『公民権法』-1

作者・キノコモルグ

300

***京南大学附属病院***

藤兵衛「どうだいカドクラくん、身体の具合は?」
カドクラ「どうもご心配をおかけして申し訳ありません、立花さん」

ここは京南大学附属病院の外科病棟にある病室の一室である。
その日、立花藤兵衛は、店の常連客で旧知の間柄でもある
二輪ロードレースの監督カドクラの見舞いに来ていた。

藤兵衛「しかしひき逃げに遭うとは災難だったねえ。
 つくづく物騒な世の中になったもんだ」
マリナ「幸い軽傷で済んで、お医者さんの話だと
 後遺症の心配もないそうです」

藤兵衛の持参した贈答用のフルーツを
病室備え付けの冷蔵庫の中へとしまうマリナ。
彼女は入院中のカドクラの世話をするため、
ここ2~3日病院に泊り込んでいるようである。

カドクラ「せっかくマリナがチームに戻ってきてくれたんです。
 いつまでもベットの上でのんびりなんかしてられませんよ。
 ほら、この通り…イタタタタ!!!」

元気に振舞おうとして無理に体を動かそうとして
一瞬激痛が走り、顔が歪むカドクラ。

藤兵衛「こらこら! 怪我人が無理しちゃいかん!」
マリナ「そうですよカドクラさん。チームのメンバーのためにも、
 完治するまでしっかり養生してください」
カドクラ「むぅぅ……」

ちょっと不満そうにふくれっ面になるカドクラ。
そこへナースがやって来る。

愛「カザマさん、チームの方からお電話です」
マリナ「わたしに? すみません、ちょっと行ってきます」
藤兵衛「ああ」

電話を受け取りに病室を出るマリナ。

マリナに電話があったと呼び出しに来た、
この若い女性のナース――魚住愛。
実はかつて地球に侵攻してきた宇宙連合ウオフ・マナフの軍勢と戦った
超星神グランセイザー・水のドライブの一人
セイザーパイシーズなのだが、
その事をこの場にいる藤兵衛やマリナが知る事になるのは
もう少し先の話である…。

301

***同病院・ナースステーション前受付***

受付で電話の受話器を受け取るマリナ。
しかしその電話の相手の声を聞いた途端、
その表情は凍りついた。

電話の声「もしもし…」
マリナ「貴方は誰!? チームメイトじゃないわね!」

電話の相手の声は変声機で加工されていたのだ。

電話の声「カザマ・マリナに警告する。
 この一件からは手を引け!」
マリナ「この一件?? どういうこと?」
電話の声「いいから黙って手を引くんだ。
 さもないと、この次は軽傷で入院程度じゃすまないぞ。
 フフフフフ……」
マリナ「あ、待ちなさい――」

電話は一方的に切れた…。


***再び、カドクラの病室***

病室へと戻ったマリナは、いきなり荷物をまとめ
外出の身支度をし始めた。

藤兵衛「おいおいどうしたんだマリナちゃん!?」
マリナ「ごめんなさい。わたし急用を思い出しちゃって。
 ちょっと出かけてきます!」
藤兵衛「行くってどこへ!?」

困惑する藤兵衛とカドクラを置いて、
無言のまま病室を飛び出していくマリナ。

カドクラ「おい、マリナ!?」

302

***ヒルカワのオフィス***

ここは悪徳ジャーナリスト、ヒルカワが自宅兼事務所として使っている
マンションの一室である。尤も…中は雑然と散らかっていて、
とてもまともなジャーナリストの仕事部屋とは思えないような
場所ではあったが…。

ヒルカワ「これはこれは…元GUYSのお嬢さんが
 そっちの方から出向いてくれるとは、いったいどういう風の
 吹き回しかな?」
マリナ「ふざけないで! 貴方の仕業ね?
 カドクラさんを車で跳ねさせたのは!!」

ヒルカワの部屋へと単身乗り込んできたマリナは
すごい形相でヒルカワへと詰め寄る。

ヒルカワ「さあて、何の事かな…」
マリナ「あくまでもとぼける気ね!」
ヒルカワ「とんでもない。それとも何か証拠でもあるんですかね?」
マリナ「くっ……」
ヒルカワ「ま、かつての上官を信じたい気持ちは分かりますよ。
 でもサコミズ前総監のスキャンダルはれっきとした事実なんだ。
 貴女ももう余計なことをいろいろと嗅ぎ回るのはやめた方がいい。
 さあ、今日のところはお帰り願いましょうか…」
マリナ「見てなさい! 貴方が根も葉もない記事を捏造して
 サコミズさんを陥れたことは、必ず暴きだしてやるからっ!」

捨て台詞を残して去るマリナ。
部屋に一人になったヒルカワは、
懐から携帯を取り出して、ある番号へと電話をかけた。

ヒルカワ「もしもし、南さんですか?」
南雅彦の声「ここへは電話をかけないようにと
 あらかじめ言っておいた筈だが?」
ヒルカワ「それがうるさい女狐が周囲をウロチョロしていましてね。
 早いトコ何とかしてもらえませんか?」
南雅彦の声「…いいだろう。そっちの方はじきに片をつける。
 お前は引き続き、我々ロゴスに楯突く人間達の
 信用を貶めるための記事を書き続けろ。いいな?」


***喫茶アミーゴ&立花レーシング***

茂「カザマ・マリナ…?」
藤兵衛「うむ、うちの店の常連客の女の子なんだが、
 どうも様子がおかしくてな…」

その日の夕方……。
カウンター越しに、本日の病院であった出来事の
一部始終を藤兵衛から聞く城茂。

藤兵衛「お前達も忙しい事は承知のうえですまんのだが、
 あの娘をそれとなくガードしてやってくれんか?
 ワシの取り越し苦労かもしれんが、どうにも心配でな…」
茂「それとなくガードねぇ……」

深く考え込む茂。

303

○カドクラ→ひき逃げに遭い入院。幸い軽傷で生命に別状はなし。
○立花藤兵衛→店の常連客であるカドクラの見舞いに病院に訪れる。
 病院で電話を受けたカザマ・マリナの様子を不審に思い、彼女の警護を城茂に依頼。
○カザマ・マリナ→サコミズ失脚の一件の真相を探るのをやめるよう
 脅迫電話を受ける。その後ヒルカワのところに乗り込み詰問する。
○魚住愛→入院したカドクラを担当している。今回は顔出しのみの登場。
○城茂→立花藤兵衛からカザマ・マリナの警護を依頼される。
●ヒルカワ→カドクラがひき逃げに遭った一件と脅迫電話の事について
 カザマ・マリナから追及を受けるが、開き直って追い返す。
 その後南雅彦に密かに連絡を取り、マリナの抹殺を依頼する。
●南雅彦→ヒルカワからカザマ・マリナを始末するよう頼まれる。

【今回の新規登場】
○カドクラ(ウルトラマンメビウス)
 カザマ・マリナが所属するオートレースチームの監督。
 マリナの実力を認めており、世界選手権への期待を募らせている。
 マリナがGUYSに入隊していた時期は、マリナの後輩を率いてレースに参戦していたが、
 成績は芳しくなかったようである。一度はマリナをチームに戻るよう
 説得するつもりだったが、CREW GUYSでの仕事に情熱を傾ける
 マリナの姿を見て、その考えを改めた。

○魚住愛=セイザーパイシーズ(超星神グランセイザー)
 古代の遺伝子を受け継ぐ12人のグランセイザーの1人。
 水のドライブに属する魚座の戦士。シャチの力を持つ。
 普段は京南大学付属病院に看護師見習いとして勤務している。
 ちょっとノンビリ屋だが、芯は強い。
 専用武器『アクアブリッツ』から必殺技『ブリンクショット』を繰り出す。


『公民権法』-2

作者・キノコモルグ

304

日本のどこかにある人気のない海岸の浜辺を
バイクに乗って一人走る青年がいた。

青年「…ん?」

その行く手を遮るように立ち塞がる、
年の頃は16歳前後で、怪しげな雰囲気の少年の姿が…。
バイクを止めて降り、目の前の少年――
――スマートブレイン・ラッキークローバーの
筆頭格である北崎と対峙する、ヘルメットを被ったままの青年。

北崎「やあ…」
青年「天王路の手下か?」
北崎「…君かい? ウチから帝王のベルトとかいうのを盗み出したのは?
 いけないなあ、泥棒なんて。社長さんがいろいろと困ってるみたいなんだ。
 ねえ、返してくれないかな?」
青年「生憎だが、そんなものはここにはない」
北崎「なら…少し遊ぼうか」

そう言った瞬間、不敵に笑う北崎の華奢な身体は
屈強な魔人態ドラゴンオルフェノクの姿へと変化した!

青年「………」

青年――剣崎一真は意を決したように
プレイバックルへと手を伸ばしポーズを取る。

剣崎「――変身!!」

305

***新宿・海堂医院・診察室***

ベッドに寝かされている、乾巧。
横では院長である海堂博士がカルテを書いている。
巧、憔悴しきった様子で目を開ける。

巧「……先生」
海堂「何かね?」
巧「……俺はあと……どのくらい生きられそうなんだ?」

一瞬の沈黙。

海堂「私は隠し事がニガテでね……このままだと、あと一週間
 もつかどうか……」
巧「……そうか」
海堂「……だが、今大事なのはデータじゃない。君自身が生き続けたいか
 どうか、だよ。人間として」
巧「……」

***同・待合室***

園田真理と菊地啓太郎の二人が巧の診察が終わるのを待っている。
ナース服姿の一条ルミが、点滴の道具や薬ビンを抱えて入室。

真理「あの、巧は……」
ルミ「今は落ち着いてます。大丈夫ですよ」

オルフェノクとして覚醒した乾巧の肉体は、すでに能力を使いすぎたこともあり
日毎に衰弱の度合いを深めていた。

啓太郎「きっと元気になるよ、たっくんなら……」
真理「………」

診察室から海堂博士が出てくる。

真理「先生」
海堂「二人とも、少しいいかね?」

場所を廊下へと移動した海堂博士は、
真理と啓太郎にそれとなく質問をぶつける。

海堂「そろそろ本当の事を話してはもらえないかね。
 彼の身体は普通の人間のものとは違う。そうだね?」
真理「………」
啓太郎「………」

海堂博士の質問にうつむいたように黙り込む二人。

海堂「これは単なる私の勘なんだが、
 何日か前、スマートブレインの社長の復帰会見のニュースが
 テレビで流れたあたりから、急に彼が無理をしているような気が…」
真理「巧は…巧は人間です! それ以外のなんでもありません!」
啓太郎「真理ちゃん……」
海堂「いや、すまなかった。私も何も彼が実は人外の存在では
 とか言っているわけじゃないんだ」
啓太郎「先生…」
海堂「私も医者として、全力を尽くすつもりだ」

306

その日の診察を終え病院を出て、
新宿の街中を歩きながら家路につく巧、真理、啓太郎の3人。

啓太郎「先生は気づいてるんじゃないのかな?
 たっくんの身体の事…」
巧「たぶんな。そっちの筋でもいろいろと評判の
 先生らしいからな…」
真理「巧…」
巧「心配すんな、真理。俺はまだ死なない。
 スマートブレインが復活した以上、俺にはまだ
 やらなきゃいけないことがあるからな」

そう自分の思いを話す巧だが、
真理の方へと振り返ると、彼女の顔は涙目になっていた。

巧「真理…!?」
真理「どうして…どうして巧が戦わなくちゃいけないの?
 ……木場さんとの約束のため? あたしと出会ったばっかりに、
 死んだあたしを助けるために、あんなにボロボロになるまで……
 この上まだ、元気になって戦わなくちゃいけないの? そんなの……」
啓太郎「真理ちゃん……!」

そんな時、3人の横を一台のバイクが逆方向へと走り去っていった。
猛スピードでほんの一瞬であったが、その姿を見た巧の脳裏には、
確かに見覚えのある記憶があった…。

真理「どうしたの?」
巧「――まさか…草加!?」

307

●北崎→帝王のベルト奪還任務のため、放浪中の剣崎一真を襲撃する。
○剣崎一真→最後の戦い以降、一人で放浪していたが、
 とある海岸沿いにて北崎の襲撃を受け応戦する。
○海堂博士→余命幾ばくもない状態の乾巧を診察する。
 彼が普通の人間でない事は薄々察している。
○一条ルミ→海堂医院で手伝いをしている。
○乾巧、園田真理、菊地啓太郎→海堂医院からの帰り、
 偶然バイクで街中を疾走する草加雅人を目撃。

【今回の新規登場】
○剣崎一真=仮面ライダーブレイド(仮面ライダー剣)
 BOARD(人類基盤史研究所)にスカウトされ、仮面ライダーブレイドとして
 戦っていた青年。アンデッドと戦うことは自分の性に合っていると思っている。
 頭脳明晰、文武ともに優秀。皆に愛され、希望をふりまく善人タイプ。
 努力を努力と思わず、人並み以上の能力を発揮する天才系。肉親はなく天涯孤独の身。
 最後の戦いにおいて、ジョーカー(相川始)を封印せずに世界を救う手段として、
 キングフォームを酷使する事で自らジョーカー=アンデッド化する。

○海堂肇博士(10号誕生!仮面ライダー全員集合!!)
 村雨しずか・良姉弟の大学時代の恩師。優秀な町医者にして生化学者。
 一条博士や伊藤博士とは科学者仲間かつ親友であり、一条博士の忘れ形見である
 一人娘のルミを引き取っている。バダン総統の正体を「悪霊のエネルギー」であると
 分析して見せた。

○一条ルミ(10号誕生!仮面ライダー全員集合!!)
 海堂博士の元で看護師見習いとして暮らしている少女。
 父の一条亨博士をバダンに殺されており、ZXと運命的な出会いをする。
 優しい性格で暴力を極端に嫌っており、「こういうの、嫌いです」が口癖。
 海堂の元を訪れる新宿界隈のホームレス達の人気者でもある。

○乾巧=仮面ライダーファイズ=ウルフオルフェノク(仮面ライダー555)
 日本全国を旅していたフリーター。あっけらかんとした正直な男。
 どちらかというと無口だが、ひとたび口を開けば、あまりにも率直な言動ゆえに、
 すぐに誤解されヒンシュクをかう。職についてもすぐにクビになり、
 これまで500以上の仕事を経験。良くも悪くも喜怒哀楽をはっきりと現すタイプ。
 九州で園田真理と出会い、その後東京の菊地啓太郎のクリーニング店で居候しながら、
 ファイズに変身して、図らずも人類とオルフェノクとの戦いに身を投じていく。極端な猫舌。
 実は子どもの頃事故で一度死亡しており、その際にウルフオルフェノクとして覚醒した。

○園田真理(仮面ライダー555)
 美容師見習いの少女。束縛を嫌い、自由を愛する。性格は短気で勝気。
 もともと孤児として養父母に引き取られ九州で暮らしていたが、
 スマートブレイン社から謎のツール一式を受け取ったことで
 オルフェノクの存在を知り、その謎を解く旅に出ることに。
 その後は巧と共に東京にて菊地啓太郎のクリーニング店に居候。
 旅のパートナーとなった巧をイヤなヤツだと思っており、それを口にする。
 幼い頃はスマートブレイン社長・花形に引取られ「流星塾」に通っていた。

○菊地啓太郎(仮面ライダー555)
 几帳面で優しく真面目の青年。目標を立てるのが大好きで、
 どんな小さな目的にも努力するタイプ。
 実家は東京で創業百年の老舗クリーニング店「西洋洗濯舗 菊池」。
 ふとしたことから巧、真理と旅の途中で知り合い、
 実家に2人を居候させる。典型的な巻き込まれ型。

 


『公民権法』-3

作者・キノコモルグ

308

***東京・新宿区内某所***

マリナ「――!!」

その日もGUYSの関係先を洗うべく、
一人で走り回っていたカザマ・マリナであるが、
突然、背後から迫る殺気に満ちたバイクの走行音に気づいた。

マリナ「きゃっ!!」

身についている自身の優れた聴覚のおかげで、
間一髪避けることに成功するが、
そのバイクは再び自分の方向へと向かってきた。
その時、聞き覚えのある声が――。

コノミ「マリナさん、こっちです!!」
ジョージ「早くしろ!!」

マリナ「ジョージ!? コノミちゃん!?」

二人の必死の手招きで、バイクも入り込めないような
狭い路地裏へと逃げ込むマリナ。


***某廃工場跡***

誰もいない廃工場の建物の中へと逃げ込んだ
イカルガ・ジョージ、カザマ・マリナ、アマガイ・コノミの3人。

マリナ「助かったわ、ありがとう。
 でもジョージ、スペインにいるんじゃなかったの?
 いつ日本に?」
ジョージ「サコミズさんのニュースを聞いてじっとしてられる
 訳ないだろ。スペインからすっ飛んで来たのさ」
コノミ「一人でサコミズさんの無実を証明しようだなんて
 水臭いですよマリナさん。わたしたちにも手伝わせてください」
マリナ「コノミちゃん…」

ヘルメットの男「お喋りはそこまでだ!!」

ジョージ「――!!」
マリナ「――!!」
コノミ「――!!」

声のした方向へと振り返ると、そこには先ほどの
バイクを運転していた男が立っていた。
ちなみにヘルメットを被ったままで顔はよく見えない。

ヘルメットの男「ある方からの依頼でな。悪いが死んでもらう」

ヘルメットの男は、カイザドライバーとカイザフォンを取り出すと、
それを腰に巻きつけて装着、変身コードを「913」と入力すると叫んだ。

ヘルメットの男「――変身!!」

Standing by!!
Complete!!


ギリシャ文字のΧ(カイ)を模した姿の装甲服姿――
――仮面ライダーカイザへと変身した。

ジョージ「くそっ!!」

そこらへんに落ちていた鉄パイプを拾い上げ、
果敢にカイザに打ちかかるジョージであったが、
カイザに軽くあしらわれる。

カイザ「フン!!」
ジョージ「うわぁ!!」

309  

倒れたジョージを抱え起こすマリナとコノミ。

コノミ「ジョージさん、しっかりしてください!!」
マリナ「こんな奴、メテオールさえ使えたら!!」

今は民間人となった彼女らにメテオールを使うことは出来ない。
そうしている間にもカイザのフォンブラスターの銃口が迫る。

カイザ「くたばれ…」

???「待て!!」

カイザ「――!! 貴様…乾…巧!?」

カイザの凶行を止めようとする声。
先ほど街中ですれ違った草加の姿を見かけた
乾巧が追ってきたのだ。思わぬ再会に驚くカイザ。
そしてそれは乾巧の方も同じであった。

巧「草加…本当に草加なのか?」
カイザ「フフ…フフフ…フハハハハ!!
 こうなったらGUYSの元隊員などどうでもいい!
 乾、貴様から血祭りに挙げてやるぞ!!」

呆然と立ち尽くす巧に襲い掛かるカイザ。
巧も咄嗟にファイズドライバーを装着し、
ファイズに変身して応戦する。

Standing by!!
Complete!!


ジョージ「一体どうなってんだ…?」

目の前の出来事の予想外の展開に、ただ見ていることしか出来ない
ジョージ、マリナ、コノミの3人。

310

ファイズ「よせ草加! 俺はお前と戦うつもりはない!」
カイザ「甘いぞ乾! このくたばり損ないがっ!!
 俺が直々にあの世に送ってやる!!」

殴り合いの応酬をする両者。しかし体調の優れない巧=ファイズが
やがて劣勢へと追い込まれていく。

ファイズ「くっ…!!」
カイザ「止めだ!」

ファイズにカイザが止めを刺そうとしたその時、
パトカーのサイレンの音が周囲一体に響き渡った。
見れば警官隊がいつの間にかこの場を包囲している。

冴子「全員その場を動かないで!」
真理「草加君…もしかして本当に草加君なの??」

カイザ「真理!?」

警官隊の中に園田真理の姿を確認したカイザ。

カイザ「チッ…乾、命拾いをしたな!」

動揺を見せたカイザは警官隊の囲みを突破して立ち去った。

冴子「深追いは無用よ!
 ――あなたたち、怪我はない?」
コノミ「…はい、ありがとうございます」

ジョージたち3人に声を掛ける野上冴子署長。
一方、ファイズの姿から変身をといた巧は、
真理、啓太郎と共に黙ってその場から立ち去ろうとするが……。

冴子「待ちなさい、乾巧君」
巧「どうして俺の名前を!?」
冴子「あなたたちからも是非事情を聞きたいわ。
 このまま署までご同行願えないかしら?」
巧「………」

そしてその場から全員が立ち去った後、一人の人影が…。

茂「やれやれ、俺としたことが出るタイミングを逸しちまった。
 それにしてもあの青年はいったい何者…? 俺たち――仮面ライダーの
 姿にとてもよく似ていたが……」

311 

●草加雅人→南雅彦の命令で、イカルガ・ジョージ、カザマ・マリナ、
 アマガイ・コノミの3人を襲う。途中止めに入った乾巧にも牙を向くが、
 園田真理に現場を見咎められ動揺し、撤退。
○イカルガ・ジョージ、カザマ・マリナ、アマガイ・コノミ→
 草加雅人=仮面ライダーカイザに襲われる。窮地を偶然乾巧に救われる。
○乾巧→草加雅人がイカルガ・ジョージ、カザマ・マリナ、
 アマガイ・コノミの3人を襲う現場に遭遇し、止めに入る。
○野上冴子→園田真理からの通報で、パトカーを率いて現場に駆けつける。
○城茂→事の一部始終を見ていた。仮面ライダーファイズの存在を知る。

【今回の新規登場】○イカルガ・ジョージ(ウルトラマンメビウス)スペインリーグで活躍した実績を持つ元サッカー選手。摩擦熱でボールが炎を纏うほど強力な「流星シュート」を放つが、怪我の為、引退を余儀なくされた。ウルトラマンになることが夢という純真な青年だが、感情を吐露することを嫌っており、スタンドプレーに走ることも。非常に優れた動体視力を持ち、危険を事前に回避できる。また卓越した空間認識能力も有しており、メテオールショットの「アメイジング・トリプル」はジョージにしか使用できない。スタンドプレーの原因は、そのような特殊能力が、自分にしか見えないものを作ってしまうことによる、チームからの孤立であった。会話にスペイン語が混ざるキザ男だが、漢字で書けない「イカルガ」の名で呼ばれるのを嫌っている。実は海と宇宙が苦手。水泳が苦手なわけではなく、過去に海でろくな目に遭っていないのが、海を苦手とする原因らしい。ウルトラマンジャックの声を聴くことができ、メビウスを勝利に導いた。 

 


『公民権法』-4

作者・キノコモルグ

312 

***新宿西警察署・会議室***

テッペイ「みんな、無事でよかった!」
コノミ「テッペイさん!?」
マリナ「どうしてここへ? いつ日本に戻ってきたの?」

同じ元GUYS隊員のクゼ・テッペイと思わぬ再会を果たす
マリナとコノミ。彼はエンペラ星人との決戦の後GUYSを除隊して
医者となり、青年海外協力隊となってジョージ同様に
日本を離れていたはずであったが…。

テッペイ「僕もサコミズさんの一件が気になって
 日本に戻ってきたんですよ。そしてそちらの署長さんからも
 正式に捜査協力の要請があって――」
冴子「みんな、席についてくれるかしら?」

マリナたち4人、そして一緒に連れてこられた巧たち3人も席へと着く。
部屋のカーテンが全て閉め切られ暗くなると、
スクリーンに映し出される画像と共に、冴子が説明を始める。

冴子「我々捜査班は、地球連邦軍極東支部並びにCREW GUYS JAPANで
 起こったとされる数々の不祥事やその他不可解な出来事について
 内密での再調査に着手したわ。そして全ては何者かに仕組まれた
 捏造である事がわかったの」
マリナ「するとやっぱりサコミズ隊長――いえ、サコミズ総監は
 無実なんですね?」
冴子「ええ、そうよ。ある代議士の命令を受けて
 そして全ての陰謀を仕組んだのがこの男よ」
巧「――!!」

スクリーンに映し出された男の顔を見た瞬間、巧の表情は
驚愕の眼差しに変わった。その男こそ、警察の権限を利用して
オルフェノクの殲滅を図り、長田結花を死に追いやった張本人――
――警視庁幹部・南雅彦だったのである。
まさかこの男が再び表舞台で活動していようとは…。

冴子「あなたには見覚えのある顔のはずよね? 乾巧君」
巧「………」
啓太郎「たっくん、この人知ってるの?」

説明を続ける冴子。

冴子「我々はなんとしてもこの男の尻尾を掴み、
 全ての真相を明らかにしたい。そのために皆さんにも
 協力してほしいの」
ジョージ「もちろん、俺たちなら喜んで!」
マリナ「サコミズさんの無実を晴らすためですもの」
冴子「ありがとう。乾君、あなたにも是非とも協力を要請したいわ」
巧「俺のことは何もかも調査済みって訳か。でも悪いな。
 俺はあの時から警察は信用しない事にしてるんでな」
真理「ちょ、ちょっと巧!!」
冴子「………」

席を立って帰ろうとする巧。

マリナ「待って。さっきは助けてくれてありがとう」
巧「………」

巧は何も言わずに去っていく。
真理と啓太郎は申し訳なさそうにペコリと一礼してから、
慌てて巧の後を追いかけて出て行った。

313

***東京・某所***

休日という事もあり、多くの人々がショッピングを楽しんだり、
カフェでお茶を飲んでいたり過ごしていた。
だが、そこに休日を楽しむ人々をビルの屋上から見下ろす人物が居た。

???「さぁ、始めよう。正義の執行だ。」

パチィィィン!!

その人物は指を鳴らすとサナギのワームが次々と姿を現した。

歩行者A「出たー!」
歩行者B「逃げろー!」

ワームは次々と人々を襲った。そして、屋上に居た人物は懐から
カードデッキを取り出して、用意していた鏡に向けてデッキをかざした。
すると、Vバックルが出現してそこにデッキを装填した。

???「変身。」

その姿は白虎の如き鎧に身を包んだ仮面ライダータイガへと変身した。
彼の名は東條悟。かつて、ミラーワールドのライダーバトルに参加した
青年である。彼は清明院大学の香川英行教授と共に、「英雄を目指して」
ミラーワールドを閉じようとした。しかし、次第に歪んだ理想と憎悪に
取り付かれて、香川教授を手に掛けてライダーバトルを続けるが、徐々に
情緒不安定になっていった。
タイガは鏡の中に入り、ミラーワールドを通じて、騒ぎの起こっている
広場へと現れた。

タイガ「愚かな人類に罰を与えるんだ。デストワイルダー。」
デストワイルダー「グワァァァァン。」

虎型モンスター・デストワイルダーは鏡の中から、瞬時に外へ飛び出し、
人々を襲った。

???「やっているね。」
タイガ「君か!。芝浦君。」

そこに現れたのは仮面ライダーガイこと芝浦淳だった。
彼はガイの姿に変身していた。

ガイ「どうだい、今の気分は。」
タイガ「君のおかけで、心が軽くなったみたいだ。感謝しているよ。」
ガイ「そうかい、それはよかった。頑張りなよ、君はいずれ人類を導くのだからさ。」
タイガ「ああ、愚かな人類を導くんだ。僕は。」
ガイ「……(その調子だよ、東條クン。…やはり、この手の男はその気にさせやすい。
 次期創世王の力を手にして、愚かな人類を導くのが英雄だと吹き込んだら、
 その気になってくれたよ。でも、所詮は捨て駒。用済みになったら
 高見沢さんが殺すんだろうなぁ。ま、どっちがなってもいいんだけどね。)」

そんな時に警察のパトカーと未確認生命体対策班=SAULの車両が到着した。
そして、警官とSAUL所属のG5ユニットが出てきた。

尾室「すぐに、人々を避難させて、ワームに神経断裂弾を与えるんだ。」
G5ユニット全員「了解!。」

G5ユニットは一般人の非難をした後、ワームに対して神経断裂弾を浴びせた。

ワーム「ぎしゃぁぁぁ。」

尾室管理官はスピーカーでタイガとガイに聞いた。

尾室「お前達、Gショッカーの手の者か?、何故、人々を襲った。」
タイガ「正義の執行をしたんだよ。僕は正義だ。」
尾室「正義?!、ふざけるな。一般人を襲っておいて何が正義だ!。」
タイガ「僕はいずれ、人類を導く英雄となる。今回は争いをやめようとしない
 愚かな人類に対して、少し灸をすえただけさ。」
尾室「彼らは一般人だ。理由になっていない。」
タイガ「人間の中には、人より上に行こうという気持ちがある。それが
 嫉妬を呼び、争いが起きる。だから、一般人にも関係がある。
 そして、僕が次期創世王の力を……」
ガイ「はい、そこまで。警官が出てきても、敵じゃないけどさぁ。
 面倒だし、今日はここまでしよう。」
タイガ「でも…。」
ガイ「あせらない。さぁ行くよ。」
タイガ「分かった。」

2人は鏡の中へと入って消えた。

尾室「何だったんだ!?、彼らは。」

その後、この事件は夕方のニュースで流れた。そのニュースを民自党の
白河尚純はある考えを思いつくのであった。

314

***東京 永田町・国会議事堂***

後日、白河尚純は国会である発言をした。

白河「皆さん、先日のGショッカーの事件をご存知ですか。情報によると、
 先日のGショッカーの怪人は自らを「正義」と言った。
 正義ならば人を勝手に罰していいのか?、いや、それは許されない事です。
 それを行う者はテロリストです。Gショッカーに参加している組織は
 異星人、異次元人、はては、妖怪や悪魔も所属しているといいます。
 そして、現在の日本、いや、世界中では超能力等の特殊な能力を持つ者が
 増えてきています。もし、彼らがGショッカーのように独善的でその能力を
 行使した時、民衆にどれだけの被害がでるでしょうか。かの仮面ライダーや
 ウルトラマンの仲間でも民衆の財産を奪った事があります。
 そういった能力を持つ者を規制すべきではないのでしょうか。」

白河の発言の後、剣桃太郎は考えた。

桃太郎「……(白河の言う事も一理ある。我々に協力してくれる者もいるが、
  全てとは限らない。このままでは、世間に不安が高まり、我々に協力してくれる
  ヒーローの活動が思うように動けず、他の平和的な種族との関係が瓦解
  するかもしれない。…白河はこの事件で異種族排斥へと持ち込もうと
  考えているかもしれないがそうはいかん。)」


***江田島平八邸***

桃太郎「塾長、私は次の国会で非ナチュラル種族への差別を禁じる
 公民権法案を提出します」
江田島「公民権法案……!?」
桃太郎「今、Gショッカーを始めとする多くの脅威から地球を守るためには
 この地球に生きる者は皆、種族の違いを乗り越えて手を携えなければなりません。
 私はこの法案を必ず成立させるつもりです!」

座りながら池の鯉に餌をやっていた江田島は、ゆっくりと立ち上がった。

江田島「剣よ、お前の事だから言うまでもなくわかっていようが、
 非ナチュラルを排斥する思想とやらは、何も過激派特有のものという
 わけではない。ごく普通のそこらへんに住んでいる一般市民にも、
 自分たちと異なるものに対する不信感と差別意識は根強い」
桃太郎「………」
江田島「だからこそ過去の歴代政権も、まるで腫れ物に触れるが如きように
 この案件はあえて先送りにし、避けて通ってきたのだ。」

事実、地球連邦議会で人類とAI搭載型ロボットとの共存共栄を謳った
ロボットパートナーシップ宣言が採択された後も、日本だけが
その批准が遅れていた。

江田島「文字通りの危険な賭けだ。白河尚純…それにあの男の背後にいる
 ロゴスもここぞとばかりに全力を持って潰そうとするだろう。
 失敗すれば貴様の政治生命は終わりだ。自らの墓穴を掘ることになるのだぞ」
桃太郎「しかし成功すればその墓穴に地球至上主義者たちが
 入ることになります」
江田島「フフフ……これ以上言うまい。心してかかるがよい!!」

桃太郎「押忍!!」

315

そして翌日……。
総理大臣の緊急記者会見が行なわれ、公民権法案の提出が
全国民に向けて大々的に発表された。

***ジャンパーソンの基地***

TVの生中継の様子を、基地のモニターで見ている
ジャンパーソンたち。

ガンギブソン「へぇ~。人間の政治家なんてのは
 みんな同じだと思ってたけどよ。かおるの話してた通り、
 今の総理はなかなかやるじゃねえか」
かおる「これで人間とロボットの共存という
 貴方の夢にまた一歩近づいたわね、ジャンパーソン」
ジャンパーソン「ああ!」

明るい新未来の到来を予感し、力づく頷くジャンパーソン。


***お茶の水博士邸***

ここは旧国連科学省の長官を務めた、世界でも屈指のロボット工学の天才の
一人としても知られる、お茶の水博士の私邸である。
博士は、先程からのTVでの記者会見の様子を、
自身が実の子供のように可愛がっているアトム&ウラン姉妹と共に
お茶の間でじっと見続けていた。

アトム「博士!」
お茶の水「うむ。これでようやく我が国もロボットパートナーシップ宣言に
 批准できる。剣総理、よく決断してくださった。感謝しますぞ!」


***西洋洗濯舗 菊池***

キッチンと繋がる居間で、TVを見ている
巧、真理、啓太郎の3人…。

啓太郎「公民権法って……これ、オルフェノクも
 対象に含まれるのかな?」
巧「さあな」

巧は一見無関心そうな態度で席を立ち、部屋を出て行く…。  ***妖怪横丁・ゲゲゲハウス***

ここは人間界から切り離された異世界。善良な妖怪たちの住処である
妖怪横丁である。その通りから外れた原っぱに建っているツリーハウスが、
ゲゲゲの鬼太郎と目玉のおやじ父子が住む、通称「ゲゲゲハウス」である。

鬼太郎「父さん」
目玉おやじ「うむ。人間の指導者の中にも
 なかなか骨のある人物があらわれたようじゃな!」

剣桃太郎総理の記者会見の様子が映された電波は、
ここ妖怪横丁の妖怪たちの各家のテレビにまで届いていた。
茶碗風呂の中で寛ぎながら、目玉のおやじは思案にふけている。

目玉おやじ「そういえばあの妖怪人間の3人組、
 今頃どうしておるかのう…」


***日本国内・某過疎村の廃墟***

いつどこで誰が生み出したのか誰も知らない、
人でも怪物でもない異形の生物…それが妖怪人間である。
彼らはいつの日か人間になれる日を夢見て
人間達のために世にあだなす悪と戦い続けていたが、
その人間から理解される事なく忌み嫌われ、
いつしかひっそりと姿を消し、身を潜めていたのだった。

ベム「………」
ベラ「………」
ベロ「………」

誰も使わなくなった廃屋の洋館に人目を偲んで隠れ住んでいた
ベム、ベラ、ベロの3人。壊れかけたテレビのスイッチを入れ、
映りは悪いながらも剣総理の記者会見の様子をじっと見入っている。

ベロ「この法律が通れば、もう僕たち隠れたりしなくても
 済むんだね?♪」
ベラ「甘いね。そんな簡単にうまく行きっこあるもんかね!
 あるいはアタシたちをおびき出して捕まえようっていう罠なのかも」
ベロ「そんなあ……」

がっくりと項垂れるベロ。しかしベムだけは何かを考えながら、
テレビに映る剣桃太郎の顔をじっと見据えるように見つめていた。

ベム「………」


316

***民自党本部前***

正面玄関から出てきた白河尚純を番記者たちが取り囲む。

記者A「白河議員!」
記者B「剣総理がブチ上げた公民権法案について一言お願いします!」
白河「わが国の議会政治が始まって以来の悪法だと断言します。
 ナチュラル以外の種族や異能者に同等の権利を認めるなど論外です。
 ザフト軍のコーディネイターたちが地球でどれだけの
 破壊行為を繰り返したか……アンドロ軍団のロボットどもが
 人類にとっていかに危険な存在だったかを思い起こせば、
 それは子供でも解る事ですよ。もし成立すればその弊害は計り知れません。
 私は各方面とも一致団結して廃案に向け全力を尽くす覚悟です」

黒塗りの公用車に乗り込む白河。

白河「フフフ……剣め、これで貴様は己の手で墓穴を掘ったのだ。
 法案は俺の全霊を持って叩き潰してやる。そして貴様自身もなっ……!!」


***国会議事堂・地下***

丁「……!!」

突然眠りから目覚める夢見の姫・丁(ひのと)。

蒼氷「丁姫様!!」
緋炎「いかがなされました!?」
丁「………剣総理が……剣桃太郎殿が危ない………!!」

 317

○クゼ・テッペイ→エンペラ星人との決戦の後GUYSを除隊して医者となり、
 青年海外協力隊となって日本を離れていたが、密かに帰国。
 野上冴子の要請を受けて警察の捜査に協力していた。
○イカルガ・ジョージ、カザマ・マリナ、アマガイ・コノミ→
 新宿西警察署にてクゼ・テッペイと合流。警察からの捜査協力の要請を快諾。
○乾巧→南雅彦の一件から警察への不信感がぬぐえず、
 野上冴子からの協力要請を拒否。公民権法案の報道に対しても
 一見無関心そうに見えるが…?
●東條悟→芝浦(ガイ)に唆され、英雄=Gショッカーの次期創世王と解釈。
 世紀王候補の一人としてバトルファイト参戦の名乗りを上げ、
 仮面ライダータイガに変身して人々を襲う。
●白河尚純→タイガの起こした事件を利用して、非ナチュラル排斥のつもりで
 特殊な能力の持ち主の規制法案を持ちかける。剣桃太郎の公民権法案も潰すつもり。
○尾室隆弘→G5ユニットを率いて現場に急行するが、
 タイガとガイに相手にされず逃げられる。
○剣桃太郎→ナチュラルと非ナチュラルとの平和共存に奔走する
 ヒーローたちを後押しすべく、公民権法案を国会に提出。
○ジャンパーソン、ガンギブソン、三枝かおる、アトム、ウラン、
 お茶の水博士、園田真理、菊地啓太郎、鬼太郎、目玉のおやじ、
 ベム、ベラ、ベロ→剣総理の公民権法案提出に関する
 緊急記者会見の生中継の様子をTVで見る
○丁→剣桃太郎の身に危険が迫っていることを予知。

318

【今回の新登場】
●東條悟=仮面ライダータイガ(仮面ライダー龍騎)
 元々は清明院大学・香川の研究室に属する大学院生。「英雄を目指して」
 ライダーになる。しかしその言葉の解釈において恩師・香川との間には
 徐々に齟齬が生まれており、歪んだ理想と憎悪に取り付かれていくように
 なる。自分が英雄になるためならどんな事でもする冷酷さも持ち合わせている。

○クゼ・テッペイ(ウルトラマンメビウス)
 医大生で、父は大病院の院長。頭脳派であり、過去に出現した怪獣に関して
 豊富な知識を誇る優秀なプランナー。その知識は確かで、
 GUYSのアーカイブ・ドキュメントに引けをとらない上、
 状況に応じて的確に知識の適用を行うことの出来る即応性にも優れる。
 趣味での独学ながら、宇宙語研究のスペシャリストでもあり、
 かなり訛りの強い宇宙語でも、ヒアリングとスピーチの双方を駆使して
 即座に会話できる。GUYSへの入隊は母には秘密にしていたが、
 インセクタスの一件で程なく判明し、現在では母公認。
 初代ウルトラマンの声を聴くことができ、メビウスを勝利に導いた。

○アトム(アストロボーイ・鉄腕アトム)
 世界最高の人工頭脳を持ち、人間同様の心を備えたロボット。10万馬力を誇る。
 科学省の総力を結集し、莫大な予算と最新技術の全てをかけて開発された。
 生みの親である天馬博士の実子、天馬トビオを模している。
 お茶の水博士の家に同居。純粋で心優しく、大きな正義感を持つ。
 ロボットと人間が友達でいられる世界を目指している。

○ウラン(アストロボーイ・鉄腕アトム)
 お茶の水博士によって制作されたアトムの妹ロボット。
 5万馬力のパワーを持つが、アトムのように飛行能力や武器は持たない。
 甘えん坊でワガママな性格で時々アトムを困らせるが、心優しい一面も。
 アトムを兄として慕い誇りに思っているが、兄と比較されることを極端に嫌う。
 動物とのコミュニケーション能力を持つ。

○お茶の水博士(アストロボーイ・鉄腕アトム)
 ロボット工学の権威で、科学省長官。進化していくロボットの中に
 「心の芽生え」をいち早く感じ取り、ロボットにも人権が必要だと考え始める。
 「ロボットは人間の友達」という理念の持ち主。

○墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)
 かつて地上を支配していた幽霊族の唯一の末裔であり、
 幽霊族の父と人間の母とのハーフ。外見は少年。長髪で左目を隠し、
 古めかしい学童服と縞模様のちゃんちゃんこを着て下駄を履いている。
 人間と妖怪が共存する世の中を目指して、悪の妖怪と戦っている。
 本来の姓は「墓場」だが、主に「ゲゲケの鬼太郎」と名乗る事が多い。

○目玉のおやじ(ゲゲゲの鬼太郎)
 鬼太郎の父親。目玉に体の付いたユーモラスな外見。
 非常に博学で知識面で鬼太郎たち正義の妖怪をサポートする。
 幽霊族の生き残りであったが、自らの死後、自分の遺体の眼球に
 魂を宿らせて生き返り、現在の姿となった。趣味は茶碗風呂。

○ベム(妖怪人間ベム)
 3人の妖怪人間たちのリーダー的存在。しっかりとした考えの持ち主で、
 今どきめずらしい、信念と正義をつらぬく頑強で優しい、男の中の男。
 武器は常に携帯しているステッキ。「人間になる」とはどういうことか、
 真の意味での「人間らしさ」とは何か、ということについて、常に悩み、考えている。
 変身後は爪、牙による物理攻撃が得意。足蹴りは大岩をも砕く。
 総合的な戦闘力が高く、3人の中で最強だが、体力の消耗が激しい。

○ベラ(妖怪人間ベム)
 3人の妖怪人間トリオで唯一の女性。強気で短気だが、情にもろく、
 面倒見が良い。綺麗事は言わず、常に思ったことをストレートに表現する。
 家庭的な側面もあり、3人の日常生活における炊事・洗濯・掃除などは自ら担当している。
 正義感が人一倍強く、人間・妖怪を問わず不正や悪事を働く者は許せない。
 人間のすべてを見透かした様なところがあり、悪い面はきっちりと批判する。
 武器は腕に巻きつけてある鞭で、手から電撃(妖気)が出せる。
 変身後は爪、牙による物理攻撃のほか、冷気による特殊攻撃が可能。

○ベロ(妖怪人間ベム)
 3人の妖怪人間の中では、一番幼い。明るい性格でいやみもなく、
 何にでも興味を示し、どんな人間にも分け隔てなく接する、非常に社交的な性格。
 また、楽観的で、落ち込んでも決して後に尾を引かない。
 ベムの教えを忠実に守り、人間に危害を加えるものに対しては、自らの身を省みず立ち向かう勇気の持ち主。
 嬉しいと思わず逆立ちをする。体は柔らかく、人間で言えばスポーツ万能。
 武器は、ずば抜けた身体能力。

 


『龍騎復活』

作者・ユガミ博士

319

***東京都内・某アパート***

???「ここが、行方不明者の現場っすか?令子さん。」
???「ええ、さすがに警察が片付けているわね。」

そのアパートに2人の男女が来ていた。
この2人の名は城戸真司と桃井令子というOREジャーナルという
ネットニュース配信社のジャーナリストと見習いである。
ここ最近、都内各所で謎の連続行方不明事件が起きているのである。
2人はその調査に来たのであった。

真司「やっぱり、Gショッカーとかが誘拐しているんすかね。」
令子「その可能性もあるけど、決め付けるのはいけないわ。」

そう言って、令子は部屋に手掛かりが無いか部屋の奥へと入っていた。
真司も辺りを物色し始めた。そしてその時、何かの視線を感じた。
振り向くと、そこには鏡台しかなかった。

真司「ん?、あれ何か視線を感じたけど、・・・気のせいだよな。」
令子「駄目ね、手掛かりが無いわ。聞き込みに行くわよ。」
真司「わっかりました。」

2人はアパートを出て行った。鏡の中から覗いている者がいた事を知らずに。

***東京都内・某公園***

その日の夜、2人の男女が噴水の前に立っていた。

???「君が霧島美穂か。」
???「あなたが手塚海之ね。良く私の居場所が分かったね。」
???「占いで探し出した。俺の占いは当たる。」

この2人の名は手塚海之と霧島美穂。前の歴史では仮面ライダーとなり、
ミラーワールドでライダーバトルに参加した。途中で敗北して死亡したが、
歴史が改変した事により、今も生き続けている。

手塚「間もなく、赤き龍と黒き蝙蝠を従えし、2人の戦士が目覚める。」
霧島「(真司の事?!)」
手塚「だが、目覚めると同時に災いが降りかかるであろうと占いに出ている。」
霧島「・・・。」
手塚「どうする?。」
霧島「行くわ、真司の下へ。」
手塚「そうか・・・。」

そして、2人は公園を去っていった。

320***東京都内***

次の日、真司は休日ということもあり、昼飯を買いにパン屋「パンタジア」
に来た。ちなみにここの支店は分身の技が使えるということから店長1人で
切り盛りしているという変わった店である。

木下陰人「ありがとうございました。(ハァ、いいかげん新人来てくれないかなぁ。)」

真司は店から出て、口にクッキーメロンパン頬張り横に曲がったら・・・

ドン!

人と肩がぶつかってしまった。

真司「すいません!・・あれ?。」

よく見ると、そこには最近よく遭う男性であった。

???「気をつけろ。・・・何だ、お前か。」
真司「すいません。でも、最近よく遭いますね。」

ぶつかった相手の名は秋山蓮。真司とは行きつけの喫茶店「花鶏」で
何度も遭ったりしている。だが、突如、パンタジアのショーウィンドウから
手が現れ、2人を掴んだ。

真司「げ、何だこれ!。」
蓮「!?」

2人は鏡の中に引きずり込まれていった。
ちなみにそこを目撃していた店長の木下陰人はあまりの事態に気絶。
目が覚めた後、警察に連絡したが相手にされず、疲れているのではと
思い、パンタジア本社に新人を入れてもらえるよう打診しに行くのであった。

321

***ミラーワールド***

気がつくと、2人はパンタジアの前に立っていた。しかし、先ほどとは
雰囲気が違っていた。そう、景色がさっきと逆になっているのである。
ここは、ミラーワールド。鏡の中の世界である。
そして、真司達の前に1人のロングコートを来た男性が立っていた。

???「久しぶりだな。いや、今は初めましてか。城戸真司、秋山蓮。」
真司「誰だ。あんたは?。」
蓮「何故、俺の名前を知っている。」
???「俺の名前は神崎士郎。お前達を誘いに来た。」
真司「誘いに来たって何の!・・・ぐあぁ。」
蓮「どうした。・・・ぐぅぅ。」

突如、2人は苦しみだした。2人の腕や脚が徐々に消えていくのである。

神崎「この世界では、長く生身は保てない。助かりたければ、これを受け取れ。」

神崎は2人にカードデッキを差し出した。2人は一瞬、躊躇するも手をカードデッキ
へと伸ばした。しかし・・・

???「させないよ。」

何者かが神崎を攻撃した。しかし、神崎は避けたのでダメージを負っていない。
その攻撃した者の姿が虎を模した甲冑を身につけ、斧を持っていた。

神崎「タイガか。」
タイガ「神崎士郎。これ以上、ライダーを増やされたら僕の英雄への道が
  遠のいてしまう。だから、ライダーになる前に・・・。」

タイガは2人の方へと向き、

タイガ「ここで死んでもらう。」

斧を真司の頭上へと振り上げた。真司は眼を閉じた。しかし、痛みがこない。
眼を開けてみると、タイガの腕がムチで動きが封じられていた。そして、
真司達の眼の前に赤紫の戦士と白く美しき戦士が立っていた。

赤紫の戦士「大丈夫か?、城戸、秋山。」
白い戦士「私達が来たからには安心して。」
真司「だ、誰だよ。あんた等。」
白い戦士「それよりも、はい、カードデッキよ。早く手にとって。」
真司「わ、分かった。」
蓮「(何が起きるというんだ。)」

2人はカードデッキに手に取ると、頭の中に見たことの無い映像が流れていった。
それは、前の歴史で自分の記憶である。流れが終わると、2人は立ち上がり、
叫んだ。

真司&蓮「「変身」」

Vバックルが現れ、2人の腰に装着された。そして、カードデッキを差し込むと
ガラスの割れる音共に2人の戦士が立っていた。その姿こそ、赤き龍の戦士
「龍騎」と黒き蝙蝠の戦士「ナイト」であった。

龍騎「思い出したぜ。俺がライダーだった事を。
 サンキューな、手塚、美穂。」

龍騎は赤紫の戦士、手塚の変身した姿「ライア」と白い戦士、霧島が
変身した姿「ファム」に礼を述べた。

ライア「何、気にするな。」
ファム「久しぶり、真司。」
ナイト「東條悟か、お前もライダーに戻っていたのか。」
タイガ「ちぃ、僕の計画が。神崎士郎、僕を助けて。」

だが、神崎士郎はすでにそこからいなくなっていた。

龍騎「(神崎が助けると思わねぇけどな。)」
ライア「形勢逆転だ。」
ファム「覚悟しなさい。」
タイガ「そうはいかない。」

ADVENT!!

タイガは力を振り絞り、白召斧デストバイザーにカードを装填した。
そして、白虎型モンスター・デストワイルダーが現れ、ムチを切断した。

タイガ「今日の所は仕方が無い。だが、この次はかならず倒す。」

そう言って、タイガは逃げていった。

ナイト「悪役の決まり文句だな。」

322

そして、4人はミラーワールドから帰還した後、手塚達からこれまでの
経緯や神崎士郎がGショッカーと手を組み、前の歴史で参加したライダーを
Gショッカーに所属させようとした事などを知った。

蓮「そんな事が起きていたのか。」
真司「じゃぁ、ここ最近の行方不明事件はモンスターの仕業か。」
手塚「おそらくな。どうする城戸、秋山。もう一度ライダーになるか、
  それとも、ライダーである事を放棄するか?。」

2人は考えた。いや、既に答えは決まっている。

蓮「これも、乗りかかった船という奴だ。事態を知ったからには安心が
 できんしな。」
真司「勿論、やるぜ俺は。もう一度、ミラーワールドを閉じて見せる。」
霧島「真司なら言うと思った。」
手塚「なら、決まりだな。」

ここにまた、人々を守るライダーが誕生したのであった。

真司「・・・。」
霧島「どうしたのよ、真司?。」
真司「いやぁ、俺たちチームを組んだじゃん。何か戦隊ヒーローみたいだなぁって。
 あっ、それだと俺と手塚って色が被るなぁ。」
蓮「くだらん。」

他の2人も呆れるのであった。

323

○城戸真司、秋山蓮→手塚と霧島に助けられた後、ライダーに変身する。
○手塚海之、霧島美穂→真司と蓮の未来を予知し、霧島と共に真司、蓮を助ける。
○桃井令子→真司と共に行方不明事件を調査。
○木下陰人→真司、蓮がミラーワールドに連れて行かれるのを目撃するものの気絶。
●神崎士郎→真司、蓮にカードデッキを渡す。
●東條悟→真司、蓮がライダーになるのを邪魔しにきたが、逃走する。

【今回の新登場】
○城戸真司=仮面ライダー龍騎(仮面ライダー龍騎)
OREジャーナルの記者見習い。正義感は強いが、単細胞で底無しの
お人好しのため騙されやすい。
「モンスターから人々を守る、ライダー同士の戦いを止める」ことが
ライダーとしての目的。料理が得意で、中でも餃子が得意。

○秋山蓮=仮面ライダーナイト(仮面ライダー龍騎)
「意識不明の恋人小川恵里を目覚めさせるため」に仮面ライダーになった。
短気で喧嘩っ早い部分が目立つが、根は思いやりのある心優しい性格。
しかし目的のために冷徹に振舞うこともある。大金に弱い面を持つ。

○手塚海之=仮面ライダーライア(仮面ライダー龍騎)
「変えられなかった運命を変える為に」仮面ライダー同士の争いを
止めるため奔走する。このことから真司の共感を得ることになる。
的中率ほぼ100%の占い師で、口癖は「俺の占いは当たる」。

○霧島美穂=仮面ライダーファム(仮面ライダー龍騎)
浅倉に姉を殺されており、遺体の冷凍保存にかかる費用を稼ぐべく
結婚詐欺を働いていた。また、姉の殺害事件の裁判で弁護を行なったのが
北岡であったことから北岡を恨んでいる。「浅倉への復讐・姉の蘇生のため」
ライダーバトルに参戦する。真司に好意を抱いている。
なお、「霧島」は結婚詐欺のための偽名。

○桃井令子(仮面ライダー龍騎)
OREジャーナルのジャーナリスト。真司の先輩であり、危険な仕事でも
逃げないジャーナリズムの持ち主。

○木下陰人(焼きたて!!ジャぱん)
「パンタジア」南東京支店店長。実は日本最大のサーカス・木下大サーカスの
御曹司で、それゆえ他人のパンのコピーをすることが得意。さらに分身の術まで
身につけており、何人にも分身し、仕込み・陳列・応対・会計という南東京支店
の全ての業務を1人だけでやってのけていることができる。ただオリジナルのパン
を作ることに関しては全くダメなため、ほとんど注目はされず影が薄い。

●神崎士郎(仮面ライダー龍騎)
清明院大学・江島研究室に所属していた大学院生。旧名は高見士郎(たかみ しろう)。
神崎優衣の兄。アメリカでは死亡したことになっている。人を仮面ライダーに
変身させる技術を開発し、ライダー同士の戦いを仕組んだ張本人。優衣の事となると
見境が無くなる。

 


『絆は種族を超えて…』-1

作者・シャドームーン

324 

***東京・牧村教授邸***

ある平日の朝―――
テーブルを囲み朝食を摂る牧村家の人々は、新聞の一面を飾る
「公民権法案の提出」の記事について談笑していた。

牧村教授「フム…素晴らしい法案だ。これで地球に暮らす、様々な
 種族の人々と互いに手を取り合い少しでも平和に貢献できれば」
牧村夫人「でもあなた…非ナチュラルと呼ばれる人たちには、
 恐い人たちも多いと聞きますよ。…何だか心配だわ」
美樹「そんなことないわよ! 人間じゃないからって、何も悪いことを
 してない人たちまで不当に差別するのは良くないわ!
 私たちとちっとも変わらない、素敵な人たちだってきっと大勢いるわ。
 ねえ、明くんもそう思うでしょ?」

楽しげな話声が響く、どこにでもある家庭の、普段と何も変わらない日常。
「そこ」にいる人々の中で唯一人だけ、彼らの知らぬ非日常に身を置く
男が同じテーブルに着いている。

その男、不動明。デーモン族の勇者・デビルマン。

魔王ゼノンの勅命を受け、人間社会を滅ぼすために彼はやって来た。
不幸にも彼の「宿り木」として殺された青年、不動明の名と姿を借りて…
しかし彼は同胞たちの期待に反し、裏切り者として生きる道を自ら選択した。
冷酷にして最強、デーモン族の誇りとまで呼ばれた彼が、敢えて仲間たちを裏切り
修羅道を歩む決意をしたのは、最初は唯一つの理由からであった……
たった一つだけ、男が己の命を賭けて守りたい、いつまでも傍にいたいと思ったもの。
それが今、彼に優しく微笑みかけている少女…牧村美樹であった。

美樹「…明くん? 明くんってば! もう、聞・い・て・る・の?」
明「ん…あ、ああ…聞こえてるよ。たく、朝から耳元で怒鳴るなよな」
美樹「ま、何よ! 聞こえてたんなら、返事くらいしなさいよね!」
明「へいへい…」
健作「エヘヘヘ、お熱いですねえお二人さん。もう婚約しちゃったら~?」
美樹「こらっタレちゃん! どこでそんな言葉覚えたの!」
健作「や~い赤くなった赤くなった! やっぱりお姉ちゃんは明兄ちゃんが好きなんだあ♪」
美樹「……っ く、この~~待ちなさい!!」
牧村夫人「これ二人とも、食事中ですよ!!」

年不相応にマセた弟にからかわれ、真っ赤になってそれを追い回す美樹。
その騒々しい様をパイプを咥えて優しく見つめる牧村教授と、叱りつける夫人。
何の変哲もない見慣れた光景…それが彼にとってはかけがえのないものになっていた。

人の世に、愛がある。人の世に、夢がある。この美しいものを、何としても守りたい――

デビルマンが牧村美樹に抱いた恋愛感情は、ともすれば宿り木となった不動明の
彼女への想いが強く作用したのかもしれない。しかし今となってはそんなことはどうでも
よかったのだ。美樹を守るため、と言いながらデーモン族の刺客と戦い続けるうちに、
彼の戦いは最愛の人の家族や親しい人々、そして彼らの生きるこの世界を守る
戦いへと変化しつつあったからだ。それは彼自身、無自覚なままそうなっていったのだが。

325

牧村教授「う~~む。……似てきたかな」
牧村夫人「?何かおっしゃいましたか、あなた」
牧村教授「いいや、ははは。何でもないよ母さん、コーヒーをもう一杯頼めるかな」
牧村夫人「はい。じゃあ今度は、砂糖は抜きでいいですね?」
牧村教授「あ、ああ。かまわんよ」

席を離れた夫人をチラ見しながら、牧村教授がそっと明に耳打ちする。

牧村教授「まあ…家内に似て少々口五月蝿いのが玉にキズだが…、
 明くん。美樹のこと、私からもよろしく頼むよ」
明「へっ!? ど、どうしたんですか、おじさん。改まって」
牧村教授「ふふふ…こういっちゃ何だが、君のお父さん――不動教授もきっと天国で
 喜んでくれるんじゃないかと思ってね。昔は繊細な印象のあった君も、この家に来て
 からすっかり頼もしくなったようだ。あの事故では私も大切な友人を亡くしたが……
 明くん、君を引き取って本当に良かったと思っている。だから、迷惑かもしれないが、
 これからも末永く私の娘や息子と仲良くしてやって欲しい」
明「めっ、迷惑だなんてそんな! 俺のほうこそおじさんたちにどれほどお世話になってるか…
 その…こちらこそ、よろしくお願いします…」
牧村教授「おお、そうかね! それは良かった。いやあ今だから打ち明けるんだが、
 最初に君がうちに来た頃は何というか…まるで人が変わったように目つきが鋭く
 なったような印象があったんでね。新しい生活に馴染んでもらえるか心配してたんだよ。
 まああんな体験をすれば当然だし、私の取り越し苦労だったようだ。ん、ありがとう」

夫人が置いたコーヒーカップを手に取り、再び牧村教授は新聞に目を向けた。
「人が変わった」という表現は的を得ている。何故なら今ここにいる不動明は全くの別人…
いや人間ですらない。本当の不動父子はとっくの以前にヒマラヤの山中で息絶えている。
登山中に父子がデーモン族が眠る氷の国へ転落したのは、確かに不幸な事故だろう。
不動教授はその事故により死亡した。だが…息子の不動明は殺されたのだ。
他ならぬ、人間界へ潜入するために「宿り木」を必要としていた自分の手によって。

明「おじさんたちは知らない…この俺が、おじさんの親友の息子を手にかけその顔と
 体を奪った男だということを。元は人間界に災いの種を振りまくためにやって来た
 デーモン族だということを。美樹やタレちゃんを、彼らの親しい人間たちを、
 幾度となく窮地に陥れた化物どもの仲間だったという真実を。
 俺がデビルマンの正体をもし明かしても、皆は俺に明として接してくれるだろうか…」

『公民権法』か…物好きな政治家もいるもんだぜ、と明はパンを齧りながら故郷である
ヒマラヤの奥地――地球の先住民族デーモン一族が棲む氷の国を思い出していた。
デーモンにとって人間は自分たちが氷に閉じ込められている間に繁殖した、不倶戴天の
敵であり滅ぼすべき存在である。奴らと人間が、平等に相容れるはずがない。

デーモンから見てそうであるように、人間もまた自分たちの理解を超えるもの、
自分たちより優れたものを決して受け入れはしない。両者の利害は水と油…
議論するだけ無駄。ん?だったら何故、自分は人間の側について奴らと戦っているんだ…?
柄にもなく、こんなことを考えてしまう。それもこれもこんな奇妙な法案を提出
しやがった、あの変わった人間のせいだ。なんといったか、あの総理大臣。

326 

美樹「でも剣総理って立派よね~! こんな思い切ったこと、そうそうできる
 ことじゃないわ。凛としてて意志の固そうな雰囲気だし、その上ハンサムだし☆」
明「けぇーーっ! こういういかにも弱いモンの味方でございって野郎ほど、
 腹の底は信用ならねえんだよ!」
美樹「も~~どうしてそう捻くれてるのかしらねえ、君は」
健作「いひひ…明兄ちゃん、妬いてるね?」
明「うっせーマセガキが!! おら、メシ食ったらとっとと学校へ行きやがれっ!」
健作「はあ~~い! じゃ、行ってきま~す!」
牧村夫人「タレちゃん、車に気をつけるのよ~~」
明「たく~。どいつもこいつも…」
美樹「ほら明くん? 学校へ行くのは、私たちもよ。さあグズグズしてると遅刻
 しちゃうわよ! あたし、先に行ってるからね」
明「お、おい美樹ちゃん、そりゃあねえだろ! ちょっとぐらい待っててくれよ~」

いそいそとカバンを持ち、玄関へ向かう美樹。間抜けなことに一人、まだパジャマ
姿でいた明は、急いでトレードマークである「A」のイニシャルが胸に入ったシャツに着替え、
ズボンのベルトを締める。多少慌てた様子で彼もカバンを持ち、美樹の後を追う。

牧村教授「ん、いつもの明くんだ。はははは!」
牧村夫人「本当ね、クスクス…」

美樹「明く~~ん? 早くしないと、本当に置いていくわよ」

玄関の向こうに、明に手を振る美樹がいる。彼は心の中で強く頷いて見せた。

明「(…何故もクソもねえ。俺がここにいるのは美樹を守るために決まってらあ。
 例え俺の正体を知られて美樹に嫌われたって…嫌われたってよう…俺は…)」

「バゥンッ ドッドッドッド…」

美樹「あ……」
明「一緒に行こうぜ。乗れよ、美樹」

愛用のネイキッドバイクに跨り、ヘルメットを差し出す明。
以前なら、乱暴な運転で登校する明を怒り飛ばし嗜める彼女だが――

美樹「うん♪ …明くん、しっかり掴まってるから…絶対に振り落とさないでね」
明「ああ、分かってる。美樹を乗せてる時は、安全運転ってやつに気をつけるさ」
美樹「んもう、いつも安全運転じゃなきゃダメよっ! そ・れ・か・ら。
 ヘルメットは明くんがまず被らなきゃいけないでしょう!」

いつもノーヘルで走り回る明だが、今日は珍しく腕に提げていたヘルメットを
ちゃんと被り顎紐を締めてみせた。

明「ほら、これで文句ねえだろう? やれやれ…美樹ちゃんにゃあ敵わねえよ」

後部シートに牧村美樹を乗せ、不動明―デビルマンが駆るマシンが走り出す。
登校には20分もかからないが、彼はこの瞬間が一秒でも永く続いて欲しいと
感じていた。次々と強敵を送り出す魔王ゼノン。いつかは雌雄を決さなければ
ならないだろう。果たしてデビルマンの能力で勝てるのか?
自分がやられたら、美樹とその家族、そしてこの美しい世界は一体……?

明「(美樹…俺は負けねえよ。どんなことがあっても、お前だけは俺が絶対守ってやる。
 お前がいるこの世界が…俺も好きだ。お前を傷つけるなら、人間だって許さねえ!
 その人間たちが…デーモンの俺を拒絶しても…それでも俺は―――…
 お前のために、おじさんたちやタレちゃんのために、奴らと戦い続けるよ…)」


二人が学校へ向け走り去った数秒後、牧村邸を監視する影があった――
ムササビのような姿をした妖獣、ヒムラーは静かに人間の若者へと変身する。
人間名「氷村巌」を持つこの魔将軍ザンニン配下の妖獣は、不動明と
同じタイプのネイキッドバイクに跨り不適な笑みを浮かべた……

氷村「クックック…デビルマンめ、相も変わらず小娘にご執心か…
 裏切り者の貴様がいつまでも人間の中で平穏に暮らせるものか」

「ドゥンッ!!」

ヒムラーこと氷村巌は、アクセルを捻るとすぐさま二人の後を追うのであった。

327 

***東京・埋れ木邸***

ここは閑静な住宅地にある、ごくありふれた一戸建て二階の一室。
子供用机に新聞を広げ、熱心にそれを読んでいる栗色のクセっ毛
のある少年と――何やらおかしな姿をした生物が会話していた。

真吾「う~ん……」
百目「悪魔くん、何て書いてあるんだモン?」
真吾「うん。要するに、人間以外の生物…例えば悪魔とか妖怪を、
 理由もなく仲間外れにしちゃいけませんってことかな」
百目「わあ! それはとってもいいことだモン♪」
真吾「そうだね…きっとファウスト博士や皆も、喜んでるんじゃないかな。
 皆元気かなあ……メフィスト二世はどうしてるだろう」
百目「モン♪ メフィスト二世のことだから、そんなニュースも何処吹く風で
 きっと死神屋のラーメンでも食べてるに決まってるモン!」
真吾「あははは、そうだね」

仲良く大笑いしている少年と、犬のような…いや犬と呼ぶには無理のある、
全身に目玉が付いている珍妙な生物はいそいそとランドセルを背負い始めた。
どうやら登校前らしいこの少年――埋れ木真吾、通称「悪魔くん」とおかしな
生物こと悪魔くんの十二使徒の一人、第六使徒「百目」は少し前まで、
ファウスト博士が校長を務める「見えない学校」で共に学んだ仲である。

自分が一万年に一人現れるという真の「悪魔くん」だと知らされた日から、
真吾少年は十二人の仲間たちと出会い、人間と妖怪や悪魔が平和に共存
できる世界を目指していくつもの大冒険を潜り抜けてきた。そしてついには、
人間の暮らす地上界はおろか、地獄界や桃源郷、妖精界まで支配を目論んだ
東嶽大帝の野望を阻止することに成功し、長い旅を共にして来た仲間たちとの
別れを経験して彼は普通の少年としての日常へ戻っていた。
ところがこの百目だけは、ひょっこり真吾少年のところへ帰って来たのだった。

メフィスト二世「――人を見縊ってもらっちゃあ困るなあ」
真吾&百目「メ、メフィスト二世ーっ!」
メフィスト二世「よっ! へへっ…元気にしてたかい?」

ベランダに颯爽と降り立ち、ステッキをクルリと回して逆さへの字をした口元で
微笑むシルクハットに黒マントの紳士。…の格好をした子供が陽気に挨拶する。
魔界で知られたメフィスト一世の息子、第一使徒「メフィスト二世」である。

真吾「君こそーっ! よく会いに来てくれたね…突然来るからびっくりしたよ」
百目「メフィスト二世~~あ、あ、会いたかったんだモ~ン!」
メフィスト二世「まー俺がいなくてそろそろ寂しがってんじゃないかと思ってね。
 遥々こうして懐かしい友達に会いに来てやったんだよエヘン!」
真吾「うふふふ…変わってないね、メフィスト二世。さ、あがんなよ!」
メフィスト二世「おう、う~ん…窓からこの部屋に入るのも久しぶりだぜ。
 お邪魔しまあ~~~~すっ、と! あ…そうだ百目、お前さっき何か
 ラーメンがどうだとか言ってたよなあ? …ズバリ、あるのか!?」
百目「やっぱりメフィスト二世は、メフィスト二世だモン!!」
真吾「ほんとだ。…ぷ。あ、あははははっ」
メフィスト二世「なんだよぉ~~あるのかないのかはっきりしろよう!」

328

エツ子「おー兄ーちゃんっ!! 早くしないと遅刻するって、さっきから
 呼んでるでしょ!!」

怒声と共に勢い良く部屋のドアがドバァーーンッと開け放たれた。
廊下にはまん丸眼鏡をかけた女の子が、腰に両手をあててふくれ面を
して立っている。ポカーンとした表情で部屋に佇む一同。メフィスト二世だけは
目を皿にしてその女の子を凝視しているが、彼女は気づいていないようだ。

真吾「エ、エツ子……あーっ! そうか登校前だったんだあ~!」
百目「そうだモン!遅刻すると怒られるモン!もう、メフィスト二世が
 急に来るからだモン!」
エツ子「たくー、百目ちゃんまで何寝ぼけてんのよ。メフィスト二世さんが
 いるわけないじゃな…え」

メフィスト二世の静止した視線と、彼女の視点が重なり合う。
女の子もまた、一旦眼鏡を外して丹念にナプキンで拭いた後、
再びシルクハットの少年を凝視する。

エツ子「…メ…メフィスト…二世…さん?」
メフィスト二世「エ……エッちゃん」
真吾「うわー…」
百目「二人とも目が輝いてるモン…」

ほろほろと、彼女の頬を熱い涙が伝っていく。ついに堪えきれず、女の子が
両手を広げて駆け出した。メフィスト二世はマントで浮きながら彼女に駆け寄る。

エツ子「うわーんメフィスト二世さぁんっ! どうして急にいなくなっちゃったのー!!」
メフィスト二世「すまねえエッちゃあーーんっ!!」
エツ子「二世さあ~~ん!」
メフィスト二世「エッちゃん! 俺に…っ 俺に…っ ラーメンを作ってくれーー!!」
エツ子「………ふぇっ!?」

情熱の涙を流しながら走ってくる女の子を、しっかりと抱きとめてやるのかと思いきや、
メフィスト二世は彼女の両手をガシィッ!と掴み真剣な表情でそう言い放つのだった…。

真吾「わあああ! もうそれどころじゃないよ、今からじゃ走っても間に合わない!」
百目「ど、ど~するんだモーーーン!?」
メフィスト二世「慌てなさんなお二人さん。ここに頼りになる男、メフィスト二世様が
 いるじゃねえか。…乗りな悪魔くん! 折角来たんだし、今日はサービスしてやるぜ」
真吾「本当かいメフィスト二世ー! ありがとう、助かるよ!」
百目「さすがメフィスト二世だモンー! 悪魔くん、急ごうモンっ!」
真吾「うん! じゃあ頼んだよメフィスト二世」
メフィスト二世「あらよっと! じゃあ超特急で行くから、しっかり掴まってな!」

悪魔くんと百目を背中に乗せ、ベランダから飛び立つメフィスト二世。
…が、すぐに引き帰し部屋で呆然としている女の子に微笑みかけてニッコリ笑う。

真吾「うわわっ…どうしたのメフィスト二世!?」
メフィスト二世「エッちゃん! 学校から帰って来たら、美味いラーメン作ってくれよなっ!
 さあて、そんじゃあ今度こそ超特急で行くぜーーー!!」
真吾&百目「うわああああーっ!!」

329

ベランダからメフィスト二世が飛び去り、こうして狭い埋れ木家の子供部屋には、
唖然としている真吾少年の妹・エツ子だけが残されたのであった。
パタパタというスリッパの足音を鳴らし、母・コハルが階段を上がって部屋へやって来た。

エツ子「………………」
コハル「エツ子? あら、真吾と百目ちゃんは? 一緒にいたんじゃなかったの?」
エツ子「あ…お母さん。 …はっ! ちょ、ちょっとーーーーーっ!!
 私も一緒に乗せて行ってよーーー!! ムキイイイイ!!
 お兄ちゃんばっかりメフィスト二世さんを~~っ …おぼえてらっしゃい!」

ぐぐぐぐ、と拳を握りしめ、歯軋りしながらシャウトするエツ子。
母・コハルは「変ねえ…」と一言告げて再び階段を降りて行った。
一階の居間では父・茂が二階から漂う只ならぬ怒気を感じ取り、何か閃いたのか
床下に設けられた「仕事場」へ向かっていた。

茂「むむむ! これは…いける。今日こそは良いアイデアが浮かびそうだぞぉ~!」


***町の通学路***

星郎「あ、鬼太郎さんだ! 夢子ねえちゃん見て、あそこに一反木綿さんが…」
夢子「でも星郎…一反木綿さんにしては、形がヘンよ。鬼太郎さんのお友達かしら…」
星郎「い~なあ…ぼくも空を飛んで学校に行きたいなー」
夢子「何言ってるの。星郎、さあ行くわよ(…帰りに鬼太郎さんに聞いてみようかな♪)」

星郎「お姉ちゃん早く早くー! 先に行くねー!」
夢子「あ…もうっ、星郎ったら! ふふ…鬼太郎さん、今頃何してるかしら…
 ん~でもやっぱり朝は寝床でグーグーグーってとこかしらね。いいなー」


***町の道路***

明「(…なんだ? この感覚…デーモンに近いような…)」
美樹「あら、空に…飛行機雲かしら?」

信号待ちの間、デビルマンの超感覚で空を飛ぶ謎の物体を感知する
明と、上空に目を向け指差す美樹。その後方から一台のオートバイが
迫りつつあった…

氷村「フフフ…いたなデビルマン。そして牧村美樹…」


***町の上空***

真吾「ぶる…ッ 何だろう…とっても嫌~な悪寒が…」
メフィスト二世「どうした? 風邪でもひいたのかい」
真吾「い、いや…たぶん大丈夫…だと思う」
百目「それにしてもメフィスト二世が来てくれなかったら危なかったモン♪」
真吾「そうだメフィスト二世。もしかして、何か用事があったんじゃ…」
メフィスト二世「ご名答! さすが悪魔くんは冴えてるねえ。まあまずは久しぶりに
 会えたんだし、その話は後でゆっくりするつもりだったんだが…聞きたいかい?」
真吾「手短に話せることなら、今でもいいよ」
メフィスト二世「OK! じゃ、かいつまんで話すぜ。二人が話してた公民権法
 なんだが…あれに親父もファウスト博士も興味深々でなあ。
 特にファウスト博士なんか、長生きはするもんじゃ…な~んて涙流してたぜ。
 かと思えば、これまで以上に悪魔と人間の関わり方に深い意味が生まれる
 かもしれないとかなんとか…急にまたマジな顔して暗い雰囲気になるし…
 まあ~たく年寄りどもは心配性でいけねえよなあ」

百目「メフィスト二世、見えない学校に行って来たのかモン!
 懐かしいモン…もう一度、皆と集まって博士に会いたいモン」
メフィスト二世「お、たまには良いこと言うじゃねえか百目。そうさ!近いうちにまた
 皆集まることになりそうだぜ。実は今日、ファウスト博士に一度見えない学校へ
 悪魔くんを連れて来てくれって頼まれたんだよ。他の連中にも使いが行ってるぜ」
真吾「本当かいメフィスト二世!? でも、何で急にまた…?」
メフィスト二世「ん~俺も詳しいことは聞いてないんだが、何でも近頃世界中で
 勝手に死人が生き返ってる現象が起きてるらしくてなあ」
真吾「そのニュースなら知ってるよ。黄泉帰り現象とか、時空クレバス現象とか…
 学校でも情報屋が特ダネ掴むんだってはりきってたからね」
メフィスト二世「ぶはは、情報屋かい。あのメガネ、ま~だ懲りてねえんだな。
 でもな悪魔くん。お前さんなら、今この世界に何かが起きてることは、
 何となくでも感じてただろう?」
真吾「…うん」

330 

メフィスト二世「その黄泉帰りで、地獄界も大騒ぎさ。閻魔大王も原因がさっぱり
 分からねえみたいだし、上から下まで実質業務が滞っちまってるらしい」
真吾「そう……じゃあニオウ様もとっても困ってるんだね…」
メフィスト二世「ああ。親父のところにまで、原因調査の依頼が来るぐらいだからな。
 ファウスト博士が危惧してるのは、また東嶽大帝みてえなでかいワルが復活して、
 前以上の規模で全世界征服を企んでるんじゃないかってことさ。しかも人間界
 じゃあえらく俺たちみたいなのに、寛大な法律ができそうだろう?
 どっちにも付きたくなくて、隠れてる奴らも大勢いるんだ。そういう奴らが人間にしろ
 悪魔にしろ妖怪にしろ、心底腐ってる悪い野郎に利用されないように……
 とにかく、学校が終わったら迎えに来るぜ。さあ、そろそろ到着だぜお二人さん!」

真吾「うん分かった。また後でねメフィスト二世。ありがとう!」
百目「サンキューベリマッチョ☆ だモン!」
メフィスト二世「いいってことよ。じゃあまたなっ!」

メフィスト二世は人目に付かぬ校舎裏に二人を降ろし、飛び去ってゆく。
行き先はもちろん、「エッちゃんのラーメン」が待つ(…と本人が思っている)
埋れ木家である。真吾少年と百目はメフィスト二世に手を振り、教室へ
向かった。クラスメートたちが次々と声をかけてくる。

貧太「やあ、おはよう悪魔くん、百目くん」
キリヒト「おはようございます。今日も素晴らしい朝を迎え神に感謝を…」
真吾「おはよう、貧太くん、キリヒトくん」
百目「おっはよぉーーだモン!」
真吾「あれ、情報屋は来てないの? 珍しいなあ~」

情報屋「ウッフッフッフ~! 見たぞ見たぞ悪魔くん!
 昨日、ぼくはとうとう時空クレバスから怪物が出て来るところを
 シャッターに収めることに成功したのだあっ!!」

真吾「うわっ! お、おどかさないでよ情報屋…」
貧太「本当かなぁ…ま~たいつも通りのガセネタ掴んだんじゃないの?」
キリヒト「おお恐ろしい…それが真であるならば、世界はどうなってしまうのでしょう」

情報屋「し、し、失敬な! 今度こそちゃあ~んと証拠を……あれれ!?」

情報屋がカバンから写真を取り出して見せたが、全て真っ黒で判別不能な
ピンボケ写真ばかりであった。これもまた、いつものことである。

百目「なあ~んだ、やっぱりかモン」
貧太「ほ~んと。よく毎度毎度、同じ写真ばかり撮れるもんだ感心するよ」

情報屋「ちち違ーうっ!本当に昨日ぼくは、あの身の毛もよだつ怪物に
 襲われかけたんだからっ! それでも命からがら逃げながら、写真を撮った
 んだってばあ!! …おっかしいなあ…ね、悪魔くんは信じてくれるよな!?」

女教師「はあ~い皆さ~ん。席に着いてー。ホームルームを始めますよ~」
情報屋「あ! いけね……っ」
女教師「ん! 情報屋くん、学校にはカメラなんか持って来てはいけませんと
 この間も注意したでしょう。こ・れ・は、先生が預かります。いいですね?」
情報屋「ああ…ぼくのカメラ…ちぇっ」
真吾&百目「うふふ クスクス…」
女教師「ああそうそう、埋れ木くんに百目くん。あなたたちに特別な用が
 ありますから、今日は放課後に教室に残っておいてね」
百目「え~! そんなぁ…だモン」
真吾「先生、特別な用…って何ですか?」
女教師「特別な用は特別な用です! …いいですね?」
真吾「は、はあ…」
貧太「運が悪いね~たぶん、教室の整理整頓でも手伝わされる
 んじゃない? ぼくもこないだやらされて…」
真吾「ふ~ん。何だぁ、そういうことか…」
百目「きっと今日は朝にいいことがあったから、ツケが来たんだモン」
貧太「え、いいことってなに? 教えてよ悪魔くん!」
真吾「うん。エヘヘ…実はね…」

「きりーつ! れーい!」
「おはようございまあ~~す」
「ちゃくせきー」

女教師「はい、おはようございます。では皆さん、今日も一日、
 がんばってお勉強しましょうね。…ウフフフフ…」

三角形のつり上がり型眼鏡をかけている、真吾少年のクラスの担任教師。
その眼鏡の奥の目が、ほんの一瞬だけ…鋭い眼光を放っていた――――

331 

○不動明→美樹を乗せ、バイクで学校へ向かう。彼女を守る決意を新たに心に誓う。
○牧村美樹→明と一緒に学校へ向かう
○牧村教授→公民権法の英断を喜び、明に子供たちをよろしくと告げる
○埋れ木真吾→メフィスト二世との再会を喜ぶ。彼に乗せてもらい学校へ
○百目→公民権法を素直に喜ぶ。悪魔くんと共に学校へ
○メフィスト二世→悪魔くんと百目を背中に乗せて学校へ飛ぶ
○天童夢子→空を飛ぶメフィスト二世を目撃し、鬼太郎の仲間妖怪と思う
●氷村巌→明と美樹をオートバイで尾行中

【今回の新規登場】
○不動明=デビルマン(TVアニメ版デビルマン)
人類根絶と地球支配権奪還を目論む、先住民族デーモン族の比類無き勇者。
魔王ゼノンの尖兵として人間・不動明に乗り移り牧村家へ潜入したが、そこで出会った
少女牧村美樹を愛してしまい、裏切り者の名を受け全てを捨てて戦う男。
『デービール!』の掛け声で不動明の姿からデビルマンへと変身する。
デビルチョップ、デビルキックの格闘技やデビルアロー、デビルカッター、デビルビームなどの
必殺技を駆使してデーモン族の妖獣と日夜激闘している。巨大化能力のほか、
真紅の羽デビルウィングを広げ飛行も可能、「悪魔の力」で戦う正義のヒーロー。

○牧村美樹(TVアニメ版デビルマン)
牧村教授の長女。明朗闊達で気が強く男勝りだが、基本的に誰にでも分け
隔てなく接せる優しい性格。悪い子には容赦なく平手を浴びせることから、
不良グループなどには「平手ミキ」と呼ばれている。
明に惹かれているが、素直になれず口喧嘩になることもしばしば。
明の心の支えにしてデビルマンが命を懸けて守る者。本人はデビルマンの存在を
知ってはいるが、明と同一人物だとは気づいていない。

○牧村健作(TVアニメ版デビルマン)
牧村教授の長男で美樹の弟。非常に臆病な性格で、恐ろしい場面に遭遇
すると失禁してしまうクセがあるせいで「タレちゃん」のアダ名をつけられてしまった。
明も本当の弟のように接しており、一度ある事件で明がデビルマンに変身する
ところを見てしまうがその場で気絶、本人は夢を見たと思い込んでいた。

○牧村教授(TVアニメ版デビルマン)
登山事故で死んだ不動教授の友人で、孤児となった明を引き取り家族同然に
接している。公民権法の提出を心から喜んでいる識者の一人。

○牧村夫人(TVアニメ版デビルマン)
牧村教授の妻で、教授同様に引き取った明に本当の息子のように接している。

332

○埋れ木真吾(TVアニメ版悪魔くん)
タロットカードや魔法陣の研究に日夜没頭していた風変わりな小学生。
本物の悪魔を呼び出す実験を繰り返しては失敗、という毎日のある日、
百目の案内で「見えない学校」へ招待される。そこでファウスト博士により
自分が一万年に一度現れるという「悪魔くん」であると告げられ、博士の
指導を受けて真の悪魔くんとして卒業し、「ソロモンの笛」を託された。
彼を助ける十二人の仲間、「十二使徒」を探し求め、人間と悪魔が幸せに
暮らせる世界を作るため、東獄大帝率いる悪魔軍団に立ち向かって行く。
「夢よ、届け君の心に!」が毎回の予告ナレーション後に印象的な決めセリフ。

○メフィスト二世(TVアニメ版悪魔くん)
魔界にその人在りと言われた悪魔メフィストの息子。第一使徒。
悪魔くんは当初メフィスト一世を呼び出す予定だったが失敗により
二世を呼び出すことに。皮肉屋でやや自意識過剰な性格だが腕は
確かで、まだ子供ながら数々の魔力を使いこなす。
プライドが高いせいで最初は悪魔くんに使われることを嫌がっていたが
じきにうちとけ、百目と共にほとんど埋れ木家の一員であるかの如くよく
遊びに来ている。父親のメフィスト一世と親子揃って無類のラーメン好きであり、
行きつけは魔界のラーメン店「死神屋」。悪魔くんの妹エツ子と仲が良くなり、
彼女に作ってもらうラーメンが一番の大好物。

○百目(TVアニメ版悪魔くん)
百目一族の子供で、全身目だらけの悪魔。最初にブカブカのコートを
着て街中を歩いている時に悪魔くんと出会い、彼を「見えない学校」
へと案内した。悪魔くんが使命に目覚めてからは第六使徒となる。
私生活でも悪魔くんと最もうちとけ、そのまま埋れ木家に居ついている。
語尾に「~モン」と付けるのが口癖で、臆病で泣き虫だがここぞという
時には友達のために奮起する。「ポーン!」の掛け声で全身の目玉を
飛ばして攻撃したり、相手の印象や感情を操ったりもできる。
その魔力で真吾少年のクラスメートや先生にも驚かれず学校へ通う。

○埋れ木エツ子(TVアニメ版悪魔くん)
真吾の妹。元気一杯でわりとおとなしい兄よりしっかりしている。
かなりの近眼で大きなまん丸眼鏡がチャームポイント。
家系なのか、悪魔である百目やメフィスト二世が家にいても全く
動じない。同居している百目を可愛がり、メフィスト二世には
ほのかな恋心を寄せていたりする。

○埋れ木コハル(TVアニメ版悪魔くん)
真吾の母。おっとりした性格で、真吾の「友達」に百目やメフィスト二世が
できてもさほど驚かない。居候している百目を家族同然に可愛がっている。

○埋れ木茂(TVアニメ版悪魔くん)
真吾の父。職業は漫画家だがさっぱり売れず家計は厳しい。
オカルト研究に没頭する息子を咎めるでもなく、不可思議な存在や世界に
対しても寛容で積極的に興味を示す。何かネタにならないか日々苦闘中。

○貧太(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんのクラスメートで大の仲良し。悪魔くんが「真の悪魔くん」となる以前から、
一緒に魔法陣や悪魔に関する研究を手伝っていた。
唐傘を開いて頭に乗せたような特徴的なヘアスタイルをしている。

○キリヒト(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんのクラスメート。家族全員が信心深い性格で、何かと神に祈るのが日課である。
細長い顔にほとんど線に見えるタレ目が特徴で、絵に描いたような人畜無害な少年。

○情報屋(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんのクラスメート。常にカメラを持ち歩き、特ダネを追いかけることや聞いた話を
すぐに周りに言いふらす性格から「情報屋」とアダ名で呼ばれている。本名不明。

333

○天童夢子(TVアニメ版ゲゲゲの鬼太郎第三期、ゲゲゲの鬼太郎地獄編)
ゲゲゲの森によく出入りしている小学生の女の子。妖怪「鏡じじい」に襲われた
事件で鬼太郎と知り合い友達となる。本人も鬼太郎に想いを寄せており、
猫娘と火花を散らすこともあったが、優しい性格ゆえ多くの妖怪たちと交流
している。ねずみ男にとってはマドンナ的存在。地獄を鬼太郎一行と一緒に
旅したおり、地上界へ後一歩というところで落石に当たり一度命を落すが、
鬼太郎の母が閻魔大王から贈られた自らの命を与え、生き返ることがきた。

○天童星郎(TVアニメ版ゲゲゲの鬼太郎第三期、ゲゲゲの鬼太郎地獄編)
夢子の弟で鬼太郎に憧れる小学生。人間の生活が嫌になり、河童の子供と
人格を入れ替えて河童の世界へ行ってしまったこともある。

●妖獣ヒムラー=氷村巌(TVアニメ版デビルマン)
デーモン族の最高幹部の一人、魔将軍ザンニン直属のムササビに似た妖獣。
ザンニンの密命で氷村巌に化けて明たちの通う高校へ転入して来たが、
本当の使命はデビルマンの人間界での暮らしを監視することにあった。
人間体は明のライバルのように振る舞い、何かと対抗して張り合うように振舞う。
正体を見せると黒煙を周囲に撒き散らし、闇の中から鋭い牙や爪で攻撃する。

 


『絆は種族を超えて…』-2

作者・シャドームーン

334

牧村美樹を乗せ、「安全運転」で学校へ向かう途中の不動明。
その後方から、かなりの猛スピードで追い上げて来るバイクがあった。
すれ違い様、ヘルメット越しに異様な気配を察知した明だったが、
そのライダーはあっという間に彼らを抜き去って行く。

明「(なんだ? あいつはもしや…)」
美樹「まあっ あの人スピード出し過ぎよ。まるでいつもの明くんだわ」
明「(確かに俺の走り方そっくりだな…ち、気に入らねえ)」

***名門(なかど)学園校門前***

二人が通うここ名門学園は、小中高一貫の学校である。
美樹の弟・健作ことタレちゃんもここに通っている―――

明「着いたぜ、美樹。どうだい俺の安全運転ってやつもまんざらじゃねえだろう?」
美樹「はいはい感謝してますー。私がいなくても、ずっとそれを心がけて頂戴ね」
明「かーっ! 女ってやつは…いいか、男にはな」
美樹「約束してね、明クン?」
明「う…。わ、分かったよう! や…約束でも何でもしてやるから、そう睨むなって」
美樹「ふふ。よろしい♪ さ、行きましょう。HRが始まっちゃうわ!」

にこっ、と微笑み明の手を握る美樹。その笑顔が、明には陽光よりもずっと
眩しく輝いて見えた。いつまでも、いつまでもこの瞬間が続いて欲しいとさえ彼は
思っていた……照れ臭そうに俯きつつ、美樹と一緒に校門をくぐる。

その時――。明の脳内に直接語りかける「声」が響き渡った…
刹那、全身に走る緊張感と恐怖。その身に“魔”を宿す者のみが聞くことができ、
その身に“魔”を宿す者だからこそ実感として伝わる圧倒的な畏怖。

ゼノンの声『…デビルマン…デビルマンよ…―――…来たれ、再び我が下へ…』
 
明「――ッ!!」
美樹「あ、明くん!?」

突然何かに憑かれたかのように背後を振り返る明。
その只事ではない様子を見て、驚きつつも心配そうに明を見つめる美樹。
そんな二人に、今度は「人の声」で語りかける者がいた。

氷村「よう。久しぶりだなあククク…相変わらず仲が良さそうで、羨ましいぜ」

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   /::::_- ニ - _ :::::::::::::ヾ;;;;;;;;;;i rヽニ二 ̄_ / _/-、   !;;;;;;;;| r ヽ;;;;;;;;;ー'";;/
  /:::/:::::::::::::::::::`ヽ::::ヽー';;;;;;;;;;'、マnーゝ  ー ゞ'"' _ ノ  ヽ;;;;;;r ! |;;;;;;;;;;;;/_
 i:::::  ヽ、_::::_:ヾ、::_::::::::::`ニ=;;;;;;;;ト、ゝニ ノ)     ̄     |;;;;;;|7 /;;;;;;;;;;ー'"/
 !:::イヾ、ー -`  ニ、 ヽ::::::::::::`ー=、_、、  r         ヽ、ノ;;;;;;;レ'、;;;;;;;;;;;;;/`ー
 i:::::',.レ-、   トァ、i  ';::::::::::::::::|  ヽ  `ヽ        ミ;;;;;;;;ハ ト、ニっr"
  ';:::::'.,ヾ;ハ   ヾツ  !::::::::::::::,'  ,<,   r_‐_ ニヽ    `フ゛ 〃   i
  ヽ;:::i  ノ     、- ':::::::::::::/__! ヽ、  ヽ__ ノ   /      /
   J:::', ` r っ、  ミ:::::::::::;イ:::::::::i   \   -    /      , '
   `ヽ-:ヽ ヽ- '  ノ` ーァ  !:::::::::i     \__,- "      /
    ` ̄`ヽ、_ -ヘ   ∠、 !::::::::::'、        `ー、____, - "
        i:::::レヘ レ'´/ ヘ |::::::::::::ヽ、


二人が校門のほうへ振り返ると、塀の内側に背をもたれながら腕組みをして
立っている男がいた。その男は身に付けているゴーグルとグローブを脱ぐと、
ニヤッと口元を歪めながら二人のほうへ振り向く。少し影のある表情だが、
キレ長の細目で不適な面構えはいかにもキザという感じだ。

明「てめえは…」
美樹「氷村…くん? やっぱり氷村くんじゃない! 急に学校に来なくなったから、
 心配したのよ。一体今まで何処でどうしていたの…?」
氷村「フッ…優しいねえ美樹ちゃんは。こんな俺でも心配なんかしてくれるのかい」
美樹「当たり前よ! 大切なクラスメートなんだから…」
明「貴様、何の…!?」

すでに氷村巌の正体を知る明が、激高しかけた時、彼の脳波にデーモン族だけが
感知可能なテレパシーが届く。発信者は氷村…いや妖獣ヒムラーのものだ。

氷村「(おっと待ちな。フフフ…早速闘る気かねデビルマン? 
 俺は別にかまわんぜ…貴様がその気なら本性を現してやってもな。
 だが貴様に彼女の目の前で変身して俺と戦う覚悟はあるかな…)」
明「(ヒムラー!! どういうことだ…てめえ、まだ生きてやがったのか?)」
氷村「(死んださ…だが俺はこうして再び貴様に会いに来てやったのだ。
 聞いただろう? ゼノン様がお前に寛大な提案をお考えだ……
 昼休みに一人で屋上に来な、そこでケリを着けてやる)」
明「………」
 
美樹「二人ともどうしたの? 急にだまりこくっちゃって…」

氷村「(必ず来いデビルマン…牧村美樹の命が惜しいならな!)」
明「(何? ヒムラー、それは一体どういう意味だ!?)」

氷村「おいおいお二人さん、どうでもいいが早く校門をくぐらねえと遅刻になるぜ?」
美樹「あ…大変! ほら、明くんも急いで! 氷村くん有難う! また後でね」
氷村「ああ…また後でな。美樹ちゃんに…明クンよ。クックック…」
明「(ヒムラーの野郎…何を企んでいやがる!?)」

336

***悪魔くんが通う学校の教室・放課後***

百目「あ~あ…早く帰って“見えない学校”へ行きたいんだモン」
真吾「ボクも気持ちは同じさ百目。はあ~…それにしても先生、遅いなあ」

ここは真吾少年の通う一階の教室。担任教師に居残りを命じられ、
心底気だるそうに机にもたれる二人であった。そんな気の毒な様子を、
窓の外からこっそりファインダー越しに眺めている人影が一つ……

情報屋「いひひ…このぼくを甘く見ちゃあいけませんよ~!
 こんなこともあろうかと予備のカメラは常に準備してるんだからね~
 …今までの経験上、あの二人が二人きりで一緒にいる時は必ず
 何かが起きる! きっと悪魔絡みの事件がね…ふふふふ
 ちょ…ちょ~と恐いけど、伊達に何度も恐い目に遭って来たわけ
 じゃあない。今日こそは決定的瞬間を捉えてアッと言わせてやるぞ!」

真吾「ん?」
百目「悪魔くん、窓がどうかしたのかモン?」
真吾「い、いやあ~ただ何となく誰かに見られてるような気がしてね」
情報屋「(ドキッ! 相変わらずカンが鋭いやっちゃな~…)」
真吾「う~~。今日は朝からずっとこんな調子だよ、やだなあ~」
 
ガラガラガラ、という引き戸の音を立て、担任の女教師が教室へ現れる。
普段通りの、三角眼鏡をクイッと中指で押し上げる仕草を見せる先生。

先生「あらあら二人とも、先生の言いつけ通り残ってくれてたのね。
 ウフフフフ…遅くなってごめんなさいね――百目くん、悪魔くん…」

真吾「…? え…は、はあ(変だな…先生がボクをアダ名で呼ぶなんて)」
百目「せんせえ~~帰りたいから、早く用事をすませて欲しいモン!」

先生「そうね。ハイ、それじゃあ本棚の整理から御願いしようかしら?」

真吾「うえ~…何だあ、やっぱりそういうことか…」
百目「むー。そういうのは『にっちょく』がやっとくべきなんだモン…」

先生「ほら二人とも! 早く帰りたいのならテキパキ動きましょう~♪」

真吾「はああ~~い…」
百目「(悪魔くん、こっそり魔法で片づけちゃったらどうかモン?)」
真吾「(ダメだよ百目。魔法はそういうことに使っちゃいけないって教わったろ)」
百目「(う~ファウスト博士はけちんぼだモン…)」

先生「そ・れ・か・ら。くれぐれも、魔法なんか使ってズルしてはいけませんよ?」

真吾「えっ! ええ…っ!?」
百目「せ、先生は心の中が読めるのかモン~!?」

先生「クスクス…なあ~んてね。さあ、さっさと終わらせちゃいましょ!
 動いて動いて! 先生は教壇の上を整理してますからよろしくね」

真吾「ふぅ…びっくりした。また情報屋が余計なことでも話したのかと…」
百目「ぼくも一瞬、情報屋の仕業かごるごむの仕業と思ったモン」
真吾「なんだい、ごるごむって??」
百目「あ、あはは何でもないんだモン!」
情報屋「(う~ん…ぼくって信用ないなあ、ハァ。でもいい!!
 真実を探求することこそが、このぼくの生き甲斐であり使命なのだから!
 それにしても何も起きそうにないな…いや! 今に必ず…)」

337

それから20分後―――

先生「二人ともご苦労様。おかげですっかり綺麗になったわ」

百目「ふ~いい汗かいたモン♪」
真吾「先生、じゃあボクたちはもう帰っていいですか?」
情報屋「(ぐむ~今日は収穫無しか…ちぇっ。お腹空いたし、帰ろうかなあ)」

先生「ええ、もちろん。ところで埋れ木くん…ちょっと先生の質問に答えて頂けるかしら?」

真吾「質問…ですか? は、はいかまいませんけど…」

先生「ウフフありがとう。埋れ木くん…あなたの夢は何なのか、私に話してみてくれない?」

真吾「ゆ、夢?」

先生「そう夢…あなたが一番叶えてみたいことを。埋れ木くんあなたは――…
 みんなから“悪魔くん”と呼ばれているそうだけど、そんなアダ名をつけられるほど
 魔法や悪魔というものに興味があるのかしら? それほどまでに……」

真吾「い、いや~ボクはただタロットカードの占いや魔法陣の絵なんかが
 生まれつき興味があっただけで…ただ…そうですね本当に悪魔がいるなら、
 人間と同じように悪魔の中にも悪い悪魔もいるけれど、優しいいい悪魔が
 いると思うんです。そんな悪魔たちと人間が、幸せに暮らしていけたらいいなって…
 みんなが平和に住めるユートピアが作れたらいいなって…それがボクの夢です。
 あ、あははおかしいですよね! 悪魔なんているかどうか分からないのに」

先生「いいえ埋れ木くん。ちっともおかしくなんかありませんよ…ウフフフフ…
 あなたは悪魔の存在を信じているからこそ、毎日魔法陣を描いて練習して
 いたのでしょう? 現に今、あなたの隣にいるその子は――『悪魔』ですよね」

百目「モ、モン!? …せ、先生の様子が変なんだモン~…」
真吾「先生! 突然何を言い出すんですか? 百目はこのクラスの――」

先生「あら…全身に目だらけのオバケを生徒だとでも言いたいの?
 そうよねえ。魔力でそう信じこませなきゃ、こんな『バケモノ』を人間たちが
 友達のように接してくれるはずないものねえ」

百目「…!! ひ、ひどいモン~!!」
真吾「そんな…そんなことありません!! 百目はボクの…大切な友達です!!
 (変だ! 明らかにいつもの先生じゃないのに、言葉が…?)」

うえええん、と百個の目から大粒の涙を零し泣きじゃくる百目。
すでに女教師の只ならぬ気配に悪魔くんは戦慄と警戒心を感じ取ってはいたが、
目に見えない「言葉の魔力」によって教室内は支配されているかのようであった……
女教師は再び中指で眼鏡を押し上げる仕草をすると、教壇に立って二人を見据える。

先生「埋れ木くん…いいえ、悪魔くん。あなたの夢…共存共栄論は中々素敵だわ。
 でもあなたは間違っています。この世界はより優れた力を持つ者にこそ委ねられる
 べきなのですよ…愚かで! 脆弱で! そのくせ好戦的でどうしようもない生物。
 そんな悪魔よりも遥かに劣る下等な人間に、地球を支配する資格はないと覚えて
 おくがいいわ。元々この地上は…『我ら』のモノナノダカラ…ウフフフフフ」

真吾「ぐ……お…お前は先生じゃ…(こ、言葉が出ない!)」
百目「あ、悪魔くん? 悪魔く~ん! どうしちゃったんだモ~ン!?」

先生「――百目くん。あなたも悪魔なら、人間がいなくなればいいと思ったことは
 ないかしら? あなたの一族が、風前の灯火となっているのは誰のせい?
 地上から人間が消え悪魔だけの世界になればもう誰もあなたを『バケモノ』
 と呼ぶ者はいないわ…穢れた人間から『ワレワレ』の地上を取り戻すのよ…」

百目は涙と鼻水を拭い、キッと女教師を睨み返すと、真吾少年を守るように
彼の前へと躍り出る。

百目「人間には…人間には…ひどいことする人もいるけれど…
 それに負けないくらいいい人だってたくさんいるモン!
 悪魔くん、エッちゃん、ママさん、パパさん、貧太くん、キリヒトくん、情報屋…
 それにもっともっとたくさん! ボク、みんなのこと…大好きだモン!!
 ボクは悪魔くんの十二使徒だモン! 悪魔くんを元に戻すモン、ポーン!!」

338

百目は全身から目玉を飛ばして「女教師の姿をした者」に攻撃を試みたが、
なんと彼女は御はじきでも弾くように、全ての目玉を指先で弾き返した。
弾き返された目玉は逆に百目に命中し、彼は教室後方の用具棚まで吹き飛ぶ。

百目「わあーーーーっ」
真吾「…ひゃく…目…!!」
情報屋「(あ、あわわわ…ど、どーなってんの!?)」

先生「哀れな…所詮は子供か。フフフ子供というのは自分に都合のよい夢
 だけを信じ、希望的観測で事を見がちなもの。これから大人になるため
 にも少しだけ…現実というものを目の当たりにさせてあげましょう……
 さあ二人とも…―――私の目を、よお~~~く見なさい。ウフフフ」

女教師の眼鏡の奥から覗く目が、妖しく光り始める。真吾少年は体が金縛りに
あったかのように硬直し、目を閉じることもできなくなっていた。

百目「悪魔くん…見ちゃ…ダメだモン」
真吾「うう…!!」

先生「さあ心の目を逸らさずに…頭の中に広がる光景を見てごらんなさい。
 これが…人間たちの行き着く先…近い将来、起こることになる未来」

そこには。生前の罪を裁かれ、亡者が永遠に苦しむという地獄よりも、さらに
おぞましく恐ろしいこの世の地獄絵図が広がっていた――――
次々に異形の怪物へと変貌していく人々。人間社会に渦巻く恐怖と同胞への
猜疑心、憎悪、そして血の制裁。狂気に取り憑かれた人間たちが、悪魔狩りと
称して同じ人間を虐殺し、殺し合う姿だった……
炎に包まれる家々、響き渡る阿鼻叫喚。
その中には、彼の見覚えがある家が……狂信の徒によって焼き尽くされていた。

真吾「ウワァァァワァァァァ―ッ!!!」
百目「あ、悪魔く――ん!!」

悪魔である百目だけは、この強烈な精神波攻撃にかろうじて耐えることができたが、
すでに敵の術中に陥り、メフィスト二世がくれた魔除けの風呂敷マントも今はなく、
真吾少年の精神は抵抗虚しく深い、深い闇の底へと誘われていった……。

先生「ははははは さしもの悪魔くんも、ソロモンの笛と十二使徒がいなければ
 他愛の無いものだ。悪魔くんは我らデーモン族がもらいうけた――っ!!
 グ、グ、グ、グ、グ、グエエエエエエエ―ッ」

二人の目の前で女教師が突然苦しみ始める。髪を振り乱し、喉を激しく
掻き毟り、人のそれとは全く異質な嗚咽を漏らしている………
やがて彼女は糸の切れた操り人形のように、カクンッと教壇から崩れ落ちた。
そしてそこには、金色の長い髪を持つ、西洋人形の頭部に似た「巨大な顔」に、
人間の手足が生えている『バケモノ』が立っていた―――

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         ((,,、、(、,,
        _,,, -'''" ミ 彡,,⌒ミ
      彡      ミ  ⌒ミミ
     彡  / ノノ   )) )  ミミヽ
   彡  ノ/ンノノ )ノノノノヽヽヽ、`ヽ_
  彡 // //彡彡ノノノノノ( ヽ `ーミ、      ________
   ノノノノノイ(、ノ,_/ノノ '_,,,八( ( ヽヽ(ヽヽ、,,_ノ  ( 
   ノノ フノノ/`く,◎ゝ /,◎,フ )、 ヽヽ、) `ー- '   ) この“宿り木”に
   /ノレ ノ( ヽ、 ~ 、.,! ,~ 彳ノハ ヽ"''ヽ、    ノ  もう用はない…
  ノ /ノ| )ノノ`\ ゝェェァ' / ノ((| | )``ミミ、   ヽ、________
   /ノ { l .ノ ノヽ)\____/ノ 八` l .} (    `ヽ
   ((  |( (  )ノヽヽ((( / ((( ノ/ ヽヽ
    ) 〈、ウ    }   '   {  ) (ィ,,〉  ) )
           {   Y   }       (
          |   ll   |        ヽ
             l   八   l
            〉 .〈  〉 〈
             |.  l  |  l
            | ノ  | |
           | .{   } .{
           / |    (_ ヽ、
         occO     `Ccm


サイコジェニー「さあ私と共に来るのだ…“悪魔くん”よ」

金色の輝きを全身から放つ妖獣サイコジェニー。その等身バランスの不均衡な姿
とは裏腹に、軽快な身のこなしで宙に舞うと、半ば放心状態にある真吾少年を
抱え上げ、何処かへ去ろうとする。が、そうはさせじと百目が進路を塞ぎ立つ。

百目「お前、悪い悪魔だモン!! 悪魔くんは渡さないモン!!」
サイコジェニー「はははは まだ分からぬか。そのような未熟な魔力でこのサイコジェニー
 に立ち向かうとは…噂に高い十二使徒、その一途で哀れな勇気だけは褒めてやろう!」

バシャ!!
突然、窓から飛び込んで来た人物が、サイコジェニーに向けてフラッシュを焚きシャッターを切った。

サイコジェニー「ぬう?」
百目「じょ…情報屋、いたのかモン~!」
情報屋「と、とったーっ! ついに…ついに証拠写真をモノにしたぞーっ
 ちょっと漏らしかけて腰もぬぬぬ抜けそうになったけど、ぼくだって悪魔くんが
 教えてくれた勇気くらいあるんだから! …てあれ、この怪物どっかで…??」
サイコジェニー「はははははは」
情報屋「あ…あーっ! おおお思い出した~…こいつだ、こいつだよ昨日ぼくが
 襲われかけたのは!! こいつが時空クレバスから現れて先生に…
 ねっ、百目くん。ぼくの言葉にウソはなかっただろう。くう~嬉しい!」
百目「喜んでる場合じゃないモン~~っ」
情報屋「そ、そーだった!! ひえええ~~っ」
サイコジェニー「さっさと家に帰っていれば、今夜も甘い夢、スイートドリームが
 見れたものを…自ら現実の恐怖に飛び込んで来るとはバカな子だ。
 かわいそうだが、見られたからには今度こそ生かしておけぬなあァ~っ!!」

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   ┌===二7i       力 ヾ
    l ヽ~ u < |     ┼
   ( (')-(ン )─わl      | こ
.    | "' ⌒ u , ┴ー─-、         
    l__ ι /:::::::Θ::::::::::ヽ  力 ヾ
     屮-`,/|l::Θ::::::Θuヾヽ゛'┼
    /n\,合、/!u(・);;;::(・)::::|:::| | こ
  ゛< ノ( 弓 n. リ::  ゜゜`  ::u|:::|
    ヽ_ア ノ::弓ヘ_ '-'つ__,/"

サイコジェニー「百目一族の子よ。お前のようなか弱い生物は、来るべきゼノン様が
 君臨なされるデーモン族の世界ではどのみち生き残れぬ…そこのバカなメガネと一緒に、
 私が始末してあげよう。ではさらばだボウヤたち…探偵ごっこは来世でやりたまえ」

サイコジェニーが巨眼から奇怪な虹色の光線を二人に放つ。

幽子「照魔鏡――っ!!」

その時、窓から小さな影が二人の前に飛び込み、サイコジェニーの光線を防いだ。
いや、キラキラと眩い光を放っている「丸い鏡」の中へと光線は吸い込まれていくのだ。
その不思議な鏡――魔力を封じる照魔鏡を手にした小さい女の子が、ちょこんと
二人の前にある机の上にのっていた。

百目「幽子ちゃんだモン!」
情報屋「ははは…はひひ ゆ、幽子ちゃん? 来てくれたんだあー…あはっ」
幽子「百目ちゃん、情報屋さん、大丈夫?」
豆幽霊たち「ウ~チ~の~ゆ~うこちゃんは がんばりや~さん~♪」
サイコジェニー「私の魔力を封じるとは小癪なァ…小娘、お前も十二使徒か!
 小うるさい者どもよ、ならば真の力というものに触れてみるがいい!」

サイコジェニーの両目が再び妖しく光り、全員に強烈な精神波を送り込もうとする。
百目と幽子は死には至らないだろうが、情報屋がこれを食らえば廃人は免れないだろう。

又五郎「そ~はさせないんだな! 万遊自在玉よ力をーっ!!」

窓の外には、なんと毛むくじゃらの赤鬼がいた。その鬼が教室へ向かって投げた
白い玉が幽子の照魔鏡の何倍も眩しい閃光を放つ。

幽子「きゃっ!」
百目「わあ~~~眩しいんだモン~!」
情報屋「ひええええええ」

サイコジェニー「グウ~~っ うぬ…閻魔大王の宝玉か!(ちい、厄介な…)」
又五郎「うおおおおおーっ!」

怯んだサイコジェニーに筋骨隆々たる体躯を誇る赤鬼が、渾身の力を込めて
殴りかかる。――が、身軽なサイコジェニーは宙を舞ってそれを難なくかわすと、
窓のフチに一旦着地してそれを踏み台に空中へ飛び上がり、奇妙な呪文を
唱え始めた。すると空中に渦巻き状の穴が出現し、その中へ真吾少年
もろとも飛び込んでしまう。

又五郎「…しまった!!」
百目&幽子「悪魔くーーーん!!」
サイコジェニー「ははははは 地獄からの使者よ、遥々ご苦労だったな。
 だが見ておれ…一万年に一度現れるというこの少年を使い、この世に
 もう一つの地獄を造り上げて御覧に入れよう! 救世主悪魔くんは、
 デーモン族の救世主となり、人間どもの歴史に終止符を打つのだ!!」

不快な高笑いを遺し、悪魔くんを奪取したサイコジェニーは時空クレバスの
中へと消えた――

341 

情報屋「う、う~~ん…」
幽子「情報屋さん、しっかりして」
百目「…やっぱり気絶しちゃってたのかモン」
又五郎「どーら、オラにまかせてみい~そうら!」
情報屋「は…! ぼくは一体…う、うわああああおお鬼ぃ~~(ガク☆)」
百目「あらら、今度こそ白目むいて完全に気絶しちゃったモン」
又五郎「男のくせにしっかりせんかい~! な~さけない小僧っ子だな~」

百目「ところで、おじちゃんは誰だモン?」
又五郎「おじちゃんはねえ~だよぉ。オラ、閻魔様の使いで悪魔くんと鬼太郎を
 見えない学校へ連れてくように言いつかっただけなんだな~」
百目「キタローさんって…あの有名な人かモン!?」
幽子「そうよ。私も霊界に里帰りしてて、途中で又五郎さんと出会ったの。
 メフィスト二世さんのお父さんが調べていくうちに、今世界中で起きてる怪現象の
 中には悪魔たちや妖怪を使って悪いことしてる人たちが何人かいるらしくて…」
又五郎「そん中には、前に地獄で悪さ働いた奴もいてなあ~。だけんども今
 動いてる奴らの後ろには閻魔様でも簡単に手を出せない大物がいるみてえ
 なんだな~。そうでなくても亡者が勝手に生き返る事件のせいで、オラたちも
 目が回るような忙しさで……ま~さか悪魔くん本人が攫われるとはな~」
幽子「そこで、メフィストさん一人じゃ大変だから、私たち十二使徒と悪魔くん、
 それにゲゲゲの鬼太郎さんに協力をお願いしてって閻魔様が、ね」
百目「分かったモン…行こう、幽子ちゃん! 悪魔くんを助けるためにも
 キタローさんに会うべきだモン!!」
幽子「ええ、行きましょう。でもその前に、情報屋さんをお家に送ってあげないと」
百目「じゃあボクがおぶっていくモン!」
幽子「それじゃ又五郎さん、後で鬼太郎さんのお家まで案内お願いね」
又五郎「ま~かせるんだな~。それがオラの大事なお勤めだかんな~!」
百目「あ…、そういえばボクたちも今日、メフィスト二世が迎えに来てくれる
 はずだったんだモン」
幽子「え、そうだったの?」
百目「でも来なかったモン…悪魔くんが大変なのにもうっだモン!
 どうしたんだモン~~~メフィスト二世~~!?」

***見えない学校***

悪魔くんがサイコジェニーに拉致される少し前――
メフィスト二世はあの後一目散に埋れ木家へ戻ったが、エツ子が帰って来る
まで待つのに退屈して「ちょっくら」ここ『見えない学校』へ来ていた。
すでにファウスト博士の非常呼集を聞き、百目と幽子を覗く十二使徒たちも
それぞれの故国から久しぶりに学校へ集まっている。

『見えない学校』はその名の通り、通常は強力な結界で守られた異空間に
存在し、ここへ出入りできるのはファウスト博士とメフィスト老や悪魔くんなど
関係者と生徒である十二使徒の悪魔だけである。
西洋のレンガ造りの城塞に似たこの学校は、実は建物自体が自分の意志を
持っている魔導生命体であり、円錐状の屋根には外部からの侵入者を監視
している“魔眼”がいくつか設けられている。また屋根の頭頂部から射出・展開
する複数のプロペラで飛行可能で、決戦時には東嶽大帝の潜む魔界へ突入
するため十二使徒を運ぶ移動要塞としても活躍して来たのだ。

342

メフィスト二世「ふあ~あ…遅せえなあ、幽子のやつ」
ファウスト博士「ほっほっほ いやあかまわんよ。幽子ちゃんも久しぶりの里帰り
 じゃからのう。中々名残惜しかろう。どうせ悪魔くんと百目もまだ揃っておらぬ
 ことじゃしな。それから、今日はもう御一方この見えない学校へ招待する予定なのじゃ」
こうもり猫「へぇ~どなたでゲスそれは? ファウスト博士~勿体ぶらずに教えて
 くださいよぉ~。あ、ヨイショぉ!」
鳥乙女「あたしも知りた~い! ねえファウスト博士、早く教えて教えて?」
象人「パオ~わしも知りたいんだゾウ~!」
家獣「バウーーーっ」

ファウスト博士「ふふふ…それはのう、幽霊族の末裔ゲゲゲの鬼太郎くんじゃ!」

メフィスト二世「ほほ~ あの妖怪ポストに手紙を出せば、何処でも
 来てくれるってもっぱら評判の鬼太郎サンかい…」
鳥乙女「すご~いっ! 有名過ぎるくらい有名な男の子ね。
 あたし、一度でいいから会ってみたかったんだ~♪」
こうもり猫「ま、俺らの間でその名を知らない野郎はモグリでやんすねえ。
 ゲゲゲの鬼太郎大先生、見えない学校へようこそ~あ、ヨイショぉ!」
象人「早く会ってみたいんだゾウ~!」
サシペレレ「ボクたち十二使徒と、友達になれるかなあ?」
ヨナルデ「んむ! 鬼太郎くんは妖怪と人間の幸せのために戦っている
 のである。彼にもわしら十二使徒に劣らぬ、心と心の絆で固く結ばれ
 ている仲間たちや友人が、大勢いるのである。即ち、悪魔と人間の幸せ
 を願う悪魔くんや我々と、友達になれないはずはないのであ~る!」
赤ピクシー「さすがガクシャ! いいこと言うね」
青ピクシー「言うね! トモダチ、みんなトモダチ♪」
家獣「バウ~~♪」
メフィスト二世「で、そこのおっさんたち。黙って笑ってねえで何か反応しろよ!」

メフィスト二世がステッキを向けた先には、ファウスト博士を囲んでわいわい
話してる連中とは対照的に、教室の隅で不適に笑うシニアな方々。
狐のような生物が、ほろ酔い気分で赤くなっている着物の老人と酒を
酌み交わしている。その横では、メフィスト二世と同じ格好をしたシルク
ハットの老紳士が、ズルズルと美味そうにラーメンをすすっている。

ユルグ「フッ…ガキには分からんさ。『男というものはあまり喋るものではない…
 両の目で結果だけを見届ければよいのだ』という然る高潔な戦士が残した
 偉大な格言を知らんのか? …ヒック」
妖虎「わっはっはっは! とにかく、珍しい来客に乾杯じゃ! …ヒック」

メフィスト二世「誰だよ、んなアホなこと言ったやつぁ。喋らなきゃあ、
 何考えてやがんのか全然分かんねーじゃねえかっ! …てダメだこりゃ。
 なあ親父ィ。あんたも死神屋の出前ばっか食ってないで何とか言ったら
 どうだい! 親父の仕事なんだぜ、元々…それを俺たちがだなあ」

343        ┏━━━━━┓
        ┃ 〓〓〓〓 ┃
        .┃〓〓〓〓 ┃
         ┃〓〓〓〓┃
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        ミ|、゚冫'<゚ ノ ノノヾ 
        ミ| | :i´\ ノ/ノヾ
        ノ、ヽ.し'⌒:| //ノ/ソ、
        /ソ .|:   ´/ソノヾヾ、
        /ノ.|:__,/ソソソヾゞ
         ヽ|ミ|ノ   ヽ

メフィスト老「セガレよ…知らんのか? 『男は黙ってラーメン食うべし』
 という尊いメシアの残した格言を! というわけで邪魔せんでくれい」
メフィスト二世「だー! 知らねえよそんなん。しかし男は黙ってラーメン
 か…うん、一理あるな、うん。親父、俺のぶんも出前取ってくれよ!」
メフィスト老「こやつめ! 血は争えぬのう…ふふふふ」
メフィスト二世「わはははは親父にはかなわねえよ」

鳥乙女「…ったくぅ~バカみたいね!」
こうもり猫「本当にまあ…“ラーメンマン二世”とでも改名したらどうですかねえ」
ファウスト博士「メフィスト二世おぬし…そんな悠長に構えていてよいのか?
 もうそろそろ、悪魔くんたちが迎えを待っている頃ではないかのう」
メフィスト二世「おっといけね! 二人とも博士たちに会えるの楽しみに
 してるんだっけか…じゃあ行って来るぜ。親父、ラーメン残しといてくれよなっ」
メフィスト老「ああ心配致すな。メフィスト家に恥じぬよう、立派に役目を
 果たしてこい。(ムフフ…バカめ! このワシが目の前のラーメンをみす
 みす平らげずにおると思うてか。まだまだ青いのう…フフフ)」
メフィスト二世「大袈裟だなあ親父は。迎えに行くだけだよ、あらよっと!」

マントを広げて窓から飛び立つメフィスト二世。鳥乙女たちが手を振って見送る。
しかし何故か、普段ならロケットの如くすっ飛んでいくのに勢いがない。

メフィスト二世「な…なんだ…やけに体が重い…?」

鳥乙女「早くみんなを連れて来てね~待ってるわよ!」
こうもり猫「あ…りゃ? メフィスト二世のやつ、フラフラしてるでやんすよ?」
サシペレレ「ホントだ…どうしたんだろう。あ…危ない!」
鳥乙女「きゃあ! メ、メフィスト二世~~どうしたの、何があったの~!?」

力無くフラフラと飛んでいたメフィスト二世は、やがて失速し、見えない学校の
校庭に墜落してしまった。それと同時に、見えない学校にも異変が起き始める…

こうもり猫「うわわ!? じ、地震か~~っ」
ファウスト博士「この音は地震ではない…見えない学校が苦しんでおるのじゃ!」
メフィスト老「信じられぬ! 結界を裂いて見えない学校ごと我々を……
 ――――喰 ら っ て お る の か !?」

メフィスト二世「ぐぐ…どうなってやがるんだ! ち、力が入らねえ…」
メフィスト老「むう? セガレよ~~し、しっかりせい!」
鳥乙女「…何だか…あたしも…」
こうもり猫「と、鳥乙女~しっかりしろよ! あああれ? …何だこりゃ…
 急に…立てなくなって…あ、ヨイショぉ~…あらダメだぁ」
サシペレレ「う、うわあああぁぁ~…」
象人「く、く…苦しいゾウ~!」
家獣「バ、バアウウウウ~~っ」
ヨナルデ「はひいぃ…こっこれはあ。な、何者かに魔力を吸い取られて
 いくようであ~る」
赤ピクシー「そんなあ…見えない学校は悪い人お断り!」
青ピクシー「お断りったらお断りぃ~~…ああああ…」
ファウスト博士「バカな!! 見えない学校の結界が破られるとは…?」
メフィスト老「グ、グゥ~ム…強力な…とてつもない力を持つ者以外考えられぬ!」

344 

見えない学校の結界を押し破り、異空間上空に出現した巨大な黒い影。
それは生きている気体のように広がり、瞬く間に学校全体を飲み込んでいく。
魔導生命体である建物と共に、そこにいる全ての生命が、その影に吸い上げ
られていこうとしている…突然、影の声と思しきものが校内に響き渡った。

???「フフフフフ…グァハハハハハハ …情けない。これが魔界にまで乗り込み、
 東嶽大帝をも滅ぼせし十二使徒だとは……悪魔の本分を忘れ、悪魔が最も
 唾棄すべき愛や友情などというものに堕落した者ども……
 …嘆かわしい…実に!! 嘆かわしいぞ!!」

ユグル「こ…この声は?」
妖虎「ぐふうううう…!! く…く…何という耳障りな声じゃ!」

???「この私の声が耳障りとは…ククク…キサマ達はもはや悪魔とは
 呼べぬなあ~! まあよいわ…見えない学校のエネルギー、中々に
 素晴らしい…礼を言うぞ十二使徒よフフフ…だが足りぬ!!
 まだまだこんなものでは…あの悪魔六騎士たちに匹敵するパワーは
 到底補えぬ…キサマ達のその魔力とエネルギーを全て捧げよーっ!!」

ファウスト博士「あ…悪魔六騎士じゃと! ソロモンの笛を…!」

悪魔くんが十二使徒たちとを繋ぐ、大切な音色を奏でるソロモンの笛。
古代バビロン王が未来の世の平和のために遺したと言われる宝物が、
黒い影から伸びる「手」を象った気体物質に奪い去られた。

???「これが正しき心の持ち主を奮い立たせ、悪しき心の者をも
 改心させるというソロモンの笛か…これも頂いていくぞ……
 我が配下の者達を、次々と友情パワーなどというくだらぬ絆とやらに
 篭絡せし忌わしきもの…――…我が宿敵どもが最も好みそうな笛よ…」

ファウスト博士「ソロモンの笛は、悪魔くんにしか渡せぬ!!
 この命にかえても断じておぬしのような邪悪な輩に渡してなるかーっ!」
メフィスト老「その通りじゃ!!…お前が何者かは大体想像がついておる…えやーっ!」

ファウスト博士とメフィスト老は、力を奪われ横たわる十二使徒をかばうように
残った魔力を振り絞った。二人の魔法攻撃が黒い影に炸裂するが―――。

???「フハハハ…バカめえ~っ! わざわざ私に糧を与えるとはな…
 魔界に聞こえし悪魔メフィストも老いたもの…それほど死にたいか!!
 …いや…キサマらは死にすら値せぬ。この私の中で未来永劫糧となれ!!」

メフィスト老「ぐわあああ~!! …こ、これほどとは…お、おわあ~っ」
メフィスト二世「お、親父…!! うおおお…わああああーっ」

メフィスト親子と十二使徒全員が、手を象った気体に捕獲され、見えない学校
上空で不気味に笑う黒い影に吸い込まれていく!!

ファウスト博士「ぐ…う…すまぬ、悪魔…くん…(ガクッ)」
???「…フン…こやつは人間か。ついでにキサマのカスのような魔力も
 貰い受けたが、トドメは差さぬ。儚き人間よ…そこで野たれ死に、朽ち果てよ」

突如として来襲した謎の黒い影により、ファウスト博士の『見えない学校』は、 
こうして十二使徒もろとも魔力の源を奪い尽くされ、物質世界――現世に
無惨な姿を晒すこととなった……

???「ハハハハハハ…一緒に飲み込んでやった十二使徒は全員揃っては
 いなかったようだが…それでも私の予想以上のエネルギーを手に入れたわ……
 私の中でこやつらの生命と魔力が糧となり、結集する!!
 これで…こやつらを統率する“頭脳”さえ手に入れば…私は再びこの現世に
 おいて体を成すことができる。超人界に君臨する――悪 魔 将 軍 のなッ!!
 ククククク…フフフハハハハァーーーッ ハァーハハハハ!!!」

345 

黒い影は―― 一瞬、禍々しい巨大なコウモリの羽を広げたような形となり、
やがてその姿は人型となって猛り狂う。そして、気体の竜巻に変わり空に消えた。
後に遺されたものは、瓦礫と化したレンガの建物と倒れている老人が一人。
そこへ一陣の風が吹き、忍装束を纏った男たちが現れ老人を発見する。
                    ,ヘ、
                    /;;:::ヽ
                   /;;;;;:::::\
                  ,ノ;;;;;;::::::::::::ヽ,
                  /;;;;;;;;;;;;:::::::::::::.ヽ
                 ;!;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::;.\
                 /;;;;;;;; ,,_;;;;:::::::::::::::i::::::i
____            i;;;;;;;;:/ `-、;:::::::::::ム::::|
ヽ、.   `ヽ、.         l;;;;;;;〈,,'´  .,, ';''ー--i|
   ヽ    \,       .;i;;;;;;;:lヽi、____ ;, ・_‘ノ
    \  ヽ. `ヽ、  ,_」;;;!;;;;;::| `ー-‐´~Kワj!
―‐--‐~ヽ、  `ー‐-`ー^>〉ゝ;;;;;;;::l     jl  /
`ヽ、  ー‐-ゝ―‐‐'''';;ニ`゙, .i´\;;;:.ヽ `ー--´ /
   ヾ‐-,,__,;:-‐~´,-‐‐<`ヽ、ヽ ;::\,-‐、/
           ,;'";: l:::::::`>、, ヽ、\_.::ー〈

ニンジャ「うぬっ…手遅れでござったか…。ご老人、しっかりなされい!」
ファウスト博士「うう…どなたかは知らぬが、頼む…こ、このことを閻魔大王に…」
ニンジャ「委細承知。拙者は正義超人軍、超人警察隊のザ・ニンジャと申すもの…
 上司からの任を帯びて“あれ”の復活を阻止すべく手がかりを追って来ました。
 我々の力が及ばずあいすまぬ…あなただけは責任を持ってお助け致す!」
ファウスト博士「正義超人…? で、ではあれはやはり…ぐう!」
ニンジャ「お前達、この方に急ぎ然るべき手当てを施し、医療施設へ搬送せい!」
超人警察隊「はは! ニンジャ殿!」

ザ・ニンジャの指揮の下、超人警察隊の救護班は素早く行動を開始する。
ファウスト博士の応急処置を終え、ヘリで彼を乗せて飛び立って行った。

ニンジャ「さてと…ここが見えない学校…の跡地でござるか。無惨な……
 悪魔超人時代に風聞で耳にしたことはあったが…よもやこのような形で
 見えるとは。皮肉にも“あれ”の襲撃で拙者たちにも見えるようになったか…」

ニンジャは残った部下たちに命じて、瓦礫と化した見えない学校の調査を始めた。
 
ニンジャ「まずは現場の状況を整理してアタル殿――ソルジャーに報告せねば。
 フフフ…因果なものよ。彼と超人警察隊を発足してからというもの、さして大きな
 事件は起きておらぬが…最初の“デカいヤマ”があの恐怖の将の捜索とは……
 これも一度は己の技を悪魔の所業に委ねた拙者の業か…
 (ソルジャーよ…元よりこの任務、命を賭さねばならぬこと、覚悟はできている。
  お主に魅せられチームに入り、お主の弟により今一度授かった命だ…悔いはない!)」

346

○不動明→ゼノンの声を聞く。ヒムラーが待ち受ける屋上へ
○悪魔くん→サイコジェニーに誘拐されてしまう
○百目→又五郎鬼の案内でゲゲゲハウスへ向かう
○幽子→照魔鏡でサイコジェニーの攻撃を防ぐ。百目と一緒にゲゲゲハウスへ
○又五郎鬼→閻魔大王の万遊自在玉でサイコジェニーを退ける
○ファウスト博士→悪魔将軍に魔力と生命エネルギーを奪われ重体に
○メフィスト老→魔力、肉体ごと悪魔将軍に吸収されてしまう
○メフィスト二世→悪魔将軍に吸収されてしまう
○ユルグ→悪魔将軍に吸収されてしまう
○ヨナルデパズトーリ→悪魔将軍に吸収されてしまう
○ピクシー→悪魔将軍に吸収されてしまう
○妖虎→悪魔将軍に吸収されてしまう
○家獣→悪魔将軍に吸収されてしまう
○象人→悪魔将軍に吸収されてしまう
○鳥乙女→悪魔将軍に吸収されてしまう
○サシペレレ→悪魔将軍に吸収されてしまう
○こうもり猫→悪魔将軍に吸収されてしまう
○ザ・ニンジャ→超人警察隊を率いて見えない学校へ駆け着ける
●氷村巌→不動明と思念波で会話、屋上へ誘い出す
●サイコジェニー→悪魔くんを精神波攻撃で昏倒させ奪い去る
●悪魔将軍→見えない学校を襲撃。ソロモンの笛とメフィスト老及び
         十二使徒全員を吸収して空に消える。

347

【今回の新規登場】
○ファウスト博士(TVアニメ版悪魔くん)
『見えない学校』の校長先生で、伝説的魔術師。真吾少年を探し求めて
いた一万年に一度現れるという救世主『悪魔くん』と認め、薫陶を授けた後
卒業の証としてタロットカードとソロモンの笛を渡した。魔術の歴史書によれば、
博士の父親であるファウスト一世は悪魔を呼び出したがその悪魔に八つ裂き
にされたという。魔界や霊界にも広く知られる人物であり、閻魔大王や
メフィスト老とは旧知の間柄。東嶽大帝を倒して平和が訪れたのち、
悪魔くんのソロモンの笛は再びファウスト博士の元で保管されることとなった。

○メフィスト老(TVアニメ版悪魔くん)
メフィスト二世の父親で、魔界にその人ありと謳われた大悪魔。
トレードマークのシルクハットにマント、ステッキなどは息子と同様のデザインを
愛用し大好物はもちろんラーメン。魔界と現世を行き来できる魔導カーも
持っている。真吾少年は一番最初に彼を呼び出そうとしたが、本人は召喚に
応じたものの腰痛で引退を宣言、息子の二世に任せて消えてしまった。
現役は退いているがここぞという時には力を貸してくれる。

○ユルグ(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第二使徒。
「お稲荷様」のような愉快な外見とは裏腹に、寡黙な性格でかなりの
魔力を持つ実力者。「オーム・エッサム・コーン!」の掛け声で様々な
バリエーションを持つ狐火を飛ばして攻撃する。

○ヨナルデパズトーリ(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第三使徒。
古代の文献や魔術書に詳しく、強敵と戦う時にはその知識が頼りと
なるみんなの知恵袋。悪魔くんや仲間から「ガクシャ」と呼ばれている。
「~である」が口癖で目玉の親父に声質が似ているらしい。

○幽子(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第四使徒。
幽霊族の遠縁(?)のような女の子で見た目は人間の幼女にしか見えない。
悪魔の魔力を吸収できる『照魔鏡』を持っている。初対面の相手には極度の
恥ずかしがり屋でオドオドしてしまう。お目付け役なのかお供なのか、豆幽霊
という小さくて愉快に話す低級霊の集団が常に寄り添っている。

○ピクシー(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第五使徒。
手の平サイズにしか満たない小鬼の妖精で、赤ピクシーと青ピクシーが
常にセットで一緒にいる。秘伝の薬を調合して怪我を直してくれる。

○妖虎(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第七使徒。
普段は中華風の着物を纏った柔和な老人だが、ひとたび怒ると獰猛な
虎の化身に変化して口から火炎を吐く。同じ火術に長けたユルグとコンビで
戦うことが多く、大の大酒飲みで以前は「世界一美味い酒」を捜し求めて
世界中を旅して回っていたこともある。

348

○家獣(かじゅう)(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第八使徒。
たくさんの丸い窓を持つ、パイナップルのような果実に手足が生えたような
姿をしている。体の大きさを自在に変えることができ、巨体から搾り出す
怪力で大型の敵と戦ったり、体内に全員を格納して空を飛べるほか、
水中へも潜航可能。太陽光を全身の窓から吸収して一気に放射する
という派手な幻惑攻撃も得意としている。

○象人(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第九使徒。
頭に三角の帽子をのせた、ゾウの頭部に人間型の体を合わせたような
姿をしている。大変な力持ちで足で地面を踏み、地割れを起こせる。

○鳥乙女ナスカ(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第十使徒。
イースター島にかつて栄えていた鳥人悪魔族の末裔にあたる少女。
人間の若者と恋に落ちた鳥人族の女性を母に持つ。
白い翼を羽ばたかせて強風を起こす「ピンクハリケーン」が得意技。
しっかりもので気は優しく、年少組の使徒たちのお姉さん的存在。

○サシペレレ(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第十一使徒。
サッカーが大好きなブラジル出身の子供悪魔で、現地の子供たちと仲良し。
パイプを咥えた小さいピエロのような外見をしている。細身の体を縦に高速
回転させることで発生させる、「竜巻大回転」が得意技。理知的な物腰だが
弱点はパイプで、これを取られると途端に赤ん坊になって泣きじゃくってしまう。

○こうもり猫(TVアニメ版悪魔くん)
悪魔くんと契約を交わした十二使徒の一人。第十二使徒。
お調子者で媚を売るのが上手く、相手に気安く「先生」を付けて呼び、
何かにつけて「あ、ヨイショぉ!」と持ち上げる。成績は最低ランクスレスレの
落ちこぼれ。人間の悪魔くんを気に入らず、メフィスト二世に彼は魔界の敵
だと吹き込み騙したことも。たまに仲間を裏切るが、どこか憎めない性格で
根は一番の友達思いだったりする…ねずみ男とどっこいなタイプ。
美人にはめっぽう弱く、からかい程度の口喧嘩はしょっちゅうのナスカに惚れている。

○又五郎鬼(TVアニメ版ゲゲゲの鬼太郎第三期)
閻魔大王の使い番で三途の河の「だつえ婆」が万遊自在玉を盗み
出して事件を起こした折、地獄で鬼太郎たちを手助けした赤鬼。
妖怪ふくろさげに敗れた鬼太郎が、閻魔大王に助言を求めて
地獄特訓に臨んだ際にはスパーリング相手も務めていた。

349

○ザ・ニンジャ(キン肉マン キン肉星王位争奪編アニメ版)
元は悪魔将軍に仕える悪魔六騎士の一人だったが、紆余曲折を経て
キン肉マンの実兄キン肉アタルの提唱する『真・友情パワー』に心惹かれ、
正悪を超えて結成されたソルジャーチーム超人血盟軍の一員となった。
先鋒戦でフェニックスチームのサタンクロスと対戦し敗れて絶命するが、
キン肉星大王となったキン肉マンを祝福するように空から舞い降りた花の
中から、彼の『フェイス・フラッシュ』によりチームメイトたちと共に復活。
その後は共に戦ったキン肉アタルと超人警察隊を結成、宇宙中に蔓延る
平和を乱す悪行超人たちの捕縛に奔走している。

●妖獣サイコジェニー(原作版デビルマン 半オリジナル)
デーモン族きっての強力な精神攻撃能力を備える妖獣。
西洋人形のような巨大な顔を持ち、原作ではデーモン族を率いる神、
堕天使ルシファーことサタンの転生である飛鳥了を覚醒させるべく迎え
に現れるという重要な使命を持っていた。

●悪魔将軍―不完全体―(キン肉マン、劇場版キン肉マン ニューヨーク危機一髪!)
魔界の領袖・大魔王サタンと闘いの神ゴールドマンが結託して誕生した“恐怖の将”。
その実体は正体不明で、サタンの操り人形とも、サタンの化身とも言われる存在。
「7人の悪魔超人」や「悪魔六騎士」を差し向け超人界、及び人間界支配を目論む。
超人としては悪魔六騎士が結集した合体超人に、司令塔たる『黄金のマスク』が備わる
ことで比類無き強靭さとパワーを誇り、しかも肉体を持たない「がらんどうボディ」のため、
理論上この宇宙に存在するどんな技も通用しない。(将軍様・談)
体の硬度を0の軟体から10のダイヤモンドのレベルまで調節可能で、ここから縦横無尽に
繰り出される「地獄の九所封じ」「地獄のメリーゴーランド」「地獄の断頭台」など、強力無比
な技の数々は対戦者にこの上ない恐怖を与える。キン肉マンを支える正義超人たちの友情
パワーの強固さに動揺した黄金のマスクによって統制が崩れ、そこをバッファローマンがその身を犠牲にして将軍に体をのっとられることで初めて技が有効となり、キン肉マンのキン肉ドライバーで漸く倒せたほど。黄金のマスクは改心して銀のマスクと融合、将軍は永遠に滅びたかに見えた。
しかしその妄執が遺した“思念体”は不滅であり、衛生軌道上で人工衛星と宇宙ステーションから
飛行士もろともエネルギーを強奪し、さらにテリーマンの合衆国栄誉賞授賞式に招かれていた
正義超人たちと会場の人々、果てはニューヨークシティを丸々飲み込み生命を奪い尽くされた
ゴースト・タウンに変えてしまうほど今もって強大な存在。再び完全復活を望み暗躍中。 

 


『鬼と天を司る男』

作者・ユガミ博士

350

***マトリックス***

ここは、Gショッカーに所属する
オルグの本拠地・鬼洞窟マトリックスである。
そこには、いくつかの横穴があり、
そこにハイネスディーク・デュークオルグの
個人の部屋となっている。
その中の一室で怒鳴り声が聞こえてきた。

???「「不味い!・・・こんな料理が喰えるかぁぁああ!。」」
???「も、申し訳ありません、ラセツ様(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクガクガク。」

お皿に盛り付けてある料理をテーブルごとひっくり返したのは、
上下に二つの口を持つハイネスデュークオルグのラセツである。
ラセツは、料理を作ったデュークオルグのツエツエを怒鳴りつけていた。

ラセツ(男声)「やはり、テトムの料理が食べたい・・・。」
ラセツ(女声)「我が舌を唸らせる料理が食べたい。」
ツエツエ「……(私の料理はまだ、ラセツ様には不味いというの・・・。)」

ラセツはかなり味のうるさい美食家である。
彼(彼女?)の望みは上手い料理を食べることなのだ。

ヤバイバ「ラセツ様ー!、これを見て下せぇー!。」
ラセツ(男声)「何だ、騒々しい。」
ヤバイバ「人間どもが、料理大会を開くらしいですぜ。」
ラセツ「「何!、料理大会!!。」

デュークオルグ・ヤバイバはラセツにチラシを見せた。
そのチラシには腕利き自慢の料理人を集めて料理大会を開くというもの。
観覧は自由。作られた料理は審査の後、見に来た人も食べられるという企画だった。

ラセツ「「・・・よし、ツエツエ、ヤバイバ、行くぞ。」」
ツエツエ&ヤバイバ「「はっ!」」

ラセツ達は料理大会の会場へと向かった。
そっとツエツエの小耳に囁くヤバイバ。

ヤバイバ「ところでツエツエ、お前はもうオルグの巫女様なんだぜ。
 本来なら闇女王同盟の後宮で大勢の女官を従えてふんぞり返っていられる
 ご身分なのに、なんでまだラセツ様にいいように使われてるんだ?」
ツエツエ「後宮は今やヘドリアン女王様の一派が幅を利かせてて
 窮屈で居心地悪いのよ…」

ラセツ「「二人とも、何か言ったか?」」

ツエツエ&ヤバイバ「「いえ、別に!」」

351

 ***東京都内・「恐竜や」本社のエントランス***

今回、開かれる料理大会の会場である「恐竜や」本社の1階には、
大勢の人々が来場していた。

岬「この大会を開いて、正解でしたね。」
杉下「これで、皆様が明るい笑顔になってくれるのならば嬉しい事です。」
ヤツデンワニ「いや~、社長として嬉しいなぁ~。」
じいや「さて、そろそろお時間ですが、加賀美さんがまだですなぁ。」

陸「申し訳ない、道が混んでいたので遅くなってしまいました。」

月乃「お待ちしておりましたわ、加賀美総監」

エントランスで談笑していた主催者や来賓の男女数人が、
遅れて現れた加賀美陸警視総監を出迎える。
その数人というのは、「恐竜や」現社長でトリノイドのヤツデンワニと
創業者で現秘書の杉下竜之介、「ディスカビルコーポレーション」の
代表取締役の岬祐月、神代家の執事だったじいやさん(本名不明)、
そして大手ベーカリーチェーン「パンタジア」の若き美少女社長である
梓川月乃である。

この企画はGショッカーの暗躍で世間が暗くなっているので
人々に明るい笑顔をということで「恐竜や」、
「ディスカビルコーポレーション」、「パンタジア」、
そして警視庁の協賛で開かれた大会である。
会場には、食べ物の出店も開いていて、来場者でにぎわっていた。

杉下「それでは、時間ですので、ステージの方へ。」

アナウンス「間もなく、ステージにて、料理大会が開かれます。
 席をご用意させていただいてますのでお集まりください。」

352

ざわ・・・ざわ・・・

ステージ前に観覧者が集まり、今か今かと待っていた。
一方、出場者の控え室では・・・

???「やはり、こういう場所は・・・苦手だ。」
???「大丈夫だよ。お姉ちゃん。」
???「そうだ。自信を持て。お前ならできる。ひより。」

控え室の前には3人の男女が話していた。
この3人は天道総司、天道樹花、日下部ひよりで、一応、兄妹である。
この3人の関係はけっこう複雑なので詳細は省く。
今回の大会にひよりが出場するので、2人が応援に来ていた。

スタッフ「それでは、お時間ですのでステージの方へお願いします。」
ひより「・・・行ってくる。」
樹花「頑張ってねー♪」
総司「ひより・・・。いつものお前の料理を出せばいいんだ。」
ひより「・・・うん。」

さて、ステージでは司会者が喋っていた。
司会者「さぁ、料理大会の始まりです。まずは、今大会の審査員の方々を
 ご紹介しましょう。警視庁警視総監・加賀美陸様。」
加賀美陸「どうも。」
新「あっ!親父。」
良太郎「警視総監、来てたんだ。」

ひよりが出場すると聞いたので加賀美新と野上良太郎も会場に来ていた。
因みにモモタロス達イマジンはお留守番である。


***デンライナー・内部***

モモタロス「俺も料理大会に行きてぇぇぇええ!」
コハナ「五月蝿い。」

ゴン!

モモタロス「痛ぇぇええ!」

それは、さておき・・・

353

***再び、恐竜や本社・エントランスホール***

司会者「『恐竜や』社長のヤツデンワニ様。」
ヤツデンワニ「やっほー!」
ケン「へぇ、あれが社長なんだ。」
ラン「異星人?」
レツ「なんでも、トリノイドっていう種族らしい。」

「恐竜や」で料理大会があると聞いたので、久津ケンは同じゲキレンジャーの
メンバーである宇崎ランと深見レツを連れて来た。

鈴雄「あれっ?、ケンさんですか?」
ケン「おっ!、鈴雄じゃねぇか。お前も来ていたのか?」
鈴雄「はい、妹の小鈴や僕の住んでいるアパートの皆さんと・・・。」
小鈴「お兄ちゃーん。あっ、ケンさん!」
ケン「よっ!、久しぶり。」
レツ「ケン、この2人は?。」
ケン「俺が前に不良に絡まれている所を助けたのさ。」

さて、ステージの方では・・・
司会者「最後に、伝説の料理人、じいやさんです。」
じいや「お恥ずかしい。どうも。」
総司「おお、あの御方が審査員か・・・。」

天道総司は尊敬する料理人が審査員として、出ていることに感動した。
天道という男――年配や目上の人間に対しても、
滅多に他人に敬意を払うことはないが
このじいやと呼ばれる老人だけは例外のようである。

月乃「この席に黒柳さんがいらっしゃらないのが残念ですわ」
陸「黒柳さんとは?」
月乃「かつての我が社の社員でいらして、
 優れた味覚の持ち主ですわ。今は旅に出てらして
 行方知れずなのですが、この場にいらっしゃれば
 きっと場をもっと盛り上げてくださったでしょうに・・・」
陸「ほう、一度会ってみたい人間だな」

354  司会者「続いて、出場者の紹介です。エントリー#1番・デネブさん。」
デネブ「どうも、よろしくお願いします。」

出てきたのは、エプロンを掛けた大きな体をした黒尽くめの男だった。

良太郎「デネブ来ていたんだ・・・。」
侑斗「ああ、自分の料理を食べてもらいたいんだとさ。」
良太郎「――何時の間に?。」
新「――誰?。」

さて、良太郎が新に侑斗を紹介している間、出場者は紹介されていき、
ひよりの番になった。

司会者「エントリー#25番、日下部ひよりさん」
ひより「どうも・・・。」
総司「ひより・・・。」
司会者「さて、これからルールの説明を・・・。」

???「待てぃ!」

司会者が説明をする時に、入り口から大きな声がした。
声を上げたのは、ハイネスデュークオルグのラセツだった。

一般人A「ば、化け物だぁぁ。」
一般人B「に,逃げろぉぉぉ。」

ラセツの後ろにはツエツエ、ヤバイバ、そして、魔笛オルグがいた。

355 

ラセツ「「我が名はハイネスデューク・ラセツ。人間達よ、そこをどけぇぇ。」」

その迫力に会場に集まっていた人達はラセツに道を開けた。

陸「その姿は、Gショッカーのオルグか!、一体、何をしに来た。」
ラセツ「「この料理大会に出される料理を食べにきた。」」
ヤバイバ「怒らせない方が身のためだぜぇ。でないと・・・。」

ぴゅ~、ぴゅるるぅぅ~、ぴゅ~♪♪

魔笛オルグが笛を吹くと、会場にいた人達が突然、踊りだした。

新「な、何だ!、これは。」
良太郎「か、体が、勝手に。」
ケン「うわっと!。」
ラン「体が言う事を利かない。」
レツ「あ、あの笛のせいか・・・。」

ツエツエ「止めさせて欲しかったら、ラセツ様にお食事を用意を!」

陸「わ、分かった。用意させるから、止めるんだ。」

ラセツ(男声)「よし。魔笛オルグよ、演奏を止めよ。」
魔笛オルグ「了解しました。」

魔笛オルグが笛を止めると、踊りが止まった。

ラセツ「「さぁ、人間達よ。食事を用意だ。だが、不味い料理を出せば・・・。」」

それを聞いた出場者の料理人達は体が震えていた。

総司「まて、料理は俺が作ろう。」
ラセツ「何?。」
新「……(天道・・・。)」

天道総司はラセツの前に進んで、自らが料理をすると言い出した。

総司「俺が料理をする代わりに、俺以外の人間は全てこの場から避難させてもらおう。」
ツエツエ「ラセツ様に条件など・・・、死にたいの?」
ラセツ(男声)「待て!」

条件を出した天道総司にツエツエが杖を向けたが、ラセツが止めた。

ツエツエ「ラセツ様・・・。」
ラセツ(男声)「我に条件か・・・面白い。その条件を呑もう。
 ただし、人質としてこの娘は預かる!」
月乃「きゃあっっ!!」

近くにいた月乃を人質に取るラセツ。

総司「分かった。だが、俺の料理が美味かったら、人質は解放してもらうぞ。」
ラセツ「「我が舌にかけて誓おう。」」

356

ラセツの為の席が用意され、会場に来ていた人達は避難された。

良太郎「どうします。加賀美さん。」
新「天道なら大丈夫だが、親父達が心配だ。いざとなったら、変身しよう。」
良太郎「分かりました。」
侑斗「俺も、協力しよう。」
ケン「あれー、あの時のお巡りさん。」

新達が話していると、そこへケン、ラン、レツに鈴雄、小鈴がやって来た。

新「君は・・・あの時の。そうだっ!、君は変身できたね。
 俺達に協力してくれないか?」
レツ「人質を助けるのですね。」
ラン「協力します。」
ケン「あれ、鈴雄達はどこ行った?。」

一方、中では、天道総司は料理を始めていた。
それから15分後・・・

ラセツ(男声)「料理はまだ、できぬのかぁぁぁあああ!。」
総司「安心しろ、今、出来上がった。」

ラセツの前に出されたのは、ご飯に豆腐の味噌汁、焼き魚という
定食の定番メニューであった。

ラセツ「「ふざけているのかぁぁ、美味そうな料理は無いのか。」
総司「食べてみなければ、分からないだろう。いいから、食べてみろ。」

天道総司の気迫にしぶしぶ食べてみたラセツは言葉を失った。

ツエツエ「ら、ラセツ様?」
ラセツ「「な、何という美味さだ。たかが、ご飯に・・・味噌汁に・・・
 焼き魚がこれほど美味いとは・・・。心が・・・心がまるで、清流のようだ。」」

まさに、天まで昇る気分になったラセツだった。

357

ラセツ「「決めた。お前を我の専属の料理人とする。」」
ツエツエ&ヤバイバ「「えっ!。」」

陸「何っ?。」
ヤツデンワニ「嘘っ!?。」
じいや「……(天道君なら、当然か・・・。)」

ラセツの一言にその場の殆どが驚いた。だが、天道総司は・・・

総司「断る。俺の料理は、お前だけのものではない。」
ラセツ「くっ。ならば、魔笛オルグ。」

ラセツが魔笛オルグに命じたと同時に、天道総司は素早く動き出し、
魔笛オルグが笛を吹く前に、懐へと入って眼を攻撃した。

魔笛オルグ「い、痛ぁぁぁあ!。」

そして、すかさずライダーベルトを腰に取り付けて、
異次元からカブトゼクターを呼び寄せた。

総司「――変身!!」

天道総司の周りが装甲で覆われていった。
そして、仮面ライダーカブト・マスクドフォームへと変身した。さらに・・・

カブト「キャストオフ!!」
カブトゼクター「キャストオフ!!」

カブトのマスクドアーマーが弾けとんだ。

カブトゼクター「Change Beetle!!」
カブト「さぁ、ここからが本番だ。」

358 

新「天道が変身した!、俺たちも行くぞ!。」

カブトに変身した天道総司を見て、新達は中へ突入した。

ラセツ「「ムッ!」」

新、良太郎、侑斗はベルトと腰に着けて、それぞれガタックゼクターと
ライダーパスとゼロノスカードを取り出し、ラン、レツはゲキチェンジャーを
構え、ケンはサイブレードを取り出した。

新&良太郎&侑斗「「「変身」」」
ラン&レツ「「たぎれ、獣の力!」
ケン「研ぎ澄ませ、獣の刃!」
モモタロス「おっ、俺の出番だ!。」

変身が終わると・・・そこには、6人の戦士がいた。

ガタック「良し。」
電王ソードフォーム「俺、参上!。」
ゼロノス「最初に言っておく、俺は、かーなーり強い。」
ゲキイエロー「日々是精進、心を磨く“オネスト・ハート” ゲキイエロー !。」
ゲキブルー「技が彩る大輪の花“ファンタスティック・テクニック”ゲキブルー!。」
ゲキチョッパー「才を磨いて、己の未来を切り開く “アメイジング・アビリティ” ゲキチョッパー !。」
カブト「ふむ、ならば俺も。俺の名は天道総司。天の道を行き、総てを司る男だ。」

ラセツ「「ぬぅぅ、仮面ライダーにスーパー戦隊だとぉぉ!、オルゲット。」」
オルゲットたち「オルゲットォォ――!!」

ラセツの呼び声にオルゲットがエントランスに現れた。

ヤツデンワニ「だぁぁ、何時の間に?!。」
陸「さぁ、早くこちらへ!」
月乃「は、はい。」

陸が隙を突いて人質となっていた月乃を救出し、
さっと舞台から降り去る。

ラセツ(女声)「人質を逃すなぁぁぁ。」
オルゲット「オルゲットォォ!!」

ゲキイエロー「そうはさせないわ。ゲキハンマー。ゲキワザ・流星弾!。」

ゲキイエオーはゲキハンマーを取り出して迫り来る敵を吹き飛ばし、
陸たちは月乃を連れ、無事脱出に成功した。

359

ゲキチョッパー「ゲキワザ・捻捻弾。」
ゲキブルー「ゲキワザ・転転弾。」

ゲキチョッパーのサイブレードフィンガーから激気弾が発射され、
ゲキブルーのゲキジャガーが高速回転をして、敵を倒していった。

電王ソードフォーム「俺は最初から最後までクライマックスだぜ。」
ゼロノス「うぉぉぉりゃぁぁぁ!」
デネブ「侑斗、俺も手伝うぞ!」

電王とゼロノスの怒涛の連続攻撃とデネブの指鉄砲によって、オルゲットは
どんどん倒されていった。そして、ついに残りはラセツ、ヤバイバ、ツエツエ、
魔笛オルグだけとなった。

ツエツエ「魔笛オルグ、笛を吹きなさい。」
魔笛オルグ「りょ、了解。」

カブト「そうはいかん、クロックアップ。」
カブトゼクター「クロックアップ。」

カブトは高速で動き、魔笛オルグの前に現れた。

カブト「ライダーキック。」

カブトはスイッチ・フルスロットルを「1, 2, 3」の順に押した後、
ゼクターホーンを一旦マスクドフォーム時の位置に戻した。

カブトゼクター「Rider Kick」
魔笛オルグ「ぎゃぁぁぁあああ!!」

カブトの必殺技、ライダーキックが炸裂した。

360

ヤバイバ「これは、ちょっとヤバイバ。」
ラセツ(男声)「ツエツエ!」
ツエツエ「はい、「オルグシードよ、
消えゆかんとする邪悪に再び巨大な力を!
鬼は内!福は外!」

ツエツエが杖からオルグシードを蒔いて、
呪文を唱えると蔓草が伸びて、巨大な魔笛オルグが現れた。

ゲキチョッパー「こっからは、俺の出番だぜ。」

ゲキチョッパーは操獣刀を取り出して、獣拳神サイダインを呼び出した。

ゲキチョッパー「獣拳変形・サイダイオー!」

サイダインの腰が回転して、脚となり、前足は腕、顔は刀、そして、顔が
現れ、獣拳巨神サイダイオーとなった。

ゲキチョッパー「よっしゃー、さっさと決めるぜ!。ゲキワザ、大大砕大斬!」

サイダイオーの砕大剣で、魔笛オルグの体に大の字を描くように連続で
敵を斬った。

魔笛オルグ「今回の出番はこれだけかよー。」

そして、魔笛オルグは倒された。
一方、地上のほうではゲキチョッパー以外のメンバーは残ったオルグ。

ゲキブルー「待てぇぇ!」
ヤバイバ「しつけぇぞ。」
ツエツエ「こっちです。ラセツ様」
ラセツ(男声)「このラセツが追われるとは・・・不覚。」

そんなラセツ達の前に現れたヒーローがいた。

ドッコイダー「なぁ~~~ッはっはっは!
 皆の楽しみである料理大会を自分だけの物にしようとは言語道断!
 株式会社オタンコナス社製造超特殊汎用パワードスーツ・
 ドッコイダー。遅れたけど、ここに参上!」
ラセツ「邪魔だぁぁあああ!。」
ドッコイダー「あらぁぁぁ。」

せっかく登場したけど、ドッコイダーは足止めならず、ラセツ達を取り逃がしてしまった。

361

○加賀美陸→恐竜や主催の料理大会の審査委員長に呼ばれる。
○岬祐月→恐竜やと料理大会を企画。
○じいや→恐竜や主催の料理大会の審査員に呼ばれる。
○天道総司→恐竜や主催の料理大会に出場するひよりを応援しにきたが、
 襲ってきたオルグからひより達を守る為、ラセツに料理を作る。
○天道樹花→恐竜や主催の料理大会に出場するひよりを応援しにきた。
○日下部ひより→恐竜や主催の料理大会に出場する。
○加賀美新→恐竜や主催の料理大会に出場するひよりの応援にきたが、
 ガタックに変身して、オルグと戦う。
○野上良太郎→新に同行して、電王に変身してオルグと戦う。
○モモタロス→電王ソードフォームとなり、オルグと戦う。
○桜井侑斗→恐竜や主催の料理大会に出場するデネブの応援にきて、
 ゼロノスに変身して、オルグと戦う。
○デネブ→恐竜や主催の料理大会に出場するが、オルグと戦う。
○ヤツデンワニ→料理大会を主催する。
○杉下竜之介→料理大会を企画。
○梓川月乃→恐竜や主催の料理大会に来賓として出席するが、
 襲ってきたオルグに人質に取られる。黒柳の事にも言及。
○久津ケン→恐竜や主催の料理大会を見にきたが、
 ゲキチョッパーに変身して、オルグと戦う。
○宇崎ラン→恐竜や主催の料理大会を見にきたが、
 ゲキブルーに変身して、オルグと戦う。
○深見レツ→恐竜や主催の料理大会を見にきたが、
 ゲキイエローに変身して、オルグと戦う。
○桜咲鈴雄→恐竜や主催の料理大会を見にきたが、
 ドッコイダーとなるも、逃げるラセツに無視される。
○桜咲小鈴→恐竜や主催の料理大会を見にきた。
●ラセツ→美味い料理を食べるため、恐竜や主催の料理大会を襲撃。
 天道総司の料理に感動し、専属料理人にスカウトするが断られる。
●ツエツエ→恐竜や主催の料理大会を襲撃。魔笛オルグを巨大化させる。
●ヤバイバ→ラセツに料理大会のチラシを持ってくる。
●魔笛オルグ→大会に来ていた人々を躍らせた後、カブトにライダーキックで
 蹴られ、巨大化した後、サイダイオーに倒される。

362

【今回の新登場】
○岬祐月(仮面ライダーカブト)
 元ZECTのメンバー。現在は「ディスカビルコーポレーション」を設立し、
 その代表取締役に就任。“剣の愛したじいやの味”をコンセプトとしたレストラン
 経営を行いながら、神代家再興のために力を注ぐ。

○じいや(仮面ライダーカブト)
 姓名不詳。65歳。神代家に仕える執事。本当は神代剣の正体を知りながらも
 彼を1人の人間として接し、彼の身の回りの世話を1人でこなしていた。
 料理の腕前は超一流で、かつて唯一出版した料理の本は、
 天道が教本とし文字通り肌身離さず持ち歩くほど。そこから天道に師匠と
 尊敬されている。双子の弟がいる。

○天道総司=仮面ライダーカブト(仮面ライダーカブト)
 仮面ライダーカブトに変身する青年。自らを「天の道を往き、総てを司る男」と称し、
 常に冷静沈着・傲岸不遜な性格で、自分が世界で1番偉いと本気で思っているが、
 妹には常に優しく接し、仲間や弱者は傲岸な態度ながらも助ける。
 祖母を尊敬しており、料理はプロ並み。

○日下部ひより=シシーラワーム (仮面ライダーカブト)
 「la Salle」のコック。18年前、実は、天道総司の妹で、当時まだ胎児だった
 オリジナルのひよりを身ごもっていた母親が夫と共に2体のネイティブに
 よって殺害、擬態され生まれたネイティブが“日下部ひより”として
 育てられていた。変身しても、人間に対する悪意や破壊本能は無い。

○天道樹花(仮面ライダーカブト)
 天道が祖母に引き取られてから誕生した義理の妹。明るく活発な性格。
 バトミントン部に所属している。兄を誰よりも尊敬している。

○桜井侑斗=仮面ライダーゼロノス(仮面ライダー電王)
 野上良太郎の姉の婚約者だが、19歳の時の少年。現代の桜井がデネブと
 「過去の自分とともにイマジンと戦う」と契約し彼にゼロノスカードを授けたこと、
 彼の使命は本当の分岐点の鍵である愛理をイマジンから守ることであった。
 良太郎とは親友の間柄。仮面ライダーゼロノスアルタイルフォームに変身する。
 決め台詞は「最初に言っておく、俺はかーなーり強い。」シイタケとコーヒーが苦手。

363

 ○デネブ=仮面ライダーゼロノズベガフォーム(仮面ライダー電王)
 侑斗と行動を共にするイマジン。名前の由来ははくちょう座のデネブで、
 その姿は武蔵坊弁慶からカラスのイメージが具現化されたもの。
 家事好きで、穏やかで優しく律儀。「デネブキャンディ」という
 手作りキャンディを配りながら他人の理解を得ようとする他、
 仮面ライダーゼロノスベガフォームに変身する。

○ヤツデンワニ(爆竜戦隊アバレンジャー)
 エヴォリアンのトリノイド第12号(ヤツデと電話とワニの合成)。
 仲代壬琴=アバレキラーに捕まってお手伝いさんにされるなど散々な目にあっている。
 その後も仲代に対し反逆の機会を伺っていたが、終盤に改心する頃には
 仲代に対して主従の絆に目覚めていた。頭部にある電話は、どこにでも
 かけたいところにコールすることが出来る便利機能が搭載されている。
 基本的に悪い奴ではないらしく、結局「恐竜や」を気に入って住み着き、
 看板(?)トリノイドとして働くことに。後に「恐竜や」の社長となる。
 
○杉下竜之介(爆竜戦隊アバレンジャー)
 紫蘇町にある喫茶店「恐竜や」の元マスター。自分の店をアバレンジャー
 の拠点として提供。謎の多い人物。その後、ヤツデンワニに大企業となった
 「恐竜や」の社長の座を奪われ(しかしそれを不満に思っている
 様子は本人にはない)、社長秘書となっている。

○宇崎ラン=ゲキイエロー(獣拳戦隊ゲキレンジャー)
 強き正義の「心」の持ち主で激獣チーター拳の使い手。ゲキイエローに変身する。
 曲がったことを嫌う真面目でストレートで男勝りな性格。食事は中華料理を好む。
 
○深見レツ=ゲキブルー(獣拳戦隊ゲキレンジャー)
 優れた「技」の持ち主で激獣ジャガー拳の使い手。ゲキブルーに変身する。
 あらゆる格闘技に精通する理論派で、常に新しい技を追い求めている。
 趣味は絵を描くこと。食事は好きなものは後で食べるタイプ。

○梓川月乃(焼きたて!!ジャぱん)
 大手ベーカリーチェーン「パンタジア」の若きオーナー。
 創業者の梓川貞尚の孫娘。8歳の頃にパンタジア新人戦で
 三位入賞を果たす程の腕前を持つパン職人でもある。

364 

●ラセツ(百獣戦隊ガオレンジャー)
 邪悪な鬼オルグ一族の最高幹部ハイネスデュークオルグで、
 巨大な口を持つ青鬼。頭部と胴部に二つの人格を持っており、
 頭部の口は女声、胴部の口は男声で喋る。何でも喰らい文明を滅亡させようとする。
 巨大なナイフとフォークが武器。

●ツエツエ(百獣戦隊ガオレンジャー)
 ヤバイバと共に行動するデュークオルグ。オルグの巫女で、
 杖からオルグシードを出して、倒されたオルグを復活&巨大化させる。

●ヤバイバ(百獣戦隊ガオレンジャー)
 ひょうきんな性格のピエロのデュークオルグ。ツエツエと共に行動する。
 2本のナイフが武器。ピンチになると出る「これはヤバイバ~!」、「こいつはヤバイバ~!」が口癖。

●魔笛オルグ(百獣戦隊ガオレンジャー)
 笛を吹き、その音色を聞いた人間を踊らせることのできるオルグ。 


『狼達の戦い』-1

作者・ユガミ博士

365

***日本某県・山奥の村***

ここは日本のどこかにある山奥の村。その村の若い人達は、都会へと行って
しまったため、住民の殆どが老人だった。しかし、その村人の中で珍しい
若い青年が住んでいた。朝、彼は新聞を手に取り、記事の内容を読んだ。

剣総理、公民権法案の提出を発表。国会に波乱起こる。

白河代議士、法案に断固反対!

科学省長官・お茶の水博士からのコメント「剣総理は実に良い法案を
決意してくれました。反対意見もある事は承知ですが、この法案が可決
されれば、良い未来が築かれる事でしょう。私は公民権法案に賛成です。」


青年「公民権法・・・。(バンパイア族も適用されるのか?。いや、人間と
  バンパイア族の確執は大きい。それにバンパイア族の多くが人間に憎悪
  を抱いている。下手をすれば、またバンパイア族の革命が起きるかもし
  れない。)」

彼の名は立花特平(トッペイ)。彼は人間ではない。動物に変身する能力を
持つバンパイア族なのである。一時期、人間の世界にいた彼だが、人間との
間に起きた「革命」に巻き込まれ、平穏な暮らしを求めて、母と弟と共にこ
の小さな村へと移り住んだ。幸い、村の人も少なく、テレビ等も普及してい
なかったため、村人にはバンパイア族であるということ秘密にしている。

???「トッペイ、蒔き割り終わったぜ。」

トッペイに声をかけたのは紫の服を着た男だった。

トッペイ「ありがとうございます。ゴウさん。」
ゴウ「何、泊めてもらった恩返しだ。それにこういうことは体を鍛えるのに
  ちょうどいい運動になる。俺の師匠(マスター)が言っていたが、
  『暮らしの中に修行あり』ってな。」
トッペイ「確か、格闘家でしたね。ゴウさんは。」

この男の名は深見ゴウ。かつてゲキレンジャーの1人、ゲキバイオレット
として臨獣伝や幻獣拳と戦った激獣ウルフ拳を使い手である。彼は修行で
この近くの山へ来たが、帰り道を迷い、相棒のバエともはぐれ、空腹の所
をトッペイに助けてもらい、現在、彼の家にやっかいになっている。

トッペイ「それでは、朝食にしましょう。」
ゴウ「ああ。」

家に入るとトッペイの母と弟のチッペイが朝食の準備をしていた。

チッペイ「兄ちゃん、ゴウさん、お早う。」
母「もうすぐ、出来ますよ。」

しばらくして、朝食が食卓に並び、食事が始まった。食事の間、笑い声もあり
明るく、ゴウもこの雰囲気に心が和んだ。

ゴウ「フフ・・・。」
トッペイ「どうかしましたか?。」
ゴウ「何、俺にも弟がいるからな。懐かしくなっちまったのさ。」
トッペイ「弟さんがいるんですか。今は・・・?。」
ゴウ「俺と同じように獣拳使いをしている。今は、若い獣拳拳士に獣拳を
  教えている。」
トッペイ「そうですか・・・。」

朝食を食べ終わった後、トッペイとゴウは山へと登った。その目的はゴウの
修行で、トッペイは興味を持ち、付いてきたのである。
しばらく歩いていると・・・。

キィン、キィン

トッペイ「な、何の音だ。」
ゴウ「こっちから音がする。」

2人は音のする方を覘いてみると・・・。

ゴウ「あれは・・・。」
トッペイ「狼?」

そこには鬼のような姿をした集団と銀色のスーツを纏った狼が戦っていた。

366

――話は時を少し、遡る。
山の中、1人の男が鬼・・・オルグに追われていた。

オルゲット「オルゲット、オルゲット。」
ヤバイバ「待ちやがれ、ガオシルバー。」
ツエツエ「逃がさなくってよ。ハリガネオルグ。」
ハリガネオルグ「了解。」

針金から生まれたハリガネオルグの手から飛び出た針金によって、男、ガオ
シルバーこと大神月麿は足を引っ掛けてしまい、倒れてしまった。

大神「くっ!?。」
ヤバイバ「おとなしく俺たちと来てもらうぜ。」
ツエツエ「ハリガネオルグ、ガオシルバーの両腕両足を縛っておしまい。」
ハリガネオルグ「了解しました。」

ハリガネオルグは針金を大神の両腕両足に向かって投げつけたが、大神は
咄嗟に回避した。

大神「させるか。ガオアクセス、ハッ!。」

大神はGブレスフォンでガオシルバーへと変身した。

ガオシルバー「ガオハスラーロッド、スナイパーモード!。」

専用武器ガオハスラーロッドをスナイパーモードにして、周りにいる
オルゲットに向かって、放った。

オルゲットA「オルゲットー。」
オルゲットB「オルゲットー。」
ハリガネオルグ「くらえ!。」
ガオシルバー「ガオハスラーロッド、サーベルモード!。」

ギィン、ギィン

ハリガネオルグの針金をガオシルバーはガオハスラーロッドをサーベルモード
に変えて、受け止めた。

ガオシルバー「てやぁ!。」
ハリガネオルグ「ぐぉ!。」

一気に間合いを詰めたガオシルバーはハリガネオルグに斬りつけた。

トッペイ「す・・・すごい。」

音を聞きつけたトッペイとゴウは木と木の間から様子を伺っていた。
そして、もうちょっと良く見ようと体を近づけたトッペイはうっかり、
小枝を踏んでしまった。

ぺキ!!

ヤバイバ「何者だ?!。」

ヤバイバは音のした方にナイフを投げた。

ゴウ「ビースト・オン!。」

咄嗟にゴウはゴングチェンジャーでゲキバイオレットに変身して、ナイフを
受け止めた。

ガオシルバー「(俺と似ている?!。)」
ヤバイバ「な、ナニモンだ、テメェ!。」
ゲキバイオレット「激獣ウルフ拳の使い手、ゲキバイオレットだ。事情は
 知らないが、トッペイを傷つけようとした事は許さねぇ。
 ここはそこの狼さんに助太刀するぜ。」

ゲキバイオレットはすぐにヤバイバへと近づき、猛ラッシュの拳と蹴りを
食らわせた。

ゲキバイオレット「オラオラオラオラ。」
ヤバイバ「グフ、ガフ、アベシ。」
ゲキバイオレット「とどめだ。ゲキワザ・昇昇拳」
ヤバイバ「ナハ~。」

ゲキワザ・昇昇拳の強力なアッパーが決まり、ヤバイバは吹っ飛ばされた。

ゲキバイオレット「さぁ、次はどいつだ。」
ツエツエ「そこまでよ。」

振り向くと、いつの間にかツエツエはトッペイをとり抑えていた。

トッペイ「ゴ、ゴ・・・ウ・・さん。」
ツエツエ「それ以上の攻撃は、この子がどうなるか分からないよ。」
ゲキバイオレット「し、しまった。」
ガオシルバー「卑怯だぞ。ツエツエ。」
ツエツエ「卑怯で結構よ。さぁ、変身を解いてもらうよ。」
ガオシルバー「仕方ない。」
ゲキバイオレット「くっ。まいったぜ。」

2人は変身を解き、元の大神とゴウに戻った。

ヤバイバ「いっててて。よくもやりやがったな。アジトの場所はみせるなって
 言われてるからなぁ。ここでお寝んねしてもらうぜ。」

ヤバイバによって、2人は気絶させられるのであった。

367 

○立花特平、深見ゴウ→修行へと行く途中、ガオシルバーとオルグの戦いに遭遇。 オルグに捕まる。
○大神月麿→オルグと戦っていたが、トッペイを助けるために、やむなく、変身を解き、捕まる。
●ツエツエ、ヤバイバ、ハリガネオルグ→大神を追いかけ、捕まえる。

【今回の新登場】
○立花特平(バンパイア)
 純粋で正義感が強く、気の良い性格だが、満月を見たり、感情が高ぶると
 狼に変身した後は野生の本性を表わしたかの如く野獣の様な性格になる。
 バンパイヤと純粋人間との共存の為に戦っていくのだが、自分の呪われた
 身体とロックとの確執やバンパイヤ革命による急進派のバンパイヤ達との
 戦いによる呪われた運命に苦悩する事になる。

○立花チッペイ(バンパイア)
 トッペイの弟で小学1年生の6歳の男の子。月のような丸い物を見ると子狼
 に変身し、兄を助け思わぬ大活躍をする時がある。

○トッペイの母(バンパイア)
 トッペイとチッペイの母親。

○深見ゴウ=ゲキバイオレット(獣拳戦隊ゲキレンジャー)
 ゲキバイオレットに変身する激獣ウルフ拳の使い手。激気ではなく紫激気」
 を身につけている。レツの兄で、臨獣殿の当主、理央とは親友。理央を止め
 るために、「獣獣全身変」を使った事で10年間、狼男となっていたが
 不完全だったため、元に戻る事が出来た。

○大神月麿=ガオシルバー(百獣戦隊ガオレンジャー)
 約1000年前にオルグと戦っていた戦士の一人。年齢は1062歳。昔はシロガネ
 と呼ばれていた。ある事情により仲間の戦士達に封印されていたが、現代に
 復活。封印される原因となった事情が心に影を落とし、またカルチャーショ
 ックでなかなか現代になじめない。ただ、その武器がビリヤードのキュー状
 に変化するものだったためか、プールバーでビリヤードをしている時は心が
 落ち着くらしい。

●ハリガネオルグ(百獣戦隊ガオレンジャー)
 針金から生まれたオルグ。 


『狼達の戦い』-2

作者・ユガミ博士

368

***日本某県・崖***

大神「う、うぅぅ・・・、ここは?。ハッ!、これは何だ。」

気絶してから、どのくらい時間が経っただろうか。大神は眼が覚めた。空は
夕焼け空になっており、もうすぐ夜を迎えようとしていた。気がつくと、自
分の体は十字架に張りつけられ、両手両足も十字架に縛られていた。

ヤバイバ「お!、気がついたようですぜ。ウラ様。」
大神「何?!、ウラだと。」

大神の前に現れたのは、緑色の体に大きな扇子の様な杖を持った一本角の鬼
ハイネスデューク・ウラだった。

ウラ「久しいでおじゃるな。シロガネ・・・いや、ガオシルバー。」
大神「ウラ。何故、お前がここにいる。」
ウラ「黄泉路より舞い戻ったでおじゃる。よれよりも、再会を祝おうでは
 ないか。」
大神「お前との再会など祝いたくない。俺をどうするつもりだ。」
ウラ「ガオシルバー、我の兵士となるでおじゃる。」
大神「何、俺が・・・お前の兵士にだと?。笑わせるな!。」
ウラ「言い方が正確ではなかったでおじゃるな。・・・これが、何か分かる
 でおじゃるな?。」

ウラが懐から取り出したのは、大神にとって、忌まわしき物・鬼面だった。

大神「俺を再び、狼鬼にしようというのか?。そんなことをしても、無駄だ
 という事は分かっているだろう。」
ウラ「確かに。しかし、我は考えた。お前自身を狼鬼にするのではなく、お
 前の分身から狼鬼を作れないのではないかとな。」
大神「何?、どういう事だ。」
ウラ「口で説明するよりも、実際にやってみるとしよう。」
ツエツエ「ウラ様、月が上がってきましたわ。」
ウラ「うむ、捕らえた者達を連れて来るでおじゃる。」

数分後、大神と同じように十字架に張りつけられたゴウとトッペイが連れて
来られた。

大神「2人をどうするつもりだ。」
ウラ「時期に分かるでおじゃる。」

そして、月が空へと上がり、満月が地上を照らし始めた。

ウラ「では、始めるとしよう。ガオシルバー、お前の血をもらうぞ。」

ザシュ!

大神「ぐわぁ!。」

ウラは持っている扇子で、大神を斬りつけた。胸を斬られた大神から、血が
流れ出し、ウラは鬼面に血を付けた。次に、血が付いた鬼面を輝く月の前に
置き、ウラは呪文を唱えだした。すると、地面から瘴気が噴出していき、呪
文が進むうちに仮面から大神の血と瘴気が体が作られていき、徐々に狼の姿
へと変わっていき、デュークオルグ・狼鬼となった。

369

ウラ「おお、まさに狼鬼でおじゃる。・・・狼鬼よ、お前の主は誰ぞ?。」
狼鬼「・・・至高邪神様とウラ様にございます。」
ウラ「我が命に従うでおじゃるな?。」
狼鬼「御意。」
大神「ば、馬鹿な。狼鬼がお前に従う訳が・・・。」
ウラ「ふっふっふっ、あの鬼面は複製でおじゃるが、あれには我が命に従う
 ように呪をかけてあるのでおじゃる。さぁ、狼鬼よ。お前の力を見せる
 てもらおう。そこにいる2人の人間を始末するでおじゃる。」
狼鬼「御意。」

気絶していたゴウは、そこで意識が目覚めた。周りを見て見ると、辺りは夜
になり、自分とトッペイは十字架に張りつけにされ、目の前には角の生えた
狼の獣人が立っていた。

ゴウ「まいったぜ、どうなってやがるんだ?!。」
ハリガネオルグ「眼が覚めたようだな。お前らはこれから、そこにいる狼鬼
 様の生贄にされるのだ。」
ゴウ「何、させるか!。ぐっ、動けない。はっ、ゴングチェンジャーが無い。」
ツエツエ「ホホホ、あなたがアレで変身するのは分かっているのよ。そんな
 あなたにいつまでも付けておく訳ないじゃない。」
ウラ「まずは、そこの気絶している坊やからいきなさい。」
ゴウ「や、やめろー。」

狼鬼が手に掛け様としたその時、トッペイは意識を覚醒した。ふと、上を見上
げると狼鬼がいたが、それよりも彼の目に映ったのは光り輝く満月であった。

トッペイ「う、うううう、・・・うぉおお・・・。」

満月を見た瞬間、トッペイに変化が訪れた。

ツエツエ「な、何々??。」
ヤバイバ「この雰囲気、ちょっとヤバイバ~!。」

トッペイの体は小さくなっていき、顔や手足から毛が生えていき、顔つきも
徐々に犬のように変わっていった。そして、縛っていた鎖が取れ、現れたの
は犬・・・いや、狼であった。

トッペイ「アォォォォォン!!!。」

トッペイが吠えた。人間が狼に変わったことに、その場にいた者は驚愕した。

ゴウ「(・・・はっ、今がチャンスだ。)」

ゴウは手首を外し、両手を縛っていた鎖から手を抜いた。実は武者修行して
いる時にとある忍者達が所属している所に立ち寄り、短期間だが、縄抜けを含めた忍術修行をしたのである。人間、何が幸運を呼ぶのか分からないものだ。脱出したゴウはすぐに手首を元に戻し、足の鎖を取った。

ゴウ「てやぁ。」
オルゲット「オルゲットー。」
トッペイ「アォォォン。」
ゴウ「よし、トッペイ。う?、な、何をするんだ!。」

ゴウは近くにいたオルゲットを打ち倒した。狼に変身したトッペイもオルゲット
相手に活躍するが、何とゴウにも攻撃してきた。トッペイは変身すると興奮して
見境が付かなくなることがあるのである。

ゴウ「トッペイ、どうしたんだ。俺が分からないのか。」
ウラ「何をしているの。その2人を早く始末するのよ!!。」
ツエツエ「は、はいぃ~!。」
ヤバイバ「わっかりました~!。おい、ハリガネオルグ何とかしろ!。」
ハリガネオルグ「了解。」

ハリガネオルグは2人に向かって針金を飛ばすが、トッペイを押さえ込む為に
ゴウが動き回るため、狙いがはずるれるのであった。だが、動き回ったため、
2人は崖から落ちるのであった。

ゴウ「トッペェェェェ!。」
ウラ「全く、何なんでおじゃるか。」
大神「ウラ、お前の相手はここだ~。」
ウラ「ぐっ!。」

先ほどのハリガネオルグの攻撃で大神の十字架も倒れた事によって、大神も
脱出できたのである。脱出した大神はウラに強烈な蹴りを入れた。

ウラ「よくもよくも。狼鬼、やるでおじゃる。」
狼鬼「御意。」

370

***日本某県・崖の下***

トッペイ「う、うぅぅん・・・。」
ゴウ「気が付いたか。」

トッペイは気が付くと、川の側で倒れていた。姿は狼のままだったが、理性
は戻っていた。気が付いたトッペイをゴウが声をかける。あの時、崖から落
ちたが運良く、川に落ちて助かったのである。ゴウは詳細を教えた。

???「いや~、助かってよかったですね~。」

すると突然、声がした。よく見ると、でっかいハエが喋ったのである。

トッペイ「き、君もバンパイアなのかい?。」
???「バンパイア・・・?、いいえ、私は激獣フライ拳の使い手・バエと
 申します。」
ゴウ「いきなりだと、驚くよな。」

ゴウはバエの事を説明した。バエはゴウとはぐれて迷っていた時に、川で倒
れている2人を見つけたのである。そして、トッペイは自分が人間ではなく、
バンパイアという種族だという事、変身すると理性を失う事があることを話した。

トッペイ「・・・僕のこの姿を見ても、怖くないんですか?。」
ゴウ「お前がどんな姿だろうと、お前はお前だ。それに、昔の俺もそうだったからな。」
トッペイ「え?。」

ゴウはかつて、道を踏み外した親友を止めるために禁じられた技「獣獣全身変」
で狼男の姿となり、10年間さ迷っていた事、元に戻ってからも、狼の自分に苦
しんだ事、バエや仲間のおかげで克服した事を話した。

ゴウ「トッペイ、理性を失う自分を恐れるな。強い心があれば、そのままの自分
 でいられるんだ。それに今のご時世、異星人なんかも普通に存在するんだ。
 自分が人間じゃないなんて気にするのも馬鹿らしい事じゃないのか。」
トッペイ「自分の心を強く・・・。」
ゴウ「さて、戻るとするか。トッペイ、お前は家に帰っていろ。」
トッペイ「え?!、戻るって。」
ゴウ「ここから先は危険だ。お前を危険な目に合わせたくは無い。」
トッペイ「待ってください。僕も一緒に連れてってください。」
ゴウ「何?。」
トッペイ「ほっとけないんです。それに、あんな奴等が山にいたんじゃ、 母さんやチッペイが危険な目に遭います。」

トッペイは真剣な目をしていた。その目に何かを感じたゴウは連れて行く事
を決めた。

ゴウ「まいったぜ、いい目をしてやがる。分かった、連れて行こう。だが、
 俺からあまり離れるなよ。」
トッペイ「はい。」

371

***日本某県・崖***

一方、大神は回避を繰り返しながら、反撃のチャンスを窺っていた。

ウラ「どうした、どうした。逃げているばかりでは倒す事などできぬで
 おじゃる。」
狼鬼「ムーンライトソニック!。」

狼鬼の持つ三日月剣から繰り出される斬撃で、周りの岩は次々と破壊されて
いった。そして、ついに大神の隠れている岩も破壊されてしまった。

ウラ「これで終わりでおじゃる。」
狼鬼「ムーンライトソニック!。」
大神「ちっ、このままでは。」

死を覚悟した大神であったが。

ゴウ「とぉぉぉりゃぁぁぁ!。」
狼鬼「ぐほっ!。」

何とゴウが飛び蹴りした事により、狼鬼のバランスが崩れて軌道がそれた
のである。

ヤバイバ「テメェは!?。」
ツエツエ「生きていたのね。」
ゴウ「これも返させてもらったぜ。。」

ゴウが見せたのは奪ったはずのゴングチェンジャーだった。

ウラ「どうして持っているでおじゃるか?!。」

実はここへ来る途中にトッペイがゴウの匂いがするということで、そこへ
向かうとオルグのアジトになっており、ゴングチェンジャーを取り返した
ということである。

ゴウ「そういうことだ。」
トッペイ「お前達の仲間も皆、倒した。降参しろ。」
ゴウ「それとこれはあんたのかい?。」
大神「えっ?。」

ゴウが投げたのはGブレスフォンと3つのガオの宝珠であった。

大神「ありがたい。これでまた、戦える。」
ゴウ「トッペイは下がっていてくれ。・・・それじゃ、行くぜ。」
大神「ガオアクセス、ハッ!。」
ゴウ「響け獣の力 ビースト オン!」

2人の体に銀と紫のスーツと狼の仮面が装着された。

ガオシルバー「”閃烈の銀狼”、ガオシルバー!。」
ゲキバイオレット「紫激気、俺流、わが意を尽くす “アイアン・ウィル”!。」
ヤバイバ「こ、これはちょっとヤバイバ~!。」
ウラ「何をしている、早く倒すでおじゃる。」
狼鬼「御意。ムーンライトソニック!。」
ハリガネオルグ「針金飛ばし。」

2体のオルグが攻撃するが、ガオシルバーとゲキバイオレットは見事、回避した。

ガオシルバー「早々に終わらせる。ガオハスラーロッド、ブレイクモード!。」

ガオシルバーはガオハスラーロッドをブレイクモードにして、レーザープール
を形成してその中に敵を閉じ込め、ガオの宝珠をレーザープール上に置いて、
ゲキバイオレットはゴングチェンジャーに紫激気を集中させた。

ガオシルバー「破邪聖獣球、・・・邪気玉砕!。」
ゲキバイオレット「ゲキワザ、厳厳拳!。」
狼鬼「ぬぉぉぉ。」
ハリガネオルグ「ぎゃぁぁぁぁ。」

打ち出されたガオの宝珠と紫激気の塊は見事、2体のオルグを貫いたのである。

372ウラ「まだでおじゃる。ツエツエ!。」
ツエツエ「はい、鬼は内、福は外ー!。」
狼鬼「アォォォン!。」
ハリガネオルグ「ぬぉぉぉぉ!。」

オルグシードによって、2体のオルグは復活&巨大化した。

ガオシルバー「現れよ。パワーアニマル。」

ガオハスラーロッドを天に向かって3つのガオの宝珠を打ち出した。そして
現れたのがガオウルフ、ガオリゲーター、ガオハンマーヘッドの3体である。

ゲキバイオレット「ゲキワザ、来来獣!。」

ゲキバイオレットの紫激気からゲキウルフ、ゲキタイガー、ゲキジャガー
が現れた。

ガオシルバー「百獣合体!。」
ゲキバイオレット「獣拳合体!。」

ガオリゲーターを中心に、ガオウルフ、ガオハンマーヘッドは右腕、左腕へと
変形、そして、狼のような頭部が現れて正義の狩人、ガオハンターへと合体した。
そして、ゲキタイガーが上半身及び脚部に変形、ゲキウルフ、ゲキジャガーが
左足、右足に変形ドッキングして、ゲキトージャウルフとなった。

バエ「さぁ~~皆様、お待たせしました。いよいよ巨大戦の始まりで~す。
 実況のご存知、バエでございます。いや~、テンションはフォルテッシモ。
 ゲキトージャウルフとガオハンターによる狼同士のタッグマッチだ~~!。」

バエも現れ、巨大化した狼鬼とハリガネオルグが突撃をしてきた。

ガオシルバー「リゲーターブレード。」
バエ「おぉぉと、突撃してきた狼鬼とハリガネオルグをガオハンターの武器
 リゲーターブレードで斬って止めた。」
ゲキバイオレット「一気にトドメだ。ゲキワザ、大狼狼脚!。」

ゲキトージャウルフの右足にあるウルフカッターを1度取り外してから
ゲキウルフの口で噛むように装着し、回し蹴りの要領でそれを撃ち出した。

ガオシルバー「悪鬼突貫リボルバーファントム!。」
リゲーターブレードに正義のエネルギーを集めてガオハンターは突撃した。

狼鬼&ハリガネオルグ「「ぬぁぁあぁぁ!。」」

バエ「やっりました~。ゲキトージャウルフ&ガオハンターの大・勝・利!。
 見事、オルグを倒しました~。」

373 

***日本某県・トッペイの家の前***

トッペイ「行ってしまうんですか?。」
ゴウ「ああ、少し長く居すぎたからな。」
チッペイ「さびしいよ、ゴウさん。もっと居てよ。」
トッペイの母「そんな事は言っちゃいけません。チッペイ。」
ゴウ「悪いな。」

翌日、ゴウはトッペイの家を出ることにした。オルグのような集団がこの
日本にいる事が分かったからだ。そのため、東京にあるスクラッチ社に
この事を伝える事にしたのである。

トッペイ「ゴウさん・・・。」
ゴウ「そんな顔するなよ。もう、会えない訳じゃないからよ。」
トッペイ「でも・・・。」
ゴウ「大丈夫。俺達はまた会える。人間もバンパイアも関係ない世の中に
 なったらな。」
トッペイ「・・・もし、そんな世の中になったら、僕の方から行っていい
 ですか?。」
ゴウ「ああ、来い。俺の弟や仲間を紹介するよ。」
トッペイ「はい。」
ゴウ「それじゃぁな。お母さんと弟を大事にしろよ。」

ゴウは手を振りながら、トッペイの家を後にした。
しばらく歩いていると大神がいた。

ゴウ「これから、どうするんだ?。」
大神「俺はオルグを追う。今度こそ、あいつらを倒す。」

あの後、ウラ達はどこかへと逃げていった。大神は彼らの後を追う事にした
のである。

ゴウ「そうか。・・・また、共に戦えるといいな。」
大神「ああ、その時を楽しみにさせてもらう。」

大神はウルフローダーに乗り込み、去っていた。

バエ「では、私達も行くとしましょう。」
ゴウ「ああ。」

***マトリックス***

ウラ「狼鬼があっけなく、やられるとは・・・。やはり、複製の鬼面では、
 あれが限界なのでおじゃろうか?。仕方が無い、今後は改良に務めるで
 おじゃる。こんな事があろうかと気絶していた時に血を抜いていおいて
 よかったでおじゃる。ふっふっふ、強力な狼鬼を作り出し、ゆくゆくは
 軍団化・・・、そして、世紀王に。ふっふっふ。」

374

○トッペイ→捕まった時に狼に変身。深見ゴウにバンパイアである事を打ち明ける。
○深見ゴウ→ゲキバイオレットに変身し、オルグと対決。
○大神月麿→オルグと対決。ウラを追う。
○バエ→川で倒れていたトッペイと深見ゴウを助ける。
●ウラ→狼鬼の復活を画策。
●狼鬼→大神月麿の血と瘴気から復活。深見ゴウと大神月麿と戦うも敗北。
●ハリガネオルグ→深見ゴウと大神月麿と対決するも死亡。

【今回の新登場】

○バエ(獣拳戦隊ゲキレンジャー)
激気による言霊で相手を操る激獣フライ拳の使い手。激臨の大乱で拳聖側の
獣拳拳士として戦うが、メレとの戦いの時に使用した獣獣全身変のかけ方が
不完全だったためメレに敗れ、胃袋の中に囚われる。巨大戦マニアで実況を
する。

●ウラ(百獣戦隊ガオレンジャー)
鼻と耳のような姿をした緑鬼。扇を武器として振るい雅を好む。日本の貴族の
ような口調であり、一人称は「麿」、口癖は「~でおじゃる」。美しい物が好き。

●狼鬼(百獣戦隊ガオレンジャー/半オリジナル)
千年前に封印されたデュークオルグ。大神月麿が百鬼丸を倒す為に使用した
鬼面の呪いでオルグ化した。今作では、大神の血と複製された鬼面から復活。


『心ある者たち』-1

作者・ボー・ガルダン

375

***警視庁・総監室奥の秘密会議室***

勇太「失礼しまーす」
陸「うむ、入りたまえ」
正木「しばらくだね、勇太くん」
勇太「?正木さん…あっ!」

会議室には加賀美警視総監だけでなく、
先日の会議以来の顔合わせとなる正木警視監。
そして…

大樹「あなたが友永警部ですね。自分は特別救急警察ソルブレイン行動隊長・ 西尾大樹警視正であります!」
玲子「同じく行動部隊隊員、樋口玲子警視であります!」
純「同じく、増田純警部補であります!」
勇太「あっ、わっ、じ、自分は警視庁ロボット刑事課・ ブレイブポリスの友永勇太であります!」

それに続いて、ブレイブポリスの面々も挨拶と敬礼を行う。
人の命と心を救うために、かつて正木が結成した特別救急警察・通称ソルブレイン。
ソリッドスーツの量産化に伴い、一度は解散された彼等だが、首都圏での
犯罪件数の急激な増加及び凶悪化に伴い、彼らも再び警視庁に呼び戻されていたのだ。
ブレイブポリスはソルブレイン解散直後に組織されたので、彼らが直接顔を
会わせるのは、この場が初めてである。

376

勇太「ボ、ボク、ソルブレインのファンなんです!サインもらっていいですか!」
デッカード「ゆ、勇太。そういうのは後にしたほうがいいんじゃないのか;」
勇太「あっ、いっけな~い!」

勇太の子供らしい発言に会議室が笑いに包まれる。

陸「挨拶が済んだ様ならさっそく用件に移らせてもらおう。
 まず、本来君達ブレイブポリスを指揮監督する東副総監が復帰するまでの間
 君達はここにいる正木本部長の指揮下に入ってもらう事になった。」
勇太「よろしくお願いします!」一同「「お願いします!」」
正木「こちらこそ、よろしくな」
ドリルボーイ「……(…正直、東さんより、物分りがよさそうな人でよかったね♪…)」
パワージョー「……(…馬鹿ッ!思っても口に出すんじゃねえ!…)」

陸「ゴホンッ!」
二人「Σ(゚Д゚;)(慌てて姿勢を正す)」

陸「それで、今回の事件だが、聞いている通り昨晩・都内の広範囲にて
  金属窃盗事件が発生した。だが、皆薄々感づいているかもしれんが、
  これは普通の金属窃盗ではない。被害のうち、最新鋭の防犯設備を
  備え付けた鉄鋼倉庫や自動車倉庫3件から、なんの遺留品も無く
  内部に保管されていた金属類がごっそり盗まれている。それに
  近隣住民からの聞き込みの結果、それだけの金属が運び出されたのにも
  関らず、誰一人として物音を聞いたり、トラック、重機類を目撃した者が
  いないと来ている。」
大樹「確かに普通に考えたら不可能犯罪だ…が」
勇太「Gショッカーみたいな連中なら、それも可能って事ですね。」
正木「その通りだ。奴らのような大規模な組織が盗み出した金属を
   不法兵器の開発や、資金獲得のために第三国へ密輸するかもしれない。
   早速捜査第三課から資料を引き継ぎ、捜査に当たってもらいたい!」
一同「「はいっ!」」

377

***秘密通路***

純「それにしてもすごいよな~、勇太君は。こんな小さいのに俺より階級上なんだから。
 俺なんか、こなぐらいのころなんか、鼻水垂らしてたもの。」
勇太「そ、そんな、ボクなんて全然…デッカードやみんなのお陰です!」
ガンマックス「そうそう、俺たちがいねぇと何にも出来やしねぇんだから、うちのおチビさんは」
勇太「!?…もぉッ、いくらなんでもそれはないだろう、ガンマックス~!」
デッカード「ハハ、何、今の私たちがあるのもまず第一に勇太のお陰なんだ。そうだろ?」
ガンマックス「フン…まぁな」
玲子「本当にみんな人間そのものね。うちのドーザーもみんなと会えば
 喜ぶと思うわ。そうそう、純君も昇任研修受けたら?」
純「やだなぁ、こっちに戻ってきてから、事件にてんてこまいでそんな暇ないですよ。
 それに俺はこうやって現場にいる方が性に合ってますからね」
大樹「ハハハ…純らしいや。」
勇太「あっ、そうだ大樹さん!さっきの事なんですけど…」
大樹「ああ、サインの事かい?俺なんかのでよければいくらでも書いてあげるよ」
勇太「あ、あとそれに、ソルブレインでの事いろいろ教えてください!
 刑事になる前から、皆さんの活躍にわくわくしてたんです!」
ダンプソン「自分もであります!ロボット刑事の先輩である、ドーザーさんの
 お話を是非お聞きしたいです!」
デッカード「私たちもお願いします」
大樹「ああ、勿論いいさ。さっそく資料が届くまでキミたちの部屋で話そうか」
勇太「やったぁ、やっぱり凄いよなぁ!なんたって、人の命だけじゃなく、
 心も救うんだからね!」
大樹「…人の…心か」
デッカード「…?」
勇太「どうかしたんですか?」
大樹「実は…ソルブレインが解散する直前、俺たちはある犯罪者と戦ったんだ。
 だが…だが、俺たちは彼の命も、心も、救う事が出来なかった…。俺たちの最後の事件は
 完全な敗北だった。そして、また、犯罪の発生件数は減るどころか増加している。
 ふと、思う事があるんだ。俺たちのやって来た事なんて、ちっぽけな事だったんじゃないかって。」
勇太「そんな…」
大樹「だが、俺は信じている。確かに犯罪の無い世の中なんて、やって来ないのかもしれない。
 それでも、一人でも多くの被害者と、犯罪者の心を救う事が俺たちの使命なんだって。
 それが、少しでも優しい世界に繋がるなら、俺たちは戦い続けて行こうって!
 こうして、ソルブレインが再結成されて、君達と合同捜査を行えるのも一つの運命なんだと思う。
 俺は、俺たちは、今度こそ、誰の命も、心も見捨てたりしない。キミたちもそのために、
 一緒に戦ってくれるね」
勇太「ハイッ、勿論です!ねぇ、みんな!」
一同「「オウッ!!!」」

正木「……(ふふ…大樹、勇太くん、そしてみんな。君達のような若者がいる限り、警視庁の…
 いや、世界の未来は安泰だ。まったく、お前の慧眼にはつくづく頭が下がるよ、冴島…)」

378 

***都心郊外・某所***

謎の金属盗難事件の捜査が始まって3日が経過した。
手掛かり一切無しの事件の捜査は困難を極めたが、いくつか新情報が浮かび上がった。
まず、密室と思われていた倉庫には、唯一、外界との接点として、通気口が存在し、
それらの蓋まで消失している事、盗難事件が発生した近辺では、その日の夜、
犬や猫などペットの失踪事件が12件発生していた事、盗難事件の翌日、
前日とは正反対の方角で、廃車置場などで、複数件の金属盗難事件が発生した事である。

それでも、状況を大きく進展させる事実は見つからず、事件発生箇所の同心円等から、
「クロス800」が搾り出した、犯人グループが選挙している可能性の高い箇所を、
手分けして虱潰しに調査していた。

ガンマックス「ついたようだぜ」
ドリルボーイ「ひゃあ、なんか寂しい所だなぁ」
勇太「林しかないねぇ」
デッカード「クロス、詳細データを頼む」
クロス800『現地点は個人所有の土地です。敷地内に、かつて一帯を所有していた建設会社の
 管理事務所と資材置き場が、地価下落の影響で手付かずのまま放置されています。』

勇太が、デッカードの運転席から降り、デッカードのパトカー形態から、
二足歩行のロボット形態にチェンジする。ガンマックスもトレードマークと言える
白バイを停め、そこから降りた。

デッカード「私と勇太はその資材置き場を当たる。ドリルボーイとガンマックスは雑木林を頼む。」
ドリルボーイ「オーケー!」
ガンマックス「まかせときな…、ベイビィ!」

「進入禁止」を示す、低い柵と有刺鉄線を越え、四人は二手に分かれて歩き出した。

勇太「それにしても本当に寂しい所だなぁ…昼間なのになんか出そうだよ」
デッカード「ハハハ、怖いのか?勇太」
勇太「そ、そんなんじゃないよッ!」
デッカード「ハハ、いやぁ、スマン、スマン…むっ?あれがその、資材置き場か?」

間も無く、結構大きいが、トタン張りの粗末な倉庫と、プレハブの事務所が見つかる。
外壁の会社名は風雨に晒されて剥げ落ちており、倉庫の中は朽ち始めている。
未だに残っている、錆びたヤカンや、カップ麺の容器、だいぶ前の雑誌等のゴミだけが、
かつてそこに人が出入りしていた事を思わせた。

勇太「何にも無いみたいだよ、デッカード」
デッカード「うむ、盗んだ金属を隠して置けるだけのスペースも見たところ無いしな…」
勇太「って事はここも外れ…ッ!?」
デッカード「どうした勇…!!!」

379

振り返った二人の目に飛び込んできたのは―――
――先程まで微塵も気配を感じさせなかった、一人の少年だった。
年頃は勇太と同じくらいか、それよりも小さい。長く伸びた黒い髪の
下に見える顔はけっこう可愛らしく整っている。そしてなぜか少年は
ボロボロになった大きな布を肩から羽織り、その下は裸であるように見えた。

と、突然少年が身を翻して走り出した。

勇太「き、キミッ!待つんだ!」

勇太とデッカードが追いかけると、少年は倉庫の裏手の藪に入り込んだところで、
突然姿を消した。

デッカード「なにッ!?」
勇太「ま、まさか…本当にお化け!?」

恐る恐る少年の消えた位置に近づいていく勇太。
そして、今度は短い叫び声とともに勇太の姿がデッカードの視界から消えた。

デッカード「!?…勇太!?馬鹿なっ!!!」

慌てて、二人の消えた位置に近づくデッカードだが、
幽霊の正体見たり、あまりに単純な真相に気がつく。

二人の消えた、位置に、そう、どこかで見た事のあるような通気口がポッカリ口を開けていた。

デッカード「糞ッ!地下か!ドリルボーイッ!!!」

380
 
勇太「痛てて…一体何が…?」

通気口を滑り落ちた勇太の視界は闇が支配していたが、
突然頭上から強い光が放たれ、思わず目を瞑る。

勇太「……っ…えっ?ここは…」

どうやら電灯が点いたようである。
再び目を開けると、周囲は鉄の壁で覆われ、なにかよくわからない鉄屑があちこちに散乱していた。

少年「ハ・ハ・ハ・ハ・ハ…いらっしゃい、勇太くん」

周囲によく反響する甲高い声にビクッと体を震わせる勇太の
眼前に、先程の少年がゆっくりと歩み寄って来た。

勇太「きっ、キミは…?!なんでボクの名前を知っているんだ!」
少年「さっき、おまわりさんのロボットがキミをそう呼んでいたからね」
勇太「き、キミは誰だ?」
少年「僕?僕はドラス」
勇太「ドラ…ス…?(外国人かな?って、そんな場合じゃない!)
 ブレイブポリスの友永勇太だ!」
ドラス「?…キミもおまわりさんなの?へぇ、凄いんだね」
勇太「こ、この周りの金属はキミがここに持ってきたのか?!」
ドラス「ああ…これ?そうだよ、この部屋を作るのに使ったんだ」
勇太「いったいなんの「ねぇ…」

勇太の言葉を遮って、ドラスと名乗る少年は逆質問を始めた。

ドラス「ねぇ、僕のパパを知らない、望月敏郎っていって、科学者なんだ」
勇太「キミの…お父さん?」

誰が描いたのか。勇太の前に、非常に上手な似顔絵をドラスが差し出す。

勇太「し、知らないけど」
ドラス「そう…パパは僕の前からいなくなってしまったんだ、僕をひとり追いてさ」
勇太「キミを一人にして!?そ、そんな…」

自分の子供を一人残していなくなるなんて、なんて酷い親なんだ!
もしかして、このドラスは悪の組織に繋がる人物の子供で、
親に命令されて盗みを?でも、どうやって…と、勇太が思考したところで
再びドラスが口を開いた。

ドラス「ねぇ、僕、今すごくお腹が空いているんだ、そりゃもう死にそうなくらいにね」
勇太「え?」
ドラス「よかったらなにか食べ物が欲しいんだけど…」

かわいそうに、ご飯も食べていないなんて…。
最初、ドラスを警戒していた勇太は、完全に彼に対して同情していた。

勇太「そのくらいなんて事ないよ。待って、今、ポケットに…」

―ビスケットが何個か入ってるから、あげるよ。あまりお腹の足しにならないかもしれないけど…。
そう勇太は言いかけた。

ドラス「そう…、じゃあ遠慮なく……、イ タ ダ キ マ ス ♪」

381

勇太「え?」

次の瞬間、ドラスの瞳が赤く光り、物凄い力で勇太の首根っこを掴んできた。

勇太「っ!?…ぅ…ぐぁ…な…に…す………いっ!?」

勇太は目を皿のように見開いた、小さな少年だったドラスの体が、
くすんだ銀色に変わると、見る見る姿を変えていき、あっというまに
バッタを思わせる2メートル近い怪物に変化したのだ。

ドラス「よかったぁ…。勇太くんが『い・い・人』で。やっぱり、犬や猫じゃだめだね」
勇太「…ぁ…ひっ……」

異形の怪人に変身したドラスであるが、声は澄んだ少年のままである。
それが、一層不気味に感じられ、勇太の恐怖心を駆り立てた。
叫び声を上げたいが、喉を締め付けられ、声を出す事もままならない。

ドラス「安心して。キミは死なない。僕の…神の体の一部として永遠に生きるんだ。
 下等な人間にとって、これ以上の光栄は無いと思うよ?ハ・ハ・ハ・ハ・ハ!」

ドラスの胸が蠢くと、そこから、銀色の半球状の物体が現れ、
熟れたイチジクのようにグロテスクな口を開けた。

勇太(デッカード!!)

勇太が声をならない叫びを挙げたその時である!

ドラス「!?」

ドラスが勇太の首根っこを離し、大きく横飛び下と思うと。
突然、地下室の壁の一部が爆ぜ…巻き上がる土煙から飛び出した
腕が、ドラスを鷲掴みにした。

382

勇太「デッカード!!!」
デッカード「ホールドアップ!ブレイブポリスだ!」

ドラスを掴んだまま、デッカードがいつもの決め台詞とともに、手帳を開く。

デッカード「大丈夫か勇太!?」
ドリルボーイ「ひゅ~っ!間一髪ギリギリセーフ、やっぱり僕を連れてきて正解だったでしょー!」
ガンマックス「ああ、お前もたまには役に立つみてぇだな、坊や。」
ドリルボーイ「ムッカ~ッ!!たまには余計でしょ!た・ま・に・はッ!」

二人と合流したデッカードはドリルボーイのドリルで地面に潜り、間一髪で
勇太の元へ駆けつける事に成功したのだ。

勇太「みんな、ありがとう!助かったよ!そうだ…デッカード!そいつが、金属窃盗の犯人だ!」
デッカード「なにッ!本当か?!」

デッカードは右腕に握った異形の怪物を凝視する。

デッカード「こいつ、ボディの材質が盗まれた金属と一致している。ロボット……!?生体反応だと!生物なのか!?」
ドラス「ぐ…くるし……」

異形の生物の口から漏れるか細い声に、デッカードはそれを握る力を思わず緩めてしまう。
と、同時に、顔面に強烈な衝撃を受けて吹き飛んだ。

デッカード「ぐあっ!!!」
勇太「デッカード!!!」
二人「「デッカードっ!」」

二人がドラスに向けて拳銃を構えるが、突如全身に見えない衝撃が走り
銃を取り落としてしまう。

383

ドラス「駄目だなぁ、おまわりさん。犯人はちゃんと、拘束しておかないと。
 ロボットのくせに人間みたいな事を考えるんだね。子孫でもない
 自分より弱い相手に同情する惰弱な生き物は人間だけだからね。
 ちょっと演技すれば、すぐに引っ掛かってくれるから助かるよ」
デッカード「くっ……!」
ドラス「にしても、キミたちは不幸だよね。愚かな人間と同じように、感情なんてものが
 プログラムされてるんだからさ」
デッカード「なんだと!?我々は人の心を得た事を一番の誇りに思っている!
 人間の、心の素晴らしさがわからないのか!?」
ドラス「心が素晴らしい?馬鹿だね、感情ほど生き物に不必要なものはないんだ!
 だから、感情に支配される人間は二流の生き物。淘汰されるべきなんだよ!
 おまわりさんたちの敵の犯罪だって感情が引き起こしているんでしょ?」
デッカード「…だ、だが…」
ドラス「それに、キミたちロボットが感情なんてお笑い種だよ。所詮、ソレだって…
 人間がプログラムした……?なんだろう、この生命エネルギーは…。
 おまわりさんたち、普通のロボットじゃないね?」

デッカードのAIをコピーして作られた、超AIロボットはフォルツォイク事件以来、
ロボットを超越した、機会生命体へと進化している。ドラスの分析センサーは彼らの
体内に眠る、生命エネルギーを見抜いたのだ。

ドラス「ア・ハ・ハ…面白いや。壊しちゃおうと思ってたけど、やっぱり
 キミたちは、ボクの新たな力になってもらう事にしたよ!」
ガンマックス「なにおぅ!」
ドリルボーイ「へーんだ!誰がお前なんかに!」
デッカード「もう容赦しない!お前を全力で逮捕する!」
勇太「行くよ!みんな!」
ドラス「ア・ハ・ハ・ハ・ハ!僕を逮捕?キミたちがいくら束になってかかっても、
 僕には勝てないよ?でも、確かに一度に3人も相手にするのは、ちょっと面倒だね」

384

すると、ドラスの体の一部が切り離されると、見る見る打ちに大きくなり、形が作られてくる。
それはクモのような8本の足に、女性の上半身を取り付けた、巨大な怪物であった。

クモ女「キシャーッ!!!」
ドラス「たくさんの金属を取り込んでおいてよかった。クモ女、 あのおまわりさんたちを、やっつけるんだ」

ガンマックス「あの野郎、分身しやがった!」
デッカード「こっちも応援を呼ぶんだ!」
勇太「うん、こちら友永勇太、………えっ!?」

突如、辺りが真っ暗になったかと思うと、周囲の空間が広がった。
辺りには、さきほどとはうって変わり、折れた石柱等が散乱している。

デッカード「なんだここは!?」
ドラス「ここはクモ女の巣だよ。外との連絡は一切取れない。さぁ、おまわりさんたち。
 ようこそ、神の狩場へ…ハ・ハ・ハ・ハ、ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ!」

ドラスの甲高い耳障りな笑い声が周囲に響く。果たして、ブレイブポリスは
ネオ生命体によって齎された、絶体絶命の窮地を脱する事が出来るのか!?

385 

○ブレイブポリスの面々→東副総監復帰まで、正木本部長の指揮下に。
 ソルブレインと金属窃盗事件の合同捜査を開始。
○ソルブレイン行動部隊の三人→都心の治安悪化のため、各々の任地から呼び戻され再結成。
 ブレイブポリスと金属窃盗事件の合同捜査を開始。

○友永勇太→公害廃屋の地下でドラスと対決。
○デッカード→公害廃屋の地下でドラスと対決。
○ドリルボーイ→公害廃屋の地下でドラスと対決。
○ガンマックス→公害廃屋の地下でドラスと対決。
○加賀美陸→BP、SRBに不審な連続金属窃盗事件の合同捜査を命じる。
○正木俊介→東副総監復帰まで、ブレイブポリスを指揮下に加える。
●ドラス→今回の連続金属窃盗の犯人。隠れ家にやって来た、勇太とブレイブポリスを誘き出し
 吸収しようとしている。
●クモ女→ドラスとともにブレイブポリスと共闘。勇太たちを、自分の『巣』へ引きずり込む。
 なお、オリジナルよりも大きい。

○ブレイブポリスの一人、デュークは現在、ブレイブポリスUK復興のため日本を離れている。
○シャドウ丸は加賀美総監の指示で、地球教に関する隠密任務を負っているらしい。

386

【今回の新登場】

○デッカード(勇者警察ジェイデッカー)
勇者刑事。友永勇太少年との触れあいで、超AIに心を宿した最初のロボット。
ブレイブポリスの超AIは、彼のものをベースに設計されている。
パトカーに変形。実直な性格。友永家の車庫で寝泊りしており、ご近所では、
友永パト吉として親しまれている。ジェイローダーと合体してジェイデッカーとなり、
さらにデュークファイヤーと大警察合体してファイヤージェイデッカーとなる。
なお、アニメ終盤で、ブレイブポリスの面々ともども、ロボットから
機会生命体へと進化を遂げている。

○マクレーン(勇者警察ジェイデッカー)
コンバット刑事。冷静沈着なビルドチームのリーダー格。判断力にも優れており、
戦術や作戦の立案も得意とする。クレーン車に変形。ビルドチーム3体で合体し
ビルドタイガー、さらにドリルボーイも加えてスーパービルドタイガーとなる。


○パワージョー(勇者警察ジェイデッカー)
カンフー刑事。ビルドチーム。少々がさつだが、さっぱりとした気性の熱血漢。
素早い身のこなしと豊富な打撃技を持つ。ショベルカーに変形。


○ダンプソン(勇者警察ジェイデッカー)
レスラー刑事。ビルドチーム。生真面目で頑固な性格で、
質実剛健をモットーとする肉体派。ダンプカーに変形。


○ドリルボーイ(勇者警察ジェイデッカー)
サッカー刑事。ビルドチーム。ドリルタンクとジェット機に変形。
精神が子供っぽく、無邪気で悪戯好き。

○ガンマックス(勇者警察ジェイデッカー)
白バイ刑事。ぶっきらぼうな性格で、スタンドプレーが多いが、
実は寂しがり屋。ガンバイクと合体してガンマックスアーマーに。
そしてマックスキャノンに変形し、ファイヤージェイデッカーの脇に合体する。

387 ○西尾大樹警視正/ソルブレイバー(特救指令ソルブレイン)
特装救急警察ソルブレイン行動隊部の隊長。アメリカ留学中にFBIで訓練を受けた。
文武両道で、強い正義感と熱い魂、そして優しい心を兼ね備えている。
犯人逮捕や障害物破壊に特化したソリッドスーツを纏い、ソルブレイバーとなる。

○樋口玲子警視/ソルジャンヌ(特救指令ソルブレイン)
ソルブレイン行動隊部の隊員。優しい性格だが、強い芯を持った女性。
医師でもあり、ソリッドスーツをプラスアップしてソルジャンヌとなり、
災害現場での負傷者の応急処置などに活躍する。

○増田純警部補(特救指令ソルブレイン)
ソルブレイン行動隊部の隊員。少々そそっかしいが、強い正義感を持つ熱血漢。
ソリッドスーツは持っていないが、大樹の捜査面でのサポート役として無くてはならない人物。

●ネオ生命体ドラス(仮面ライダーZO)
望月博士が生み出した完全生物。金属を吸収して、自在に操る事ができ、
高い戦闘力、生命力と知能を誇る。ただ、精神や声色は幼い子供そのもの。
博士を「パパ」と呼び、非常に強く執着しており、狂気の博士に教え込まれた
とおり、人類を滅ぼす事によって博士に認められると信じている。

●クモ女(仮面ライダーZO)
ドラスの細胞と液体金属で構成される傀儡。
八本の手足と、口から吐き出す糸が主な武器。
また、特殊な空間に相手を閉じ込める事が出来る。 


『心ある者たち』-2

作者・ボー・ガルダン

388

***警視庁・特別救急警察司令室***

クロス800『緊急事態・B地点の捜査へ向かっている、友永警部らとの通信が遮断されました。』
正木「なにぃ?」
亀吉「何かあったんですかね?」
正木「うむ、各地点を調査している大樹たちにB地点に急行するよう、連絡するんだ!」
純「はいっ!」

***都心郊外・某所地下***

デッカード「ぐあっ!?」
勇太「デッカード!」

ネオ生命体ドラスと対決するデッカードは、その
驚異的なパワーとスピードに翻弄される一方だった。
強烈なパンチを何発も受け、装甲のあちこちに凹みが生じている。

ドラス「なーんだ、図体ばかり大きくて、全然大した事無い…ねッ!」
デッカード「くっ!チェーンジ!」

ドラスがさらにもう一発パンチを見舞おうとした瞬間、デッカードが
パトカー形態に変形して素早く離脱、ドラスと距離を取り、再びロボット
形態を取り、銃を構える。

デッカード「これならば…ッ!?ぐあはぁッ!」
ドラス「僕が飛び道具を持っていないでも思ったの?」

だが、その弾丸が発射される前に、ドラスは右腕を切り離して
ロケットパンチを繰り出し、それがデッカードの胸部に突き刺さり
そのまま、仰向けに倒れた。ドラスはさらに、デッカードに圧し掛かり殴り続ける。

389勇太「ああっ!?」
ガンマックス「デッカード!」
ドリルボーイ「くそぉ~、これでも…うわっ!?」

遠巻きにクモ女に銃撃を浴びせ、牽制していた二人だが、
デッカードに気を取られた隙に、口から吐き出した糸に絡め取られてしまう。

勇太「ガンマックス!ドリルボーイ!」
ガンマックス「ちぃッ!こいつは…」
ドリルボーイ「うわ~ん;取れないよぉ~!」

見た目は白い糸だが、正体は金属繊維。
糸はあっという間に二人の自由を奪った。

ドラス「ハ・ハ・ハ・ハ・ハ!馬鹿だね、自分の心配だけしていれば
 こんな事にはならなかったのに。まぁ、キミたちはそこで
 大人しくしてなよ。後でちゃんと吸収してあげるからさぁ」
ドリルボーイ「そ、そんなぁ…僕たち食べられちゃうの!?
 ロボットの料理なんて聞いた事ないよ!」
ガンマックス「くっ、可愛げのねぇ、坊やだぜ!今にたっぷり躾けてやる!」
ドラス「できるものならやってみてよ。でも、まず、その前に…」

クモ女に二人を見張らせ、ドラスは赤紫の瞳を、足元のデッカードに向ける。

デッカード「くッ、私はどうなってもいい。だから…勇太と二人は解放するんだ!」
勇太「デッカード!駄目だよそんな!」
ドリルボーイ「そうだよデッカード!」
ガンマックス「そいつは、話の通じるような相手じゃない!」
デッカード「だ…だが、このままでは…」
ドラス「ふふ、おまわりさんよりはまだ、他のみんなの方が賢いみたいだ。
 交渉ってのは自分が相手と対等以上の時にやらないと意味が無いって
 そんな事も知らないの?それに、やっぱりキミたちは人間の中でも
 飛び切り愚かな心を植えつけられてるみたいだね。他人の為に自分を
 犠牲にするなんてさ。馬鹿じゃないの?」

ドラスは冷笑を浴びせ(といっても、怪人の顔に表情などないのだが)ると、
更に強くデッカードを踏みつけた。

390

デッカード「なぜだ…、なぜそこまで人の心を貶めるんだ…!」
ドラス「ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ…人間の心は『悪』だからだよ。
 パパに教えてもらったんだ。人間は知能を発達させた引き換えに、
 感情なんていう不要なものを生み出してしまった。その感情のせいで、
 同族で殺しあったり、地球を汚したり、悪い事ばかりするんだってね。
 だから、僕がそういう愚かな人間たちを皆殺しにして、新たな生態系の
 頂点に君臨するのさ!『神』としてね」
勇太「な、なんだって!?」
デッカード「なんて事を言ううんだ…」
ドラス「そのために僕はもっと、もっと強くならなきゃいけないんだ。
 もっと強くならないと…お兄ちゃんなんかに負けないように
 強くならないと。だから、キミたちのエネルギーをもらうよ…」
デッカード「そ、そんな事をして…一体、なんになるというんだ…」
ドラス「パパは待っているんだよ。僕が『神』になるのをさ。パパは…
 パパは、僕が弱かったから、お兄ちゃんに負けたりしたから、
 僕の事を捨てたんだ。殺そうとしたんだ。でも、僕が強くなれば、
 他の誰よりも強くなって『神』になれば、パパは僕を認めてくれる。
 お兄ちゃんや宏君なんかじゃなく、僕だけを愛してくれるんだ!」
デッカード「なっ…!?それじゃあ「待ってよ!」

ドラスの背に向けて勇太が声を張り上げた。

ドラス「…なに?」
勇太「それじゃあ…キミは…キミは本当はお父さんに好きになって欲しいだけなんだろ!」
ドラス「そうさ、『神』になればパパは僕だけを見てくれるんだ。ずっとパパは僕にそう言っていたんだからね。」
勇太「じゃあ…じゃあ、キミもやっぱりボクたちと同じなんじゃないの!?
 ボクだって、ううん。ボクだけじゃないよ!お父さんやお母さんの
 事が好きになって欲しくない子供なんていないんだ!」
ドラス「違う!僕は、キミたち下等生物とは違う!愛されるのは『神』として当然の事なんだ」
勇太「他の誰も愛さないのに、自分だけ愛されようなんておかしいよ!やっぱり、キミにも
 ちゃんとあるんだ!心が!人を、生き物を愛する心が!気づいていないだけなんだ!」
デッカード「勇太ッ!」
二人「「ボスッ!」」
ドラス「違う!僕に感情なんて必要ない!僕は究極の生命体として…」
勇太「違くなんかない!一番感情に支配されているのはキミ自身じゃないか!」
ドラス「黙れぇッ!!!」
勇太「うわああっ!!!」

ドラスの念動力で勇太が大きく吹き飛び、石柱の一本に叩きつけられた。
たまらず、勇太はそのまま意識を失う。

391

ドラス「よくも…よくも、僕を下等な人間なんかと一緒に語ってくれたね。
 許さない!勇太君、やっぱりキミはバラバラにしてあげるよ!」
デッカード「!?…き、貴様!そんな事はさせんッ!」
ドラス「!!!」

先程まで、ドラスに押さえつけられまったく動けなくなっていたデッカードが突如立ち上がり、
ドラスを思い切り殴り飛ばした。勇太と同様壁に向かって吹き飛んでいく、
ドラスだが、中空で一回転して石柱を蹴り、すぐ体制を立て直す。

ドラス「くっ…いいさ、惜しいけどお前も壊してやる!」

ドラスの右肩にレンズ状の物体―必殺のマリキュレーザーの発射装置が現れる。

ドラス「死んじゃ…エッ!?」

その時である、漆黒の闇を切り裂きドラスの体に何十発もの光弾が打ち込まれた。
ドラスの体が火花を上げながら吹き飛ぶ。と、同時に異空間が裂け、元の地下室が姿を現した。

ブレイバー「ふっ…ふぅ~…、なんとか間に合ったようだな!」
デッカード「あれは、ソルブレイバー!!!」

ドリルボーイの開けた穴から、連絡を受けたソルブレイバー、ソルジャンヌ
ソルドーザーの三人が駆けつけてきたのだ。冷静さを欠いていた、ドラスは
三人の接近を察知できず、ギガストリーマーの直撃を受け、部屋の隅に積まれていた
鉄屑に頭から突っ込む。

392

ドーザー「大丈夫ですか、みなさん!?」
デッカード「私はいい、早く勇太を!」
ジャンヌ「わかったわ!」

壁際で失神している勇太の元へ、ソルジャンヌが駆けつける。
一方のブレイバーは、雁字搦めになっているドリルボーイと、
ガンマックスの元へ駆けつけ、大きく跳躍すると
ケルベロスΔの刃を振り下ろす。

ブレイバー「ケルベロススラッシュ!!!」

ドリルボーイとガンマックスを絡め取っていた糸がブレイバーによって切断され、
バラバラと崩れ落ちる。

ブレイバー「大丈夫か!二人とも!」
ドリルボーイ「やった!これでこっちのもんだよ!」
ガンマックス「ヒューッ、さすがソルブレイバーだぜ」
クモ女「シャーッ!!!」

と、いつのまにか天井に移動していた、クモ女が、ブレイバーに襲い掛かってきた。

ドリルボーイ「危ない!シューット!!!」
クモ女「…!?」

しかし、クモ女はドリルボーイの蹴ったボール爆弾をまともに暗い、床へと落下。
しかし、それでも起き上がり、しきりに威嚇の声を上げている。

ガンマックス「こっちは俺たちに任せて、アンタはうちのおチビさんを頼む!」
ブレイバー「わかった!」

ガンマックス「随分と熱い抱擁をしてくれたな、レディ?たんと、お礼をしないとなぁッ!
 ガ―――――――ンバァァァアイック!!!」

ガンマックスが右手を上げると、外に止めてあった彼愛用の白バイが外から走り込んできた。
素早くそれに跨ると地下室内を、縦横に駆け回る。

クモ女「シャーッ!!!」

クモ女が再び、糸を吐き出すが、ガンマックスを捉える事ができない。

393

ガンマックス「今度はこちらから行くぜ!」

ガンマックスがショットガンを手に取り、クモ女に向けて発砲。
クモ女の足のうち、2本を吹き飛ばした。クモ女は耳をつんざく様な悲鳴を上げる。

ドリルボーイ「よーし!トドメは僕だ!チェーンジッ!!!」

ドリルボーイがタンク形態に変形すると、隙だらけになったクモ女に突進。
慌てたクモ女は、糸を吐き出すがそれらは全てドリルの回転で弾き飛ばされてしまう。

ドリルボーイ「くらええぇぇぇぇぇぇっ!!!」
クモ女「ギィエェェェェェエエエエエエエッ!!!」

ドリルの回転に巻き込まれたクモ女は、ひとたまりも無くバラバラに切り刻まれて消滅した。

ブレイバー「勇太くん、大丈夫か!?」
デッカード「勇太!」
ジャンヌ「勇太くん!」
勇太「…う~ん…、あれ…?ボク…」
ドーザー「やった!気がつきましたよ!」
デッカード「勇太!」
ブレイバー「よかった!」
勇太「デッカード、みんな…?…ッ!ブレイバーッ!!!後ろォッ!!!」

目を覚ました勇太がソルブレイバーの肩越しに見たのは、
鉄屑の中から、怒りの眼差しを向け、立ち上がるドラスの姿だった。
ギガストリーマーを受けた影響で、体の装甲はあちこちが熱で変形してしまっている。
先程までの饒舌さはどこへやら。理性を失ったドラスは低いうなり声を上げながら、
ブレイバーへ襲い掛かった。

394

デッカード「クッ、させんッ!!!」
ブレイバー「ウッ…ケルベロススラッシュ!!!」
ドラス「グアアアアオォォォォッ!!!」

勇太の叫び声を聞いた、デッカードが拾い直していた銃を発砲。
ブレイバーへ、飛び掛ろうとしていたドラスの動きを止める。
さらに、ブレイバーが振り向きざまにケルベロススラッシュの一撃を浴びせ、
その左腕を切り落とした。がっくりと膝をついたドラスが、
傷口から、緑色の体液を流し荒い呼吸を繰り返している。

ドラス「ぐっ…あっ…なん…で?……『神』になる僕…が…なんで…こんなやつ…らに……」
ブレイバー「トドメだ!」

ドラスの頭にケルベロスΔを突きつけるブレイバー。
しかし、勇太が溜まらず、その腕を掴んだ。

勇太「まって!その子には、人間の心があるんだ!」
ブレイバー「なにっ!?」

と、その時、ドラスの右肩が閃くと眩い光が拡散発射される。
光は部屋のあちこちでスパークを起し、あたりは炎に包まれた。
慌ててドーザーが消火ビームを放ち消し止めようとするが、
火はあちこちこちから吹き上がってくる。

ブレイバー「くっ!これはッ!!!」
デッカード「…ッ!君はまだこんな事をッ!」
勇太「ボクたちは君にこれ以上危害は加えない!一緒に来るんだっ!」
ドラス「僕は…僕は『神』になるんだ!『神』になってパパの所に帰るんだ!
 キミたちなんかに負けるなんてことはあっちゃいけないんだ!!!
 ここでみんな蒸し焼きに…ウッ…があっ!?…ぐあああっ!!!」

飛行形態に変形して自分だけ逃げ出そうとしたドラスだったが、
突然、体のあちこちから蒸気のようなものを吹き出して苦しみだした。

ブレイバー「これは…!?」
デッカード「とりあえず、確保しなくては!」

デッカードがドラスに近づこうとしたその時である。

395

――『タイムスストップ!三秒殺し!!!』――

突如謎の声が響いたかと思うと、デッカードが火花を上げて吹き飛び、
ドラスが眼前から消失した。

デッカード「グアアアアッ…!?」
勇太「!?デッカード!」
ジャンヌ「一体何が!」
ドリルボーイ「ボス!後ろッ!!!」

一同が後ろを振り返ると、そこには、ドラスを軽々と担ぐ人影を見つける。
だが、それは人と呼ぶには余りに異様。全身は真っ白でザンバラ髪、
口が耳まで裂け、両脇の下からは翼のような膜が伸びている。

ブレイバー「貴様ッ、何者だ!」
???「フンッ、今から死ぬ連中に名乗る名など無い!キラーセイバーッ!!!」

怪人の持つ剣から光線が放たれると、あちこちで炸裂を起し、ますます炎が勢いを増す。
そして怪人はドラスを担いだまま、飛び去っていった。

勇太「ああっ、待てッ!!!」
ブレイバー「くっ、あと一歩の所で!」
デッカード「とにかく、我々も脱出しないと!」
ドーザー「まず、私が道を作りますから、皆さんはついてきて下さい!」
デッカード「わかりました、勇太!それにお二人も、私に乗ってください!」
ブレイバー「ありがとう、そうさせてもらうよ!」
デッカード「勇太も早く!」
勇太「うんっ…アレ?」

デッカードに乗り込もうとした勇太だったが、足になにか当たる感触。
見るとそこには、金の懐中時計が落ちていた。

勇太「なんだろう?これ…」
デッカード「早く!」
勇太「あっ!うんっ!!!」

396 ***地上***
ドリルボーイの開けた穴から立ち上る噴煙を前に、純と亀吉の二人は
で大樹たちが戻るのをヤキモキしながら待っていた。

亀吉「はわわぁ~、凄い煙だよ。変な鳥と虫みたいなのが飛んで行くし
  隊長たち大丈夫かなぁ」
純「なに慌ててるんですか亀さん!こんな事何度もあったじゃないですか!」
亀吉「でも心配なものは心配で…」
マクレーン「増田さん!戸川さん!」

一番離れた位置で、捜査を行っていたビルドチームの三人も慌てて駆けつける。

マクレーン「これは…ッ!?」
ダンプソン「ボスたちは無事なのでありますか!?」
純「それは、今隊長たちが…うわッ!!!」

突然、ひときわ大きい轟音と振動が起こる。

亀吉「ああっ!?」
パワージョー「…!?ボスゥゥゥゥゥッ!!!」

だが、その叫び声が途切れる前に、穴からソルドーザー、ドリルボーイ、
ガンマックス、デッカードが次々と飛び出してくる。
全員が、穴から離れた瞬間、再び爆音轟き、穴からは大きな炎が吹き上げた。

「「隊長ッ!」」「「ボスッ!」」

大樹「……ぶはぁっ!」
勇太「ふぅー、危なかったー」

「「隊長!!!」」「「ボスッ!!!」」

別れていたのは、2時間にも満たないにも関らず、
一同は、長年会わない親友同士のように再会を喜び合った。

397 

○友永勇太→ドラスが心を持っている事に気がつく。謎の懐中時計を拾う。
○デッカード→ドラスとの戦闘で大ダメージを負うが、ブレイバーとの共闘でこれを撃退。
○ドリルボーイ→クモ女と対決。ブレイバーの協力でピンチを脱し、これにトドメを刺す。
○ガンマックス→クモ女と対決。ブレイバーの協力でピンチを脱し、足を2本撃ち落す。
○マクレーン→正木の救援要請を受け取り、勇太たちのいる現場に駆けつける。
○パワージョー→正木の救援要請を受け取り、勇太たちのいる現場に駆けつける。
○ダンプソン→正木の救援要請を受け取り、勇太たちのいる現場に駆けつける。
○正木俊介→勇太たちとの通信遮断を察知し、BP、SRBに応援要請。
○西尾大樹→勇太たちの救援に駆けつけ、ドラスにギガストリーマーを見舞い、さらに左腕を切り落とす。
○樋口玲子→勇太たちの救援に駆けつけ、気絶した勇太の目を覚まさせる。
○ソルドーザー→勇太たちの救援に駆けつけ、消火活動を行う。
○増田純→正木の指令で、勇太たちの応援を要請。自身も現場に駆けつける。
○戸川亀吉→正木の指令で、勇太たちの応援を要請。自身も現場に駆けつける。

●ドラス→ブレイブポリスの面々とは優勢に戦いを進めるが、ソルブレインの救援と
     勇太の指摘に動揺した隙をつかれ、左腕を失うなど重傷を負う。エネルギー切れで
     苦しんでいた所を、謎の怪人に浚われる。
●クモ女→ドリルボーイとガンマックスを糸で絡め取るが、ブレイバーの救援で逆転。
     ドリルボーイのドリルアタックで粉砕される。

【今回の新登場】
○戸川亀吉警部(特救指令ソルブレイン)
特装救急警察ソルブレイン技術開発部員。通称「亀さん」。
明るくひょうきんなムードメーカーで、天才メカニック。
ソルドーザーの保護者的存在。

○ソルドーザー(特救指令ソルブレイン)
レスキュードロイド。階級は警部。ブレイバーらのソリッドスーツ以上の厚い装甲を持ち、
大規模災害での救助活動に活躍する。地上走行形態ドーザークローラーにも変形。
気は優しくて力持ち。他の警視庁所属のロボット刑事同様、非常に人間臭い性格。