『光平、決断の時!』-1

作者・ホウタイ怪人

1704 

――あれから数日が経過した。
牧村光平は、まるで何事もなかったかのように
いつもと同じく普段通り学校に通っている。

ちなみにフィリナも「しばらく様子を見る」と言って、
今もフランスに帰国せずに都内のホテルに滞在したままだ。

***江東区豊洲・朝倉家玄関先***

慎哉「帰れ!」
うさぎ「お願い! 光平くんに会わせてください!」

朝倉家を訪れた月野うさぎたちが、
玄関先で応対に出た朝倉慎哉と押し問答をしている。

亜美「ほんの少しだけでいいんです!
 光平くんと会って話を…」
慎哉「話をしてどうするんだ!?
 光平を助けてくれた事には礼を言うよ。
 …けどな、どうせアンタたちは光平の事を
 兵器か何かとしか思っちゃいないんだろ!」
美奈子「ひどいわ! そんな言い方!」
まこと「帰ろううさぎちゃん! こんな石頭と
 話しあっても埒が明かない」
レイ「同感だわ!」
うさぎ「でも……」

慎哉の横柄な態度にレイやまことも
怒りだしてしまい、冷静な話し合いも
できなくなってしまう。

慎哉「いいからもう帰ってくれ!!」
うさぎ「あっ…!」

玄関の扉は、うさぎたちの目の前で
無情にも閉められたのであった。

亜美「帰りましょう、うさぎちゃん。
 また日を改めて来ればいいわ」
うさぎ「うん……」

◇   ◇   ◇

一方、朝倉家の家の中では、2階の部屋から
光平が階段を降りて来た。

光平「慎哉、誰か来てたのか?」
慎哉「なんでもねーよ!」
光平「……??」

慎哉の露骨に不機嫌そうな態度に、光平は「?」な顔をする。

1705 

光平「ところで慎哉、学校の制服を今日クリーニングに出すって
 この前言ってただろ?」
慎哉「…ああ、そう言えば。でもあそこのクリーニング店の店員さん、
 無愛想で無口だから、俺苦手なんだよなあ…」
光平「だったら俺のも出すついでに代わりに行って来てやるよ」
慎哉「お前、もう大丈夫なのか…?」

慎哉は心配そうに光平を見つめる。

光平「…どうしたんだよ? 俺ならこの通りもう大丈夫さ♪
 おかげさまでもうこの通り元気ぴんぴん!」
慎哉「光平……」
光平「今までいろいろと心配かけてごめんな……。
 じゃ、行ってくるわ!」

光平は二人分の学生服をまとめて
大きな紙袋に詰め込むと、近所のクリーニング店へ
さっさと出かけて行くのであった。


***西洋洗濯舗 菊池***

朝倉家の近所にある、創業100年の老舗クリーニング店である。
ここの経営者夫妻はかなりの変わり者らしく、
「世界中の洗濯物を真っ白にする」と称してアフリカに渡っているそうで、
ここの店の留守は、店長を務めている息子さんに任せている。

その店長・菊池啓太郎は、真っ直ぐな性格のお人好しで、
しょっちゅう洗濯を頼みに来た客の相談に乗ったり、
代わりに買い物をしてあげたりと、その接客態度とサービスは
ご近所でも大変よいと評判なのだが、問題はこの店で雇われている
男性アルバイト店員の方なのだ…。

その店員の名前は分からないが、外見はやや長髪に茶髪。
客に対しても口は悪いし、ぶっきらぼうで愛想も悪い。
要するに接客態度は最悪なのだ。そんな理由で慎哉のように
敬遠する客も多い。しかし朝倉家の近所にクリーニング店は
この一軒しかないため、必然的に朝倉家はこの店の常連客となっていた。

巧「はい、学生服上下2着で2.200円だ」
光平「お願いします」

無愛想な店員=乾巧に提示された金額を支払う光平。
やっぱり今日も彼は愛想が悪い。
なんでこんな接客態度のよくない店員を雇うんだろう?と
疑問に思わなくもない…。
しかし光平は、なぜだか目の前の青年の事を
嫌いにはなれなかった。

1706 

真理「コラッ巧! お客様に対してスマイルだって
 いつも言ってるでしょ!」

店の奥から若い女性が出て来た。
この人も名前は知らないが、男性店員と同じくここの居候で、
本職の美容師の合間にこちらの店の手伝いもしているらしい。

巧「チッ…うっせーな」
真理「ごめんね、いっつもこんな怖いお兄さんが相手で」
光平「いえ、そんなことはないですよ。
 ここのお店はクリーニングにかけては
 一流だって前々から評判ですし」
真理「嬉しい事を言ってくれてありがとう。
 仕上がりは二日後だから、明後日の夕方頃にでも
 引き取りに来てもらえれば」
光平「よろしくお願いします」
巧「またなっ」

店から出る光平に対して手を振る巧。
それに対して光平も、去り際に礼をして立ち去る。
彼は彼なりに客に対して愛想よく振舞おうと、
これでも努力しているようだ。


***日本海溝・ブレイバーベース***

剣持「その後、朝倉家の様子はどうなっている?」
エルファ「この数日間、特に異常や異変は見受けられません」
千恵「なんだか不気味な静けさですね…」

レッドマフラー隊では、その後も牧村光平周辺の
警護と監視を密かに続けていたが、
その後は特に動きらしい動きもないまま、
数日間が経過しようしていた。

千恵「光平君に会いに行ったうさぎちゃんたちは、
 けんもほろろに追い返されたそうです」
海野「取りつくしまもないって訳か…」
剣持「博士、ここは私に彼への接触をご許可頂けませんか?」
村中「隊長自らがですか?」
剣持「そうだ」
佐原「我々に光平君を強制的に入隊させる権限はない。
 彼がブレイバーズに参加するかどうかは、あくまで彼自身の
 自由意志である事が大前提だ」
剣持「私が説き伏せます」

1707 

翌日――。

海防大学付属高校前に、2台の黒塗りの高級車が停まった。
それぞれ一台ずつ中から降りて現れた人物は、
一人は巨大企業として知られるスマートブレイン社のCEO・村上峡児。
そしてもう一人の初老のサングラスの男は、財界において
闇の権力を握っていると噂される大物・天王路博史である。

城之内「いやあ驚きましたよ。日本の財界を代表されるお二方が、
 我が校の生徒に注目されるとは」

海防大学の学校法人を運営する理事の一人である、
都議会議員・城之内正峰によって応接室へと案内される村上と天王路。

村上「助かりましたよ、城之内先生」
天王路「わざわざお手数をおかけして申し訳ない」
城之内「EP党の坂田龍三郎先生のご紹介とあっては
 断る訳にもいかんでしよう。……それにここだけの話、
 あまり大きな声では言えませんが、私は以前に国家防衛局長官を
 務めておられた真影壮一氏にもお世話になっていましたからね…」

応接室でソファに座って二人して待つ村上と天王路。
そこへ校長と教頭に一緒に連れて来られた一人の男子生徒が入って来た。

校長「お待たせしました」
教頭「付属高校総合普通科在籍、2年A組、牧村光平君です」
光平「………」

授業中、突然校長と教頭に呼び出された光平は、
訳も解らぬまま、ここ応接間へと連れて来られた。
目の前のソファに座っている賓客らしき人物二人に、
言い知れぬ緊張感を感じる。

城之内「牧村君、大事な授業中に
 わざわざ来てもらってすまなかったね」
光平「いえ…」
城之内「こちらはスマートブレイン社の代表取締役社長兼CEOの村上峡児氏、
 そしてある財団の理事長を務めておられる天王路博史氏だ」
村上「どうもはじめまして、村上です」
天王路「天王路だ。よろしく」
光平「牧村光平です。よろしく…」

とりあえず村上や天王路と握手を交わす光平。
しかしその手を握った瞬間に、底知れぬ冷たさを感じ取った。

光平「――!!(…この人たちは一体!?)」

村上「城之内先生、申し訳ないのですが、
 彼とは私と天王路さんの3人きりで話がしたいのですが」
天王路「少しの間だけ、座を外してはもらえないだろうか?」
城之内「それはお安いご用です。ではごゆっくり」

城之内理事は校長と教頭を伴って退室し、
こうして部屋の中には、光平と村上と天王路の3人だけになった。

1708 

天王路「時間が惜しい。それでは早速本題に入ろうか、
 牧村光平君……いいや、シグフェル!」
村上「我らが偉大なる帝国ガイスト・ショッカーは、
 改めて君を歓迎します!」
光平「――ア、アンタたちは一体!?」

光平は驚愕した。自分の目の前にいるのは
社会でもかなりの高い地位にいる人物だ。
それが突然「自分たちは人間社会に牙をむく側の
住人であり、お前も同じ闇の世界の側へと
引き込む!」と一方的に宣言したのだ。
それほどまでにGショッカーの地球侵略の手は、
自分の知らないところで社会の上層部にまで伸びていたのか。

天王路「驚いたかね?」
村上「何も恐れる必要などはありません。
 すでに日本の政財界にも幅広く我々の触手が伸び、
 しっかりと根が張っているのです」
光平「いったい俺に何の用だ!?」

光平は、身体の内から沸き起こりそうな恐怖感に
懸命に抵抗しながら、村上たちに問う。

村上「君はすでに栄光あるGショッカーの一員に
 選ばれたのですよ。光栄に思いなさい」
天王路「喜びたまえ。Gショッカーを支配される
 表裏六柱の至高邪神は、君にGショッカー最高の
 地位と待遇を与えると約束された」
光平「冗談じゃない! 俺はお前たちなんかの仲間にはならない!
 一方的に話を進めないでくれ!!」
村上「君に拒否権はない。これは決定事項です」
光平「帰れ! 帰ってくれ!!」

光平は、Gショッカーへの仲間入りを激しく拒絶する。
しかしここで村上と天王路は、悪役にはお決まりの脅迫文句を
会話の中に交え始めた。

村上「光平君、君には確か沖縄のご実家に今も
 父方の年老いた祖父母が暮らしておられましたね?」
光平「――!?」
天王路「君の可愛いガールフレンドや学校のお友達に後輩、
 そして母方のご実家のお美しい従姉君にも…」

光平の脳裏には、沖縄で暮らしている祖父母や、
優香、慎哉、雄大、そしてフィリナの顔が浮かぶ。

光平「やめろ! みんなには手を出すな!」
村上「三日間だけ猶予をあげましょう」
天王路「それ以上は待てん。よく考えてみる事だな…」
光平「………」

1709 

放課後――。
テニス部の練習をしている光平たち。

テニス部員A「お~い、牧村! お客さんだぞ!」
光平「俺に…?」

「誰だろう?」と光平が呼ばれて
テニスコートから出て行った先で待っていたのは、
いつもの軍服を脱いでスーツ姿に身を固めた剣持と村中だ。

光平「あなた方は…」

光平は、目の前の二人がこれまで度々お目にかかった
地球連邦軍の軍人である事を思い出した。

光平「何の御用ですか?」
剣持「まあ立ち話もなんだ。横に座りなさい」

そう言って剣持は、光平にベンチの隣に座るよう促す。

剣持「村上と天王路が君に会いに来たそうだな?」
光平「はい…」
剣持「何を言われたのかは聞かなくても大体想像がつく。
 Gショッカーに入れば最高の待遇とポストを用意する。
 しかしもし拒否すれば、君の身近な人間にも危害を加える。
 そんなところだろう?」
光平「………」
剣持「単刀直入に言う。ブレイバーズに入隊しろ。
 それが君自身のためでもある」
光平「俺のシグフェルとしての力に利用価値があるからですか?」
剣持「自惚れるな。正体不明の異能の力を持つ一民間人に
 これ以上勝手に外を歩き回られては、我々としても迷惑する。
 それだけのことだ!」
光平「…なっ!?」

ここで近くから話を聞いていた慎哉が憤って中に割って入る。
光平の事が心配で、こっそり立ち聞きしていたのだ。

慎哉「さっきから黙って聞いてりゃあ!
 そんな言い方ってあるかよ!」
光平「…慎哉!?」
剣持「君は?」
慎哉「海防大学付属高校2年A組、朝倉慎哉です!」
剣持「光平君の同級生か」
慎哉「アンタたち連邦軍がシグフェルに…光平にした仕打ちッ…。
 よもや忘れたとは言わせないぜ!!」

慎哉の言う「仕打ち」とは、恐らくコルベット准将の部隊の犯した
数々の非道な所業の事を言っているのだろう。

村中「あれはコルベット准将が勝手に――」
剣持「よせっ!」

釈明しようとした村中隊員を制止する剣持。
仮に今ここで"ブレイバーズ派とロゴス派の対立"という
地球連邦軍内部の複雑な構造関係を説明したところで、
一介の市民である慎哉には理解できないであろう。
むしろかえって責任逃れの言い訳にしか聞こえないに違いない。

村中「しかし隊長…」
慎哉「光平はアンタたちには渡さない!
 今日はもう帰ってくれ!」
剣持「また来る」

1710 

こうして剣持たちが諦めて帰ろうとしていたその時、
近くの道路を猛スピードで通行した黒塗りの怪しい車から
学校のテニスコートや校門めがけて銃が乱射された。

ゴメス「やれ…」

車の中に乗り射撃を指示していたのは、キャプテン・ゴメスだ。
Gショッカーからの光平に対する警告だ。

剣持「危ないッ! みんな伏せろォッ!!」

剣持の機転で幸い死者や重傷者は出なかったが……。

雄大「うわあああっ!!」

光平の後輩である岡島雄大が、左腕に掠り傷を負ってしまった。

光平「雄大!?」


***同校舎内・医務室***

すぐに医務室へと担ぎ込まれた雄大の左腕には、
しっかりと包帯が巻かれている。

雄大「いやあ、先輩たちにもご心配をおかけしました。
 軽い怪我で済んでよかったですよ♪」
光平「ごめんな、雄大。俺のせいで…」
雄大「…え? なんで光平先輩が謝るんですか?」
光平「………」

光平は、雄大も疑問の問いかけにもまともに答えられず、
無言のまま医務室から出る。廊下では剣持たちが待っていた。

剣持「これで解っただろう。君がシグフェルである以上、
 君自身の意思に関わらず、周囲の人間を危険に晒すことになる。
 これ以上他人を巻き込むな。このけじめは自分でつけるんだな」
光平「くっ…!!」
慎哉「待てよ光平!!」

雄大の負傷を目の当たりにした事と、剣持の言葉のダブルパンチで
居た堪れなくなった光平は、ショックでどこかへ駆け出してしまった。

帰りの車中で二人きりで話す剣持と村中。

村中「隊長、少し言い過ぎだったのでは…?」
剣持「…かもしれん。だが、俺たち大人がしてやれる事は、
 子供が道に迷った時に間違った道へと向かわないように
 決断できるよう導いてやることだ」

1711 

○月野うさぎ→牧村光平に会いに朝倉家を訪れるが、朝倉慎哉に追い返される。
○水野亜美→牧村光平に会いに朝倉家を訪れるが、朝倉慎哉に追い返される。
○火野レイ→牧村光平に会いに朝倉家を訪れるが、朝倉慎哉に追い返される。
○木野まこと→牧村光平に会いに朝倉家を訪れるが、朝倉慎哉に追い返される。
○愛野美奈子→牧村光平に会いに朝倉家を訪れるが、朝倉慎哉に追い返される。
○乾巧→「西洋洗濯舗 菊池」に来店した牧村光平に応対する。
○園田真理→「西洋洗濯舗 菊池」に来店した牧村光平に応対する。
○佐原正光→牧村光平のいる朝倉家の様子を監視している。
○剣持保→海防大学付属高校を訪れ、牧村光平に接触。
○村中隊員→海防大学付属高校を訪れ、牧村光平に接触。
○海野隊員→牧村光平のいる朝倉家の様子を監視している。
○佐原千恵→牧村光平のいる朝倉家の様子を監視している。
●村上峡児→海防大学付属高校を訪れ、牧村光平に接触。Gショッカーに加入するよう脅迫する。
●天王路博史→海防大学付属高校を訪れ、牧村光平に接触。Gショッカーに加入するよう脅迫する。
●キャプテンゴメス→牧村光平への脅迫の念押しのため、放課後に部活動練習中の海防大付属テニス部を襲撃。

○エルファ→牧村光平のいる朝倉家の様子を監視している。
○牧村光平→村上峡児と天王路博史から脅迫される、その後、剣持保から説得を受ける。
○朝倉慎哉→牧村光平を説得に来た月野うさぎや剣持保を追い返す。
○岡島雄大→テニス部の練習中に銃乱射に巻き込まれ、左腕に軽微な怪我を負う。
?城之内正峰→村上峡児と天王路博史を牧村光平に引き合わせる。

【今回の新規登場】
?城之内正峰(闘争の系統オリジナル)
メガロシティ選出の東京都議会議員。学校法人海防大学の24人いる理事の一人。
村上峡児や天王路博史の裏の顔を知っているのかは不明だが、
坂田龍三郎や真影壮一とも繋がりがあるらしい…。


『光平、決断の時!』-2

作者・ホウタイ怪人

1712 

夕暮れ時の河川敷…。
学校から帰宅途中の光平は、一人で斜面の上に仰向けに寝転がり、
ただボーッと沈みゆく夕日を眺めていた。

光平「………」

そこをたまたま通り掛かったのが、車で洗濯物の配達途中だった
乾巧と園田真理の二人である。

真理「巧、あの子確か…」
巧「あいつは…」

『西洋洗濯舗 菊池』の常連客として光平の顔を覚えていた
巧と真理は、気になり車を停め、光平の側に近寄って言葉を掛ける。

巧「おい、どうした?」
光平「…? あなたは確か…愛想の悪いクリーニング屋さん?」
巧「"愛想の悪い"だけ余計だッ!!」
光平「す、すみません…(汗」

つい余計な一言を口から滑らせてしまった光平だったが、
巧と真理の二人は、親切に自分の落ち込んでいる事情を聴いてくれた…。
元々は亡き父のような外交官を目指して夢を抱いていた事、
そして最近いろいろな事が起こり過ぎて困惑しており、
どうしたらよいものか道に迷っている事などを
光平は巧たちにありのままの心境を吐露したのである。

真理「外交官を目指してるだなんてすごいしゃない♪」
光平「そんな大したことじゃありませんよ…」
巧「…なんだ? 自分の夢に自信が持てないのか?」
真理「コラ巧!!」
光平「いえ、その人の言うとおりですよ…」
巧「どういう事情があるのかは知らないけどな、
 夢なんてそんな感じでいいんじゃねえのか?」
光平「えっ…」

巧は光平に、かつて自分は夢を持てなかった事、
そして今は「世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに
皆が幸せになりますように」という夢を持つに至った
経緯などを語り、光平にアドバイスするのであった。
それに熱心に耳を傾ける光平。

巧「要するに、あんまり思い詰めるな!ってこった」
光平「ありがとうございます。おかげで気持ちが楽になりました。
 ええっと……」
巧「乾巧だ」
真理「私は園田真理よ。改めましてヨロシクね」
光平「俺は牧村光平です」
巧「よく知ってるよ」
光平「え…?」

光平の事を以前から「よく知っている」と答えた乾巧。
その理由について、光平は"その時点"では
詳しく聞く事は出来なかった…。

1713 

――深夜。

***朝倉家・慎哉の寝室***

慎哉「………うう~ん…光平…俺はお前がブレイバーズに入るのは
 反対だからなぁ……むにゃむにゃ…zzz」
光平「………」

ベットの上で寝言を言いながら熟睡している慎哉の寝姿を
そっと見守っている光平。一度は寝たと見せかけて、
すっかり寝静まった夜を見計らって密かにベットから起き、
外出着に着替えた彼は、慎哉に最後の別れを言いに来たのだ。

光平「慎哉、今までありがとう」

そっと慎哉との別れを済ませた光平は、
自分の部屋に飾ってある、今は亡き両親の写真を見つめる。

光平「父さん、母さん、それじゃ行ってくる…」

◇   ◇   ◇

玄関から外へと出る光平。しかし――

光平「優香!?」
優香「光平くん…」

光平の目の前には沢渡優香が立っていた。
ただならぬ光平の決意と覚悟を察したのか、
心配で見に来たのだろう。
光平は黙って通り過ぎようとするが、優香がそれを引き留める。

優香「どうしても行くの?」
光平「みんなを守るためにはこうするしかないんだ」
優香「もう少しみんなでを考えましょう!
 今はフィリナさんだって日本に来ているんだし
 知恵を出し合えば、きっと何かいい方法が!」
光平「ごめん…。優香、今まで楽しかったよ。ありがとう…!」
優香「――!? 待って!!」

光平は一目散に走り出した。
優香も慌ててそれを追いかけるが、駅の近くに来た辺りで
光平の姿を見失ってしまった。

優香「…ひどい…ひどいよ……光平くん」

その場でぐったりと泣き崩れてしまう優香。
しかしそんな彼女に優しく手を差し伸べる誰かの姿が…!

???「大丈夫! 光平くんのことなら任せて♪」
優香「あなたは……」

1714 

***東京港湾地帯・某廃工場跡地***

乾巧に悩みを打ち明けた事で、気持ちが吹っ切れた牧村光平は、
一人で某所にある廃工場跡に赴き、村上峡児たちを呼び出した。
天王路博史の他に地獄大使まで一緒に来ている。

光平「………」
村上「待っていましたよ。ついに決心をしてくれましたか」
天王路「では一緒に行こうか。偉大なる表裏六柱の至高邪神が
 無幻城にて君をお待ちかねだ」

光平を迎え入れようとする村上と天王路だったが、
光平はその差し出された手を振り払った。

天王路「何の真似かね?」
光平「俺はGショッカーの仲間なんかにはならない!
 今日はそれをハッキリ伝えたくてここに来た!」
村上「なにっ…!?」

先程までの緩やかな表情を一変させる村上。

村上「どういうつもりです?」
光平「聞こえなかったのか? 俺はお前たちの
 仲間になんかならないって言ってるんだ!」
地獄大使「ぐははは!! こいつは傑作だ。
 どうするつもりだ村上よ? この小僧は
 我々Gショッカーに盾をつくと言ってきておるのだぞ!」

ハッキリとGショッカーへの参加拒絶の意思を表明した光平。

村上「ククククッ…ハハハハハ!!!」
光平「……?」

何を思ったか、静かに笑いだす村上。

村上「この私に恥を掻かせたからには…命はない!!」

次の瞬間、村上は激怒しローズオルフェノクに変身した。
それに呼応して地獄大使もガラガランダ、天王路もケルベロスⅡへと続けて変身。
3体の怪人が一斉に光平の息の根を止めるべく襲いかかって来た。

光平「――翔着(シグ・トランス)!!」

すぐにシグフェルに変身した光平だったが、迎え撃つ暇もなく
ローズオルフェノクに後方へと突き飛ばされた。

シグフェル「うわあああ!!!!!!!」

1715 

なんとか体勢を立て直そうとするシグフェルだったが、
間髪入れずにガラガランダの鞭やケルベロスⅡの左腕の爪が
容赦なくシグフェルに傷つけ、まるで反撃の隙がない。

ガラガランダ「温いッ! 温いわァッ!
 貴様はこのわしを誰だと思っておる!
 かつては仮面ライダー1号2号と死闘を
 繰り広げた地獄大使様だぞ!!」
ケルベロスⅡ「シグフェル、確かに君のパワーは凄まじい。
 だがいかんせん君にはまだ経験不足が目立つのだよ」

シグフェル「くそぉ…!!」

赤子のように一方的に甚振られ続けるシグフェル。
やがてローズオルフェノクの頭部から噴射された
バラの花弁がシグフェルを襲う。

ローズオルフェノク「フンッ!!」
シグフェル「うわあああ!!!」

さすがの大ダメージに耐えきれず、
ついにシグフェルは変身解除に追い込まれて
元の光平の姿へと戻ってしまった。

光平「くっ…!!」

歴戦の猛者であるGショッカー最高幹部たちの猛攻の前に、
成す術もないまま一方的に弄られ続けてしまった光平。
ローズオルフェノクが倒れている光平の首を片腕で掴んで
じわじわと締め上げる。

光平「…ぐっ!?」
ローズオルフェノク@村上の影「さあ、もう終わりです」
光平「ぐあああああッッ!!!」

段々と意識が遠のいて行く光平。
間違いなく殺される…。
この時、光平は死を覚悟していた。
しかしその時――。

EXCEED CHARGE!!

電子音声と共に突然現れた円錐状の赤い光と共に
放たれた飛び蹴りが、光平の窮地を救ったのである。

ローズオルフェノク@村上の影「お前は…乾巧!」

ファイズ「うちのお得意さんに、これ以上ちょっかい出すのは
 やめてもらおうか!」

1716 

ローズオルフェノクたちを牽制しつつ、首絞めから解放されて
床に落ち咳き込んでいる光平にそっと肩を掛けて気遣うファイズ。

ファイズ「よっ、大丈夫か?」
光平「その声は…もしかして乾さん!?」

声の主にびっくりする光平。
だが驚きはそれだけでは終わらなかった。

大五郎「この坊主はうちの店にとっても大事なお得意様だ。
 同じくちょっかいを出されちゃ困る!」
光平「…だ、大五郎さん!? どうしてこんなところに!
 ここは危ないですよ!!」
大五郎「よっ! まあ安心して見てなって!
 ――デンジスパークッ!!」

光平の通う高校のカフェテリアにも出入りしている
馴染みのパン屋・青梅大五郎。彼もデンジリングを指に嵌めた拳を
前方に突き出すと、電子戦隊デンジマンのデンジブルーへと変身した。

光平「…だ、大五郎さん」
デンジブルー「今まで黙っててすまなかったな」
ファイズ「まだやれるな?」
光平「勿論です!」

光平は再びシグフェルの姿に変身した。
するといきなり照明が照らされて周囲が一気に明るくなり、
なんといつの間にブレイバーズのヒーローたちが集結していて
逆にローズオルフェノクたちを完全に包囲していたのだった。

シグフェル「これは…!?」

ローズオルフェノク「……!?」
ガラガランダ「ぐぬぬぬッ…貴様らいつの間に!?」

チャック(BM)「光平、お前の意思と覚悟のほど、
 しっかりと聞かせてもらった!」
シグフェル「チャックさん!?」
セーラームーン「シグフェルは…いいえ、光平くんはもう私たちの
 大切な仲間よ! 邪悪なあなた達なんかに手出しはさせない!」
ボウケンレッド「シグフェル、これは本来君が持つべき物だ。
 受け取ってほしい」
シグフェル「これは……」

ボウケンレッドから手渡された紅の刃の剣。
それはキングダークと戦った時にシグフェルが握ったプレシャスの剣――
――フレアセイバーだ。再び愛剣をその手にするシグフェル。
その瞬間にじわじわと自分に力が漲って来るのを感じた。

シグフェル「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」

フレアセイバーと一体化したシグフェルのパワーは何十倍にも膨れ上がるのだ!
その衝撃に圧倒されてだじろぐローズオルフェノクたち。

シグフェル「まだやるか!? いつでも相手になってやる!」

ケルベロスⅡ「村上君、この場はひとまず…」
ローズオルフェノク「ぬぅぅっ……」

形勢不利を悟ったローズオルフェノクらGショッカー大幹部たちは、
無念ながらもこの場でのシグフェル抹殺を諦め、テレポートで撤退のであった。

1717 

優香「光平くん!!」
シグフェル「優香っ!?」

驚いてシグフェルの姿から変身解除に光平の胸に、
優香が泣きじゃくりながら飛び込んで来た。

優香「…バカバカッ!! 光平くんのバカッ!!
 もう知らないんだから!!」

涙の止まらない優香を、戸惑いながらも
自分の腕の中で懸命に宥める光平。

光平「ごめん…俺が悪かったよ。心配かけてすまなかった。
 …だから泣かないで。でもどうしてここに?」
優香「うさぎちゃんに……セーラームーンに
 ここまで連れて来てもらったの」
光平「セーラームーンが?」

光平がセーラームーンの方を見ると、
彼女は何も言わずにただにっこりとほほ笑んでいた。
まるで光平と優香の二人が無事にまた巡り合えた事を
我が事のように喜んでいるかの如く…。

セーラームーン「………」(⌒-⌒)ニコニコ...

咳払いして「お取り込み中、申し訳ないが…」と前置きしながら、
レッドマフラー隊の剣持隊長が一歩前に進み出る。
互いに抱きついていた光平と優香は、顔を真っ赤にして慌てて離れる。

剣持「決心はついたようだな?」
光平「はい。俺はブレイバーズに入ります!
 こんな俺ですけど皆さん、どうか宜しくお願いします!」
剣持「ようこそブレイバーズへ!」

周囲を明るい希望に満ちた拍手の音が埋め尽くす。
こうしてシグフェルこと牧村光平は、
正式にブレイバーズの仲間となったのだった。

1718 

***ソ連・ヘルマジスタン国境付近***

緊張関係の続くソ連(ロシア)とヘルマジスタン両国の間に跨る山岳地帯…。
ここはソ連側の国境警備隊基地――というのは表向きであり、
その実態はソ連科学アカデミーの所管する秘密研究施設である。

ソ連国内各地から集められてきた、数多くの再生者(リザレクター)。
そのほとんどは戦死・殉職した後に「黄泉がえり現象」によって
現世に生還したソ連軍兵士たちである。彼らを分析する事によって
「黄泉がえり現象」の原因を地球上でどの国よりもいち早く解明し、
医療分野への応用は勿論、不死兵士(アンデッドソルジャー)を開発して
軍事面においても世界のトップに躍り出ようとの、モスクワ・クレムリンの
意向が働いていた事は言うまでもない。

しかし、その秘密研究施設は今、炎に包まれていた。

キマイライーバ「グゴゴゴゴッ…!!!」

妖獣キマイライーバの周囲には、無残に食い千切られた
幾つもの兵士たちの死体が血まみれになって、無数に転がっていた。
他にもゴブリンイーバやリザードマンイーバの獰猛な群れが
敷地内のあちこちを我が物顔で闊歩し、周辺に無造作に横たわる死体を
踏みつけにしながら何かを漁っているような、おぞましい光景が蔓延っている。

スネイザ「これでこの基地に潜んでいた再生者(リザレクター)は
 全て片づけたわ」
ガーミッド「女神の器の持ち主はこの中にもいなかったか…」

基地を見下ろす丘の上から、ソ連基地を襲撃した
イーバたちの指揮を執る2体の"堕落の烙印を押された神"。
その背後から一人のソ連軍兵士が奇声を上げつつ
機関銃を乱射して踊りかかった!

ソ連軍兵士「うおおおおおお!!!!!!!」

ガーミッド「…ん?」
スネイザ「フン…!」

兵士の放った銃弾は全く効かず、スネイザはまるで蠅でも振り払うかのように
巨大な尾で兵士を後方の壁面へと叩きつけた。

ソ連軍兵士「ぐはっ…!」

衝撃のダメージとショックで骨を砕かれ吐血した兵士だったが、
それでも屈することなく眼前の敵である異形の2体に立ち向かう。

ソ連軍兵士「…おのれ悪魔め! てりゃあああ!!!」

軍用ナイフを抜いて果敢に向かってきた兵士だったが、
その心臓は呆気なくガーミッドの背から生えている
蜘蛛の鋭い脚肢によって貫かれてしまった。

ソ連軍兵士「ギャアアッ―!!」

スネイザとガーミッドの目の前で、兵士はあえなく絶命した。

スネイザ「この男は再生者(リザレクター)ではなかったようね」
ガーミッド「フン…ゴミが」

1719 

ガーミッド「もうここでの用は済んだ。引き揚げよう」

ガーミッドとスネイザが引き揚げようとしていたその時、
数十メートルクラスの巨大な岩が隕石のように
無数に彼らめがけて空から降り注いだ。

スネイザ「…?」

スネイザとガーミッドは自分たちの頭上に幾つも時空クレパスを開いて
盾代わりに使い、難なく全ての落石をかわした。
時空クレパスに吸い込まれた岩石は、全てそれぞれ別の場所に
転移して地面に落下した。

ガーミッド「何者だ…?」
京介「お前たちかい? 最近東側の軍事施設を荒らしまわり、
 再生者(リザレクター)狩りをしているって連中は?」

スネイザとガーミッドの前には、
白髪でおかっぱ頭の少年が空中に浮かんでいた。
彼の名は兵部京介。ナチュラル(ノーマル)に反抗する
エスパー犯罪組織P.A.N.D.R.Aの首領である。
国際手配中の身ではあるが、ソ連のサルモネラ大統領との
密約によってロシア国籍と外交官特権を取得し、
今は率いる組織の人員共々ソ連政府の保護下にある男だ。

ガーミッド「お前も再生者(リザレクター)ではないようだな?」
スネイザ「なら用はないわ。怪我をしないうちに消えなさい」
京介「誰に向かって口を聞いている? それにそっちに用はなくても
 こっちにはあるんだよ!」

京介は、問答無用で周囲にある瓦礫の全てを念動力で動かし、
それらを自在に操ってスネイザとガーミッドを攻撃する。
スネイザとガーミッドの側も京介の攻撃を物ともせず、
掌より光線の衝撃波を繰り出す。

京介「あのイーバとかいう化け物どもも
 お前たちの手下か?」
スネイザ「イーバ…?」
ガーミッド「…そうか、お前たち人間は我ら堕神に仕える
 使徒をそのように呼んでいるのか」
京介「堕神…?」

京介とスネイザ&ガーミッドの
激しい攻撃の応酬は続く…。

1720
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1721 

数分後、戦闘は終息していた…。
辺り一面は爆発によるクレーターと更地だけが残り、
建造物の類は全て跡形もなく消滅していた事は、
つい数分前までここで行われていた戦いの激しさを物語っている。

真木「やりましたね少佐。敵の反応は完全に消えました」

一人残った京介に、側近の真木司郎が駆け寄る。

京介「仕留めた訳じゃない。敵の方から逃げてくれたのさ」
真木「は…?」
京介「…いや、僕に全く興味を示さずにさっさと撤退したと
 言った方が正しいか。そうでなければ僕の方がヤバかったかも」
真木「少佐、今なんと…?」
京介「なんでもないよ。これでクレムリンへの義理も果たした。
 僕らもこんな場所からはさっさと引き揚げよう」


***堕神界の神殿***

宇宙創世の太古の時代、各次元世界の全知全能の創造主にして
魔族のみならず神族や人間を含む全ての母たる「混沌の海」は、
この世に生きとし生ける者全てに、善と悪、光と闇に分かれて
永遠に戦い続ける二元論の宿命を与えた。
それこそが自らが生み出した子供たちに、更なる成長と進化を
もたらすとの意思があったからである。

しかしその定めに対して公然と反旗を翻した神の一族があった。
安らかな安寧と怠惰のみを望んだその神々は、自分たちの肉体に
機械を埋め込むという禁忌まで犯し、「混沌の海」の逆鱗に触れた。
結果、「堕落」の烙印を押されたその神々の一族は、
表の時空世界から追放され、歴史の闇の中へと葬り去られたのである。

そしてここは「堕神界」と呼ばれる世界…。

我々のよく知る次元世界からは完全に隔絶された空間。
紫の空に雲海が無限に広がる中央に、宮殿のような建造物が立っている。
その中の一室では、天空にビジョンが示され、
世界各地で続くブレイバーズとGショッカーの戦い、
ETFやフリーザ軍などのエイリアン混成軍による各惑星への侵攻、
サイバトロン(オートボット)とデストロン(ディセプティコン)の
二つの勢力に別れたトランスフォーマー同士の衝突、
そして魔界同盟の差し向けた魔物の軍勢と人間の王国の軍隊による
熾烈な戦いが次々と映し出されている。

アークシセイザー「未だに我らの存在にも気付かず、争いを続ける愚かな者ども。
 消滅の時をただ、静かに待っておればよいものを」

1722 

堕神の大審官アークシセイザーは不気味に笑っていた。
そのアークシセイザーから離れた場所に高く掲げられた台座の上に、
壁面にめり込んだようにして目を閉じている少女の姿が確認できる。

リリス「…でも、シグフェルはやがて気付く」
アークシセイザー「我らと同じ堕神の因子を持つ者。そして我らに仇なす者」

目を閉じて口も開かず、一見壁にめり込んだまま
封印でもされているかように眠っているようにも見えるが、
その少女の意識がハッキリしていることは、
テレパシーによる意思の疎通でハッキリしていた。

リリス「早くシグフェルと遊びたいな」
アークシセイザー「シグフェルが覚醒したのも全ては貴女様のため。
 もうしばらくお待ちください。リリス様…」

リリスと呼ばれた少女の前に傅くアークシセイザー。
くすくすと笑っているリリスの傍らには、彼女を守るように
巨大な十字槍を構え、全身を甲冑に身を固めた
堕神の大管令アーククルセイダーが仁王立ちのように立っている。

アーククルセイダー「………」

リリス「シグフェルを真っ赤な血で染めてあげる。
 あの綺麗な翼をバラバラに引き裂いてあげる。
 楽しみだな…」

ばっとローブを翻して立ち上がるアークシセイザー。

アークシセイザー「時は来た。我ら堕神の大いなる復讐の成就は近い!
 光も闇も全ては我らの前にひれ伏す事になるのだ」

アークシセイザーの笑い声が木霊する。
実はこの男こそが、何を隠そう一連の戦乱を陰で操る首謀者なのだが、
ブレイバーズもGショッカーも、
まだ誰一人としてこの男の存在すら知らない…。

1723 

○乾巧/仮面ライダーファイズ→悩む牧村光平にアドバイスして励ます。

ローズオルフェノクに殺されかけた光平を間一髪で救う。
○園田真理→悩む牧村光平にアドバイスして励ます。
○青梅大五郎/デンジブルー →牧村光平の目の前で変身して正体を明かす。
○チャック・スェーガー →牧村光平の危機に駆けつける。
○セーラームーン→牧村光平とはぐれた沢渡優香を現場まで案内する。光平の危機に駆けつける。
○ボウケンレッド →牧村光平の危機に駆けつける。シグフェルにフレアセイバーを返還。
○剣持保→正式に牧村光平をブレイバーズの仲間として迎え入れる。
●村上峡児/ローズオルフェノク→Gショッカー入りを拒否した牧村光平を抹殺しようとするが、ブレイバーズに阻止される。
●天王路博史/ケルベロスⅡ→Gショッカー入りを拒否した牧村光平を抹殺しようとするが、ブレイバーズに阻止される。
●地獄大使/ガラガランダ→Gショッカー入りを拒否した牧村光平を抹殺しようとするが、ブレイバーズに阻止される。
△兵部京介→ソ連政府からの要請を受け、ソ連とヘルマジスタンの国境付近でスネイザ、ガーミッドと交戦。
△真木司郎→戦闘を終えた兵部京介を出迎えに現れる。

○牧村光平/シグフェル→Gショッカー入りを拒否し、ついにブレイバーズの仲間になる決断をする。
○朝倉慎哉→牧村光平の外出に気づかず、家で熟睡。
○沢渡優香→牧村光平のブレイバーズ加入の決断を側で見届ける。
●ラミアクィーンイーバ・スネイザ→ソ連の秘密研究施設を襲撃して、兵士たちを皆殺しにする。兵部京介と交戦。
●タランチュラロードイーバ・ガーミッド→ソ連の秘密研究施設を襲撃して、兵士たちを皆殺しにする。兵部京介と交戦。
●キマイライーバ→ソ連の秘密研究施設を襲撃。
●アークシセイザー →堕神界の神殿奥部から一連の戦乱を陰で操る。
●アーククルセイダー →堕神界の神殿で堕神王リリスを守っている。
●堕神王リリス→アークシセイザーに一連の戦乱を引き起こす陰謀・工作を一任している。

【今回の新規登場】
△兵部京介少佐(絶対可憐チルドレン/THE UNLIMITED 兵部京介)
エスパー解放を掲げる犯罪組織P.A.N.D.R.Aの首領で、多数の能力を持つ強力なエスパー。
実年齢80歳だが、超能力でテロメアをコントロールし若い肉体を保っている。
第二次大戦中は陸軍特務超能部隊に少年兵として所属していた。
普段は飄々・策士然としているが、その実、大人気なく身勝手な性格。

△真木司郎(絶対可憐チルドレン/THE UNLIMITED 兵部京介)
兵部京介の片腕である合成能力者。犯罪組織P.A.N.D.R.Aの中間管理職的存在。
ボサボサの髪型が特徴。合成能力で体内の炭素を操る。

●堕神王リリス(闘争の系統オリジナル)
堕神の支配者。見た目は少女だが、その正体は不明…。

●アーククルセイダー(闘争の系統オリジナル)
常に堕神王リリスの傍らに控え守護する親衛隊にして、堕神の大管令。
アークシセイザーと同格か、やや上位の地位にあると思われる。
その実力は未だ未知数…。


『シグフェル、新たなる戦いの始まり』-1

作者・ホウタイ怪人&凱聖クールギン

1724 

***サラジア共和国・副大統領官邸***

謎のヒーロー・シグフェルの正体は牧村光平であった。
Gショッカーが掴んだこの情報は、
直ちにサラジア共和国のアフマド・アルハザード副大統領の下へも打電された。

アルハザード「牧村光平…。
 まさか…いや、名前からして間違いない…。
 うむ…やはりそうだ…!」

ネロス帝国から送られてきたシグフェルの資料を持つアルハザードの手は、
わなわなと震えているのであった。

秘書N「牧村光平、17歳。
 東京の海防大学付属高校に在籍している学生です」
秘書R「彼の両親は幼い頃にサラジアで死亡しており、
 現在は東京都内の朝倉家という民間人の家庭に身を寄せているようです」
アルハザード「その両親が問題なのだ!
 エゴスのホウタイ怪人が調べ上げたというこの資料によれば、
 奴の父親はあの牧村陽一郎ではないか」
秘書N「10年ほど前、中近東方面で活動していた日本の外交官ですね」
秘書R「ご存じなのですか? 副大統領」
アルハザード「うむ。奴はちょっとした有名人でな…。
 もう20年近く前の事だが、陽一郎は赴任先のアルジェで
 石油王アルシャード一族の娘と恋に落ち、
 そのまま駆け落ちしてしまったそうだ。
 お前達はまだ子供だったので知らんだろうが、
 アルシャードは激怒して日本への石油の輸出を止めるとまで言い出し、
 それはもう大騒ぎになったものよ」
秘書R「そのような事が…」
アルハザード「結局、何とか事は穏便に収まったが、
 日本の外務省を揺るがす一大スキャンダルだったゆえ、
 政府はこの件を一切シークレット扱いにしておる。
 噂によれば、駆け落ちした二人の間には息子が生まれたとの事だが、
 どこでどうしているのか、知る者は今まで誰もいなかった…」
秘書N「その息子こそが、この牧村光平…」

しばらく押し黙っていたアルハザードは、
顔に噴き出す冷や汗をハンカチで拭うと、呟くように言った。

アルハザード「…殺さねばならん」
秘書N「はっ…?」
アルハザード「牧村陽一郎の息子は抹殺せねばならん。
 万が一にも奴が父親からあの秘密を聞かされていれば…。
 この私にとって一大事となる」
秘書R「…?」
アルハザード「もたもたしている暇はない。
 一刻も早く牧村光平をこの世から葬り去るのだ!」
秘書N・R「…! かしこまりました!」

1725 

***日本・東京メガロシティ 海防大学付属高校テニスコート***

放課後の部活練習時間……。
だが今日はいつもとは違い、テニス部のコートに
牧村光平の姿はない。

優香「光平くん、今日も学校お休みなのね…」
慎哉「あのバカッ…」

陸上ウェア姿の沢渡優香が、テニスコートのフェンス越しに
テニスウェア姿の朝倉慎哉と話をしている。
慎哉は、光平がブレイバーズに加わった事に
まだ納得していない様子である。

優香「光平くんがブレイバーズに行ったこと、まだ怒ってるの?」
慎哉「そんなんじゃねーよ……」
優香「熟慮の末に光平くん自身が決めた事だもん…。
 私たちもその判断を尊重してあげようよ」
慎哉「………」


***ブレイバーベース・バトルシュミレーションルーム***

エルファ「これよりシュミレーションスキャンを開始します。
 準備はいいですか?」
シグフェル「ああ、やってくれ!」

ブレイバーベースのナビゲータービジョンロイド・エルファの開始の合図と共に、
何もない荒野の中央に一人立つシグフェルを狙って、無数の訓練用球体型バトルポットが
浮遊しながら群れを成し、次々と猛スピードでビーム攻撃を仕掛けて来る。

シグフェル「……!!」

シグフェルは瞬速で頭上に飛翔し、高速で接近してくるバトルポットたちをかわしつつ
無駄のない動きで、炎の手刀を用いて片っ端からバトルポットを切り裂いて戦闘不能にしていく。
超人機メタルダーの必殺技「レーザーアーム」を参考にして編み出した攻撃技「フレイムアーム」だ。

さらにシグフェルは、残ったバトルポットを谷間へと巧妙に誘導し、
そこに敵機が集中してきたところで両手で印を結び、
胸部の辺りより超強力な熱光線を発射した。

シグフェル「――ヴァジェト・レイ!!!!!!」

残っていたバトルポットは、これで全て全滅した。広範囲に跨る敵に対しては有効な破壊光線技だ。
古代エジプトの蛇の女神「ヴァジェト(Vaget)」が悪を焼き尽くすために用いたと伝えられる
燃えさかる炎にちなんで、この技は「ヴァジェト・レイ」と名付けられた。

シグフェル「――!?」

訓練用MA「グゴゴゴォ…!!」

間髪入れずに新たな敵の気配に気づいたシグフェル。背後に振り替えると、
そこには全長60メートルはあろうかという巨大モビルアーマーが立ちはだかっていた。
モビルアーマーはシグフェルめがけてメガ粒子砲を連射してくる。
まるで虚空を舞うように、容赦のない敵の攻撃を回避し続けるシグフェルは、
右腕を天高く掲げて叫ぶ!

シグフェル「フレアセイバー!!」

シグフェルの右手の拳が炎に包まれ、プレシャスの剣フレアセイバーが掌の中で具現化する。
戦闘力が急激に上昇したシグフェルは、真上から一刀両断でモビルアーマーを
真っ二つに切り裂いた。轟音と共に爆発し崩れ落ちるモビルアーマー。

1726 

ガラス越しにシュミレーションルームでのシグフェルの戦闘能力解析作業の
様子を見守っているブレイバーベース科学陣の面々。

四ッ谷「凄まじいまでの戦闘能力じゃな」
ギルモア「これでシグフェルの持つ全スキル及び
 スペックに関する解析は問題なく終了じゃ」
佐原「だが問題は次だ…」

ブレイバーベースでは、光平本人の同意も得た上で、
血液や毛髪の採取、遺伝子の分析、CTスキャンによる体内画像の解析に至るまで、
医療スタッフによるシグフェルの身体の分析作業が開始された。
これは光平本人も元から望んでいた事であった。
しかしブレイバーズの誇る宇宙最先端の医学と科学技術力を持ってしても、
超生命体としてのシグフェルの肉体の秘密に迫る事は困難を極めた。

光平「…つまり、どういう事なんですか?」
ウルシェード「お前さんの体は原子レベルの段階で
 ナノマシンと置き換えられとる。信じ難いことじゃが、
 こんな技術は地球上は勿論、宇宙のどこの星にだって
 まだ存在しない」
豪「こんなことを言われるときっと不快に思うだろうけど、
 君の肉体はナノマシンが神経組織を伝って全身の細胞に侵食していて、
 まさに戦うための生体兵器というべき存在に進化しているんだ」
光平「生体…兵器……」

基地内の診察室で、光平はドクター・ウルシェードと尾村豪から
分析結果の説明を受けていた。予感していた事とは言え、
「生体兵器」という言葉に光平は少なからずショックを受ける。

佐原「光平君、落ち着いて聞いてほしい。
 残念ながら今の我々の科学力では、
 君の肉体を元に戻す事は不可能だ。
 お役にたてず申し訳ない…」
光平「いえ、気にしないでください。
 ショックじゃないと言えば嘘になりますけど、
 これでスッキリしました」
豪「光平君…」
光平「実の事を言えば、もうこの身体の事は諦めてたんです。
 だけど俺はここに来て、俺と同じように自分の意思に反して
 普通の人間とは違う力を身につけてしまった人たちが
 他にも大勢いる事を知りました。そしてその人たちはみんな、
 事情や経緯はどうあれ、その力を世の中のよいことのために
 役立てようと前向きに頑張っています…。俺もそんな人たちに
 少しでも近づければ…」

ブレイバーズにとって思惑が外れた点は、謎の怪物群「イーバ」の正体について、
シグフェルから何か有力な情報を得られるのではと期待しながら、
実際はシグフェル=牧村光平自身もイーバについてはほとんど何も知っておらず、
具体的な証言や情報の類が全く得られなかった事である。

しかし、光平をシグフェルに改造したと思われる東条寺理乃が、
イーバとも何らかの関係を持っている可能性が高い。
そちらの方は警察機関の方で継続して追跡・捜査が行われるだろう。

光平をシグフェルへと変えた謎の人体実験による生命改造技術…。
エゴスのホウタイ怪人は光平に「改造神(ゴッドサイボーグ)」と呼んでいたが、
果たしてどのような関係があるのであろうか…?

1727 

○四ッ谷博士→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。
○アイザック・ギルモア→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。
○佐原正光→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。
○ドクター・ウルシェード→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。
○尾村豪→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。

○牧村光平/シグフェル→ブレイバベースで詳しい検査を受ける。
○朝倉慎哉→牧村光平がブレイバーズに入隊したことに、まだ不満顔を示す。
○沢渡優香→牧村光平のブレイバーズ入隊の決断を尊重する。
○エルファ→シグフェルの戦闘能力をスキャンして分析する。
●アフマド・アルハザード→シグフェル=牧村光平が牧村陽一郎の息子と知り、日本に刺客を放つ。
●秘書N→ネロス帝国から届いたシグフェルの正体の情報を、アルハザードに報告。
●秘書R→ネロス帝国から届いたシグフェルの正体の情報を、アルハザードに報告。


『シグフェル、新たなる戦いの始まり』-2

作者・ホウタイ怪人

1728 

光平がブレイバーズの長期研修のため
朝倉家を離れて一週間ほど経過した…。
あれから連絡等は全くない。

慎哉「………」

慎哉が自室のパソコンで何やらハッキングして
熱心に何かを調べている。

慎哉「よしっ! わかったぞ!」
優香「これからどうするの?」
慎哉「決まってんだろ。光平の様子を
 直接見に行くのさ」

慎哉は今まで、光平が現在どこにいるのかを
あちこちに情報検索して調べていたのだ。
全ては光平の身を心配しての行動だった。
慎哉が優香を伴って一緒に自宅から外へ出て来ると、
玄関先の前では一台のパトカーが停まっていた。

チャック「よっ!」

優香「チャックさん…」
慎哉「………」

この付近を管轄しているメガロシティ署の刑事である
チャック・スェーガーと桂美姫の2人が、ずっと家の前を見張っていた。

慎哉「チャックさん、美姫さん……いや、これからは超音戦士ボーグマンと
 ファントムスワットの隊長さんとお呼びしましょうか?」
チャック「やれやれ、すっかり嫌われてしまったな」
美姫「黙っていた事は謝るけど、その件に関してはお互いさまよ」
慎哉「じゃあ、俺たちは急いでますんで、これで…」
チャック「どこへ行く?」
慎哉「ちょっと出かけて来るだけですよ」
美姫「光平君が戻って来るまで、あなた達の身に万一の事がないよう
 こっちはガードを固めてるのよ」
慎哉「余計なお世話です。自分の身くらい自分で守りますから。
 沢渡、さっさと行くぞ!」
優香「…え? あ、うん。チャックさん、美姫さん、
 私たちはこれで」

優香は申し訳なさそうにペコリとお辞儀をして、
慎哉と共にその場から去るが、チャックと美姫は
パトカーに乗り込んで尾行する。

慎哉「沢渡…」
優香「なあに?」
慎哉「次の曲がり角を右に入ったら走るぞ」
優香「…え!? あ、ちょ…ちょっと待って!!」

慎哉とは優香の右腕を引っ張り、急に走り出した。
そして右の角を曲がった時、もう2人の姿はどこにも
見当たらなかったのである。
あらかじめチャックたちの尾行を想定していた慎哉が、
事前に彼らの尾行をまくためのルートも下調べしておいたのだ。

チャック「しまった! どこにもいないぞ!」
美姫「やられたわね…」

1729 

***レッドマフラー隊・関東基地***

優香「いったいどうやって中に忍びこむの?」
慎哉「へへっ、任せとけって♪」

慎哉は持参して来た携帯端末から回線に繋いで、
あっさりと非常口のロックを解除して
まんまと基地内に潜入してしまう。

巡回の兵士たちに見つからないよう、
安全なルートを検索して訓練用グラウンドまで
辿り着いた二人が見たものは、年下の南三郎少年に
訓練でしごかれている迷彩服姿の光平の姿だった!

三郎「なんだそのへっぴり腰は!
 しっかり走らないか牧村隊員!」
光平「はい!!」

この光景を目にした慎哉と優香はびっくり仰天。

慎哉「あの教官、どう見ても中坊だろ!
 なんで光平があんな奴の言いなりになってんだ!」
優香「やっぱり光平くん、ブレイバーズの人たちから
 いじめられていたんじゃ…」
慎哉「だから俺は反対だったんだ!」

よりにもよって年下の少年から光平が
悪しざまに罵詈雑言を浴びせられている光景を見て、
慎哉は激しく憤慨。優香も心配そうな表情で様子を見つめる。
そこへ、たまたま通り掛かった海野隊員が…。

海野「コラッ君たち! こんなところで何をしている!」

優香「――!?」
慎哉「やべっ…」

◇    ◇    ◇

巡回中の海野隊員に見つかってしまった慎哉と優香。
ブリーフィングルームへと連れて来られた2人は、
案の定、剣持隊長からカミナリが落ちる。

剣持「君の友人でなければ、即座に不法侵入で
 逮捕するところだ!」
光平「申し訳ありません。責任は全て俺が取ります!」
慎哉「おい光平っ、もうこの人たちなんかに
 ヘーコラする必要なんかないぞ!」
光平「コラッ慎哉…。ここは俺がどうにかするから
 お前たちは黙って――」

騒ぎを聞いて驚いて駆けつけて来た光平は、
なんとかその場を取り繕うとするが……。

慎哉「これ以上お前が新人いびりされてる光景なんか
 見てられるか!」
優香「そうよ! あまりにもひどすぎます!」

慎哉と優香の猛抗議は収まらない。

1730 

光平「新人いびりって……誰が?」

慎哉「え…?」( ゚д゚)ポカーン
優香「で、でも…! あの中学生くらいの男の子から
 ひどい言葉を浴びせられていたじゃない!?」

慎哉たちから「中学生」と言われて、光平にはそれが
南三郎少年の事を指しているとすぐに思い当った。

光平「ああ…三郎君の事か。確かに彼は俺より年下だけど、
 たとえ年少でも俺より遥かに経験豊かなベテラン戦士なんだ。
 ブレイバーズでは俺の先輩に当たるんだから当然だよ」
優香「でも……」
剣持「牧村隊員、君はたった今、ここにいる友人二人の
 不始末の責任を自分が取ると言ったな?」
光平「はい、確かに言いました」
剣持「では懲罰として、君に今からグラウンド50周を課す!」
慎哉「…ちょ、ちょっと待ってくれ!」
優香「悪いのは私たちです! 光平くんは何も悪くありません!」
光平「いいからここは俺に任せて、二人とも黙ってろ」

お互いに庇いあう光平と慎哉と優香。

剣持「では3人とも一人ずつ25周として軽減しよう。
 3人分合わせて合計75周だ。南隊員、君が最後まで
 しっかりと監督して見届けるんだ」
三郎「了解しました、剣持隊長!」
慎哉「………(コイツ、さっきの光平をいびってた中坊!!)」

◇    ◇    ◇

三郎「へえ…3人ともなかなかやりますね」

三郎が感心しながら見ている中、
光平たち3人がグラウンド25周を走り終えた頃には、
もう全員ヘトヘトになってその場に倒れ込んでいた。

慎哉「…ハァ…ハァ。こう見えても俺は運動部なんだ…!
 この程度大したことなんてあるか…! なめんなよ!」
優香「…ハァ…ハァ。私だって…ハァ…陸上部なんだから!」
光平「慎哉…優香……」

そこへ3人分のバスタオルを持って、佐原千恵と小野隊員がやって来た。

小野「シャワーの準備をしてあるわ」
千恵「せっかくだからそこの二人も汗を流して行きなさい」

1731 

お言葉に甘える形でシャワーを借りた慎哉と優香が、
汗を流して着替えて出て来ると、ブリーフィングルームでは
さっきとは一転した驚きの光景が…。

光平「こんな簡単な問題も解らないのか!」
三郎「イテッ!!」

なんと光平が三郎の頭に拳骨を食らわしていたのである。
どうも光平が三郎の勉強を見てやっているらしいが…。

優香「…こ、これって!?(汗」
慎哉「いったいどうなっているんだ!?」

てっきり三郎が光平をいじめているものとばかり思い込んでいた二人は、
さっきとは光平と三郎の立場が逆転している様子に困惑している。
そこへクスクスッと笑みを浮かべながら、佐原千恵が話しかけて来た。

千恵「これで分かった? 光平君が決して"新人いびり"なんて
 受けていないってことが」
優香「いったいこれはどういうことなんですか!?」
千恵「それはね…」

千恵は、優香と慎哉の二人に事情を丁寧に説明した。
南三郎は13歳の時にブレイン党の攻撃で両親と姉を失い、
天涯孤独の身となった。その点では幼い時に両親を失った
光平とも境遇はよく似ている。

光平「ほら、ここの公式はこうやって解くんだよ」
三郎「あーなるほど、さすが光平さんだね♪」

三郎は、まるで実の兄が出来たかのように光平に懐いており、
また光平の方も可愛い弟のように三郎を可愛がっていた。
そしてこうして今も実の兄弟のように無邪気にじゃれ合いながら、
光平が三郎の学校の宿題を見てやっている。
二人は実は大いに仲が良かったのだ。

意外な展開に些か拍子抜けしながらも、
ひとまずは納得して帰路に着く慎哉と優香であったが……。

優香「よかった。光平くんが楽しくやっているみたいで…」
慎哉「…でも、なんかブレイバーズに光平を取られたみたいだよな?」
優香「………」

一応安心はしつつも、慎哉と優香の二人は
複雑な寂しい思いに駆られるのであった。

――その時、二人の頭上を、
何か飛行物体が通り過ぎたような気がした。

優香「……?」
慎哉「…なんだ今の?」
優香「自衛隊の戦闘機か何かかしら…」

◇    ◇    ◇

レッドマフラー隊の関東基地へと向かっている謎の飛行物体。
それは自衛隊や在日米軍の戦闘機などではなく、
国籍不明のモビルアーマーだった!

コクピットには、サラジアシークレットサービス所属の強化人間である
エージェントSSS8が操縦している。

SSS8「まもなく目的地の上空に到達する。攻撃準備…」

1732 

○チャック・スェーガー →朝倉慎哉と沢渡優香の身辺をガードしていたが、尾行をまかれる。
○桂美姫→朝倉慎哉と沢渡優香の身辺をガードしていたが、尾行をまかれる。
○剣持保→基地内に不法侵入してきた朝倉慎哉と沢渡優香に激怒。
○南三郎→先輩戦士として牧村光平の訓練教官を担当。光平とは実の兄弟のように仲がよい様子。
○海野隊員→基地内に不法侵入してきた朝倉慎哉と沢渡優香を見つける。
○小野隊員→グラウンドを走り終えた牧村光平たちのために、シャワーを用意してあげる。
○佐原千恵→朝倉慎哉と沢渡優香に、牧村光平と南三郎が仲の良い事を伝える。

○牧村光平→ブレイバーズ新人隊員として研修中。
○朝倉慎哉→牧村光平の事が心配になり、レッドマフラー隊の基地に忍びこむ。
○沢渡優香→牧村光平の事が心配になり、レッドマフラー隊の基地に忍びこむ。
●エージェントSSS8→サイコガンダムに乗り、シグフェルのいるレッドマフラー隊基地を攻撃するため出撃。

【今回の新規登場】
●エージェントSSS8(闘争の系統オリジナル)
 サラジアシークレットサービス所属の工作員。強化人間であり、
 ティターンズから横流しされたMRX-009サイコガンダムの同型機を操る。
 その与えられた任務は、シグフェルこと牧村光平の抹殺である。
 戦闘訓練を受けたためか、格闘技のセンスもあるようだ。


『シグフェル、新たなる戦いの始まり』-3

作者・ホウタイ怪人&ユガミ博士&凱聖クールギン

1733 

その夜、国際平和部隊レッドマフラーの関東基地は、
国籍不明のモビルアーマーに襲われた。
地球連邦軍のニュータイプ機関・ムラサメ研究所が開発した、
強化人間専用モビルアーマー=サイコガンダム。型式番号MRX-009。

かつてティターンズが使用していた機体が
サラジアシークレットサービスに横流しされた物であり、
サラジア船籍のタンカーで密かに運ばれ
日本国内へと持ち込まれたのだ。

SSS8「………」

日本国内某所のサラジアの秘密工作拠点から発進した
サイコガンダムは、モビルアーマー(モビルフォートレス)形態から
モビルスーツ形態に変形し地表に降り立った。
操縦しているのはサラジアシークレットサービスの
SSS(スリーエス)ナンバーのコードネームを持つ
強化人間のエージェントSSS8だ。

剣持「対空砲用意!! 迎撃準備急げ!!」

不意の奇襲攻撃を受けたレッドマフラー隊側は対空砲で応戦するが、
三連装拡散メガ粒子砲やビーム砲内蔵型のマニュピレータなどを用いた
制圧射撃で押して来る。

三郎「ワンセブ~ン!! 来てくれ~!!」

空中を旋回するサブマシンの上から呼び掛ける南三郎少年の声に応え、
天空の彼方から飛行要塞型のワンセブンが飛来。二足歩行型の戦闘ワンセブンへと
変形してサイコガンダムと対峙する。

ワンセブン「………」
SSS8「……!!」

巨体同士の取っ組み合いが始まる。
サイコガンダムに白兵戦用の装備がない以上、
近接格闘戦ではワンセブンが有利だと思われた。

ワンセブン「グッ……!?」

三郎「どうしたんだワンセブン?」

ワンセブンの方が押されている。
実はこのサイコガンダムには、主にガンダムファイトで用いられる
モビルファイター特有のモビルトレースシステムを応用した
操縦装置が追加内蔵されていたのだ。
格闘技にも精通しているSSS8は、徐々にワンセブンを追いつめ、
両腕でワンセブンの首を締めあげようとする。

三郎「ワンセブンが危ない!?」
シグフェル「俺が行く!」

ワンセブンの窮地を察したシグフェルが空高く飛翔し、
サイコガンダムに向かって突進していく。

1734 

シグフェル「食らえ!!」

シグフェルはフレイムアームで、サイコガンダムの巨大な右腕部を斬りつける。
その隙にワンセブンはサイコガンダムの腕を逃れ、体勢を立て直しにかかる。

SSS8「………」

サイコガンダムはシグフェルの姿を視認するや否や、
攻撃の矛先をそちらへと向けて来た!

シグフェル「こいつ…狙いは俺か!?」

サイコガンダムが伸ばして来る手を、
シグフェルは素早い身のこなしでかわしていくが、
業を煮やした敵はメガ粒子砲を辺り構わず撃ちまくる。
基地ごとシグフェルを葬るつもりだ。

シグフェル「マズイッ…このままじゃ!!」

敵の攻撃を回避すると、かえって味方に被害が増える。
思わず立ち止ったシグフェルに、今にも敵のビームが直撃せんとす!
だがしかし――

ワンセブン「グゥゥゥッ…!!」
シグフェル「――ワンセブン!?」

ワンセブンが盾となってシグフェルを庇い、
腹部にメガ粒子砲の直撃を受けたのだ。

三郎「ワンセブン~!?」
ワンセブン「………」

シグフェル「許さん!!――フレアセイバァァーッ!!!!!!」

怒りの込み上げたシグフェルは、愛剣フレアセイバーを抜いて
戦闘力MAXの状態で真上からサイコガンダムを一刀両断にして斬り捨てた。

SSS8「――!?」

振り下ろされた高熱の刃が、鋭い殺気と共に
サイコガンダムの巨体を真っ二つにする。
凄まじい衝撃と轟音と共に、敵の機体は爆発した。
中の操縦者ごと……。

海野「やったぞおお~!!」
村中「さすがシグフェル!!」

地上で応戦していたレッドマフラー隊員たちから
たちまち歓声が沸き起こった。

1735 

周囲が勝利の喜びに湧く中、シグフェルは茫然と立ち尽くしている。

シグフェル「………」

南三郎と剣持がシグフェルの側に駆け寄る。

三郎「やったじゃないか光平さん! さすがすごいよ♪」
シグフェル「………」
三郎「…どうしたんですか? 敵はみんなやっつけたじゃないですか!」
シグフェル「……敵のパイロットは…どうなったんだ…?」
三郎「えっ…?」

シグフェルの言葉に戸惑う三郎。シグフェル=光平は、
生まれて初めて"人を死に至らしめた"事実に恐怖と不安を覚えているのだ。

剣持「"人を殺す"のは初めてか?」
シグフェル「剣持隊長…」
剣持「慣れろとは言わん。それではただの人殺しだからな」
シグフェル「正直に言うと、俺は怖いんです…。
 自分が自分でなくなってしまうみたいで…」
ワンセブン「ソレデイインダ…」
シグフェル「ワンセブン?」

大鉄人ワンセブンが頭上から、悩むシグフェルに語りかける。

ワンセブン「武器ヲ持ツ事ノ重サ、敵ヲ傷ツケル時ノ重サ、
 ソレヲ忘レタ時、ドンナ戦イも戦イノタメノ戦イデシカ
 ナクナッテシマウ…」
シグフェル「俺は決して忘れない。今日の戦いで感じた
 武器を持つことの重さ、そして、戦いで流れる人の血の重さを…!」
剣持「その気持ちさえ忘れなければ大丈夫だ!」

決意を強くするシグフェルと、それを笑顔で優しく見守る
南三郎と剣持隊長と大鉄人ワンセブン。
シグフェル=牧村光平は、こうして今日もまた一つ
戦士として成長した。

◇    ◇    ◇

こうしてその後は特に何事もなく、さらに数日が経過した。
今まで暫定的にレッドマフラー隊預かりの身だった牧村光平は、
無事にブレイバーズ隊員としての新人研修を修了することになったのだが、
ある日、佐原博士と剣持隊長に呼び出された。

光平「え! 歓迎会…ですか?」
佐原「そうだ。新たな心強い仲間が増えた事を祝って、
 ブレイバーズの有志一同が歓迎パーティーを開きたいそうだ」
光平「そんな…俺なんかのために」
剣持「遠慮しなくていい。これはブレイバーズのメンバー同士の
 親睦を深める意味もある」

それを聞いた光平は、ほんの少し考え込むが…。

光平「それでは、俺から一つお願いがあるんですが…」
佐原「なんだね? 遠慮なく言ってみたまえ」
光平「実は――」

1736 

千恵「ごめんなさいね。窮屈な思いをさせて…」
優香「いえ、気にしないでください。私たちは平気ですから」
慎哉「でもなんか緊張するよなぁ…」

佐原千恵が運転する車の後部座席には、
沢渡優香と朝倉慎哉が目隠しをさせられた状態で座っている。
突然光平から電話がかかって来て「パーティー向きの装いに着替えて、
家で迎えの車を待て」と言われ、言われた通りにして自宅で待機していたら、
佐原千恵の運転する車が迎えに現れた。

3人の乗る車が向かっているのは、ブレイバーズの秘密基地ブレイバーベースだ。
優香と慎哉が目隠しをしているのは、最重要機密でもあるブレイバーベースの位置を
知ってしまう事によって2人の身に危険が及んだりしないようにとの配慮である。

千恵「着いたわよ。目隠しを外していいわ」

千恵の指示に従い、目隠しを外して車から降りた慎哉と優香の目の前には
驚きの空間が広がっていた。

慎哉「す、すげー! ここが最先端科学の粋を集めたブレイバーズの秘密基地か…」
優香「驚いたわ…」

感嘆する慎哉と優香。そんな2人を立体映像のエルファが丁重に出迎える。

エルファ「朝倉慎哉さんに沢渡優香さんですね?
 お待ちしておりました」
優香「あなたは…?」
エルファ「当ブレイバーベースのアシスタントナビゲーターを務めます
 ビジョンロイドのエルファと申します。ようこそブレイバーベースへ♪」
慎哉「わぁぁ…恐れ入ったぜ。意思人格と質量を備えた立体ホログラフィが
 もうここまで実用化されていたなんて!」

やがて2人は、エルファによってパーティー会場へと案内された。

慎哉「あそこにいるのって…まさか人気アイドルのANGELとTHE HEARTS、
 それに最近再結成したばかりのスリーライツじゃないのか?」
優香「剣崎真琴ちゃんに早坂アコさん、大物女優で歌手の野乃七海さんまで
 いるわよ! あ、向こうにいるのは民自党の若手ホープと呼ばれている
 小早川議員じゃないかしら…」
慎哉「俺たち、もしかして来る場所間違えてないか…(汗」

政財界や芸能界の名だたる大物たちを目の前にして、
慎哉と優香は緊張で固まってしまう。…が、そこに
2人の緊張を解くほぐしてくれる者が現れた。

うさぎ「優香さ~ん! 慎哉く~ん!」
慎哉「あ、アンタ……」
優香「うさぎちゃん!」

月野うさぎたちが手を振って慎哉と優香の前に来てくれたのだ。
知り合いに会えた事でホッとした優香は、うさぎと仲良く抱き合う。

優香「うさぎちゃん、しばらくね♪」
うさぎ「さあ一緒に行こう!」
レイ「光平くんなら向こうの方にいるわよ」

微笑ましく談笑しながら光平のいるところへ向かう優香とうさぎたち。
そこへ慎哉が何か気まずさそうに呼びとめた。

慎哉「あの…月野さん」
うさぎ「え!…なぁに?」
慎哉「この間は…その……ひどい事言って悪かったよ。ごめん…」
うさぎ「ああなんだ、そんなこと」
まこと「誰も今更そんなこと気にしてないよ♪」
慎哉「許してくれるのか?」
亜美「許すも許さないもないわ。私たちはもう友達ですもの」
美奈子「さあ早く行きましょう! 光平くんが待ってるわ」

1737 

光平「優香! 慎哉!」
優香「光平くん!」
光平「遅かったじゃないか。ずっと待ってたんだぞ」
慎哉「待たせてわりぃ。でも驚いたよな。
 まるでセレブ界のVIPが集まるパーティーみたいだ。
 それでいて誰一人としてお高くとまったような
 人はいないんだから」

最初は緊張していた慎哉と優香だが、
他のブレイバーズメンバーたちの屈託のない親しげな態度に
徐々に緊張が解れていったのだった。
だが彼らにとって、もっと驚く事が待ち受けていた。

土橋「やあ光平君!」
光平「土橋さん!」

土橋竜三――現・内閣安全保障室長であり、
光平の亡き父・陽一郎とは昔からの付き合いがある
古株の高級官僚だ。

土橋「慎哉君に優香ちゃんも元気そうだな」
慎哉「ご無沙汰してます」
優香「土橋さんも久しぶりですけど、お元気そうで」
土橋「…まったく、君がシグフェルだと聞いた時は
 腰が抜けそうになったぞ!」
光平「すみません…」

土橋の言葉に対して釈明の余地が見つからず、
ばつが悪い思いをする光平たち3人だったが…。

土橋「…ささ、総理、こちらです」
光平「総理…??」

光平たちの目の前に現れたのは、
大抵の日本人なら誰でもテレビのニュース番組や
新聞の一面や政治面などで必ずよく見かける顔だ。

慎哉「…そ、総理大臣!?」
光平「――!?」
桃太郎「牧村光平君というのは君か?」

現内閣総理大臣・剣桃太郎。
今度は慎哉たちが腰を抜かす番であった。

桃太郎「君のお父上には、生前に大変お世話になった」
光平「父をご存知なんですか!?」
桃太郎「私がまだ一年生議員だった頃、
 当時の牧村参事官とは共に日本外交のあるべき道
 について真剣に熱く語り合ったものだったよ」
光平「父と昔にそんなことが……」
優子「総理、残念ですがそろそろお時間です。
 今からでないと予算委員会に間に合いません」
桃太郎「そうか、すまないな。光平君、
 いずれ機会があればゆっくり話をしよう」
光平「はい、僕からも是非お願いします!」
土橋「では光平君、すまないが我々はここで失礼するよ」

1738 

残念ながら国会でのスケジュールのため、
剣桃太郎はすぐにパーティーの席から中座したが、
光平は短いながらも貴重な在りし日の父の思い出話を
聞く事が出来て嬉しかった。
今の日本政府の上層部にも、父を認めてくれている人間がいたのだ。

慎哉「それにしても、ブレイバーズの人達って色々な人がいるなあ・・・・」
優香「本当ね」

先程、剣総理を始めとする大物政治家やANGELやTHE HEALTSといった
有名芸能人が、この場にいる事に驚いた2人だが、ブレイバーズにそういった
VIPがいるかと思えば、剣持達レッドマフラー隊の様な軍人やそういった人々とは
無縁そうな民間人も所属しており、実に驚かされる。

優香「ブレイバーズって、ここにいる人達だけなのかしら?」
????「全員、この歓迎会に参加している訳じゃないよ」
光平&慎哉&優香「―!」

光平達は後ろを振り向くと、地球連邦軍の軍服を着用した若い軍人が
立っていた。その軍人こそ、ロンド・ベル隊のエースパイロット、アムロ・レイ
だった。

光平「あなたは確か・・・・!」
慎哉「一年戦争の英雄、アムロ・レイ大尉!」
アムロ「よしてくれ、英雄なんて呼ばれる柄じゃないさ。所で君が
 シグフェル・・・・・牧村光平君だね?噂は聞いているよ」
光平「あ・・・ありがとうございます!」

一年戦争を始めとする多くの戦争を戦ってきたアムロ・レイに声を
掛けられ、光平は少しばかり照れ臭くなる。アムロの乗るラー・カイラムは
ジオンの残党を追う任務についているが、その関係で地球に降り、
ブレイバーベースで補給の為、立ち寄った所、光平の歓迎会が行われると
聞いて、出席したのであった。

アムロ「・・・・・今回の件はすまなかった」
光平「えっ?」
アムロ「剣持隊長から聞いているかもしれないが、コルベット准将による
 君を無理やりにでも捕獲しようとした事は、同じ連邦軍人として申し訳
 ないと思っている。だからすまなかった・・・・」

コルベット准将がシグフェルを捕獲する為に行った事を、アムロは地球連邦の
軍人として謝罪し、頭を下げた。

光平「あ、頭を上げて下さい!今回の事は、もう気にしていません。それに
 ブレイバーズに入って、佐原博士達から連邦政府の中には、そういった事を
 するタカ派の勢力がいるという事を聞きました。だから、アムロ大尉は気にしないで
 下さい」
アムロ「そうか、ありがとう。コルベット准将の様に連邦内部には、極端な地球至上主義を
 掲げて、非ナチュラルを排斥しようと動いている勢力がいる。だが、平和を実現するのに
 ナチュラルだとか、そうでないとかは関係ない。お互いが心を通じ合ってこそ、平和は実現する。
 それを実現する為に、俺達は集まったんだ。これからの戦い、お互い頑張っていこう!」
光平「はい、がんばります!」

佐原博士達から、連邦内部に存在する極端な地球至上主義者達=ロゴスの事を聞かされた
光平はアムロに頭を上げるように言う。そして、アムロはロゴスの様な勢力にも負けず、平和の
為に戦おうと光平に言うのであった。

アムロ「・・・と、少しばかり説教くさかったかな?

 日本に来る事はあまりないが、もし宇宙に行く事が
 あれば、また会おう」
光平「はい!」
アムロ「じゃ、俺はあっちに行っているよ。君達もパーティーを楽しんでくれ。
 あっちには美味しい料理が出されているらしいから、そこへ行くといい」
慎哉「(・・・・・あの人が伝説のパイロット、アムロ・レイか)」
光平「よし!アムロ大尉の言うとおり、あっちで美味い料理を食べるとするか!
 行こう、慎哉、優香」
優香「うん!」
慎哉「よ~し、腹いっぱい食べるとしますか!」

そしてアムロは光平達と別れる。その場から去るアムロの後姿を見ながら
慎哉は思う所はあったが、3人は料理を食べようと、その場から移動する。

1739 

光平「アムロ大尉が言っていたのは、ここだな」
慎哉「うぉ~、すっげー美味そうだね!」
優香「どれから食べたらいいのか、迷っちゃいそうね」

歓迎会で出されている料理がある場所に移動した3人は、実に美味しそうな
料理の品々に、心が奪われそうになる。

鴻上「君がシグフェルこと牧村光平くんだね?」
光平「あなたは・・・・」
慎哉「確か、鴻上ファウンデーションの会長の方・・・・ですよね?」
鴻上「よく存じているね。朝倉慎哉くん。私もここのスポンサーの1人として
 出席したんだが、君にはこれをプレゼントしよう!里中くん」

大会社の会長である鴻上の登場に、少しばかり緊張する光平達。鴻上は
控えていた秘書の里中エリカを呼びつけると、里中はラッピングされた箱を
光平に渡す。光平は箱を開けると、中にはケーキがあった。

鴻上「君と私の出会いにハッピーバースディ!!」
光平「あ・・・・ありがとうございます(汗」
鴻上「君の今後の活躍を期待させてもらうよ。では失礼する!」

光平は鴻上の独特のテンションに、少しばかり引いていた。
ケーキを光平に渡して鴻上も里中と共に、その場を後にした。

優香「変わった人ね・・・・」
慎哉「そういえば、うちの学校の校内に鴻上ファウンデーションの
 自販機が置いてあるけど、ジュースとか出ないし、何の為にあるんだろう?」

慎哉は海防大付属高校の校内に、鴻上ファウンデーションで製造された
自販機が置いてある事をふと思い出すが、その自販機がバイクに変形できる
という事を彼らは知らない。その後も光平達は歓迎会を楽しむ。
そして光平は、優香と慎哉にも改めて感謝の気持ちを切りだす。
ブレイバーズの仲間入りを果たした今も、光平は決して2人の事を
忘れていた訳ではなかったのだ。

光平「優香、慎哉、今まで本当にありがとう。
 俺がここまでやってこれたのも二人のおかげだ」
優香「どうしたの、急に改まって?」
光平「俺にはまだまだ至らない点ばかりだけど、
 どうかこれからも俺を支えてほしい」
慎哉「当然だろ♪ たとえお前がイヤだって言っても、
 俺の方からお前に地獄の果てまでついてってやるぜ!」
優香「私もよ、光平くん♪」
光平「ありがとう…本当にありがとうッ…!」

こうして牧村光平は、ブレイバーズの正式な一員として
気持ちを新たにするのであった


 1740 

***サラジア共和国・アルハザード私邸***

秘書N「閣下、エージェントSSS8は、残念ながら…」
アルハザード「殺られたか」
秘書R「シグフェルの恐るべき戦闘能力の前に、
 搭乗していたサイコガンダムごと粉砕されたとの事です」
アルハザード「………」

シグフェル抹殺作戦の失敗を聞いたアフマド・アルハザード副大統領は、
険しい表情のまま眉一つ動かそうとしない。
そのまま長い沈黙が流れ…
やがて顔を上げたアルハザードは、小さく嘆息してから二人の秘書に言った。

アルハザード「私は明日から、3日ほど公務を休む。
 外部には急病とでも説明しておけ。
 予定されていたロリシカ国大使との会談もキャンセルだ」
秘書N「承知いたしました」
アルハザード「しばらく地下室に籠もる。
 絶対に誰も近付けるな。私が呼ぶまで、
 お前達も決して部屋に入ってはならぬ」
秘書R「心得ましてございます」
アルハザード「…私を夜の闇に包め!」
秘書N・R「ははっ!」

魔道師バルゴグの姿となったアルハザードは、
私邸の秘密の地下室で祭壇に火を焚き、魔法杖をかざす。
杖の先端から放たれた一筋の光は小さな時空の穴を形成し、
バルゴグはそこに手を差し入れると、
時空の向こうの世界から不気味に光り輝く一個の宝石を取り出した。

バルゴグ「フフフ…。闇のルビーよ、
 今こそ我に力を与えよ!」

〝闇のルビー″。バルゴグが異世界で手に入れたこのアイテムは、
かつては砂漠の城にある魔王像の両眼にはめ込まれていた物であり、
心悪しき者の力を増幅させる魔力があるという。

バルゴグ「シグフェル…。待っておれ!
 遠からずこの私が直々に貴様を葬ってくれよう」

闇のルビーの光に照らされて、
バルゴグの邪悪なパワーがどんどん増大してゆく。
シグフェルとの決戦に備えて力を高めるバルゴグに、
果たしてシグフェルは勝てるのであろうか…?

1741 

○ワンセブン→サイコガンダムの攻撃からシグフェルを守る。あくまで戦闘中での出来事で
 相手が敵とはいえ、生まれて初めて人間を殺してしまった牧村光平を優しく諭す。
○南三郎→ワンセブンと共にサイコガンダムに応戦。
○村中隊員→攻めて来たサイコガンダムに対空砲等で応戦。
○海野隊員→攻めて来たサイコガンダムに対空砲等で応戦。
○剣持保→あくまで戦闘中での出来事で相手が敵とはいえ、生まれて初めて
 人間を殺してしまった牧村光平を優しく諭す。
○佐原正光→牧村光平に歓迎会が開かれる事を伝える。
○佐原千恵→朝倉慎哉と沢渡優香をブレイバーベースまで車に乗せ案内する。
○月野うさぎ→パーティー会場で沢渡優香と再会を喜び合う。
○水野亜美→パーティー会場で沢渡優香と再会を喜び合う。
○火野レイ→パーティー会場で沢渡優香と再会を喜び合う。
○木野まこと→パーティー会場で沢渡優香と再会を喜び合う。
○愛野美奈子→パーティー会場で沢渡優香と再会を喜び合う。
○土橋竜三→牧村光平の歓迎パーティーに出席。
○木場優子→牧村光平の歓迎パーティーに出席。
○剣桃太郎→牧村光平と初めて会い、光平の亡き父・陽一郎について思い出話を語る。
◯アムロ・レイ→牧村光平の歓迎パーティーに出席し、コルベット准将の所業について
  同じ地球連邦軍人として光平に謝罪する。
◯鴻上光生→牧村光平の歓迎パーティーに参加して、光平にケーキをプレゼントする。     
◯里中エリカ→鴻上からの指示で、ケーキの入った箱を光平に渡す。

○牧村光平/シグフェル→戦闘中に敵機を中の操縦者ごと破壊してしまい、人生で初めての殺人を経験するが、ワンセブンたちに諭され決意を新たにする。
 その後、佐原博士に願い出て、自分の歓迎会に沢渡優香と朝倉慎哉も招待する。
 パーティー会場で初めて内閣総理大臣・剣桃太郎と出会う。またアムロ・レイや鴻上光生と出会う。
○朝倉慎哉→牧村光平の計らいでブレイバーベースに招かれる。
 月野うさぎたちに以前の非礼を謝罪する。
○沢渡優香→牧村光平の計らいでブレイバーベースに招かれる。
○エルファ→ブレイバーベースに到着した朝倉慎哉と沢渡優香を案内する。
●エージェントSSS8→シグフェルにサイコガンダムごと撃破され、死亡。
●アフマド・アルハザード→シグフェルとの決戦に備え、闇のルビーの力で自らを強化する。
●秘書N→エージェントSSS8のシグフェル抹殺失敗をアルハザードに報告。
●秘書R→エージェントSSS8のシグフェル抹殺失敗をアルハザードに報告。

【今回の新規登場】
◯里中エリカ(仮面ライダーOOO)
 鴻上ファウンデーション会長秘書。自身は辛党だが、普段の仕事は鴻上会長が
 作ったケーキの処理役で、よくケーキを食べさせられる。給料さえ出れば、どんな事も
 仕事として請け負うが、残業はしない主義。しかし手当てされ出れば行う。後藤が
 バースの装着者となった後は、バースのサポート役として後藤と伊達を補佐した。


『地球の騎士「天凰輝」誕生』-1

作者・ホウタイ怪人&ユガミ博士

1742 

***ギガントホース・艦橋司令室***

渡された情報ファイルをまじまじと見つめている
ザンギャック地球派遣艦隊の司令官ワルズ・ギル。
その手はわなわなと震えている…。

ワルズ・ギル「まさかシグフェルの正体が、こんな地球人のガキだったとはな…」

以前にGODのキングダークと合同で行った東京制圧作戦は、
突如何の前触れもなく現れた謎のヒーロー・シグフェルの前に
完膚なきまでに叩きのめされてしまった。

黄泉がえり現象により再びこの世に復活した自分の復帰戦が、
自分より年少の地球人の少年たった一人によって黒星をつけられたのだ。
今もワルズ・ギルの怒りは尋常ではなかった。

ワルズ・ギル「ダマラス! 我が栄光あるザンギャック帝国の再起を掛けた一戦が、
 こんな辺境の惑星の鼻垂れ小僧一匹によって汚されてしまったのだぞ。
 お前はなんとも思わんのか!?」
ダマラス「お怒りはごもっともでございます」
ワルズ・ギル「ならば早急に手を打たんか!」

周囲に当たり散らすワルズ・ギルに、参謀長ダマラスは冷静に進言する。

ダマラス「殿下、ここはキアイドーに任せてみるべきかと存じます」
ワルズ・ギル「…キアイドーだと?」

宇宙の賞金稼ぎキアイドー。これまでに150もの凶悪な賞金首を打ち倒し、
1億ザギンを超える報酬を受け取っている実力者でもある。
その狂気じみた闘争心は、あのキャプテン・マーベラスことゴーカイレッドすら
恐怖と敗北感を深々と植え付けて震え上がらせたという。

ワルズ・ギル「なるほど、確かに奴なら適任かもしれんな…」


***成田空港・国際線ターミナルロビー***

光平を取り巻いていた一連の問題がとりあえず収束し、
彼の当面の進むべき道も決まった事を見届けたフィリナは、
フランスへ帰ることになった。成田まで見送りに来た光平たち。

フィリナ「これからは、このナジブをあなたとの連絡役にするわ。
 彼は信頼できる男よ」

別れ際に、光平はフィリナから
一人のアルジェリア人男性を紹介された。
フィリナの会社での側近らしい。

ナジブ「ナジブと申します。フィリナ様からお話は伺っております。
 何かお困りの際は、どうぞなんなりと仰せつけくださいませ。光平様」
光平「…そんな、様だなんて!? 俺の事はただ"光平"でいいですよ(汗」
ナジブ「………」
フィリナ「じゃあ光平、ブレイバーズではいろいろと大変な事もあるだろうけど、
 あなたならきっとやり抜く事が出来ると信じてるわ。頑張ってね」
光平「ああ、フィリナも気をつけてな」
慎哉「フィリナさんもお元気で」
優香「また日本に遊びに来てください」

こうしてフィリナは日本を飛び立ち、フランスへと帰って行った。

1743 

光平「じゃ、フィリナを見送った事だし、俺たちも家に帰るか」
ナジブ「御車をご用意しましたので、私が皆さんをお送り致します」

フィリナを見送った光平達は、成田空港を出てナジブが用意した車で
家に帰る事にした。光平達を乗せたナジブの車は、高速道路に入る。

♢ ♢ ♢ ♢ ♢

光平「・・・・・・・」
優香「どうしたの?光平くん」
光平「いや、こうして見るとこの辺も結構荒れているんだなぁと思って・・・・」
慎哉「この辺はガストレアや幻獣が出現したっていうからな」

高速道路から見える景色は、ガストレアや幻獣といった前大戦の影響による
荒らされた景色だった。あまり気に留めていなかった光平だったが、
ブレイバーズに入り、改めてこの荒れた景色を見て、この景色がまた起きないように
戦っていこうと内心、決意する。だが、その時・・・・・。

――キキィッ!!

優香「キャッ!!」
慎哉「うわぁ!」
光平「どうしたんですか?ナジブさん!」
ナジブ「目の前に人が!」

突然ナジブが急ブレーキをしたので、車の中で慌てる3人。ナジブが
指差す方を見ると、赤いエイリアン―賞金稼ぎキアイドーだった。

キアイドー「貴様がシグフェルか」
光平「お前は何者だ!」
キアイドー「俺の名はキアイドー。ザンギャック帝国から貴様を始末するように
 依頼を受けてな。貴様の命を貰い受ける」

車から降りた光平はキアイドーと対峙する。キアイドーは自身の名を名乗り、
剣を光平に向けた。

ナジブ「下がってください。こいつは危険です!」
キアイドー「俺が用があるのは、そこのガキだけだ。だが俺の邪魔をするのなら
 貴様も斬るぞ!」
光平「―!」

ナジブは光平を守ろうと前に出て、ファイティングポーズをとるが
キアイドーは「邪魔をするのなら斬る」と殺気を放つ。キアイドーから
発せられる殺気を受けて、光平に緊張が走る。 

光平「下がってください、ナジブさん。俺が戦います」
ナジブ「しかし・・・・」
光平「俺よりも慎哉と優香を守って下さい。お願いします」
ナジブ「・・・・分かりました。光平さんも気を付けて」

光平はキアイドーと戦う事を決め、ナジブに慎哉と優香を守ってもらうように頼む。
光平の決意を察したナジブは了承した。

優香「光平くん・・・・」
光平「心配すんなよ。俺は大丈夫だから」
慎哉「必ず戻ってこいよ!」

心配する優香と慎哉をナジブに託して、光平はキアイドーに目を向けた。
優香、慎哉、ナジブの3人は車の影に身を潜めて事態の成り行きを見守る。

キアイドー「別れの挨拶は終わったか?終わったのなら早くシグフェルに
 変身しろ!」
光平「何だとっ!?」
キアイドー「俺は退屈が一番嫌いなんだ。そんな俺の虚しさを埋めてくれるのは
 金と戦いだけだ。聞けば貴様は圧倒的な強さを持つというじゃないか。
 貴様は俺を楽しませてくれるか?」
光平「ふざけるな!翔着(シグ・トランス)!!」

1744 

キアイドーと対峙した光平はシグフェルに変身する。シグフェルは
炎の手刀「フレイムアーム」でキアイドーに斬り込んでいくが、
キアイドーは容易く受け流してしまう。

シグフェル「(全部、受け流してしまうなんて何て強さなんだ!)」
キアイドー「この程度か?」
シグフェル「何を!だったら、これならどうだ。フレアセイバー!!」

余裕な態度をとるキアイドーにシグフェルは炎に包まれた右手の掌から
フレアセイバーを具現化する。そして一刀両断しようと構えるが・・・・・。

キアイドー「遅い!」
シグフェル「ぐわぁ!!」

だが、シグフェルがフレアセイバーを振り下ろすよりも早く、キアイドーは
その剣でシグフェルを斬る。その凄まじさにより、シグフェルは倒れてしまった。

シグフェル「ぐぅぅぅ・・・・」
慎哉「光平!」
優香「光平くん!」
ナジブ「危険です!行ってはいけません」

倒れた光平を心配して駆けつけようとする慎哉と優香だが、ナジブは
2人の身を案じて引き留める。

キアイドー「期待して来てみれば、貴様の強さはこの程度か。
 つまらん。あの赤い海賊はもっと俺を楽しませてくれたぞ…!」
シグフェル「くっ…!」
キアイドー「これでは俺の退屈はちっとも治らん。
 貴様など殺す価値もない」
シグフェル「・・・・ま・・・・待て!」
キアイドー「しつこいぞ。それ以上、無様な事をすれば
 本当に殺してやろうか?」
シグフェル「――!」
キアイドー「ふん!」

シグフェルは倒れながらもキアイドーになお挑もうとした。しかし、
キアイドーの更なる殺気を受けて、シグフェルは倒れた。
そしてキアイドーは倒れ伏すシグフェルに見切りをつけると、刀を鞘に納め
その場を後にする。この時キアイドーに惨敗した光平は初めて死の恐怖を
経験し、挫折を味わうのであった。

1745 

●司令官ワルズ・ギル→シグフェルを打倒する為、キアイドーを差し向ける。
●参謀長ダマラス→シグフェルを打倒する為、キアイドーを推挙する。
●賞金稼ぎキアイドー →ワルズ・ギルからシグフェルを打倒するように依頼され、
   シグフェルを叩きのめすが、仕留めずに帰還する。

◯牧村光平/光凰輝シグフェル→フィリナを見送った帰りにキアイドーに
  襲われる。シグフェルに変身して戦うが、敗北する。
◯朝倉慎哉→フィリナを見送った帰りにキアイドーに襲われる。
◯沢渡優香→フィリナを見送った帰りにキアイドーに襲われる。
◯フィリナ・クラウディア・アルシャード→フランスに帰国する。別れの際、光平達にナジブを紹介する。
◯ナジブ→連絡役としてフィリナから光平達に紹介される。
 光平達を家に送る為、車を運転していたがキアイドーに襲われる。

【今回の新規登場】
●賞金稼ぎキアイドー(海賊戦隊ゴーカイジャー)
 宇宙帝国ザンギャックが雇った宇宙一の賞金稼ぎ。これまで150もの
 凶悪な賞金首を打ち倒し、1億ザギンを超える報酬を受け取っている
 実力者。細身のソードを武器に様々な宇宙の体術を駆使した戦いを行い、
 全身を覆うアーマーは赤熱磁場でコーティングされ、あらゆる弾丸を弾き返す。
 退屈を嫌う戦闘狂で、かつてキャプテン・マーベラスに恐怖と敗北感を
 植え付けた事がある。

◯ナジブ(闘争の系統オリジナル)
 フィリナの秘書兼ボディガードを務めるアルジェリア人の青年。
 武術の達人。主にフィリナと日本で暮らす光平との間の連絡を取り持つ繋ぎ役。


『地球の騎士「天凰輝」誕生』-2

作者・ホウタイ怪人&ユガミ博士

1746 

***千葉・房総半島の海岸某所***

道着姿に着替えた光平は、海岸の岩の上で
静かに目を閉じて座禅を組み瞑想している。

光平「………」

キアイドーに完膚なきまでに打ち負かされた光平は、
生まれて初めて感じた死の恐怖を打ち勝つためには、
こうなれば自分の精神力で自分自身に勝つしかないと考え、
荒波が迫る中、一人で修行に励んでいた。

光平「やあぁぁぁっ!!!」

立ち上がった光平は木刀を手に持ち、
目の前の大きな岩に何度も繰り返し打ちかかるが、
岩はビクともしない。

光平「やっぱりダメだ……」

玄海「無駄じゃ!光平君」

光平「――!?」

光平が驚いて声がした方向に振り向くと、
そこには弟子の弁慶を伴った玄海老師の姿があった。
どうやらシグフェルがキアイドーに敗れたとの話を聞き、
わざわざ駆けつけて来てくれたらしい。

弁慶「………」
光平「玄海老師!? いつこちらへ?」
玄海「迷いの心で幾ら打ちつけたところで、その石は割れん!
 かえって己自身の恐怖は増すばかりじゃ!」
光平「ではどうしたら!?」
玄海「ついてきなさい」


***志葉邸***

玄海老師と弁慶に伴われて、光平がその足でやって来たのは、
武家屋敷風の広い邸宅だった。

彦馬「これは玄海老師、わざわざのお運び、
 誠に恐縮にございます」

玄関先でこの家の執事か用人らしき
初老の和服に袴姿の男性が、礼儀正しく玄海らを出迎える。

玄海「ご当主の丈瑠殿はご在宅かな?」
彦馬「はい。只今ご案内いたします」
玄海「いやなに、気遣いは無用。勝手知ったる屋敷じゃ」

1747 

光平「あの弁慶さん、ここはいったい…?」
弁慶「ここは江戸時代に、房総半島の内この地帯を治めていた大名で、
 旧華族である志葉家のお屋敷だ。…と言っても、今のお前には
 アヤカシ外道衆と戦った侍戦隊シンケンジャーの本部と言った方が
 解り易かろう」
光平「ここが噂に聞いたシンケンジャーの……」

志葉家初代当主・烈堂は、クサレ外道衆の頭目・脂目マンプクを封印した功績を
徳川家康に認められ、今の千葉県北部の辺りを治める大名となった。
以来、志葉家は代々外道衆のアヤカシと戦い続ける宿命にある。

そういえば、自分の歓迎会の時にほとんどのヒーローたちと面識が出来た光平だったが、
あの時あの場で志葉家の当主の姿を見た覚えはない。その事を弁慶に尋ねると――

弁慶「ははは…志葉のご当主は、そういった賑やかな催しが
 苦手だと聞いているからな」
光平「……???」

応接間で出された茶を飲みながら、この家の主が現れるのを待っていると、
一人の若い青年が姿を見せた。

丈瑠「玄海老師、お久しぶりにございます」
玄海「光平君、引き合わせよう。こちらは志葉家19代目当主・志葉丈瑠殿じゃ」
丈瑠「志葉丈瑠だ。よろしく」
光平「よ、よろしくお願いします!……(この人がシンケンレッド)」
玄海「相手が剣を使うのであれば、こちらも剣の使い手に
 教わるのが一番じゃ」

ブレイバーズにも剣を武器に戦うヒーローは数多いが、
シグフェルは炎の剣フレアセイバーを武器としている以上、
同じく火を力にする剣士である丈瑠が特訓相手に選ばれたのは、
玄海老師の慧眼である。

丈瑠「俺との修練は厳しいが、覚悟はあるか…?」
光平「…覚悟はあります。俺に教えてください、丈瑠さん!」
丈瑠「その覚悟、確かに俺が預かった!」

林の中で互いに竹刀を構える丈瑠と光平。

丈瑠「一応、剣の心得はあるようだな?」
光平「小さい頃に沖縄の祖父に習って、少しかじったことがあります」
丈瑠「…なるほど。薩摩示現流か」

ちなみに光平の父方の祖父・靖臣は、江戸時代に琉球に移住した薩摩藩士の末裔である。
幕末においても、かの新撰組が何より恐れたのが薩摩藩士の操る示現流であった。

丈瑠「キアイドーのような強敵を相手にする真剣の立ち合いでは、
 竹刀剣道のように振り回す剣法は役に立たない。
 一撃必殺の打ち込みと気迫で勝負が決まる。
 ひたすら気迫と一撃に鍛錬を極める示現流は、
 正にそれに適している」
光平「はい!」
丈瑠「良し。そしてキアイドーに強力な一撃を加える為にも、お前には
 自身の持つ火の力、キアイドーの剣の速さを凌ぐ速さを鍛えてもらう
 必要がある。俺は技を教えるつもりは無い。だが、それらを鍛えれば
 自ずと己の技が見えてくる筈だ」
光平「火の力に速さか・・・・・」
丈瑠「まずは速さを鍛える。さぁ、俺に打ち込んで来い!」
光平「行きます!タァ!!」

丈瑠に鍛えていく部分を教わった光平は丈瑠に剣を打ち込んでいく。
そして始まる丈瑠との修練は実に険しく、時には他のシンケンジャーを
相手に剣技を磨いていく。そしてその様子をそっと見守っている
サングラスの青年――地場衛の姿があった。

衛「………」

1748 

***ギガントホース・艦橋司令室***

一方、ザンギャックの旗艦であるギガントホースに帰還したキアイドーは
シグフェルを仕留めずに戻ってきた事をワルズ・ギルから責められていたが
キアイドーは気にせずケロッとしていた。

キアイドー「俺は、俺の流儀で仕事をするまでだ」
ワルズ・ギル「ぐぬぬ、貴様~!」
???「・・・その様な賞金稼ぎ風情に頼るからですよ、殿下」
ダマラス「何奴!?」

ワルズ・ギル達の前に現れたのは、1万年前最強の護星天使と謳われ
地球救星計画で地球を破壊し、新たに星を創り出そうとした救星主の
ブラジラだった。姿を現すと、ワルズ・ギルに膝をついて、頭を垂れる。

ワルズ・ギル「・・・・お前は確かブラジラとかいったな。何しに来た?」
ブラジラ「はい、殿下。この私めも殿下の配下にお加えいただく参上いたしました」
ダマラス「お待ち下さい殿下!こ奴は自分の目的の為に、様々な組織を利用してきた者。
 信用されてはいけませぬぞ!」

自分を配下に加える様に言うブラジラだが、ブラジラが過去ウォースター、
幽魔獣、マトリンティスと様々な組織の一員となり、その裏で利用してきた
という経歴を知るダマラスはブラジラがワルズ・ギルの配下に加わる事に反対する。

ブラジラ「流石は皇帝アクドス・ギル様の懐刀で在らせられるダマラス参謀。
 私の様な者を警戒されるのは至極同然。ですが、私もヒーローには恨みを
 持つ身・・・・私を配下に加えて下さるのであれば、かならずやシグフェルを
 討ち取ってみせましょう」
ワルズ・ギル「・・・・良し。ブラジラよ、お前を我が配下に加えてやろう。そして
 キアイドーと共にシグフェルを倒して来い!キアイドーもそれで良いな?」
キアイドー「俺の邪魔をしなければ、構わん」
ダマラス「殿下!うぬぬ・・・殿下に妙なマネをすれば、その時は覚悟しろ!」
ブラジラ「かならずや、ご期待に副えましょう(・・・ふん、ザンギャックの力、
 利用させてもらう」

ワルズ・ギルはブラジラを自分の配下に加える事を決め、反対していた
ダマラスもしぶしぶ承諾する。だが、ワルズ・ギルの配下に加わった
ブラジラは内心ではザンギャック帝国の力を利用しようと考えていた。
そしてキアイドーとシグフェルの再戦は刻一刻と近づくのであった。

1749

◯玄海老師→キアイドーに敗北した牧村光平に、志葉丈瑠を引き合わせる。
◯弁慶→玄海老師と共に牧村光平を志葉邸へ連れてくる。
◯志葉丈瑠→牧村光平に修練を積ませる。
◯日下部彦馬→牧村光平、玄海老師、弁慶を出迎える。
◯地場衛→丈瑠の下で修練を積む牧村光平の様子を見守る。
●司令官ワルズ・ギル→シグフェルを仕留めなかったキアイドーを責める。
  そして救星主のブラジラを配下に加え、キアイドーと共に
  シグフェルを始末するように命令を下す。
●参謀長ダマラス→ブラジラが配下に加わる事を反対するが、しぶしぶ承諾する。
●賞金稼ぎキアイドー →ワルズ・ギルにシグフェルを仕留めなかった事を責められる。
●救星主のブラジラ→ワルズ・ギルの配下に加わる。内心ではザンギャックの
  力を利用しようと考えている。

◯牧村光平/シグフェル→キアイドーに敗北した為、1人修行に励んでいた所、
  玄海老師によって、志葉丈瑠と引き合され、丈瑠から修練を課される。

【今回の新規登場】
●救星主のブラジラ(天装戦隊ゴセイジャー)
 ウォースター、幽魔獣、マトリンティスといった様々な組織を渡り歩いた
 ブレドランの正体。1万年前、幽魔獣を封印した最強の護星天使で
 ゴセイナイトの本来の持ち主。人間を根絶やしにして汚れきった地球を
 一度破壊し、新しい星を創る「地球救星計画」を画策し、そうして創った
 星の「命を導く者」として君臨しようとしていた。ダークヘッダーを配下として
 従えている他、様々な組織で活動していた「ブレドラン」を分身体として
 呼び出す事が出来る。趣味はコスプレ。


『地球の騎士「天凰輝」誕生』-3

作者・ホウタイ怪人&ユガミ博士

1750 

***志葉邸***

光平「タァッ!」
丈瑠「ふん!」

光平と丈瑠の下で修練を始めてから数日。志葉邸の庭では光平
丈瑠は向かい合い、今日も竹刀を振るっていた。庭には2人だけでなく
家臣である他のシンケンジャーや慎哉や優香が見守っていた。

慎哉「光平・・・・」
優香「光平くん・・・・」

連日の厳しい修練により、光平が帰宅してくると、その疲労さは
剣の素人である慎哉にもありありと伝わって来た。故に慎哉は
光平が倒れてしまうのではないかと心配でしょうがなかった。
そしてそれは優香も同じ思いだった。

刃「よぉ、邪魔するぜ」
さやか「もぉ、ちゃんと挨拶しなさいよ!」
ソウジ「お邪魔します。シンケンジャーの皆さん」
千明「おっ!刃にソウジも来たのか」

そこへ鉄刃と峰さやか、そしてキョウリュウジャーのキョウリュウグリーンこと
立風館ソウジが志葉邸にやってくる。刃やソウジもシンケンジャー同様、
光平の修練の相手をしていたのであった。

刃「大分、様になってきたみたいだな。光平の奴」
流ノ介「うむ。光平は中々飲み込みが速いようでな。間もなく修練の
 仕上げの段階となったのだ」

光平の剣裁きなど数日で格段に上がっている事に気付いた刃に
流ノ介は修練が仕上げの段階になった事を話す。

丈瑠「・・・・良し。では、修練の仕上げに入る。変身しろ」
光平「えっ、シグフェルにですか?」
丈瑠「そうだ。修練の仕上げは変身して俺と戦う事だ。一筆奏上!」

丈瑠から告げられた修練の仕上げはシグフェルに変身して、丈瑠と
戦う事だった。丈瑠はシンケンレッドに変身する。

光平「しかし・・・・」
シンケンレッド「お前の覚悟はその程度か。その様な覚悟ではキアイドーに
 勝てんぞ!」
光平「―!・・・・・分かりました。翔着!」

丈瑠の言葉により、自分の持つ覚悟がまだまだ半端だった事に気付いた
光平は気持ちを改めて丈瑠に挑もうと、シグフェルに変身し、両者は己の
武器であるシンケンマルとフレアセイバーを構える。

シンケンレッド「さぁ、来い!光平・・・・いや、シグフェル!!」
シグフェル「うぉぉぉぉ!!」

シンケンマルとフレアセイバーの刀身は激しく燃え、シンケンレッドと
シグフェルはぶつかるのであった・・・・・・・。

♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

光平「イテテ・・・・・」
優香「大丈夫、光平君?」
光平「うん、何とか・・・・・黒子の皆さんが良い傷薬を塗ってくれた
 おかげで痛みも大分、和らいできたよ」
慎哉「全く無茶しやがって。俺も優香もヒヤヒヤしながら見ていたんだからな!」
光平「ハハハ、心配かけて御免」
慎哉「・・・・まぁ、無事でなによりだけどさ」
丈瑠「・・・・・傷の方は大丈夫か?」
光平「丈瑠さん・・・・・」

志葉家に仕える黒子達により手当てを受けた光平に、慎哉や優香は
心配で光平の側にやってくる。そこへ同じく黒子の手当てを受けた
丈瑠がやって来た。シンケンレッドとのぶつかり合いで、シグフェルに
変身した光平は今までの修練を経て、編み出した技をぶつける。
それによりシンケンレッドを倒したが、外道衆と激しい戦いをしてきた
シンケンレッドの攻撃により、シグフェルも倒れてしまったのだった。

光平「・・・・すいません、丈瑠さん。丈瑠さんの方こそ身体の方は?」
丈瑠「これぐらい、何でも無い。だが、お前の編み出した技は見事だった。
 これならば修練の方は終えても良いだろう」
光平「本当ですか?ありがとうございます」

丈瑠から修練の成果を認められた事で、ついに光平は丈瑠からの
修練をクリアしたのであった。

流ノ介「うぉぉぉ、私は感動したぞ!よくぞ厳しい修練を耐えたな、光平!」
茉子「声が大きいわよ、流ノ介。でも、がんばったわね。光平君」
千明「ああ、丈瑠のシゴキに耐えられるなんて大した奴だぜ」
ことは「よう、がんばったなぁ。偉いで、光平君」
源太「こりゃぁ、寿司でも握ってお祝いしないとな!」

修練を終えた光平にシンケンジャーの面々は、それぞれ労いの
言葉を掛ける。

刃「へへ、2人の戦いを見ていたら、俺も戦いたくなってきたぜ。
 今度は俺と勝負な!」
さやか「怪我人相手に、何を言っているのよ!」
ソウジ「だけど怪我が治ったら、是非俺とも戦ってほしい。良いかい?」
光平「はは、まいったな・・・・でもあのキアイドーに勝ったら、その勝負
 受けてたちます!」

光平と丈瑠の戦いを見ていた刃やソウジから、勝負の申し込みを
受けられた光平は強敵キアイドーに勝った時、勝負を受けると
約束するのであった。

1751 

彦馬「さぁさぁ、お前達。殿も光平殿もお疲れだ。

 騒ぐのはその辺にしておきなさい」

彦馬は修練で傷ついた光平や丈瑠を案じて、騒がしくしている
流ノ介達を諌める。だがその時・・・・・・。

カラカラカラカラ

丈瑠「ム!」
彦馬「これは!?」

三途の川から隙間を通って現世に現れるアヤカシに反応する
隙間センサーが鳴り響く。彦馬はアヤカシが何処に現れたのか
調べる。

彦馬「殿、どうやらアヤカシは大江戸市の様です」
刃「なっ!俺の所かよ」
丈瑠「皆、すぐに支度だ!」
優香「でも、丈瑠さん。その身体じゃ・・・・」
丈瑠「アヤカシが出たのであれば、退治する。それが俺の・・・・
 俺達の使命だ!だからこそ、この程度の怪我だろうが出陣する!」

刃やしんせん組が住む大江戸市にアヤカシの反応が出た事を知り、
出陣しようとする丈瑠に対して、優香が心配する。しかしアヤカシとの
戦いが使命である為、出陣しようと支度を始める。

光平「俺も行きます・・・・」
慎哉「光平!お前だって、怪我しているじゃねぇか!」
光平「心配なのは分かる。でも、俺もブレイバーズの一員になったんだ。
 だからこそ、人が悲しむ思いをしないように俺が出るんだ!」

心配する慎哉に光平はブレイバーズの一員になったからこそ、
人々を守る為に戦いに赴こうとしていた。

丈瑠「・・・・分かった。お前も出陣の支度をしろ」
光平「ありがとうございます!」
刃「よ~し、光平のフォローは・・・・」
ソウジ「俺達に任せてくれ!」

怪我をしている光平のフォローをする為、刃とソウジも赴く。
そして一同は大江戸市へと向かった。

1752 

***大江戸市***

イサミ「タァッ!」
ナナシ連中「ナナ~!」
トシ「おりゃぁ!」
ビービ「ビビ~!」
ソウシ「くらえ!」
ゴーミン「ゴゴ~!」

一方、大江戸市ではイサミ、トシ、ソウシ達しんせん組の3人が
大江戸市で暴れるナナシ連中、魔虫兵ビービ、ゴーミンを相手に
戦っていた。

刃「お前らー!」
イサミ「刃さん!それにシンケンジャーの皆さんも」
ソウシ「キョウリュウグリーンのソウジさん、それとシグフェル・・・・
 牧村光平さんですね」
光平「ああ、確か君達はしんせん組のイサミちゃん、トシくん、
 ソウシくんだったね?」
ソウジ「君達も大丈夫かい?」
トシ「ソウシにソウジ・・・・ややこしい」

戦っていたしんせん組の3人の所へ、シンケンジャー、刃、ソウジ
そして光平が合流する。光平は歓迎パーティーでしんせん組の
3人と顔を合わせたばかりだった。そしてしんせん組のソウシと
キョウリュウジャーのソウジは名前が似ている為か、トシはややこしいと
感じる。

流ノ介「しかし、外道衆のナナシ連中だけでなく魔虫兵ビービに
 ザンギャック帝国のゴーミンまで暴れているとは・・・・」
茉子「彼等の狙いは何?」
千明「何でもいいけど、やっちまおうぜ!」
ブラジラ「ようやく現れたな。ブレイバーズの諸君」

ナナシ連中らを相手に戦おうとしていた彼等の前にブラジラが
立っていた。その横手にはキアイドー、そしてブラジラが血祭の
ブレドランを名乗っていた時に従っていたアヤカシ、マダコダマがいた。

光平「キアイドー・・・・・」
キアイドー「ほう、貴様か。俺を楽しませる程強くなったか?」
光平「貴様・・・・!」
丈瑠「待て、光平。貴様達の目的は何だ!」
ブラジラ「知れた事。ワルズ・ギル殿下はそこにいるシグフェルの
 存在にひどくご立腹である。故に、この救星主のブラジラ改め・・・・
 ザンギャックのブラジラが引導を渡してくれる!」
光平「俺を殺す為だけに、街を襲ったのか!許さないぞ!」
ブラジラ「ふん。ブレイバーズの者達共々、くたばるがいい。
 行け、お前達!」
キアイドー「邪魔立てはするなよ」
マダコダマ「やっと出番か。行くぜ!」

ブラジラは光平そしてブレイバーズを始末するべく、キアイドー、
マダコダマそしてナナシ連中や魔虫兵ビービ、ゴーミンに命令を
下し、キアイドー達は襲い掛かる。

丈瑠「いけるか、光平」
光平「勿論です。丈瑠さん」
丈瑠「そうか。ならば行くぞ、お前達!」
シンケンジャー5人「「「「「一筆奏上!」」」」」
源太「一貫献上!」

ガブリボルバー@音声「ガブリンチョ!ザクト~ル!」

ソウジ「キョウリュウチェンジ!」

ガブリボルバー@音声「ファイア!」

シグフェル「―翔着(シグ・トランス)!!」

それそれシンケンジャー、キョウリュウグリーン、シグフェルに変身し、
刃、しんせん組と共に立ち向かう。

シンケンレッド「シグフェル、ブラジラ達の相手は俺達がする!
 お前はキアイドーと決着を着けろ!」
シグフェル「はい!」

そしてシグフェルは決着をつけるべくキアイドーに向かっていくのであった。

1753 

◯志葉丈瑠/シンケンレッド→修練の仕上げとして光平と戦い、その成果を認める。
  街に現れたブラジラ達と戦う為、シンケンレッドに変身する。
◯池波流ノ介/シンケンブルー→光平と丈瑠の戦いを見届けた後、街に
  現れたブラジラ達と戦う為、シンケンブルーに変身する。
◯白石茉子/シンケンピンク→光平と丈瑠の戦いを見届けた後、街に
  現れたブラジラ達と戦う為、シンケンピンクに変身する。
◯谷千明/シンケングリーン→光平と丈瑠の戦いを見届けた後、街に
  現れたブラジラ達と戦う為、シンケングリーンに変身する。
◯花織ことは/シンケンイエロー→光平と丈瑠の戦いを見届けた後、街に
  現れたブラジラ達と戦う為、シンケンイエローに変身する。
◯梅盛源太/シンケンゴールド→光平と丈瑠の戦いを見届けた後、街に
  現れたブラジラ達と戦う為、シンケンゴールドに変身する。
◯日下部彦馬→ブラジラ達が大江戸市に出現した事を報せる。
◯鉄刃→光平と丈瑠の戦いを見届ける。街にブラジラ達が現れた為、
  しんせん組と合流する。
◯峰さやか→刃と共に光と丈瑠の戦いを見届ける。
◯立風館ソウジ/キョウリュウグリーン→光平と丈瑠の戦いを見届ける。街に
  ブラジラ達が現れた為、キョウリュウグリーンに変身する。
◯花丘イサミ→街で暴れるナナシ連中に攻撃する。
◯月形トシ→街で暴れる魔虫兵ビービに攻撃する。
◯雪見ソウシ街で暴れるゴーミンに攻撃する。
●救星主のブラジラ→シグフェルを打倒すべくキアイドー達に攻撃を命じる。
●キアイドー→ブラジラ達と共に街に現れ、光平達に襲い掛かる。
●マダコダマ→ブラジラ達と共に街に現れ、光平達に襲いかかる。

◯牧村光平/シグフェル→修練の仕上げとして丈瑠と戦い、技を編み出して
 修練の成果が認められる。街にブラジラ達が現れたのでシグフェルに変身する。
◯朝倉慎哉→牧村光平と志葉丈瑠の戦いを見守る。
◯沢渡優香→牧村光平と志葉丈瑠の戦いを見守る。

【今回の新規登場】
●マダコダマ(天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックon銀幕)
 山水画ような、閻魔大王のねぶたのような姿を持つアヤカシ。放たれた
 モヂカラや天装術を右肩の岩の穴で吸い込み、それを元に左肩の閻魔
 大王の口から攻撃を吐きだす能力を有する他、空中に水蒸気のレンズを
 作り出す事も出来る。血祭のブレドランの護星界壊滅の野望に加担し、
 この世に侵攻。外道衆に関わらず、骨のシタリに従わず、外道シンケンレッド
 の炎のモヂカラをレンズで増幅させ、護星界への道を開く事に成功した。
 山彦の伝承のルーツとされるアヤカシ。


『地球の騎士「天凰輝」誕生』-4

作者・ホウタイ怪人&ユガミ博士

1754 

フレアセイバーを構え、シグフェルはキアイドーに斬りかかり、
激しい剣のせめぎ合いをしていく。

キアイドー「貴様、どうやら体にダメージを負っているようだな。そんな
 状態で、俺に勝てると思っているのか?」
シグフェル「俺は勝つ!勝ってお前から受けた恐怖と敗北を乗り越えて
 みせる!」
キアイドー「ならば、せいぜい俺を楽しませてみせろ!」

先程、丈瑠との戦いで身体にダメージが残っているが、自分に恐怖と
敗北感を植え付けた強敵に勝利すべく、フレアセイバーを振るった。
一方、シンケンジャー達は、ブラジラとマダコダマを相手に戦っていた。

ブラジラ「シンケンジャー・・・・貴様達を相手にするのであれば、この姿で
 相手をするとしよう」
シンケンレッド「行くぞ、ブレドラン!」

ブラジラはカモミラージュの天装術で「血祭のブレドラン」に姿を変える。
血祭のブレドランはシンケンレッドを相手にし、他のメンバーはマダコダマや
ナナシ連中等の相手をする。

ソウシ「“正義の矢”をくらぇぇ!」
マダコダマ「甘い!!」

ソウシはエネルギーを纏わせた矢をマダコダマに向けて放つが、
マダコダマは右肩の岩の穴で吸い込んでしまう。そして吸い込んだ
矢は左肩の閻魔大王の口から放たれて、攻撃にしてしまう。

シンケンブルー「あのアヤカシは、我々のモヂカラやゴセイジャーの
 天装術を吸い込んで、攻撃として吐き出してしまうのだ」
刃「そういう事、早く言ってくれよ!」
シンケンピンク「以前戦った時は、モヂカラと天装術を組み合わせた
 攻撃をぶつけて何とかなったけど・・・・・」
マダコダマ「ゴセイジャーがいない今、貴様らなんぞ敵では無い!」

マダコダマは以前、モヂカラと天装術が合わさった技を吸収しきれず
吹き飛んでしまい、結果として敗北する切欠となったのだが、この場には
ゴセイジャーがいない為、シンケンジャー達はどの様に活路を開くべきか
思案する。

???「“稲妻連動・三段打ち”!」
???「“ガブリボルバー”!」
マダコダマ「ぬぉ!?」

突如、マダコダマに錐状の電撃とビームが命中する。咄嗟の事
だったのでマダコダマは吸い込む事が出来なかった。

キョウリュウゴールド「お待たせしたでござる。ソウジ殿!」
キョウリュウブラック「Sorry、女の子とデートがあったものでね」
キョウリュウグリーン「イアン、空蝉丸来てくれたのか!キング達は?」
キョウリュウゴールド「キング殿達は、後から合流してくるでござる」
キョウリュウブラック「遅れてきた分、キング達が来る前に片付けようぜ!」

マダコダマを攻撃したのは、キョウリュウグリーンの仲間である
キョウリュウゴールドとキョウリュウブラックだった。キョウリュウグリーンが
戦っていると聞き、駆けつけたのであった。

シンケンブルー「他のキョウリュウジャーも来てくれたか。心強い!」
イサミ「でも、攻撃を吸い込んじゃう能力をどうすれば・・・・」
キョウリュウブラック「心配するなよ、お嬢さん。良い考えがあるぜ!」

敵の能力に太刀打ちできるか心配なイサミにキョウリュウブラックは
ある秘策を思いつく。

1755 

キアイドー「いいぞ、シグフェル!やはり貴様をあの時仕留めなかった
 のは正解だったなぁ!」

一方、シグフェルとキアイドーの戦いはダメージを負った身体だが、
修練の成果によりキアイドーを凌ぐほどの剣裁きを身に着ける。
シグフェルが自分を上回る強さにまで成長したと理解したキアイドーは
新しい玩具を与えられた子供の様に喜んだ。

シグフェル「(このまま、こっちの体力が尽きる。どうすれば・・・・)」
ゴーミン「ゴゴッ!」
キアイドー「邪魔だ!」ズバッ
ゴーミン「ゴゴ~!」
シグフェル「―!」

キアイドーに決定打を打てないか思案していたシグフェルだが、
そこへ1体のゴーミンがキアイドーとシグフェルの間に入ってしまい、
キアイドーに邪魔者として斬られてしまう。

シグフェル「仲間なのに斬るなんて・・・・」
キアイドー「仲間?ふん、俺の楽しみを邪魔するのであれば、
 誰だろうと斬る。さぁ、もう一度俺と戦え!」
シグフェル「・・・・・仲間を斬る様な奴に俺は負けない!
 今度こそ、貴様を倒す!はぁぁぁぁ!!」

シグフェルは力を貯め、フレアセイバーの刀身を炎で包むと、
瞬時にキアイドーの間合いに立ち、その動きはまるで舞を
するかの如くキアイドーの体を斬りつけていく。

キアイドー「急に、剣の速さが上がっただと・・・・」
シグフェル「はぁぁぁぁ、<<火焔十字の舞(クロスプロミネンス)>>
 ――チェストォォォッッ!!!!!!!!!」

そしてキアイドーの胸に横へ一閃、さらにフレアセイバーを天高く
上へ突き上げると、そのまま縦に強力な一撃が加わる。キアイドーの
胸には炎で燃える十字が刻まれた。これこそ丈瑠との修練で得た
必殺技『火焔十字の舞(クロスプロミネンス)』だった。

キアイドー「ぐわあああっ!!!」

1756 

一方、マダコダマを相手に戦うブレイバーズ。キョウリュウブラックは
皆にある秘策を伝える。

キョウリュウブラック「シンケンジャーのモヂカラとゴセイジャーの
 天装術を組み合わせて倒せたのなら、今度はモヂカラとブレイブの
 力、そして皆の力を合わせればいいってことさ」
キョウリュウゴールド「おお、モヂカラとブレイブさらに皆の力を
 合わせるのでござるか!」
キョウリュウグリーン「まるで、キングが言いそうだね」
キョウリュウブラック「そういえば、そうだな。どうやらキングに
 影響されたらしい。だが、その方がブレイバーズって感じだろ?」
シンケンイエロー「うん。その方がええわ」
刃「やってやろうぜ!」

キョウリュウブラックの秘策を受けて、彼らは動き出す。まずは
キョウリュウゴールドとシンケンピンク、ソウシがマダコダマの前に立った。

シンケンピンク「私の【天】のモヂカラと」
キョウリュウゴールド「拙者の雷の力」
ソウシ「そこにルミノタイトでエネルギーとなった精神力を加える!」

シンケンピンクから放たれる【天】のモヂカラとキョウリュウゴールドが
発した電気は、ソウシが放ったエネルギーの矢と合わさった事で
強力なエネルギーの塊に変わり、マダコダマの右肩の穴に吸い込まれる。

マダコダマ「ぐぅうう、い、イカン!エネルギーが強すぎて受け止められん!
 ぐわぁぁああ!」

その強すぎるエネルギーを処理できずマダコダマは吹っ飛んでしまう。

キョウリュウブラック「アームドオン、パラサショット!」
トシ「こいつも持っていきやがれ!!」

そこへパラサショットを装備したキョウリュウブラックが
ガブリボルバーと一緒にマダコダマに向けて弾丸を放つ。
更にトシも龍の目を強烈なシュートでぶつけた。

シンケンブルー「我らの出番だ。行くぞ!」

そしてシンケンブルー、シンケングリーン、シンケンイエローが
シンケンマルで斬りつけていく。

キョウリュウグリーン「トリニティストレイザー!」
刃「かみなり斬り!」
イサミ「龍の剣!」
マダコダマ「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」

さらにキョウリュウグリーン、刃、イサミがフェザーエッジ、
魔剣クサナギ、龍の剣でトドメをさされた事でマダコダマは
倒された。

1757 

血祭のブレドラン「キアイドーが!?」
シンケンレッド「余所見などするな!」
血祭のブレドラン「ぬうぅ!」

シンケンレッドと戦っていた血祭のブレドランはキアイドーが
シグフェルの新技『火焔十字の舞(クロスプロミネンス』によって
倒れたのに驚愕する。

キアイドー「ぐ、ぐうう・・・・見事だ。今の・・・・・貴様との戦いは、
 赤の海賊との戦いを思い出したぞ」
シグフェル「キアイドー・・・・・」
キアイドー「ふ・・・・ふふふはははは!もっと・・・・戦いたかっ・・・・た」ドサァ

『火焔十字の舞』を受けたキアイドーは最後の言葉を振り絞ると
力尽きて倒れる。今、シグフェルは恐怖と敗北を乗り越えた瞬間だった。

血祭のブレドラン「ええい、キアイドーが倒れるとは!ならば私がこの手で!」
シンケンレッド「させるか!」

キアイドーが倒されるのを見た血祭のブレドランは自分の手で
シグフェルを倒そうと襲い掛かる。しかし、血祭のブレドランを
シンケンレッドが阻んだ。

シンケンレッド「まだ、やれるか?シグフェル」
シグフェル「はい、シンケンレッド!」

シンケンレッドとシグフェルはそれぞれ、シンケンマルと
フレアセイバーを構えるとブレドランの体に炎を纏わせた
刀身で斬りつけていく。そして、ブレドランの前後に
シンケンレッドとシグフェルが向かい合った。

シンケンレッド&シグフェル「「獅凰双炎斬!!」」
血祭のブレドラン「ぐわぁぁぁあ!!」

向かい合った2人の斬撃から、それぞれ炎の獅子と
鳳凰が出現してブレドランに大ダメージを負わせる。

血祭のブレドラン「貴様らぁ~!こ・・・このまま手ぶらで帰る訳には
 いかん。せめてシンケンレッド・・・・貴様を葬る!」
シンケンレッド「―!」
シンケンゴールド「あぶない、丈ちゃん!ぐわぁ!」
シンケンレッド「源太!!」

大ダメージを受けた血祭のブレドランは、せめてシンケンレッドを
葬ろうと攻撃するが、シンケンゴールドが代わりに攻撃を受けて
倒れてしまう。

血祭のブレドラン「ちぃ、仕留める事が出来なかったか。
 ならば行け!ビービ虫よ!」

シンケンレッドを仕留める事が出来なかった血祭のブレドランは
ビービ虫を用いて、キアイドーを復活させて巨大化させる。
時を同じくして、倒されたマダコダマも【二の目】となり巨大化して
復活する。

1758 

***ギガントホース・艦橋司令室***

ワルズ・ギル「ええい、結局あのシグフェルを倒せなかったではないか!」
ダマラス「殿下、落ち着きくだされ。インサーン、スゴーミン達を出撃させよ!」
インサーン「はっ!」

シグフェルとキアイドーの再戦を観ていたワルズ・ギルは作戦の失敗に
地団太を踏む。ダマラスはインサーンにスゴーミンの出撃を命じて、
出撃したスゴーミンはインサーンの開発した巨大化光線により巨大化して
街で暴れるキアイドーやマダコダマのいる所に現れる。またビルの隙間から
三途の川を通って、大ナナシ連中も出現した。なお、そのドサクサに
紛れ、血祭のブレドランは姿を消す。

シンケングリーン「おいおい滅茶苦茶いるじゃねえか!」
キョウリュウゴールド「とにかくプテラゴードン達を呼ぶでござる」
イサミ「あれは!?」

獣電竜を呼び出そうとしたその時。ブレイバーズの旗艦の一つである
地球連邦の戦艦ラー・カイラムが現れ、マジンガーZやν‐ガンダム等
ブレイバーズに所属するスーパーロボット達が出撃する。

ν‐ガンダム@アムロ「補給を終えて日本から出る予定だったが、
 出撃する事になるとは・・・・。だが相手はゴーカイジャーや
 シグフェルを一度は倒した強敵。皆、油断はするなよ!」
マジンガーZ@甲児「了解!マジンガーも久々の出撃なんだ。
 行くぞ、ロケットォォパァァァアンチ!!」

アムロ達ラー・カイラムのクルーは補給を終えた為、日本から
出国する所だったが、巨大化したキアイドー達が暴れていると
情報が入った為、甲児達ブレイバーズのスーパーロボットの
パイロット達と共に出撃したのであった。

キョウリュウジン@キョウリュウレッド「お~い、イアン達!遅くなっちまった」
キョウリュウジン@キョウリュウブルー「敵は“テキ”パキ倒すよ!」
キョウリュウジン@キョウリュウピンク「行くわよ~!」

遅れてきたキョウリュウレッド、キョウリュウブルー、
キョウリュウピンクは獣電竜ガブティラ、ステゴッチ、
ドリケラが合体した獣電巨人キョウリュウジンに
乗り込み、他のスーパーロボット達と共に大ナナシ連中や
スゴーミンと戦っていく。

キョウリュウゴールド「こちらもキング殿達に合流するでござる!」

キョウリュウゴールド、キョウリュウグリーン、キョウリュウブラックの
3人はパートナーである獣電竜プテラゴードン、ザクトル、パラサガンを
呼び出し、カミツキ合体によってプテライデンオー・ウェスタンとなり巨大戦に加勢する。

シンケンレッド「大丈夫か?源太」
シンケンゴールド「・・・うぅ、すまねぇ丈ちゃん。今はこれ以上
 無理みたいだ・・・・」
シンケンレッド「お前のおかげで助かった。今は休め。
 源太の事を頼む」
イサミ「はい」

シンケンゴールドはシンケンレッドを庇って受けたダメージにより
これ以上は戦えなかった。シンケンゴールドをイサミ達に託すと
シンケンジャーは折神を【折神大変化】で巨大化させる。

シンケンレッド「お前も来い!」
シグフェル「え!?」

巨大化した相手にシンケンジャーは一気に侍合体でシンケンオーと
なるが、シンケンレッドによってシグフェルもシンケンオーの中に乗り
込む事になる。その影響なのか、シンケンオーのダイシンケンは
光り輝く。

プテライデンオー・ウェスタン@キョウリュウゴールド「あのアヤカシは我らが!」
キョウリュウゴールド&キョウリュウグリーン&キョウリュウブラック「プテライデンオーウェスタン・
 ブレイブフィニッシュ!!」
マダコダマ「ぐわぁぁぁぁぁ!!」

右腕のパラサビームガンに3体のキョウリュウスピリッツが放たれ、
マダコダマは消滅した。

シグフェル「ここがシンケンオーの中・・・・」
シンケンレッド「シグフェル、俺達に合わせろ!」
シグフェル「は、はい!」
シンケンジャー&シグフェル「「ダイシンケン侍斬り!!」
キアイドー「ぬぉぉぉぉぉお!!」

シンケンオーのコックピットに来たシグフェルは、シンケンオーの
中に入った事により戸惑う中、シンケンジャーがシンケンマルを
降るのと同時に、シグフェルもフレアセイバーを振り下ろす。
そして、キアイドーはその光り輝くダイシンケンによって断末魔を
挙げながら倒されるのであった。

1759

○志葉丈瑠/シンケンレッド→シグフェルと共にキアイドー、血祭のブレドランを撃破。
◯池波流ノ介/シンケンブルー→マダコダマと戦い、撃破する。
◯白石茉子/シンケンピンク→マダコダマと戦い、撃破する。
◯谷千明/シンケングリーン→マダコダマと戦い、撃破する。
◯花織ことは/シンケンイエロー→マダコダマと戦い、撃破する。
◯梅盛源太/シンケンゴールド→シンケンレッドを庇って負傷する。
◯キョウリュウレッド゙→キョウリュウジンに乗って出撃する。
◯イアン・ヨークランド/キョウリュウブラック→キョウリュウゴールドと共に助けに
  駆けつける。巨大戦ではプテライデンオーウェスタンに乗り込む。
◯キョウリュウブルー→キョウリュウジンに乗って出撃する。
◯立風館ソウジ/キョウリュウグリーン→マダコダマと戦い、撃破する。
  巨大戦ではプテライデンオーウェスタンに乗り込む。
◯キョウリュウピンク→キョウリュウジンに乗って出撃する。
◯空蝉丸/キョウリュウゴールド→キョウリュウブラックと共に助けに
 駆け付ける。巨大戦ではプテライデンオーウェスタンに乗り込む。
◯鉄刃→マダコダマと戦い、撃破する。
◯花丘イサミ→マダコダマと戦い、撃破する。
◯月影トシ→マダコダマと戦い、撃破する。
◯雪見ソウシ→マダコダマと戦い、撃破する。
◯アムロ・レイ→ν-ガンダムで出撃する。
◯兜甲児→マジンガーZで出撃する。
●ワルズ・ギル→作戦が失敗したのでスゴーミンを出撃させる。
●ダマラス→作戦が失敗したのでスゴーミンに出撃させる。
●インサーン→出撃させたスゴーミンに巨大化光線を当てる。
●キアイドー→シグフェルの新技「火焔十字の舞」によって撃破される。
  ビービ虫によって巨大化するが、シンケンオーによって倒される。
●救星主のブラジラ→カモミラージュにより「血祭のブレドラン」に変身する。
  倒されたキアイドーをビービ虫を使って巨大化させる。
●マダコダマ→シンケンジャー達によって撃破される。二の目により
  巨大化した後、プテライデンオーウェスタンによって倒される。
 
○牧村光平/天凰輝シグフェル→必殺技「火焔十字の舞(クロスプロミネンス)」を会得し、
 キアイドーを撃破。巨大戦ではシンケンオーに乗り込む。


地球の騎士「天凰輝」誕生』-5

作者・ホウタイ怪人&ユガミ博士

1760 

***秩父山・赤心寺***

強敵キアイドーに見事勝利したシグフェルは、
翌日、玄海老師の許に報告に訪れたが…。

玄海「光平君、見事であった!」
光平「玄海老師、ありがとうございます」
玄海「君に引き合わせたい人物がおる。入られよ!」
光平「……?」

本堂へと入って来た青年は、サングラスを外して
玄海老師に対して一礼して正座する。

衛「玄海老師ですね。お初にお目にかかります」
玄海「地場衛殿じゃな?」
光平「地場衛…? それって確かうさぎちゃんの……」

地場衛――またの名をタキシード仮面。
そしてもう一つの名を、地球の次期女王ネオ・クィーン・セレニティの
王配となるべき人物キング・エンディミオンである。
セーラームーン=月野うさぎと将来を誓い合った恋人である。

衛「光平君、君の戦いぶりは確かにこの目で見届けさせてもらった。
 今日は君に大事な話があって来た」

衛は、光平に「地球の騎士」の称号について話を切り出した。

光平「地球の騎士…?」
衛「厳密に言えば、女王の騎士(Knight of the Queen)だ。
 地球連邦の象徴的存在である歴代国王が代々一人だけ
 選ぶことが許される、言ってみれば懐刀みたいなものかな」
光平「それを俺に!? どうしてですか?
 そんな大事な役割なら水野さんや火野さんが…」
衛「あいにく女王の騎士に任命される資格があるのは、
 地球生まれの男性だけなんだ」
光平「それでしたら俺なんかよりも
 もっと経験豊富で適任の人が…」
衛「いや、君が一番相応しい。うさ子と同世代で歳も近く、
 側にいて信頼して心を開ける人間は、他に君しかいない」
光平「買いかぶり過ぎですよ…」

困ってしまう光平。まだ駆け出しの戦士に過ぎない
自分にはあまりにも荷が重すぎる。

玄海「光平君、せっかくの話、受けてみたらどうじゃ?」
光平「玄海老師まで…」
衛「そう難しく考えなくていいんだ。残念ながら
 俺は事情があってうさ子の近くには当面
 一緒にいてやれない。代わりに君に彼女を
 支えてやってほしい。ここは人助けと思って
 引き受けてはもらえないか?」

光平は少し考え込んでから、静かに口を開いてこう答えた。

光平「少し…考えさせてください」

1761 

***PU旗艦 エトワール・ド・ラ・セーヌ***

そして数日後……。
プリンセス・ユニオンの総本山ともいうべき
見目麗しき巨大戦艦 エトワール・ド・ラ・セーヌ内にある大広間において、
ささやかながら「女王の騎士(Knight of the Queen)」の叙任式が執り行われた。

西洋風の甲冑とマントに身を包んだ礼装をした牧村光平が、
ゆっくりと大広間を奥へと進み、上座に立つ次期女王のドレスを来た月野うさぎと
次期王配の礼装をした地場衛の前へと出る。

光平「我は神々と精霊に恩寵を受け、生を賜りし光のしもべ。
 我、剣と共に全てを次期女王陛下に捧げます」

衛「………」
うさぎ「………」

光平が差し出した儀礼剣を受け取るうさぎ。
その剣の腹で、光平の肩を叩き、
かしゃり、かしゃりと2回叩く音がする。
うさぎから剣を返された光平はそれを受け取り、
剣を鋭く3回振り払い、鞘に納める。

光平「我が剣、我が力、我が身体、我が魂からの忠誠は
 全て女王(Queen)のもの。女王(Queen)こそが我が魂の主人にて、
 我が希望の宿り主。その忠義、今ここに我が主と精霊に誓います」
うさぎ「牧村光平、汝を今ここに女王の騎士(Knight of the Queen)に任じます」

こうして叙任式は恙無く終わり、牧村光平は名実ともに
ネオ・クィーン・セレニティに仕える騎士となったのである。

衛「光平君、赤心寺に行ってみるといい。
 玄海老師がお待ちかねだ」
光平「玄海老師が…?」


***秩父山赤心寺***

光平は再び玄海老師に赤心寺へと呼び出された。
いったい何事だろう?と寺を訪れた光平だったが、
法堂へと案内された彼の目の前で、玄海老師は自ら筆を奮い、
一筆を書いて光平に贈る。その場には志波丈瑠も同席していた。

光平「天凰輝(テンオウキ)…?」
玄海「天に輝く鳳凰の騎士という意味じゃ」
丈瑠「まさに今の光平に相応しい言葉だ」

女王の騎士(Knight of the Queen)となった光平に、
玄海老師が祝福の意味を込めて書いたものだ。

玄海「これからは天凰輝シグフェルと名乗るがよい!」
光平「天凰輝…シグフェル!」

今ここに名実ともに地球の平和を守る新たなヒーロー、
地球の騎士、天凰輝シグフェルが誕生した!


***朝倉家・光平の部屋***

朝倉家へ帰って来た光平は、自室で亡き両親の写真を手にとって
静かに決意を語りかける。

光平「父さん…母さん…。元々思い描いていたものとは少し違っちゃったけど、
 これで父さんが志した道に俺もようやく近づけたよ。天国で見ててくれよな…」

1762

***永田町・首相官邸***

土橋「いやあ、めでたいめでたい♪
 光平君の晴れ姿、陽一郎君にも見せてやりたかった!」

光平が女王の騎士(Knight of the Queen)に叙任された事を、
まるで自分の孫の事でもあるかのように喜んでいる土橋竜三。
これによって、これまで光平を一方的に反日危険分子と看做していた
永田町や霞が関の一部上層部も、迂闊に彼に手出しをする事は
出来なくなったのである。

土橋「これでワシも光平君の監視役から晴れてお役御免♪
 もう党の長老たちも彼にちょっかいを出すような心配も
 いらなくなるでしょう」
桃太郎「そうなるといいがな…」
土橋「はい…?」

剣桃太郎は、さっきからずっと執務室の窓から、
何かよからぬ予感しているように、
じっと外の景色を見つめている。

桃太郎「確かに永田町の奥の院も、あの少年に対して下手な干渉は
 控えるようになるだろう。だがそれも表向きの話だ…」
優子「総理は"影"が動くと読まれているのですね?」
土橋「まさか……」

今までは表向きの監視状態に置かれていただけだったが、
その牧村光平が公の地位に関わる称号を得たとなると、
表では動きにくくなった以上、これからは影の部分が
代わって動き出すのは、ある意味必然であると言えた。

桃太郎「………」


***天童菊之丞邸・茶室***

聖天子付き補佐官・天童菊之丞が茶を立てている中、
一人の編笠を被った尼僧が茶室の脇へと控える。諸国探索の任務より戻った
天童の女忍者・千坂朱音である。

朱音「御前、ただ今戻りました」
菊之丞「ご苦労であった。では報告を聞こう」
朱音「大阪エリア指導者・斉武宗玄、並びに仙台エリア首相・稲生紫麿、
 いずれも東京に対して異心を抱いているのは明白にございます。
 特に斉武は京都の仙洞御所に連なる旧華族の何人かとも接触を
 繰り返している形跡がございます」
高坂「もし斉武が、京都におわす治天の君と結びつくようなことがあれば、
 聖天子様にとっても由々しき事態…」

茶室に同席している天童家の用人・高坂正眼は、朱音の報告を聞き憂慮する。
「治天の君」とは日本国の先々帝であり、当代の聖天子から見て高祖父に当たる人物だ。
天子の位を退いてからは京都の仙洞御所に引き籠り、

すでに御歳は100歳を軽く超えているといわれる。

菊之丞「北陸の様子はどうであった?」
朱音「金沢エリアには、今のところ目立った動きは見られませぬ」

金沢エリアは、大阪や仙台と同様に、日本が道州エリア制を導入してから、
新潟県、富山県、石川県、福井県の4県を統括する上位行政区分である。
首長が大統領的な権限を握っている大阪エリアや仙台エリアとは異なり、
金沢エリアには「北陸宮」と呼ばれる宮家が御輿として招かれており、
現在も名誉職的な存在の首長として公務に励んでいる。

高坂「本日その方を呼び戻したのは他でもない。
 そなたに渡す物がある」

高坂が朱音に手渡した大判の封筒の中には、
高校の教員免許が一枚入っていた。

朱音「御用人様、これはいったい?」
高坂「与党の老人どもが閣下に泣きついて参ったのよ。
 その方にはこれよりメガロシティにある海防大学付属高校に
 教師として赴任してもらう。手続きもすでに済ませてある」
菊之丞「………」
高坂「仔細については追って沙汰を下す。
 それまで待て」
朱音「ハハッ」

1763 

○地場衛→牧村光平を「女王の騎士(Knight of the Queen)」に推挙。
○月野うさぎ→牧村光平を「女王の騎士(Knight of the Queen)」に叙任。
○玄海老師→シグフェルに「天凰輝」の称号を一筆書いて贈る。
○志葉丈瑠→玄海老師が牧村光平に「天凰輝」の称号を一筆書いて贈る場に同席。
○土橋竜三→牧村光平が「女王の騎士(Knight of the Queen)」に叙任された事と
 自分が光平の監視役を事実上解かれた事を喜ぶ。。
○木場優子→これから牧村光平に"影"の手が迫るであろう事を憂慮する。
○剣桃太郎→これから牧村光平に"影"の手が迫るであろう事を憂慮する。
△天童菊之丞→千坂朱音に海防大学付属高校への潜入任務を命じる。

○牧村光平/天凰輝シグフェル→地場衛の推挙によって「女王の騎士(Knight of the Queen)」に任命される。さらに玄海老師から一筆を贈られ、以後は変身後のコードネームとして「天凰輝シグフェル」を名乗る。
△千坂朱音→諸国探索の任務から帰還し、東京に戻る。天童菊之丞から教師として海防大学付属高校に
 潜入する任務を新たに命じられる。
△高坂正眼→千坂朱音のために教員免許を用意し、海防大学付属高校に新任教師として
 赴任できるよう手続きを済ませる。

【今回の新規登場】
△高坂正眼(闘争の系統オリジナル)
 天童家の家令(執事長)であり、天童菊之丞に仕える用人。


『天凰輝シグフェル、最初の事件』-1

作者・ホウタイ怪人

1764 

――夜。

***メガロシティ・テームブロック***

ここはメガロシティの中でも最もファッショナブルな繁華街である。
多くの若者たちが通りを行き交う中、
一人の若い女性が、ショーケースの向こう側と睨めっこしている。

女性「これが今年最先端の水着かぁ…。それにしても高い!
 この値段じゃちょっと考えるわねぇ~」

お財布の中身と相談した結果、泣く泣く買うのを諦めた女性は、
店から離れて人通りの少ない裏道へと入っていく。

女性「……?」

その時、通りの奥の暗闇から何が赤く光ったような気がした。

女性「変だなあ…。何か光ったような気がしたけど。
 ま、いっか!」

しかし、それは決して気のせいなどではなかったのである!

妖魔獣バランダ「グオオオッッッ…!!!!!」
女性「ええっ!? キャアアッ――!!」


――翌朝。

***メガロシティ住宅街・岡島家***

山本アナウンサー@テレビ「これでテームブロックで起きた女性失踪事件は7件になります。
 事態を重く見た警視庁では、メガロシティ署に特捜本部の設置を決定しました」

雄大「………」

朝食を取りながら、朝のニュースを興味深く見つめている岡島雄大。

雄大の母「雄大、早く行かないとそろそろ学校に遅れるわよ」
雄大「あっ、いけね!」

雄大は慌てて食べかけのトーストを口にしたまま、
カバンを持って玄関から飛び出した。

雄大「行ってきま~す!」

1765 

一方、その頃…。

***日本海溝・ブレイバーベース***

シグフェル「ズバッと参上、ズバット解決――」
グレートサイヤマン「それは怪傑ズバットの決め台詞だ!」
シグフェル「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が――」
グレートサイヤマン「それは仮面ライダーストロンガー!」
シグフェル「月に代わっておしおき――」
グレートサイヤマン「違う違う! それはセーラームーンの名乗り口上だろ!」
シグフェル「す、すみません……」
グレートサイヤマン「さっきから聞いていれば他人のパクリばかり。
 ダメじゃないかシグフェル! もう君も一人前のヒーローなんだ。
 名乗りの際の決めポーズはきちっと決めておいてもらわないと!
 特別に僕が見本を見せてあげよう!

 ――私は正義を愛する者、グレートサイヤマンだ!!!」

シグフェル「………(汗」

シグフェルの目の前で、派手で大胆なポーズを取って見せるグレートサイヤマン。

海野「何やってるんだ? あの二人は…」
小野「何でも決めポーズの練習なんですって…」

呆れて様子を見ている、レッドマフラーの海野隊員と小野隊員。
そこへ佐原千恵が何かを伝えにやって来た。

千恵「光平君、そろそろ学校の時間じゃないの?」
シグフェル「ヤバッ!? 俺、そろそろ学校に行かないと
 遅刻しちゃうんで、この辺で失礼します」
グレートサイヤマン「うむ。この次はとっておきの新ポーズを伝授してあげよう!」
シグフェル「ははは…(汗」

シグフェルの姿のままブレイバーベースから飛び立ったシグフェルは、
学校の近くまで来たところで周囲に誰もいないのを確認して、こっそりと変身を解除。
牧村光平の姿に戻り、校門前で待っていた朝倉慎哉や沢渡優香と合流した。

慎哉「随分と遅かったじゃないか?」
光平「ごめんごめん!」
優香「光平くん、チャックさんと美姫さんから、学校が終わったら
 警察署の方に寄ってほしいって」
光平「チャックさんと美姫さんが…?」


――そして、学校の放課後。
光平たちは言われた通り、帰りにメガロシティ署へと立ち寄った。

***メガロシティ警察署・刑事課***

チャック「よっ、お前ら! わざわざ来てもらってすまなかったな」
光平「どうしたんですか?」
美姫「あなた達も、ここ最近メガロシティ署管内で
 連続して発生している女性失踪事件については知ってるわね?」
優香「ええ…」
慎哉「そりゃ俺たちだってニュースは見てますから。
 それがどうかしたんですか?」
美姫「…あなたたち、何か思い出さない?」
光平「――!!」

美姫の言葉で、光平たちはハッとなる。
かつてメガロシティ近辺では同じような事件が起こった事があった。
その犯人は東条寺理乃。光平に人体実験をしてシグフェルにした張本人と思われる女だ。
理乃は、他にも同様に多数の女性たちを拉致して実験のモルモットとして利用し、
無残にも殺害していた事が判明している。

光平「もしかして東条寺がこの街に戻ってきたんじゃ!?」
チャック「それについては、まだ何とも言えん」
美姫「だけど一応警戒は促しておこうと思ってね」
光平「俺も今夜からパトロールに加わってみます!」
優香「光平くん…」
美姫「光平、今のあなたは一人ではないわ。私たちがついている。
 だから決して一人で先走ったりしてはダメよ」
光平「わかってますよ♪ 心配しないでください」

1766 

――再び、夜。

***メガロシティ・テームブロック***

繁華街の中をそれとなく警戒しながら歩く光平。

光平「……(特にどこも異常はないみたいだけどな)」

その光平をこっそりと尾行する人間がいた。
光平たちの後輩である岡島雄大だ。
雄大は光平の日頃の挙動不審から、
「実はシグフェルの正体は光平ではないか?」と
勘づき始めていたのだ。

雄大「やっぱり今日も光平先輩は同じところに出かけてる…。
 そういえば最近マスコミでシグフェルの話題が急に流れなくなったけど、
 ますます怪しい。今日こそシグフェルの正体を暴いてやるぞ!」

気付かれないようにこっそりと光平の後をつける雄大だったが、
同じく付近を巡回中だったチャック・スェーガーに捕まり職務質問を受ける羽目に…。

チャック「コラッ! 小学生がこんな夜遅い時間に
 こんなところで何してる!?」
雄大「失敬なッ! こう見えても僕は立派な高校生ですよ!
 ……ってアレ? もしかしてチャック先生??」
チャック「……??」
雄大「お忘れですか!? サイソニック学園の初等部にいた
 岡島雄大ですよ!」
チャック「ええっ!? お前、まさかあの泣き虫っ子の雄大か!?」

記憶を辿り、ようやく思い出したチャック。
実は雄大はサイソニック学園の卒業生であり、
教師時代のチャックの教え子だったのだ。

雄大「いやあ懐かしいなあ…」
チャック「あのちびっ子雄大がこんなに大きくなってたとはなあ」
雄大「では僕はこの辺で…」
チャック「ちょっと待て! たとえ高校生だとしても
 未成年者には変わりがないぞ! 夜遊びを見過ごすわけにはいかん!
 このまま家に送り届けて親御さんにしっかり叱ってもらうからな!」
雄大「だから夜遊びじゃないんですったら!
 放してくださいよォ~!!」

雄大はチャックに無理やりパトカーに乗せられ、自宅に強制送還されてしまったのだったww。
その様子をこっそり遠くから見ていた光平、慎哉、優香の三人。

光平「参ったな。まさか雄大まで俺の正体に気づき始めていたなんて…」
慎哉「アイツ妙なところで勘が鋭いからなあ…」
優香「このまま秘密にしているのも、好奇心旺盛な岡島くんには
 かえって危険なんじゃないかしら。いっそのことシグフェルの正体を
 打ち明けて事情をしっかり説明した方がいいのかもしれないわ」
光平「そいつは剣持隊長たちとも相談だな。
 とりあえず明日も続けて周辺をパトロールしてみるよ」

1767 

――さらに翌日。

翌朝のことである。学校への登校途中だった光平たち三人は、
通学路で黒髪のロングヘアの若い女性が
数人のチンピラに絡まれている現場に遭遇した。

朱音「いやあ! 何をするの!!」
チンピラA「このアマッ!!」
チンピラB「騒ぐなよ。これから俺たちと楽しい事しようぜ。ヒヒヒヒ…」
朱音「誰か助けてえ!!」

優香「大変ッ!?」
慎哉「すぐに助けなきゃ!!」

光平はチンピラ一人の腕をぐいっと掴む。

チンピラA「痛タッッッッ!!!」
光平「よせよ! その人は嫌がってるじゃないか!」
チンピラB「なんだこのガキッ! すっ込んでろ!!」
チンピラC「やっちまえ!」

逆上したチンピラたちは一斉に光平めがけて襲いかかってくるが、
光平はいとも簡単に余裕で全員を返り討ちにする。

チンピラA「…ち、ちきしょう! 覚えてやがれッ!!」

チンピラたちは皆一目散に逃げ出して行った。
光平たちは倒れていた女性を介抱する。

朱音「………」

光平「しっかりしてください! 大丈夫ですか!」
優香「気を失っているわ」
慎哉「もう学校まですぐそこだ。医務室まで運ぼう!」

気絶しているその女性を学校の医務室まで運ぶ光平たち。
ベットの上で女性はようやく目を覚ました。

朱音「ここは……」
光平「気がつきましたか?」
朱音「あなたたちが助けてくれたのね? どうもありがとう。
 なんとお礼を言ったらいいのか…」
光平「いいですよお礼なんて。困った時はお互い様です。
 気にしないでください」
優香「いったいどうしてあんな目に遭っていたんですか?」
朱音「道を歩いていたら、突然チンピラたちに因縁をつけられて…」
慎哉「ひどい奴等もいたもんだな。まったく…!」
光平「あの連中ももうこれに懲りてちょっかいを出してくる事は
 ないと思いますよ」
朱音「だといいのだけれど…」

その時、学校の始業時間を告げるチャイムが鳴った。

慎哉「まずい!」
優香「早く教室に行かないと!」
朱音「あなたたちここの学校の生徒なんでしょう?
 私の事なら大丈夫だから、早く教室に行きなさい」
光平「すみません。校医の先生に話は通してありますから、
 落ち着くまでゆっくりして行ってください」
朱音「ありがとう」

1768 

慌てて教室に滑り込み、遅刻を免れた光平たちだったが、
何やら教室が騒がしい…。

慎哉「どうしたんだいったい?」
男子生徒A「なんだよ朝倉に牧村、知らないのか?
 今日新しい担任の先生が来るんだってさ」
男子生徒B「なんでも凄い美人らしいぜ♪」
光平「ふ~ん…」

そして暫くして現れたのは、先程のチンピラから助け出した女性が、
教壇に立つ姿だった。驚く光平たち。

光平「ええっ!?」
慎哉「どうなってんだいったい!?」

朱音「本日から産休に入った鈴木先生に代わって、
 このクラスを担任として受け持つ事になりました千坂朱音です。
 担当科目は英語科になります。みなさんよろしくお願いしますね♪」

千坂朱音は、同時に光平と慎哉の所属する男子テニス部の顧問も
担当する事になった。朱音はその美しい容姿もさることながら、
生徒たちにも分け隔てなく親しげに接し、あっという間に
校内ナンバーワンの人気教師となった。

朱音「英語で一番大切なのはメッセージを伝える事です。例えば"猫の手も借りたい"を
 "I want to borrow Cat's hand"と直訳する人がいますけど、これは当然間違い!
 要は"忙しい"という"I'm busy"という意味が伝わっていないといけないわ♪」

生徒たち(特に男子)の中には、いつも明るい授業をしてくれる
彼女に対して親しみも込めて「朱音ちゃん」と呼ぶ者も次第に増えて来た。
当の朱音本人は「せめて授業中は先生と呼ぶように」と注意しつつも、
本音では「朱音ちゃん」と呼ばれる事に満更でもないらしい。

光平たちも、そんな朱音に完全に信頼を寄せるようになるのに
そう時間はかからなかったのである。

慎哉「さすが朱音ちゃんだよな。昔この学校にいた東条寺理乃とはエライ違いだ♪」
優香「東条寺先生なんかと比べたら朱音先生に失礼よ!」
慎哉「そりゃそうだ。あははは!!!」
光平「朱音ちゃんの英語の授業は本当に分かり易くていいよ。
 こんな楽しい授業もあるんだなって初めて知った」

だが、この千坂朱音には、実は光平たちも知らない
裏の顔が隠されていたのである…。

◇    ◇    ◇

その日、学校の授業を全て終えて
自宅のマンションの部屋へと帰宅した千坂朱音。

朱音「……?」

玄関ドアの間に、忍びの合図に用いられる鷹の羽根が挟まっているのを確認した朱音は、
それを抜き取ると部屋の中へと入る。そこでは彼女の上役と思しき
黒サングラスにロングコート姿の男が待っていた。

文蔵「首尾は…?」
朱音「上々です」
文蔵「して、近づいた手口は?」
朱音「街のゴロツキを金で雇い、私を襲わせました」
文蔵「他愛もない手だが、連中にはそれが一番効く…!」
朱音「はい…」

ロングコートの男の名は「世羅 文蔵」という。
天童菊之丞に仕える隠密衆の組頭であり、云わば朱音の本当の上司だ。
朱音が光平たちの通学路途中でチンピラに襲われていたのは、
全ては光平に近づくために仕組んだ芝居だったのだ。

文蔵「それで、その後のブレイバーズの動きは?」
朱音「メガロシティで起こっている連続女性失踪事件の捜査に
 何やら肩入れし始めた様子にございます」
文蔵「よいか朱音、ブレイバーズは言わば休火山。
 世間の連中から"正義の味方"だの"世直し大明神"だのと
 持て囃される奴らが、いつ噴火して日本の国家体制を揺るがすか、
 それは誰にもわからん。特にあの牧村光平という少年は、
 その出自に曰くがある存在。片時たりとも気を許すな」
朱音「必ずやご期待に添うと、天童閣下にお伝えくださいまし」

1769 

○山本アナウンサー →メガロシティ署管内で発生している連続女性失踪事件について報道。
○グレートサイヤマン→シグフェルに決め台詞&ポーズの特訓をする。
○海野隊員→シグフェルとグレートサイヤマンの決めポーズの練習を見て呆れる。
○小野隊員→シグフェルとグレートサイヤマンの決めポーズの練習を見て呆れる。
○佐原千恵→グレートサイヤマンと決めポーズの練習中のシグフェルに、そろそろ学校に登校するように促す。
○チャック・スェーガー →メガロシティ署管内で発生している連続女性失踪事件について、牧村光平たちに警戒を促す。
 その後、夜に巡回中に教師時代の教え子だった岡島雄大と再会する。
○桂美姫→メガロシティ署管内で発生している連続女性失踪事件について、牧村光平たちに警戒を促す。
●妖魔獣バランダ→メガロシティのテームブロックで、若い女性を襲っている。

○牧村光平/天凰輝シグフェル→グレートサイヤマンと決め台詞&ポーズの特訓をする。
 その後、夜になってからメガロシティのテームブロック繁華街をパトロールする。
○朝倉慎哉→メガロシティ署管内で発生している連続女性失踪事件について、桂美姫たちから警戒を促される。
○沢渡優香→メガロシティ署管内で発生している連続女性失踪事件について、桂美姫たちから警戒を促される。
○岡島雄大→シグフェルの正体が牧村光平ではないかと怪しみ始める。光平を尾行中、小学生時代の恩師だったチャック・スェーガーと偶然再会する。
△千坂朱音→海防大学付属高校2年A組に新任の担任教師として赴任。
△世羅文蔵→千坂朱音から報告を受ける。

【今回の新規登場】
●妖魔獣バランダ(超音戦士ボーグマン)
妖魔の犯罪組織GILの三神官の一人ケルベルス配下の妖魔獣。
外見は巨大なバッファローのような姿で、舌を伸ばして獲物を捕らえる。
人間から生体エネルギーを吸収してマネキンに変えてしまう。

△世羅文蔵(闘争の系統オリジナル)
天童忍軍の組頭で、千坂朱音の直属の上司。


『天凰輝シグフェル、最初の事件』-2

作者・ホウタイ怪人

1770 

***メガロシティ・テームブロック***

その日の夜も、光平はテームブロックをパトロールしていた。
同じように雄大もしつこく光平を繰り返し尾行する。

雄大「やっぱり今日もここへ来てる!
 今日こそシグフェルの正体を確かめてやる」

しばらく繁華街を見回りながら歩いていた光平だったが、
どこからか謎の声が聞こえた…

???「……(助けて!)」
???「……(誰か助けて!)」

光平「――!!」

光平にはシグフェルとしての超感覚能力で、
普通の人間には聞こえない声や音が聞こえるのだ。

光平「これは…!?」

声のする方向へと導かれるように、
人の少ない裏通りへと入り込んでしまう光平。
やがて長い間使われていないらしい倉庫のような場所へと辿り着いた。
倉庫の中には誰も人はおらず、代わりにマネキンだけが多数並べられている。

マネキンA「………」
マネキンB「………」

光平「人がいるような気配がしたんだけど、誰もいないのかな…?」

マネキンA「……(助けて)」
マネキンB「……(ここから出して)」

なんとマネキンの中から助けを求める声が聞こえる。

光平「まさか!? このマネキンの中から聞こえるのか!」

その時突然、今まで暗かった倉庫内部の照明がパッとついた。

ウォンゴット「見たなッ…!」
ケルベルス「何やら鼠が入り込んだようだな?」

光平「誰だ!?」

光平の前に現れた二人組の怪しい男。一人は頭部の一部が機械化されており、
そしてもう一人は頭にもう一つの小さい顔がある不気味な容姿をしていた。
他にも巨大なバッファローのような装甲に覆われた怪物も脇に控えていた。

光平「これはお前たちの仕業なのか!?」
ケルベルス「いかにもその通り! このバランダに生気を吸い取られた人間は
 こうしてマネキンに変わってしまうのだ」
バランダ「グゥゥゥゥ…!!」

妖魔獣バランダは、人間の生気を吸い尽くすことによって、
やがて手のつけられないほどの怪物へと進化するという。

ウォンゴット「妖魔ブティックへようこそ。
 お前もマネキンに変わるがいい! やれっ妖魔獣よ!」
光平「妖魔!? 今回の事件は東条寺の仕業じゃなかったのか…!」

1771

ウォンゴットとケルベロスに命令された妖魔獣バランダが光平に迫る!
ところがそこへダンボール箱が、バランダの行く手を阻むように
勢いよく投げつけられた。

雄大「光平先輩、逃げてください!!」
光平「雄大!?」

光平が妖魔に襲われようとしている現場を目撃した雄大は、
敵の注意を引こうと片っ端からそこら辺にある荷物を
必死に辺り構わず投げつける。
光平を助けようとして、勇気を振り絞っての行動だった。

ケルベルス「生意気な小僧め。バランダよ、やってしまえ!」
雄大「うわああッ!?」
光平「雄大ッ!?」

勢い勇んで出て来たものの、雄大はあっけなく
妖魔獣の触手のように伸びる舌に絡め取られ捕まってしまう。

雄大「…先輩ッ! 光平先輩ッ!!」
光平「……(どうする! 雄大のいる前じゃ
 シグフェルに変身できない!)」
ウォンゴット「まずはこの小僧からマネキンに変えてくれる」
雄大「助けてええッ!!!」
光平「やめろオオッ!!!」

その時、どこからか手裏剣が飛んできて触手を切り裂き、
雄大は妖魔獣の拘束から解放された。

雄大「うわっ!?」
光平「――今のは!?」

一瞬だけ光平は、手裏剣の飛んできた方向のビル屋上に
女性らしき人影が見えたが、それはまずさておき、
雄大の手を引っ張って必死に逃げる。

光平「雄大ッ、とにかく今は逃げるぞッ! こっちだ!!」
雄大「あ、はいっ…!」

ケルベルス「くくくっ…逃げられると思っているのか?」

懸命に逃げる光平と雄大だったが、
やがてバランダに街区の一角の隅にまで
追い詰められてしまう。

雄大「行き止まり!? そんな…」
光平「くっ…!!」

1772 

バランダに追い詰められる光平と雄大。
もはやこれまでかと覚悟したその時、
バトルランチャーの砲弾がバランダに炸裂した。

バランダ「グガァァァァ…!!」

光平「チャックさん!!」
雄大「チャック先生!…いや、ボーグマン!
 来てくれたんですね!?」

光平と雄大の視線の先には、バトルランチャーを構える
ボーグマン=チャック・スェーガーの姿があった。
サイソニック学園の卒業生でもある雄大は、
かつての妖魔王との最終決戦において
チャックたちボーグマンの雄姿を当時間近で見ている。

チャック(ボーグマン)「二人とも怪我はないか!?」

光平「俺たちなら大丈夫です!」
雄大「――アッ!! 光平先輩、危ない!!」
光平「えっ!?」

バランダ「グオオオッッッ…!!!!!」

体勢を立て直したバランダが不意に放った猛火攻撃で、
哀れ光平と雄大は微塵となって消えてしまった?

雄大「うわあああッッ!!」
光平「ぐっ…!! うわあああッッ!!」

チャック(ボーグマン)「――しまった!?
 光平ッ!! 雄大ッ!!」

◇    ◇    ◇

ここは、再び先程の倉庫である。

ウォンゴット「我ら妖魔は地球の覇権争いで
 Gショッカーや妖怪帝国に後れを取ったが、
 これでその差も取り戻せる!」
ケルベルス「地球はいずれ我ら妖魔の物となるのだ。
 フハハハハ…!!!」

目撃者の光平と雄大の口を完全に封じたと思い込んだ
妖魔集団GILの幹部ウォンゴットとケルベルスは
アジトで祝杯をあげる。勝利の美酒に酔いしれる彼らだったが――

???「果たしてそれはどうかな?」

どこからかウォンゴットたちの悪事を咎める声が
エコーのように響いて来た。

ウォンゴット「…だ、誰だ!?」
ケルベルス「何者だ! 姿を見せろ!」

驚くウォンゴットとケルベルス。そして周囲に一瞬広がる紅蓮の炎…。
それこそは、この世の悪を焼き尽くす正義のしるしである!
颯爽とその姿を悪党たちの前に現す地球の騎士、その名は天凰輝シグフェル!

シグフェル「天、悪蔓延ればそれを滅する! 俺はお前たちを地獄の業火で裁く使者!
 天凰輝シグフェルッ!!」

1773 

ウォンゴット「………(汗」
ケルベルス「………(汗」

掛け声と共に派手なポーズを自信満々に決めるシグフェル。
ウォンゴットとケルベルスは、見てて唖然としている。

シグフェル「……(決まったぁ! これで悟飯さんにも褒めてもらえるぅ~!)」

一人で勝手に余韻に浸っているシグフェル。
思わず心の中でガッツポーズをしているww。

ケルベルス「なんだお前は…?」
ウォンゴット「天凰輝シグフェルだと? バカな! シグフェルといえば
 噂に聞く神出鬼没のニューヒーロー。こんなところにいるはずがない!」
ケルベルス「なんだかよく分からんが構わん! バランダよ、
 お前のパワーがどれだけ上がったか試してみるがいい!」

バランダ「グオオオッッッ…!!!!!」

シグフェルVS妖魔獣のバトルが開始された!
口から高熱の炎を吐き出すバランダだったが、
シグフェルはそれを涼しげに振り払う

シグフェル「俺に炎の攻撃は通じやしないぞ!」

ブレス攻撃が通じないと見るや、バランダはその巨体で
シグフェルめがけて突進してくる。

ケルベルス「いいぞバランダ! そのまま押し潰してしまえ!」
シグフェル「そうはさせるか! 一気に決めてやる!
 ――フレアセイバァァーッ!!」

バランダの突進を撥ね退けたシグフェルは、
右手に愛剣フレアセイバーを具現化させ、
示現流必殺の構えを取る!

シグフェル「――はぁぁぁぁ、<<火焔十字の舞(クロスプロミネンス)>>」

バランダの胴体に横へ一閃、さらにフレアセイバーを天高く
上へ突き上げると、そのまま縦に強力な一撃が加わる。
バランダの顔と胸には炎で燃える十字が刻まれた。

シグフェル「チェストォォ――ッッ!!!!!!!!!!」

フレアセイバーの必殺剣による一刀両断が見事に決まり、
バランダは木っ端微塵に撃破された。

ウォンゴット「おのれ、まだ人間の生気が充分ではなかったか!」
ケルベルス「覚えておれシグフェルとやら。この次こそは必ず!」

ウォンゴットとケルベルスは捨て台詞と共に逃げて行き、
マネキンに変えられていた人々も、妖魔獣が倒されたことにより、
みんな無事に元に戻ったのであった。

◇    ◇    ◇

戦いを終えて光平の姿へと戻るシグフェル。
そこでは雄大とチャックが待っていた。

雄大「光平先輩、やっぱり先輩がシグフェルだったんですね!?」

やはり光平がシグフェルだったと知り、一人感激している雄大。
親しい先輩が憧れのヒーローだと分かり、嬉しくて舞い上がっている様子だ。

チャック「とうとうコイツにもバレちまったな」
光平「仕方ないですね…。でも雄大、
 この事は学校の他のみんなには内緒だぞ」
雄大「その点なら安心してください。
 こう見えても僕は口が堅いですから!
 ……ただ、その、先輩」
光平「…どうしたんだよ?」
雄大「大変言いにくいんですけど……何なんですか、
 さっきの決め台詞とダサいポーズは…。正直に言って
 見てたこっちも恥ずかしかったですよ…」
光平「ええっ!? ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!
 二週間も寝ないで考えたのにぃっ!!」
チャック「ハハハ…(汗」

雄大の率直な指摘に、思わず凹んでしまう光平。
来週までには今度こそカッコイイ決め台詞と決めポーズを
考えておこうと心に誓う光平であった(笑。

1774 

それにしても、あの時手裏剣を投げて
妖魔獣の触手から雄大を救ってくれたあの女の人影は、
いったい誰だったのだろう…。

朱音「お頭…」
文蔵「朱音、お前の使命はブレイバーズを監視する事であって、
 手助けする事ではない。それだけは忘れるな」
朱音「ハハッ!」

◇    ◇    ◇

――そして翌日の朝。

***海防大学付属高校・校門前***

雄大「おっはようございさます!先輩方♪」
光平「お、おう…! おはよう雄大」

いつもの朝の登校風景だが、校門前で光平たちと合流した雄大は、
いつにも増して元気そうである。

慎哉「今日はやけに元気そうじゃないか?」
雄大「ズルいじゃないですか慎哉先輩、それに優香先輩も!
 僕一人だけに光平先輩の事を内緒にしてたなんて!」
優香「あ、そ…そのことね…(汗。
 そういえば岡島くんにもバレちゃったんだっけ…」
光平「コラッ、雄大! 声が大きいってば…!
 他のみんなもいる前だぞ」

慌てて雄大に口止めする光平だったが、
そこへ眼鏡を掛けた一人の青年が歩いて近づいて来た。

悟飯「やあ、光平君!」
光平「あ、悟飯さんじゃないですか!」
優香「光平くん、この方は知り合い?」
光平「ちょうどいい機会だから、みんなにも紹介するよ。
 こちらは海防大学の準教授を務めていらっしゃる孫悟飯さん」
悟飯「君たちが光平君の友達だね。彼から噂には聞いているよ。
 僕は孫悟飯だ、よろしく♪」
慎哉「は、はじめまして」
優香「よろしく」

悟飯と握手を交わす優香たち。

雄大「悟飯さんって中国の方なんですか?」
悟飯「今日から海防大学に赴任する事になってね。
 毎朝パオズ山の自宅から舞空術で通勤しているんだよ」
優香「……(ブクウジュツ…? 何のことかしら?)」
慎哉「……(パオズ山? 聞いたことのない地名だな)」
悟飯「高等部とは隣接しているとはいえ敷地が違うけれども、
 これから何かと君たちとも顔を合わす機会も多いと思うんで、
 こちらこそよろしく」

実はこの孫悟飯こそ、シグフェルに変な決めポーズをいろいろと吹き込んで伝授している
張本人「グレートサイヤマン1号」その人である事など、慎哉たちは知る由もなかったのであった(笑。

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○チャック・スェーガー →妖魔獣バランダに襲われていた牧村光平と岡島雄大を助ける。
○孫悟飯→海防大学に準教授として赴任。
●ウォンゴット→人間マネキン化作戦をシグフェルに阻止される。
●ケルベルス→人間マネキン化作戦をシグフェルに阻止される。
●妖魔獣バランダ→人間の生気を吸い取りマネキンに変えていたが、シグフェルに倒される。

○牧村光平/天凰輝シグフェル→妖魔獣バランダを撃破。岡島雄大に正体がバレる。
○沢渡優香→牧村光平に孫悟飯を紹介される。
○朝倉慎哉→牧村光平に孫悟飯を紹介される。
○岡島雄大→シグフェルの正体が牧村光平であると知るが、内緒にすると約束する。光平に孫悟飯を紹介される。
△千坂朱音→妖魔獣バランダに襲われていた岡島雄大を、手裏剣を投げて救う。
△世羅文蔵→千坂朱音に「お前の役目はブレイバーズを監視する事であって、助ける事ではない」と釘をさす。

【今回の新規登場】
●ウォンゴット(超音戦士ボーグマン)
 妖魔の犯罪組織GILの三神官の1人で、妖魔機械を指揮する。頭の一部が機械化されている。
 昔は天才発明家であった。ダストジードを疎ましく思い、響リョウ諸共抹殺すべく
 ギルトライアングルのエネルギーを攻撃に転用する『トライアングルビーム』で攻撃するが、
 難を逃れたジードの剣で逆に返り討ちにされてしまう。

●ケルベルス(超音戦士ボーグマン)
 妖魔の犯罪組織GILの三神官の1人で、妖魔獣を指揮する。頭にもう1つの顏を持つ。
 昔は超一流の科学者であった。メガロシティに最後の妖魔石を設置するために
 自らも妖魔獣人となって出撃するが、スーパーサンダーの突撃を受けて戦死する。