『未知なる敵を薙ぎ払え』

作者・ユガミ博士

1

平安時代・・・。藤原道長が権力を握り、貴族は優雅な暮らしをしていた
時代。しかし、都には鬼や妖怪が夜な夜な暗躍をしていた。
そのため、朝廷では陰陽師を用いて鬼や妖怪から都を守っていた。
そして、ここに都を守る陰陽師が1人いた。

???「今日は今のところ、何も無いようだね。もっくん。」
???「そのようだな。昌浩。」

赤い衣を身に纏う少年の名は安倍昌浩。稀代の大陰陽師安倍晴明の孫である。
その昌浩の肩に乗っている小動物のような生物の名はもっくん。
だが、これは仮の姿で本当は晴明の配下である十二神将の火将・騰蛇である。
彼等は毎夜、都に事件が起きていないか見回っているのだ。

昌浩「最近は、死者が生前の姿で現れたり、
   空に裂け目が出来て見た事も無い妖怪が出たって
   聞くけど、本当かなぁ?」
もっくん「都で何人も見たんだろう?
     それに晴明も今日は良くない気が出ているという。
     見回るのに越した事は無い。」

最近の都では度々、死者が生前の姿で現れたり、
空に裂け目が出てきて見た事も無い妖怪が出てきたという
話が陰陽寮に来る。

昌浩「鬼もおとなしくなったと聞いたけど
   また、彼等の仕業かなぁ?」
もっくん「分からない。それは調べるしかないだろう。」

少し前、京の都では鬼と呼ばれる一族が
都を支配するために怨霊を使って人々を襲っていたが、
龍神の神子と神子を守る八葉によって京の都は守られたのである。
だが、龍神の神子はその後、京の都を去ったので今はいない。

もっくん「鬼だろうと何だろうと、都を荒らすなら
     倒すだけだ。晴明の孫。」
昌浩「孫、言うなっ!!」

昌浩は晴明の孫と言われるのが大嫌いである。
そんな話をしながら歩いていると、
急に、嫌な気配を感じた。

昌浩「もっくん。これって・・・。」
もっくん「晴明の言ったとおりだな。近くに何かいるぞ。」

しばらく気配を感じていると、

「キャァ~。」

突如、女性の悲鳴が聞こえたのである。

もっくん「こっちだ。」

昌浩ともっくんは悲鳴の聞こえた場所へ走るのであった。

2

安倍泰明はその夜、貴族の護衛をすることになった。
最近の京は見た事の無い妖怪が現れるというので
宴等の行き帰りに襲われるのを恐れた貴族達は
武士の他に陰陽師も護衛に付けたのであった。
宴から帰る途中の貴族の女性を乗せた牛車の横に
警護をする武士と共に歩く泰明がいた。

泰明(今は大丈夫だな・・・。)

彼は安倍晴明の弟子で彼によって造りだされた
人造人間であり、かつて龍神の神子を守った
八葉の1人であった。ちなみに若い頃の晴明と
同じ声をしているという。
今夜、何事も無いだろうと考えていた泰明であったが、
突然、目の前の空が裂け出した。裂けたというより、
空に穴ができたのである。
そして、その中から現れたのは見た事の無い怪物であった。

サイクロプス「ぐぅぅおぉぉぉっ!!」

大きな体に目が一つの怪物サイクロプスである。

牛「モ~~!」
武士A「こらっ、落ち着け!」
武士B「早く姫様をお守りするのだ。」
武士C「あ、あ、あっち行け妖怪。」
姫「キャァ~!」

サイクロプスに驚いた牛が暴れだし、
警護していた武士達は牛をおとなしくさせたり、
中にいる姫を守ろうとしたり、
中にいた姫は牛車が大きく揺れだしたため大声で
悲鳴を挙げた。

泰明「これが、空から現れるという怨霊か・・・。
   行くぞっ!」

泰明はただ冷静にこの怪物を祓うことにした。
首に掛けている数珠を外し、鎖に変えてまずは動きを止めるのであった。
鎖はサイクロプスの周りを囲い、サイクロプスの動きが止まった。

サイクロプス「ぐぅぅおぉぉぉっ!!」
泰明「お前達、早くこの場から逃げろ。」

泰明は牛車から出た姫と警護の武士達にこの場から逃げるよう言った。
泰明は護衛であるため、護衛対象の姫に危険が及ぼさないように
しなければならない。だから、この場を離れるべきだと判断したのである。

武士A「承知つかまつった。後は頼む。」

姫と武士は即座に逃げた。後に残った泰明は印を結び、
破邪の呪文を唱え始めた。

泰明「臨、兵、闘、者、ムッ!」

身動きの取れないサイクロプスを一気に滅するために
唱える泰明であったが・・・。

メイジドラキー「ギラ」

バン!

泰明「くっ!」

いつのまにか隠れていたモンスター・ドラキーの上位種
メイジドラキーがギラを唱え、泰明に攻撃をしたのである。
とっさにかわしたが何と、サイクロプスが無理矢理、鎖を解いたのである。

泰明「馬鹿なっ!?」

鎖は数珠に戻り、泰明の手に戻ったが、サイクロプスが
殴りかかってきた。とっさにかわすが、メイジドラキーの
ギラに肩が当たってしまう。

泰明「ちっ!」

2体のモンスターからかわしていく泰明であったが、
これでは呪文を唱える事が出来ない。呪符で攻撃するが
ギラで発動する前に燃やされてしまう。
そして、サイクロプスの拳が泰明の顔に目掛けて殴られようとしていた。

泰明「これまでか・・・。(神子・・・。)」

泰明は自分はここまでと感じて、かつて自分が仲間と共に守った
龍神の神子が頭の中に浮かび上がった。
だが、殴られる直前、炎がサイクロプスの拳を弾いたのである。

泰明「?!」
昌浩「大丈夫ですか。泰明さん。」
泰明「昌・・浩・・。」

泰明を助けたのは自分を造り出し、師匠でもある安倍晴明の孫
安倍昌浩であった。

3

悲鳴が聞こえた方へ駆けつけた昌浩ともっくんは
途中で悲鳴にあった方向から逃げてきた武士達と出会い、
そこで一つ目の巨人と戦っている安倍泰明の事を聞いた。

昌浩「泰明さんが・・!」
もっくん「泰明は晴明が造り出された者だから
     大丈夫だと思うが、もしかしたらやばいかも知れない。」
昌浩「急ごう、もっくん。」

泰明のいる所へ急いだ2人はそこで、泰明が今に殴られようと
ようとしていた。

昌浩「もっくん。」
もっくん「分かった。」

もっくんは炎に包まれて真の姿である騰蛇の「紅蓮」の
姿となり、サイクロプスに向かって炎を打ち出し、弾いた。

泰明「?!」
昌浩「大丈夫ですか。泰明さん。」
泰明「昌・・浩・・。」

泰明と合流した昌浩は紅蓮と共に2体のモンスターに立ち向かった。

泰明「気をつけろ。・・そこの一つ目は私の結界を
   破ったものだ。・・・そして飛んでいる蝙蝠は
   火の玉を出す。唱えている時に攻撃を受けて
   邪魔されてしまった。」
昌浩「はい。行くよ、紅蓮。」
紅蓮「任せろ。」

サイクロプスとメイジドラキーは
それぞれ昌浩と紅蓮に攻撃を仕掛けた。
サイクロプスの拳が紅蓮を殴りかかったが、
紅蓮はいとも簡単に拳を止めてしまった。

サイクロプス「ぐ、ぐがぁぁ。」
紅蓮「このような拳にやられは・・・」

紅蓮の拳に炎が纏い、サイクロプスの腹に
めいいっぱい殴った。

紅蓮「せんっ!」

頑丈なサイクロプスも紅蓮の拳によって大ダメージを与えた。

サイクロプス「ぐぉぉぉ、ぐぁぉぉぉ。」

そして、地獄の業火である紅蓮の炎によって
サイクロプスの体はみるみるの内に焼かれていき、
灰となってしまった。

一方、メイジドラキーと対峙する昌浩は
相手の素早さとギラによって、苦戦していた。

メイジドラキー「ギラ」
昌浩「うぁっと!」

避けるのに精一杯で、呪符を投げようとしても
泰明と同じく燃やされてしまう。

昌浩「ハァ・・・ハァ、何とかしないと。」
メイジドラキー「ギラ」
昌浩「やっやばい。」

正面からギラを放たれ、昌浩の顔面に直撃しようとしたその時、

泰明「はっ。」

泰明が鎖で火の玉を払ったのである。

泰明「今だ、昌浩。」
昌浩「はい。」

昌浩はメイジドラキーに印を結んで、破邪の呪文を唱えた。

昌浩「臨、兵、闘、者、皆、陣、裂、在、前。」
メイジドラキー「きぃ、きぃゃぁぁ。」

唱えきると、メイジドラキーは消滅していった。

夜の静けさを取り戻して、昌浩は泰明を起こした。

昌浩「大丈夫ですか?」
泰明「問題ない。だが、私もまだまだだな。」

見た事も無い怨霊だとはいえ、遅れをとってしまった
泰明はこれからも精進していかなくてはならないと思った。

昌浩「でも、何だったんでしょう。あの妖怪は。」
泰明「分からない。だが、又、来るのであれば
   倒すまでだ。」
昌浩「そうですね。」
もっくん「なら、これからも精進する事だな。」
昌浩「紅蓮、いつのまにもっくんになったの。」
もっくん「今さっきだ。だが、この事は晴明に言わなければな。」

もっくんは昌浩の肩に飛び乗り、昌浩達に言った。

昌浩「そうだね。泰明さん、これから
   家に行きましょう。彰子も待っていると思うし。」
泰明「そうだな。」

そうして昌浩、もっくん、泰明の3人は晴明に報告するために
この場から去った。

だが、彼らは知らない。今後、時空を巻き込んだ大いなる戦いに
身を投じる事を。

4

○安倍昌浩→時空クレバスから出てきたメイジドラキーを倒す。
○もっくん〈紅蓮)→時空クレバスから出てきたサイクロプスを倒す。
○安倍泰明→貴族の護衛中、サイクロプスとメイジドラキーに襲われ、少々負傷をする。
●サイクロプス→泰明の結界を破るものの紅蓮によって倒される。
●メイジドラキー→泰明を負傷させるものの泰明と昌浩によって倒される。

【今回の新規登場】
○安倍昌浩(少年陰陽師)
 安倍晴明の末の孫。祖父譲りの強い霊力の持ち主で唯一の後継者。
 「誰も傷つけない、誰も犠牲にしない最高の陰陽師」を目指している。


○もっくん=紅蓮(少年陰陽師)
 昌浩と共に行動する十二神将の1人、火将・騰蛇。
 普段は「もっくん」の姿をしている。


○安倍泰明(遥かなる時空の中で)
 安倍晴明によって造り出された人造人間の陰陽師。
 かつて、龍神の神子を守る八葉であった。
 当初、感情があまり無かったが龍神の神子である
 元宮あかねと接する内に感情が芽生える。


●サイクロプス(ドラゴンクエストシリーズ)
 一つ目の巨人。ギガンデスの色違いだが棍棒は持っていない。


●メイジドラキー(ドラゴンクエストⅠ〉
 蝙蝠をモチーフにしたドラキーの一種。
 体の色が赤で、攻撃呪文「ギラ」を唱える事が出来る。