科学者で、第3界層のボス、ソイヤ・ソイヤ
とは仲が悪いようで、実は熱い友情で結ばれている。乗機はギーガン。
本来の姿は画家。

●イモ川短銃郎(魔神英雄伝ワタル)
ドクトル・コスモの部下。歌舞伎役者のような喋り方で、変装の名人である。
横文字が苦手。乗機はノーチラス。本来の姿は大工。


『乙女の騎士、白銀の騎士』

作者・ユガミ博士

14

***アースティア・パフリシア王国王都***

ヒノデ国を出発したワタル一行とゴーオンジャー達はようやくパフリシア王国へとたどり着く。
王都には邪竜族やドアクダー軍に対抗する為、多くの戦士達が集っていた。

走輔「ここがパフリシア王国か。」
早輝「いっぱい人がいるね。」
シバラク「これも、ドアクダーや邪竜族に対抗する為に皆、集まったのであろう。」
連「ここに範人や軍平達がいるといいんスけど・・・。」
バスオン「これだけ人がいるんだ、きっと見つかる筈だぜ!オンオン。」

走輔や早輝は人の多さに驚き、連はここに仲間が来ていないかと思い、
パートナーのバスオンが連を励ました。

ぐぅ~

一同「「「「「!」」」」」

ヒミコ「にゃははは、お腹が減ったのだ。」
ワタル「しょうがないな~。まずは食事にして、その後アデューさん達に会おう。」

ヒミコのお腹が鳴る音を聞いた一同は、食事をしてからアデュー達と合流する事
に決めた。そして彼らは食堂に入る。

???「いらっしゃいませ~、何名様でしょうか?」
走輔「6人だけど、席は・・・ってア~!」「ア~!」
???「どうした?ア~!」

走輔達は応対した店員と後から来た店員の顔を見て驚いた。何故なら、
その2名こそ、探していたゴーオングリーンである城範人とゴーオンブラックである
石原軍平だったからである。それから落ち着いた後、2人のこれまでの経緯を聞いた。
この世界に来た後、路銀を稼ぐ為に食堂でアルバイトしていたのである。

範人「いや~、本当に皆と会えてラッキーだよ!」
バルカ「僕もアミーゴ達にまた会えて、嬉しいバル!」
軍平「後は大翔と美羽の2人だな。」
ガンパード「それにトリプター、ジェットラス、キャリーゲーター、ジャン・ボエール、
       古代炎神達も見つかっていないしなガンガガーン。」

これでゴーオンジャー達で見つかっていないのはゴーオンウィングスの2人と
残りの炎神だけとなったのだった。

チュドーン!

ワタル「何だ!」

一同はアデュー達の元へと向かおうとしたその時、爆発音を聞く。外へ出ると、
邪竜族、ドアクダー軍の攻撃が始まったのである。

15

王都を邪竜兵やブリキントン達が襲うが、その中には何と蛮機兵ウガッツの姿があった。

範人「何でウガッツが!?」
走輔「大方、悪党同士手を組んだだろうぜ。」
???「その通りであ~る!」

ウガッツと共に現れたのはガイアーク害統領バッチードだった。走輔達に
攻撃をした後、ヨゴシマクリタイン達と別れて単身アースティアへとやって来た。
そしてドアクダー、邪竜族と手を組んだのである。

バッチード「貴様達にはバッチリウムプラントを破壊された恨みがあるのであ~る。
      ここでその借りを返させてもらうのであ~る!」
走輔「そうは行くか。チェンジソウルセット!」
ゴーオンジャー「「「「「レッツGO-ON!」」」」」

5人の体にそれぞれ赤、青、黄、緑、黒のバトルスーツが身を包む。

ゴーンジャー「「「「「メットオン!」」」」」

最後にヘルメットをつけて変身は完了した。

ゴーオンレッド「マッハ全開!ゴーオンレッド。」
ゴーオンブルー「ズバリ正解!ゴーオンブルー。」
ゴーオンイエロー「スマイル満開!ゴーオンイエロー。」
ゴーオングリーン「ドキドキ愉快!ゴーオングリーン。」
ゴーオンブラック「ダッシュ豪快!ゴーオンブラック。」
ゴーオンジャー「「「「「正義のロードを突き進む炎神戦隊ゴーオンジャー!」」」」」

ゴーオンジャー5人は変身を完了し、名乗りを挙げた。

ワタル「やっぱり、5人揃ったスーパー戦隊はおもしろカッコイイぜ!」
シバラク「ワタルよ、我々は邪竜兵を相手にするぞ!」

既にパフリシアに来ていた戦士達が邪竜兵と戦っていた。ワタル達も龍神丸、
戦神丸を召喚し、戦いに参戦する。その一方、パフリシアの城の方には・・・。

アデュー「邪竜族・・・ドアクダーめ、ついにパフリシアに攻めてきたな!」
サルトビ「ん?あそこにいるのは龍神丸と戦神丸じゃないのか?」
イズミ「月心殿から、ワタルがこちらへ来たと連絡はありましたが王都に
    来ていたのですね。」
パッフィー「アデュー、私達も行きましょう!」
アデュー「ああ、皆行こう!リューナイト・ゼファー!」
パッフィー「リューメイジ・マジドーラー!」
サルトビ「リューニンジャ・爆裂丸!」
イズミ「リュープリースト・バウルス!」

かつて邪竜族から世界を救ったリュー使いであるアデュー、パッフィー、サルトビ、
イズミ達も自身のリューを召喚し、戦線に加わった。

アデュー「うおおお!」

ザシュ!

邪竜兵A「ギャァァァ」
ワタル「アデューさん!」
アデュー「久しぶりだな!ワタル。」
龍神丸「ワタル・・・今は再会の喜びよりも目の前の敵だ。」
ワタル「そうだね、龍神丸。」

再会を喜ぶワタルとアデューだが、まずは目の前の敵を倒す事に意識を集中した。

16

パッフィー「ホノオン!」
サルトビ「うおりゃぁ!」
イズミ「ふん!」

パッフィーやサルトビは魔法や忍者刀で邪竜兵を蹴散らしていく。イズミは
大地のメイスを使って攻撃をした。

シバラク「おお、パッフィー殿にイズミ殿、サルトビも久しぶりじゃな!」
パッフィー「お久しぶりです、シバラク先生。」
サルトビ「シバラクのおっさんも相変わらずのようだな。」
イズミ「シバラク殿、今はこの危機を乗り越えましょう。」
シバラク「うむ。ゆくぞー、野牛シバラク流・×の字斬り!」

ワタル達が邪竜族と戦っている中、ゴーオンジャー達もバッチードと激闘を
繰り広げていた。

ゴーオンブルー「ガレージランチャー!」
ゴーオンイエロー「レーシングバレット!」
ゴーオングリーン「ブリッジアックス!」
ゴーオンブラック「カウルレーザー!」
ヒミコ「キャハハハ、あちしもやるのだ!」

ゴーオンジャー4人はそれぞれの専用武器でウガッツやゴーキントンを次々と
倒していく。ヒミコも忍法を使ってかく乱するのであった。

ゴーオンレッド「ロードサーベル!」
バッチード「ヌゥゥン!」

ゴーオンレッドは専用武器ロードサーベルでバッチードに攻撃するが、それを
バッチードは受け流していくので、なかなかダメージに繋がらない。

バッチード「ふははは、貴様の攻撃はこんなものであるか?」
ゴーオンレッド「くそぅ、でもウガッツ達はどんどん減ってきているぜ。」
バッチード「むぅ~。」
???『・・・手を貸してやろうか?』

確かにこのままでは時期にウガッツ達や邪竜兵もいずれ全滅してしまう。
このままではせっかく手を組んだのに意味を成さなくなる。そう思っていた
矢先、どこから声がして「手を貸す」といってきた。

ジャァァァン

???「ヒャッハハハ、ザベル=ザロック参上だぜ!」
ゴーオンレッド「な、何だ!?お前は。」
ゴーオングリーン「ゾ、ゾンビ~!!」

現れたのはロッカー風のゾンビでギターをかき鳴らしながら現れた。
さらに同じようなゾンビやモンスターも大量に現れた。

バッチード「貴様は確か・・・魔界同盟のゾンビ・・・。」
ザベル「邪竜族は一応、魔界同盟の傘下だからよ~、手を貸して来いって
    云われてやってきたぜ~。つ~かよ~、だいたいオレ様がいる所に
    愛しのマイスイート・レイレイちゃんがいる筈なのにいないのはどういこった?
    まぁ、運命の赤い糸で結ばれているオレ様は再会出来ると信じているけどな!」

現れたゾンビ・・・魔界のあらゆる魔王に下にいるダークストーカー・ザベル=ザロックは
現在魔界同盟のエージェント的立場にいるが、その内心は自分がその頂点に立とうと
考えている。今回は傘下である邪竜族やドアクダー軍の旗色が悪いので増援に来たのであった。

ザベル「それじゃ、いっちょ派手なデスライブのスタートだ!」

ザベルはギターをかき鳴らしてゾンビ達に攻撃をするように命じるのであった。

17

民衆A「た、助けてくれ~!」
民衆B「いや~!」
アデュー「あいつら!」

大量のゾンビ達はまだ避難の終わっていない民衆に襲い掛かる。邪竜兵と戦う
アデュー達も助けに行きたい所だが、邪竜兵はまだまだいるため離れる訳にはいかなかった。

ゴーオンレッド「やめろぉぉぉぉ!」
ザベル「無駄だぜ、デスハリケーン!」
ゴーオンジャー「「「「「うわぁぁぁ!」」」」」

ゴーオンジャー達はザベルに攻撃を仕掛けるが、体を独楽のように回転して
攻撃する「デスハリケーン」によってゴーオンジャー達は吹き飛ばされてしまう。

ザベル「へへ、弱いねぇアンタら!んじゃ、早くお仕事を終わらせてもらうぜ!」
バッチード「おお、これでゴーオンジャーも最後なのであーる!」
ゴーオンレッド「く、このままじゃ・・・。」

絶体絶命のピンチ!しかし、天はゴーオンジャー達を見放していなかった。

???「イナズマ!」
ザベル「ぎゃぁぁぁ!」

突如ザベルの体を稲妻が襲った。稲妻が放たれた所を見るとそこには甲冑を
身に纏った美しい乙女と髭が特徴の騎士だった。

???「久しぶりだな、ザベル=ザロック。」
???「これ以上の非道は許しません!」
ザベル「て、手前等は・・・」

ゴーオンジャーを助けたのは女神イシターに仕える乙女の騎士ワルキューレと
魔王アスタロトから何度もプリンセスを救った白銀の騎士アーサーだった。

ゴーオンイエロー「あ、あなた達は・・・」
ワルキューレ「詳しい話は後です。」
アーサー「今はこやつらの相手が先だ。」
ザベル「くっそー、どうせならレイレイちゃんに会いたかったぜ!」

アーサーはザベルに槍や斧などのワルキューレも剣と魔法を駆使して戦う。

ゴーオンブラック「あの2人・・・カッコよすぎる。」
ゴーオンレッド「誰だか知らないけど、俺達も負けていられないな!」
ゴーオンブルー「そうッスね。」
ゴーオンイエロー「ええ。」
ゴーオングリーン「まだ、負けてないよ!」
バッチード「く、役に立たない奴め。やはり私自ら始末するのであーる!」

ワルキューレとアーサーの戦いを見て、戦意を取り戻したゴーオンジャー達は
バッチードに立ち向かう。ゴーオンブルーのガレージランチャー、ゴーオンブラック
のカウルレーザーによる遠距離攻撃、ゴーオンイエローのレージングバレットでぶつけ、
最後にゴーオンレッドのロードサーベル、ゴーオングリーンのブリッジアックスを
振りかざし、バッチードを斬り付ける。

バッチード「ぐわぁぁぁぁ!」

さすがのバッチードも大ダメージを負う。

ゴーオンレッド「トドメだ。スーパーハイウェイバスター!」

ゴーオンジャー達は格武器を合体させ、スーパーハイウェイバスターとなった。

ゴーオンレッド「スピードルソウルセット!」
スピードル「やっと出番か。待ちくたびれたぜ!ドルドル~。」
ゴーオンジャー「「「「「GO-ON!」」」」」

スーパーハイウェイバスターにスピードルの炎神ソウルをセットさせ、
エネルギー弾となったスピードルが発射され、それがバッチードに命中した。

バッチード「ぐおおおお」

ドッカーン

ザベル「げぇ、やられやがった。戦況も悪くなってきたし、帰らせてもらうぜ!」

バッチードは爆発と共にその場で倒れてしまう。ザベルはワルキューレの魔法で
ゾンビも一掃され、邪竜兵もワタルやアデュー達に倒され、もはや逃げるしかない
と考えその場から消えた。

バッチード「勝手に帰りよって・・・私はまだ任期を全うしていない・・・
      サンギョーカクメイー!」

よろめきながらも立ち上がったバッチードは体内のビックリウムエナジーを
活性化させ、巨大化する。

ワタル「でかい!?」
サルトビ「邪竜兵の何倍もあるぞ!」

巨大化したバッチードは王都を蹂躙する為、動き出す。

ゴーオンレッド「範人、軍平久しぶりの巨大戦だ。一緒に戦ってくれ。」
ゴーオングリーン&ゴーオンブラック「「OK!」」

ゴーオンジャー達はそれぞれパートナーの炎神キャストに炎神ソウルを入れて
スピードル、バスオン、ベアールV、バルカ、ガンパードは元のサイズとなり、乗り込んだ。

ゴーオンレッド「炎神合体!」

スピードル、バスオン、ベアールVはエンジンオーとなった。 。

601

バッチード「ふん、エンジンオーG12もサムライハオーもいない状態で、この私を
      倒せるのかな?」
ワタル「あっ、こいつ僕らを無視した!」
アデュー「騎士道大原則ひとーつ、騎士は目の前の悪を見過ごしてはいけない。」
パッフィー「例え小さい力でも、力を合わせれば勝つことができます。」
ハグハグ「ハグハグ」
ゴーオンレッド「皆、一斉攻撃だ!」

ゴーオンジャー達はそれぞれバッチードに向けて一斉攻撃を始める。

アデュー「重閃爆剣<メテオ・ザッパー>!」
パッフィー「ライダース!」
サルトビ「轟乱舞斬<パイル・エクゼクター>!」
イズミ「うぉぉぉ!」
ワタル「登ー龍ー剣!」
シバラク「野牛シバラク流・×の字斬り!」
ゴーオングリーン「バルカッター!」
ゴーオンブラック「ガンパードガン!」
ゴーオンレッド「貰ったぜ!最終コーナー、ゴーオングランプリ」

それぞれの必殺技の斬撃や魔法などがバッチードを襲う。

バッチード「ぐわぁぁぁ・・・Gショッカーの・・・Gショッカーによる・・・
      Gショッカーのため政治が・・・。」

チュドーン

ゴーオンジャー「「「「「チェッカーフラッグ!」」」」」

こうしてパフリシア王国王都での戦闘は終了したのであった。

***パフリシア城***

戦闘後、ゴーオンジャー、ワタル一行、リュー使い、そしてワルキューレと
アーサーが城に集まった。それぞれの事情を交換しあうのであった。そして
ワルキューレとアーサーがこの世界にいる目的だが、女神イシターからの
命で魔界の勢力が同盟を結び、異世界に侵攻する動きを調べていた。
その過程でワルキューレはかつて共に戦ったアーサーに協力を要請したのであった。
因みに魔界のデミトリやモリガン、地球の森羅のエージェント達にも要請したが、
あいにく連絡が取れなかったりで現在に至る。

イズミ「ワルキューレ・・・確か神界の女神イシターに仕える乙女の騎士だと
    聞いた事があります。」
ワルキューレ「アースティアの方々にも、知られているとは光栄です。」
シバラク「私は剣部シバラクと申します。あなたのような美しい女性に
     お会いできてこちらこそ、光栄です。」
ヒミコ「ニャハハ、おっさんまた変な顔をしているのだ。」

イズミは以前、ワルキューレの名を聞いた事があることを伝え、シバラクは
ワルキューレの美しさに普段のカバ顔からダンディーなスッキリとした顔に
なった(すぐに元に戻ったが)

連「それにしても、魔界同盟ってのは気がかりっすね。」
早輝「大翔達もまだ、見つかっていないし・・・。」
軍平「今日みたいにGショッカーと手を結ぶかもしれない。」
範人「地球へ戻って他のスーパー戦隊達に協力を頼めないかな?」
走輔「・・・ま、難しい話はこれから考えるとして、今は勝った事を喜ぼうぜ。」

一同はこれからの戦いにどうすべきか考えていくだった・・・。

18

○ゴーオンジャー→範人、軍平達再会し、バッチードを倒す。
●害統領バッチード→単身、邪竜族、ドアクダー軍と手を組むが、倒される。
○戦部ワタル、剣部シバラク、忍部ヒミコ→邪竜族、ドアクダー軍と戦闘。
○アデュー一行→邪竜族、ドアクダー軍と戦闘。
○ワルキューレ→女神イシターの命で魔界同盟の調査を行う。
○アーサー→ワルキューレに同行。
●ザベル=ザロック→魔界同盟のエージェントとして、増援としてやってくる。

【今回の新登場】
○アデュー・ウォルサム(覇王体系リューナイト)
世界一の騎士を目指すリューナイト・ゼファーの使い手。通称「音速の騎士」
武者修行中、パッフィー達と出会い共に邪竜族と戦った。よく「騎士道大原則」
を口にしている。後にパッフィーと結婚しパフリシア王国の国王となる。

○パッフィー・パフリシア(覇王体系リューナイト)
パフリシア王国王女であるリューメイジ・マジドーラの使い手。火・水系の
魔法を多様するが、水系を得意としている。少々世間知らずで天然。
後にアデューと結婚する。

○サルトビ(覇王体系リューナイト)
ヒノデ国出身の忍者でリューニンジャ・爆裂丸の使い手。パッフィーに
雇われており、アデューのライバル。かつて暗黒騎士ガルデンに故郷を
滅ぼされた過去を持つ。主に諜報活動が得意。

○イズミ(覇王体系リューナイト)
パッフィーの護衛・お目付け役である僧侶。リュープリースト・バウルスの使い手。
回復魔法による治療と怪力を兼ねそろえている。方向音痴で僧侶であるが、
お化けが苦手。

○ハグハグ(覇王体系リューナイト)
パッフィーと一緒にいるアースティアの生物。「ハグハグ」としかしゃべれない。
一度、美形剣士の姿になった事がある。

○ワルキューレ(ワルキューレの冒険シリーズ)
女神イシターに仕える戦士。魔王ゾウナが支配する人々の救いを求める
声を聞いてマーベルランドに降り立った乙女の騎士。何故か「17」という
数字に反応する。

○アーサー(魔界村)
魔王アスタロトと戦った白銀の騎士。年齢は28歳。鎧を着ているが、
すぐ外れてパンツ一丁になる事が多い。

●ザベル=ザロック(ヴァンパイアシリーズ)
元人気ロック歌手のゾンビ。生前自身のファン100人を殺害し自殺。
そしてその残忍の魂に目を付けた闇の帝王オゾムによってゾンビと
なって復活した。更なる力を求めて、冥王ジュダを吸収しようと考えている。
同じ死体同士という事でレイレイにゾッコンだが、毛嫌いされている。


『月心、敵のアジトに乗り込む』

作者・ユガミ博士

19

***アースティア・ヒノデ国***

パフリシア王国でワタルやアデュー、ゴーオンジャー達の活躍で邪竜族やガイアークの
害統領バッチードを倒していたその頃。モンジャ村の防衛の為に残った月心だが、クラマの
情報で、ドアクダー七人衆の1人であるクルージング・トムとその手下達がいるアジトを突き
止めたというので、そのアジトへと向かっていた。

月心「ワタル殿達は、今頃パフリシアへと辿り着いた頃だろうか...」
クラマ「月心、この森を抜けた所にクルージング・トム達のアジトだぜ」
月心「承知した!」

ワタル達の事を考えながら、月心はクラマの案内でクルージング・トム達が
根城にしていると思われるアジトの近くまで来た。そっと近くの様子を見ると
ドアクダー軍のブリキントンやゴーキントンが量産型魔神の整備をしており、
中には雇われた盗賊達のソリッドも混じっていた。

クルージング・トム「ワタル達は国外へと向かってしまったが、奴らのモンジャ村は
 我が軍団で攻撃し、蹂躙してくれるわ」

その奥では、クルージング・トムが高い台の上に立ちゴーキントン達の様子を眺めていた。
その下では部下であるシュワル・ビネガー、サンダー・ブルー、ジョン・タンクーガーが
控えている。

シュワル・ビネガー「次こそは、失敗を取り返す!」
サンダー・ブルー「ふふん、美しく村を消してみましょう!」
ジョン・タンクーガー「そして、村の住人全員を太らせて、笑い者にしてやる!」
クルージング・トム「ふふふ、お前達にも働いてもらうぞ」

部下3人もやる気満々で、クルージング・トムは他に控えている2名にも
声を掛ける。掛けられたのは、2本足で立つ大きな白い狼のアクマ、
フェンリルと忍者の様な格好をしたアクマ、アバドンだった。彼らは
マカイを支配しようとしていたルシファーの部下で、パフリシア王国に
現れたザベル同様、魔界同盟のエージェトとしてドアクダー軍へ派遣
されてきたのである。

フェンリル「私達にまっかせなさ~い!」
アバドン「拙者等が加われば、鬼に金棒でござる!」
クルージング・トム「がははは、期待しているぞ」
フェンリル「(・・・ねえ、私達来た意味あるの?)」
アバドン「(これも、上からの命令。従うしかないでござる)」

表向きはやる気をアピールするフェンリルとアバドンだが、内面では
命令ゆえに手を貸すので、あまり乗り気ではなかった。その事を
ヒソヒソと小声で相談する。

月心「これほどの軍勢、モンジャ村があぶない!」
クラマ「じゃあ、どうする?」
月心「・・・先手必勝。敵の大将を倒す。その為にこのような策はどうかな?」

月心はモンジャ村を守る為、クルージング・トム達を倒すべくクラマに自分の
考えた策を教えるのであった。

20

ゴーキントンやブリキントンが魔神の整備や見張りをしていると。

ドーン、ドーン

ブリキントン「!?」
???「大変だー、敵が攻めて来たぞ!」
盗賊A「敵だと!?」
盗賊B「どこだ、どこだ!?」

突如、大きな爆音がすると誰が言ったのか、敵が攻めてきたという
情報は知れ渡り、ブリキントンやゴーキントン、盗賊達は大慌てをする。

クルージング・トム「落ち着かんか、お前ら!?」
サンダー・ブルー「すぐに、臨戦態勢を執れ!」
???「敵は向こうから、攻めてきたぞ!」
シュワル・ビネガー「よし、すぐに向かうぞ!」
ジョン・タンクーガー「ぐずぐずするなー!迎え撃て!」バババババ

騒ぎを知ったドアクダーの手下達も、ブリキントン達を落ち着かせると
敵がいるという方向に、向かわせる。ぐずぐずしないように、
ジョン・タンクーガーは機関銃を上に向けて放つ。急かされたブリキントン
達や盗賊達は量産型魔神やソリッドに乗り込み、敵がいるという方向へ向かった。

クラマ「(今だ!)覚悟しやがれ!」
クルージング・トム「何!?」

実は月心が考えた策で、月心が騒ぎを起こして大多数の敵を引き付けている
隙に、空を飛べるクラマが高い位置にいるクルージング・トムの下まで飛び、
仕留めるという策であった。因みに月心が引き付けた場所は細い道らしく
誘い込んだ敵を倒すのに最適らしい。クラマが飛び出してきたので、高い台の
上に立っていたクルージング・トムは足を滑らせてしまい、地面に落ちてしまう。

クルージング・トム「うわぁぁぁ、地面怖い、低い所怖い(ガクガク)」
クラマ「へへへ、チャンスだ!」

低所恐怖症のクルージング・トムは地面に立って、体をガクガク震えて
しまい、クラマはそのまま刀を向ける。

アバドン「マハラギ!」
クラマ「うぉっと!」
フェンリル「私達がいる事を忘れてるんじゃないわよ!マハマグナ!」

だが、アバドンが手から火炎呪文「マハラギ」で、クラマを妨害し、さらに
フェンリルは地面を叩いて隆起させる「マハマグナ」を使う。

ジョン・タンクーガー「死ね~~~ファイアー!!」ズバババババ
アバドン&フェンリル「「うあぁぁぁぁぁ」」

クラマを仕留めようと、ジョン・タンクーガーは機関銃をぶっ放すが
アバドンやフェンリルにまで銃弾の雨が襲う。

フェンリル「ちょっとー、危ないじゃないのよー!」
アバドン「死ぬかと思ったでござる(ホ」

当然、フェンリルとアバドンはジョン・タンクーガーに文句を言った。

クルージング・トム「こ、こうなったら魔神に乗り込むぞ!」

クルージング・トム達は自分達の魔神に乗り込む。クルージング・トムの
乗り込んだ魔神セカンドガンは飛行形態に変形し、空中へと移動する。

クルージング・トム「ふん、裏切り者のクラマを始末せよ!」
手下一同「「「おおう!」」」

空中に移動したことで、さっきまでの弱弱しさから一変して再び強気な
態度となる。そしてクラマを倒そうと、シュワル・ビネガーのバトルゴリラ2号
の装備であるハイパーマグナムやサンダー・ブルーの乗るヘルコプターから
シュリケーン機関砲、ジョン・タンクーガーの乗るゲッペルンからは魔神銃や
バズーカ砲、機関銃が襲い掛かる。

月心「そうは行かん!チェストォォォォ!!」

だが、先程まで敵を引き付けていた月心がリューサムライ・疾風丸を
召喚し、敵の攻撃を全て刀で斬り落としてクラマを助けた。

クラマ「恩に着るぜ、月心!」
月心「何の。そちらもご無事で何よりでござる」
クルージング・トム「くっそ~、あのリューを攻撃だ!」

クルージング・トムは狙いを月心の乗る疾風丸に変更し、部下達に
攻撃命令を出す。

クラマ「月心!」
アバドン「おっと!」
フェンリル「あなたの相手は私達よ~ん!」
クラマ「くっ」

クラマの方もアバドンとフェンリルが立ちはだかり、彼らの魔法攻撃を
クラマは刀で何とか応戦していく。

アバドン「ふっふっふ、ブフーラ!」
クラマ「はっ、しまった!足が」
フェンリル「これで、あなたもお終いね。アースブレイクゥゥ!」

アバドンの冷気の魔法であるブフーラでクラマの足は凍りつき、
フェンリルがトドメに地震を引き起こす魔法「アースブレイク」を
発動しようとし、クラマに危機が訪れる。

21

だが、クラマの危機を救う者が現れる。

キィン

フェンリル「ぎゃん!一体誰よ、邪魔したの!?」
???「・・・2人がかりで1人を相手とは卑怯なり。故に拙者が
     助太刀致すでござる」
アバドン「な、何者!?」
マタタビ丸「拙者の名は、木の世界の忍マタタビ丸。さぁ、来い悪党共!」

ピンチに陥ったクラマをアバドンとフェンリルから助けたのは、植物の芽の
ような触覚と忍者の様な衣装を身に着けた三毛猫―こことは別の世界から
迷い込んだ猫の忍者マタタビ丸だった。

マタタビ丸「そこの鳥の人、大丈夫でござるか?」
クラマ「ああ、あんたのおかげで助かったぜ!」

マタタビ丸に助けられたクラマは足の氷を砕きながら、マタタビ丸に
助けられたお礼を言うと、刀を構え直す。

アバドン「ふん、どのような者が現れたとしても、拙者達の敵では無いでござる」
フェンリル「そうよ、そんなちんちくりんに負けはしないわ!」
マタタビ丸「・・・ならば、この姿ではどうでござるかな?」

アバドンとフェンリルはマタタビ丸の見た目からして、自分達の敵では無いと
高をくくるが、マタタビ丸は懐からなにやら葉っぱを取り出して、それを口にする。
するとマタタビ丸の姿は三毛猫の姿から逞しい体と赤い鬣をしたライオンの忍者
へと変わる。これこそ、マタタビ丸のいた異世界―バトーシール界の住人ならば
誰もが持つ性質で「別の姿」となる「転身」である。

オタケビ丸「オタケビ丸、参上!」
クラマ「マジかよ...」
フェンリル「ね、猫ちゃんがライオンになったわよ~!」
アバドン「聞いてないでござる~!」

マタタビ丸はウラオモテマタタビを食べる事で、普段のマタタビ丸の姿から
正義のライオン忍者オタケビ丸へ転身する。その変わりようにクラマは
おろか、フェンリルとアバドンも仰天である。

オタケビ丸「てやぁ!」
アバドン「ぐはぁ!」
クラマ「おりゃ!」
フェンリル「いやん!」

そしてオタケビ丸の忍術やクラマの攻撃にアバドンとフェンリルは
すっかり形成が逆転してしまう。

フェンリル「これって、負けムード前回じゃん!」
アバドン「こ、こうなったら...」
クラマ「まだ、やる気か!」
フェンリル&アバドン「「キエル」」
クラマ「消えるのかよ!」

ここからの逆転は無理と判断したフェンリルとアバドンはその場から
空間を歪めて撤退。元のマカイへと戻っていた。

22

一方、魔神を相手に単機で戦う月心だが、さすがにこのままでは戦況が不利。
何とか、上空にいるクルージング・トムを仕留めたいが残りの3機が邪魔をする。

月心「クラマの方は、無事のようだが、このままでは身がもたん。何としても
    勝機を見いだせなければ・・・ん、この気配は上か!」

何とか勝機を得ようとする月心は、上空から何かがやって来る事を気配で
感じた。すると、遥か上空から巨大な物が落ちてきた。

クルージング・トム「ん?・・・何だアレは!?」

ドーン

上空から落ちてきたのはとてつもなく巨大で、オレンジのカラーリングを
しており、まるでワニの様な顔をしたキャリーカーだった。

???「う~む、拙者は一体どうなったのでござるか?」
月心「喋った!この者は一体・・・いや、そういえば感じからしてスピードル殿に
  似ているような?」
???「おおー、そこの武人スピードルを知っておるのでござるか?拙者は
 スピードルと同じ炎神キャリーゲーターという炎神でござる」

そう落ちてきたのは、ガイアークを追って次元の波に飲まれていた炎神キャリー
ゲーターだった。次元トンネルを抜け出して、今このアースティアに落ちてきた
のであった。

月心「勿論、スピードル殿や走輔殿も存じている。だが、今はゆっくりと
 話をしている場合ではござらん」
キャリーゲーター「む、もしや戦闘中でござったか?」

スピードルは勿論、相棒である走輔の事も知っている月心だが、今は
クルージング・トム達と戦闘中なので、話をしている暇は無く、キャリー
ゲーターも今が戦闘中である事を感じ取り、クルージング・トム達に視線
を送る。

クルージング・トム「何なのだ、こいつは!?は、今の落下でセカンドガンも
 地上に墜落してしまった!低い所怖~い!」
シュワル・ビネガー「ああ、クルージング・トム様!」
サンダー・ブルー「よくも、ヘルコプターを墜落させたな!これでも喰らえ!」
ジョン・タンクーガー「こっちもだ!ファイア~~~!!」

サンダー・ブルーはヘルコプターのローターを投げ飛ばし、ジョン・タンクーガー
もゲッペルンから攻撃を仕掛けるが、巨大なキャリーゲーターにはたいして
ダメージを与えていなかった。

月心「今が、勝機!秘技・疾風突き!」
サンダー・ブルー「美しくな~~~い!」
ジョン・タンクーガー「ファイア~~~!」
月心「秘流・正眼崩し!」
シュワル・ビネガー「またまたまた、負けた~!」
クルージング・トム「うわぁぁぁ、ぐやじぃぃぃぃ!!」

月心の乗る疾風丸は隙を突いて、ヘルコプターとゲッペルンを槍で
貫き、バトルゴリラ2号とセカンドガンを必殺の剣で倒し、乗っていた
クルージング・トム達は遠くまで吹き飛ぶのであった。何はともあれ、
月心達は勝利し、戦闘を終えた。

23

戦闘を終えて、月心とクラマはキャリーゲーターと元の姿に戻った
マタタビ丸から事情を聞く事にした。マタタビ丸の住むバトシール界は
火、水、土、木、金、風、光、闇の8つの国に分かれている世界で、
これまで手にした者に強大な力を与えるピースストーンを巡って争いが
起きていたが、デビルバーチャンと破滅の魔王が現れ、世界の危機に
訪れた際、自分の仲間である伝説のバトシーラーと呼ばれる戦士達の
活躍で倒され、平和に戻ったという。自分は故郷である木の国の里で
修行していたが何時の間にか、このアースティアへと迷い込んだらしい。

月心「これも、世界で起きている異変の一端でござろうか?」
クラマ「で、そっちはスピードル達お仲間と逸れて、ここに出ちまったんだな?」
キャリーゲーター「左様。まさか走輔やスピードル達も、この世界に来ていたとは」

事情を聞いた月心は、今世界各地で起きている異変(黄泉還りや時空クレバス)の
一つだと感じる。キャリーゲーターからの事情も聞き、キャリーゲーターも他の仲間
達がこの世界に来ている事に驚いていた。

キャリーゲーター「なれば、申し訳ござらんが拙者を走輔達の下へと
 連れて行ってはくださらぬか?」
クラマ「確かに。お仲間と一緒の方がいいよなあ」
月心「よかろう。敵の拠点をつぶした事でござるし、そろそろパフリシアへ
 向かおうと思っていた所だ。共に行こう!」
マタタビ丸「拙者も、この世界では行く当てもござらん。月心殿達にご同行
 させていただくでござる」

キャリーゲーターに走輔達の下へと連れて行ってほしいという願いを了承した
月心達はマタタビ丸も旅の一行に加え、パフリシア王国を目指す事を決める。
キャリーゲーターはキャストと炎神ソウルに分かれた後、一同はパフリシアへと
目指すのであった。

24

○月心→クルージング・トムのアジトへ乗り込み、疾風丸でアジトを壊滅させる。
      戦闘後、パフリシア王国へ向かう。
○渡部クラマ→月心をクルージング・トムのアジトへ案内する。アバドンと
   フェンリルと戦闘し、ピンチになるがマタタビ丸に助けられる。
○マタタビ丸→ピンチとなっているクラマを助ける。オタケビ丸へ転身して
   アバドンとフェンリルと戦闘する。
○炎神キャリーゲーター→次元トンネルから落ちてきて、戦闘に介入する。
  月心達に走輔達の下へと連れて行ってもらう。
●クルージング・トム→セカンドガンでクラマや月心を攻撃するが
  隙を突かれて機体が爆発し、遠方へ吹き飛ぶ。
●シュワル・ビネガー→セカンドガンでクラマや月心を攻撃するが
  隙を突かれて機体が爆発し、遠方へ吹き飛ぶ。
●サンダー・ブルー→セカンドガンでクラマや月心を攻撃するが
  隙を突かれて機体が爆発し、遠方へ吹き飛ぶ。
●ジョン・タンクーガー→セカンドガンでクラマや月心を攻撃するが
  隙を突かれて機体が爆発し、遠方へ吹き飛ぶ。
●アバドン→魔界同盟のエージェントとして、ドアクダー軍に派遣される。
   クラマと戦闘になるが、マタタビ丸(オタケビ丸)に敗れ、撤退する。
●フェンリル→魔界同盟のエージェントとして、ドアクダー軍に派遣される。
   クラマと戦闘になるが、マタタビ丸(オタケビ丸)に敗れ、撤退する。 【今回の新規登場】○マタタビ丸=オタケビ丸(仰天人間バトシーラー)
木の国の猫忍者。のんびりとした風貌をしているが、ウラオモテマタタビを
口にする事で、義に厚く、勇猛果敢な「オタケビ丸」に転身する。たとえ
敵であったり動物だったりしても女性は傷つけないという信条がある。
当初はシーホース号に同行していたが、やがて木の国に残り、鬼影から
解放されたネコマタ丸にその座を譲った。木のピースストーンの力で
「スーパーオタケビ丸」にスーパー転身する事ができる。

●クルージング・トム(魔神英雄伝ワタル)
ドアクダー七人衆の一人で、第1界層のボス。ハルバードを武器にしている。
空中にいないと正気を失ってしまう。乗機はセカンドガン。本来の姿は家老。

●サンダー・ブルー(魔神英雄伝ワタル)
クルージング・トムの部下で、アップダウンシティの支配者。自分を二枚目と
思い込んでいるが、短足である事を気にしている。乗機はヘルコプター。

●ジョン・タンクーガー(魔神英雄伝ワタル)
クルージング・トムの部下で、ガラガラ村の支配者。蠅一匹殺すのに5000発も
銃弾を撃ちまくる危険人物で、かなり痩せていて細い体をしている。実は子供の
頃はかなり太っていて、村中で笑い者にされていたので、復讐として毎日、住人
にご馳走を無理やり食べさせて太らせては、笑うという行為を繰り返していた。
乗機はゲッペルン。本来の姿は会社の重役。

●フェンリル(真・女神転生デビチル)
オネエ言葉を使う大魔王ルシファーの部下。土属性。
狼の姿をしており、アバドンとコンビで活動している。得意な魔法は
地面を叩いて地割れや地震を起こす「マハマグナ」「アースブレイク」や
相手の攻撃魔法を弱める「タルンダ」

●アバドン(真・女神転生デビチル)
「~でござる」という喋り方が特徴の大魔王ルシファーの部下。水属性。
忍者の姿をしており、フェンリルとコンビで活動する。得意な魔法は
手から放つ火炎の「マハラギ」や冷気の「ブフーラ」 。


『真時空伝説 戦士は神獣と共に』-1

作者・ティアラロイド

25

***エターナリア・ヘブンズティア国境付近の辺境***

ここ数年晴れた事のない、どんよりとした曇り空。
平原の彼方には、白く寒々して山々がそびえている。

ここは次元を隔てて地球と双子星の関係を結ぶ、
エターナリアと呼ばれる異世界である。
本来であれば音もなく、静けさに満ちているだけの風景…。
今はただ滅びの時を待つだけのはずのこの世界の地で
人知れず、戦いの刃を交えている者がいた!

戦士煌「世界の破壊者ディケイド!
 これ以上先には行かせないよ!」
ディケイド「やれやれ、この世界でも
 俺は相当の嫌われ者らしいな…」

穏やかで繊細な顔立ち、女かと思ってしまうような細い体、
肩下までつややかなストレートヘアをした、白銀の甲冑の戦士・金剛煌は、
戦斧を中段に構え、爪先をじりじりと前へにじらせる。

そんな煌との間合いを慎重に計っているのが、
マゼンダ、白、黒の基本カラーのボディと緑の複眼をもつ、
異世界を渡る仮面ライダー、ディケイドだ。

戦士煌「――ヤアアッ!!」

鋭い気合いと共に、ディケイドの眼前に戦斧の刃が閃いた。
(わッ)と、ディケイドは後ろへ飛んだ。
すかさず煌が大胆に踏み込み、ディケイドの腹部を突いて来た。
すんでのところで、ディケイドはくるりと体を返す。
専用武器ライドブッカー・ガンモードの50口径の銃口・ブッカーマズルから
有効射程距離300mの強力な次元エネルギー弾を半自動で発射する。
煌は、キン、キン、と光の弾を素早く跳ね上げ、戦斧を上段に振り上げた。

KAMEN RIDE DEN-O AX!!

カメンライド能力で仮面ライダー電王アックスフォームの姿へと
フォームチェンジしたディケイドは、アックスモードのデンガッシャーで大地に裂け目を作る。 戦士煌「くっ…!」
ディケイド「今だ!」。 KAMEN RIDE DECADE!!
 相手に隙を作ったディケイドは、基本フォームへと戻り、
全パワーを右足に収束して、跳び蹴りを放つ!

士「いない。逃げたか…」

変身を解除したディケイド=門矢士は周囲を見渡す。
すでに白銀の甲冑の戦士・煌の姿は、完全に消えていた。


***光写真館***

ユウスケ「な、なんだよ士、その恰好は!?…(^∇^)アハハハハ!」
夏海「ど、どうしたんですか…士くん!(^∇^)アハハハハ!」

この世界へと辿りついた門矢士の姿を見て、
小野寺ユウスケと光夏海は腹を抱えて大笑いしている。

士「………」

士は、さっきから不快そうにムスッと顔をしかめている。
それもそのはず。この地に流れ着いた門矢士の今回の姿は、
背中には桃のマークと「日本一」の文字がデカデカと書かれた旗を差し、
陣羽織に鎧姿という出で立ちの、どこをどう見ても
日本人なら誰でも知っているおとぎ話の主人公、
桃太郎の姿だったのである。

士「まさかこの俺様に、おとぎ話の主人公の恰好をさせるとはな…」
夏海「でも、今度のこの世界での士くんの役割は
 いったい何なんでしょうか?」
ユウスケ「桃太郎なんだから、やっぱり鬼退治じゃないかな」
士「ともかく出かけるぞ!」

26

***ヘブンズティア王国・宮殿***

高崎「これがアメリカ合衆国大統領閣下より
 姫様に宛てた親書であります」
ミレイア「………」

アメリカ合衆国中央情報局CIAの諜報部員にして、
実は異世界エターナリアにある二つの国の片割れである
ヘブンズティア王国の密使でもあるエドワード高崎から、
米国大統領マイケル・ウィルソンJrの親書を受け取り
丹念に目を通すミレイア王女。
気品のある白いロングドレスに、美しい顔立ちを引きたてる金の冠、
その額には五角形の宝石が輝いている。

ミレイア「統合防衛部隊ブレイバーズ……。
 地球ではこのような組織が結成されていたのですね」

親書の内容は、ヘブンズティア王国にも
ブレイバーズへの加盟を要請するものであった。

両親である先王夫妻を敵国ノスフェルティアに暗殺されて以来、
若くしてヘブンズティアの指導者の座に就いたミレイアは、
エターナルストーンの輝くが如く澄んだ心を持ち、
王国の民にとって母なる大地に最も近き存在であった。

ロビン「私共次元警察からも謹んで正式に要請いたします。
 今、ヘブンズティア王国のご協力が得られれば、
 世界各地で戦うブレイバーズの戦士たちに
 大きな勇気を与える事が出来ます」
ミレイア「滅びの道を受け入れる選択をした我が国が
 今もそこまで他の世界の人々からも必要とされていたことは
 素直にありがたいことだと思います。
 私には異存はありません」
ロビン「では…?」
ミレイア「ブレイバーズ加盟の件、承諾致しますと
 合衆国大統領にお伝えください」
ロビン「ありがとうございます。王女殿下」

ヘブンズティア王国のブレイバーズ加盟交渉のため、
折衝に訪れていた次元警察のロビン捜査課長と厚く手を握るミレイア。
ちなみに"次元警察"とは、三次元宇宙を統括する宇宙警察機構よりも
さらに上位に位置する全次元規模の治安機関であり、その全貌は
未だ謎に包まれていると言っていい。

高崎「では、米国政府にはそのようにお伝えするであります」

エドワード高崎は一礼して謁見の間から退場する。
これまでヘブンズティアの者が「時空越え」をするには、
王女ミレイアの力が不可欠であったが、
今は地球側でディオドスシステムの実用化が進んでいる事に伴い、
比較的自由に地球との間を行き来が容易になってきている。

二人きりになるミレイアとロビン。

ロビン「ところでミレイア王女、殿下は"魔界同盟"と呼ばれる
 組織の存在はご存知ですか?」
ミレイア「異世界各地の魔の世界の者たちが一堂に
 会し集まった軍勢と聞き及んでいます」
ロビン「その魔界同盟が、密かにノスフェルティアの者と
 接触しているとの情報を次元警察がキャッチしております。
 何とぞお気をつけくださいますよう」
ミレイア「………」

エターナリアの統一覇権を巡り長年争い戦乱を繰り広げて来た
ヘブンズティアとノスフェルティア(ダークノイド)の両国であるが、
東京要塞都市での決戦以来、ノスフェルティアの総帥プリンス・ザザは
完全に行方をくらまし、以来ダークノイドに目立った動きはない。
それゆえに不気味でもあった。

ミレイア「ところで桃矢は今どこにいますか?
 ブレイバーズの事は早く桃矢にも伝えなくては…」
ロビン「神城桃矢君なら今朝早く、宰相のシンザ殿と
 視察に出かけられました」
ミレイア「………」

27

***エターナリア・氷河地帯***

シンザ「桃矢殿、目的の場所につきましたぞ」
桃矢「………」

ヘブンズティアの宰相シンザに連れられ、
異常な氷河期が進むエターナリアの辺境地帯に
飛空船に乗ってやって来た神城桃矢。

東京要塞都市でのプリンス・ザザとの決戦から三か月が経ち、
金桃寺で一時の休息を得ていた桃矢とアニマノイド戦士たちは、
ザザ復活の予兆を感じ取り、今度こそ決着をつけるべく、
舞原このはたちに再び別れを告げ、ここエターナリアの地を訪れていた。
ヘブンズティアに着いてから、もう三日経つ…。

シンザ「さ、これですじゃ」
桃矢「これがエターナリアの氷河か!」

飛空船の窓から外の景色を一望する桃矢。
長きにわたる戦乱が、大地の生命を奪い、
エターナリアの各地に氷河を発生させた。
それはたった数年でエターナリアほぼ全域に広がり、
一部では大地の崩壊も始まっている。
この世界は、もってあと一年という状況なのである。

シンザ「地球の連邦政府からはヘブンズティアからの
 移民を受け入れる用意があると申し出を聞いておりますが、
 わしらはこの運命を受け入れ、大地と共に滅びる
 覚悟ですじゃ」
桃矢「………」

桃矢はグレイファスたちアニマノイド戦士たちの事を思う。
自分たちの世界がこんな状況にも関わらず、
彼らはわざわざ地球を守りに来てくれたのだ。
そしてこのままプリンス・ザザを倒せなければ、
大いなる反転により、この氷河は自分の帰りを信じて
待ってくれている舞原このはのいる地球に押し寄せるのだ。
焦る気持ちを抑えられない桃矢。

桃矢「……(今度こそ一刻も早くザザを倒さねェと!
 でも、今の俺の力じゃまだザザには敵わねェ…。
 どうすれば…!!)」

28

ミレイア「シンザ、なぜこのようなところに桃矢を連れて来たのです!」
シンザ「これは姫様!?」

いきなり姿を現したミレイアに驚くシンザと桃矢。
ロビンから桃矢たちの行先を聞いたミレイアが、
高速飛空艇で追いかけて来たのだ。

桃矢「……(でやがったな、ミレイア…(汗。)」

桃矢は正直、ミレイアの事が苦手である。
それは前もって抱いていた王女のイメージと
彼女が全然違っていたからだ。

ミレイア「今日は桃矢と南の海で遊ぶつもりで、
 楽しみにしていましたのに…! 用意していた
 水着が無駄になったではありませんか」

桃矢は露骨にムスッとして答える。

桃矢「俺がムリに頼んだ。こっちに来て
 ずっと王女様の遊びに付き合わされまくって
 いたからな!」
ミレイア「どうしてですか?
 氷河地帯では海水浴はできませんわ!」
桃矢「あったりめェだろうが!
 俺にはそんな事をしてるヒマはねェんだ!」

激昂する桃矢に対して、ミレイアはクスッと笑って答える。

ミレイア「…さては、カナヅチ!なのですね」
桃矢「ハァ~!?(汗」
ミレイア「だからこんなところへ行先を変えて
 バレないようにしようとしたのですね。
 それならそうと恥ずかしがらずに
 正直に仰ってくださればよろしかったのに」
桃矢「おいおいちょっと待て!!」
ミレイア「では、宮殿でカードゲームの続きを
 いたしましょう」
桃矢「………(・o・)ポカーン」
ミレイア「現在、桃矢の98連敗中です。
 私に勝てるまで貴方をガルキーバに目覚めさせる
 儀式は行いませんよ。フフッ…」

ぐぅの音も出ない桃矢をしり目に、
ミレイアはクスクスッと明るい笑みを浮かべながら、
扉を閉めて船室から出て行った。

ミレイア「すぐにでも桃矢をガルキーバに目覚めさせる術を
 使わなくてはいけないのに、その覚悟が決まらない……」

ミレイアは自らが考える以上に精神と肉体を消耗しており、
エターナリアの大地はもはや、それを癒す力に満ちてはいなかったのだ。

ミレイア「私一人の力で世界を救えるかもしれないのに、どうして……」

29

***氷河地帯の洞窟***

神城桃矢たちの乗る飛空船のすぐ真下に、
氷に閉ざされた深い洞窟があった。
その最深部の空間にある滝の下で、
エターナリアに伝わる伝説の戦士リュートの魂を
受け継ぐ少年――金剛煌が、激しく流れ落ちる水に打たれながら
静かに瞑想していた。

煌「………」

光のカーテンと共に突如そこに現れたのは、
チューリップハットにコート、眼鏡をかけた中年風の男――鳴滝である。
鳴滝の気配に気づいた煌は、ゆっくりと立ち上がる。

鳴滝「金剛煌君、ディケイドの始末にしくじったようだね」
煌「次は必ず仕留めるよ…」

滝の池から上がった上半身裸の煌は、脇に置いてあった自分の服に着替える。

煌「ねえ、ディケイドは本当にこの世界を破壊する
 悪魔なんだよね?」
鳴滝「無論だ。これを見たまえ!」

鳴滝が指を鳴らして合図すると、煌の目の前の頭上に
大きな映像が映し出される。それには、日々体が弱っていく
ミレイア姫の姿が映し出されていた。

鳴滝「この世界に侵入したディケイドの存在は、
 ミレイア王女の肉体を着実に蝕んでいる!
 そしてエターナリアの氷河期がとてつもない
 スピードで加速しているのも、全てはディケイドのせいなのだ!」
煌「………」
鳴滝「ディケイドはこの世界にあってはならない!
 ディケイドを倒せ! 金剛煌!
 このままディケイドを放置すれば、やがては
 君の大切な友達、神城桃矢と舞原このはにも
 大いなる災いが及ぶだろう!」

戦斧を手に取る煌。それは戦士リュート本来の武器である
斧「天空」ではない。「天空」は生前に神城桃矢に託したままだ。
黄泉還ってから今の武器は、代用品として鳴滝から借り受けた物である。
ある異世界で「魔神の斧」と呼ばれていた代物らしい。
鳴滝にディケイド抹殺を鼓舞される煌だったが、
彼は無言のまま洞窟から外へ出ようとする。

鳴滝「待て、どこへ行く!?」
煌「奴等の様子を探ってくるよ…」
鳴滝「待ちたまえ。どうも君一人だけでは心許ない。
 彼らも一緒に連れていくといい」

鳴滝の言葉と共にオーロラのカーテンの奥から現れたのは、
ショウリョウバッタをモチーフとした闇の住人である
2体の仮面ライダーだった。

キックホッパー「……次の獲物はどいつだ? 相棒」
パンチホッパー「さぁ…けど面倒だね、兄貴」

30

○門矢士/仮面ライダーディケイド→エターナリアで金剛煌に襲われ交戦する。
○小野寺ユウスケ→エターナリアを訪れる。
○光夏海→エターナリアを訪れる。
○ミレイア・エターナル→米国大統領からのブレイバーズ参加要請の親書を受け取る。
○シンザ→神城桃矢をエターナリアの氷河地帯まで現状視察に連れていく。
○エドワード高崎→米国政府からの親書をミレイアに届ける。
○神城桃矢→シンザに連れられ、エターナリアの氷河期の現状を目の当たりにする。
○金剛煌→鳴滝に唆され、ディケイドを襲う。
○ロビン→次元警察捜査課長としてヘブンズティア王国を訪問。ミレイアに魔界同盟の情報を伝える。
△鳴滝→金剛煌にディケイドは悪魔だと吹き込んで襲わせる。
△仮面ライダーキックホッパー →鳴滝に召喚され、金剛煌に協力する。
△仮面ライダーパンチホッパー →鳴滝に召喚され、金剛煌に協力する。

31

【今回の新規登場】
○門矢士=仮面ライダーディケイド(仮面ライダーディケイド)
 いつの間にか光写真館に居候していた青年。素性不明で本人も過去の記憶がない。
 ディケイドライバーで仮面ライダーディケイドに変身する。
 かなりの自信家で、誰に対しても尊大な態度を取る俺様キャラだが、
 襲われている人を体を挺して守るなど、熱いハートも持ち合わせる。
 その正体は大ショッカーの大首領だったが、ショッカー首領(大首領)との関係は不明。
 紅渡から、世界の融合を防ぐ為に旅にでなければならないと告げられ、
 自分の本当の世界を探す為、世界の崩壊を防ぐ為に光夏海達と世界を巡る旅にでる。

○小野寺ユウスケ=仮面ライダークウガ(仮面ライダーディケイド)
 門矢士が最初に旅をした「クウガの世界」の仮面ライダー。
 五代雄介のクウガにはないライジングアルティメットフォームを持つ。
 「姐さん」と慕う女刑事の八代藍と共にグロンギから人々を守るために戦っていたが、
 死んでしまった八代の思いを継ぎ、皆の笑顔を守るためにこれからも戦う事を誓い、
 士たちの旅に同行する。

○光夏海=仮面ライダーキバーラ(仮面ライダーディケイド)
 門矢士が居候している光写真館の看板娘。士からは「ナツミカン」とも呼ばれる。
 士が何かしらの問題行動を起こすと、光家の秘伝「笑いのツボ」を突いて攻撃する。
 よくライダー大戦の夢を見るキーパーソン。士が世界を旅することを知った彼女は、
 その夢に対する不安からその旅に同行する。鳴滝からの度々の警告を受けながらも
 彼女自身は士を信じており、あらゆる世界から迫害を受ける士を案じている。
 『MOVIE大戦』では仮面ライダーキバーラに変身し、世界の破壊者となったディケイドと戦った。

○神城桃矢(獣戦士ガルキーバ)
 エターナリアに伝わる伝説の戦士ラディアスの魂を受け継ぐ高校生の少年。
 特技は幼い頃から始めていた剣道で、昔野高校剣道部では副将を務める。
 性格は活発でやんちゃで行動的であるが、精神的に幼いところが多々見受けられる。
 口は悪く一言多いが、根は優しく他人を思いやることができ、本来は優しい性格をしている。

○金剛煌(獣戦士ガルキーバ)
 神城桃矢、舞原このはと同じ高校に通う共通の友人。
 このはに密かに思いを寄せる。通っている学校では常に成績上位をキープする秀才。
 実はエターナリアの戦士リュートの魂を受け継ぐ少年。一見ひ弱だが、
 芯は強く物語終盤では桃矢を凌ぐ成長を見せる。
 第25話にてドーラ・ギルに殺された桃矢を復活させるためその命を捧げてしまう。

○ミレイア・エターナル(獣戦士ガルキーバ)
 異世界エターナリアにあるヘブンズティア王国の王女で、現最高指導者。
 温厚な性格だが、君主として決然とした行動力を示すことは躊躇わない。
 グレイファスたちアニマノイドの戦士たちを、アースサイド(地球)に派遣した人物。

○シンザ(獣戦士ガルキーバ)
 獅子型のアニマノイドで、ヘブンズティア王国宰相。
 ミレイア王女を陰から支える重臣。

○エドワード高崎(獣戦士ガルキーバ)
 アメリカCIAに所属する諜報部員だが、実はヘブンズティアからアースサイドに送り込まれた密使。
 バックの政治力を活かして報道など各方面に圧力をかけるなど、神城桃矢たちを後方から
 サポートする。容貌とのんびりした喋り方、『~であります』という口調が特徴。
 エターナルストーンとダークストーンを持ち、ノスフェルティア側の人間でもあった過去がある模様であり、CIAやヘブンズティアからの命令とは別に独自の思惑で動いている様子も示唆されているが、詳細は不明。

○ロビン(がんばれ!!ロボコン)
 ロボット学校の生徒で、実はバレリーナ星の王女。
 初代ロボコン達からは「ロビンちゃん」と呼ばれている。
 2年前にガンツ先生の元に預けられ、バレエの修行をしていた。
 ロボコンの良き相談相手としてアドバイスをすることも多く、
 他人を気遣う優しい少女へ成長した。
 その後『燃えろ!!ロボコンVSがんばれ!!ロボコン』では、
 大人に成長した姿を見せ、部下となった秘密捜査官の初代ロボコンと共に
 二代目ロボコンに協力して、次元警察捜査課長として次元犯罪者ワーズを追跡している。

△鳴滝(仮面ライダーディケイド)
 世界の先々でディケイドの邪魔をする謎の怪人物。
 ディケイドこと門矢士を激しく敵視し、彼が様々な世界の危機を救っているのにも関わらず、
 「この世界もディケイドによって破壊された!」などと罵倒したり、他の世界に存在する仮面ライダーを刺客としてけしかけたり、ディケイドを排除するよう告げ口して回ったりするなど様々な妨害を行う。
 ある時はゾル大佐やドクトルGの姿を借りて歴代ライダーの敵にまわったり、
 またある時は逆に味方として後方から歴代ライダーを援護するなど、真意のつかめない謎の人物。

△矢車想=仮面ライダーキックホッパー(仮面ライダーカブト)
 ZECTの精鋭ゼクトルーパー部隊「シャドウ」の初代リーダー。
 作中における、マスクドライダーシステム第2号の仮面ライダーザビー最初の資格者であったが、
 後にZECTがネイティブに内密で開発した仮面ライダーキックホッパーの資格者となる。
 失脚後、己を卑下し「完全調和」の精神を喪失するほどにやさぐれた姿と
 キックホッパーの資格を引っさげて再登場。自分同様にZECTから追放された影山に
 もう1つのホッパーゼクターを授け「弟」とし、行動を共にするようになる。
 以降どのグループにも属さず、自らを「闇の住人」と称し、
 影山と2人で気の赴くまま、ライダー達やワームに戦いを挑む。

△影山瞬=仮面ライダーパンチホッパー(仮面ライダーカブト)
 ZECTのエリート戦闘部隊・シャドウの隊員。仮面ライダーザビー3代目の資格者を経て、
 後にZECTが内密で開発した仮面ライダーパンチホッパーの資格者となる。
 ホッパーゼクターを受け取ってパンチホッパーの資格者となった彼は、
 以後は矢車を「兄貴」と慕い、2人で気ままな行動をとり続ける。


『真時空伝説 戦士は神獣と共に』-2

作者・ティアラロイド

32

***旧ノスフェルティア領・北東地区 中規模都市ルセル***

魔物族ダークノイドの国ノスフェルティアの王都聖堂も
すでにヘブンズティア軍によって陥落して久しく、
異世界エターナリアの長きにわたる戦乱にも終止符が打たれたかに見えたが、
すでに氷河期の氷に飲まれ放棄されたはずのこの都市に、
続々とダークノイドの残党が集結し、秘密裏に築かれた地底要塞の中で
軍勢の再編成を終え始めている事など、ヘブンズティア側は知る由もなかった。

ザザ「感じるか、お前たちも……。
 この僕の内なる力の高鳴りを」

中央の玉座に座る、王族の証たる服をまとい、
頭上には黒水晶による小さな角の冠を戴く、
外見は10歳ほどの少年。

ザザ「まもなく、僕の力はピークに達する!」

ノスフェルティアの最高権力者、プリンス・ザザ。
東京要塞都市での最終決戦において、
神城桃矢と機甲神獣たちの必死の活躍によって
倒れたと思われていたが、こうして密かに身を隠し、
傷を癒しながらパワーが回復する日を待っていたのである。
再び"大いなる反転"を試みる為に…!

なにもないはずの一点に赤紫色の布が閃いた。
…かと思うと、地面を滑る蛇のような動きでローブがはためき、
闇の影が凝り固まるようにして、長身の男の姿が現れた。
目深なフードのため、目の表情を窺い知ることはできないが、
にたにた笑いを浮かべる三日月形の唇がハッキリと見える。

ゲマ「ご機嫌麗しく、プリンス・ザザ…」
ザザ「ゲマか…。お前たち魔界同盟がもたらしてくれた
 進化の秘法のおかげで、僕は再びパワーを取り戻す事が出来た」
ゲマ「お喜びいただけたのであれば、なにより…」

ゲマのフードの奥から、二つの瞳が煌々と黄色く光っている。
遥か昔に地獄の帝王エスタークが編みだしたといわれる
ある世界の魔族に伝わる秘法であり、人や動物、魔物などの生物を
従来の成長の過程を無視して進化させる力を持つ――進化の秘法。
遥か昔に天空の勇者と導かれし者達の妨害によって一度研究は葬られたが、
今度は魔界同盟によってノスフェルティアへとそれがもたらされ、
秘法の研究は異世界の地で再開されていたのだ。

ゲマ「ところで、兵たちの姿が見えないようですが?」
ザザ「伝説の戦士どもの首をあげた者には、
 新生ノスフェルティアの一国を恩賞として与えると
 言知したら、みんな喜び勇んで出ていきおったわ!」
ゲマ「ほぉ…」
ザザ「つくづくあさましい者だ。人間とは…。
 しかし部下は上手に使わなくてはな。僕の力が頂点に達し、
 恐れる者がなくなるまでは!」
ゲマ「御意」

ゲマはふと、その場に控えたまま留まっている一人の男がいた事に気づく。
顔立ちは線が細く、切れ長の瞳も氷のように冷たく、言い得ぬ威圧感を醸し出している。

ゲマ「貴方は出撃されないのですか? ドーラ・レム殿」
レム「………」

角を模した青水晶の冠は、選ばれし民族であるダークノイドの貴族の証。
ドーラ・レム――かつてはダー・レムと呼ばれていた。
味方をも平然と使い捨てにして勝利を得たかつての戦歴から
『シベールの氷の瞳』と呼ばれ恐れられるダークノイドの戦士である。

レム「…私が興味があるのは、神城桃矢の首のみ!」

33

***ヘブンズティア王国・王都外れの砦 戦闘機格納庫***

ミレイアの態度にしびれを切らした神城桃矢は、
こっそりと単身で宮殿を抜け出し、
警備の目を盗んで王都外れの砦の格納庫に忍び込んでいた。
一人乗りのビーグルに跨り、発進しようとしたが…。

グレイファス「どこへ行くんだ? 桃矢」
桃矢「――グレイファス!?」

いつの間にか桃矢の目の前には、
全身を銀色のふさふさとした毛に覆われた、
二足歩行の狼獣人グレイファスが立っていた。
それだけではない。鷹獣人ピークウッド、猿獣人ガリエル、
そして熊獣人テディアム、四人のアニマノイド戦士が
桃矢の行く手を塞ぐように、四方を完全に取り囲んでいる。

ガリエル「水臭いぜ大将! 俺たちに内緒で
 行っちまおうとするなんて!」
桃矢「頼むガリエル! そしてみんなも!
 見逃してくれ! 俺はザザを倒しに行かなきゃ
 いけないんだ!」
テディアム「そしてまた一人で勝手に突っ走るのかよ?
 煌が死んだ時みたいにな!」
桃矢「………」

テディアムの今の一言に、桃矢の表情は曇る。
ダークノイドとの決戦において、自分の先走りが原因で、
桃矢は戦友・金剛煌を失っていた…。

ピークウッド「テディアム、それはもう言わない約束です」
テディアム「フン…」

ピークウッドはテディアムを窘めるが、
当のテディアムはそっぽを向く。
戦死した金剛煌は、テディアムの相棒であったのだ。

ピークウッド「桃矢、焦る気持ちはわかります。
 ですが今出たところで、ザザの居所はまだわかっていません。
 王都を出て闇雲に探し回るつもりですか?」
桃矢「けどよ…。ミレイアはいつになったら俺を
 真のガルキーバとして目覚めさせてくれるんだ?」
グレイファス「姫様にもきっと何かお考えがあるのだろう。
 さあ、戻るぞ桃矢」

???「なるほどなあ。大体わかった」

グレイファス「――!!」
ピークウッド「――!!」
ガリエル「――!!」
テディアム「――!!」

桃矢「――誰だ!?」

34

突然した声に驚く桃矢たち。
声のした方向を見ると、整備士風の若い男が
尊大な態度で近づいて来る。

テディアム「誰だてめえは? 基地の整備士にしちゃ
 見ない顔だな…」
士「誰でもいい。おい、お前が神城桃矢か?」
桃矢「アンタは…??」

整備士の作業服を着て格納庫に潜り込んでいた男――門矢士の出現に、
もしやダークノイドの破壊工作員かと緊張が走るが…。

士「そして、そこにいるのが桃太郎のお供の犬と猿と雉か」
グレイファス「ハ…?」
ガリエル「な、なんなんだコイツ…」
ピークウッド「私は鷹です」

士の指摘に困惑気味のグレイファスたち。
ピークウッドだけが大真面目に反論している。

テディアム「いったい誰なんだてめえは!?」
士「…なんだ、熊までいるのか。
 だったら金太郎はどこにいる?」
テディアム「なに訳のわからねえこと言ってやがる!!」

テディアムは激昂して殴りかかるが、
士はそれをひょいっと難なくかわしてしまう。
テディアムはますます頭に血が上ってしまう。

テディアム「こ、この野郎~!!」
士「落ち着け。俺はお前たちとやりあうつもりはない」
グレイファス「君はいったい何者だ?」
士「どうやらこの世界に来た今回の俺の役割は、
 この神城桃矢を真のガルキーバとやらに目覚めさせる
 手伝いをすることらしい」
桃矢「アンタはいったい……」

その時、敵襲来を告げる警報が鳴り響いた。

グレイファス「桃矢!」
桃矢「とりあえずコイツの事は今は後回しだ!
 行くぞみんな!!」

桃矢は五角形の宝石エターナルストーンを額にかざし、
伝説に語られしラディアスの剣「大地」を手に持つ、
黄金の甲冑をまとった姿に変身し、グレイファスたちを引き連れ、
門矢士の前を勢いよく飛び出して行く。

35

砦を襲っていたのは、怪奇傭兵と呼ばれる、
ダークノイドとアニマノイドの混血である種族の、
ノスフェルティア軍に雇われた傭兵たちの駆る
3体の巨大メカニックウェポン「バトルメック」だ。

蛇型の怪奇傭兵「プリンス・ザザ様は伝説の戦士を
 討ち取った者には一国を与えると仰せになられたぞ!」
鼠型の怪奇傭兵「さあ出て来やがれ、伝説の戦士!!」

機銃掃射や体当たりなど、様々な攻撃をしかけてくるバトルメック。
砦の堅固な塀も崩壊寸前である。

グレイファス「敵の新型バトルメックか!」
ピークウッド「桃矢、私に力を!」
戦士桃矢「よーし!!」

桃矢は剣を空高く掲げると、そのパワーを浴びたピークウッドは
機甲神獣キバの姿へと巨大化する。

戦士桃矢「行くぞ!!」

桃矢の号令の下、獣戦士たちはそれぞれ別々の方向へと跳躍する。
ピークウッド・キバが空中からの攻撃で支援しつつ、
地上ではグレイファスのレーザー・ホイップ、ガリエルのレーザー・ホイール、
そしてテディアムの六尺棒が敵バトルメックを攻撃する。
桃矢も剣を振りおろし、剣先から光の刃を飛ばす。

猫型の怪奇傭兵「うわあああっ!!!」

その威力は強烈で、まずは一機のバトルメックが吹き飛ばされた。

戦士桃矢「よしっ、これであと残り2機だ!」
鼠型の怪奇傭兵「ちきしょう! なめやがって!!」

逆上した残りのバトルメック2体が多連装ミサイルランチャーを乱射する。
それがグレイファスたちの足元に炸裂した。

グレイファス「ぐわああッ!!」
戦士桃矢「――グレイファス!! ガリエル!! テディアム!!」

激しい地響きが鳴り渡る中、爆風で吹き飛ばされたグレイファスたちと桃矢は
なんとか懸命に態勢を立て直そうとするが――。

士「やっと真打ち登場のタイミングか…」

36

士「随分と待たせてくれたな」

神城桃矢たちが苦戦する中に、威風堂々と現れた門矢士。

戦士桃矢「またアンタか!」
ガリエル「おい、アンタ! こんなところに出てきちゃ危ねえぞ!」
テディアム「引っこんでろ!!」

桃矢たちは、かなり抗議に近いような強い口調で
後方に下がるように言うが、士はそれを無視し、
変身ベルト"ディケイドライバー"を腰に装着する。

士「変身!!」

DECADE!!

士の変身した姿を見て、桃矢は驚愕する。

戦士桃矢「仮面…ライダー!?」

仮面ライダー、それは桃矢たちの住むアースサイド=地球の住人であれば、
ほとんどの人間が知っているであろう、人類の自由のために戦う仮面の戦士の名である。
それがなぜ、ここ異世界エターナリアの地にいるのか…?

蛇型の怪奇傭兵「なんだコイツは!? 見た事もないぞ…」
鼠型の怪奇傭兵「俺に任せろ!!」

予期せぬ新たな敵のいきなりの出現に動揺する怪奇傭兵たちだが、
バトルメックの一体は唸りを上げて大地を揺らし、
全身を震わせながらディケイドめがけて突っ込んでくる。

ディケイド「………」

ディケイドはファイナルアタックライドのカードを取り出し、
ディケイドライバーに投入して左右から押す。

FINAL ATTACK RIDE DECADE!!

標的との間に大きなカードのビジョンがずらりと並ぶ。
助走をつけずに真上に飛びあがると、カードもななめ一直線に並び、
カードに引かれるようにディケイドが標的にめがけ一直線に降下する。
そしてカードの中を通り過ぎながらエネルギーを蓄え、
バトルメックに蹴りを叩きこんだ。

鼠型の怪奇傭兵「ギャアアッ――!!!」

ディケイドは後ろに向かって跳び、着地する。
敵バトルメックは大爆発した。

37

蛇型の怪奇傭兵「ちくしょう! いったいどうなってやがるんだ!?
 勝ち目のない戦いはゴメンだぜ!」

生き残った最後のバトルメックは、一目散に逃げ出してしまった。
その様子の一部始終を、砦の無人の物見櫓から密かに窺っていた者たちがいる。
金剛煌と、仮面ライダーキックホッパー、仮面ライダーパンチホッパーの3人だ。

キックホッパー「おいっ、獲物は目の前だぞ。いつまで待たせる…!?」
戦士煌「待て。今はまだ早い…」
パンチホッパー「知るかっ…! 構わずに行こうぜ、兄貴」
キックホッパー「そうだな…相棒!」
戦士煌「おい待つんだ!!」

キックホッパーとパンチホッパーは、
煌の制止も聞かずに勝手に飛び出して行った。

ディケイド「……ん?」

敵を全て撃退したかと思いきや、
背後に新たな殺気を感じたディケイドは
何者かが着地した音がした方向に振り向く。

ディケイド「お前たちは…? どっかで見たような奴らだな」

キックホッパー「………」
パンチホッパー「………」

彼らは以前に「クウガの世界」で襲いかかって来た事のある、
それぞれ緑色と茶色の装甲をした、彷徨える闇の世界の住人の
ライダーたちだった。彼らは無言のまま拳を振るって
ディケイドに襲いかかってくる。

戦士桃矢「仮面ライダー同士で戦ってる…??」
テディアム「どうやら仲間割れみたいだな。
 …フン、よくわからんがいい気味だぜ」

この時、テディアムが鼻で笑った事に反応した
キックホッパーが、いきなり矛先を変えて
弟分のパンチホッパー共々テディアムに襲いかかって来た。

テディアム「うわっ!? いきなり何しやがるッ!!」
キックホッパー「貴様ァァッ、今笑ったなああッッ!!!」
戦士桃矢「テディアム!?」
ディケイド「…お、おい!!」

鋭い異様な殺気を剥き出しにしてテディアム一人を集中して襲う
キックホッパーとパンチホッパー。

戦士煌「…チッ! 本来の標的が違うじゃないか!
 勝手に誰を狙っているんだ!」

自分の指示を無視して勝手に暴れている
キックホッパーたちに静かに憤る煌は、
桃矢とテディアムの姿に視線を送る。

戦士煌「桃矢くん…。テディアム…」

煌は魔神の斧を握る手に力を込めた刹那、
勢いよく振り下ろして地上めがけて
かまいたちを放った。

38

キックホッパー「ぐわああッ…!?」
パンチホッパー「うわああッ…!!」

強烈なつむじ風に身体の細部を切り刻まれて
吹っ飛ぶ2体の闇のライダー。

ピークウッド・キバ「あれは…!?」

機甲神獣形態のまま空中を旋回していたピークウッド・キバは、
ほんの一瞬だけだったが信じ難いものを見た。
今つむじ風を放ったのは、自分のよく知る人物だったのである。
しかし、その人物はもうこの世にはいない筈なのだ。

ピークウッド・キバ「………」

つむじ風が放たれたと思われる物見櫓を改めて見返してみても、
もうそこには誰もいなかった…。
きっと何かの見間違いだろうとすぐに思い直したピークウッド・キバは、
大きく翼をはばたかせながら、桃矢たちを守るようにゆっくりと着陸する。

ピークウッド・キバ「まだやりますか?」

牽制するピークウッド・キバからの問いかけに、
2体の闇のライダーは…。

パンチホッパー「兄貴、もういいや。行こうか…」
キックホッパー「ああ、新たな地獄へな…」

むくりっと起き上ったキックホッパーとパンチホッパーは、
何の前触れもなく発生したオーロラの壁の中へと
勝手に飛び込んで姿を消してしまった。

ディケイド「やれやれ、今度こそやっと終わったな」

ディケイドは変身を解除して門矢士の姿に戻る。
同じくピークウッドも勝利の咆哮の後、本来の等身大の姿へと戻った。
それを唖然とした表情で見つめたままの桃矢たち…。
そこへ光夏海と小野寺ユウスケがやって来た。

夏海「士く~ん!」
ユウスケ「士、無事だったか!」
士「ユウスケ、ナツミカン、いったい今までどこにいた!?」
夏海「そんなに怒らないでください。この人に捕まって
 ずっと職務質問されていたんです!」

夏海の指差した先には、卵型の赤いボディをしたロボットが、
敬礼のポーズをして立っていた。

ロボコン「どうもはじめまして。わたくし、次元警察所属の
 秘密捜査官でロボコンと申します!」

39

***旧ノスフェルティア領・北東地区 中規模都市ルセル***

レム「なに、妙な奴ら?」
蛇型の怪奇傭兵「何しろとんでもなく腕の立つ敵でして…」

ダークノイド側の秘密基地では、司令官ドーラ・レムが
唯一逃げ帰って来た怪奇傭兵から報告を受けていた。

レム「アースサイドで結成されたとかいう
 例のブレイバーズとかいう組織が動いたか。
 それとも……」
ゲマ「私の方で探ってみましょう。
 お出でなさい、ジャミ! ゴンズ!」

ゲマの呼び出しに応じて現れたのは、
白い体と赤いたてがみを持つ馬のような魔物と、
剣と鎧で武装した獣人型のモンスターだった。
名前はそれぞれジャミとゴンズ。
ゲマ腹心の配下である上級魔族だ。

ジャミ「お呼びでございますか、ゲマ様」
ゲマ「新たにヘブンズティアに現れたという
 正体不明の邪魔者の様子を調べて来てください。
 もし可能であれば始末してきて構いません」
ゴンズ「承知いたしました。お任せを」

その様子を遥か高みの天井の片隅で激しく動きまわりながら、
こっそりと伺っている白い点…いや、白い体色の小さなコウモリが一匹。

キバーラ「あらら~大変! 早くみんなに知らせなくちゃ♪」

40

○神城桃矢→ディケイドの協力を得て、砦を襲撃して来たダークノイドを撃退。
○金剛煌→勝手な行動に走った地獄兄弟を制裁。間接的に神城桃矢たちの危機を救う。
○グレイファス→ディケイドの協力を得て、砦を襲撃して来たダークノイドを撃退。
○ピークウッド→ディケイドの協力を得て、砦を襲撃して来たダークノイドを撃退。
○ガリエル→ディケイドの協力を得て、砦を襲撃して来たダークノイドを撃退。
○テディアム→ディケイドの協力を得て、砦を襲撃して来たダークノイドを撃退。
○門矢士/仮面ライダーディケイド→神城桃矢たちに接触し、砦を襲撃して来たダークノイドを撃退。
○光夏海→初代ロボコンに捕まって不審尋問されていたが、門矢士と合流。
○小野寺ユウスケ→初代ロボコンに捕まって不審尋問されていたが、門矢士と合流。
△キバーラ→ダークノイドの秘密基地内部を密かに偵察。
△仮面ライダーキックホッパー →本来の目的から外れて勝手な行動に走ったため、金剛煌から制裁を受けて撤退。
△仮面ライダーパンチホッパー →本来の目的から外れて勝手な行動に走ったため、金剛煌から制裁を受けて撤退。
●プリンス・ザザ→魔界同盟から進化の秘法を提供されて復活。密かにパワーを蓄えている。
●ドーラ・レム→逃げ帰って来た部下からディケイドに関する報告を受ける。
●ゲマ→プリンス・ザザに進化の秘法を提供。
●ジャミ→ゲマの命令でヘブンズティアに偵察に出向く。
●ゴンズ→ゲマの命令でヘブンズティアに偵察に出向く。

【今回の新規登場】
△キバーラ(仮面ライダーディケイド)
 キバット族の白いコウモリ型モンスターで、キバットバットIII世の妹。
 明るい性格を装っているが、時折冷酷な一面を覗かせる。
 次元に干渉して他者を異世界に送る能力を持つ。
 鳴滝が門矢士一行に送り込んだスパイだが、彼女自身にも独自の思惑があるらしく、
 光夏海に仮面ライダーキバーラに変身する能力を与えた。

○グレイファス(獣戦士ガルキーバ)
 異世界エターナリアからやって来た、神城桃矢に仕える狼族のアニマノイドの戦士。
 武器はレーザー・ホイップ。理知的な性格だが同時に好奇心旺盛で、
 機械を見ると分解してみたがるという奇癖を持つが元に戻せたことは皆無。
 「グレちゃん」と呼ばれると激しく怒る。

○ピークウッド(獣戦士ガルキーバ)
 異世界エターナリアからやって来た、神城桃矢に仕える鷹族のアニマノイドの戦士。
 武器はレーザー・ボウ。冷静沈着かつ緻密な性格。大自然の美を愛で、即興の詩を吟じる詩人でもある。宗教的な分野に著しい興味を覚える。

○ガリエル(獣戦士ガルキーバ)
 異世界エターナリアからやって来た、神城桃矢に仕える猿族のアニマノイドの戦士。
 武器はレーザー・ホイール。豪放かつ陽気な性格。桃矢のことを大将と呼ぶ。酒を飲むと踊り出す。
 女性に触れられると蕁麻疹が出るなど分かりやすい癖が多い。まだ幼い火浦直気&麻由兄妹の遊び相手。

○テディアム(獣戦士ガルキーバ)
 異世界エターナリアからやって来た、熊族のアニマノイドの戦士。武器は六尺棒。
 激しい性格であり、ミレイアの決定によって金剛煌のパートナーとしてアースサイドに赴く。
 アースサイド行きの決定に不服な上、パートナーが甘さの目立つ煌とあって苛立つことが多かったが、後に煌の成長を認め信頼する間柄となり、煌の死に際しては激しく慟哭した。
 亡き妹に似た印象を持つメロディ・エアロスミスのことを憎からず思っていたようである。
 妹の仇であるプリンス・ザザを激しく憎んでいる。

○初代ロボコン(がんばれ!!ロボコン)
 ロボット学校に通う、赤いボディのG級お手伝いロボット。
 友情に厚く、何事にもぶつかっていく突撃精神とやさしい思いやりがある。
 持ち前のロボ根性であらゆる逆境に負けないほど頑張るのが美点。
 しかし基本的にそそっかしいドジロボットであり、何かと対物破壊が多い。
 最初は大山家、後に小川家に居候する。
 後にロボット学校卒業後は『燃えろ!! ロボコンVSがんばれ!! ロボコン』において、
 次元警察の秘密捜査官となり、二代目ロボコンと協力して次元犯罪者ワーズを追跡した。

41

●プリンス・ザザ(獣戦士ガルキーバ)
 魔物族ダークノイドの国ノスフェルティアの皇子であり、事実上の最高権力者。
 悪意ある存在だが、同時に聖なる存在でもある。己の肉体を贄として
 滅亡が迫るエターナリアとアースサイド(地球)との『大いなる反転』を企てる。
 貴族的かつ小悪魔的な美少年であったが、大いなる反転を行うための力を得るべく修行を重ねるにつれ、容貌が崩壊し老人のような醜悪な姿すなわち精神体へと変貌する。

●ダーレム/ドーラ・レム(獣戦士ガルキーバ)
 かつての戦歴から『シベールの氷の瞳』と呼ばれ恐れられるダークノイドの戦士。
 ドーラ・ヨマ配下の三幹部の筆頭格。ドーラ・ギルを追い落として司令官に昇格し、
 従来の「ダー」から「ドーラ」の称号を名乗る。その最終目的は、
 ガルキーバとして目覚めた神城桃矢との命を賭けた戦いである。
 またパイプオルガンの名手であるという一面も持ち合わせている。

●ゲマ(ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁)
 大魔王ミルドラースを崇める光の教団の最高幹部で、売られた奴隷を引き取りに来たりする使い魔のような男。
 直属の部下に牛頭のゴンズと馬頭のジャミがおり、自身は男とも女とも取れるような丁寧語で話す。
 DQⅤの主人公一族を長きに渡り苦しめた敵であり、光の教団の教祖イブールすら彼の捨て駒に過ぎなかった。
 メラゾーマの呪文や焼けつく息などの攻撃を行う。

●ジャミ(ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁)
 光の教団の幹部で、ゲマ直属の馬型モンスター。
 DQⅤ主人公の父パパスの仇であり、相方のゴンズと共に無抵抗のパパスを痛ぶった外道。
 メラミ、バギクロスの呪文と、凍える吹雪で攻撃してくる。

●ゴンズ(ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁)
 光の教団の幹部で、ゲマ直属の獣人型モンスター。
 相方のジャミと同様に、DQⅤ主人公の眼前で父親のパパスを痛めつけた外道。
 ボブルの塔においてマスタードラゴン復活の為に必要な【竜の右目】を隠し持っていた。


『真時空伝説 戦士は神獣と共に』-3

作者・ティアラロイド

42

***ヘブンズティア王国・宮殿***

ピークウッド「つまり貴方がたは、これまでも数々の
 異世界を旅してこられたと…」
夏海「そういうことなんです」

王都の宮殿へと戻った神城桃矢たちと門矢士たちは、
ロボコンら次元警察の関係者を交えて自己紹介をしつつ、
お互いに自分たちの事情を説明していた。

ロビン「仮面ライダーディケイド=門矢士…。
 貴方の幾多の活躍は次元警察でも把握しています」
士「へえ~よく調べてるな。それなら俺が
 かつて大ショッカーの大首領だった事も
 当然知ってるはずだろ」
桃矢「大ショッカー? なんだいそりゃ?」
ロビン「それは……」

ここでロボコンが慌てて士に近づき、
小声でぼそぼそと呟く。

ロボコン「おいっ、せっかくいい雰囲気なのに
 余計な事を喋るなよ! 大ショッカーの件は
 ロビンちゃん…じゃなかった、ロビン課長が
 各方面に頭を下げて揉み消してもらったんだから!
 僕らが君のためにどれだけ苦労したと思ってる!」
士「頼んだ覚えはない!」
ロボコン「お前なあ…」

士のマイペースな態度に、ロボコンは呆れ気味だ。

桃矢「そうか、ブレイバーズか…」
グレイファス「アースサイドでそのような組織が
 結成されていたとはな…」

ロボコンたちからブレイバーズの話を聞き、
桃矢はホッと安堵した。地球に残して来た
幼馴染の舞原このはや、火浦直気と真由の幼い兄妹も
それならばきっと安全であろう。

ロビン「門矢士さん、貴方にもぜひブレイバーズの戦士に
 名を連ねて頂きたいのですか?」
士「お断りだね。俺は"仲間"とか"仲良しごっこ"が
 この世で一番嫌いだ」
ロビン「地球に残っている仮面ライダーたちのほとんどは
 皆ブレイバーズに加わっているのですよ」
士「俺には関係ない!」

士はとっとと部屋から出て行ってしまった。
夏海も「ごめんなさい」という表情でペコリと頭を下げると、
士を追いかけて同じく部屋から出て行く。

ガリエル「なんだい、アイツ…」
ユウスケ「まったく、士も相変わらず素直じゃないんだから。
 …あっ、俺は喜んで入りますよ。そのブレイバーズってヤツに」
グレイファス「我々からもありがとうと言わせてもらう。
 君たちのような歴戦の勇士と共に戦えるなら大変心強い!」
ユウスケ「へへっ、どういたしまして」

ユウスケはグレイファスたちと固い握手を交わした。

43

それから暫くして…。

***同宮殿・廊下***

桃矢「お~い、グレイファス! ピークウッド!
 どこいんだ! 姫さんが探してるぞ!」

ミレイア姫からグレイファスとピークウッドを呼んでくるように
頼まれた桃矢は、宮殿内のあちこちで二人の姿を探していた。
ふと、向こう奥の部屋の扉から微かな明かりが漏れている事に気がつく。

桃矢「あそこか…」


***同宮殿・別室***

グレイファス「どうしたんだピークウッド。
 私一人だけこんなところに呼び出して…」
ピークウッド「グレイファス、これからする話は
 くれぐれも他言は無用です」
グレイファス「???」

ピークウッドは、今日戦った戦場で、
偶然にも金剛煌の姿を目撃した事を
グレイファスに告げた。

グレイファス「まさか…。煌は死んだはずだ。
 何かの見間違いだろう」
ピークウッド「私もそう思いました。しかし念のために
 物見櫓の中を調べてみたら、こんなものが落ちていたのです」

ピークウッドはグレイファスに、一本の長いしなやかな毛髪を手渡した。
一見ただの毛髪なのだが、なぜかそれには触れただけで妙な懐かしさを覚える。

グレイファス「これは、まさか…」
ピークウッド「DNA鑑定の結果、煌の物に間違いないそうです」
グレイファス「――!!」
ピークウッド「先程次元警察の方から伺ったのですが、今アースサイドでは、
 "黄泉がえり"という現象が起こっているのだそうです」
グレイファス「黄泉がえり…?」
ピークウッド「文字通り、一度命を落とした人間が、
 再びこの世に生き返ると…」

その時、部屋の扉の向こう側から、
人の動揺を告げるような気配と大きな物音がした。

グレイファス「誰だ!?」

開いた扉の先には、愕然とした表情の桃矢が立っていた。

桃矢「………」
グレイファス「桃矢!?」
ピークウッド「今の話、聞いていたのですか!?」
桃矢「ピークウッド、本当なのか!?
 煌が生き返っているかもしれないっていうのは!!」
ピークウッド「落ち着いてください桃矢!
 まだ事の真偽が判明した訳ではありません!」
桃矢「くっ…!!」

桃矢はいてもたってもいられずに、
部屋から飛び出して行ってしまった。

グレイファス「桃矢!!」

44

ミレイア「きゃっ!」
桃矢「うわっ!?」

部屋から飛び出して無我夢中で走っていた桃矢は、
廊下でミレイアとぶつかった。

桃矢「…イテテ。なんだよ!」
ミレイア「なんだよ…とはこちらの台詞です。
 どうしたのです桃矢。グレイファスとピークウッドは
 見つかったのですか」
桃矢「今はそれどころじゃねェんだ!」

桃矢は起き上って立ち去ろうとするが、
ミレイアがそれを引き止める。

ミレイア「またこの前のように
 自分一人で勝手に飛び出すつもりですか?」
桃矢「………」
ミレイア「桃矢は死ぬのが怖くないのですか?
 今出撃してもザザに殺されるとわかっているのに…」
桃矢「怖いよ! 俺だってまだ充分に生きちゃいないんだ!
 死にたかねェ!!」
ミレイア「ではなぜ? 戦士の使命だからですか?」
桃矢「友達のためだからだよ!」

桃矢の「友達」という言葉に、ミレイアは思わずハッとなる。

桃矢「使命なんかよりずっと身近で、大切な人がいるから
 戦う勇気が出せる。笑顔で迎えてくれる友達を失うくらいなら、
 俺は命を投げ出せる」
ミレイア「………」
桃矢「ミレイアにだってそんな友達の一人くらいいるだろ!
 国を守るより身近で大切な人が!!」

だが、桃矢の問いに対するミレイアからの答えは、
予想していたものとは違っていた。

ミレイア「いないわ…」
桃矢「えっ…」
ミレイア「友達なんていないもの…」
桃矢「ミレイア?」

ミレイアは突然涙を浮かべそうな表情になると、
その場から走り去ってしまった。

桃矢「なんだよ…。俺、何か気に障ること言ったか?」

ミレイアは寂しそうに一人、玉座の間へと戻る。
宰相のシンザがミレイアを気遣うが…。

シンザ「姫様…」
ミレイア「………」

ミレイアは今一度、桃矢の「友達」という言葉を思い返す。
思えば自分の青春は、宿敵プリンス・ザザとの戦いだけに費やされて来た。
君主とは常に孤独なもの…。元々「友達」など作る余裕などなかったし、
自分から「友達」を作ろうとすることすら許されなかったのだ。
今まで自分に覚悟が決められなかったのは、これが原因だったのだろうか…。

ミレイア「シンザ、あの事は桃矢には秘密ですよ」
シンザ「しかし…」
ミレイア「あの事を知れば、桃矢はきっと術を行う事を
 受け入れてはくれません」

45

***ヘブンズティア王国・王都外れの砦 物見櫓***

桃矢「ここに煌がいたのか…」

単身、例の砦の物見櫓に足を運んだ桃矢だったが、
今更無人の場所に何か新たな手掛かりが残されているはずもなかった。
ここは一度、ピークウッドが入念に調べたのだから。

桃矢「煌、もし生き返ってんなら、
 どうしてすぐに俺たちのところに
 戻ってこねェんだ…!」

苛立つ桃矢。そこへ邪悪な気配が近寄る!

ジャミ「貴様がエターナリアの伝説の戦士か?」
桃矢「誰だ!?」

桃矢の振り返った先には、後ろ脚で歩く青ざめた白い馬の怪物=ジャミと、
でっぷりと肥えた牛頭の怪物=ゴンズの姿があった。

ゴンズ「ゲマ様の命令で偵察に赴いてみれば、
 これは思ってもみなかった獲物に出会えたものだ」

興奮しながらゴンズは、いやらしく濡れた鼻の穴を
縮めたり膨らませたりしている。

桃矢「くっ…!」

咄嗟に目の前に現れた相手を敵と認識した桃矢は、
エターナルストーンを額にかざして戦士の姿に変身しようとするが…。

ジャミ「させるか!」

ジャミは片方の前脚で長鞭を振るい、桃矢の手から
エターナルストーンを叩き落としてしまう。

桃矢「しまった!」

すぐに桃矢は落としたエターナルストーンを拾おうとするが、
今度はジャミの吐きだした凍える吹雪に遮られる。

桃矢「くそっ…!」
ジャミ「戦士の姿になれなければ、所詮はただの人間の小僧!」
ゴンズ「ジャミ、ここは俺に任してくれ!
 ここで伝説の戦士の首を持ち帰れば、我ら魔界同盟は
 ノスフェルティアの連中に大きな貸しを作る事が出来る!」

ゴンズは手にしていたでかい戦闘槌を振り回した。
桃矢は横っ面を吹っ飛ばされ倒れてしまう。

桃矢「ぐわああっ!!」
ゴンズ「止めを刺してやる」

(殺される!)
桃矢はそう思った。
その瞬間――

???「これがエターナルストーンか。美しい…。
 まさにこの僕に相応しい最高のお宝だ!」

46

ジャミとゴンズが桃矢に気を取られている隙に、
地面に落ちて転がっていたエターナルストーンを拾った男がいた。

桃矢「……!?」
ジャミ「お、お前は…!?」
ゴンズ「…ディエンド!!」

エターナルストーンを拾った細身の青年は、
ジャミとゴンズの二人にも明らかに見覚えのある人物だった。

海東「やあジャミ君、それにゴンズ君までいるのか。
 こんな世界でまた君たちに会えるなんて嬉しいよ♪」
ジャミ「おのれ、よくもまあヌケヌケと!!」
ゴンズ「我ら魔界同盟から、数々の貴重な宝物を盗み取ってくれたコソ泥が!!」
海東「失敬だな。トレジャーハンターと言い直してほしいね。
 それにアレらの代物は君たち醜い魔物の寄せ集め集団よりも、この僕こそが
 真の所有者として相応しい。僕に奪われた事を光栄に思いたまえ」
ゴンズ「やかましいわ!!」

苦々しく吐きだすゴンズ。

ジャミ「ちょうどいい。伝説の戦士よりも
 まずはてめえから先に血祭りだ!」
海東「面白いジョークだ…。
 ――変身!!」

海東大樹は光線銃ディエンドライバーを発射し、
青と黒を基調としたボディカラーの仮面ライダーディエンドの姿へと変身した。
ディエンドはディエンドライバーを乱射しながら走り出す。

ATTACKRIDE BLAST!!

ジャミ「おのれ、こわっぱ!!」
ゴンズ「これでは近づけん!!」

ディエンドライバーの銃口を一時的に分身させ、
一度に発射できる弾丸の量を増やして連射を浴びせているので、
ジャミとゴンズはじわじわと押し返される。

ATTACKRIDE ILLUSION!!

今度は実体および攻撃力のある自分の幻像を生み出し、
一時的に六人に分身するディエンド。
鳴滝から渡されたパワーアップカードによって得た技だ。

ジャミ「このままでは分が悪い。無念だが一時撤退だ!」
ゴンズ「覚えていろ!!」

ジャミとゴンズは、持っていたキメラの翼を天高く放り投げると、
瞬間移動でその場から脱出した。

47エターナリア/ 真時空伝説 戦士は神獣と共に-3:2015/01/04(日) 14:48:31ディエンド「それじゃあ、僕はこれで失礼するよ」

ディエンドは拾ったエターナルストーンを持ったまま
「ディエンドインビジブル」を発動させて何食わぬ顔で
立ち去ろうとするが…。

桃矢「おい、待て…! それを返せ…!!」
ディエンド「……?」

さっきの戦いで身体に深いダメージを負った桃矢は、
なんとか懸命に立ち上がり、ディエンドからエターナルストーンを
取り返そうとするのだが、それに気がついたディエンドは
いったん変身を解除して、また海東大樹の姿に戻る。

海東「諦めたまえ。これはもう僕の物だ」
桃矢「ふざけんな…!!」

桃矢は自身に残った渾身の力で海東に殴りかかるが、
逆に海東から腹部に当て身を当てられ、昏倒してしまう。

桃矢「あうっ…!?」

完全に気を失ってしまい倒れる桃矢。
そこへ門矢士と光夏海が現れた。ロボコンも一緒である。

士「海東、そいつにそれを返してやれ」
海東「やあ士! ずっと一部始終を見ていたのかい?」
夏海「海東さん、桃矢くんにエターナルストーンを返してあげてください!
 それは桃矢くんが真のガルキーバになるために必要な物なんです!」
海東「ヤだね!」
士「海東!!」
ロボコン「第一級次元犯罪者、海東大樹!
 窃盗の現行犯で逮捕だァ~!!」

海東に向かって突撃するロボコン。
しかしあっさりと海東に片足を引っ掛けられ、
転んで頭を打って目をまわして気絶してしまう。

ロボコン「うらら~~☆☆☆……」
夏海「ロボコン、大丈夫ですか!?
 しっかりしてください!!」

倒れているロボコンを夏海はよいしょと抱き起こす。

士「あの馬と牛みたいな化け物は何だ? 大ショッカーの怪人とも、
 このエターナリアに住んでいるアニマノイドとかいう種族とも
 違うようだが…」
海東「彼らは魔界同盟の魔物たちさ」
士「魔界同盟だと?」
海東「大魔王ゾーマが主宰し、混沌の神カオスを崇める名目で
 各異世界に巣食う闇の眷族たちが一堂に集結したのさ」
士「そいつらがダークノイドとも手を組んだってわけか…。
 エターナルストーンをどうするつもりだ?」
海東「勿論、僕が持っていく。そこに情けなく倒れている
 神城桃矢君にも、そしてミレイア王女にとっても、
 その方がいいと思うんだけどなあ…」
士「どういう意味だ…?」
海東「ガルキーバに目覚めさせる儀式は
 ミレイア姫の命と引き換えに行われる」

衝撃の事実を告げる海東。

夏海「それは本当ですか!?」
海東「本当さ。禁断の秘術、聖なる魂の反転は、
 神城桃矢の魂と、その体の中に宿る戦士ラディアスの魂を
 反転させることによって行われるのさ。神城桃矢という存在は
 この世から消え、同時にミレイア姫の命も儀式の代償として失われる」
士「………」
海東「果たしてその残酷な事実に、そこで寝ている坊やが
 耐えられるかな?」

48

***光写真館***

とりあえず桃矢とロボコンを宮殿の医務室まで運び込んだ士と夏海は、
二人だけで一足先に光写真館へと戻ってきていた。

夏海「どうするつもりですか? 士くん」
士「どうするもこうするもない。予定通り、
 神城桃矢を真のガルキーバに目覚めさせるための儀式を
 あのミレイアとかいうお姫さんに行なってもらうだけだ」
夏海「でもそうしたら、桃矢くんはこの世から消えて、
 ミレイア姫も死んでしまうんですよ!」
士「関係ない。アイツだって立派な戦士だ。
 それくらいの覚悟はできているさ」
夏海「でも、そんなの悲しすぎます…」

そこにキバーラが猛スピードで、血相変えて飛び込んで来た。

キバーラ「大変大変大変大変大変よ~~!!」
夏海「どうしたんですかキバーラ!?」
キバーラ「魔界同盟がノスフェルティアと手を結んで、
 ジャミとゴンズとかいう奴がヘブンズティアに乗り込んで
 来るらしいの!!」
夏海「キバーラ、それニュースが古いです…」
キバーラ「えっ…?(汗」

その時、写真館の中一面に何やらとても香ばしい匂いが充満する。

夏海「なんでしょうか、この匂いは?」
キバーラ「くんくんくん…これは、お好み焼きだわ♪」
栄次郎「やあ士くん、夏海もおかえり」

光栄次郎――門矢士が居候する、ここ「光写真館」を経営する、光夏海の祖父である。
テーブルの上には、栄次郎が料理の腕を振るったのか、
しっかり濃厚でふわふわのお好み焼きが皿に人数分置いてあった。

キバーラ「キャッ、なにこれ。とっても美味しそう♪」
夏海「どうしたんですか、おじいちゃん!
 このお好み焼きは?」
栄次郎「うん、実はね。彼に作り方を教えてもらったんだよ」
士「――お前は!?」

栄次郎に紹介された人物を見て、士は驚く。
それは人懐こい笑みを浮かべた長髪の少年だった

煌「はじめまして、金剛煌といいます」

金剛煌と名乗ったその少年は、礼儀正しくお辞儀して挨拶をする。
お好み焼き屋の息子でもある彼には、美味しいお好み焼きの作り方を
他人に伝授するなどお手の物だった。

士「………」
夏海「士くん、知り合いなんですか?」
士「ああ…。この世界に最初に来た時に、ちょっとな…」
煌「門矢士さん、お話があります。少しの間だけ
 表に出てもらってもいいですか?」
士「いいだろう」

49

***光写真館・玄関前***

二人きりで外に出る門矢士と金剛煌。
さっきまで愛想よく笑顔を振りまいていた煌の表情が、
突然険しいものに切り替わる。


士「俺に接触するために、爺さんに近づいたのか」
煌「………」
士「なるほどな、大体読めて来たぞ。あの熊野郎の
 本来のパートナーであるはずの金太郎はお前か?」
煌「テディアムに会ったんですか?」
士「ああ…。神城桃矢にもな」
煌「そうですか…」

一瞬、瞳と唇が穏やかな感じに緩む煌だったが、
すぐに元の厳しい目つきに戻る。

煌「お願いがあります。門矢士さん、いや、ディケイド!
 すぐにこの世界…エターナリアから出て行ってください!」
士「いやだと言ったら?」
煌「仕方ありません」

煌はエターナルストーンを懐のポケットから取り出して臨戦態勢に入る。
すると士もディケイドライバーで変身しようと応戦の構えを取る。
そんな緊迫した雰囲気の中に割り込んで来たのが夏海だった。

士「ナツミカン、そこをどけ!」
煌「どいてください! 僕の狙いはディケイド唯一人だけです!」
夏海「いいえどきません! 金剛煌くんと言いましたね?
 どうせ鳴滝さんから何か吹き込まれたんでしょうけど、
 士くんは世界の破壊者なんかじゃありません!」
士「無駄だナツミカン! 言って分からない奴には
 腕ずくで解らせるしかない!!」
煌「僕だって!!」

互いに殺る気満々の男二人にムカッ腹が立った夏海は、
両者を強制的に制圧すべく、ついにあのお約束の必殺技を繰り出した。

夏海「光家秘伝、笑いのツボ!!」

夏海に首筋のツボを押された士は、
たちまち笑い転げてしまう。

士「…ヾ(▽⌒*)キャハハハo(__)ノ彡_☆バンバン!!」

煌「えっ……??」

煌はいきなり何が起こったのか理解できず、
ただ茫然とその様子を見つめていたのだが…。

夏海「さあ、キミもです!」
煌「…え、ちょ、ちょっと!?」

士と同様に首筋のツボを指圧された煌も、
その場に笑い転げ始めた。

煌「…(o_ _)ノ彡☆ギャノヽノヽノヽノヽ!! ノヾンノヾン!」
士「…(∠T▽T)ノ彡☆ハライテ・・」

50

煌「…し、死ぬかと思った」
士「なにしやがるナツミカン…!」

数分後、ようやく笑いの症状が治まって来た士と煌の前に、
怖い顔をした夏海が仁王立ちしている。

夏海「二人とも、反省してください!!」

ずっと怒っていた夏海だったが、
ふと何か大事な事を思い出したように
真剣な顔で煌に話しかける。

夏海「…そうだ! こんなことをしている場合じゃありません!
 煌くん、今桃矢くんが大変なんです!!」
煌「なんですって!?」

51

○ロビン→門矢士たちと神城桃矢たちにブレイバーズについて説明。
○ロボコン→海東大樹を逮捕しようとするが、転んで頭を打って気絶。
○門矢士→金剛煌と再度対決となりかけたが、光夏海に笑いのツボを押される。
○光夏海→金剛煌に、神城桃矢が今大変な状況に置かれている事を伝える。
○小野寺ユウスケ→ロビンたちから説明を受け、ブレイバーズ参加を快諾。
○光栄次郎→金剛煌から美味しいお好み焼きの作り方を教わる。
○神城桃矢→ジャミとゴンズに襲われ、さらに海東大樹にエターナルストーンを奪われる。
○金剛煌→光栄次郎に接触して、再度ディケイドに勝負を挑もうとするが、
     光夏海から今神城桃矢が大変な状況になっている事を伝えられる。
○グレイファス→ピークウッドから、死んだはずの金剛煌を目撃したと相談される。
○ピークウッド→グレイファスに、死んだはずの金剛煌を目撃したと相談する。
○ガリエル→ロビンたちからブレイバーズに関する説明を受ける。
○ミレイア・エターナル→神城桃矢の「友達」という言葉にショックを受ける。
○シンザ→ミレイア姫を気遣う。
●ジャミ→神城桃矢を襲うが、仮面ライダーディエンドに阻まれ撤退。
●ゴンズ→神城桃矢を襲うが、仮面ライダーディエンドに阻まれ撤退。
△海東大樹/仮面ライダーディエンド→ジャミとゴンズを撃退。神城桃矢からエターナルストーンを奪う。
△キバーラ→光写真館に戻る。

【今回の新規登場】
○光栄次郎(仮面ライダーディケイド)
 光写真館を営む老主人で、光夏海の祖父。光写真館が多くの世界を移動すること、
 怪人やキバーラが存在することなどに対し、特に驚きも見せずマイペースに順応し、
 門矢士たちの旅を温かく見守る。コーヒーや料理の腕前は達者で、
 写真館を訪れる異世界の客にふるまう。だがしかし、実はその正体は……。

△海東大樹=仮面ライダーディエンド(仮面ライダーディケイド)
 お宝を集めるために九つの世界を旅している青年。
 登場しては「なまこは食べられるようになったか?」と言うなど、
 門矢士の過去を知っているかのように振る舞っていた。
 大ショッカーから奪ったお宝、ディエンドライバーを使って
 仮面ライダーディエンドへと変身する。
 初登場以降から士に対してただならぬ発言をかましている。 


『真時空伝説 戦士は神獣と共に』-4

作者・ティアラロイド

52

***旧ノスフェルティア領・北東地区 中規模都市ルセル***

ノスフェルティア軍の地下秘密拠点では、
ゲマたちの手によって蜘蛛型の大型無人機動兵器が
密かに運び込まれていた。ゲマがノスフェルティアに
献上する目的で取り寄せたのだ。

レム「なんだこれは?」
ゲマ「この地とは異なる異世界において、
 かつてガルバディア軍が誇っていた戦闘メカで、
 コードナンバーX-ATM092、通称"ブラック・ウィドウ"です。
 貴公らの使うバイオメック、バトルメックと比べても
 決して引けは取りますまい。プリンス・ザザ復活の狼煙を
 上げるにはちょうどよい代物かと…」
ザザ「面白い。レムよ、お前はそれを使って
 真のガルキーバに目覚める前に神城桃矢を始末して来い」
レム「かしこまりました」

プリンス・ザザの命を受けたドーラ・レムは出撃する。

レム「……(こんなオモチャで伝説の戦士を倒せるとも
 思えぬが…。ま、お手並み拝見と行こう)」


***ヘブンズティア王国・宮殿***

兵士A「なんだ、夜なのに空が明るいぞ!」
兵士B「違う! 大地が発光しているんだ!」

この大地の異変は、まさに桃矢たちが
一度阻止したはずの"大いなる反転"の前兆…。
魔界同盟から進化の秘法を施されたプリンス・ザザの
完全復活の日が迫っているのだ。

夏海「待ってください、桃矢くん!」
桃矢「またアンタたちか。放っておいてくれ!」
士「海東にエターナルストーンを取られたまま、
 儀式だけ強行するつもりか?」

海東大樹に自身のエターナルストーンを奪われてしまった
神城桃矢だったが、予想以上のザザの邪悪の力の高まりを感知し、
ついにガルキーバ目覚めの儀式を行う事を決意したのだ。

ミレイア「これより真のガルキーバを目覚めさせる儀式を
 執り行います」
桃矢「頼むぜ、ミレイア!」
夏海「ダメです! もし儀式を行えば桃矢くんは!」
桃矢「…俺とラディアスの魂が入れ替わるって話だろ」
夏海「えっ?」
士「知っていたのか…」

桃矢からの意外な言葉に、士と夏海は暫し言葉を失う。
「神城桃矢」という存在はこの世から消えることになるが、
短時間で真のガルキーバに目覚めさせる手段は、
もはやこれしか残されていないのである。

桃矢「構わないからやってくれ。
 俺の命にしちゃ上等な取引だぜ!」
夏海「そんな……」
士「………」
ミレイア「それも、"友達"のためだからですね?」
桃矢「ああ!」

もはや神城桃矢の瞳に迷いはなかった。
それを見て、ミレイアも自分にそんな友達が欲しかったと思う…。
桃矢とミレイアは二人きりで儀式の部屋に入り、
扉は固く閉ざされた。

夏海「開けてください! 桃矢くん! ミレイア王女!
 それだけじゃないんです! もし儀式を行ってしまったら、
 桃矢くんだけじゃなくてミレイア王女も!!」

夏海は懸命に扉を叩いて叫ぶが、
もはやその声が中に届く事はない。

シンザ「夏海殿、ワシはミレイア様がお生まれになってから、
 18年間ずっと姫様にお仕えして参った。先王夫妻がザザに
 暗殺されてから今日まで、国を守るためだけに生きてこられた。
 遊びたい盛りに遊ぶことも叶わず、立派にお務めを果たしてこられた」
夏海「シンザさん…」
シンザ「ワシとて、ミレイア様を死なせたくはない…」

その時、城内に敵襲を告げるサイレンが鳴り響いた。

士「行くぞナツミカン、俺たちは俺たちの役目を全うするだけだ」
夏海「はい…!」

53

一方、その頃…。

***王都外れの砦跡地***

海東「やあ、まさか君の方から来てくれるだなんてね。金剛煌君」
煌「ここに来れば会えると思ってました…」

対峙する海東大樹と金剛煌。

煌「桃矢くんのエターナルストーンを返してもらいます!」
海東「おや、なぜたい? 神城桃矢は君の親友だろ。
 彼が真のガルキーバになってこの世から消えてもいいのかい?」
煌「それは桃矢くんの決めることだ!
 僕は…友達として桃矢くんの決断を信じる!」
海東「仕方ないね…! ついでに君の持っている
 エターナルストーンも頂こうか」

両者、変身して戦闘態勢に入る。
そこへ前触れなしにいきなり割り込んで来たのが、
時空のオーロラの壁から現れた鳴滝だ。

ディエンド「鳴滝…?」
鳴滝「煌君、君の標的はディエンドではない!
 ディケイドのはずだ! 何をやっている!」
戦士煌「すみませんが、今は取り込み中です。
 こっちの方を優先したいんで、後にしてもらえますか!」
鳴滝「残念だよ、戦士リュートの魂を受け継ぐ金剛煌君。
 君ならばあのディケイドを倒してくれると信じていたのだが…」

それだけ言うと、鳴滝は再び
オーロラのカーテンの中に姿を消していく…。

ディエンド「さあ、始めようか!」


***ヘブンズティア王国・宮殿 儀式の間***

ミレイア「これより、禁断の秘術"聖なる魂の反転"をもって、
 桃矢の魂と、その中に宿る戦士ラディアスの魂を反転させます」
桃矢「最後に一言言わせろよ」
ミレイア「…?」
桃矢「お前は命がけでこれまで何度も俺を助けてくれた。
 お前も大切な友達だ!」
ミレイア「…ありがとう、桃矢」

この桃矢の一言で、ミレイアの覚悟も決まった。
桃矢のためなら命をかけられると…。
一方の桃矢も、アースサイドに残して来た
幼馴染の少女の事を思っていた。
懐かしい金桃寺での平和な日々…。
愛おしい少女の顔が脳裏に思い浮かぶ。

桃矢「……(さよなら、このは)」

エターナルストーンを象った五角形の魔法陣に座る桃矢を前にして、
いよいよ儀式の術式を開始するミレイア。宰相シンザや神官たちが
固唾をのんで見守っている。

ミレイア「五角形に宿る万物の力よ!
 陰と陽のはざまに我が力を持って道を開く!
 生ある者に死を! 魂ある者に生を与えよ!」

54

***王都外れの砦跡地***

この金剛煌という少年ほど、伝説の戦士というイメージとかけ離れている者はいない。
穏やかで繊細な顔立ち、女かと思ってしまうような細い体、そして肩下まで伸ばした
つややかなストレートヘア。しかしその瞳は、凛々しく輝く"戦士"そのものであった。

戦士煌「てやああああっ!」
ディエンド「女の子みたいな顔してなかなかやるね!
 さすがはこの世界の伝説の戦士だ…。
 ならば、一気に勝負をつけさせてもらうよ!」

FINAL ATTACKRIDE!!

煌が魔神の斧を振り下ろして迫る中、ディエンドは
カードの効果が発動すると同時に、青緑色の光のカードたちが
ディエンドライバーの銃口から渦を巻くように伸びて煌をロックオンし、
銃から放たれたエネルギー波を煌にブチ当てる

戦士煌「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッ……!」

ディエンドの放ったディメンジョンシュートの威力は強烈で、
煌は派手に吹っ飛ばされた。

戦士煌「くっ、う……!!」
ディエンド「そろそろ終わりにさせてもらうよ!」

倒れこんで呻く煌に迫るディエンド。
だが、煌を守るようにして四体の獣人の影が
ディエンドの前に立ちはだかったのは、その時だった!

グレイファス「………」
ビークウッド「………」
ガリエル「………」
テディアム「………」

戦士煌「…グレイファス!? ビークウッド!?
 ガリエル!? テディアム!?」

突然の展開に驚く煌。しかし次の瞬間、
いきなりテディアムが鋭い視線を煌に向けたかと思うと、
思い切り煌を殴り飛ばした。

戦士煌「ぐあっ…!」
テディアム「バカ野郎!! 生き返ったんなら、
 なんでとっとと俺たちに連絡して来ない!?」

体勢を立て直して起き上った煌は、
テディアムの顔を見て暫し呆然とする。
その両目には涙が溢れていたからだ。

戦士煌「テディアム、泣いてるの…?」
テディアム「…ふざけんな!
 泣いてなんかいるわけねえだろ!!」
戦士煌「ごめん……」

煌は泣き崩れるテディアムに、そっと優しく寄り添う。

ビークウッド「煌、大方の事情は門矢士…ディケイドから聞きました」
煌「門矢さんが…」
グレイファス「ともかく、君が戻って来てくれてこれほど嬉しい事はない。
 桃矢からこれを預かって来た」
戦士煌「これは…!」

グレイファスは、光り輝く両刃の斧を煌に手渡す。
エターナリアの伝説の戦士リュートの武器「天空」だ。

グレイファス「また私たちと一緒に戦ってくれるな?」
戦士煌「……」

煌は「魔神の斧」から、従来の愛用の武器だった「天空」に持ち替え、
それを握る手に力を込める。

55

ディエンド「感動の再会のところ、お邪魔して悪いけど、
 そろそろ友情ごっこもそこまででいいかな?」

煌とグレイファスたちは、一斉にディエンドを睨みつける。

ガリエル「てめえか! 大将のエターナルストーンを
 奪ったっていう泥棒野郎っていうのは!」
戦士煌「いくよ、みんな! 桃矢くんのエターナルストーンを
 取り返すんだ!」
グレイファス「おう!」
ビークウッド「承知です!」
テディアム「やってやるぜ!」

ディエンドはディエンドライバーにカードを読み込ませた。

ディエンド「君たちの相手は彼らだ!」

ATTACKRIDE CROSSATTACK!!

ディエンドは、仮面ライダーシザース、仮面ライダー歌舞鬼、
仮面ライダーサソード、仮面ライダーサガの4体のライダーを召喚した。


***ヘブンズティア王国・宮殿 儀式の間***

ミレイアの発動した術式によって、五角形の光の壁に
包まれる桃矢。そこにたまらなくなったシンザが駆け寄り、
全てを吐露してしまう。

シンザ「…ううっ! 待ってくだされ桃矢どのォ!」
桃矢「シンザ…!?」
シンザ「"聖なる魂の反転"は、ミレイア様の命と
 引き換えに行われるのじゃ――っ!!」
桃矢「なんだって!?」

突然の告白に愕然となる桃矢。
すでに自らの命は捨てる覚悟を決めていた桃矢だったが、
ミレイアの命まで失われるとは聞いてはいなかったのだ。

桃矢「やめろミレイア! やめるんだーっ!!」
シンザ「だめじゃ…! もう術の詠唱に入って
 ワシらの声は届かぬ…!!」

ミレイア「………」

桃矢「……(そういうことだったのかよ!
 お前、好きなこと何もしないまま死ぬつもりかよ!)」

やがて桃矢の肉体から桃矢の魂が抜けて天へと昇っていき、
代わりに戦士ラディアスの魂が桃矢の肉体へと降りていく…。

桃矢の魂「テメエがラディアスか! 俺の身体に入ってくんな!
 ミレイアが死んじまう!!」
ラディアスの魂「いいのか、ザザを倒せなくなるのかも
 しれんのだぞ?」
桃矢の魂「――!!」
ラディアスの魂「ザザも倒したい、ミレイアも救いたい、
 望む事全て叶えたくば、自らの力でミレイアの術を破ってみろ!」

56

ミレイア「ああっ!」
シンザ「姫様!!」

発動した"聖なる魂の反転"の術式が、
ミレイアの生命を生贄として蝕み始める。

ラディアスの魂「桃矢……戦ってこそ目覚める力の意味、
 お前はまだ知るまい……」
桃矢の魂「……」
ラディアスの魂「大いなる力を得ただけならば、人は人を殺すのみ…。
 必要なのは力、そしてそれを正しく使う心なのだ……」
桃矢の魂「くっ…!」
ラディアスの魂「戦いこそがその心を成長させる」
桃矢の魂「俺はただの一人も犠牲にするもんか!」
ラディアスの魂「お前の今の力は真のガルキーバの戦士としては程遠い。
 だが!」

――お前はすでに戦士の心を持っている。
 やがてお前を中心に多くの力が集まり、
 大いなる力となるだろう。

 さあ、決めろ。私とお前、どちらがザザと戦う?――

桃矢「うおおおおおお!!」


***王都外れの砦跡地***

奪われた桃矢のエターナルストーンを取り返すべく、
ディエンドの召喚したライダーたちと戦う煌とグレイファスたち四獣人。
その時、ディエンドの手中にあったはずのエターナルストーンが
突然勝手にディエンドの手から離れて宙を舞い、天高く一直線に飛んでいく。

戦士煌「桃矢くんのエターナルストーンが!?」

ディエンド「エターナルストーンは、どのみち本来の
 真の持ち主の元に帰る定めというわけか…」

ビークウッド「アレは宮殿のある方角です」
グレイファス「コイツとの戦いは後回しだ!
 ともかく宮殿に戻るぞ!」

57

***ヘブンズティア王国・宮殿 儀式の間***

シンザ「うわぁ!」

一瞬の激しい閃光と轟音が起こり、
その中にディエンドの手元から離れて飛来して来た
桃矢のエターナルストーンが飛び込む。
そして光の渦ができたかと思うと、
辺りはたちまち静けさを取り戻した…。

シンザ「術が完了してしまったのか!?
 ミレイア様ァ――っ!!」

気を失い倒れているミレイア姫を必死に抱き起こすシンザ。
しかし、ミレイアにはまだしっかりと息があった。

シンザ「おおお…! これは!!」

そんなシンザとミレイアの前に立つ、
伝説に語られしラディアスの剣「大地」を持つ
黄金の甲冑の戦士――それは紛れもなく神城桃矢だ!

戦士桃矢「言っただろ! 命かけてでも友達は守るって!」
シンザ「桃矢どのォ――!!」

シンザは感嘆の声を上げる。
そして傍にはいつの間にか門矢士もいた。

士「ミレイアの術とぶつかり合い、しのぎあった事で、
 再度"大地"の三つの宝珠を全て輝かす力を得たな。
 お前らしいぞ、神城桃矢」
戦士桃矢「門矢士…」
士「いくぞ! お前の仲間が待っている」
戦士桃矢「おう!」

58

○神城桃矢→"聖なる魂の反転"の儀式から無事生還。エターナルストーンも取り戻す。
○金剛煌→仮面ライダーディエンドと対決。グレイファスたちと再会。
○グレイファス→仮面ライダーディエンドと対決。金剛煌と再会。
○ビークウッド→仮面ライダーディエンドと対決。金剛煌と再会。
○ガリエル→仮面ライダーディエンドと対決。金剛煌と再会。
○テディアム→仮面ライダーディエンドと対決。金剛煌と再会。
○ミレイア・エターナル→"聖なる魂の反転"の儀式から無事生還。
○シンザ→"聖なる魂の反転"の儀式を見守る。神城桃矢にミレイアを助けるよう訴える。
○門矢士→"聖なる魂の反転"の儀式を見守る。
○光夏海→"聖なる魂の反転"の儀式を必死に止めようとする。
●プリンス・ザザ→ドーラ・レムにX-ATM092と共に出撃を命じる。
●ドーラ・レム→プリンス・ザザの命令で、X-ATM092と共に出撃する。
●ゲマ→プリンス・ザザにX-ATM092を献上。
△鳴滝→ディケイドと戦おうとしない金剛煌に警告を発する。
△海東大樹/仮面ライダーディエンド→金剛煌、グレイファスらと交戦。


『真時空伝説 戦士は神獣と共に』-5

作者・ティアラロイド

59

ヘブンズティア宮殿を襲って来た無人機動兵器「X-ATM092」を迎え撃つ、
仮面ライダークウガ(小野寺ユウスケ)と仮面ライダーキバーラ(光夏海)。
「X-ATM092」は六本の肢を身構えて踏ん張る体勢を取ると、
地面めがけて高出力の光線「レイ・ボム」を放つ。

クウガ「超変身!!」

紫のクウガ=タイタンフォームへと二段変身したユウスケは、
パワーと防御力に優れた強固な生体鎧でレイ・ボムの直撃を耐え凌ぐ。
そこに金剛煌とグレイファスたちも駆けつけて来た。

戦士煌「ごめんなさい! 遅くなりました!」
キバーラ(夏海)「桃矢くんのエターナルストーンは!?」
ビークウッド「心配いりません。エターナルストーンは無事に
 桃矢の元に戻りました!」

クウガ、キバーラ、煌、グレイファス、ビークウッド、
ガリエル、テディアムは一斉に「X-ATM092」に対して攻撃を開始する。
しかし強固な装甲な上に、見かけの割に俊敏に動く「X-ATM092」に対して
なかなか有効なダメージを与えられない。

グレイファス「ぐわあああっ!!」
戦士煌「グレイファス!?」

グレイファスが「X-ATM092」のクラッシュアームに捕えられてしまった。
「X-ATM092」の前肢のハサミでぐいぐいと締め上げられるグレイファスは、
思い切り地面に叩きつけられそうになるが、そのピンチを救ったのは、
どこからか撃たれた光の刃だった。落下して解放されるグレイファス。

戦士桃矢「ボケッとしてんじゃねェ!
 グレイファス! ビークウッド! ガリエル!」
グレイファス「桃矢!?」
ガリエル「俺たちに力を!」

桃矢の剣「大地」の三つの宝珠が光り、
グレイファス、ビークウッド、ガリエルは
三体の機甲神獣へと変化した。

グレイファス・キバ「桃矢、見事目覚めの儀式を乗り越えたのだな!」
ガリエル・キバ「さすが俺たちの大将だぜ!」
ビークウッド・キバ「ミレイア様はご無事ですか?」

桃矢は果敢に飛びかかって剣を振り下ろし、
「X-ATM092」の左前肢を叩き斬りながら、
ミレイアの安否を問うビークウッドたちに答える。

戦士桃矢「心配いらねェよ! 本当に強い王女様だぜ!
 俺をこんなに強くしてくれたんだからな!」

60

戦士桃矢「煌……」
戦士煌「桃矢くん……」

見つめ合う二人の少年。
もはや互いの意思を通じ合うのに
余計な言葉は必要なかった。

戦士桃矢「おかえり、煌」
戦士煌「ただいま、桃矢くん」

その時、先程の桃矢の攻撃で転倒していた「X-ATM092」が起き上り、
自己修復機能により修理を完了して復活した。

ガリエル・キバ「なんて奴だ…!」
ビークウッド・キバ「自己修復機能を備えているのですね!」

「X-ATM092」の横に立つ、ノスフェルティアの軍服らしき白いハイカラーの服に、
黒い外套を羽織った一人の男。その頭には角を模した青水晶の冠。
氷に似た冷たい切れ長の瞳に、桃矢たちは見覚えがあった。

戦士桃矢「…レム!」
レム「久しぶりだな、神城桃矢」

ダークノイドの指揮官、ドーラ・レム。
戦士ラディアスの魂を宿し、ガルキーバとなる資格を持つ
神城桃矢を生涯の敵として付け狙う男だ。
警戒感を強める桃矢たちだったが、レムの方は無表情のままだった。
感慨も何もないようである。

レム「更なる力を得て戻ったか、神城桃矢。
 貴様から強いエナジーを感じる」
戦士桃矢「……」
レム「だが、まだ真の戦士としては程遠い。
 相変わらず甘い男というわけか…」
戦士桃矢「なんだとォ!」
レム「失望したぞ…」

士「そいつは違うな!」

レム「…!」

士「確かにコイツは戦士ラディアスという存在を失った。
 だが桃矢は共に闘う仲間がいるからこそ、これまで
 お前たちダークノイドと戦ってこれたんだ。
 それが"友達"というやつらしい」
戦士桃矢「………」
戦士煌「………」
士「"友達"がいるからこそ身も心も成長した神城桃矢に、
 もう戦士ラディアスの魂なんか必要ない! コイツは
 いずれ自分の力で、真の戦士ガルキーバに目覚める!」

ドーラ・レムは門矢士に問う。

レム「貴様、何者だ…?」
士「通りすがりの仮面ライダーだ! 覚えておけ!!
 ――変身ッ!!」

DECADE!!

変身ベルト・ディケイドライバーを装着した門矢士は、
仮面ライダーディケイドへと変身するのだ!

61

テディアム「煌、俺に力をッ!」
戦士煌「うん、任せてッ!!」

テディアムの言葉に煌が頷き斧を構える。
次の瞬間、テディアムは斧から溢れた虹色の光を浴び、
全身を震わせ低いうなり声を上げながら
みるみる巨大化していく。
ここに四体の機甲神獣が勢ぞろいした。

戦士桃矢「行くぜみんな!!」

桃矢と煌は軽々と跳躍し、それぞれグレイファス・キバと
テディアム・キバの背へと飛び乗る。
そして桃矢の号令の下、一斉に「X-ATM092」への攻撃が開始された。
ディケイド、クウガ、キバーラもそれに加勢する
歓喜を謳うように地が唸り、天が吠える。

ビークウッド・キバ「ダメです桃矢! 敵はダメージを与えても
 自動修復機能ですぐに回復してしまいます!」
ディケイド「チッ…!」
戦士桃矢「くそっ、いったいどうすれば!?」

「X-ATM092」に決定打となるダメージを与えられず、
攻めあぐねる桃矢とディケイドたち。
その時、「X-ATM092」の背後部分に数発の銃弾が
連射の形で打ち込まれた。

戦士桃矢「てめェは!?」
ディケイド「海東、どういう風の吹きまわしだ?」

ディエンド「……」

「X-ATM092」と戦うディケイドたちを援護したのは、
海東大樹が変身したディエンドだった。

ディエンド「真のガルキーバの力とやらを見てみたくなったのさ。
 この僕が手を貸してやるんだ。光栄に思いたまえ!」

ディエンドはさらに「X-ATM092」に向けて銃弾を容赦なく撃ち込む。
「X-ATM092」の注意がディエンドの方に向いたため、一瞬の隙が出来た。

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ!」

グレイファス・キバ「――!?」
ビークウッド・キバ「これは!?」
ガリエル・キバ「おい、ちょっと!?」

ディケイドは、次々と機甲神獣たちの背中に回って
両腕で開くような動作をする。

FINAL FORM RIDE!!

ディエンド「痛みは一瞬だ!」
テディアム・キバ「…て、てめえ、いったい何しやがる!?」

FINAL FORM RIDE!!

ディエンドはディエンドライバーにカードを読み込ませた後、
テディアム・キバを背中から撃ちぬく。

62

戦士煌「何なの…これって!」
戦士桃矢「すげェ~~!!」

苦悶と戸惑いの声を上げながら「超絶変身」した四体の機甲神獣は、
奇跡の合体を果たし、全長数十メートルの合体機甲神獣なった。

合体機甲神獣「うおおおおおォッッ!!!!」

雷鳴の如く轟く雄叫びを上げる合体機甲神獣。
最初は驚いていた桃矢と煌だったが、一度顔を見合わせると
強く頷き、己の心に気を込めた。
桃矢と煌の戦士の炎が燃え上がる!

FINAL ATTACK RIDE!!

桃矢と煌を両肩に乗せた合体機甲神獣による突撃、
そしてディケイドのディメンションキックと
ディエンドのディメンションブラストが同時に炸裂。
ついに「X-ATM092」は自動回復が間に合わず、
木っ端微塵に爆発したのであった。

レム「なるほど。確かにあのディケイドとやらの
 言うとおりかもしれんな…」

一部始終を観察していたドーラ・レム。

レム「フフフッ…追って来い、神城桃矢。
 いずれお前が己自身の力で真のガルキーバに
 目覚めるその日を楽しみに待っているぞ…」

ドーラ・レムはそっと姿を消した。
そして遠く崖の上では、ゲマたちも全ての様子を見ていた。

ゴンズ「ゲマ様…」
ゲマ「無念ですが、こうなっては我ら魔界同盟は
 エターナリアから手を引くしかありませんねぇ…」
ジャミ「ぐぬぬ…」
ゲマ「仮面ライダーディケイド、その名、覚えておきましょう…」

ゲマたちも揃って姿を消した。

63

鳴滝「おのれディケイド!!」
ディケイド「鳴滝!?」

戦いが終わったところに、いきなり前触れなしで現れた
チューリップハットにコート、眼鏡をかけた男――
――謎の預言者・鳴滝。

戦士桃矢「お前かッ!? 裏で煌を唆してやがったのは!」
鳴滝「ディケイド、お前のせいで『獣戦士ガルキーバ』の世界も
 破壊されてしまった!!」

元の姿に戻ったグレイファスたちは、
鳴滝の言葉に困惑する。

ガリエル「なに言ってやがるんだ、コイツ…」
グレイファス「ディケイドのおかげでエターナリアは
 危機から救われたのではないのか…?」
戦士煌「鳴滝さん、これはお返しします」

煌は、借りていた「魔神の斧」を鳴滝に向けて放り投げて返そうとするが、
間に割り込んだディエンドがキャッチして横取りする。

戦士煌「えっ…!?」
ディエンド「要らないなら、これは僕が頂いておくよ。
 ぶ厚い刃から繰り出される会心の一撃は、相手を鎧ごと
 真っ二つにすると言われる魔神の斧。まさに僕に相応しいお宝だ!」
鳴滝「好きにしたまえ。もう私には必要のない代物だ」

ATTACKRIDE INVISIBLE!!

ディエンドは透明になり、トンズラするように去って行った。

ディケイド「海東の奴、ちゃっかりしてやがる」

ディケイドは、やや皮肉交じりに苦笑する。

鳴滝「ディケイド、次なる世界こそお前の旅も最後となる!
 待っているぞ! フハハハハハッ!!!」

鳴滝は不気味な笑いを浮かべ、光のカーテンの中へと消えて行った。


***ヘブンズティア宮殿・正門***

桃矢「アンタたちには随分と世話になったな」
夏海「それで、その後ミレイア様のお具合はどうなんですか?」
ビークウッド「おかげさまで姫様のご容態もすっかりよくなられました。
 明日にはご公務にも復帰なされるでしょう」
夏海「それはよかったです」

旅立ちの時である。門矢士たちは宮殿の正門前で
神城桃矢たちから見送りを受ける。

士「あとここから先はお前たち自身の物語だ」
煌「どうもありがとうございました」

煌はペコリとお辞儀をする。

ユウスケ「みんなも元気で!」
グレイファス「君たちもな!」
ビークウッド「ディケイド、エターナリアの伝説に新たに刻まれた
 戦士の名を、我々は決して忘れないでしょう」

64

***光写真館***

栄次郎「ほぉー、よく撮れてるじゃないか。
 また一段と腕を上げたね、士くん」

栄次郎の手にある一枚の写真には、ミレイア姫の寝室で撮影された、
神城桃矢、金剛煌、その従者であるグレイファスら四体のアニマノイド戦士、
そしてベットの上のミレイア姫が集合した、全員晴れやかな笑顔の写真である。

キバーラ「栄ちゃん栄ちゃん!これ読んで~!!」

どこから引っ張り出して来たのか、
キバーラは桃太郎と金太郎の絵本を
栄次郎に読み聞かせてくれとせがむ。

栄次郎「え~っ!? 今忙しいから後でね…」
キバーラ「やだやだやだ! 今じゃなきゃヤだぁ~!!」

必死にせがむキバーラと栄次郎がもみ合っているうちに
またいつものように垂れ幕が下がり、次なる世界の絵が映し出される。

ユウスケ「――!!」
夏海「これは…」

垂れ幕には、赤い炎の獅子、青い水の竜、緑の風の巨大鳥の、
三体の魔神(マシン)が描かれていた。

士「異世界セフィーロ…。『魔法騎士レイアース』の世界か」

65

○神城桃矢→金剛煌と再会。ディケイドと協力して「X-ATM092」を撃破。
○金剛煌→神城桃矢と再会。ディケイドと協力して「X-ATM092」を撃破。
○グレイファス→ディケイドのFFR能力によって合体機甲神獣となって、「X-ATM092」を撃破。
○ビークウッド→ディケイドのFFR能力によって合体機甲神獣となって、「X-ATM092」を撃破。
○ガリエル→ディケイドのFFR能力によって合体機甲神獣となって、「X-ATM092」を撃破。
○テディアム→ディエンドのFFR能力によって合体機甲神獣となって、「X-ATM092」を撃破。
○門矢士/仮面ライダーディケイド→神城桃矢たちと協力して「X-ATM092」を撃破。
○小野寺ユウスケ/仮面ライダークウガ→神城桃矢たちと協力して「X-ATM092」を撃破。
○光夏海/仮面ライダーキバーラ→神城桃矢たちと協力して「X-ATM092」を撃破。
○キバーラ→光栄次郎に桃太郎と金太郎の絵本を読んでくれとせがんでいるうちに、次の世界の垂れ幕を下ろす。
○光栄次郎→キバーラに桃太郎と金太郎の絵本を読んでほしいとせがまれているうちに、次の世界の垂れ幕を下ろす。
●ドーラ・レム→神城桃矢が「X-ATM092」を撃破したことを見届ける。
●ゲマ→「X-ATM092」がディケイドと神城桃矢たちに敗れたため、エターナリアからの撤退を余儀なくされる。
●ジャミ→「X-ATM092」がディケイドと神城桃矢たちに敗れたため、エターナリアからの撤退を余儀なくされる。
●ゴンズ→「X-ATM092」がディケイドと神城桃矢たちに敗れたため、エターナリアからの撤退を余儀なくされる。
●X-ATM092→ディケイドと神城桃矢たちの連携攻撃の前に敗れる。
△仮面ライダーディエンド→神城桃矢たちに加勢する。戦いの後、お宝として魔神の斧をゲット。
△鳴滝→ディケイドを次なる世界で待ち受ける。

【今回の新規登場】
●X-ATM092(ファイナルファンタジーⅧ)
 ガルバディア軍の誇るクモ型の無人機動兵器。通称「ブラック・ウィドウ」。
 ドール実地試験中に、スコール達を倒すべくビッグスが差し向けた。
 自己修復機能を備えており、例え破壊されても、ある程度までは復活して
 しつこく襲ってくる。


『絶剣 蛇の道を往く』-1

作者・ティアラロイド

66

門矢士=仮面ライダーディケイドたちの協力を得て、
ひとまずは危機を脱した異世界エターナリア。
これから語られるのは、その後日談の一コマである。


***ヘブンズティア王都・エメルの家***

クレイト「違うの、キリノコの実は茹でないで入れるの!」

大地と同じ緑色の長い髪をたなびかせた13歳の少女クレイトは、
小さな綿飴といった風情の木の実をたくさん、すでに具のつまった
パイ生地の中に放り込んだ。

エメル「ちょっとクレイト、そんなにいっぱい……多すぎるんじゃない?」
クレイト「いいの。これはいっぱい入れた方が香りが出ておいしいの!
 ね、煌?」
煌「え…!?」

ぼんやりと席からクレイトとエメルの二人が料理する様を見つめていた
金剛煌は、突然同意を求められて驚く。

ここは、宮殿の城下町の一角にある、狼族の女性エメル・ウルファウスの家である。
この家の主エメルは、神城桃矢のしもべの一人・狼獣人グレイファスと将来を誓い合った婚約者であり、
一方のクレイトは、ミレイア王女の後継者と目される、現在修行中の大地聖母使の少女だ。
どちらの人物も、桃矢と煌の二人はエターナリアに来てから知り合った。
特にクレイトは、煌と出会ってから彼とお互いを"意識し合う"間柄となったようであり、
元々は塞ぎ込みがちであった性格のクレイトも、煌が訪れると素敵な微笑みを見せるようになっていた。

クレイト「ね、煌、キリノコ好きでしょ?」
煌「う、うん」
クレイト「よかった。じゃ、もう少し入れるね」

出来あがったパイ生地をオーブンに入れるエメルとクレイト。
あとはこんがり焼きあがるのを待つだけとなった時、
ちょうどそこへビークウッドが訪ねて来た。

ビークウッド「煌、ここにいましたか?」
煌「ビークウッド、どうしたの?」
ビークウッド「実は煌に、折り入って聞いてみたい話があるのです」

ビークウッドは向かいの席に座り、煌に対して
徐(おもむろ)に尋ね始める。それは煌が"黄泉がえり"によって
この世に再び復活する前――すなわち、死後の世界にいた時の
記憶は今もあるのかというものだった。
ビークウッドの問いに、煌は「ハッキリ覚えている」と答える。

煌「そっか…。ビークウッドは元々そういう分野に関心が深いもんね」

ビークウッドは、宗教や信仰、文化遺産といったものに対する
造詣がとても深かった。アースサイド(地球)で金桃寺に皆で
一緒に暮らしていた頃、よくビークウッドはテレビの仏教入門や
世界遺産特集などの番組を食い入るように見ていたものである。

ビークウッド「もし差支えがなければで構わないのですが、
 是非とも"死後の世界"の様子について、後学のためにも
 教えてもらえれば思いまして」
クレイト「なあに、それ。面白そう!」
エメル「確かに"死後の世界"の話だなんて
 滅多に聞けるものじゃないものね」

横で話を聞いていたクレイトとエメルの二人も
興味津々そうに煌を見つめる。

煌「うん、いいよ。それじゃあどこから話そうかなあ…」

◇   ◇   ◇

67

半年前……。

***東京・要塞都市≪ヴェス≫処刑部屋***

煌「なにをしているの、桃矢くん。こんなところで
 めそめそしている場合じゃないでしょ」
桃矢「だってよ…だって! 俺のために…煌ッお前は!」
煌「違うよ。僕は桃矢くんのためにやったんじゃない。
 このはちゃんのためにやったんだよ」
桃矢「煌……」
煌「さあ桃矢くん、もう時間がないよ!
 僕の斧を持って!」
桃矢「………」
煌「立って! 立つんだよ桃矢くん!
 そしてザザと戦うんだ!」
桃矢「………」
煌「桃矢くん!!」
桃矢「………」
煌「走れ桃矢ああああッ!!!」


桃矢「うわああああああッ!!!」


煌「これでいいんだ。さようなら、このはちゃん…」

プリンス・ザザに立ち向かっていく桃矢くんを見送った僕の魂は
天へと召されて昇って行ったんだけど、その途中でとても温かい声が
聞こえて、「いずれ再び、お前の力が必要とされる時が来る。
その時に備えて己の魂の修養をし、技と力を磨くのだ」と僕に告げたんだ。
気がつくと僕の頭には"天使の輪っか"がついていて、
三途の川を渡っていた。確かガイアークの三大臣っていう
面白い人たちがいたなあ…。悪い人たちじゃないとは思うんだけど。

その後、地球の神様のデンデさんに一緒に連れられて閻魔庁までやって来たんだ。
あ、閻魔庁というのはね、閻魔大王さまのいるお役所の事だよ。


***閻魔庁***

審判の門をくぐって中に入ると、閻魔庁では大勢の鬼の人たちが
みんなとっても忙しそうに書類の山と格闘しながら働いていたんだ。

赤鬼A「二丁目のゲンさんが危篤だぞー!」
青鬼A「なに! 予定より早いじゃねーか」
赤鬼B「こっちだ!!」
青鬼B「おいっ、二人追加ーっ!!」

閻魔さまに会った時は本当に驚いたなあ…。
だって、おしゃぶりを口に銜えた小さな子供だったんだもの。

コエンマ「よく来たな。まあ楽にしろ」
煌「こんな小さな子が閻魔さま!?」
デンデ「し――っ!! 声が大きいですよ!
 閻魔さまに向かってそのような口をきいては!」
コエンマ「正確に言えば閻魔大王Jrのコエンマだ。
 今は義親父(オヤジ)が尸魂界(ソウル・ソサエティ)の方に
 重要な会議で出張中でな。代わりに臨時の代理を務めておる。
 こー見えても貴様の五十倍は長く生きとるのだ。
 口のきき方に注意しろ」
煌「…ご、ごめんなさい! 申し訳ありませんでした」
コエンマ「ほぉー、初対面の頃の幽助と比べると、
 一通りの礼儀作法はしっかりしとるようだな。
 今時の若者にしては感心感心…」
煌「……(汗」

聞いた話だと、コエンマさまは先々代の閻魔大王の実の息子で、
クーデターで実の父親を追い落とした後、今の代の閻魔大王さまと
改めて養子縁組を結んだみたいなんだ。閻魔大王っていうともっと
怖い人なのかなと思ってたら、緊張しててちょっと損しちゃったかな…。

68

デンデ「――という訳でして、修行をさせたく
 こうして生身のまま伺った次第です。
 どうかコエンマさま、彼が界王さまのもとへ
 向かうことをお許しくださいませんか?」
コエンマ「う~む、なるほど…金剛煌か…。
 界王神さまからはこちらにも連絡が来ているぞ。
 確かにお前の功績は素晴らしいがな。
 しかし本来なら天国へ行けるものを、
 わざわざ危険を冒してまで蛇の道を通り、
 北の界王さまに会いに行くというのか?」

この閻魔庁には地球人だけではなくて、宇宙人も異次元人も
死んだ人は一度はみんなここにやって来るんだって。
僕自身も育ったのは地球だけど、生まれは異世界エターナリアだしね。

ここで気になったのは、桃矢くんたちが倒したはずの
プリンス・ザザがここには来ていないということだった…。
「ザザはまだ生きている!」 僕は一抹の不安を感じたんだ。
自然と何か出来ることをしなくちゃと思った!

煌「ぜひお願いします!」
コエンマ「よかろう。そんなに行きたければ
 界王さまのところに行くがよい」
煌「ありがとうございます!」
デンデ「よかったですね! 煌さん!」
コエンマ「案内人を呼ぶから、あっちから出て待っておれ」

案内人を務める青鬼のジョルジュ早乙女さんに連れて行かれた僕は、
同じく蛇の道を通って、界王さまの星を目指す人たちで溢れかえってる
控えの間の広場に着いたんだよ。

これから会いに行く"北の界王さま"というのは、
三次元宇宙の北銀河部分を治めているとっても偉い神様で、
"蛇の道"と呼ばれる長い道の先にある"界王星"に住んでいるだって。

昔は過去一億年の間で会いに行けたのは閻魔大王たった一人だったんだけど、
最近になって孫悟空という人が界王さまのところに到達してからは、
同じように界王さまのところまで行き着ける人が爆発的に増加したんだってさ。

ジョルジュ「最近は界王さまのところに向かう資格を得た志望者が
 ご覧の通り急増しまして…。そうした事情もありまして整理上の観点から
 申し訳ありませんが、どなたか他の死者の霊の方お一人とペアを
 組んで頂きます」
煌「ペアか…。いいですけど、弱ったなあ。誰にしよう……」

その時、僕は見たんだ。
"蛇の道"踏破を目指す挑戦者たちが集まって大きな輪を作って、
盛大な歓声に包まれながら練習試合みたいのが始まっているのを。
遥か上空から喚き声と共に、打ち負かされた死者の霊が一人落下して来た。

ネロ「ま、まいったぁ~! 降参だ…!!」

その銃使いの死者の霊は、しばらく大の字に伸びていて
動かなかったよ。練習試合終了の音が鳴り響いて、
いっそう大きな拍手と歓声がそれに続いたんだ。
「すげえ、これで67人抜きだぜ」「誰か止める奴はいないのかよ」
という賞賛ともぼやきともとれる声が無数に交錯した。
僕は勝者の姿を確認しようと、上空を振り仰いで眼を細めた。

そして、くるくると螺旋軌道を作って降下してくる一つのシルエットを見つけた。
思ったより小柄だ。華奢な体形で、肌は影部分が紫がかった乳白色。
長く伸びたストレートの髪は、濡れ羽色ともいうべきパーブルブラックだ。
胸部分を覆う黒曜石のアーマーは、柔らかな丸みを帯び、その下のチュニックと、
風をはらんではためくロングスカートは矢車草のような青紫。
腰には、黒く細い鞘。…女の子だ!

煌「ジョルジュさん、あの娘はいったい何者なんですか?」
ジョルジュ「ああ、彼女は"絶剣"ですよ」
煌「絶剣…!?」

"絶剣"と呼ばれた女の子は、ぴょこんと身体を起こすと、
満面に眩しいほどの笑みを浮かべて、無邪気な動作で
Vサインをつくった。

ユウキ「えーっと、次に対戦する人、いませんかー!?」

69

○金剛煌→ビークウッドに乞われ、死後の世界についての話をする。
○ビークウッド→金剛煌に、死後の世界について尋ねる。
○エメル・ウルファウス→ビークウッドと一緒に、金剛煌から死後の世界の話を聞く。
○クレイト→ビークウッドと一緒に、金剛煌から死後の世界の話を聞く。
○デンデ→金剛煌を閻魔庁まで案内する。(回想)
○コエンマ→金剛煌が蛇の道を通って北の界王星まで赴く事を許可する。(回想)
○ジョルジュ早乙女→コエンマの命令で、金剛煌を案内する。(回想)
○ユウキ→元ジャマールの偽用心棒ネロを打ち負かす。(回想)
△偽用心棒ネロ→ユウキに練習試合で敗北。(回想)

【今回の新規登場】
○エメル・ウルファウス(真時空伝説ガルキーバ)
 『獣戦士ガルキーバ』の小説版にのみ登場するキャラクター。
 まっ白い毛を持つ狼族の女性であり、グレイファスの恋人。
 ミレイア姫に仕える侍女で、エターナリアに流れ着いた
 神城桃矢の世話も彼女が担当した。

○クレイト(真時空伝説ガルキーバ)
 『獣戦士ガルキーバ』の小説版にのみ登場するキャラクター。
 ミレイア姫と同等かそれ以上の力を持っている大地聖母使。
 怒りに我を忘れ、虫を操って両親を襲わせ死なせた過去があり、
 その罪の意識に苦しんでいたが、金剛煌の説得により生き続けることを誓い、
 煌とは次第に恋仲となる。最終決戦後、ミレイアの冠を受け継ぎ
 新生エターナリアの女王となった。

○コエンマ(幽☆遊☆白書)
 霊界の長である閻魔大王の息子。霊界探偵としての浦飯幽助の上司。
 普段は赤ん坊のような姿をしているが、実年齢は1000歳以上。
 お忍びで人間界に来る際には青年の姿をしている。
 くわえているおしゃぶりは、実は最強クラスの防御技「魔封環」を使う
 エネルギーを貯めるための道具。 だが、使うのに必要なエネルギーを
 貯めるには数百年かかる。

○ジョルジュ早乙女(幽☆遊☆白書)
 コエンマの秘書である青鬼。上司であるコエンマが下界へ外出する際などには
 常々付き従い、たびたび彼と漫才ともいえるやりとりを繰り広げている。
 なんと最終回にて、番組のナレーションを担当していたことが判明。

○紺野木綿季=ユウキ(ソードアート・オンラインⅡ)
 ALOにおいて「絶剣(ぜっけん)」と呼ばれ圧倒的な強さを誇るプレイヤーで、
 二刀を使わなかったとはいえキリトを2度倒した唯一の人物。
 使用武器は極細の片手直剣で、種族は闇妖精族(インプ)。
 自分が所属するギルド「スリーピング・ナイツ」のメンバーと共に
 とある目的を一緒に成し遂げてくれる強いプレイヤーを探していた。
 リアルでは15歳の少女。出生時に輸血用血液製剤からHIVに感染し、
 以来15年間闘病生活を続けてきた。AIDSの発症により入院、
 ナーヴギアを医療用に転用したメディキュボイドの被験者になり、
 それ以来3年間を仮想世界で過ごしてきた。
 アスナやキリトの助力により「学校に行きたい」との願いを叶えてもらい、
 学校の授業への擬似参加、京都への擬似旅行などを果たす。
 最期はALO内で死ぬことを選び、彼女の死を悼み、たくさんのプレイヤーが涙して彼女を見送った。
 そして、アスナに11連撃OSS『マザーズ・ロザリオ』を託し、この世を去っていった。

△偽用心棒ネロ(重甲ビーファイター)
 ビーファイターとジャマール双方を騙して報酬を撒き上げようとした
 流れ者の用心棒。最期は傭兵軍団団長ジェラの怒りを買って絶命する。
 銃の腕前は確かだったが、愛用の銃は銃身が意図的に捻じ曲げられており、
 決して人を殺せない仕組みになっていた。本心では戦争を心底から嫌っており、
 鷹取舞の推測では「過去に戦争で悲しい思いをしており、それで
 誰1人撃ち倒したくなかったからなのでは…」との事。


『絶剣 蛇の道を往く』-2

作者・ティアラロイド

70

***霊界・蛇の道入り口近くの広場***

ユウキ「えーっと、次に対戦する人、いませんかー!?」

その女の子の声は、高く可愛らしい響きだった。
たぶんその娘も、この場にいる他の大勢の死者の霊たちと同じく、
生前は歴戦の勇士だったんだろうけど、外見だけではとてもそうは
思えない明るさと無邪気さがそこにはあったんだ。

周囲からは「お前行けよ」「ヤダ、即死だよ」
「もう死んでるんだから死なねえよ」って声が聞こえて来て、
みんな尻込みしてるみたいだった。

コエンマ「ほら、次はお前が行ったらどうだ?」
煌「コエンマさま!?」

いきなり背後に現れたコエンマさまの姿に、僕はびっくりした。

煌「…そ、そんな急に言われても」
コエンマ「え~い! お前も男なら、うじうじ考えずに
 正面から突っ込まんか! さ、行った行った!」
煌「わっ!?」

コエンマさまにどすん!と背中を押された僕は、
危うく転びそうになるところを、なんとか体勢を立て直して
顔を上げたところで、その"絶剣"の二つ名を持つ女の子と
眼が合ってしまったんだ。

ユウキ「あ、お兄さん、やる?」
煌「え、えーと、じゃあ…お願いします」

観念した僕は彼女の相手をすることにした。
強面のダークノイドじゃなくて、女の子が相手だったから
調子も狂ってたし、正直油断してたよ。でも実際に手合わせをして、
すぐにその先入観も吹き飛ぶことになった…。

僕は額にエターナルストーンをかざして、
戦士リュートの白銀の甲冑に身を包んだ。

戦士煌「あっ…!」

ここで今になって思い出したんだけど、
リュートの斧「天空」は生前の世界に置いてきちゃったから、
その時の僕は何も武器は持っていなかったんだ。

戦士煌「ど、どうしよう…!」
コエンマ「素手で戦う訳にもいかんだろ。ジョルジュよ」
ジョルジュ「煌さん、これをお使いください」
戦士煌「あ、ありがとうございます!」

コエンマさまとジョルジュさんが、
困っている僕に一振りのバトルアックスを貸してくれた。
受け取った僕は、それを何回か大きく振って
自分の腕に軽く慣らす。

戦士煌「お待たせしました」
ユウキ「おっけー! ルールはありありでいいよ。
 魔法も必殺技もアイテムもバンバン使って構わないよ。
 ボクは"これ"だけだけどね」

「ボク」という一人称が似合う元気そうな女の子は、
無邪気な自信を見せつけながら、左手で剣の柄を軽く叩く。
期間が短かったとはいえ、僕にも生前は桃矢くんたちと一緒に
ダークノイドの侵略と戦ってきたという自負もプライドもあったから、
そんな"絶剣"の態度に、僕の戦士としての自尊心はいたく刺激されたよ。

71

"絶剣"は長剣を中段に構え、自然な半身の姿勢を取る。
対する僕もバトルアックスを垂直に構える。
周囲の観客も自然と息を呑み静かになる。

コエンマ「それでは、始めッ!!」

コエンマさまの試合開始の合図と同時に、僕は全力で地を蹴った
長距離を瞬時に駆け抜け、"絶剣"の身体めがけて突き崩しにかかる。
"絶剣"は僕の思惑通り、身体を右に振って最初の一撃目と二撃目を避けた。
その動きが止まったところに、僕の三撃目の斬撃が振り下ろされるはずだった。
だけどその直前、"絶剣"の右手が煙るように動いた。
僕のバトルアックスの刃に小さな火花が弾け、斬撃の軌道が微妙にズレた。

戦士煌「――!!」

僕のバトルアックスの刃は、"絶剣"の鎧を僅かに掠めて宙に舞った。

ユウキ「―――ッ!!」

まるで雷みたいな速さと衝撃の剣速が、
僕の首元めがけて跳ね上がって来た。
鋭い戦慄が僕の全身を駆け抜けた。
僕は大きく右に回避して間一髪で攻撃を回避する。
"絶剣"はまだまだ余裕の表情だ。

そんな激しい切り合いが数分は続いた。

右斜め上段から、"絶剣"の黒曜石の剣が轟然と襲いかかって来た。
僕のバトルアックスが左からの切り払いで受ける。
金属音と共に凄い衝撃が、斧を握る僕の両手に伝わった。
撥ね戻された剣を、"絶剣"は猛烈なスピードで切り返して
次々と僕めがけて打ち込んでくる。

戦士煌「このままやられるものかァァーッ!!」

"絶剣"の剣技は、どれもとてつもない威力、スピードで、
そして何よりも奇麗だった。一度大きく引き戻された"絶剣"の剣が、
僕の心臓にぴたりと照準した。

―― 十一連撃。

巨大な閃光と衝撃音が周囲に放射する。

戦士煌「――!?」

唖然として両眼を見開く僕の前で、"絶剣"は武器を下ろした。
その時ようやく僕は自身に何が起こったのかを理解したんだ。

戦士煌「参りました」

僕は変身を解除した。不思議と悔しくはなかったけど、
でもやっぱりショックではあったかな…。
"絶剣"は何を思ったのか、すたすたと僕に近づいて来た。
左手で僕の肩をポンと叩き、にっこりと輝くような笑みを浮かべる。

ユウキ「そんなに落ち込まないでよ、お兄さん」
煌「君、本当に強いんだね。僕は地球という星の日本という国から来た
 金剛煌と言います。よろしく」

これほどの強さの剣士ならば、さぞ出身の世界では名のある戦士だったに
違いないと思ったんだけど、"絶剣"は僕の自己紹介を聞いて、最初に不思議そうに
きょとんとした表情をしていたけど、その後すぐにクスクスッと笑いだしたんだ。

72

煌「あ、あのー、僕…何か変なこと言ったかなぁ…?」
ユウキ「(^∇^)アハハハハ!…ゴメンゴメン! ボクも地球人で日本人だからさ。
 その自己紹介の仕方ってなんだか可笑しくって… 」
煌「エ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ッ!!…だって、キミのその尖った耳とか
 背中の羽根とか……。あっ、もしかして改造人間!?」
ユウキ「違う違う。これはね、神様に頼んで特別に
 アバターの方を基本の姿にしてもらったんだよ」
煌「アバター…??」

"絶剣"の話によると、彼女の今の姿は本来の現実空間(リアル)での
生まれ持った肉体の姿ではなく、VRMMORPGにおけるアバター(分身)として
の姿であるとの事だった。てっきり僕は"絶剣"のことを、その見た目から
どこかの異世界の妖精族か何かだと思い込んでいたんだ。

煌「でもVRMMORPGって、以前に大勢のプレイヤーがゲームの世界から
 出られなくなったって確か大きな事件になったんじゃ…」
ユウキ「それはソードアート・オンライン(SAO)のことでしょ?
 ボクはアルヴヘイム・オンライン(ALO)にいたんだ。知らないの?」
煌「ごめん。僕はあんまりゲームとかはやらなかったから…」
ユウキ「そうなんだ。改めまして、ボクは紺野木綿季と言います。
 ユウキでいいよ♪」
煌「よろしく、ユウキちゃん」

僕とユウキは固い握手を交わした。


◇   ◇   ◇

エメル「それで、ちなみにそのユウキちゃんは
 何が理由で亡くなったの?」
煌「それは……」

エメルの問いに、煌はどう答えたらよいものか戸惑う。
いかに死者の霊とはいえ、個人のプライバシーにも関わる事柄なので、
果たして口外してよいものかどうか暫しためらったが、この部分に触れるのを
避けては話を先に進められないため、重たい口を開く…。

煌「ユウキはね、後天性免疫不全症候群―AIDS(エイズ)だったんだよ…」
クレイト「ねえビークウッド、エイズってなあに?」

クレイトは、すぐ隣に座っているビークウッドに質問を口にする。

ビークウッド「アースサイドにあるウィルス性の難病の一種です。
 感染経路にさえ注意し、仮に万一感染してしまっても発症前に
 早期発見すれば、決して恐ろしい病気ではないのですが…」
クレイト「煌、話を続けて」
煌「うん」

◇   ◇   ◇


煌「それで、ユウキちゃんは生前に現世でどんな巨大な悪と戦って
 地球の危機を救ったの?」
ユウキ「えーっ!? ボクはそんな大それたことはしてないよぉ!!」

ユウキの話では、別に力尽くで悪者成敗をしたとかではなく、
生前での自ら被験者となって医療用メディキュボイドの研究に
大きく寄与したなどの様々な点が閻魔大王に高く評価されらしい。
本来なら天国で先に待っていた家族と一緒に静かに暮らせるはずなのに、
ましてや彼女は僕や桃矢くんのように戦乱の渦中に身を置いていた訳でもないのに、
なんでわざわざ危険な蛇の道の試練に挑むのか、僕はユウキに尋ねてみた。

ユウキ「もっといろんな場所をこの目で見てみたいんだ」
煌「いろんな場所…?」
ユウキ「ボクはね、死ぬ前の事だけど、たくさんの仲間や友達のおかげで
 仮想世界も現実世界もたくさんの場所を飛び回る事ができたんだ」
煌「でも君は現実世界では…」

生前のユウキは、病気が発症してからはずっと長い年月を
病室の中で医療用ナーヴギアに接続されて暮らしていたはずだった。
だけど……。

ユウキ「ボクが現実世界でいろいろなところを見て回って、
 いろんな楽しい体験ができたのはアスナのおかげなんだよ」
煌「アスナ…?」

その「アスナ」さんという人は、きっと生前でのユウキの大切な親友であり、
また恩人だったのだろうと僕は直感した。だからそれ以上詳しくは聞かなかった。

ユウキ「だからアスナや、昔ボクがいたギルドの仲間たちの思いに
 応えるためにも、ボクはまだ行ってない場所、まだ見ていない場所に
 もっともっと直接足を運んでみたいんだ。天国にいる両親や姉ちゃんにも
 この話をしたら、みんなボクの背中を押してくれたよ!」

ユウキの瞳は、とても死者の魂とは思えぬほど
活き活きと輝いていた。僕にはそんな彼女の姿が
とても眩しく覚えた。

73

コエンマ「ちょうどいい。お前ら二人でペアを組め」

コエンマさまの鶴の一声に、僕はたじろいだ。

煌「エ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ッ!!…で、でもぉ、
 女の子と二人きりでペアだなんて…(///)」
コエンマ「何を赤くなって恥ずかしがっとるんだ、お前は?」

コエンマさまは、ジト目で僕を見つめる。

ユウキ「ボクは別に構わないよ」
煌「せめてもう少し考える時間を…」
コエンマ「え~い! こっちは後がつかえておるんだ!
 男ならさっさと決断せい!!」
煌「は、はい…! よろしくお願いします!」
ユウキ「へへっ、よろしくね煌ちゃん♪」
煌「こ、こちらこそよろしく…(汗」

こうして僕はユウキとペアを組んで、
蛇の道に挑む事になった。

ジョルジュ「お待たせしました。こちらが蛇の道の入り口である
 頭の部分になります。正直に言って蛇の道は辛いですよ。
 お身体の方はお元気でいらっしゃいますか?」
戦士煌「いやあ…僕、死んでますから
 あんまり元気じゃないかも…」
ジョルジュ「この蛇の上をひたすら進んでください。
 界王さまのところに通じております」
ユウキ「長そうだねえ…」

ユウキはずっと遠い先の向こうを見渡している。

ジョルジュ「およそ百万キロになります」
戦士煌「ひゃ、ひゃくまんキロ…!?」
ユウキ「そ、そんなの辿りついた人なんているの!?」
ジョルジュ「ここ一億年の間では閻魔大王ただお一人だったのですが、
 何年か前に孫悟空という人間が踏破に成功して以来、
 他にも数十人ほど辿りついた人間がおります」
戦士煌「その孫悟空ってどんな人なんですか?」
ジョルジュ「さあ、私も直接会った事はありませんので、
 どんな方なのか詳しくは存じませんが…」
ユウキ「まあ、でも辿りついた人が他にいるんなら、
 ボクたちもきっとなんとかなるよ」

ユウキはひょいっと、蛇の道の先端の頭の部分に飛び乗った。

コエンマ「引き返すなら今のうちだぞ?」
ユウキ「ううん、ボクやるよ! もっと強くなりたいからね♪」
戦士煌「コエンマさま、ジョルジュさん、ここまでお見送り
 どうもありがとうございました」
ジョルジュ「道の両脇に広がる雲には絶対に落ちないようにしてください。
 雲の下は地獄ですから二度と戻れませんよ」
戦士煌「わかりました。じゃあ、行ってきます!」

ユウキは背中の羽根を広げて、あっという間に
猛スピードで上空に飛び立つ。

ユウキ「へっへ~ん♪ それじゃあ、おっ先にぃ~!!」
戦士煌「ええーっ!? 待ってよぉ~! ちょっとぉ~!!」

多難な感じのスタートだったけど、
こんな風に僕とユウキの二人旅が始まったんだ。

コエンマ「大丈夫かな、あの二人…(汗」

74

○金剛煌→ユウキとペアを組み、蛇の道に挑む。(回想)
○ユウキ→金剛煌とペアを組み、蛇の道に挑む。(回想)
○コエンマ→金剛煌とユウキにペアを組ませ、その出発を見送る。(回想)
○ジョルジュ早乙女→金剛煌とユウキに蛇の道での注意事項を説明し、その出発を見送る。(回想) 


『絶剣 蛇の道を往く』-3

作者・ティアラロイド

75

***異世界エターナリア ヘブンズティア王国・エメルの家***

桃矢「あ~腹減ったなぁ! 早く焼き立てのパイを食わしてくれよ」
グレイファス「コラ桃矢、はしたないぞ!」
エメル「あら、いらっしゃいグレイファス。それに桃矢たちも」

グレイファスと午前の剣術の稽古を終えた神城桃矢、
それにガリエルとテディアムも、エメルから昼食に招待されて
やって来たのだった。

煌「あっ、桃矢くん! それにみんなも」
桃矢「…煌? それにビークウッドまで!?
 なんで二人ともここにいるんだよ?」
ガリエル「なんでって…そりゃ大将、煌とビークウッドも
 俺たちと同じく昼飯に呼ばれてたんだろ」
桃矢「あ、なるほど」
煌「えへへ…」

桃矢たちも煌たちと同じくテーブル席に着く。

ガリエル「香ばしくていい匂いだぜ~!」
エメル「もう少しで焼きあがるから待っててね」
ビークウッド「実は今、煌からとても興味深い話を
 聞いていたのです」
桃矢「へぇ~興味深い話って?」
ビークウッド「死後の世界についてです」
桃矢「えっ…」

ビークウッドからそれを聞いた途端、桃矢の表情が曇るのが分かった。
それを見たビークウッドも、「しまった! 余計なことを口にした」と
後悔するが、もうすでに遅し。せっかくの楽しい昼食の場に
重たい空気が広がってしまう。こうして金剛煌が現世に黄泉がえりで復活したとはいえ、
一度は煌が命を落とした事実に変わりなく、今でも桃矢はその責任の一端を感じているのだ。

桃矢「………」
グレイファス「ビークウッド!」
ビークウッド「いや、これは…面目ない」
煌「ごめんビークウッド、この話はまた今度にしよう」

ここで重たい空気を吹き飛ばすために、機転を利かせたのはテディアムだった。

テディアム「おや~っ桃矢、なぁにしけたツラしてるんだよ。
 もしかしてお前、幽霊とかの話が苦手だとか?」
桃矢「…Σ(゚д゚;) なにーっ!! そ、そんなんじゃねえよ!!」
テディアム「どうだかッ!( ̄ー ̄)ニヤリッ」
桃矢「上等だッこの野郎! おい煌、構わないから話を続けろ!」
煌「で、でも…」
桃矢「いいから続けろ! こうなったら最後まで聞いてやらあ!」
煌「う、うん。わかった」

相棒テディアムのナイスフォローに感謝しつつ、
煌は話を再開する。


◇   ◇   ◇

76

***霊界・蛇の道***

ユウキ「…つ、疲れたぁ~」
戦士煌「無理にスピードを飛ばして余計な体力を使うからだよ。
 ここはゲームの世界とは違うんだから」

無理な長距離飛行が祟って、スタミナがきれてしまったユウキは、
僕と一緒に蛇の道の途上で一休みすることにした。
そんな時、道の後ろの方から青鬼さんが運転する
道路清掃車がやってきたんだ。

青鬼「…オニ?」
ユウキ「青鬼さん何してるの?」
青鬼「何してるんだ?はないオニ。私は閻魔大王さまに頼まれて
 この道を掃除してるんだオニ」
ユウキ「ふ~ん…」
戦士煌「僕たちは界王さまのところに行くんです」
青鬼「オニッ!? 界王さまのところにか!?
 最近はお前たちみたいな命知らずの死人が増えたオニ」
ユウキ「命知らずも何も、もうボクたち死んでるんだけどね」
戦士煌「まだ大分あるんですか?」
青鬼「あったりめえだよ。私は話に聞いたけど、
 まだやっと半分の半分くらいのとこだオニ」
ユウキ「えーっ!? まだ半分の半分!!」
戦士煌「随分と遠いんですね…」

僕もユウキも、それを聞いて目の前が真っ暗になる気分だったけど、
親切な青鬼さんが清掃車後部の荷台に乗せてくれると申し出てくれたんだ。

青鬼「途中までなら乗せてってやるオニ」
戦士煌「本当ですか!? 助かります!」
ユウキ「ヤッホー♪」

蛇の道を進む清掃車の荷台で休んでいる間、
運転手の青鬼さんはいろいろな事を教えてくれたんだよ。
なんでも今から二十年くらい前に蛇の道を踏破した
例の孫悟空という人を、僕たちみたいに清掃車に乗せて
あげた事もあるんだって。

戦士煌「それじゃあ、その孫悟空さんという人も
 今の僕たちみたいに乗せてあげた事があるんですか?」
青鬼「今となっては何もかも懐かしい思い出だオニ」
ユウキ「その孫悟空ってどんな人だったの?」
青鬼「純朴で、良くも悪くもあまり深いことは考えないし、
 立ち居振舞いも明るく朗らかで、誰にでも好かれる
 タイプに見えたオニな。いいやつだったオニ」
ユウキ「へぇ~」
青鬼「これは後から風の噂で聞いた話オニが、
 孫悟空は後に人造人間セルっていうとんでもない悪党を
 倒して地球を救ったとも聞いたオニ」
ユウキ「あれっ、でもセルを倒したのって確か世界チャンピオンの
 ミスターサタンって人じゃなかったっけ…?」
戦士煌「僕も小学生の頃、当時のニュースでそう聞いたよ」
青鬼「これも後で聞いた話オニが、孫悟空とそのミスターサタンは親戚で、
 孫悟空はミスターサタンに手柄を譲ってやったんだって話だオニ」

77

◇   ◇   ◇

桃矢「俺もあのミスターサタンってオッサンは、
 なんか胡散臭いとは思ってたんだよ」
煌「ハハハ…(汗」

腕組をして感心そうに頷く桃矢と苦笑する煌。

青鬼の話には曖昧な記憶も含んでいるため、
正確な事実に比べて多少内容の時期が前後しているものの、
地球から遠く離れた、当時の関係者が全く預かり知らぬところで、
ここでも意外な形で「セルゲームの真相」が暴露されて
真実を知る人間が増えることとなった。

◇   ◇   ◇


その後も僕たちは清掃車の荷台に乗せ続けてもらっていたんだけど、
長旅の疲れから、つい僕もユウキも荷台の上で居眠りをしてしまった。
そして何かのはずみで荷台から転げ落ちて、車を運転している青鬼さんも
気づかないまま、蛇の道をそれて雲の下に落ちてしまったんだ。

***地獄***

ユウキ「イタタタッ…あれ、煌ちゃんここどこ?」
戦士煌「そんなこと言われても僕にもわかんないよ。
 もう界王さまのところまで来ちゃったのかな?」

周囲を見渡す僕とユウキ。そんな時に向こうから、
ひどい怪我をした赤鬼が必死に走ってやって来たんだ。
どうも何かから逃げているらしかった。

赤鬼A「た、たすけてくれだオニ~!!」
戦士煌「どうしたんですか!?」
ユウキ「ひどい怪我…」
赤鬼A「お前たち何をしてるオニ!!
 早く逃げるオニ!!」
戦士煌「ここはどこなんですか!?」
赤鬼A「何言ってるオニ!? ここは地獄の一丁目、三番地だオニ!!」
ユウキ「じ、地獄だってぇ~!?」
赤鬼A「ヒィー(((゚Д゚)))ガタガタ…やばいオニ。
 お前たちも早くどこかに避難するオニ!!」

赤鬼は僕たちを置いてさっさとどこかに逃げてしまった。

ユウキ「どうしよう煌ちゃん!」
戦士煌「きっと蛇の道の下に落ちてしまったんだ。
 なんとか戻る道を探さないと…」

地獄から脱出する方法を見つけ出そうと考えあぐねていた矢先、
さっきの赤鬼が逃げて来た方向から、大勢の悲鳴が聞こえて、
向こうの先には地面から次々と氷山のような物が
突き出している様子がわかった。

ユウキ「なんだろう…?」
戦士煌「行ってみようユウキちゃん!」

78

現場に着いた僕たちが見たのは、
大勢の鬼たちが傷つき倒れている様だった。

エスデス「タツミはどこだああああ!!!!!!!」

そしてその中心で何かを叫びながら、冷酷に笑って
鬼たちを足で踏みつけジワジワといたぶっている、
どこかの国の軍服を着たような美しい長い髪の女がいた。

エスデス「言え、タツミはどこにいる?」
赤鬼B「その男はここには来ていないオニ…。
 きっとその男は天国に行ったんだオニ…」
エスデス「なら天国への行き方を教えろ」
赤鬼B「そ、それはできないオニ…」
エスデス「言わなければ殺すぞ」
赤鬼B「くっ……」

見かねた僕とユウキは、咄嗟の判断で助けに入る事にした。

戦士煌「やめろおおおッッ!!!」

僕はバトルアックスを勢いよく振りかざして激しい風圧を放ち、
その軍服姿の女の人――エスデスを攻撃する。
その隙にユウキが倒れている鬼たちを助け出した。

エスデス「なんだお前たちは? 子供か…。
 どうやら天界からの鎮圧部隊ではなさそうだな」
戦士煌「なんでこんなひどいことを!?」
エスデス「ひどいこと…? フッ…コイツら鬼共は
 所詮弱者だからこうなった。それだけのことだ」
戦士煌「なんてやつだ…!」

エスデスは、閻魔大王の裁定によって地獄に落とされた囚人だったんだけど、
地獄から脱獄しようとたった一人で暴動を起こしていたんだ。

ユウキ「気をつけて煌ちゃん!
 この女(ひと)からは危ない感じがする!」
戦士煌「わかってる!」

迷っている暇はなかった。それだけ相手の女が禍々しい殺気を
放っているのを、僕もユウキも直感で理解していたんだ。
僕とユウキは同時にダッシュして、エスデスの両脇に回り込もうとした。

エスデス「――ヴァイスシュナーベル!!」

エスデスは大量の鋭い氷片を展開させ、それを飛ばして攻撃してきた。
それをかわしながらエスデスに少しでも近づこうとした僕とユウキだったけど…。

エスデス「――かかったな! ハーゲルシュプルング!!」
戦士煌「――!?」
ユウキ「――!?」

僕とユウキは、突然頭上に現れた、人間の数十倍はある
巨大な氷塊に押しつぶされてしまったんだ。

エスデス「ぬるいな! この程度で私を止めようなどと。
 私は常に屈服させる側だ!」

79

エスデス「死にゆく弱者の当然の末路だ。
 …あ、ここの住人はもう全員死んでいるんだったな。
 まあどうでもいいことだが」

戦士煌「………」
ユウキ「………」

巨大な氷塊に完全に閉じ込められ、固まったまま
身動きの取れない僕とユウキを見て、エスデスはあざ笑う。

エスデス「一刻も早くタツミに会いたいが、
 まずは私と同じように地獄に落とされている
 他のイェーガーズの部下たちを助け出さねば…。
 待っていろ、タツミ。必ず天国まで乗り込んでやるぞ。
 その時は存分に私のこの気持ちを――(///)」

???「残念だが、てめえが昔の男に会える事はねえ!」

エスデス「――!!」

僕たちが氷の中に閉じ込められている間に
地獄を蹂躙するエスデスの行く手を阻んだのは、
黒い鳥人の強化スーツに身を包んだ戦士と、鮮血のような赤毛の長髪に
口が裂けたような恐ろしい顔をした鎧武者だった。
スーパー戦隊・鳥人戦隊ジェットマンのブラックコンドル、
そしてかつて滅ぼされた一門の恨みを背負い、
魔族を率いて地上を征した源氏を討った平家の亡者・平景清だ。

エスデス「天界からの鎮圧部隊がようやくお出ましか。
 待ちくたびれたぞ…」
ブラックコンドル「地獄で反乱を起こしたエスデス将軍って
 いうのは姐ちゃんか?」
エスデス「だったらどうした?」

エスデスと対峙するブラックコンドルと平景清。

ブラックコンドル「…ったく。おかげでおちおちBARで
 ゆっくり酒も飲んでいられねえ」
景清「………」
エスデス「邪魔をするなら、お前たちもそこの二人と
 同じ目に遭うことになるぞ」
ブラックコンドル「そこの二人…??」

ブラックコンドルと景清は、氷漬けになっている僕らに気がつく。

戦士煌「………」
ユウキ「………」

ブラックコンドル「おい景清、アイツら何モンだ?」
景清「我は知らぬ……」
エスデス「おしゃべりは終わったか? 私を制圧したいのなら、
 強さで示して見せろ!!」

80

景清は勢いと共に先制攻撃の真空斬を放つ。
だがエスデスはそれを自らの剣で防ぎきった。

エスデス「この程度か」
景清「我が太刀を受けきるとは見事。…だがッ!」

次の瞬間、間髪入れずにブラックコンドルが
空中から舞い降りてブリンガーソードで袈裟掛けにして
エスデスを切り裂こうとした。

ブラックコンドル「――コンドルフェニッシュ!!」

でもエスデスもそう簡単にはやられない。
エスデス自身の持つ何か不思議な能力(これも後で聞いた話によると、
元々彼女がいた世界にあった「帝具」という強大な力を秘めた
武器の力らしいんだけど…)を使って、巨大な氷のツララを伸ばして
ブラックコンドルに反撃したんだ。

エスデス「――グラオホルンル!!」
ブラックコンドル「――チッ!!」

なんとかエスデスの攻撃をかわし
着地するブラックコンドル。

ブラックコンドル「女のくせになかなかやるな、姐ちゃん」
エスデス「笑止な。強者弱者に男女の区別などなかろう」
景清「違いない……」

双方とも身構えたまま膠着状態に陥ったけど、
その状況を一変させたのは、ブラックコンドルと景清の側に
現れた、この上なく心強い援軍だった。

ピッコロ「凱、景清、たかが女一人に
 いつまで手こずっている!!」
ブラックコンドル「ピッコロの旦那!?」

ピッコロと呼ばれたその人は、頭に白いターバンを撒いて、
道着の上に白布のマントを羽織っていて、全身の肌は緑色の
とても屈強な感じの人だったよ。とにかくその時その場にいた
誰よりも気迫と威圧感がとても凄まじかった。

ピッコロ「どうせまたいつものように天国のBARで
 女神とイチャついていたんだろ!」
ブラックコンドル「そうは言うけどよ、ピッコロの旦那」
景清「この女、できるぞ……」

ピッコロはエスデスを睨みつける。
そんなエスデスもピッコロを妖しく睨み返す。

エスデス「次に私を楽しませてくれるのはお前か?」
ピッコロ「そういうことだ。こっちもいろいろ多忙なんでな。
 悪いがゆっくり遊んでやる時間はない。とっととケリをつけよう!」
エスデス「よかろう! ならば我が最大奥義を特別に
 お見舞いしてやる。――摩訶鉢特摩ァッ!!!」

エスデスの放った「摩訶鉢特摩」は、一瞬で
周囲一円を氷結地獄にしてしまう恐るべき大技だ。

81

 

◇   ◇   ◇

桃矢「なあ、そいつってさあ、もしかして
 ピッコロ大魔王なんじゃないのか?」

煌の話を聞いていた桃矢は、ふと思いついた疑問を口にする。

煌「え~っ、まさか違うよ! 確かに名前はたまたま同じだったけど、
 そんなの偶然だよ。ピッコロさんはとってもいい人だったし、
 第一、そのピッコロさんは若かったけど、僕たちの地球に現れた
 ピッコロ大魔王は中年だったじゃないか」
桃矢「でも地獄にいたんだろ?」

ピッコロ大魔王とは、今から数十年前に国王のいるキングキャッスルを陥落させ、
テレビカメラの前で地球連邦の王位簒奪を宣言し、警察機構の廃止、
犯罪者を刑務所から無条件で解放、そして毎年一回のくじ引きで
地球連邦の加盟国を一つずつ破壊することを決定するなど、
悪逆の限りを尽くそうとした恐るべき魔族の暴君である。
ちなみにその頃は、まだ桃矢も煌も生まれてはいなかったが、
学校での近現代史の授業などではよく習う事項だ。

きっとこの場に二人共通の幼馴染である舞原このはがいたら、
桃矢に「アンタ、歴史の授業なんて真面目に受けてなかったくせに、
よくそんなことだけ覚えてるわね」と容赦なく突っ込んだことだろう。

桃矢「頭に触角はあったか?」
煌「さあ、頭にずっとターバンを被ったままだったから…」

◇   ◇   ◇


エスデス「死後の世界で私に奥の手を使わせたのは、
 お前が初めてだ。できたらもっと楽しんでいたかったが、
 タツミが待っているんでな。悪く思うな…」

時の流れまでもが凍てついてしまったのか、見渡す限りの空間全ての物が
動かないまま凍りついたように完全に静止している…。
エスデスは眼前の停止したように動かないピッコロを
自分の剣で刺し貫こうとした。だけど…。

エスデス「残像…!?」

眼前の動かないピッコロの姿は残像だったんだ。

エスデス「どこだ!?」
ピッコロ「奥の手とはこれで終わりか?」
エスデス「なっ…!?」

敵が自分の背後に回り込んでいるとエスデスが気がついた時はもう遅かった。
ピッコロの指先は完全にエスデスの急所を抑えていたんだ!

ピッコロ「――魔貫光殺砲ォッ!!」

螺旋状の気をまとった光線は、エスデスの身体を貫通した。

エスデス「キャアアッッ――!!!!!!」

82

ピッコロ「ハァアアッ――!!」

砕け散る氷塊…。ピッコロさんたちのおかげで、
僕とユウキは氷の中から助け出された。

煌「ハクション!!」
ユウキ「ひぃぃっ…冷たかった! まだ身体が凍えてるよ。
 …(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク」
凱「ほら、これでも使いな!」
ユウキ「うん、ありがとうオジサン♪」

ブラックコンドル=結城凱さんが僕たちを気遣って
毛布を貸してくれた。だけどユウキに「オジサン」と呼ばれた凱さんがとっても複雑そうな表情をしていたのを覚えているよ。

ピッコロ「お前たちはいったい何者だ?
 地獄にいる囚人ではないようだが」
煌「実は僕たち、蛇の道を歩いて界王さまのところに
 向かっていたんです」
凱「それでうっかりか何かの間違いで
 雲の下から地獄に落ちちまったってわけか。
 やれやれ、最近そういう奴等が増えて困ってんだよ」
ユウキ「ごめんなさい…」

僕とユウキが二人して申し訳なさそうにシュンとしていると、
厳重な封印を施されて身体の自由を拘束されたエスデスが
護送車に乗せられて連行されるところだった。

エスデス「言っておくが、この程度では決して諦めんからな!
 必ず地獄から抜け出してタツミに会いに行ってやる!」
ユウキ「お姉さん、本当にそのタツミって人が好きなんだね」
エスデス「……!!」

ユウキにそう指摘されると、エスデスは顔を下に俯き
急に押し黙ったまま赤くなってしまった。
とてもさっきまで冷酷な殺気を放っていた人と
同一人物だとは思えないようだったよ。桃矢くんとこのはちゃんが離れ離れになって辛い時期があったのを知っていたから、
なんだか僕はこの女(ひと)が気の毒になってきた。

煌「あのー、余計な差し出口かもしれませんが、
 せめて一目だけでもそのタツミさんっていう人に
 会わせてあげる事はできないんですか?」
ピッコロ「無理だな。コイツは生前に人を殺し過ぎた」
エスデス「弱者からの哀れみなど不要だ!」
ユウキ「あーっ、また"弱者"って言った!
 お姉さん、そんなことばっかり言ってると
 みんなから嫌われるよ」
エスデス「フン、余計な御世話だ!」
ピッコロ「連行しろ」
赤鬼C「了解しましたオニ」

こうしてエスデスは、地獄の中でももっと深い場所にある
監獄へと連行されていった。
一方の僕たちは、ピッコロさんたちに案内されて、
地獄からの出口に連れて行ってもらったんだ。

ピッコロ「ここを通って行けば、蛇の道に戻れるはずだ」
煌「どうもありがとうございました」
凱「ここはお前たちのようなガキの来るところじゃねえ。
 もう二度と迷って来るなよ!」
ユウキ「うん、今度は気をつけるよ!」
煌「それじゃあ!」

ピッコロさんたちと別れ、地獄からの出口の階段を
昇りきって僕たちが出た場所とは…!?


***閻魔庁・閻魔大王の執務室***

閻魔大王「何者じゃその方たちは?」

煌「――!!」
ユウキ「――!!」

もうびっくりしたよ。なんと出口の先は、
閻魔様の机の引き出しだったんだから。
もうその頃には閻魔大王は出張先から
帰って来ていたみたい。

煌「し、失礼しましたぁー!!」
ユウキ「ごめんなさぁい~!!」

閻魔大王「…???」

なんとかその場は誤魔化して抜け出したけど、
僕とユウキはまたスタート地点からやり直す羽目に…。


***蛇の道・入口***

ユウキ「やれやれ、また振り出しだねえ~」
戦士煌「ここで落ち込んでいてもしょうがないよ。
 気を取り直して出発しよう、ユウキちゃん!」
ユウキ「うん、煌ちゃん!」

こうして僕とユウキの旅は再スタートを切ったんだよ。

83

○神城桃矢→エメルの家に昼食に招待され、先にいたビークウッドたちと一緒に煌の話を聞く事に。
○グレイファス→エメルの家に昼食に招待され、先にいたビークウッドたちと一緒に煌の話を聞く事に。
○ガリエル→エメルの家に昼食に招待され、先にいたビークウッドたちと一緒に煌の話を聞く事に。
○テディアム→エメルの家に昼食に招待され、先にいたビークウッドたちと一緒に煌の話を聞く事に。
○エメル→神城桃矢やグレイファスたちも自分の家に昼食に呼ぶ。
○金剛煌→誤って地獄に落ち、エスデスと交戦。ピッコロたちに助けられる。(回想)
○ユウキ→誤って地獄に落ち、エスデスと交戦。ピッコロたちに助けられる。(回想)
○ピッコロ→地獄で暴れていたエスデスを鎮圧。金剛煌とユウキを助ける。(回想)
○結城凱/ブラックコンドル→地獄で暴れていたエスデスと交戦。金剛煌とユウキを助ける。(回想)
○平景清→地獄で暴れていたエスデスと交戦。(回想)
○閻魔大王→出張先から帰る。(回想)
●エスデス→地獄からの脱獄を謀り単身で暴動を起こすが、ピッコロたちに鎮圧される。(回想)

【今回の新規登場】
○ピッコロ大魔王/マジュニア(ドラゴンボールシリーズ)
 初代ピッコロ大魔王の息子が成長した姿。普段は白いターバンとマントを着用。
 最初は邪悪な存在であったが、後にサイヤ人の地球侵略に際し孫悟空と共闘、
 さらなる脅威に備えるために悟空の息子である幼い悟飯を鍛え上げる。
 悟飯との師弟の絆は深く、彼との出会いはピッコロが善の心に目覚めるきっかけにもなった。
 ナメック星におけるフリーザとの決戦後、人造人間との戦いに備え、完全体となるべく神と融合する。
 その後、かつて地球の神がピッコロ大魔王と分離する前に作った究極のドラゴンボールを消滅させるため、悟飯に最後の別れを告げ爆発する地球と運命を共にし死亡した。死者の魂となった現在の彼は、
 地獄で暴れる反乱分子を鎮圧するなどの治安活動を行っており、地獄を管轄する鬼たちからも慕われている。
 同名の父親と区別するため「マジュニア」と呼ばれる場合もある。

○結城凱=ブラックコンドル(鳥人戦隊ジェットマン)
 偶然バードニックウェーブを浴びた遊び人で、鳥人戦隊の一員。
 喧嘩を応用したような闘い方や共通武器のブリンガーソードによる剣戟を得意とする。
 従来のヒーロー像「真面目で模範的」とは対極に位置し、「定職を持たず、飲む・打つ・買う」
 といった反道徳的な三拍子を持ったキャラクター。当初は鹿鳴館香を巡る三角関係で
 天童竜と衝突する事が多かったが、戦いの日々を重ねていくにつれて竜との強い信頼関係が芽生える。
 バイラム壊滅後、竜と香の結婚式に出席するため向かう途中、偶然出くわしたひったくりに
 腹部を刺されあっけない最期を遂げたが、その後、死者の霊となって地上に降り立ち、
 ゴーカイレッド=キャプテン・マーベラスを叱咤激励し、海賊戦隊ゴーカイジャーに
 ジェットマンの大いなる力を授けた。現在は天国のジャズバーでサックスを演奏しており、
 女神のお気に入りとなっているようだ。

○平景清(源平討魔伝)
 魔族を率いて平氏一門を滅ぼした源頼朝を討つべく、地獄から甦った平家最強の男。
 再び地獄から舞い戻った源氏一門を滅ぼすべく、天帝の命により景清もまた、
 三途の川の渡し守・安駄婆の手によって蘇った。モデルは実在の人物である
 「悪七兵衛」の異名を持った、鎌倉時代初期の武士「藤原上総七郎兵衛尉景清」。

●エスデス(アカメが斬る!)
 帝国最強と謳われる女将軍。若くして将軍になり、征伐に一年は掛かると言われた北方異民族の都市を瞬く間に滅ぼすほどの実力を持つ。さらに40万人の異民族を生き埋めにしたり、拷問が手緩いということで拷問官達を逆に調教したりなど、性格は極めて冷酷非道でかなりのドS。しかし、一方で部下を労わったり殉職した部下の仇討ちを誓うなど部下思いな一面がある。そのため、彼女に慕う者も少なくない。
 武芸大会に出場していたタツミが強敵を一蹴する腕前と歓声を受けた時に見せた無垢な笑顔を見て、
 一瞬にして一目惚れし恋心を抱くようになる。最期はアカメとの一騎打ちに敗れ、タツミの亡骸を
 抱きながら氷に包まれ粉々に砕け散った。


『絶剣 蛇の道を往く』-4

作者・ティアラロイド

84

***異世界エターナリア ヘブンズティア王国・エメルの家***

クレイト「………(  ̄っ ̄)ムゥ」

なぜかクレイトは、さっきから顔が不機嫌そうに膨れている。

煌「クレイト、どうしたの?」
クレイト「煌とそのユウキって女の子、随分と仲が良かったんだね!」
煌「……??」
桃矢「ばーか。クレイトはやきもちを妬いてんだよ」
煌「やきもち?…なんで?」
桃矢「なんで?って…お前なあ(汗」

煌のあまりの鈍感さに呆れる桃矢。
そこに見かねたエメルがすかさずフォローを入れる。

エメル「大丈夫よクレイト、そのユウキって女の子は
 一緒に旅をしていた煌にとって、きっと妹みたいなものだから」
クレイト「煌、本当?」
煌「妹…? まあ言われてみればそんな感じかな」
ガリエル「話を先に進めてくれよ」
煌「うん」


◇   ◇   ◇

***???***

蛇の道の途上にある館の地下牢…。
ここに一人のライダースーツを着た青年が幽閉されていた。

蛇姫「妾の愛を受け入れる気になったかえ?」

妖艶な館の女主人・蛇姫が、鉄格子を挟んで青年に話しかける。

青年「これがお前の愛か? こんなものは愛ではない!」
蛇姫「いつまでも強情な! だがこちらにこれがある限り、
 お前はタイガーセブンには変身できまい」

蛇姫は、虎の顔が描かれたペンダントを此れ見よがしに掲げる。

青年「………」
蛇姫「早く決断をしないと、本当に食べてしまうぞえ。
 アハハハハハ!!!」


***霊界・蛇の道***

行程の遅れを取り戻すべく、僕とユウキは日夜ダッシュして
懸命に蛇の道での歩を進めていた。そんな時、道の途中で
脇に大きな館が立っているのが見えたんだ。

戦士煌「もう界王さまの住まいに着いたのかな?」
ユウキ「でも蛇の道はまだ続いてるよ」

僕とユウキがじ~っと見ていると、突然入り口の蛇が口を開いて、
館の中に飲み込まれてしまったんだ。

戦士煌「うわあああ~~っ!!!」
ユウキ「な、なんなのおお~~っ!!?」

85

***蛇姫の館***

ユウキ「イタタタッ…ここどこ?」
戦士煌「ここはいったい…」

長い長い回廊を滑り落ちた先で、
気がついた僕たちが周囲を見渡すと、館の中にいて、
大勢の侍女たちに取り囲まれていたんだ。

侍女A「いらっしゃいませ~! ご休憩二名様!」

侍女の一人が銅鑼を鳴らす。

ユウキ「へ…??」
戦士煌「え…??」

他の侍女の一人が、館の主人である
蛇姫の部屋に報告に行った。

侍女B「蛇姫様、お客様がお二人参られました」
蛇姫「なに、お客が?」

隣の部屋からこっそりと、まるで品定めをするみたいに
僕とユウキの二人をじっと観察している蛇姫。

蛇姫「まあ、なんて私好みの美少年♪ もう今すぐ食べちゃいたいぐらい!
 隣のちっこい雌のガキは……まあどうでもいいわね」

その時、僕は背筋に何か悪寒が走るのを感じた。

戦士煌「…(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
ユウキ「どうしたの煌ちゃん?」
戦士煌「な、なんだろう。なぜか妙に寒気が…」

侍女A「蛇姫様のお成り~!」

戦士煌「蛇姫様…?」

他の侍女たちを引き連れて、僕たちの前に蛇姫がやってきた。

蛇姫「凛々しい御方。胸がときめいちゃう!」
戦士煌「…??」
侍女C「蛇姫様がこんなに御熱心になられるのは、
 閻魔大王さま以来の事ではございませんか?」
蛇姫「そうね、あの方も素敵だったわ。
 もうかれこれ500年になるかしら」
ユウキ「500年!?」
蛇姫「あらヤダ。歳がバレちゃうわ。オホホホ…」
戦士煌「ハ、ハァ…(汗」
侍女D「こちらはあの世一美人コンテストで
 優勝の栄冠に輝いた蛇姫様です」
戦士煌「すみません。どうも家を間違えたみたいで…」
ユウキ「界王さまのところじゃないなら、もう帰るね」
蛇姫「ちょ、ちょっとお待ちになって!!」

どうも久々の客人を帰したくなかったのか、
蛇姫は侍女たちと一緒になり必死になって
僕たちを足留めさせようとした。

蛇姫「せめてお食事だけでも…」
戦士煌「食事…?」
ユウキ「そういえばあれから何も食べてないなあ~。
 せっかくだから御馳走になろうよ煌ちゃん」
蛇姫「ぜひぜひそうなさって! さあそんな甲冑もお脱ぎになって、
 ゆっくりとお寛ぎください」
戦士煌「そうだなあ…」

86

まんまと蛇姫の言葉に乗せられてしまった僕は、
変身を解いて食事が並べられたテーブルの席に着くことにした。

蛇姫「お待たせしました」
侍女A「極楽鳥のフォアグラ、針の山の熊の掌のソテーに、
 三途の川で獲れた鰐の蒸し焼き、そしてムール貝のグラタンです」
煌「こ、こんなに食べきれませんよ!!」

目の前に出されたたくさんの料理に困惑する僕。
一方のユウキは……。

ユウキ「なにこれ…」

ユウキに出された料理は、粗末なねこまんまが一杯だった。

ユウキ「なんか待遇に差があるんじゃないの?」
侍女A「そんなことはありませんよ」
ユウキ「(  ̄っ ̄)ムゥ…ボク、外で待ってるよ!!」

ユウキは不機嫌になり退席してしまった。

煌「あっ、待ってよユウキちゃん!!」
蛇姫「あなたはこっち!!」
煌「うわあっ!?」


***同館・厨房***

蛇姫「お前たち、わかってるわね!
 あの男を何としても引き留めておくのよ!
 逃したら許さないからね!」
侍女B「ご安心を。この"すやすや草"をたっぷりと
 料理の中に盛っておきましたので、今頃は
 たちどころに眠りこんでいるはずです」
蛇姫「ま、あんまりオシャレな方法じゃないけど、
 しょうがないわね」

厨房では蛇姫たちが密談をしていた。

侍女C「今までこの館を無事に出られたのは、
 閻魔大王とあの孫悟空だけ」
侍女D「すぐに食べちゃいますか?」
蛇姫「慌てるんじゃないよ。まずは妾の愛の虜になるよう、
 説き伏せてから…」

ユウキ「やっぱりそういうことだったんだね!!」

蛇姫「お前は!?」
侍女B「いつの間に!!」

蛇姫たちの話は、ユウキが全て立ち聞きしていた。

ユウキ「どうも最初から怪しいとは思ってたんだよ!」
蛇姫「見たなァ~! 秘密を知られたからには
 仕方がない!!」

美しく穏やかだった蛇姫の顔が、
文字通り獲物を睨む凶暴な蛇のように変わった。
蛇姫は壁のスイッチをポチッと押した。
するとユウキが立っていた床が四角形にパカッと割れて、
ユウキは落とし穴に落ちてしまったんだ。

ユウキ「うわああ~~!!」

87

***同館・地下牢***

ユウキ「イテテテッ…!!」

ユウキが落ちた先は、館の地下牢だった。
遥か高い天井の出口からは、勝ち誇った表情の
蛇姫たちが見下ろしている。

蛇姫「オホホホホ…」
ユウキ「このォー!! ボクをここから出せ~!!」
蛇姫「お黙り。お前の連れの坊やを先に美味しく頂いてから、
 お前も後でじっくりと料理してやるからね」

そして天井の出口は閉められてしまった。
同時に差し込んでいた光もなくなり、
牢屋の中は暗闇に包まれた。

ユウキ「…大変だ! 早くなんとかしないと、
 煌ちゃんがあいつらに食べられちゃう!」
青年「誰だッ!?」
ユウキ「―えっ!」

ユウキは、牢屋の中に思わぬ先客がいた事に気づいた。

ユウキ「お兄さん、誰?」
青年「俺の名前は滝川剛だ。君は?」

88

○クレイト→金剛煌の話を聞いて、ユウキとの中に嫉妬の感情を示す。
○エメル→やきもちを焼いて脹れるクレイトに、「ユウキは妹みたいなもの」と諭す。
○金剛煌→蛇姫の館で歓待される。(回想)
○ユウキ→蛇姫の真の目的を見破るが、捕まってしまう。(回想)
○滝川剛→蛇姫の館の地下牢に幽閉されている。(回想)
●蛇姫→金剛煌とユウキを館の中へ招き入れる。(回想)

【今回の新規登場】
○滝川剛=タイガーセブン(鉄人タイガーセブン)
 考古学者・滝川博士の一人息子。父親に反発して家出し、プロのオートバイレーサーとなる。
 サハラ砂漠に調査に出かけた父を心配してその後を追い、砂原人に襲われて一度は命を落とすが、
 父の開発したミイラ蘇生用機材・人工心臓SPを埋め込まれて蘇った。高井戸研究所の一人として
 ムー原人と戦う一方で、古代エジプトに伝わるペンダントと人工心臓SPの力で
 タイガーセブンとしての孤独な戦いをも続けていた。少ない余命を宣告されて自暴自棄に陥るが、
 高井戸博士の命がけのメッセージによって立ち直り、最終決戦に挑んだ後、仲間たちの前から姿を消した。

●蛇姫(ドラゴンボールZ)
 蛇の道の途中にある館に、大勢の侍女たちを抱えて住んでいる女主人。
 その正体は、蛇の道に千五百年住んでいる蛇道神。蛇の道を旅する男を見つけては、
 強引に館の中に引き入れて誘惑し、その誘惑を拒んだ場合は怒って食べてしまう。
 界王のところへ向かう途中の孫悟空も同じよう誘惑し、それが拒絶されると食べて
 しまおうとしたが、飛び回る悟空に上手くあちこちに誘導されて滅茶滅茶に長い体を
 絡ませられ、身動きを封じられる形で一応退治された。


『絶剣 蛇の道を往く』-5

作者・ティアラロイド

89

***蛇姫の館・地下牢***

剛「俺の名前は滝川剛だ。君は?」
ユウキ「ボクは紺野木綿季。ユウキでいいよ」

同じ牢の中に閉じ込められている二人は、
とりあえず互いに敵意のない事を察して自己紹介した。

剛「こんの…?? 驚いたな。そんな格好をしているが
 その名前からして君は日本人なのか」
ユウキ「よく言われるよ。これはバーチャルMMOの
 アバターの姿だからね」
剛「…バ、バーチャ?? アバタ…??」

VR(バーチャルリアリティ)ゲームの専門用語に
完全にチンプンカンプンな状態の滝川剛さんは、
ユウキから時間をかけて懇切丁寧に説明され、
頷きながら感心そうに耳を傾けている。

剛「あれから下界の科学技術も随分と進歩したんだな。
 俺がムー原人と戦っていた頃は、まだテレビゲームや
 スマートフォンなんて代物はこの世になかったからなぁ…」
ユウキ「お兄さんはこんなところで何してるの?」
剛「蛇姫の水面下での不正を暴くべく、密かに内偵を
 進めていたんだが、不覚を取ってごのザマだ。
 ところで、不躾な質問だが、君はなんで死後の世界に…?」
ユウキ「ああ…ボクね、ある重い病気だったんだよ…」
剛「そうだったのか。ありきたりな慰めかもしれないが、
 その歳で…。もっと生きたかっただろうに」
ユウキ「お兄さんは?」
剛「俺も君と似たような事情でね…」
ユウキ「お兄さんも何か病気だったの?」
剛「まあ、そんなようなもんだ…」
ユウキ「そっか…。でもボク、ある人のおかげで
 生前には全く未練はないんだ。ボクは満足のいく
 悔いのない人生を送れたよ」
剛「そうか。それはよかった。俺にもね、寿命が尽きる日が刻々と
 迫る中、"思い通り生きるんだ。しかし、逃げようとはするな!"
 と叱咤してくれた人がいてね。その人のおかげで、俺も目の前の
 残る敵を倒して、最期まで精一杯生きる事が出来たんだ」
ユウキ「その人はお兄さんにとって恩人なんだね」
剛「恩人か…。確かにその通りだな。」

滝川剛さんの話によると、自分の従来の戦う力を秘めた
ペンダントを、蛇姫に奪われてしまったらしい。

剛「それさえ取り返せれば、こんな地下牢からは
 すぐに脱出できるんだが…」

剛さんはそう言うと、遥かに高い天井の方を見上げた。

剛「あそこから出るには羽根がいるな」
ユウキ「羽根ならあるよ」
剛「なんだって!?」

ユウキは得意そうな笑みを浮かべると
隠していた背中の翅(はね)を伸ばした。

90

***同館・寝室***

一方、その頃…。
食事の中に睡眠薬を盛られて眠り込んでしまった僕は、
蛇姫の寝室のベットの上に運び込まれていた。

煌「ZZzz……」

ぐっすり眠っている僕の周りを、
蛇姫とその侍女たちが取り囲んでいる。

蛇姫「それにしても可愛い寝顔じゃ。ホント私のタイプ♪」
煌「桃矢くん……このは…ちゃん……zzZZ」
蛇姫「おや、何か夢を見ておるな。これ、夢見鏡を持て」
侍女A「はい」

蛇姫は、侍女に人の夢を覗く事が出来る「夢見鏡」を
持って来させて、それで僕の顔を覗いたんだ。
それにはどうもこのはちゃんの姿が映っていたらしい…。

このは(夢見鏡)「煌くん…」

それを見た途端、蛇姫は逆上した。
このはちゃんを僕の恋人か何かと勘違いしたんだ。
(確かにこのはちゃんは好きだったけど……)

蛇姫「なんなの!このポニーテールの娘は!」
侍女B「もしかしてガールフレンドじゃないでしょうか?」
蛇姫「まあ、フリーじゃなかったのね!!
 …でも、美味しそう!!」

蛇姫たちの目つきが明らかに変わった。

侍女A「蛇姫様、もう食べてしまってもよろしゅうございますね?」
侍女B「今回は私たちにも、おひそ分けはあるのかしら?」
蛇姫「ぐへへへへ!!!!」

蛇姫は侍女に命じて、厨房から大きな人斬り包丁を
持って来させた。

蛇姫「覚悟おし!!」

蛇姫がベットの上の意識のない僕めがけて
包丁を振り下ろそうとしたその時――!!

剛「待てい!!」
ユウキ「煌ちゃん!!」

危ういところで待ったをかけて
僕を助けてくれたのが、牢屋から抜け出した
滝川剛さんとユウキだったんだ。

蛇姫「お前は滝川剛!? いったいどうやって
 あの地下牢から逃げ出した!!」
剛「ハハハハッ!! このユウキ君に
 飛行能力がある事に気がつかなかったとは
 お前も迂闊だったな!」
蛇姫「なんだってぇ!? しかし、古代エジプトに伝わる
 ペンダントがなければ、お前は変身できないはず!」
ユウキ「それってこれの事?」
蛇姫「――!?」

いつの間にかユウキの右手の中には、
一つのペンダントが握られていた。

蛇姫「おのれいつの間に!?」
ユウキ「はいっ、剛さん!!」

ユウキからペンダントをキャッチして受け取った滝川剛さんは、
大きく掛け声を叫んでポーズを取った。

剛「タイガー・スパーク!」

滝川剛さんは、古代エジプトに伝わるペンダントに秘められた力と、
胸の中の人工心臓SPがリンクすることによって、
正義の使者・鉄人タイガーセブンへと変身するんだ!

91

ユウキ「すごい…。虎さんになっちゃった!?」
蛇姫「おのれえええ~~!!!」

蛇姫と手下の侍女たちは、悔し交じりに一時姿を消した。
ユウキとタイガーセブンは、ベットの上の僕の側に駆け寄る。

ユウキ「煌ちゃん、起きてよ! 寝てる場合じゃないよ!」
タイガーセブン「おそらく"すやすや草"を飲まされたんだな。
 彼にこの解毒剤を飲ませるんだ」

ユウキとタイガーセブンは、僕に解毒剤を飲ませて
眼を覚まさせてくれた。

煌「………ゲホッゲホッ!! あれ、ユウキちゃん?
 …貴方はアニマノイド!?」
タイガーセブン「いや、私の名はタイガーセブンだ」
煌「タイガーセブン…?」
ユウキ「のんびりしている暇はないよ煌ちゃん!
 早く変身して!!」
煌「う、うん!?」

ユウキに促されて、僕もエターナルストーンをかざして
すぐに戦士の姿へと変身した。
そうしたら館の中の空間が突然変化して、
巨大な生物の胃袋の中のような場所に出たんだ。

戦士煌「ここはいったい!?」
タイガーセブン「油断するな!!」

僕たちが警戒する中、姿の見えない蛇姫の声が響いた。

蛇姫の声「妾は蛇の道に千と五百年住んでいる蛇道神じゃ!
 よくも女の私に恥をかかせてくれたわね! いいかえ、
 お前たちは絶対にここから生きて帰る事はできないからね!
 私の魅力に気づかない男など、全て消えてなくなれ!!」

上から胃液のような液体が、僕たちめがけて
次々と飛んでくる。

ユウキ「熱ッ!!」
戦士煌「大変だ! 早く逃げないと!」
タイガーセブン「――スパーク号!!」

タイガーセブンの呼ぶ声に応え、疾走して現れたバイクは、
専用のスーパーマシーンであるスパーク号だ。

タイガーセブン「乗れッ!!」
戦士煌「はい!!」

僕とタイガーセブンがスパーク号に二人乗りして、
ユウキは翅を伸ばして飛んで、僕らは猛スピードで
その空間の中――蛇姫の体内から脱出した。
巨大な大蛇の正体を現した蛇姫は、外に出た僕たちを執拗に追ってくる。

92

巨大蛇「待てぇ~! 逃さぬぞぉ~!!」

蛇姫は炎を吐いて僕たち三人を攻撃して来た。
僕は猛然と蛇の道の地面を蹴り、ユウキは高く飛翔する。
タイガーセブンも巧妙自在にスパーク号を操って蛇姫を牽制する。

巨大蛇「おのれ三匹ともちょこまかと!!」
ユウキ「ねえ、ここを通してくれないかなあ!!
 ボクたちは界王さまのところまで行きたいんだ!!」
巨大蛇「だめじゃ!! どうしても行きたくば、
 妾を倒してからにせい!!」
ユウキ「しょうがないなあ!!」

ユウキは説得を諦め、一気に蛇姫の前まで迫ると同時に、
右手の剣を大きく引き絞った。

ユウキ「うりゃああああ!!」
戦士煌「やぁーっ!!」

気合いを迸らせながら、凄まじいスピードで
×の字を描くように十発の突き技を叩き込むユウキ。
僕もそれに呼応するようにして飛びかかり、
バトルアックスの刃で蛇姫の胴体を鋭く抉る。

巨大蛇「ぬおおおおッ!!!」
タイガーセブン「――今だ! 行くぞ!!
 必殺!!タイガー回転スパーク!!!!!!!!」

僕とユウキの攻撃でよろめく蛇姫を見て、
隙を掴んだタイガーセブンは、スパーク号のオートレーダーを使って
にょろにょろ動く巨大蛇の動きを捉え、必殺タイガー回転スパークで
蛇姫を見事粉砕した。

巨大蛇「ぎゃああああ!!!!」

強敵・蛇姫に勝利した僕たち。
元の姿に戻った蛇姫と侍女たちを、
とりあえず縄で縛って拘束しておく。

蛇姫「妾たちが悪かった。許してたもれ~」

縄でぐるぐる巻きにされている蛇姫は、
情けない様子で両目をうるうるさせて
僕たちに哀願する。

戦士煌「そう言われてもなあ…」
ユウキ「どうするタイガーセブン?
 …あれっ、タイガーセブン! どこ行っちゃったの!?」

気がつくとタイガーセブンの姿は消えていたんだ。
代わりに彼の声が天空から響いて来た。

タイガーセブンの声「いずれ蛇姫には閻魔大王から処分が下されるだろう。
 ユウキ君、それに金剛煌君、今回の君たちの働きは見事だった。
 君たちのその勇気があれば、きっと界王さまの元へ辿りつけるだろう!
 では、さらばだ!!」
ユウキ「ありがとう、タイガーセブン!!」

93

こうしてタイガーセブンと別れ、
僕とユウキは旅を再開して二カ月ほど経ったある日のこと。

戦士煌「はあっ…はあっ…」
ユウキ「ひいっ…ひいっ…」
戦士煌「ま、まいったなあ…」
ユウキ「この道、いつまで続いているんだろう…。
 本当に終点なんてあるの…」
戦士煌「――!?」
ユウキ「うわっ!!」

急に立ち止った僕に不意にぶつかるユウキ。

ユウキ「どしたの煌ちゃん?」
戦士煌「ユウキちゃん、これ…」
ユウキ「えっ…!!」

僕らの目の前には、蛇の道の尻尾が見えた。
ついに僕らは蛇の道の最終地点に辿りついた。
だけど……。

ユウキ「なにもないよ…」
戦士煌「そんなはずは!?」

周囲には雲海だけで、どれだけ辺りを見渡しても
他には何もなかったんだ。それでも僕とユウキは
必死になって何か建物らしきものはないかと探した。

ユウキ「煌ちゃん、あれ見て!!」
戦士煌「えっ!?」

ユウキの指差す遥か上空に、空に浮かぶ小さな球体が見えた。

ユウキ「なんか丸いのが上に浮かんでるよ」
戦士煌「あそこだ! きっとあそこに界王さまがいるんだ!」
ユウキ「やったーっ!!」
戦士煌「行ってみよう!!」

ユウキは翅を伸ばして飛翔し、僕も空高くジャンプした。
最初は喜び勇んでいた僕たちだったけど、その球体=界王の星に
近づいた途端、凄まじい重力に引っ張られて星に衝突(墜落?)してしまったんだ。

戦士煌「なんだこの地面は!? 凄い力で吸いつけられているみたいだ!」
ユウキ「か、身体が鉛みたいに…重い!!」

なんとか懸命に力を振り絞って立ち上がる僕とユウキ。
だけどそこには思わぬ先客が来ていたんだ。

北の界王「とっとと帰れ! あんなに面白いシャレを聞いて
 笑えん奴は嫌いだ! そんな奴に修行などしてやるもんか!」
タツミ「そんな無茶苦茶な…!」

そこには、黒く伸びた触覚とドジョウのような口ひげ、丸サングラスをかけ、
青肌にぽっちゃり体型のちょっとうさん臭めなおじいさんと、
年頃は僕やユウキと同じ10代の少年が言い争っていたんだ。
僕らは恐る恐る近づいて話を聞こうとした。

戦士煌「あのぉ…もしもし」
北の界王「なんだお前たちは?」
ユウキ「おじいさんこそ誰?」
北の界王「ふふふ…わしは…」

そのおじいさんは、両腕で背中を掻く動作をした。

北の界王「う~~ん、かい~よ~。
 かい~お~~。かいおう~~。界王じゃ!」
戦士煌「はい…??」
ユウキ「へっ…!?」

僕とユウキは、このおじいさんが何を言っているのか
理解するのに物凄く時間がかかったよ…(汗。

北の界王「どうじゃ、最高のシャレじゃろう♪」

94

戦士煌「あの、もしかして貴方が界王さまなんですか!?」
北の界王「いかにも! それよりも今のシャレの感想を
 早く聞かせてくれんか? 遠慮なく笑っても構わんぞ」
ユウキ「今のシャレだったの…?」
北の界王「………」
戦士煌「………」
ユウキ「………」

僕は何かマズイ空気が流れているのを感じたよ…。
ユウキは僕の耳にそっと耳打ちする。

ユウキ「ねえ煌ちゃん、ボク何かマズイこと言った?」
戦士煌「さ、さあ…(汗」
北の界王「やれやれ、しょうがない奴らだ。
 ではもう一発、特別サービスで違うシャレを
 お見舞いしてやるか」
戦士煌「………」
ユウキ「………」
北の界王「もしもし~~。あれ~?
 誰も電話に……でんわ! ぷっぷぷ…!!
 さ、最高!!」

僕とユウキはどう返していいのか解らず無言のまま、
暫し茫然と界王さまを見つめていた。
すると界王さまは露骨に不機嫌になってしまったんだ。

北の界王「帰れ!!」
ユウキ「エ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ッ!!」
戦士煌「そんなぁ…苦労してここまで来たのに」

僕とユウキはショックでがっくりと項垂れた。
そこへさっき界王さまと言い争っていた少年が、
同情する目つきで僕らに話しかけてきたんだ。

タツミ「な、さっきからずっとこの調子なんだよ…」
戦士煌「あの、君は…?」
タツミ「俺はタツミだ。よろしくなッ」
戦士煌「僕は金剛煌です。こちらこそよろしく」
ユウキ「ボクは紺野木綿季。ユウキでいいよ」

このタツミくんも、どうやら僕らと同じ目的で
蛇の道を越えて界王の星まで辿りついたんだけど、
界王さまの機嫌を損ねてしまい困っている様子だった。
タツミも交えて三人一緒に途方に暮れる僕たち…。

ユウキ「待って。タツミって名前、確かどっかで聞いたような…。
 でも…まあ、いっか!」

95

○金剛煌→タイガーセブンと共に蛇姫を撃破。界王の星に辿りつく。(回想)
○ユウキ→タイガーセブンと共に蛇姫を撃破。界王の星に辿りつく。(回想)
○滝川剛/タイガーセブン→金剛煌、ユウキと協力して、蛇姫を撃破。(回想)
○タツミ→北の界王のダジャレに笑う事が出来ず、彼を怒らせてしまう。(回想)
○北の界王→自分のギャグに笑わないタツミと金剛煌とユウキに激怒。(回想)
●蛇姫→金剛煌とユウキとタイガーセブンに退治される。身柄は閻魔庁に引き渡される模様。(回想)

【今回の新規登場】
○タツミ(アカメが斬る!)
 地方の貧しい寒村出身の少年剣士。困っている人間は放っておけない正義漢。
 基本的には真面目な努力家で鍛錬を怠らず、年相応に血気盛んな一面と少年らしい純朴さを併せ持つ。
 重税に苦しむ故郷を救おうと帝国軍で一旗上げる浪漫を抱きながら帝都にやってくるが、
 帝都を震え上がらせている殺し屋集団ナイトレイドと遭遇。帝国の腐敗した闇を思い知った結果、
 ナイトレイドの新たなメンバーとして加入した。ブラートから継承した鎧型の帝具・悪鬼纏身「インクルシオ」を使用。
 最終決戦で皇帝の操るシコウテイザーと戦い勝利したが、シコウテイザーの下敷きになりそうになった民を身を挺して守り死亡した。


『絶剣 蛇の道を往く』-6

作者・ティアラロイド

96

***北の界王星***

艱難辛苦を乗り越えて長い長い蛇の道を渡り、
ようやく界王さまのところにまで辿りつけたのに、
思わぬハードルに阻まれて困り果ててしまった僕ら。
その時、ユウキがふと何か思いついたように
界王さまのところに駆け寄った。

ユウキ「ねえ界王さま!」
北の界王「なんだまだいたのか! 早く帰らんか!」
ユウキ「お願いっ! ボクらのためにもう一回だけ
 ご自慢のシャレを聞かせて♪」
北の界王「なんじゃと?」
ユウキ「もう一回だけでいいからさ♪
 どうかこの通りっ!」

ユウキは手を合わせて必死に界王さまに懇願する。

戦士煌「ユウキちゃん…?」
北の界王「よーし、ならばホントにあと一回だけじゃぞ」

界王さまはすぅーっと深呼吸すると、
また寒いダジャレを口にした。

北の界王「箱を八個用意しなさい!」
ユウキ「…ヾ(▽⌒*)キャハハハo(__)ノ彡_☆バンバン!!」

ユウキはいきなり大笑いしだした。
その様子はどう見ても不自然そのものだったよ。
だって界王さまのシャレは全然面白くなかったんだもの。

戦士煌「どうしたのユウキちゃん?」

怪訝に思う僕に、ユウキは界王さまに聞こえないように
そっと小声で僕とタツミに囁いた。

ユウキ「煌ちゃんもタツミも早く!」
戦士煌「えっ…?」
タツミ「なるほどそーゆーことか!
 よしっ…ヾ(T∇T)ノ彡☆ギャハハ!!バンバン!!」

今度はタツミまで納得したように笑いだした。
要は本当は面白くないけど笑っているフリをしろ
ということらしい。なんか人…じゃなくて神様を
騙してるみたいで罪悪感に駆られたけど、
背に腹は代えられなかったんで僕も一生懸命に笑ったよ。
笑う事に努力が必要だったのは生まれて初めてかも…。

戦士煌「ぎゃははははは…面白いですねえ(←棒読み)」
北の界王「だろ? もう、気づくのが遅いんだからなあ!」

僕らはなんとか界王さまのご機嫌を取り戻すことに成功した。

97

さっそくユウキが用件を切り出す。

ユウキ「ねえ界王さま、修行してくれる?」
北の界王「ふっふっふっ…修行か…。してやってもいいぞ。
 ただしテストに合格したらな」
タツミ「テスト? なんスかそれ…」
北の界王「このギャグの天才である界王さまを、
 ダシャレで笑わせることができたらな!」
戦士煌「えーっ! 僕たちがダシャレを!?」
タツミ「やっぱりそうきたか…(汗」

無理難題だったけど、ここまで来た以上は
もう後には引けなかったから、僕らは思いつく限りの
ダジャレを口にしたよ。

ユウキ「焼肉って焼きにくい!」
タツミ「このフェンス、なんかふぇんす(変す)!」
戦士煌「蓋をふたつくださいな」

北の界王「ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン」

界王さまの脳裏に何か稲妻のような衝撃が駆け抜けた。

北の界王「…アハハ!!(~▽~*)/≡クルッヽ( )ノギャハハ!!≡クルッ(*_ _)/バンバン!!」

笑い転げる界王さまを見て、ユウキはガッツポーズする。

ユウキ「やった! 受けた!」
戦士煌「いいのかなあ…」
タツミ「ま、結果オーライだろ」

ようやく笑いが治まる界王さま。

北の界王「く…くそ~~。お前らただもんじゃないな!
 さてはプロだろ。どこのお笑い芸能プロダクションにいた?」
戦士煌「………(汗」
北の界王「いいだろう。修行してやろう。
 最高のギャグを教えてやるぞ!」
タツミ「ギャグはいいから武術を教えてくれよ」
北の界王「なんだ武術か。それを先に言わんかい」

98

北の界王「まずはお前たちの本来の力を知りたい。
 そこの長髪小僧はその物騒な甲冑を脱いで、そこの闇妖精族の娘も
 リアルの姿に戻ってもらおうか」

界王さまが指をパチンと鳴らすと不思議な力が働いて、
僕は変身状態を強制解除され、ユウキもALOのアバターの姿から
本来の現実(リアル)の姿に戻ったんだ。

煌「これは…」
木綿季「あれれ、戻っちゃった」

その時、僕はユウキの現実(リアル)での姿を初めて見た。
アバター時の長髪と違って、髪型はショートカットの女の子だった。
生前の彼女は末期の症状のせいもあり、今よりももっと痛々しいほど
肉が落ちて痩せこけた姿だったらしい…。

北の界王「よーし、どれ! かかって来てみろ。
 お前たちがどれほどのウデか見てやろう」

界王さまは拳法の構えを取る。

木綿季「そ…それがさあ、おかしいんだよね」
煌「ここじゃやけに動きにくくて身体が重いんです」
北の界王「お前たちどこから来た? 地球か?」
木綿季「う、うん…」
タツミ「俺は違うけどな…たぶん」
北の界王「じゃ重いだろうな。ここは小さな星だが、
 凄い重力でな。お前たちの星より10倍の重力になるかな。
 だからお前たちの重力も10倍になる。ちょっとジャンプしてみろ」

界王さまに促されて、僕たちはジャンプしてみた。
だけどほんの少ししか上にあがることが出来なかった。

木綿季「やっ!!」
煌「ぐっ!! だ、だめだ!」
タツミ「ほんのちょっとしかあがらねえ!!」

北の界王「……(むむむ…! 10倍の重力であそこまで飛ぶとは。
 これは孫悟空とその仲間たち以来に楽しみな奴らが来たぞい)」

99

こうして界王さまとの厳しい修行が
始まったある日のことだった。

北の界王「ではゆくぞ! この巨大煉瓦の
 超スピードを見事捉えてみせろ!」
煌「はいっ!」
北の界王「そりゃあ!!」

その時、目の前の景色が急に歪んだかと思うと、
突然全てが真っ暗になったんだ…。

煌「あれっ…こ、これは……」

タツミ「おいっ、大丈夫か!」
木綿季「煌ちゃん、どうしたの!? 煌ちゃん!!」

僕は段々意識が遠のいていくのを感じたよ…。

◇   ◇   ◇


煌「そうして気が付いたら、僕はエターナリアの大地に立っていて、
 "あの世"では頭についていた天使の環も消えていたんだ」
グレイファス「それが"黄泉がえり"か…」
ビークウッド「そしてあの鳴滝という男が、煌に接触して来たのですね」
煌「うん…」


◇   ◇   ◇

鳴滝「いつか君の前に悪魔が立ち塞がる」
煌「悪魔…?」
鳴滝「全てを破壊する悪魔、ディケイド!
 それが君の本当の敵だ…」

◇   ◇   ◇


煌は自分が死んでから再びこの世に復活するまでの
経緯をこれで全て語り終えた。

桃矢「…ったく。煌は人がいいから
 簡単に騙されちまうんだよ」
煌「ハハハ…(汗。確かにそうかもね。
 門矢さんたちには悪い事をしちゃったよ」
クレイト「違うわよ! 煌は心根が純粋なだけだもの!」

クレイトはムキになって煌を擁護する。

桃矢「い、いや…誰もそれが悪いとは一言も」
煌「ありがとうクレイト。でも桃矢くんの言う事にも
 一理はあると思うよ」
クレイト「そうかもしれないけど、私は知ってるよ。
 煌はただ優しいだけじゃない、強い心の持ち主だって」
煌「クレイト…」

話が進む中、エメルが焼きあがったパイを運んで来た。

エメル「おまちどおさま。パイが焼きあがったわ」
ガリエル「うひょーっ! 待ってましたぁ!」

クレイトがエメルからナイフを借りて、
皿の上のパイを均等に人数分切り分ける。

桃矢「おいクレイト、なんか俺の分だけ微妙に少なくないか?」
クレイト「そんなことないよ!」
エメル「こらこら、みんな仲良くね」

100

明るい食事風景が進む中、突然どこかからか
可愛らしい少女らしき声が聞こえてきた。

ユウキの声「……ちゃん、煌ちゃん、聞こえる?」

グレイファス「なんだこの声は!?」
煌「その声は…もしかしてユウキちゃん!?」
ガリエル「なんだって!!」

驚く一同…。

ユウキの声「よかったあ! ボクの声が聞こえるんだね!」

煌「ユウキちゃん! ユウキちゃんなんだね!
 今どこにいるの!? 君も僕みたいに生き返ったの!?」

ユウキの声「ハハハ…違うよ。今ね、界王さまの背中を借りて
 心の声で煌ちゃんたちに話しかけているんだよ」
北の界王の声「そこにおぬしらと一緒にいる大地聖母使のおかげで、
 わしのテレパシーの受信感度も上がっておるようじゃ」

煌「界王さま!?」
エメル「クレイト、何かわかるの?」
クレイト「うん…」

エメルの問いに、クレイトは小さく頷く。
大地と精神的に語り合い、祈りによって未知なる力を行使する大地聖母使は、
遠い大宇宙をも隔てた意思の交信においても媒介の役目も果たしているようだった。

ビークウッド「このお声が界王さまですか!?」
グレイファス「私たちにも聞こえるぞ!」
桃矢「…ま、待てよ。これってつまり…
 幽霊の声なのか?…((;゚Д゚)ガクガクブルブル」
テディアム「おい桃矢、なにビビッてんだよww」
桃矢「ビビッてなんかいねえ!!」

101

ユウキの声「もうっ、煌ちゃんったら急に消えちゃうんだもん。
 びっくりしたよ…」

煌「ごめん…。ところで今のそっちの様子はどう?」

ユウキの声「ボクもタツミも毎日修行頑張ってるよ。実はあれからね、
 タツミの仲間たちもこっちにやって来たんだよ」
北の界王の声「こっちも随分と賑やかになったわい!」

煌「そうなんだ。よかったね…」
桃矢「煌……」

煌の表情には懐かしさと同時に、ユウキやタツミを置いて
自分一人だけ生き返ってしまった後ろめたさがある事に
桃矢は気づいていた。そしてユウキや北の界王もそれを察していた。

北の界王の声「"黄泉がえり"の原因については、
 現在天界や霊界でも調査を進めておる」
ユウキの声「煌ちゃん、つまらないこと考えちゃダメだよ。
 煌ちゃんが生き返ったって事は、きっと煌ちゃんには
 まだ"この世"でやらなきゃいけないことがあるはずなんだ。
 だから頑張って!」

煌「うん、ありがとうユウキちゃん!」

ユウキの励ましで、煌は少し救われた気分がした。
続いてユウキはクレイトにも語りかけてくる。

ユウキの声「あなたがクレイトさん?」

クレイト「私の事がわかるの?」

ユウキの声「わかるよ。ここからは全ての事が見渡せるからね。
 だからクレイトさんが煌ちゃんと強い絆で結ばれているのも
 よくわかるんだ」

クレイト「………」

ユウキの声「だから煌ちゃんのこと、これからもお願い!」

クレイト「うん、わかった!」

遥か天界の界王の星にいるユウキと、エターナリアの大地にいるクレイト。
二人の少女の意思が通じあった瞬間だった。

ユウキの声「それじゃあ、名残惜しいけどそろそろ交信を切るね…」

煌「待ってユウキ! もしかしたら僕たちは今度地球に行くかもしれない。
 "アスナ"さんに何か伝えたい事はない!?」

暫し沈黙の時が流れたのち、ユウキからの返事が返ってくる。
「アスナ」とは、死後の世界でユウキと出会った時に、
彼女が語っていた大切な恩人の名前だ。

ユウキの声「…ううん、別にいいよ。いきなり家に押しかけて
 "死後の世界からの伝言です"なんて言われてもアスナは困惑するだろうし、
 煌ちゃんも変に思われたりして困るでしょ。…でも、もし向こうで
 アスナと会う機会があったら、その時は"ボクは楽しくやっている"って伝えて」

煌「うん、わかった。必ず伝えるよ」

ユウキの声「さよならは言わないよ」

煌「ユウキも元気で…」

こうして北の界王星との交信は途絶えた。

102

桃矢「ところで煌」
煌「なぁに桃矢くん?」
桃矢「お前、その"アスナ"さんって人が
 どこに住んでるのか、わかってるワケ?」
煌「…あああッ!! しまったァッ!!」
テディアム「おいおい…(汗」

"アスナ"の住所や詳しいプロフィールを聞き忘れていた事に気がつき、
慌てるように立ちあがって頭を抱える煌。

桃矢「それくらい最初から詳しく聞いとけよ」
エメル「困ったわねえ。"アスナ"って名前からして
 たぶん女性の方なんでしょうけど…」
ビークウッド「地球のブレイバーベースという場所に行けば、
 該当者を調べてもらえるかもしれません」
グレイファス「しかしいくらなんでも"アスナ"という
 ファーストネームだけでは難しいのでは…」
ガリエル「実はファーストネームじゃなくて
 苗字の方かもしれないぜ…」
煌「弱ったなあ…」

別れ際に「必ず伝える」と約束してしまった手前、
弱り果ててしまう煌。だがそこにクレイトがそっと
優しく煌の肩に手をかける。

クレイト「大丈夫だよ煌」
煌「クレイト?」
クレイト「思いが届けば、きっといつかは会えるよ。きっと…」

(シナリオ完結。次シナリオに続く)

103

○タツミ→北の界王のもとで修行を開始する。(回想)
○紺野木綿季/ユウキ→北の界王の力を借りて、エターナリアの金剛煌たちにテレパシーで語りかける。
○北の界王→エターナリアの金剛煌たちに、ユウキと一緒にテレパシーで語りかける。
○金剛煌→ユウキと北の界王からのテレパシーを受け取る。
○神城桃矢→ユウキと北の界王からのテレパシーを受け取る。
○グレイファス→ユウキと北の界王からのテレパシーを受け取る。
○ビークウッド→ユウキと北の界王からのテレパシーを受け取る。
○ガリエル→ユウキと北の界王からのテレパシーを受け取る。
○テディアム→ユウキと北の界王からのテレパシーを受け取る。
○エメル・ウルファウス→ユウキと北の界王からのテレパシーを受け取る。
○クレイト→ユウキと北の界王からのテレパシーを受け取る。