『プリキュアオールスターズの参戦!』-3

作者・ホウタイ怪人

1601

***月面・晴れの海***

タキシード仮面「――タキシード・ラ・スモーキング・ボンバー!!!」
ヘドラー「ぬぅぅぅぅ!!! なんのこれしき!!」

月面での戦いは続く。
タキシード仮面とヘドラー将軍、内部太陽系の四守護神戦士たちとアマゾンキラーがそれぞれ戦う中、
エターナルセーラームーンは、Gショッカーでも最高の実権を握るヘドリアン女王と対決していた。

Eセーラームーン「――ムーン・スパークリング・テンプテーション!!!」

エターナルセーラームーンは交差させた両手を胸に置いて目を閉じ、
精神を集中して大量のエナジーの光を両手に集めた後で5つの金色の光球を作り出し、
そこからヴィーナスのクレッセントビームにも似た光線を発射する。が……

ヘドリアン「愚かな。そんなものがこの私に効くと思っておるのか?」
Eセーラームーン「そんな…!!」
ヘドリアン「地獄の炎に焼かれるがいい!!」

ヘドリアン女王は両手から灼熱の炎を呼び出し、
エターナルセーラームーンを焼き殺さんとする。

Eセーラームーン「くっ…! あたしはこんなところでなんか決して負けない!
 ――スターライト・ハネムーン・セラピー・キッス!!!」

エターナルセーラームーンは、全ての太陽系セーラー戦士たちのセーラークリスタルと
ゴールデン・クリスタルのパワーをエターナル・ティアルヘ集めて放ち、
妖魔術による灼熱の炎を押し返した。

ヘドリアン「ぬおおおおっっ!!?」
ミラー「女王様!?」
ケラー「女王様! しっかりなさいませ!」

思わぬ反撃を得てよろめくヘドリアンを
慌てて抱き抱えるミラーとケラー。

ヘドリアン「ええい! この程度でやられる私ではないわ!
 ミラー、ケラーよ、この私に力を貸すのじゃ!」
ミラー「ハハッ!」
ケラー「仰せのままに!」

ミラーとケラーが両脇に傅くと、ヘドリアンは天を仰ぎ
呪文を唱え始めた。

ヘドリアン「今こそ私の新たな力、真の姿を見せてくれよう!
 あああ~~ベーダーの神よ~!! 黒い太陽神よ~~~!!
 時は来た! 私に力を与えたまえ~~~!!!」

黒い稲光が何本の月面に突撃し、轟音と爆音が響き渡り、
激しい砂煙が巻き起こった。ようやくそれが収まった瞬間、
中から姿を現したのは、ミラーとケラーの身体を吸収して取り込み、
全身が筋骨隆々なメタリックボディに覆われた怪物だったのだ!

メカヘドリアン「ゼェ…ゼェ…ゼェ…!」

1602

Eセーラームーン「そんな…!?」
メカヘドリアン「見たか? これが妖魔術と機械科学が融合した、
 機械人間として最高に進化した私の今の真の姿、
 その名もメカヘドリアンじゃ!!」
Eセーラームーン「…メカヘドリアン!?」
メカヘドリアン「むんっ!!」

メカヘドリアンは右手の掌から破壊光弾を発射した。

Eセーラームーン「キャアアッ――!!」

吹っ飛ばされるエターナルセーラームーン。

Eセーラームーン「こうなったら―!!
 ――シルバームーン! クリスタル・パワー・キッス!!!」

エターナルセーラームーンのムーン・パワー・ティアル先端の水晶から、
金色の光線と羽根の嵐を放たれる最強の浄化必殺技だったが、
メカヘドリアンは微動だにしなかった。

メカヘドリアン「ぐふふふふっ…」


***ワーラー奇城・ガメデス***

月面での戦いの様子をモニターしているワーラー帝国の面々…。
女王パンドラは、いつの間にパワーアップを果たしていた
ヘドリアン女王の怪人体としての姿に戦慄している。

パンドラ「ヘドリアン……私の気付かぬうちに
 あのような力を手に入れていたとは!?」
デスゼロウ「こちらの女王様のパンドラ生命機械人よりも
 あちらの女王様の方が強そうですなぁ…」
パンドラ「なんですって!?」( ¬^¬ )
ギローチン「デスゼロウ将軍!!(怒」
デスゼロウ「…あ、いや…これは失言でした。
 お許しを…」((;゚Д゚)ガクガクブルブル

うっかり余計な一言を喋ってしまい、
女王パンドラにギロッ!!と一睨みされ、
ギローチン皇帝からも怒られてしまい、
恐縮して固まってしまうデスゼロウ将軍。

パンドラ「ぬぅぅぅぅ…ヘドリアンめえ!」

1603

***再び、月面・晴れの海***

Eセーラームーン「全く効かない!?」
メカヘドリアン「これで手持ちの切り札はおしまいか?
 ならばこちらから行くぞ!」

メカヘドリアンの背中から無数の金属触手が伸び、
エターナルセーラームーンの体に巻きついて絡め取り、
じわじわと首を絞める。

Eセーラームーン「ああああっ…!!!!!!」
メカヘドリアン「セーラームーン、お前はここで死ぬのじゃ」

絶体絶命のセーラームーンの悲鳴が辺り一面に響く。

タキシード仮面「セーラームーン!?」
ヘドラー「おっと、ここから先には通さんぞ!」

セーラーマーズ「セーラームーンが危ないわ!」
セーラーヴィーナス「助けに行かなきゃ!」
アマゾンキラー「余所見をするとは随分と余裕ですね!?」
セーラージュピター「くっ…!」

ヘドラー将軍とアマゾンキラーに行く手を阻まれ、
セーラームーンを助けに行く事が出来ないタキシード仮面たち。

メカヘドリアン「セーラームーン、最期じゃな」
Eセーラームーン「ううっ…!」

エターナルセーラームーンの首筋に手を伸ばし、
いよいよ止めを刺そうとするメカヘドリアン。
まさにその時の出来事だった!

???「――プリキュア・エメラルド・ソーサー!!」

突然どこからか鋭い円盤状のオーラが投げつけられて、
エターナルセーラームーンを捕えていた金属触手が全て切断された。
解放されて地面に着地するエターナルセーラームーン。

???「――プリキュア・スイートハーモニーキック!!」
メカヘドリアン「ぐおおっ!?」

何者かの複数による息を合わせた高空からの飛び蹴りが、
メカヘドリアンをエターナルセーラームーンの側から引き離した。

メカヘドリアン「な、何者じゃ!?」
Eセーラームーン「あなたたちは!?」
タキシード仮面「間に合ったか!」

1604

キュアブルーム「輝く金の花、キュアブルーム!」
キュアイーグレット「煌めく銀の翼、キュアイーグレット!」
 聖なる泉を汚す者よ!」
キュアブルーム「アコギな真似はお止めなさい!」

キュアドリーム「大いなる希望の力、キュアドリーム!」
キュアルージュ「情熱の赤い炎、キュアルージュ!」
キュアレモネード「はじけるレモンの香り、キュアレモネード!」
キュアミント「安らぎの緑の大地、キュアミント!」
キュアアクア「知性の青き泉、キュアアクア!」
5人全員で「希望の力と未来の光 華麗に羽ばたく5つの心 Yes!プリキュア5!」

ミルキィローズ「青いバラは秘密のしるし! ミルキィローズ!」

キュアピーチ「ピンクのハートは愛あるしるし! もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!」
キュアベリー「ブルーのハートは希望のしるし! つみたてフレッシュ、キュアベリー!」
キュアパイン「イエローハートは祈りのしるし! とれたてフレッシュ、キュアパイン!」
キュアパッション「真っ赤なハートは幸せの証! 熟れたてフレッシュ、キュアパッション!」

キュアブロッサム「大地に咲く一輪の花、キュアブロッサム!」
キュアマリン「海風に揺れる一輪の花、キュアマリン!」
キュアサンシャイン「陽の光浴びる一輪の花、キュアサンシャイン!」
キュアムーンライト「月光に冴える一輪の花、キュアムーンライト!」

キュアメロディ「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」
キュアリズム「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」
キュアビート「爪弾くは魂の調べ! キュアビート!」
キュアミューズ「爪弾くは女神の調べ! キュアミューズ!」
4人全員で「届け、4人の組曲! スイートプリキュア!」

キュアハッピー「キラキラ輝く未来の光! キュアハッピー!」
キュアサニー「太陽サンサン 熱血パワー! キュアサニー!」
キュアピース「ピカピカぴかりん じゃんけんポン♪ キュアピース!」
キュアマーチ「勇気リンリン直球勝負!キュアマーチ!」
キュアビューティ「しんしんと降り積もる清き心!キュアビューティ!」
5人全員で「5つの光が導く未来! 輝け!スマイルプリキュア!」

キュアハート「みなぎる愛! キュアハート!」
キュアダイヤモンド「英知の光! キュアダイヤモンド!」
キュアロゼッタ「ひだまりポカポカ! キュアロゼッタ!」
キュアソード「勇気の刃! キュアソード!」
キュアエース「愛の切り札! キュアエース!」
5人全員で「響け! 愛の鼓動! ドキドキ!プリキュア!」
キュアハート「愛を無くした悲しいGショッカーさん、このキュアハートが
 あなたのドキドキ取り戻してみせる!」

30人全員で「――我ら!プリキュアオールスターズ!!」

1605

計30人のプリキュア戦士たちの出現に驚くセーラー戦士たちと
ベーダー一族の面々。

メカヘドリアン「………」
ヘドラー「な、なんだ貴様らは!?」

Eセーラームーン「あなたたちはいったい…」
キュアロゼッタ「お久しぶりですセーラームーン、それに皆さん」
セーラーマーキュリー「その声は…!」
セーラーヴィーナス「もしかしてありすちゃん!?」
キュアロゼッタ「……(⌒-⌒)ニコッ♪」

セーラー戦士たちの目の前にいるキュアロゼッタは、
以前に聖居で会った事がある四葉ありすだった。

キュアピーチ「わたしたちは今日の日のために、
 今まで特訓で鍛えて来ました!」
キュアメロディ「あたしたちプリキュアオールスターズは、
 たった今より正式にブレイバーズの戦列に加わります!」
キュアマリン「あとはわたしたちに任せて!」ブイッv!!

破嵐万丈の要請によって、これまでいざという時の隠し玉として
温存されて来たプリキュア戦士たちが今、ここに勢揃いした!


***再び、ワーラー奇城・ガメデス***

パンドラ「まあ…これはこれは♪」

さっきからずっとモニターで観察していた
月面での戦いの意外な途中経過の展開に、
ワーラー帝国内には再び驚きが広がるが、
パンドラ女王一人だけはひっそりとほくそ笑んでいた。

ギローチン「パンドラ女王…?」
パンドラ「ふふふふっ…」

別に敵の加勢に現れたプリキュアたちの肩を持つ訳ではないが、
このままあっさりメカヘドリアンに一人勝ちされても面白くはないのだ。

デスゼロウ「……プリキュアか。…カ、カワイイ(///)」


***再び、月面・晴れの海***

メカヘドリアン「プリキュアだかプッチンプリンだか知らぬが、
 私の邪魔をする者はたとえ何者と言えども生かしてはおかぬ!
 我が妖魔力の真髄を見よ~!!」

メカヘドリアンは両手を高く掲げると、黒い稲光の豪雨を
月面の周囲へ次々と叩き落した。

キュアドリーム「キャアアッ――!!」
Eセーラームーン「アアアッ――!!」

巻き起こる爆炎の中、セーラー戦士とタキシード仮面、
そしてプリキュアたちの姿は塵と消えてしまった。

アマゾンキラー「仕留めましたか!」
メカヘドリアン「いや、どうやら上手く逃げたようじゃ。今の一撃を耐え凌ぐとは。
 プリキュアとやら、なかなかやるではないか…」
アマゾンキラー「しかし女王様、プリキュアには"キュアブラック"と
 "キュアホワイト"というのがいると聞いた事がございます。
 今いた連中の中にはいなかったようですが…」
ヘドラー「アマゾンキラーよ、そんなものは所詮伝説だ!
 仮にそのブラックとホワイトとやらが現れたとしても、
 我が剣で一刀の元に切り捨てるのみ!」
メカヘドリアン「ダークプリキュアとバスコを呼べ」

メカヘドリアンの命令で、ダークプリキュアが呼ばれて来た。

アマゾンキラー「…ん? バスコはどうしました!?」
ダークプリキュア「分からん。どこかへ姿を晦ましたようだ」
メカヘドリアン「バスコなぞ放っておけ。それよりも逃げたプリキュア共と
 セーラー戦士たちをすぐに追うのじゃ。まだそう遠くまでには
 行っていないはず」
アマゾンキラー「ハハッ!」
ヘドラー「直ちに!」
メカヘドリアン「ダークプリキュア、お前も行け」
ダークプリキュア「承知!」

1607

○セーラームーン→メカヘドリアンと対決。プリキュアオールスターズと合流して一時退避。
○セーラーマーキュリー →プリキュアオールスターズと合流して一時退避。
○セーラーマーズ→プリキュアオールスターズと合流して一時退避。
○セーラージュピター →プリキュアオールスターズと合流して一時退避。
○セーラーヴィーナス→プリキュアオールスターズと合流して一時退避。
○タキシード仮面→プリキュアオールスターズと合流して一時退避。
○キュアブルーム→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアイーグレット→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアドリーム→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアルージュ→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアレモネード→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアミント→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアアクア→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○ミルキィローズ→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアピーチ→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアベリー →セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアパイン→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアパッション→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアブロッサム→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアマリン→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアサンシャイン→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアムーンライト→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアメロディ→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアリズム→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアビート→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアミューズ→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアハッピー →セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアサニー →セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアピース→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアマーチ→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアビューティ→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアハート→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアダイヤモンド→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアロゼッタ→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアソード→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
○キュアエース→セーラームーンの救援に登場。メカヘドリアンから一時退避。
●ヘドリアン女王/メカヘドリアン→初めてメカヘドリアンの正体を現し、部下たちにセーラー戦士とプリキュアの追撃を命じる。
●ヘドラー将軍→セーラー戦士とプリキュアを追撃する。
●アマゾンキラー →セーラー戦士とプリキュアを追撃する。
●ミラー →ヘドリアン女王と合体変身してメカヘドリアンに取り込まれる。
●ケラー →ヘドリアン女王と合体変身してメカヘドリアンに取り込まれる。
●ダークプリキュア→セーラー戦士とプリキュアを追撃する。
●女王パンドラ→メカヘドリアンの姿を見て戦慄する。
●ギローチン皇帝→メカヘドリアンの姿を見て戦慄する。
●デスゼロウ将軍→メカヘドリアンの姿を見て、つい余計な感想を漏らし、パンドラ女王の不興を買う。

【今回の新規登場】
○美々野くるみ=ミルキィローズ=ミルク(Yes!プリキュア5/Yes!プリキュア5GoGo!)
 パルミエ王国で、ココとナッツのお世話役見習いを務めていた妖精。
 後に青いバラの力で人間の姿に変身できるようになった。
 変身時の掛け声は「スカイローズ・トランスレイト」で、他の5人のプリキュアたちとは異なっている。必殺技は「ミルキィローズ・ブリザード」と「ミルキィローズ・メタル・ブリザード」

 

東せつな=キュアパッション=イース(フレッシュプリキュア!)

 管理国家ラビリンスの元女幹部で、イースとして一度死を迎えた直後、

 シフォンが呼び寄せたアカルンの力で息を吹き返し、キュアパッションとして転生を果たした。 


『プリキュアオールスターズの参戦!』-4

作者・ホウタイ怪人

1608

メカヘドリアンの攻撃から逃れるため一旦退避して、
月面の谷間へと隠れたセーラー戦士とプリキュアたち。
ひっそり反撃の機会を窺いつつ、周囲の偵察に出向いていた
キュアサニーとキュアマーチが戻って来る。

キュアアクア「どうだった?」
キュアサニー「アカン。もう周囲はダストラー兵ばかりやで」
キュアマーチ「完全に周りを固められたって感じだね。
 蟻の這い出る隙間もないって感じ」
キュアパッション「そう…」

セーラー戦士とプリキュアたちを包囲する敵の動きは
着々と狭まりつつあった。

Eセーラームーン「ところで貴女たちは…?」
キュアブルーム「私たちはプリキュアです」
キュアピーチ「来たるべきGショッカーとの戦いに備えて、私たちは今まで特訓を重ねて来ました」
キュアブロッサム「ヘドリアン女王がセーラームーンに狙いを定めたと情報で知り、
 みんなと相談して貴女たちを助けるために飛んできたんです」
セーラーマーズ「プリキュアの噂は前々から私たちも聞いていたけれど…」
Eセーラームーン「みんなありがとう!」
セーラーマーキュリー「皆さんが駆けつけて来てくれて、これ以上心強い事はないわ」
セーラージュピター「一緒にGショッカーを倒そう!」

固い友情の握手を交わすセーラー戦士とプリキュアたち。

セーラーヴィーナス「衛さんはこの事を知ってたんですか?」
タキシード仮面「うむ。実はアメリカの大学に留学中に、
 マイケル・ウィルソンJr大統領から直々の要請を受けて、
 月の連邦宇宙軍施設である研究に従事していた。
 彼女たちプリキュアの事もそこで知った」
セーラージュピター「水臭いなあ…。あたしたちに事前に
 教えてくれてもよかったのに」
セーラーマーキュリー「それで、その"研究"というのは?」
キュアロゼッタ「それについては後々お知らせする機会もあるかと思いますわ」

そこへ突然、上方から崖下に向けて攻撃が仕掛けられてきた。
ついに敵に見つかってしまったのだ。

キュアレモネード「キャアアッ――!!」
キュアサニー「うわああっ――!!」
キュアビート「くっ――!!」

セーラームーン「みんなっ――!?」

ダークプリキュア「くっくっく…ついに見つけたぞプリキュア共」

1609

セーラー戦士とプリキュアたちの前に立ちはだかる、
黒い片翼の女戦士――ダークプリキュア。

キュアムーンライト「ダークプリキュア!?」
ダークプリキュア「久しぶりだな、キュアムーンライト。会いたかったぞ」
キュアブロッサム「ダークプリキュア…そんな、どうして!?」
キュアマリン「アンタは月影博士に娘と認められて、全ての憎しみが癒されて
 浄化されたんじゃなかったのぉ!?」
ダークプリキュア「黙れッ!! あの程度でこの私の持つ憎しみが全てなくなると思ったら大間違いだそ!
 キュアムーンライト…貴様に対する憎しみは、海よりも深く、

 またこの大宇宙よりも大きいと知れ!!」
キュアサンシャイン「おそらくGショッカーの手で、

 僅かに残っていた憎しみを増幅した上で再生されたのね…」
キュアムーンライト「ダークプリキュア…私の可愛い妹。

 ならば今度こそ貴女を囚えている憎しみを消し去り、
 貴女を救って見せる! 父のためにも!」
ダークプリキュア「言うなあああッッッ!!!!!!!!」

再び激突する永遠のライバル――キュアムーンライトとダークプリキュア。
それぞれ光と闇を抱いた少女の戦いが、今、再び!!

キュアムーンライト「集まれ! 花のパワー! ムーンタクト!!
 花よ輝け!――プリキュアシルバーフォルテウェーブ!!」

ダークプリキュア「闇の力よ集え、ダークタクト!!
 ――ダークフォルテウェーブ!!」

美しく光る紫と、鮮血のような赤の花弁型のエネルギーが
正面からぶつかり、月面を大きく揺さぶる。

一方、ヘドラー将軍の指揮の下に押し寄せる戦闘兵ダストラーの大群を
蹴散らしていたスマイルプリキュアチームだったが、突然背後から
何者かの斬撃を受けた。

キュアピース「キャアアッ!!」
キュアマーチ「ぐっあ…!!」

斬りつけたのは、アカレッドも恐れたと言われる完全体モードに変身していた
バスコ・ダ・ジョロキアの愛剣カリブレードだった。

バスコ怪人体「フフフッ…」
ヘドラー「バスコ! 貴様今までどこをほっつき歩いていた!?」
バスコ怪人体「こりゃどうも。ちょいとヤボ用がありましてねえ」
ヘドラー「まあいい。貴様も早くプリキュアどもを片づけるのだ!」

キュアビューティ「いきなり後ろから攻撃するとは卑怯な!」

バスコ怪人体「…卑怯? ハハハ…それは典型的な弱者のいい訳だねえ。
 どのみちお前たちの地球も終わりさ。宇宙はやがてGショッカーが支配する」

キュアサニー「言うたな、オッサン!!」
キュアハッピー「この世界の未来はバッドエンドじゃない!
 私たちプリキュアの力でウルトラハッピーにするの!!」

プリンセスキャンドルの柄にプリンセスキュアデコルを嵌め、
ペガサスの光に包まれながらプリンセスフォーム変身するスマイルプリキュアチーム。
五人一丸となって、かつて海賊戦隊ゴーカイジャーをも追い詰めた強さを誇る
完全体の姿のバスコに敢然と戦いを挑む。

Pハッピー「――プリキュア・シンデレラハッピーシャワー!!」
バスコ怪人体「――ふんッ!!」

プリンセスハッピーの放つ光波とバスコのカリブラスターの弾丸が衝突した反動で、
月面のあちこちに大きな穴が開いた。

1610

メカヘドリアン「バスコ、ダークプリキュア、そして他の者たちも退け!!
 今から私自らが攻撃を仕掛ける!!」

天から轟くメカヘドリアンの号令。するとバスコ、ダークプリキュア、
ヘドラー将軍やアマゾンキラーたちも一斉に安全圏まで退避した。
その瞬間、巨大な黒い雷光がセーラームーンたちのいる月面めがけて
直撃して来る!

キュアミント「――プリキュア・ミント・プロテクション!!
キュアロゼッタ「――プリキュア・ロゼッタ・リフレクション!!」

すかさずキュアミントとキュアロゼッタが防御のバリアを張るが、
メカヘドリアンの圧倒的な妖魔力パワーの前に、早くも障壁は
破られる寸前だ。

キュアドリーム「キュアミント!!」
キュアハート「キュアロゼッタ!!」
キュアミント「くっ…このままでは!」
キュアロゼッタ「もう長くは持ちませんわ…!」
タキシード仮面「みんなでパワーを出し合い、二人を支えるんだ!」
Eセーラームーン「――はいっ!!」

その場にいる全員で持てるエネルギーを供出し、
必死にバリアを支えようと試みるが、それをあざ笑うかのように
すでにバリアのあちこちにはひびが入り始めていた。

メカヘドリアン「あはははは!! そのまま我が雷(いかずち)に
 押し潰されてしまうがいい!!」
Eセーラームーン「わたしたち、ここまでなの…!?」

もはやこれまでかと思われたその瞬間――!!

シャイニールミナス「光の意思よ! 私に勇気を! 希望と力を!
 ――ルミナス・ハーティエル・アンクション!!」

大きなツインテールの金髪をした少女の放った虹色の光が
メカヘドリアンの黒い雷光を尽く押し返した。そして――!?

キュアブラック「ブラックサンダー!」
キュアホワイト「ホワイトサンダー!」
キュアブラック「プリキュアの美しき魂が!」
キュアホワイト「邪悪な心を打ち砕く!」
二人同時に「「――プリキュア・マーブル・スクリュー!!」」

メカヘドリアン「ぬおおおおっっ――!!?」

黒と白の螺旋状の激しい雷撃を生み出され、
メカヘドリアンを容赦なく攻撃する。

1611

キュアブラック「みんな、お待たせ!!」
キュアホワイト「遅くなってごめんなさい!!」

スカート丈の短い黒のドレスとスパッツの少女と、
パラソルのようなスカートを基調とした純白のドレスを着た
コスチュームの少女が駆け寄って来る。

Eセーラームーン「あなたたちは!?」
キュアドリーム「私たちプリキュアオールスターズの一番の先輩戦士で
 リーダーのキュアブラックとキュアホワイトです♪」
キュアブラック「よろしくっセーラームーン!」
Eセーラームーン「こちらこそ危ないところをありがとう」
シャイニールミナス「他にも頼もしい援軍を連れて来ました」
Eセーラームーン「えっ?」
キュアホワイト「あれを見て!」

キュアホワイトが指差した方向には、今まで見た事もないような
特殊な装甲スーツを身に纏った別の少女たちの姿があった。

響(ガングニール)「ハァアアッッ!!!」

メインカラーが黄色のギアを装着した立花響がその鉄拳で
ダストラー兵の大群を根こそぎ葬り去っていく。

翼(天羽々斬)「……!!」

青いカラーのギアを装着した風鳴翼が、自身の刀であるアームドギアを
空中で投擲して巨大化させ、それを敵に向かって蹴り貫く。「天ノ逆鱗」だ!

セーラーマーキュリー「あの人たち、歌いながら戦っている…?」
セーラーマーズ「なんてきれいな歌声なのかしら」
セーラーヴィーナス「まるで月面でライブでも見ているみたい…」

謎の美少女装甲戦士たちの戦いにすっかり見とれ
聞き惚れてしまった様子のセーラー戦士たち。

アマゾンキラー「おのれ何者です!?」
翼(天羽々斬)「我らはシンフォギア奏者! 人類守護の務めを果たす防人として、
 セーラームーンとプリキュアに助勢すべく、只今ここに馳せ参じた!」
ヘドラー「シンフォギアだと!?」
バスコ怪人体「また変な奴らが出て来やがった」
ダークプリキュア「………」
ヘドラー「ベーダー戦闘機、出撃せよ! 奴らを蹴散らすのだ!!」

ヘドラー将軍の号令に応え、異空間に浮かぶベーダー魔城から
ベーダー戦闘機の編隊が大挙出撃して月面に来襲。
月表面にいるセーラー戦士やプリキュア、シンフォギアたちに空襲を仕掛けて来る。

クリス(イチイバル)「ここはアタシに任せな!
 ――土砂降りな十六連発!!!」

赤のメインカラーのギアに身を包んだ雪音クリスが空高く舞い上がり、
アームドギアが変形した4門の3連ガトリング砲からの一斉掃射「BILLION MAIDEN」によって
ベーダー戦闘機は次々とあっけなく撃墜されていく。

1612

翼(天羽々斬)「セーラームーン、今こそ我らヒロイン戦士の力を一つに合わせる時!」
Eセーラームーン「――わかった! シルバームーン・クリスタル・エターナル・パワー!!」

長い柄のムーン・パワー・ティアルの先端より、金色の月光を広範囲に拡散。
それによってプリキュアやシンフォギア奏者たちの力も漲る。

キュアブラック「溢れる希望に勇気を乗せて!光り輝く未来に届け!」
プリキュアオールスターズ「「「――プリキュア・レインボージュエル・ソリューション!!!」」」

プリキュアオールスターズが力を合わせて放った虹色の光線が、
エターナルセーラームーンやシンアォギア奏者たちのパワーとも合流し金色に変化、
一気にメカヘドリアンめがけて叩きこまれる。

Eセーラームーン「――はああああッッ!!!!!」
キュアブラック「――はああああッッ!!!!!」
響(ガングニール)「――はああああッッ!!!!!」

メカヘドリアン「…な、なに!? ぐっ、ぐぎゃあああっっ!!!!!!!!」

セーラー戦士、プリキュア、シンフォギア奏者の力を結集させた同時必殺技攻撃が、
ついに強敵メカヘドリアンを眩い光と共に他の敵と諸共、因果地平の彼方へと消し去った。
戦いが終わり、ふぅーっと力が抜けてその場に崩れ落ちるセーラームーン。
力を使い果たしたのか、既にその姿はエターナルモードから通常形態へと変化している。

セーラーマーキュリー「セーラームーン!?」
セーラームーン「これで終わったのかな…?」

仲間たちに肩を貸してもらい立ち上がるセーラームーンだったが、
その時、おぞましい邪悪な声が月面の星空から響き渡った。

ヘドリアンの声「うふふふ…ふはははは…あっはははは!!!!!!!!」

セーラームーン「――!?」
キュアブラック「この声はまさか!?」
キュアメロディ「ヘドリアン女王!」

天空にヘドリアン女王の顔が巨大な幻となった映し出される。
ヘドリアンはまだ死んではいなかったのだ。
震撼するスーパーヒロインたち。

ヘドリアン(幻影)「愚かな小娘たち、あの程度でこの私を倒せると思っていたのか?
 まだまだ勝負はこれからじゃ! 今日はよい暇つぶしが出来た♪
 次に会える時を楽しみに待っておるぞ!!……」

こうしてヘドリアン女王のホログラフィは捨て台詞だけ残して消え去った。

セーラームーン「タキシード仮面様…」
タキシード仮面「ヘドリアン女王、まさに我々の想像以上に恐るべき相手だ…!」

1613

敵がいなくなり、一斉に変身を解除する一同。

なぎさ「改めまして、月野うさぎさん、美墨なぎさです」
ほのか「同じく雪城ほのかです。よろしく」
うさぎ「こ、こちらこそどーも…(汗」

なぎさ&ほのかと握手を交わす月野うさぎ。
そして一方のこちらでは……。

衛「そうか、君たちが超常災害対策機動タスクフォース
 『S.O.N.G.』のメンバーか」
まこと「衛さん、知ってるんですか?」
衛「元は日本政府の機密組織"特異災害対策機動部"が、
 地球連邦の安保理指揮下に異動して再編された特殊部隊だ。
 話には聞いていたが実際に見るのは初めてだな…」
響「へへへっ…皆さんどうかよろしくお願いしますっ♪」
美奈子「アアーッ!! もしかして貴女、ツインボーカルユニット"ツヴァイウィング"の一人で、
 今は人気ソロ歌手として活動を続けている風鳴翼さんですかっ!?」
翼「いかにも、私は風鳴翼だ」
レイ「うそっ…!?」
美奈子「サ、サインください!! それと握手してください!!
 こんなところで風鳴翼様とお会い出来るだなんて光栄ですっ♪」
翼「…??(汗」

意外なところで有名人と出くわし驚くレイやまことたち。
特にアイドルに対してはミーハーな美奈子は思わぬ事態に感激して、
翼に懸命にサインや握手をねだっている。

なざき「うさぎさん、私たちプリキュアも、そしてシンフォギアのみんなも
 これから一丸となって貴女を支えます」
ほのか「どうか私たちの行動隊長の役目を引き受けては頂けませんか?」
うさぎ「………」

うさぎはずっと考えていた。ヒロイン戦士たちの旗頭を引き受けるのは容易い。
だがそれによって大切な仲間たちを戦いに巻き込み、傷つける事を恐れていた。
しかし今回の戦いほ経て、自分にはこれだけ支えてくれる仲間たちがいることもわかった。
もはや恐れる事は何もない。ただひたすら前へと突き進むのみ。

うさぎ「わかりました。どこまでやれるかわからないけど、
 こんなあたしでよければ頑張ってみます!」
なぎさ「ありがとううさぎさん!」
レイ「まあうさぎの事だから、かえってみんなの足を引っ張りそうな気もするけどねえ~(笑」
うさぎ「もうっ! せっかく時間をかけて悩みながら決断したのにぃ~!
 レイちゃんのいぢわる~~!!」

明るい笑いが少女たちの周囲を温かく包み込む…。
そんな中、遠くの物陰から殺気を隠しつつ、
じっとその光景を監視している者がいた。
天童配下の忍者・さそりだ。

さそり「………」

さそりは月野うさぎの首筋に正確に狙いを定め、
猛毒を塗った吹き矢を発射した。刺されば確実に即死だ。
しかしその吹き矢は寸前のところで、別方向から飛んできた
手裏剣によって遮られてしまった。

さそり「この手裏剣は、飛騨忍者の使う物!?」
緒川「…困りますねえ。せっかくの少女たちの決意表明の場に
 このような無粋な真似をされては」
さそり「――!!」

何者かに背後を取られて驚くさそり。
振り返るとそこには、眼鏡をかけたサラリーマン風の優男――
――しかし見かけとは裏腹に一部の隙もない相手が立っていた。

緒川慎次――シンフォギア奏者たちの所属している組織『S.O.N.G.』のエージェントだ。

そして忍者さそりの目の前に現れたのは、緒川一人だけではなかった。
他にももう一人、片眼鏡をかけてカイゼル髭を生やした、
妙に貫禄のある佇まいをした老紳士が、緒川と一緒に立っていたのだ。

さそり「……(この男、四葉家の執事!)」
セバスチャン「天童閣下にお伝えを。我らブレイバーズ、決して天童一門と事を構えるのは
 本意ではございません。しかしもし、あなた方が人々の生命と自由を軽んじるような
 挙に出て来た折には、いつでも堂々とお相手いたしますと…」

緒川慎次とセバスチャン、どちらもかなりの使い手だ。
さそりには同時に二人まとめて相手をするだけの自信はなかった。
ここは素直に退いた方が得策……。

さそり「――むんっ!!」

さそりは煙玉を投げ、煙幕の中に身を紛れさせて退却した。
すぐに執事セバスチャンは、そのことを主人に報告に向かう。

セバスチャン「お嬢様、こちらの方が片がつきました。ご安心ください」
ありす「ご苦労でしたセバスチャン。ブレイバーズの戦いを
 くだらない人間同士の権力争いに巻き込む訳にはいきません。
 これからは宮中の動きにも注意の眼を光らせなければなりませんね」
セバスチャン「はい…」

1614

***地球連邦軍・宇宙軍基地司令部***

うさぎ「地球の騎士?」
ミスマル「さよう。地球の次期女王である貴女を支える、
 云わば女王の騎士(ナイト・オブ・クィーン)ですな」

地球連邦の歴代国王には、代々一人だけ多大な信頼の置く事の出来る人物を
直属の騎士として側近くに召し抱える事が可能な制度があるらしい。

ちなみに現地球国王は、セルを倒したとされるミスターサタンを
世論に押される形で一度は指名したが、
本当は孫悟空&悟飯親子に手柄を譲ってもらっている真実の手前、
その件で負い目があるのかミスターサタンは辞退している。
国王も「かつてピッコロ大魔王から世界を救った謎の少年」を
騎士に指名したいとの隠された本意があるようだが、
そのような事情から、現在「地球の騎士」は空席状態にある。

レイ「いきなりそう言われても人選に悩むわよね」
亜美「いったい誰がいいのかしら…」
ミスマル「順当に考えるのであれば、昭和世代のレジェンドヒーローか、
 ヒーロー協会所属のS級クラスの戦士たちにお願いしてみては
 いかがですかな?」
まこと「昭和世代って言うと、仮面ライダーの本郷さんや一文字さんとか?」
うさぎ「う~ん……」

果たして、未来のネオクィーンセレニティを支える事になる
女王の騎士(ナイト・オブ・クィーン)には、いったい誰が
叙任される事になるのであろうか?


***チブル星人の宇宙船***

エクセラー「ご苦労でしたバスコさん」
バスコ「お役に立てましてどーも」

ここは月の反対側に停泊している、ETF配下のチブル星人エクセラーのUFOの内部である。

銀と橙の装甲を有するチブローダーストロングに搭乗しているエクセラーは、
バスコから古びた大きめの石板を受け取ると、満足そうにそれを見つめている。
ヘドリアン女王とセーラームーンが戦っている最中に、ムーンキャッスルの中に眠っていた一枚を
バスコが見つけてこっそりと持ち出していたのだ。

エクセラー「いやぁ助かりました。月の王国の遺跡は警備が厳重でしてね。
 我々ETFもなかなか手が出せなくて困っていたのですよ」
バスコ「…で、いったいそれは何?」
エクセラー「銀河バイブルですよ」
バスコ「銀河バイブル?」

銀河バイブルとは、数々の大いなる予言が記された
宇宙に伝わる古の石板のことである。

バスコ「だがそれはもうあらかた発掘され尽くしたって聞いたぜ」
エクセラー「サタンゴースに関する記述が刻まれた石板はね…。
 しかし銀河バイブルはそれだけではないのですよ。
 この一見小汚いだけの石板が、我々のために非常に有益な情報を
 もたらしてくれることになるでしょう」
バスコ「それにはなんて書いてあるの?」
エクセラー「それは貴方には知る必要のない事です。
 お約束の代価はお支払いしますので、これ以上はこれに
 関わらない事が貴方ご自身の身のためですよ。フフフッ…」
バスコ「ま、こっちは頂けるもんさえ頂ければ
 どうでもいいけどね」

バスコを使い、古代銀河バイブルの一枚を手に入れたETFのエイリアン軍団。
果たしてその目的とは何なのであろうか?

1615

○月野うさぎ/セーラームーン→プリキュアやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○水野亜美/セーラーマーキュリー →プリキュアやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○火野レイ/セーラーマーズ→プリキュアやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○木野まこと/セーラージュピター →プリキュアやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○愛野美奈子/セーラーヴィーナス→プリキュアやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○地場衛/タキシード仮面→プリキュアやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○美墨なぎさ/キュアブラック→メカヘドリアンと戦うセーラームーンたちの援軍に駆けつける。
○雪城ほのか/キュアホワイト→メカヘドリアンと戦うセーラームーンたちの援軍に駆けつける。
○シャイニールミナス→メカヘドリアンと戦うセーラームーンたちの援軍に駆けつける。
○キュアブルーム→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアドリーム→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアレモネード→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアミント→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアアクア→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアピーチ→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアパッション→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアブロッサム→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアマリン→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアサンシャイン→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアムーンライト→ダークプリキュアと対決。セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアメロディ→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアビート→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアハッピー →バスコ怪人体と戦闘。セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアサニー →バスコ怪人体と戦闘。セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアピース→バスコ怪人体と戦闘。セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアマーチ→バスコ怪人体と戦闘。セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアビューティ→バスコ怪人体と戦闘。セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○キュアハート→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○四葉ありす/キュアロゼッタ→セーラームーンやシンフォギア奏者の協力を得て、なんとかメカヘドリアンを退ける。
○セバスチャン→月野うさぎを狙う忍者さそりの毒針の吹き矢を阻止する。
○立花響/ガングニール→メカヘドリアンと戦うセーラームーンたちの援軍に駆けつける。
○風鳴翼/天羽々斬→メカヘドリアンと戦うセーラームーンたちの援軍に駆けつける。
○雪音クリス/イチイバル→メカヘドリアンと戦うセーラームーンたちの援軍に駆けつける。
○ミスマル・コウイチロウ→月野うさぎに「女王の騎士」の叙任人選について説明する。
○緒川慎次→月野うさぎを狙う忍者さそりの毒針の吹き矢を阻止する。
●ヘドリアン女王/メカヘドリアン→セーラームーン、プリキュア、シンフォギアの同時合体攻撃をも耐え凌ぎ、再戦を期す言葉を残して撤退。
●ヘドラー将軍→セーラー戦士、プリキュア、シンフォギア奏者と戦闘。
●アマゾンキラー →セーラー戦士、プリキュア、シンフォギア奏者と戦闘。
●ダークプリキュア→キュアムーンライトと対決。
●バスコ・ダ・ジョロキア/バスコ怪人体 →スマイルプリキュアチームと戦闘。その後、密かにチブル星人と接触する。
●チブル星人エクセラー →バスコ・ダ・ジョロキアと通じて、月の王国跡に眠っていた銀河バイブルの一枚を手に入れる。
△忍者さそり→月野うさぎを毒針の吹き矢で狙うが、緒川慎次とセバスチャンに阻まれる。

【今回の新規登場】
○美墨なぎさ=キュアブラック(ふたりはプリキュア/同MaxHaert)
 ベローネ学院女子中等部に通っていた女子中学生(MaxHaert最終回において卒業したので、現在は高校生のはず)。
 スポーツ万能であり、所属するラクロス部では2年生にしてエースを務め、3年生の時にはではキャプテンに選ばれている。
 カードコミューンとなった妖精メップルの力で変身する。戦闘ではパンチやキックなどの打撃系が中心のパワー型であり、打撃系の技を多く使用する。

○雪城ほのか=キュアホワイト(ふたりはプリキュア/同MaxHaert)
 ベローネ学院女子中等部に通っていた女子中学生(MaxHaert最終回において卒業したので、現在は高校生のはず)。
 学業成績はいつも学年トップになっており、とくに理系学問が得意分野。礼儀正しくおっとりとした性格。
 カードコミューンとなった妖精ミップルの力で変身する。戦闘での打撃は足技や回転系の技が中心で、体が柔軟なため、敵を投げたりいなす類の合気道系統の技も多用する。

○九条ひかり=シャイニールミナス(ふたりはプリキュアMaxHaert)
 ベローネ学院女子中等部の1年桃組に転入してきた、美墨なぎさと雪城ほのかの後輩。
 ふだんは藤田アカネの従妹として、移動屋台「TAKO CAFE」の手伝いをしながら同居している。
 その正体は、3つに分裂した光の園のクイーンの「生命」。
 タッチコミューンとなったポルンの力で変身する。他のプリキュア同様に跳躍力や走力などの
 身体能力が大きく上昇しているが、主に後方支援に回り、直接戦うことは少ない。

○立花響(戦姫絶唱シンフォギア/同G/同GX)
 私立リディアン音楽院高等科に通う女子高生。シンフォギアシステム3号「ガングニール」装者。
 2年前「ツヴァイウィング」のコンサートを観に行った時、ノイズとの戦闘に巻き込まれて生死をさまよう大怪我を負い、聖遺物「ガングニール」を身体に宿すことになり、ノイズとの遭遇をきっかけにその力を覚醒させたことから、人類を守るためノイズとの戦いに身を投じることになる。明るく闊達で、困った人がいたら放っておけない性格。

○風鳴翼(戦姫絶唱シンフォギア/同G/同GX)
 ツインボーカルユニット「ツヴァイウィング」の一人だったが、現在はソロ活動続けている人気歌手。シンフォギアシステム1号「天羽々斬」装者。年長の装者として立花響と雪音クリスの指揮と面倒を見ている。
 装甲に収納された小刀の投擲や、脚部のブレードによる攻撃も行う。
 第3期ではリディアン音楽院を卒業し、海外進出を果たしている。

○雪音クリス(戦姫絶唱シンフォギア/同G/同GX)
 シンフォギアシステム2号「イチイバル」装者。当初は立花響たちと敵対していたが、
 風鳴弦十郎の説得を受けて両親の夢を再認識し、響らと協力する。
 ルナアタック後は正式に特異災害対策機動部二課の一員になると同時に、
 リディアン音楽院にも2年生に編入する。

○緒川慎次(戦姫絶唱シンフォギア/同G/同GX)
 特異災害対策機動部二課→S.O.N.G.に所属するエージェント。
 主に機密保護や情報操作、隠蔽工作など、「裏方まわり」を全般的に引き受けている。
 表向きは風鳴翼のアーティスト活動を支えているマネージャー。
 風鳴家に代々仕える飛騨の隠忍一族の末裔で、高い戦闘能力を有している。

●チブル星人エクセラー(ウルトラマンギンガS)
 自身を宇宙最高の頭脳と自負している傲慢な宇宙人。「エクセレント!」など時折英語を交えて話すのが特徴。
 チブローダーに搭乗し前線基地である月に停泊した宇宙船から、配下のアンドロイド・ワンゼロを地球へと送り、彼女や用心棒として雇ったガッツ星人ボルストと共にビクトリウム鉱石の強奪を企む。
 本質は自分以外を下等生物と罵り、他の存在を総べて自身の駒としか考えていない自己中心的かつ冷酷な性格の持ち主。


『紅蓮の鳳凰を追え!』-1

作者・ホウタイ怪人

1617

***横須賀上空***

ライディーンホーク「今日こそは逃がさへんで!」
シグフェル「くっ…!」

真夜中の横須賀上空で、激しい空中カーチェイスを繰り広げている
謎のヒーロー・シグフェルとそれを追うブレイバーズ。

海上自衛隊の施設近くにある研究所で、
イーバに襲われていた再生者(リザレクター)の科学者を
救い出した帰り、シグフェルは待ち伏せていたらしい
ブレイバーズの部隊に執拗に追跡されていた。

ライディーンブラッド「おおっと、ここから先は通せんぼだ!」
ライディーンアーザス「神妙にお縄を頂戴するでゴザルよ!」

シグフェル「……(見た事もない連中だ。新手か…?)」

ライディーンコンドル「取り囲んだぞ!」
ライディーンセイラ「「私に任せて。ライディーンレイピア!」」

女ライディーンの新戦士・ライディーンセイラの細身の剣が、
相手の動きを止めようと牽制するが、シグフェルは翼を一羽ばたきさせると
素早くそれを回避して包囲から抜け出てしまう。

ライディーンイーグル「よしっ! 狙い通りだ」
ライディーンクロウ「あとは任せたぞ」

どこかへ手筈通りと連絡を取るライディーンイーグルとライディーンクロウ。
それもその筈。シグフェルの逃れた方向の先には、
加速装置を装備した二人のゼロゼロナンバーサイボーグが
虎視眈々と待ち構えていたのだ。

009「――加速装置ッ!!」
002「行くぜッ!!」

009と002の二人がマッハクラスの超スピードで
シグフェルの速さに食らいついて行く。
スーパーガンに備わっている麻痺光線が
シグフェルの腕を掠めた。

シグフェル「このままじゃ捕まる! いったん地上に降りよう!」

シグフェルは009たちの追跡をなんとか振り切り、
まずは地上へと逃れる。


***ヴェルニー公園***

横須賀駅から続く海に面した公園の中へと逃げ込んだシグフェルだったが、
まだそこでも思わぬ伏兵が待ち受けていた。

アシュラ「サイバー分身! シュラー!!」
シグフェル「――なにっ!? うわああっ!!!」

ドクター・アシュラとその分身シュラー3人衆が
両腕に付いたカッターからの光線と、巧みな連携プレーで
シグフェルを見つけた獲物のように容赦なく攻撃する。

アシュラ「多少痛めつけても構わねえ!
 なんとしても生け捕りにするんだ!」
シュラー赤「…するんだ!」
シュラー青「…するんだ!」
シュラー紫「…するんだ!」

シグフェル「くっ…コイツら!!」

シグフェルは指先から炎の一閃を呼び起こして、
その隙にアシュラたちから逃げ出した。

1618

変身を解き、公園の公衆トイレの建物の裏側に身を潜める牧村光平。

光平「参ったな…。まさかここまで追跡が厳しくなるなんて」

どうやってこの場から逃げ出そうかと光平が考えていると、
突然背後から男に声を掛けられた。

嵐「おい、そこの坊主!」
光平「うわっ!?」

驚いて声を挙げてしまう光平。

嵐「なに驚いてる…??」
光平「あ、い、いえ…いきなり話しかけられたもんで、つい。
 すみません…(汗」

まるで路上のロックシンガーか暴走族みたいなイカつい格好の姿をした中年の男――
――毒島嵐は、人が入りそうな大きなサイズの虫取り網を肩に担いでいた。
これで何かを捕まえようと言うのだろうか…?

嵐「それよりもお前、今ここの近くで赤色と金色が混ざったような
 翼の生えた変なヤローを見なかったか?」
光平「…さ、さあ。特にそういうのは見かけませんでしたけど」
嵐「そうか、邪魔してすまなかったな。…ちっきしょう、すばしっこい野郎だ。
 ――おいお前ら、今度はあっちの方を探してみるぞ。500万の賞金首だ。
 逃がしてたまるか!」
シュラー赤「…たまるか!」
シュラー青「…たまるか!」
シュラー紫「…たまるか!」

光平「――!?」

光平は嵐が引き連れていた3人組の姿を見て驚く。
それは明らかに先程自分を襲ってきた怪人の手下たちだったのだ。
もしやこの男は、さっきこの怪人たちと一緒にいた親玉だったのか…。

嵐「…あ、そうだ。おいお前!」
光平「は、はい!?」

もしや自分がシグフェルだと正体がバレたのかと、
一瞬警戒して身構える光平だったが…。

嵐「もう未成年者が外を出歩いていい時間じゃねーぞ!
 早く自分のうちに帰れ! 親も心配してるぞ!」
光平「えっ…!?」
嵐「気をつけて帰れよ~!」
光平「ど、とうも…」

見かけによらず、意外にいい人だったようだ…。

1619

***日本海溝・ブレイバーベース***

結局、今まで以上に万全の態勢を敷いていたにもかかわらず
この日もシグフェルに逃げられてしまったブレイバーズの面々。

小野「よりにもよってシグフェルを攻撃するなんてどういうつもりなの!」
忍「そんなこと言ったってよぉ」

シグフェルについ攻撃の手を加えてしまったTHE HEARTSに
ついお小言を言ってしまうレッドマフラーの小野隊員。

ジェット「そもそも攻撃の手を一切加えずにシグフェルを捕獲するだなんて
 土台最初から無理な話だぜ」
カイル「そうそう、その通りでゴザルよ」
一夜「第一、一向に我々からの呼びかけに応える気配すらないのは、
 シグフェルの側にも何かやましい事情があるからではないのか?」
フランソワーズ「まさか。今までの報告によるとシグフェルは
 度々私たちの事も助けてくれているのよ」
村中「彼らの言い分にも一理はあると思いますが、
 今夜の件でこちらから手を出してしまった事で、
 シグフェルの心証を著しく害してしまった可能性はありますね」
剣持「う~む…」

村中隊員の意見を聞き、暫し考え込む剣持隊長。
剣持を悩ませていたのは、同じくシグフェルを追うロゴス寄りの
コルベット隊の動きもさることながら、最近になりマスコミまで
シグフェルに関する報道が露骨に派手になりだしたからだった。

剣持「なんとか不測の事態が起きる前に、シグフェルと接触を取ることが
 出来ればいいんだが…」


翌朝……。

***グラントータス・司令室メインルーム***

勇介「そうか、嵐の奴がシグフェル探しに躍起になってる理由はこれか!」
丈「いきなり大声あげてどうしたんだよ勇介?」
勇介「コイツを見てみろよ!」

朝食の最中、天宮勇介から朝刊の社会面を見せられた大原丈と岬めぐみは、
そこに書かれていた記事に「IT実業家でニュースサイト『HIGH ROLLERS HI!』を
運営している今野明氏が、シグフェルに関する有力な情報提供者には300万円、
直接シグフェル本人を自分のところまで連れて来た者には500万円を懸賞金として
出すと申し出た」とニュース内容が記されていたのを目にしたのだった。

めぐみ「嵐ったら、最近ドロテ博士の仕事をサボって何やってるのかと思ってたら、
 こんなことに手を出していたのね!」
鉄也「でもなんだか面白そうッスね」
純一「500万円かぁ…。もしそれだけお金があったら何に使おうかなあ~」
丈「コラッお前ら! 何考えてる!?」
鉄也「じょ…冗談、冗談ッスよ。本気な訳ないじゃないですか…(汗」

後からやって来た矢野鉄也と相川純一の些細な軽口を、心配して注意する丈。
一方の勇介は、不安そうに朝刊の記事にずっと目を通し続けている。

めぐみ「勇介…」
勇介「こうマスコミの報道が騒がしくなってくると、シグフェルもますます
 表には出て来にくくなるんじゃないかな…」

1620

***下田・地球連邦軍第13格納庫***

コルベット「まだシグフェルは見つからんのか!」
バルザック「申し訳ありません」

ブレイバーズとは別にシグフェルの行方を執拗に追っている
コルベット准将の連邦軍部隊の仮陣地である。
副官のバルザック中佐以下担当指揮官たちが
コルベットに情勢を報告している。

コルベット「もし岡の伊豆駐留軍部隊やブレイバーズに
 先を越されてみろ。ワシのメンツは丸潰れだ」
バルザック「すでに怪しいと思われる東京臨海地区周辺を
 半径100kmに絞っておきました」
コルベット「50kmにしてもらおうか。このままだとバルザック中佐、
 君の評価も見直さざるを得なくなるぞ」
バルザック「心得ております」

コルベットが退室した後、バルザックは改めて部下たちに指令を出す。

バルザック「特にシグフェルが潜伏している可能性が高いと思われる
 メガロシティ及びヌーベルトキオシティの各所に、連邦軍権限で
 検問を張れ。日本の警察当局には私から伝えておく」
将兵たち「「了解しました!」」


***メガロシティ・海防大学付属高校近く***

慎哉「なんか凄い物々しい雰囲気だよな…」
光平「………」

今朝、二人で家を出てから学校に着くまでの通学路で、
道路を走る戦車や装甲車を何度も目にした牧村光平と朝倉慎哉。
それは他の生徒たちも同様のようで、学校にも戸惑いが広がり始めていた。
校門前でも多数のTV中継車が停車し、リポーターたちが通りかかる学生に
次々とインタビューを試みている。
光平のガールフレンド・沢渡優香も、そんなマスコミに捕まった一人だ。

冴子「おはようございます。日の出TVの八神冴子です。
 少しインタビューをさせてもらってよろしいでしょうか?」
優香「え、あの…その…」
冴子「噂の謎のヒーロー、シグフェルがこの近くに潜伏しているという
 情報が出回っていますが、その事についてどう思われますか?」
優香「私…何もわかりません!」

優香が困っているのを見つけた光平は、すぐに側に近寄って
彼女の腕を掴むと強引に冴子のインタビューを振り切り、
さっさと校門の中へと入って行った。

優香「光平くん…!?」
冴子「…あ、ちょっと待って!」
光平「ごめんなさい。僕たち本当に何も知りませんから!」

1621

***海防大学付属高校・校舎廊下***

優香「ありがとう光平くん、おかげで助かっちゃった」
光平「ごめんな…。俺のせいで優香まで変な騒ぎに巻き込んじまって」
優香「そんな! 違うわよ! 光平くんのせいなんかじゃない」
慎哉「そうだよ! 今のは勝手に騒いでるバカなマスコミが悪いんだ。
 お前が気に病むことなんて決してないぞ!」
光平「優香……慎哉……」

教室に向かって3人が歩いていると、ふと掲示板に貼られていた
一枚のポスターに目が留まった。そこには「外務省主催、長期海外
語学留学生募集」と大きく書かれてあった。この語学留学生は、
言わば外務省に外交官として採用されるための登竜門と言ってもいい。

光平「これは……」
優香「光平くん…?」
慎哉「あっ…」

そのポスターを感慨深げに無言のまま見つめている光平。
そこへ彼らの後輩である一年生の岡島雄大がやって来た。

雄大「光平先輩、慎哉先輩、優香先輩、おはようございます」
慎哉「よっ、雄大♪ おはよう!」
優香「岡島くん、おはよう」
雄大「3人でいったい何を見てるんですか?
 …あ、これは外務省主催の留学生募集のポスターじゃないですか!」
光平「…雄大?」
雄大「そっかあ、光平先輩の夢は外交官ですもんね♪
 当然、光平先輩もこれに応募するんですよね?
 我が校の誇る秀才の光平先輩なら絶対選抜に合格しますよ!」
光平「………」
慎哉「………」
優香「………」
雄大「…あれ、皆さんどうしちやったんですか?
 急に…暗い表情になっちゃって…(汗」

突然気まずそうな表情を浮かべて沈黙してしまった光平たちの様子に
雄大は理由が分からず戸惑っている。

光平「ごめん。俺、先に教室行ってるから…」

一人だけ先に教室に向かってしまった光平。

雄大「どうしたんでしょう光平先輩…。
 もしかして留学したら優香先輩と離れ離れになるのが
 イヤだから……とかじゃないですよね?」
慎哉「ちょっと来い!(怒」
雄大「痛いッ! いきなり何するんスか慎哉先輩!
 放してくださいよぉ~(泣」

1622

***同校舎・屋上***

雄大の耳を引っ張り、他に誰もいない屋上まで
強引に連れて来た慎哉とそれに優香。
雄大は涙目になりながらも慎哉の仕打ちに猛抗議するが…。

雄大「痛いじゃないですかぁッ!
 何なんですかもうッ!!(怒」
慎哉「お前ちっとは空気読め!」
雄大「…はい?」
優香「岡島くんも知ってるでしょう?
 光平くんの出自の事は…」
雄大「知ってますよ。確か光平先輩のお父さんは外務省の外交官で、
 中東のアルなんとか家っていう大金持ちの娘さんと結ばれて
 光平先輩が生まれたんですよね。それがどうしたんですか?」
慎哉「そのアルシャード家の血を光平が引いている事が問題なんだよ」

慎哉は雄大に向けて今一度懇切丁寧に、光平を巡る複雑な事情を説明した。

光平の両親の結婚は、事実上の駆け落ち婚だ。
それは日本政府と中東の石油王アルシャード家の
双方の意に反する形で行われた。
その結果、光平の父であった牧村陽一郎は
所属する外務省から徹底して冷遇され、
危険な紛争地帯や貧困に喘ぐような小国を中心に
赴任先を転々とさせられた。
その息子である光平は、父の事で日本政府を恨んでいる筈…。
そんな光平が、もし母方アルシャード家の有する巨万の富を相続したら、
日本国家に対して何かよからぬ事を企み実行するのではないか?
そんな絵空事を危惧する猜疑心の強い人間が、
今も日本の権力層の中に少なからず存在している。

普段から父・陽一郎の生前からの縁で、
光平たちと昵懇な間柄である内閣安全保障室長・土橋竜三も、
建前上は「政府から派遣された光平の監視役」という意味合いが強い。
だから日本の外務省が、最初から光平を留学生に選ぶ訳などないのだ。

雄大「それじゃあ…! 光平先輩はどう頑張ったって
 外交官にはなれないって事ですか!?」
慎哉「少なくとも日本の外交官にはな…。
 地球連邦政府に国際公務員として登用されるのを
 目指す手もあるけど、それだって結局は
 日本の外務省の推薦が必要なんだ…」
雄大「あまりにも光平先輩が可哀想ですよ!
 どうにかしてあげられないんですか!?」
優香「私たちだって光平くんの夢に手を貸してあげたいわよ。でも…」
慎哉「今も政府のお偉いさんの中には、光平の事を一方的に
 目の敵にして、隙あらば葬り去りたいっていう連中が
 うじゃうじゃいるんだ。だから現状ではどうしたって迂闊な事は
 できないんだよ」

1623

雄大「………」

話を聞いていた雄大は、慎哉と優香の二人をじろっと見つめている。

慎哉「なんだよ? いきなり黙って…」
雄大「本当にそれだけなんですか?」
優香「どういう意味?」
雄大「最近、光平先輩もお二人も様子が変ですよ。
 もしかして何か隠し事をしてるんじゃないですか?」
慎哉「――!?」
優香「――!?」

慎哉も優香も、雄大の鋭い指摘に驚く。

優香「それは……」
雄大「二人とも僕にだけ隠してるだなんて水臭いですよ!
 もし何か困った問題が起きてるなら、僕にも遠慮しないで
 教えてください! 出来る限り力になりますから!」
慎哉「雄大……」

なんとか雄大を説き伏せて納得させ、その場から去らせた慎哉と優香だったが…。

慎哉「一瞬、ドキッとしたよ。アイツ昔から結構勘が鋭いところがあるからな…」
優香「ごめんね岡島くん…。でも今はまだ、シグフェルの秘密を他の人に
 漏らす訳にはいかないの…」

ただでさえ難しい立場の光平がシグフェルの正体だと世間に知れた時、
おそらく光平の居場所は、もう日本国内には存在しないだろう。

優香「どうしたらいいの。やっぱりフィリナさんの言ってた通り、
 ブレイバーズに名乗り出てみたら…」
慎哉「バカ言うなよ! ブレイバーズだってどこで政府と繋がってるか
 分かんないんだぞ」
優香「そうよね…」
慎哉「光平は…絶対に俺が守って見せる!」


***永田町・民自党本部 役員会議室***

その日、内閣安全保障室長・土橋竜三は、
与党の長老政治家たちに呼び出されていた。

長老A「どうかね? その後、牧村陽一郎の小倅の様子は?」
土橋「様子はと言われましても…。特に変わった事は何もございませんが」
長老B「土橋君、君に与えられた役割は理解しているね?」
土橋「無論、よくよく承知しております」
長老C「あの小倅がもし万一にもアルシャード家の相続権を手に入れ、
 我が国に対して報復的な画策を企てたりでもしたら、由々しき事だ」
土橋「お言葉ですが、そもそも光平君にそんな大それた事を目論むような
 動機は見当たりません。先生方のご心配のし過ぎではないでしょうか」
長老D「そのような楽観論は、国の行く末を誤る元だ」
長老E「父親が出世コースから外れて冷や飯を食わされたというのに、
 それを息子が恨まないはずはない!」
土橋「光平君は今でも亡き父親の外交官としての仕事を誇りに思っています。
 父親が左遷されていたなんていう認識すらありませんよ」

光平の父・牧村陽一郎の事は、土橋も彼の生前からよく知っていた。
当時の陽一郎は、本省でのデスクワークや予算獲得の仕事よりも、
日の丸を背負い海外で国際外交の最前線で働ける事にむしろ積極的だった。
息子の光平は勿論、陽一郎本人だって不満は微塵もなかった筈だ。
陽一郎の持っていた志については、土橋も何度も口を酸っぱくして
長老議員たちに説明してきたが、「永田町の論理」にはとても理解できない代物らしい。

長老A「今世間ではシグフェルやイーバとかいう正体不明の怪生命体が
 うろついている、何かと騒がしい昨今だ。それに便乗してどんな動きが
 起きないとも限らん。これからも牧村陽一郎の子供の監視は続けてくれたまえ」
長老B「言うまでもないが、あくまでも非公式にだよ…」
土橋「承知致しました」

1624

***首相官邸・総理執務室***

桃太郎「党の老人たちに手ひどくやられたようだな」
土橋「いやあ、長老方のイヤミにはもう慣れっこですよ。ハハハ!!!」

官邸へと戻った土橋室長にその苦労をねぎらう内閣総理大臣・剣桃太郎。

優子「その牧村光平君というのはどんな男の子なんですか?」
土橋「うむ、父親同様に正義感が強く、夢と志にあふれた
 今時には珍しい高校生だよ。私も見ていて若い頃の陽一郎君を思い出す」

今、土橋に牧村光平について訪ねた、このロングヘアの女性――
――名前を木葉優子といい、元首相・板垣重政の主治医を長年務めていたが、
首相を退任した板垣が何かの役に立つだろうと、新総理となった剣桃太郎の側近くに就けた人物だ。
現在は「内閣医務官」の肩書きを持ち、官邸の総理執務室にも頻繁に出入りしている。

桃太郎「今は亡き牧村参事官には、私も一年生議員だった当時から親交があった。
 その御子息が今ではどのように立派に成長したのか、一度見てみたいな」
土橋「お会いになられますか?」
桃太郎「…いや、やめておこう。下手に現職総理と接触など持っては、
 余計に奥の院の老人たちの不興を買うことになるだろう。
 その少年にとっても、かえって迷惑に違いない」
優子「ところで総理、下田に駐留しているコルベット准将指揮下の部隊に
 動きがあるようです」
土橋「連中にも困ったものです。地球連邦軍の威光を笠に着て、
 臨海副都心を中心にあちこちに勝手に検問を設置し始めています」
桃太郎「すでに国民の平穏な生活にも支障をきたし始めている。
 これ以上は政府としても看過する訳にはいかんな。しかるべき手を打つ!」


***豊洲住宅街・朝倉家***

光平「………」

その日、学校から帰った光平は、自分が小学2年生・8歳の時に海外の難民キャンプで
両親やフィリナ、そして現地の同世代の子供たちと一緒に取った記念写真を見つめていた。

あの頃の記憶が脳裏に蘇って来る…。

◇   ◇   ◇

今から9年前のこと……。
北アフリカの某難民キャンプで、まだこの時10歳だった従姉のフィリナも一緒に
両親の仕事現場に連れて来られた幼い光平は、紛争や自然災害を逃れて
辿り着いた見知らぬ土地で懸命に暮らす人々の様子を目の当たりにしていた。

父・陽一郎は日本国を代表して現地に派遣されてきた外交官として、
キャンプの護衛に当たる平和維持軍との折衝や、各国から送られて来る
援助物資の受け入れ準備に奔走。医師資格を持つ母・エメリアも、
国際ボランティアの一員として難民の健康管理や衛生問題の改善活動等に
従事していた。

1625

光平「ねえ、お父さん、この人たちはどうしてここにいるの?」
陽一郎「いつの日か"普通の暮らし"を取り戻すためだよ」
光平「"ふつうのくらし"…?」

長期化する難民キャンプの生活はとても過酷である。
灼熱の夏と氷点下の冬。強風と砂埃。未来が見えず、不安を抱える人々がいる。
勉強をしたい子ども、仕事をしたい大人。
みんなが、戦争が起きる前の「普通の暮らし」を取り戻したいと願っている。
だからこそ難民たちはその日が来るのを信じて、日々を懸命に生き抜くのである。

陽一郎「だからお父さんもお母さんも、その人たちが希望を失わずに生きていくことができるように。
人々の"自立して生きたい"という想いを支えるためのお仕事をしているんだよ」
光平「そっかあ…。お父さんもお母さんも、とても立派なしごとをしているんだね。
 ボクも大きくなったらきっと"がいこーかん"になって、お父さんのおしごとを手伝う!」
陽一郎「ははは! それは頼もしいな」

陽一郎は笑いながら、幼い息子の頭を何度も撫でた。

フィリナ「光平! こっちでみんなと一緒に遊びましょう!」

他の難民の子供たちとサッカーをして遊んでいたフィリナが、
光平にも一緒に遊ぼうと呼びかける。

陽一郎「ほら、行っておいで」
光平「うん♪」

難民の子供たちやフィリナと一緒に混ざって
楽しく遊んでいる、まだ無邪気で幼い光平の姿がそこにはあった。

しかし、悪夢はこの2年後に訪れた。


◇   ◇   ◇


その2年後(今から7年前)…。

***エイラシア首都テヘラッド***

光平「父さん! 母さん!」

当時日本にいた10歳の光平は、サラジアで両親が爆破事故に巻き込まれたと知り、
急いで成田から中東行きの便に乗り、両親が担ぎ込まれたという
サラジアの隣国エイラシアの病院まで駆けつけたのだが…。

フィリナ「光平!?」
光平「フィリナ! 父さんと母さんは!?」
フィリナ「ダメよ! ここから先に行っては!」

病院にはすでに、当時まだ12歳だったフィリナやアルシャード家の関係者、
そして日本大使館の担当者ら数人がロビーで待機していた。

1626

先へ進もうとする光平をなぜか押し留めようとするフィリナ。
やがて手術室から布に覆われた2台のストレッチャーが出て来た。
光平の目の前を通過する間際、僅かな弾みで一部分だけ布がめくれて
中の様子が見えてしまう。

光平「――!!」
フィリナ「見てはダメ!!」
光平「…あ…ああ!?」

日本大使館関係者A「事故現場で発見された時には
 もう外見からは身元が判別不能なほどに
 二人とも全身が焼け爛れていたそうだ…」
日本大使館関係者B「あんな小さな男の子を一人だけ
 遺して…。気の毒にな」



光平「うああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


◇   ◇   ◇

光平はその後、父やフィリナとも仕事上の付き合いがあった
朝倉家に一人引き取られた。これも従姉フィリナの計らいである。

そして現在……。

光平「ごめん父さん、それに母さん。
 あの時の約束、果たせそうにないよ…」

光平は悲しそうな瞳をしながら、
あの時の大切な思い出の写真をそっと
机の棚の中に仕舞うのであった。

1627

○ライディーンイーグル→横須賀上空でシグフェルを追跡していたが、見失う。
○ライディーンコンドル→横須賀上空でシグフェルを追跡していたが、見失う。
○ライディーンホーク→横須賀上空でシグフェルを追跡していたが、見失う。
○南條一夜/ライディーンクロウ→横須賀上空でシグフェルを追跡していたが、見失う。
○カイル・ムーン/ライディーンアーザス→横須賀上空でシグフェルを追跡していたが、見失う。
○海堂忍/ライディーンブラッド→横須賀上空でシグフェルを追跡していたが、見失う。
○ライディーンセイラ→横須賀上空でシグフェルを追跡していたが、見失う。
○009→横須賀上空でシグフェルを追跡していたが、見失う。
○ジェット・リンク/002→横須賀上空でシグフェルを追跡していたが、見失う。
○フランソワーズ・アルヌール→ブレイバーベースで、これまでのシグフェル追跡の結果を分析。
○毒島嵐/ドクター・アシュラ&シュラー3人衆→ドロテ博士の手伝いをサボり、横須賀のヴェルニー公園でシグフェルを追跡していたが見失う。
○天宮勇介→朝刊社会面のシグフェルに懸賞金がかけられた記事を読む。
○大原丈→朝刊社会面のシグフェルに懸賞金がかけられた記事を読む。
○岬めぐみ→朝刊社会面のシグフェルに懸賞金がかけられた記事を読む。
○矢野鉄也→朝刊社会面のシグフェルに懸賞金がかけられた記事を読む。
○相川純一 →朝刊社会面のシグフェルに懸賞金がかけられた記事を読む。
○剣持保→ブレイバーベースで、これまでのシグフェル追跡の結果を分析。
○村中隊員→ブレイバーベースで、これまでのシグフェル追跡の結果を分析。
○小野隊員→ブレイバーベースで、これまでのシグフェル追跡の結果を分析。
○八神冴子→海防大学付属高校前で、朝登校中の生徒たちに突撃リポート。
○土橋竜三→民自党の長老議員たちに呼び出される。
○剣桃太郎→土橋竜三から牧村光平について聞く。
○木葉優子→土橋竜三から牧村光平について聞く。
●コルベット准将→芳しくないシグフェル捕獲作戦の成果に苛立つ。
?バルザック・アシモフ中佐→なぜかコルベット准将の配下に戻っており、東京の臨海副都心地区各所に軍の検問を配置する。

○牧村光平/シグフェル→9年前と7年前の出来事を回想する。
○朝倉慎哉→次第に苦しい立場に立たされつつある牧村光平を気遣う。
○沢渡優香→次第に苦しい立場に立たされつつある牧村光平を気遣う。
○岡島雄大→朝倉慎哉と沢渡優香が自分に何か隠しているのではないかと疑う。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→12歳当時、光平の両親に連れられ、幼い光平や難民キャンプの子供たちと遊んでいた。(回想)
○牧村陽一郎→まだ8歳だった幼い光平を、自分の仕事場の北アフリカの難民キャンプまで連れて行く。(回想)

【今回の新規登場】
○バルザック・アシモフ中佐(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 連合防衛軍少佐。従軍記者に扮してスペースナイツに潜入し、テッカマンブレードのデータを持ち帰る。
 その後、そのデータを基に作られたソルテッカマンのパイロットに自ら志願、中佐に昇進する。
 スラム街の孤児だった彼は、その生い立ち故に上昇志向が強く、テッカマンブレードにも強い対抗心を燃やしていたが、戦いで重傷を負ったところを農場を営む女性リルルに助けられ、その弟リックとともに農夫として生活していているうちに権力欲を捨てて人間らしさを取り戻し改心。スペースナイツに合流後は、ソルテッカマン1号機改に搭乗し、Dボゥイの仲間として彼をサポートした。ラダムとの最終決戦にてテッカマンソードと相討ちになり戦死した。
 リルルとの間にはまだ生まれていない彼の子が、忘れ形見として遺された。

○八神冴子(獣神ライガー)
 財閥令嬢であり、日の出TVで「八神冴子の突撃レポート」というニュース番組を担当している人気TVレポーター。
 考古学者の祖父の影響で考古学に詳しく、また英語やフランス語も堪能な才女。ライガーを目撃したことで報道関係者の魂に火が付き、その動向を追っていた。やがて大牙剣らと関わりを持ち、祖父がドラゴ帝国の研究をしていたことで、剣達の協力者となる。

○木葉優児=木葉優子(マーダーライセンス牙)
 木葉流忍術の14世継承者。諜報活動や暗殺活動の他、奥義の1つ「マッスルコントロール」で全身の筋肉を自在に操り、頭髪以外の全てを女性へ変形させることさえ可能。男性での表の顔はスイミングスクールやアスレチックのインストラクターにしてスポーツ栄養学のコンサルタント。女性での表の顔は板垣重政首相の主治医・木葉優子という素性になっている。
 日本でただ一人「殺人許可証」(マーダーライセンス)を持つ人物で、実は血を分けた父親である板垣から指令を受け、法で裁けぬ悪を抹殺する役割を担う。


○牧村陽一郎(闘争の系統オリジナル)
 牧村光平の父親。外務省の元参事官であり、現在では既に故人。


『紅蓮の鳳凰を追え!』-2

作者・ホウタイ怪人

1628

***メガロシティ***

連邦軍兵士A「ダメだ! ここは先は立ち入り禁止だ!」
連邦軍兵士B「指定された迂回路を通りなさい!」
男子生徒A「えーっ!? それじゃあかなり遠回りになって、
 急がないとマジで遅刻しちゃうじゃないか!」

メガロシティやヌーベルトキオシティ、そしてお台場の辺りは
コルベット准将の息のかかった地球連邦軍部隊があちこちに検問所を設置し、
銃で武装した兵士たちが街中でも目立つようになった。
軍の都合によって地下鉄やバスのダイヤも混乱。
周辺地域に暮らす住民の生活にも着実にマイナス面の影響が出始めていた。

男子生徒A「もーまいっちゃったぜ! おかげで登校時間に
 今までの二倍かかるようになっちゃったんだもんなあ!」
男子生徒B「ホント迷惑だよな!」
女子生徒「早く出て行ってくれないかしら!」

今朝、登校・出勤してきた海防大学付属高校の生徒や教員たちの間でも、
その事で不満が募り始めていた。当然その話は同じ学校に通っている
牧村光平たちの耳にも自然と入る。

光平「きっと俺のせいだ。俺がブレイバーズから逃げ回ってばかりいるから、
 他のみんなにまで迷惑が…」
優香「そんなことない! 光平くんは全然悪くなんかないよ!」
慎哉「弱気になるなよ光平。周囲の連中の言う事なんか気にしなけりゃいいんだ」
光平「………」

こうして光平たちが思い悩んでいる中…。


***日本海溝・ブレイバーベース***

村中「シグフェルに直接呼び掛けるんですか?」
剣持「こうなったらそれしかないだろう。
 日頃のコルベット隊の横暴には、日本政府も相当に
 困り果てているそうだ。伊豆基地の岡長官の元にも
 毎日のように首相官邸から"何とかしてくれ!"の催促だ。
 もうこれ以上の猶予はない」
千恵「しかし今更シグフェルが我々の呼び掛けに
 応じるでしょうか?」
佐原「それでもやってみる価値はある。
 何かコルベット准将にも気付かれないように
 密かにシグフェルと安全且つ対等な立場で
 接触が取れる方法を考えよう」

シグフェルにしか理解し得ない筈の、暗号のようなメッセージを用意して
事前に接触場所を指定する事はできないかと思案する佐原博士たち…。

1629

***ポイントゼロ・無幻城***

至高邪神謁見の間に進んだローズオルフェノク、ケルベロスⅡ、
そして両名に伴われる形でキャプテンゴメスも同席を許された上で、
表裏六柱の至高邪神のホログラフィが降臨する。

大首領の顔「ローズオルフェノクよ、その後の首尾は
 どうなっておる?」
総司令の顔「シグフェルは捕えたか?」

ローズオルフェノク@村上の影「残念ながら未だ…。
 何卒今しばらくのご猶予を」
ゴメス「Gショッカーの頂点に立つ表裏六柱の至高邪神よ、
 一つだけ質問をお許し願いたい」
ケルベロスⅡ「控えたまえキャプテンゴメス。恐れ多くも
 至高邪神に対し奉り無礼であろう!」

星王の顔「よい。直答を特にさし許す」

ゴメス「そもそもシグフェルとはいったい何者なのです?
 それにイーバとは?」

創世王の顔「シグフェルは、おそらく改造神(ゴッドサイボーグ)!」

ゴメス「…改造神(ゴッドサイボーグ)?」

大魔神の顔「宇宙創世のビッグバンにおいて失われたとされる
 禁忌の技術。それに手を染めたがために堕落の烙印を押された
 神々が存在したのだ」
闇の帝王の顔「もう太古の昔に葬り去られた物とばかり思っておったが、
 昨今の"黄泉がえり"や"時空クレパス"の騒ぎに乗じて再び世に出て来ようとは」

ゴメス「シグフェルは神なのですか?」

大首領の顔「…いや、シグフェルは"神を改造する技術"を施された、
 おそらく元はただの人間であろう」
総司令の顔「だが普通の人間が、改造神となるための施術に耐えられる筈がない。
 シグフェルの素体となった人間がどんな者なのか、興味が尽きぬな」

ゴメス「至高邪神よ、まもなく吉報をお届け出来ましょう。
 どうか今少しだけお待ちください」


***同城内・十二邪将円卓の間***

ドクトルG「地獄大使、このまま村上の好きにさせてよいのか?」
ビルゲニア「奴め、天王路も仲間に引き込んで、いよいよシグフェルの捕獲に
 本腰を入れるつもりだぞ」
地獄大使「案ずるな。このまま村上にシグフェル捕獲の手柄を
 みすみす独り占めなどはさせん」

円卓の間で密談を進める他の邪将たち。
地獄大使は、シードラゴン三兄弟を呼び寄せた。

シードラゴンⅠ世「イィーチッ!」
シードラゴンⅡ世「ニィーッ!」
シードラゴンⅢ世「サァーンッ!」

地獄大使「行け! シードラゴン三兄弟!
 あとの手筈は分かっているな?」

1630

***『週刊アップ』編集部の入居しているオフィスビル前***

優香「………」

沢渡優香は一人、以前会った仰木舞の所属している
週刊アップの編集部前を訪れていた。
光平が周囲の状況によって徐々に追い詰められているのを
感じた優香は、自分も光平のために何かしなければと思って
マスコミの動きを探ろうとここまでやって来たまではよかったが、
よくよく思い返せば、仰木舞とは少し会話を交わした程度で
正式な自己紹介をした訳ではない。下手をすると
もう向こうはこちらの事など忘れているかもしれないのだ。

どうやって編集部の中に潜り込もうかと、
ずっと道端で考えあぐねていると、
突然優香は女性に声を掛けられた。

舞「…あら、貴女は?」
優香「仰木…舞さん?」


***『週刊アップ』編集部前***

優香「すみません。編集部の中にまで入れてもらえるだなんて…」
舞「いいのいいの♪気にしないで。せっかくここまで来てくれたんですもの。
 お茶ぐらい出すわ」
優香「本当にたまたま前を通りかかっただけなんですけれど…」

幸運にも編集部の中に入り込む事が出来た優香。
さて、どうやって"今現在マスコミがシグフェルについて
どこまで情報を掴んでいるのか"を探り出そうか…。

優香「私、海防大学付属高校2年の沢渡優香と言います」
舞「改めまして、仰木舞です。よろしくね♪」

二人は握手を交わした。

優香「ところで、仰木さんは今でもシグフェルの事を
 追いかけているんですか?」
舞「舞でいいわ。シグフェルの事は貴女も気になるの?」
優香「ええ、まあ…ちょっと」
舞「確かに報道に携わる者として、今でもシグフェルの追跡は
 続けているわよ。でもそれを直ちに記事にするかどうかは
 まだ保留ってところかな」
優香「保留…? 記事にしないんですか?」
舞「シグフェルだって人間ですもの。当然プライバシーの権利だって
 あるでしょうし、何か彼にも表に出て来れない深い事情が
 あるのかもしれない。私たちはまず記事にする前に、
 もし彼が何か困っている事があるのなら、手を差し伸べて
 助けてあげたいの」
優香「………」

世間ではシグフェルの事を"得体のしれない正体不明の存在"扱いしている人間が
ほとんどなのに、優香は初めて、しかもマスメディアの関係者の中に、
シグフェルを"一人の人間"として考えてくれている人間と出会えた。
この事は優香の心の中に大きな安堵感をもたらした。

1631

副編集長「舞ちゃ~ん! 八神さんが来てるよ~!」
舞「ハ~イ!」

来客を告げる副編集長の声に応答する舞。

優香「お客さんですか? それじゃあ私はそろそろこれで…」
舞「待って、せっかくだから貴女にも紹介するわ。
 冴子さ~ん、こっちです!」

舞の呼ぶ声に導かれて現れた来客の女性は、
優香にも見覚えのある人物だった。

冴子「あら、貴女は確か…?」
優香「この前の校門前で会ったリポーターさん!?」
舞「まあ、もしかして二人とも知り合いだったの?」

つい数日前に学校の校門前で、
登校中の優香を捕まえて質問攻めにしていた
有名TVリポーターである八神冴子は、仰木舞とは
同業者同士の縁でシグフェルに関する情報を
いろいろ共有・交換している関係にあった。
(無論、それは仰木舞が剣流星=超人機メタルダーの協力者、
同じく八神冴子も獣神ライガーの操縦者・大牙剣の協力者である
という――すなわち両名とも実はブレイバーズの関係者だという
事情から来ている事であったが…)

優香は舞に別れの挨拶をして編集部から出ると、
しばらくして後から冴子も追いかけて来た。

冴子「ごめんなさい、ちょっと待って!」
優香「何でしょうか? もしかしてまた何か質問ですか?」
冴子「いえ、そうじゃないの。この間はごめんなさい。
 しつこいって思ったでしょう?」
優香「あ、いえ…そんなつもりは…」
冴子「もしよければ少し先までご一緒してもいいかしら?」
優香「私は構いませんが…」
冴子「ありがとう」

街中の歩道を二人並んで歩く八神冴子と沢渡優香。

優香「冴子さんもシグフェルの行方を追っているんですよね?」
冴子「ええ、そうよ。舞さんから何か聞いた?」
優香「はい…その…いろいろと」
冴子「近頃のマスコミの報道過熱ぶりについて、
 貴女を含めた近隣住民の皆さんが不快な気持を抱くのも解るわ。
 私たち報道関係者の責任ね…。でも私たちは決して興味本位で
 シグフェルを追いかけている訳じゃない。今、彼の置かれている
 事情を理解して、もし私たちに出来る事があるのであれば、
 彼が普通の生活を送れるように手助けをしてあげたいだけなの。
 それだけは信じて」
優香「冴子さん…」

そしてこの日、八神冴子とも別れた優香は、
二人の報道ウーマンと出会った事で、
もしかしたら光平の苦境を和らげる事ができるかもしれないと
微かな希望を抱き始めているのだった。

1632

○佐原正光→シグフェルへの直接コンタクトを呼び掛ける事を計画する。
○剣持隊長→シグフェルへの直接コンタクトを呼び掛ける事を計画する。
○村中隊員→シグフェルへの直接コンタクトを呼び掛ける事を計画する。
○佐原千恵→シグフェルへの直接コンタクトを呼び掛ける事を計画する。
○仰木舞→週刊アップの編集部前で沢渡優香と再会。彼女に八神冴子を紹介する。
○八神冴子→週刊アップの編集部で、改めて沢渡優香と出会う。
●大首領→改造神(ゴッドサイボーグ)について語る。
●GOD総司令→改造神(ゴッドサイボーグ)について語る。
●星王バズー →改造神(ゴッドサイボーグ)について語る。
●創世王→改造神(ゴッドサイボーグ)について語る。
●大魔神サタンゴース→改造神(ゴッドサイボーグ)について語る。
●闇の帝王→改造神(ゴッドサイボーグ)について語る。
●ローズオルフェノク→表裏六柱の至高邪神から、改造神(ゴッドサイボーグ)について聞かされる。
●ケルベロスⅡ→表裏六柱の至高邪神から、改造神(ゴッドサイボーグ)について聞かされる。
●キャプテンゴメス→表裏六柱の至高邪神から、改造神(ゴッドサイボーグ)について聞かされる。
●ドクトルG→村上峡児にシグフェル捕獲の手柄を独り占めさせまいと、他の邪将たちと密談。
●地獄大使→村上峡児にシグフェル捕獲の手柄を独り占めさせまいと、他の邪将たちと密談。
●剣聖ビルゲニア→村上峡児にシグフェル捕獲の手柄を独り占めさせまいと、他の邪将たちと密談。
●シードラゴンⅠ世→地獄大使の命令で出撃する。
●シードラゴンⅡ世→地獄大使の命令で出撃する。
●シードラゴンⅢ世→地獄大使の命令で出撃する。

○牧村光平→連邦軍の出動やマスコミの過熱報道で、精神的に追い詰められている。
○朝倉慎哉→精神的に追い詰められている牧村光平を励ます。
○沢渡優香→仰木舞と再会。彼女の紹介で八神冴子とも出会う。

【今回の新規登場】
●シードラゴンⅠ世(仮面ライダー)
 ショッカーの発電怪人。右手の触覚には1万2000ボルトの高圧電流が流れている。
 左手の形状は鋏。鳴き声は「イーチ!」

●シードラゴンⅡ世(仮面ライダー)
 ショッカーの発電怪人。右手の触覚には1万2000ボルトの高圧電流が流れている。
 左手の形状はスパイク。鳴き声は「ニーッ!」

●シードラゴンⅢ世(仮面ライダー)
 ショッカーの発電怪人。右手の触覚には1万2000ボルトの高圧電流が流れている。
 左手の形状は三つ叉の鋏。鳴き声は「サーン!」


『紅蓮の鳳凰を追え!』-3

作者・ホウタイ怪人

1634

その日の朝、日本全国一斉に政府広報によるTV生中継が行われた。

剣持「シグフェルと呼ばれている人物に告げる。私は地球連邦軍
 国際平和部隊レッドマフラー所属、剣持保中佐だ。
 我々ブレイバーズは君とのコンタクトを望んでいる。
 もし君が今、このテレビを見ているなら、明日の夜9時に、
 君と私が一番最初に顔を合わせた場所にまで来てほしい。
 現場には私が一人で来る。君には決して不利益な扱いはしないと
 約束しよう。どうか出て来てもらいたい」


***日の出テレビ・報道スタジオ***

村中「これでシグフェルは出て来るでしょうか…?」
海野「そもそもシグフェルが我々と一番最初に出くわした場所なんて、
 果たして覚えていますかねえ…」
剣持「わからん。だがやってみる価値はある」

剣持たちが話し込んでいるところへ、
番組のメインリポーターである八神冴子とプロデューサーがやって来る。

プロデューサー「すごい反響ですよ!
 局の電話はすでにパンク状態。
 公式SNSにも視聴者からの書き込みが
 殺到しています!」
剣持「でしょうな…」
冴子「剣持さん、お願いがあります。
 シグフェルとの約束の場所には私も同行させてください」
剣持「フフッ…お嬢さん、それはでき――」
冴子「八神冴子です!」
剣持「これは失礼…」

剣持がつい鼻で笑って
自分の事を「お嬢さん」呼ばわりしたのに対して、
冴子は有無を言わさず訂正させる。

剣持「冴子さん、それはできんよ。
 たった今、シグフェルとは私一人で現場に行くと
 約束したばかりだ」
冴子「ですが私にも現場での出来事を逐一正確に
 報道する義務があります。それがシグフェルにとっても
 不利益になるとは思えませんが」
剣持「…やれやれ、仕方がない。いいだろう。
 ただしインタビューと撮影は一切禁止だ。よろしいな!?」

こうして八神冴子も、当日は特別に剣持に同行する事になったのだが、
この時、一羽の青い蝶がテレビ局前に駐車していたレッドマフラー隊の
軍用車両の一台に潜り込んだ事には、まだ誰も気づいてはいなかった。

謎の青い蝶「………」

1635

***地球連邦軍・極東支部伊豆基地***

コルベット「あれはいったい何の真似だあ!!」

今朝のTV放送を見たコルベット准将は、すぐさま
怒り心頭で伊豆の極東駐留軍司令部まで乗り込んで来たが…。

岡「何の真似も何も…あれはブレイバーズ側で勝手にやっている事でな。
 極東支部は何も関知してはおらん」
コルベット「なら剣持はどこに行った? 今すぐ剣持を出せ!」
岡「剣持中佐は佐原博士と共に独立部隊ブレイバーズに出向中の身だ。
 私に彼を呼び戻す指揮権はない」
コルベット「ならば言え。剣持たちとシグフェルが初めて遭遇した
 場所とはどこだ!?」
岡「シグフェルに関する資料なら、この前に全部渡しただろう」
コルベット「その中にはレッドマフラー隊がシグフェルと初めて接触した
 日付も場所も一切書かれてはいなかったぞ!」

こうして不毛な押し問答が続く。

コルベット「知っている事を素直に言え。言わねばここで貴様を撃つ!」
岡「………」

激昂したコルベットと銃を抜いて、その銃口を岡長官に向けるが、
すぐに伊豆基地の警備隊が長官室に駆けつけて来て、
コルベットに銃口を向けて包囲した。

コルベット「ぐぬぬぬ…ッ!!」
岡「こちらから話す事は以上だ。お引き取り願おう」
コルベット「岡、このままで済むと思うなよ!」

コルベットは捨て台詞を履いて退散するのであった。


***海防大学付属高校・校舎屋上***

昼休み……。

慎哉「ブレイバーズからの呼び掛けに応じるだって!?」

今朝のTV放送を見て、光平からの決断を聞かされ驚く慎哉。
一緒にいる優香も、心配そうな表情で光平を見つめている。

慎哉「まさかお前、ブレイバーズに入る気なのか…?」
光平「そうじゃないよ。ただこれ以上逃げ回っていても
 状況は悪くなるだけだと思うんだ。あの人たちと直接会って
 ハッキリと断ろうと思う」
優香「でも、大丈夫かしら…」
光平「向こうは一人で来るって言ってくれているんだ。
 心配なんかないよ」
慎哉「まあ、お前がそう言うなら…」

慎哉も優香も、光平の判断を尊重する事にする。

慎哉「でも、お前があの連邦の軍人と一番最初に
 会った場所ってどこなんだ?」
光平「今朝のTVに出ていたヒゲの隊長さんと
 確か初めて会ったのは……」

下水道の土管工事をしていた現場作業員の中年男を
ホブゴブリンイーバから救った、あの場所だ…!

1636

***スマートブレイン本社ビル・54階・社長室***

ゴメス「フフフッ…剣持め、ついに痺れを切らして
 賭けに出たな」

今朝の剣持隊長によるTV放送の呼び掛けは、
当然スマートブレインの面々も見ていた。

村上「このままだとシグフェルは、明日の夜にはブレイバーズと
 接触します。どうするつもりです?」
ゴメス「こちらとて抜かりはない。スマートレディ、
 例の準備はできたかね?」
スマートレディ「しっかりOKよん♪ もうレッドマフラー側の動きは
 全部こちらに筒抜けでーす!」
ゴメス「結構だ。――では村上社長、我々は黙って
 高みの見物をしているだけでいい」
村上「…??」

こうして各方面の思惑が交錯する中、
いよいよ翌日の夕方の時刻を迎えた…。


***下田・地球連邦軍第13格納庫***

コルベットの部下「准将、たった今我が隊に匿名の通報がありまして…」
コルベット「匿名の通報だと?」

部下からメモを手渡されるコルベットは、
その中身に目を通した瞬間、顔がニヤリッと笑った。

コルベット「フフフフフフ…どうやら神は、真の英雄である
 このワシをまだ見放してはいなかったようだな!」


***豊洲・某ショッピングモール***

優香「ごめんね。こんな大事な日に
 買い物につき合わせたりしちゃって…」
光平「いいんだよ。俺の方こそありがとう。
 いい気分転換になるよ。優香も俺の緊張を
 解きほぐそうとして誘ってくれたんだろ?」
優香「光平くん…」

まだ約束の夜9時までには時間がある。その前に、
光平と優香は二人でささやかな一時を楽しんでいた。

優香「あれ、確かあのコは…」
光平「どうした優香?」

優香の視線の先には、肩に黒猫を載せた
おだんご頭をしたツインテールの女の子が
両手にスイーツやファストフードを持って
食べ歩きしながら、こっちに向かって歩いて来る姿が…。

うさぎ「ねぇルナ、次はあっちのたこ焼きを食べに行こっ♪」
ルナ「うさぎちゃん、今日がどういう日だかわかってる…?(汗
 剣持隊長がシグフェルと待ち合わせする日よ。万が一の
 不測の事態に備えて、他のヒーローたちも都内の各所を
 手分けしてパトロールしてるんじゃないの!
 それなのにアナタときたら…」
うさぎ「でもでも美味しいんだもん!」
ルナ「まったくもう…(汗」

1637

月野うさぎの姿に気がついた優香は、
自分の方から彼女に声を掛ける。

優香「うさぎちゃ~ん!」
うさぎ「…? ああ! 優香さん! それに光平くんも!」
光平「確か君はこの間の…」

光平もうさぎの事を思い出す。

優香「久しぶりね。買い物?」
うさぎ「ナハハハハ~!! まあ、そんなとこ。
 そう言う優香さんはもしかして光平くんとデートですかぁ?
 隅に置けないなあ。コノコノコノォ~♪」
優香「デ、デートっていうほどでも……(///)」

光平「………」

一方の光平は、さっきからじーっと、うさぎの肩の上に乗っている
黒猫のルナをまるで怪しむように見つめている。

光平「なあ、この猫、今喋ってなかったか?」

うさぎ「ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!」
ルナ「ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!」

光平の一言に硬直するうさぎとルナ。
その動揺は激しく、眉間に汗をだらだらと
滝のように垂らしている。

ルナ「ニャ…ニャ~~ン!」

ルナは、猫の鳴き声を出して必死に誤魔化そうとする。

優香「やだなあ光平くん。猫が人間の言葉を話す訳ないじゃない」
うさぎ「…そ、そうですよぉ! いやだなあ。あはははは…(汗」
光平「………」

光平はどこか釈然としない雰囲気だったが、
特にそれ以上追及しようとはしなかった。
そして時刻は夜の8時45分頃を迎えた。

光平「そろそろ時間だな。優香、もう夜遅いけど
 一人で帰れるか?」
優香「私なら大丈夫よ。構わず行って来て」
うさぎ「えっ? 光平くん、優香さんを置いて
 これからどっかに用事でもあるの?」
光平「ちょっと俺一人でヤボ用でね。それじゃあ月野さん、
 また機会があったらどこかで!」

光平はうさぎにも挨拶をして、優香と別れて出口の方へと消えて行った。

優香「さて、そろそろモールの閉まる時間だし、
 私たちもそろそろ帰ろっか?」
うさぎ「ごめん。あたしは近くに友達を待たせているから」
優香「友達って木野さんや愛野さんたち?」
うさぎ「そうだよ♪ そういえば優香さんは
 まだ亜美ちゃんやレイちゃんには会ってなかったけ?
 今度紹介するね」

1638

***都内・郊外某所***

嵐「ちきしょう…シグフェルの野郎、どこにいやがる!」

シグフェルに懸けられた懸賞金500万円を目当てに、
毒島嵐は今日も懲りずに大きな虫取り網を片手に
各場所をさまよい歩いていた。
実を言えば、ドロテ博士の研究所を抜け出してから
もう三日も何も食べていなかったりする…ww

嵐「あー腹減った。そういえば今日一日ずっと
 飲まず食わずだったもんなあ…」

空腹に耐えかね、すぐ近くの草むらに大の字になって寝転がる嵐。
そこへ騒音と共に、何やら物騒な装甲車や戦車が何台も車列を組んで
すぐ目の前を通り過ぎるのを目撃した。

嵐「なんだありゃ…?」

どことなく怪しい気配を感じ取った嵐は、
その車列の後を尾行する事にする…。


***豊洲住宅街・朝倉家***

夕方に光平を家から送り出した慎哉は、
一人留守番をしながら自室のコンピュータールームに籠っていた。

彼が試みているのは、地球連邦・国防本省の防衛ネット――
――今現在、日本国内に駐留している地球連邦軍全部隊の動向に
関する部外秘ネットワークへの侵入だ。

慎哉「………」

いったんは光平の意思を尊重したものの、
慎哉はどうしても不安を拭い去る事ができなかった。
居ても立ってもいられず、何かブレイバーズや日本の警察・公安、
そして地球連邦軍の側に妙な動きはないかと調べているのだ。

慎哉が軍の機密情報にアクセスするなど、彼自身の持つスキルならば造作もないが、
本来、一民間人に過ぎない彼がこれをやるのは明白な違法行為だ。
一流のハッカーならば、滅多に危ない橋など渡らない。
だがもしかして、親友に危機が迫っているのかもしれないとすれば
背に腹は代えられない状況にあった。

――そして「不幸」にして、彼のイヤな予感は的中した!

慎哉「ちっくしょおおおっっっ!!!!!!!」

血相を変えて、すぐに自宅の玄関から飛び出した慎哉は、
そのまま自転車に飛び乗って必死に目的地まで走らせる。

慎哉「やっぱり罠だったんだ! 騙されてたんだ!!
 光平っ、どうか無事でいてくれ!!」

後に残された、不在の朝倉家の電源が入れっぱなし
となったPCのモニター画面には、大きく
「capture(鹵獲)」の文字が表示されているのだった…。

1639

***豊洲・某ショッピングモール出入り口***

優香「それじゃあうさぎちゃん、また今度ゆっくりとね」
うさぎ「優香さんも元気で」

こうしてうさぎとモールの出入り口で別れてから数分後、
周囲から騒ぎの声が聞こえ始めた。

群衆A「ば、化け物だぁ~!」
群衆B「タツノオトシゴみたいな怪人が3匹、
 あっちの方向で暴れてるぞ!」

優香「――!!」

逃げ惑う群衆から噂が耳に入った優香は、
怪人を目撃したという場所が月野うさぎのいる場所に
近い事を思い出した。

優香「うさぎちゃんが危ない!?」
群衆C「おいお嬢ちゃん!どこ行くんだ!
 そっちは危ないぞ!」
優香「友達に危険が迫ってるんです!」

優香は、さっき別れたばかりのうさぎの事が心配になり、
群衆が逃げる方向とは逆に向かって走り出した。


◇   ◇   ◇


シードラゴンⅠ世「イーチッ!!」
シードラゴンⅡ世「ニーィチ!!」
シードラゴンⅢ世「ターツ!!」

左腕の形状がそれぞれ異なる3体一組のシードラゴン3兄弟が、
右手の発電鞭を振り回しながら、商業施設の集まるこの区域で暴れており、
周囲のあちこちには割れたガラスや倒れたコンクリートの柱などが散乱している。

レイ「もうっ、うさぎったら何処行ってたのよっ!?」
うさぎ「ごめ~ん!」
亜美「みんな、変身よ!」

うさぎも駆けつけ合流を果たした5人は、
変身呪文を叫んだ。

うさぎ「――ムーン・コズミックパワー!」
亜美「――マーキュリー・クリスタルパワー!」
レイ「――マーズ・クリスタルパワー!」
まこと「――ジュピター・クリスタルパワー!」
美奈子「――ヴィーナス・クリスタルパワー!」

5人全員「「「「「――メイクアップ!!」」」」」

変身を完了するセーラー戦士。

セーラームーン「行こうっ!みんな!」
他4人「「「「――OK!!」」」」

シードラゴンの出現ポイントまで急ぐセーラー戦士たち。
そしてその場には、たった今物陰から偶然に一部始終を見てしまった
沢渡優香一人だけが残されたのだった。

優香「そんな…まさか…!
 うさぎちゃんが…セーラームーン!?」

1640

***都内郊外某所***

ここは以前、シグフェルが下水道の土管工事をしていた現場作業員の中年男を
ホブゴブリンイーバからたまたま救った場所の上空である。

シグフェル「…あそこか!」

飛来したシグフェルは、地上に待つ剣持と冴子の姿を見つけ、
翼をはためかせてゆっくりと降り立った。

シグフェル「………」

冴子「……(彼がシグフェル…)」
剣持「よく来てくれた、シグフェル」

剣持が握手しようと歩み寄ろうとした瞬間、
突然四方八方からシグフェルに向かって眩い照明が照らされた。

シグフェル「――!?」
剣持「なんだこれは!?」

バルザック「今だ! 撃てぇーぃっ!!」

いつの間にかその場は戦車隊によって包囲されて行った。
指揮を執るバルザック中佐号令のもと、シグフェルめがけて
砲弾が降り注がれる!

剣持「危ないッ!」
冴子「キャッ!?」

剣持は、横にいた冴子を銃弾の雨から守って横に伏せる。

冴子「剣持さん! これはいったいどういうことなんです!?」
剣持「こっちが聞きたいくらいだ!!」

一方のシグフェルも、訳が分からぬまま必死に
砲撃に耐えている。

シグフェル「…くっ! いったいどうなっているんだ!?」


***豊洲・某ショッピングモール近く***

セーラームーン「東京湾と星空のコラボレーション! レインボーブリッジが超キレイ!
 そんなカップルたちの楽しむ夜景を台無しにするなんて不届き千万!
 この愛と正義のセーラー服美少女戦士、セーラームーンが月に代わってお仕置きよ!」

ショッカーのシードラゴン三兄弟と対決するセーラー戦士。

シードラゴンⅠ世「…ん? 仮面ライダー1号と2号はどうした?」
シードラゴンⅡ世「俺たちの相手がこんな小娘どもとは…。とんだ貧乏くじを引かされたものよ!」

現れた相手を侮り、鼻で笑うシードラゴン三兄弟。
憤慨するセーラー戦士たち。

セーラーマーズ「なんですって!」
セーラーヴィーナス「言ってくれるじゃない!?」

シードラゴンⅢ世「待て兄者! 我々の使命はブレイバーズとシグフェルの接触を牽制する事だ。
 ここは俺に一番手を任せてもらおう!」

12000ボルトの電流を蓄えた右手の発電鞭を振り回して迫るシードラゴンⅢ世。

セーラージュピター「電気ならアタシに任せて! 我が守護木星! 嵐を起こせ! 雷を降らせよ!」
 ――シュープリーム・サンダー・ドラゴンッッ!!!」

セーラージュピターは、ティアラの避雷針で受けた落雷のエネルギー電撃を放ち、
それらを収束してドラゴンの姿に変化させて攻撃する。

1641

***再び、都内郊外某所***

荒れ狂う砲弾が飛び交う中、なんとかバルザックの元まで辿り着く剣持。

剣持「バルザック中佐、これは何の真似だ!
 すぐにやめさせろ!」
バルザック「これは剣持中佐、あいにくですがそれは出来ませんな。
 私はコルベット准将から命令を受けた身だ」
剣持「今一度言う。今すぐ攻撃をやめろ!
 やめなければ撃つ!」

剣持は銃を抜いてバルザックの眉間に向ける。
バルザックの部下たちも剣持に向けて一斉に銃を向ける。
緊迫した状況だ。

シグフェル「くっ…!」

約束の場所に到着したシグフェルが一方的に集中砲火を浴びる中、
自宅から全力で自転車を漕いできた慎哉が現れた。
シグフェルが連邦軍に攻撃されている光景を目にするや、
自転車をその場に乗り捨ててシグフェルの側にまで駆け寄ろうとする。

慎哉「光平ッッ!!!!!!」

冴子「なんでこんなところに子供が!?」

突然現れた高校生くらいの年頃らしき男子に、
その場近くにいた八神冴子も戸惑う。

シグフェル「――!? 慎哉! 危ない来るなあッ!!」
慎哉「――え!?」

気がついた慎哉の目の前にも、容赦なく銃弾の雨が降り注がれようとした
まさにその時――!!

アシュラ「ぐはっ…!?」

金髪に赤い身体の怪人風の男が、咄嗟に盾となって慎哉とシグフェルを庇った。
先程コルベット隊の動きを偶然目撃し、そのまま後を付けて来た
毒島嵐=ドクター・アシュラだ。

慎哉「――!?」
シグフェル「…あ、あなたは?」
アシュラ「なにボサッとしてる! そいつはてめぇのダチなんだろ!!
 ここは俺に任せて早く行け!!」
慎哉「………(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」

アシュラが庇わなければ、あと一歩でハチの巣になって
無残に死ぬところだった慎哉は、身体が震えて動けないでいる…。

シグフェル「ありがとう!」

アシュラの叱咤で、咄嗟にどうすべきか理解したシグフェルは、
慎哉を抱えて浮上し、とりあえずその場から離脱するのだった。

バルザック「…逃げられたか。撃ち方やめーいッ!」

バルザック中佐から攻撃中止が命令される。

1642

アシュラから人間体の姿に戻った毒島嵐を、
コルベット隊の兵士たちが銃口を向けて取り囲んだ。

兵士A「よくも邪魔をしてくれたな!」
兵士B「この男を拘束しろッ!」
嵐「チッ…!」

嵐は両手を挙げて降参のポーズをとるが、
剣持が乗り出して来てこれを制止する。

剣持「待て! その男の身柄はレッドマフラーの方で預かる」
バルザック「剣持中佐、只今の貴官の妨害行為は後日問題にさせて頂く」
剣持「それはこっちの台詞だ! コルベット准将率いる部隊の
 数々の越権行為は必ず究明させてもらうぞ!」
バルザック「……引き揚げろ!」

暫し睨みあっていた剣持とバルザックだったが、
やがてバルザックは部隊を率いて撤退して行った。


***豊洲・某ショッピングモール近く***

セーラームーン「――ムーン・スパイラル・ハート・アタック!!!」
セーラーマーズ「――マーズ・フレイム・スナイパー!!!」

巨大なハート形の光の塊と、高熱の烈炎で作った光の矢が
残りのシードラゴン2体を見事撃破した。

シードラゴンⅠ世「イーチッ!! む、無念だぁぁ~!!」
シードラゴンⅡ世「ニーィチ!! ショッカー軍団ば、ばんざ~い!!」

爆発四散して消滅する怪人シードラゴン。

セーラーマーキュリー「終わったわね」
セーラーヴィーナス「剣持隊長、無事にシグフェルに会えたかしら?」

皆が剣持とシグフェルの会見が上首尾な結果に終わる事を期待していたが、
一人セーラームーンだけが全く別の事を考えていた。

セーラームーン「優香さん、あれからちゃんと無事に帰れたかな…」
セーラージュピター「優香さんって…沢渡優香さん?」
セーラームーン「うん。実はついさっき近くで会って…」
セーラーヴィーナス「うそっ!? 優香さん近くに来てたの!?」
セーラーマーズ「…誰? その沢渡優香って?」
セーラームーン「ああ、この間偶然知り合った女の子なんだけど、
 マーズやマーキュリーにもいずれ近いうちに紹介するね♪」

1643

***レッドマフラー隊基地***

コルベット隊の予期せぬ妨害によって、不首尾に終わってしまった
シグフェルとの会見から帰って来た剣持だったが…。

村中「隊長、実は基地の車両の中からこんな物が!」
剣持「これは…!?」

それは超小型の盗聴器だった。いつの間にこんな物が仕掛けられ、
シグフェルとの待ち合わせ場所も含めたこちらの動きが、
全部外部に筒抜けになっていたのだ。

そしてその情報を掴んだ何者かが、コルベット隊に密告したに違いない。
このような悪辣な手を使う男を、剣持は世界広しと言えども一人しか知らなかった。

剣持「…やってくれたな! ゴメスさんよォッ!!!」

剣持は怒りに任せて盗聴器を床に叩きつけ、硬い革靴で踏み潰した。


***スマートブレイン本社ビル・54階・社長室***

村上「さすがはキャプテンゴメス。上の上たる策略です」

剣持とシグフェルの会見が決裂に至った事を知り、
祝杯を挙げて喜ぶ村上社長とゴメス。

ゴメス「シグフェルの正体が人間の民間人だとすれば、
 一般の素人に地球連邦軍の内部事情など解る筈もない。
 シグフェルから見れば、ブレイバーズ派もロゴス派も
 同じく地球連邦軍。一々区別などは到底つかない」
村上「今回の件で、おそらくシグフェルはブレイバーズから
 裏切られたと思った事でしょう」
ゴメス「今やブレイバーズに対するシグフェルの心証は最悪となった。
 そこに我々Gショッカーが付け入る隙が生じるのだ。
 村上社長、いよいよ果実を我々の手にもぎ取る時ですぞ!」

1644

***地球連邦軍極東支部・伊豆基地***

執務室に一人だけでいる岡長官は、誰かと電話で話していた。

???@電話の声「申し訳ありません。こちらも監視がついていたため、
 事前にお知らせできませんでした…」
岡「君のせいではないよ。気に病む事はない。
 引き続き潜入任務を続けてくれたまえ」
???@電話の声「了解しました。ではこれにて」

電話の受話器を下ろす岡長官。果たして今彼は、
誰と話をしていたのだろうか…?


***臨海高速線の車両内***

お台場、豊洲、メガロシティ、ヌーベルトキオシティを縦断して結ぶ
旋風寺鉄道の新交通システムに乗車して帰宅途中の沢渡優香。
思いつめた表情で座席に座っている…。

優香「………(うさぎちゃんも他の女の子たちもセーラー戦士だった。
 いったいどういうことなの?)」

何か言いようの知れぬ不安に駆られる優香。
この後、光平、慎哉、優香の3人に
さらに大きな影が忍び寄ろうとしている事を、
この時はまだ誰も知らなかった…。

1645

○剣持保→シグフェルとの会見に臨むが、コルベット隊の妨害によって決裂してしまう。
○村中隊員→日の出テレビでの剣持保の録音放送に同行。
○海野隊員→日の出テレビでの剣持保の録音放送に同行。
○八神冴子→シグフェルとの会見に臨む剣持保に同行する。そこで朝倉慎哉の姿を目撃。
○岡防衛長官→抗議にやって来たコルベットを追い返す。剣持とシグフェルの会見失敗後に
 謎の人物と電話で会話する。
○月野うさぎ/セーラームーン→ショッピングモールで沢渡優香と再会。優香に変身の瞬間を
 目撃された事にまだ気づいていない。
○ルナ→人間の言葉を喋っていたところを牧村光平に怪しまれて焦る。
○水野亜美/セーラーマーキュリー →シードラゴンⅠ~Ⅲ世と交戦してこれを撃破。
○火野レイ/セーラーマーズ→シードラゴンⅠ~Ⅲ世と交戦してこれを撃破。
○木野まこと/セーラージュピター →シードラゴンⅠ~Ⅲ世と交戦してこれを撃破。
○愛野美奈子/セーラーヴィーナス→シードラゴンⅠ~Ⅲ世と交戦してこれを撃破。
○毒島嵐/ドクター・アシュラ→自ら盾になり、シグフェルと朝倉慎哉の窮地を救う。
●コルベット准将→バルザック中佐の部隊を派遣して、シグフェルと剣持の会見を妨害する。
?バルザック・アシモフ→コルベットの命令で、シグフェルと剣持の会見を妨害して、シグフェルの捕獲を目論む。
●村上峡児→剣持保とシグフェルの会見失敗を喜ぶ。
●スマートレディ→レッドマフラー隊の車両に盗聴器を仕掛ける。
●キャプテンゴメス→剣持保の動きをコルベット准将に匿名で密告。
●シードラゴンⅠ世→豊洲で暴れるが、セーラー戦士たちに倒される。
●シードラゴンⅡ世→豊洲で暴れるが、セーラー戦士たちに倒される。
●シードラゴンⅢ世→豊洲で暴れるが、セーラー戦士たちに倒される。

○牧村光平/シグフェル→剣持保の呼び掛けに応じて会見に臨むが、コルベット隊に襲われ離脱。
○朝倉慎哉→コルベット隊に襲われるシグフェルの元に駆けつけ、彼と共にその場を離脱。
○沢渡優香→セーラームーンの正体が月野うさぎである事を知る。


『包帯男のシグフェルリポート』-1

作者・ホウタイ怪人

1646

***豊洲住宅街・朝倉家***

コルベット准将配下の連邦軍の攻撃から辛うじて逃れたシグフェルと朝倉慎哉は、
なんとか無事に自宅へと戻って来た。闇夜に紛れて2階のベランダから部屋の中へと舞い降りる二人。
シグフェルが変身解除して牧村光平の姿に戻った瞬間、先程受けたダメージのせいか
部屋の隅々にシグフェルの翼の羽毛が舞い散る…。

光平「うっ……」

一瞬、よろめいてしまう光平。
慌てて慎哉が肩を貸して支える。

慎哉「光平、大丈夫か!?」
光平「この程度、なんともないよ」
慎哉「……ごめん」
光平「…?? なんで慎哉が謝るんだよ」
慎哉「…俺、あの場で結局、体が震えて何も出来なかった」
光平「なんだ、そんなことか。あの状況なら当然だよ。
 それよりも俺のために今日みたいな無茶はしないでくれ」
慎哉「光平……」

こうしてその日は夜が明けた。
そして翌朝…。


***海防大学付属高校・校門前***

その日もいつもと変わらぬ登校風景である。
今朝も普段通り登校してきた光平と慎哉は、
校門前で同じく登校してきた沢渡優香と会う。

優香「あっ……」
光平「あっ、優香、おはよう!」
慎哉「おはよう沢渡」
優香「う、うん…おはよう二人とも」

なんとなく朝からどこかぎこちない3人である。

優香「…ねえ、昨日はどうだったの?」
慎哉「どうもこうもないよ! ブレイバーズの奴ら、
 光平を騙して罠に掛けやがって!」
優香「…どういうこと?」
光平「……ごめん、後で詳しく話すよ。
 今は教室に急ごう」
優香「うん…」

玄関の下駄箱で靴を履き替え、教室へと向かう3人だったが…。

優香「…あのね光平くん!」
光平「なんだ?」
優香「ううん…ごめんなさい。なんでもないわ」
光平「……??」

優香は昨夜、月野うさぎがセーラームーンに変身した瞬間を
目撃してしまった事を、未だに光平たちに言い出せずにいるのだった。

1647

***日本海溝・ブレイバーベース***

剣持「これまでシグフェルが出現した場所を
 嗅ぎまわっている者がいるだと?」

バトルフィーバー隊のバトルジャパン=伝正夫少佐から、
近頃シグフェルが過去に現れた現場に出没しているという謎の人影について
報告を受けるレッドマフラーの剣持保中佐。

村中「いったい誰が何の目的で?」
伝「ハッキリと姿を見た者もいないんだが、
 誰かがかなり執拗に、それも密かに嗅ぎまわっている
 事だけは確かなんだ」
剣持「気になる事はハッキリさせた方がいい。
 我々でも探ってみよう」


***ホウタイ怪人のアジト***

ホウタイ怪人「背は高く、脚は長い。瞳は翠色…」

Gショッカーに名を連ねる悪の組織の一つ、教祖サタンエゴスを唯一神と崇め、
世界に混乱をもたらす事を目的とするカルト集団である秘密結社エゴスの
地下に建設された最新科学捜査の研究施設である。

ヘッダー「見よ! 神子は足形からだけでも、
 あれだけのことが割り出せるのだ!」
ゴメス「………」

ガラス越しに採取した試料の分析作業の様子を見学しながら、
エゴスのヘッダー指揮官より説明を受けるキャプテンゴメス。

エゴス一の鑑識術の達人であるホウタイ怪人は、
過去のシグフェルの出現場所から石膏を流して足形を採取し、
他にも現場に落ちていた髪の毛などのDNAが判別できそうな
試料を幾つも入手して、分析作業を進めていたのだった。

ホウタイ怪人「これでシグフェルに関するデータは全て揃ったぞ!
 詳しい特徴はこのファイルを見ろ」
ヘッダー「ハ、ハハーッ!!」

ホウタイ怪人から渡された分析報告書に目を通す、
キャプテンゴメス、ヘッダー指揮官、女幹部サロメ。

サロメ「シグフェルは一人よ。どうしてデータが3人分もあるの?」
ホウタイ怪人「シグフェルには2人仲間がいる」
ゴメス「ほう、それは興味深い話ですな」
ホウタイ怪人「おそらく3人とも高校生。しかも全員、メガロシティにある
 海防大学付属高校に通っている生徒だ」
ヘッダー「…海防大学付属高校?」
ゴメス「その学校であれば我々の方でも
 前々からマークしていた。どうやらこれで決まりだな」
ヘッダー「すばらしい! これで今度こそシグフェルの正体が暴けるぞ!」

1648

サロメ「フン、手間のかかる話ね。
 その海防大学付属高校に在籍している生徒の
 人数だけで何百人いると思ってるの?
 それを今から一人一人調べるのかしら」
ゴメス「いや、そこまで絞り込めれば充分だ。
 700人もいる生徒の中でも、瞳が翠色をしている
 人間など、そう何人もいない筈だからな。
 ところでホウタイ怪人殿、その前に一つだけ確認して
 おきたいことがあるのだが?」
ホウタイ怪人「なんだ?」
ゴメス「貴殿はその昔、バトルフィーバー隊の正体を
 見事に暴いて見せた時に、バトルケニアこと曙四郎は
 若いうちに頭髪が薄くなると断言されたそうですな?」
ホウタイ怪人「いかにも間違いはない!」
ゴメス「しかし私の知る限り、近年になってゴーカイジャーの前に
 姿を現した曙四郎の頭髪はフサフサしていたぞ。それをどう説明
 されるのですかな?」
ホウタイ怪人「…うっ!! そ、それは!?(汗」

一瞬言葉に詰まったかに見えたホウタイ怪人だったが、
すぐにクスクスと笑いだした。

ホウタイ怪人「クククク…」
ゴメス「何がおかしいのかね?」
ホウタイ怪人「このホウタイ怪人のプロファイリングに隙はない!
 こちらのファイルにも目を通してみろ」

ホウタイ怪人は、自分の鑑識の腕に疑念を示したゴメスに
もう一冊分の報告書ファイルを手渡した。

ゴメス「…こ、これは! カツラ会社の顧客名簿リスト!?
 確かに曙四郎の名前がある!」

衝撃の事実発覚! 現在のバトルケニア=曙四郎はヅラだったのだ!!

ゴメス「これは恐れ入った。確かに貴殿の鑑識と推理の腕に
 間違いはないようだ」
ホウタイ怪人「分かればいいのだ!」

ヘッダーは戦闘兵士カットマンたちに指示を出す。

ヘッダー「直ちに海防大学付属高校とその周辺に
 偵察網を張り巡らせるのだ! ブレイバーズの連中には
 くれぐれも気付かれぬようにな」
ホウタイ怪人「俺も直接現場に出向いて指揮を執る!」

1649

その日から、海防大学付属高校の周辺には、
強面の風貌をした怪しげな男たちが
カメラを片手にうろつくようになった。
全員がエゴスのカットマンの変装だ。

道を通りかかる生徒を一人一人下調べするように
じっと睨んでいて、いかにも薄気味悪さが滲み出ている。

光平「………(こいつら…いったい何者なんだ?)」

光平も不審な様子に気付きつつも、素知らぬフリをして
そのまま無言で男たちの前を通り過ぎる。

警官A「コラッ、君たちこんなところで何をやっている」
警官B「学校の近くに不審者が数人いるとの通報を受けた。
 ここは生徒たちの学び舎だ。速やかに退去しなさい!」

学校の教職員からの通報を受けたパトカーがやって来て、
男たちを学校の周辺から追い払う。その様子を物陰から
見ているホウタイ怪人とサロメ。

サロメ「神子、いかが致しましょう?」
ホウタイ怪人「今ここで騒ぎを起こすのはマズイ。
 警察を学校から引き離してくれ」
サロメ「ハハッ!」

サロメの指示で、人間の姿から元に戻ったカットマンたちが、
今度は裏口から学校の敷地内に潜入しようと試みるが、
壁伝いによじ登ろうとしたカットマンたちめがけて
バトルフィーバー隊のコマンドバットが投げつけられた!

カットマンA「うわああっ!?」
カットマンB「わあああっ!!」

侵入に失敗し地面に落ちるカットマンたち。
そして校舎のベランダにはエゴスの作戦を阻止せんとする
バトルフィーバーJの雄姿があった。

バトルジャパン「おいサロメ! シグフェルの正体を暴こうったって
 そうは行かないぞ!」
ミスアメリカ「秘密の戦士の素顔を教える訳にはいかないわ!」

サロメ「おのれ~! シグフェルの正体を知りたがっているのは
 お前たちだって同じだろうに! やれ~っ!」

1650

バトルコサック「たぁーっ!!」
バトルフランス「とりゃ!!」
バトルケニア「おらよっと!!」

次々と襲いかかるカットマンの群れを難なく薙ぎ払っていく
バトルフィーバーの5人。

ホウタイ怪人「ふはははは~!!」

校舎屋上に立ってバトルフィーバー隊を威嚇する
黒ずくめの包帯男=ホウタイ怪人。

バトルジャパン「ホウタイ怪人、やはり貴様だったか!」
ホウタイ怪人「久しぶりだなバトルフィーバー!
 今日のところはほんの挨拶代わりだ!
 俺はエゴス一の鑑識の名手! 謎のヒーロー・シグフェルの正体、
 必ずこの俺様が突き止めて見せるぞ!!」

まるで勝ち誇るような不気味な笑い声と共に、
ホウタイ怪人はその場から姿を消したのだった。

バトルコサック「どうするジャパン?」
バトルジャパン「過去に俺たちの正体を暴いた実績のある、あのホウタイ怪人だ。
 ついに奴が自らシグフェルの正体探しに乗り出してきたとなると、
 これはいよいよ油断はできなくなったな…」
ミスアメリカ「時間がないわね…」

外での騒ぎを聞きつけた生徒たちにも動揺が広がる。

男子生徒A「なんだなんだ?」
男子生徒B「いったいどうしたんだ?」
女子生徒A「すぐ近くでブレイバーズとGショッカーが戦っていたみたいよ」
男子生徒C「スゲー! 俺も見に行きたかったなあ!」
教師A「君たち、警察の方からもう騒ぎは収まったとの連絡がありました。
 すぐにそれぞれの教室に戻りなさい!」

光平「………」

ついに学校の周辺にまで、ブレイバーズとGショッカー双方の手が伸びて来た。
その事に動揺を隠せぬ光平であった。

光平「いったい俺はこれからどうしたらいいんだ…!
 もし俺のせいで学校のみんなまで巻き込む事になったら…。
 教えてくれ、父さん…! 母さん…!」

つづく…。

1651

○剣持保→伝正夫から、これまでのシグフェルの出現現場に出没する謎の人影について報告を受ける。
○村中隊員→伝正夫から、これまでのシグフェルの出現現場に出没する謎の人影について報告を受ける。
○伝正夫/バトルジャパン→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
○バトルコサック→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
○バトルフランス→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
○バトルケニア→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
○ミスアメリカ→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
●キャプテンゴメス→秘密結社エゴスのホウタイ怪人に、シグフェルの正体割り出しを依頼。
●ヘッダー指揮官→キャプテンゴメスにホウタイ怪人の能力を説明する。
●女幹部サロメ→ホウタイ怪人と共にシグフェル捕獲作戦の現場指揮を執る。
●ホウタイ怪人→シグフェル捕獲作戦の現場指揮を執る。

○牧村光平/シグフェル→ブレイバーズとGショッカーの手がいよいよ学校周辺にまで伸び、激しく動揺する。
○朝倉慎哉→シグフェルがブレイバーズに騙し打ちされたと憤慨している。
○沢渡優香→偶然見てしまったセーラー戦士たちの正体を、牧村光平たちに今も言い出せずにいる。

【今回の新規登場】
○神誠=二代目バトルコサック(バトルフィーバーJ)
 初代バトルコサックである白石謙作の国防省での先輩。
 国防省兵器研究所の研究員として三村教授の助手を務めていた。
 謙作の殉職を受けて、強化服を引き継ぎ二代目バトルコサックとなる。
 無口だが、行動力を備えた男。

○汀マリア=二代目ミスアメリカ(バトルフィーバーJ)
 アメリカ国籍を持つFBI捜査員。負傷して帰国したダイアン・マーチンの
 後任として二代目ミスアメリカとなる。変装術にも長けている、行動派の女戦士。

●ヘッダー指揮官(バトルフィーバーJ)
 秘密結社エゴスの大幹部。サタンエゴスの立案した作戦を実行に移す役割を担い、
 本部内で部下たちに行動指示を与える。怪人誕生の瞬間に感極まって「おぉ~御子よ!」と
 叫ぶのが決まり文句。卑怯もまた兵法とする武道「邪神流」の使い手でもある。

●女幹部サロメ(バトルフィーバーJ)
 エゴスのアメリカ支部からヘッダー指揮官が呼び寄せた、自称「世界最強の美女」。
 ヘッダー秘蔵の弟子でもあり、独自の犯罪組織を率いてアメリカ国内の数々の
 暗殺事件の影で糸を引いていた。ペンタフォースを跳ね返してしまう程の
 強靭な肉体を持つ。

●ホウタイ怪人(バトルフィーバーJ)
 秘密結社エゴスの怪人で、足跡などから相手の身体的特徴を調べる事が出来る
 鑑識の名手であり、現在で言うプロファイリングの天才。特殊な粘土を用いて
 明少年の手から汀マリアの素顔を割り出した。武器の十字剣を巧みに操る。


『包帯男のシグフェルリポート』-2

作者・ホウタイ怪人

1652

その日、牧村光平と朝倉慎哉は二人で食材の買い出しのため
近所のスーパーを買い物に訪れていた。

光平「慎哉、そのリンゴは隣に置いてある方がいいぞ」
慎哉「えっ…?」

果物売り場に無造作に並べられていたリンゴの一つを
慎哉が適当に手に取って買い物かごに入れようとした時、
突然光平が呼びとめたのだ。

光平「隣に置いてあるリンゴの方が新鮮だ」
慎哉「そっか。シグフェルの透視能力って奴か」

牧村光平の正体は、シグフェルと呼ばれる未知の超生命体である。
どうやら彼の今の視力には、生鮮食材の鮮度を見通すような
超能力も備わっているようなのだ。

光平「本来この能力も、こういう風に使えばいいものなのかもな」
慎哉「そう考えればお前がシグフェルになったのも
 案外便利だよな」
光平「………」

慎哉の何気ない一言を聞いた光平は、一瞬表情を曇らせた。
それに気付く慎哉。

慎哉「…ごめん。俺、今マズイこと言ったか?」
光平「いや、そういうわけじゃないんだ」

その時、向こうの方から光平と慎哉に向けて
同世代の少年の声がした。

ザジ「あれっ? 牧村と朝倉じゃないか!」

光平「広瀬?」
慎哉「広瀬じゃないか」

広瀬ザジ――かつて日本人・広瀬剛とフランス人女性との間に生まれたハーフの少年で、
交通事故が原因で昏睡状態に陥っている間、スペースマフィア地球遠征軍司令官ジスプに
インヴェードされ、魔少年(デーモンキッド)ムッシュ・ザジとなって暗躍していたが、
ブルースワットの活躍によってジスプから解放され、今ではすっかり健康状態も回復。
光平たちと同じ海防大学付属高校へと進学して、同校宇宙工学科の2年G組に在籍している。

1653

ザジは光平とはクラスこそ違うものの、同じ混血児同士ということで
過ごしてきた境遇も似ているためか気が合い、以前から仲もよい。
今日、ザジは父親と一緒に、偶然光平たちと
同じ日、同じ時刻に同じスーパーに買い物に来ていたようだ。

シグ「ザジ、この子たちは?」

ザジの父親である広瀬剛――実は脳死状態の剛の肉体に
長期間インヴェードし続けた結果、完全に同一化するに至った
元スペーススワット隊員の異星人で、対エイリアン部隊ブルースワットの
メンバーの一人・シグである。無論、その事を息子のザジは知らない…。

ザジ「紹介するよ。こちら同じ学校の牧村光平君に朝倉慎哉君」
光平「広瀬君のお父さんですか? はじめまして、牧村光平と言います」
慎哉「朝倉慎哉です。よろしく」
シグ「こちらこそ息子がいつもお世話になっています」
光平「いえ、どういたしまして。広瀬君には俺の方こそ
 時々悩みを聞いてもらったりして助かってますよ。なあ広瀬」
ザジ「助けられてるのは僕の方だよ。今の僕が学校に馴染めているのも
 正直牧村たちのおかげだし」
慎哉「そんな大したことはしてないぜ」

学校のクラブ活動では天文研究会に所属しているザジは、
同じ理系方面に明るい慎哉とも話が合うらしい。
ザジにとって、光平と慎哉は今の高校に進学してから
最初に出来た友達なのだ。

シグ「二人とも、どうかこれからもザジと仲良くしてやってくださいね」
光平「ええ、勿論です♪」
ザジ「じゃあ二人とも、また明日学校でな!」

こうして光平と慎哉は、広瀬親子と別れた。

光平「………」
慎哉「どうした光平?」
光平「今の広瀬のお父さん、なんか奇妙な感じがしてさ」
慎哉「奇妙? どこがだよ? どこにでもいるような
 ごく普通の理想の父親に見えたぜ」
光平「うん、そうなんだけど…普通の人間とは違うけど、
 どこかとても温かい感じがするんだ」
慎哉「???」

その時、突然「キャー!」という女性の悲鳴が
店の正面入り口の方向から聞こえた。

慎哉「何だ!?」
光平「行ってみよう!」

店の正面入り口のすぐ側では、中年の女性が倒れていて、
首筋や太ももの肌には、何やらカビのようなものが生えていたのだった。

客A「なんなのかしら…?」
客B「気持ち悪いわ~」

光平「これは…!?」

1654

そこへ誰かが119番通報したのか、
しばらくして救急車が現場に到着した。

救急隊員A「どいてください!」
救急隊員B「急いで患者を病院まで運びます!」

現れた救急隊員たちは見事な手際で
倒れていた女性を救急車であっという間に
運び去ってしまったのだが、なぜか光平が
ひどく慌てた表情でその後を追いかけようとする。

慎哉「おい待て! いきなりどうしたんだよ!」
光平「あの救急隊員たちは人間じゃない!」
慎哉「なんだって!?」

光平がシグフェルとしての透視能力で、
今現れた救急隊員の中に何か異形の存在が
憑依している事を見抜いたのだ。

光平「このままだと今運ばれて行った人が危ない!
 助けないと!」
慎哉「よせ!」

慎哉は、助けに向かおうとする光平の腕を掴んで止めた。

光平「どうして!?」
慎哉「お前、ブレイバーズに何をされたのかもう忘れたのか?」
光平「それは……」
慎哉「下手に関わって、また厄介な騒ぎに巻き込まれたらどうするんだ。
 ここは警察に任せた方がいい」
光平「でも……」

慎哉に強く制止され、光平は走り去る救急車を
ただ黙って見ているしかできなかった。

◇   ◇   ◇

救急隊員A「フフフッ…思いのほか上手くいったな」

光平が見破っていた通り、この救急隊員たちは、
スペースマフィアのエイリアンたちにインヴェードされていた。
彼らの食糧となるバルボレラフーズの胞子を無差別に
通行人に移植し、アジトの食糧貯蔵庫まで拉致する計画なのだ。

だがその走行中の偽救急車を、どこからか発射された一発の銃弾が止めた。

救急隊員B「だ、誰だ!?」
救急隊員A「姿を見せろ!」

何事かと車から降りる救急隊員たち。
彼らの前に立ちはだかったのは、青紫のプロテクトギアに身を包み、
自動拳銃「BW-01 ディクテイター」を構えた一人の戦士だった。

シグ「スペースマフィアのエイリアン! 今連れ去ろうとした女性を
 解放してもらうぞ!」

1655

救急隊員A「おのれブルースワット!」
救急隊員B「さっそく現れおったな!」

周囲に不快な音と異常な風圧が巻き起こり、
ぐったりと地面にうつ伏せに倒れた救急隊員の背中から
ジェル状になって奇怪なエイリアンが姿を現した。
口が触手状になった青い「レト」型と、
呼吸器をつけたような緑色の「ケル」型の
2体のエイリアンだ。

「レト」型エイリアン「どうしてここが分かった!?」
シグ「警察に匿名の通報があった!
 怪しげな救急車がスーパーの買い物客の
 女性を連れ去ったとな!」
「ケル」型エイリアン「なんだとぉ~!!」

たちまち戦闘へと突入するブルースワットとエイリアン。
仲間のショウとサラがゴールドプラチナムの意思を引き継いで
他次元へと旅立ったため、今は一人で戦っているシグだが、
一度スペースマフィアとの戦いに勝利している歴戦の勇者である彼にとって、
「レト」型も「ケル」型も所詮は取るに足らぬに過ぎない。

「レト」型エイリアン「む、無念だぁ~!」
「ケル」型エイリアン「グェェェェッ…!!」

2体のエイリアンはさほど苦戦する事もなく
あっさりとシグによって殲滅された。
シグはすぐにブレイバーズ本部に連絡を取り、
救出した女性を本当の病院に搬送する手配をすると、
後の現場処理を到着した警察に任せて撤収した。


***メガロビル・ブルーリサーチのオフィス***

かつてブルースワットがスペースマフィアと戦っていた時、
自分たちの生活費の工面とエイリアンの調査を兼ねて開業した
よろず相談調査オフィス「ブルーリサーチ」。

当時はあまり儲からず、ハッキリ言って経営状態は火の車であったが、
現在では破嵐財閥などのブレイバーズスポンサー企業の出資を受けて、
メガロシティ中央のメガロビルにテナントとして広大なオフィスを構え
大勢の調査人員を抱えるまでに様変わりいた。

スミレ「社長、おかえりなさいませ」
シグ「さっそく報告を聞きたい」

シグはその社長として、仲間であるショウたちの留守を守りつつ、
ブルーリサーチの情報網を駆使して、日夜Gショッカーの動きに目を光らせていたのである。
そして当時のブルーリサーチにアルバイトとして雇われていた女子大生で、
彼らの数少ない協力者だった麻生すみれは、今では広瀬社長に仕える敏腕秘書である。

1656

スミレ「こちらが救急搬送中に行方不明になった患者たちの一覧です」
シグ「まちがいなくバルボレラフーズを移植された被害者たちとみてよいでしょう。
 一刻も早く彼らを救出しなければなりませんが――」

ここ最近、道端で突然倒れた通行人が救急車で運ばれたまま
消息不明となる怪事件が相次いでいた。ブレイバーズ本部から
調査要請を受けたシグとスミレは、過去のある事件を思い出していた。

シグたちブルースワットが戦っていた敵・スペースマフィアは、
無作為に市民を拉致して自分たちのエネルギー源=食糧となる
バルボレラフーズの養分として利用しようとした事があった。
ちなみにスミレもその被害者である。今回の事件はその出来事と
非常に経緯がよく似ていたのだ。

スミレ「何か他にも気になる事が?」
シグ「今回警察に匿名で通報してきた人物と言うのが
 どこか引っかかりますね」

今回シグが現場に間に合って駆けつけられたのは、
たまたま息子と近くに買い物に来ていた事情もさることながら、
他にもその「匿名の通報」によるところも大きい。
しかし普通の人間に、人に乗り移った状態のエイリアンを
見分けることなど不可能だ。いったいどうやって
異常に気がついたのだろう?

スミレ「警察からの話では、その通報の声は
 10~20代の若い男性の声だったそうです」
シグ「………」

シグは今日買い物先のスーパーで出会った
息子の友人である牧村光平という少年について
思い出していた。初めて会った瞬間から、
シグも光平には「奇妙な感覚」を覚えていたのだ。

そういえばブレイバーズからの情報によると、
Gショッカーは息子ザジも通う海防大学付属高校の中に
あの謎の戦士シグフェルがいると目星をつけ始めたらしい。

シグ「まさか…」
スミレ「何か?」
シグ「いえ、私の思いすごしかもしれません。
 これからちょっと出かけて来ます」

シグは服を着替え、用事のため外に出かけようとしたが、
社長室から出る前にスミレに一言付け加える。

シグ「あ、そうそう。スミレ、二人きりの時は
 私の事を社長と呼ばなくてもよいですよ」
スミレ「そう♪ 実を言うとわたしも堅苦しいのは苦手なの」(゚∇^*) テヘ♪

先程までのキャリアウーマン風のお堅い感じはどこへやら、
スミレはシグの一言で、すっかり緊張感が解けた明るい女性へと変わった。

シグ「ふふふっ…やっぱり貴女はそっちの方が似合ってますよ♪」

1657

翌日…。

***海防大学付属高校・校舎屋上***

授業が始まる前に、またいつもの校舎屋上に集まった
光平、慎哉、優香の3人。

優香「それじゃあ偽の救急車にさらわれた人を
 見捨てて来たの!?」

昨日の一部始終の話を聞き、優香は少なからず
ショックを受けたような表情をする。

慎哉「見捨てただなんて人聞きの悪い事言うなよ。
 ちゃんと警察には通報したぜ。市民の義務は果たしたんだから、
 余所から文句を言われる筋合いはないはずだ」
優香「それはそうかもしれないけど…」
慎哉「……なんだよ沢渡、何か言いたそうだな?」
光平「よせよ慎哉…」
優香「なんかそんなの…後は人任せにして知らないフリをするだなんて、
 いつもの光平くんらしくない」
慎哉「まさかお前、光平がシグフェルに変身して
 その人を助ければよかったって言うのか!」
優香「誰もそんなこと言ってないでしょ!」
光平「おい、やめろよ二人とも」
慎哉「元はと言えばお前のせいで光平は!」
優香「――!!」
光平「慎哉ッ!!」

つい募る苛立ちを抑えきれず、慎哉は触れてはならない禁句に触れてしまった。
光平がシグフェルという異形の力を手にしてしまった背景には、
彼が"あの日"優香の身代わりとなって、東条寺理乃の邸宅に赴いた事がそもそもの発端である。

慎哉も光平の叱咤による制止でハッと我に返ったが、もうその時には遅かった。
優香の両目は涙ぐんでいる…。

慎哉「ごめん……」
優香「……」
光平「……」

この日、この瞬間から3人の関係はギクシャクし始めた…。


***同校校舎・情報処理技術コース教室***

セイジ「ある販売会社では,本社に設置したサーバから自社ネットワークを使用して,
 全国の事業所に所属する営業員にデータを提供するアプリケーションの開発を行
 っている。システムテストを本社内の LAN 環境で行うとき,この環境下のテス
 トでは検証することが困難な項目は、次の内どれか?」

宇佐美 星児(セイジ)――中泉シンクタンクに在籍していた、メガネと蝶ネクタイが特徴の
コンピューターの知識に精通する天才青年であり、実は麻生すみれと同じくブルースワットのサポーターである。
現在は海防大学付属高校・総合普通科の情報処理技術コースを受け持つ非常勤講師を務めている。
朝倉慎哉もセイジの講義を受講しており、彼のことを師と仰いで尊敬していた。

セイジ「慎哉、この設問答えてみろ。
 基本中の基本だぞ」
慎哉「………」

慎哉はどこか上の空のようにボーッとしている。

セイジ「おい慎哉、聞こえてるのか!?」
慎哉「………え!?Σ(゚д゚;) は、はい!
 すみません。ボーッとしてました」

周囲の生徒たちからどっと笑い声が巻き起こる。

セイジ「珍しいな。慎哉が授業でボーッとしてるだなんて」
慎哉「………(汗」

1658

***同校校舎・カフェテリア***

大五郎「さあ、みんな大好きデンジパンのアンパンだ~!」

青梅大五郎――元はサーカス団員だったが、自身のアンパン好きが高じて
カルチャーセンター勤務を経てパン職人の道を選び、今はデンジパンと名付けた
移動販売車を経営しているという異色の経歴の持ち主だ。
こうして昼休みの時間帯になると、学校まで移動屋台を引っ張って来ては
生徒や教職員相手に商売を始める。

彼の焼くアンパンは「安くて美味い」と評判であり、
且つ彼自身のユーモラスで、飄々とした軽快な口調、
そしてどこか器量の大きさを感じさせる風格もあり、
生徒たちからは大人気で、いつも昼休みには長蛇の列が出来る。

光平「大五郎さん、いつものアンパン1個」
大五郎「はい1個税込みで80円! まいどあり~♪
 ……おや、今日は優香ちゃんや慎哉君と一緒じゃないのかい?」
光平「あいつらは……」

光平はどこか言葉を濁らせる。

大五郎「もしかして喧嘩でもしたのか?」
光平「………」


***同校敷地内・グラウンド***

優香「ハァ…ハァ…」

放課後、陸上部の練習で200Mの短距離を走りきる優香。

大地「どうした沢渡、以前よりタイムが落ちてるぞ!」
優香「すみません、山形コーチ…」

山形大地――高校時代は都立武蔵野学園陸上部のエースであったが、
現在はその経験と実績を活かして海防大学付属高校陸上部の外部委託コーチを勤めている。

女子部員「優香どんまい!」
優香「ありがとう…」
大地「都大会も近いんだ。体調のコンディションだけはしっかり整えておくんだ。
 もし何か悩みか心配事があるんなら相談に乗るぞ」
優香「はい…」

1659

そしてすっかり日も沈みかけた時刻、宇佐美星児、青梅大五郎、山形大地の3人は
人知れずこっそりと校舎裏に集まった。
言わずと知れた、青梅大五郎は電子戦隊デンジマンのデンジブルー、
そして山形大地は高速戦隊ターボレンジャーのブラックターボである。

大五郎「なるほどねえ…。やっぱり光平君たち3人の様子がおかしいか」
大地「もし何かつまらない事で喧嘩でもしたなら、なんとか仲直りの機会を
 つくってやりたいところですが…」

セイジと大地にとって、慎哉や優香は教え子であり、
大五郎にとっても光平たちは常連客として以前から親交がある。
未来ある生徒たちが悩みを抱えているなら、力になってやりたいところではあるが…。

セイジ「本当なんでしょうか。Gショッカーがこの学校の中に
 シグフェルがいると目星をつけているというのは?」
大五郎「そいつはまだわからん」
大地「俺たちも生徒たちの安全に目を光らせないといけませんからね。
 今はなかなか個人の悩みに立ち入っている余裕は……」

海防大学付属高校の中に、謎のヒーロー・シグフェルがいる…。

Gショッカーがそう狙いを定めて来た事だけは確かなのである。
大五郎も大地もセイジも、この学校に出入りしているのはかなり以前からであり、
今回の騒ぎの渦中に身を置く事になったのは全くの偶然なのだが、
ブレイバーズ関係者の中でも最も現場に近い人間として、
Gショッカーが迂闊に校舎内に手を出して来ないよう
常に注意を払う立場を受け持っていたのである。

そのため今は一生徒に過ぎない光平たちの
個人的な人間関係の問題にまで関わっている余裕はない。

ちなみに大五郎たちは、今話題に上った牧村光平が、実はそのシグフェル本人だとは、
まだこの時点では露ほども思っていない。

大五郎「青春にはいろいろと曲がり角は付き物だ。
 光平君たちの事なら心配はいらんだろう。
 きっとあの子たちならなんとかやるさ♪」
大地「そうですね。ああ見えて沢渡も他の二人も芯は強い子ですから」

その日の会合を終えた3人は解散して、それぞれ帰ろうとするが、
大五郎が校舎裏の雑木林に向かって帰り際に大きく叫んだ。

大五郎「お~い! そこのお前さんたち!
 いい加減かくれんぼはやめにしないか~!?」

林の藪の中には、今も校舎の監視を続けている
数人のカットマンたちが潜んでいたのだ。

カットマンA「おのれデンジブルー!」
カットマンB「殺るかッ!?」
カットマンC「待て! くれぐれも無用な挑発に乗るなとのサロメ様からのいいつけだ。
 シグフェルの正体を掴むまで今は堪えるのだ!」
カットマンD「ぐぬぬぬ~!!」

1660

***ホウタイ怪人のアジト***

海防大学付属高校の校舎周辺を監視しているカットマンたちから
送られて来た何枚かの生徒の写真をピックアップするキャプテンゴメス。

ゴメス「この顔は、3人とも以前に東京エネタワーで見かけた顔だ」
ホウタイ怪人「なんだと? それは本当か!」

校内の様子の牧村光平、朝倉慎哉、沢渡優香が写された
3枚の写真を手に取る見つめるキャプテンゴメスとホウタイ怪人。

今から2~3か月ほど前、スマートブレインは独立幻野党による
中東の石油王令嬢フィリナ・クラウディア・アルシャード誘拐計画に
便乗・強力する形でシグフェル捕獲を画策した。
その時にフィリナと一緒にいたのが光平たち3人である。

ゴメス「あの時は、この小僧たちの素性は最後まで分からなかったが、
 こうなってくるとシグフェルがアルシャードの令嬢の関係者だとする
 村上社長の推論は正しかった事になるな」
ホウタイ怪人「これは大いに調べてみる価値はありそうだな」
ゴメス「それも大至急だ。できるかね?」
ホウタイ怪人「任せておけ!」

ついにGショッカーの追及の魔の手は、いよいよ光平たちの身辺にまで
直接延びようとしているのだった。

1661

○シグ→「広瀬剛」として事業拡大したブルーリサーチ社の社長を務めている。
 エイリアンの偽救急車に拉致されそうだった一般市民の女性を救出。
○ザジ→現在は海防大学付属高校に通っており、牧村光平や朝倉慎哉とは親友の間柄。
 近所のスーパーで父と買い物中、偶然に光平や慎哉と出会う。
○麻生すみれ→ブルーリサーチ社で社長業を務めるシグを敏腕秘書として支えている。
○宇佐美星児→海防大学付属高校に情報処理技術コース非常勤講師として勤務している。
○青梅大五郎→いつも海防大学付属高校の昼休みに、デンジパンの移動屋台で出入りしている。
○山形大地→海防大学付属高校に陸上部外部委託コーチとして勤務している。
●ホウタイ怪人→ついにシグフェルの正体を、牧村光平たち3人にまで絞り込む。
●キャプテンゴメス→ついにシグフェルの正体を、牧村光平たち3人にまで絞り込む。

○牧村光平→朝倉慎哉や沢渡優香とギクシャクする。
○朝倉慎哉→エイリアンの偽救急車を追いかけようとした牧村光平を止める。匿名で警察に通報。
 そして学校でつい放ってしまった余計な一言がきっかけとなって、光平や沢渡優香とギクシャクする。
○沢渡優香→牧村光平や朝倉慎哉とギクシャクする。

【今回の新規登場】
○シグ(ブルースワット)
 ブルースワットの隊員で、隊員NO.011。戦闘時にはガンメタルのアーマーを装着する。
 スペーススワットの生き残りにして緑色の血を持つエイリアンであり、地球年齢で800歳。
 スペースマフィアとの戦いで仲間が全滅し、単身スペースマフィアを追って地球に降り立つ。
 地球上で活動をするために苦渋の判断として、脳死状態の地球人「広瀬剛」にインヴェードし
 ブルースワットの設立に尽力した。長く広瀬剛の肉体にインヴェードし続けた結果、
 彼との完全な同化が起こってしまい、元のエイリアンに戻ることよりも
 父として息子ザジと共に生きることを選ぶ。

○ザジ(ブルースワット)
 シグがインヴェードしている「広瀬剛」の息子。母はフランス人。
 10年前に親子共々交通事故を起こし以後意識を回復していなかった。
 そこをジスプにインヴェードされ、スペースマフィア最高幹部ムッシュ・ザジとして
 ブルースワットと戦った。後に救出され、ゴールドプラチナムの力で匿われ、
 広瀬剛(シグ)から移植手術を受けて、最終回では全ての戦いが終わった後に元気な姿を見せた。
 ちなみに彼のフルネームは「広瀬ザジ」となる筈だが、ここでは公式に準じて「ザジ」と表記する。

○宇佐美星児(ブルースワット)
 コンピューターの知識に精通する天才少年で、ブルースワットのサポーターを自称する。

  通称、セイジ。
 中泉シンクタンクのエンジニアだった頃、ブルースワットの組織について盗聴・ハッキングなどで把握しており、ブルースワット壊滅後シグたちに連絡を取ったところエイリアンに捕らえられ、ショウたちに助け出され仲間となる。
 その頭脳を駆使して情報収集、武器、装備の改良、各種薬品や探知機の開発などで活躍する。

○麻生すみれ(ブルースワット)
 ブルーリサーチにアルバイトとして雇われた女子大生。通称、スミレ。
 当初はすぐに事務所を空にするショウたちに疑念を抱き、
 正体を探ろうとしたこともあったが、ショウたちが正体を明かした後は仲間として行動する。
 セイジ同様、彼女もブルースワットにはなくてはならないサポーターである。

○青梅大五郎=デンジブルー(電子戦隊デンジマン)
 アンパンをこよなく愛する元サーカス団員。その身の軽さを活かし、
 偵察・潜入などの情報収集にも能力を発揮する電子戦隊の一員。
 劇場版『199ヒーロー大決戦』や『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン』では、
 「デンジパン」なるパン屋台を曳き、近所の幼稚園でアンパンを配って回っていた。

○山形大地=ブラックターボ(高速戦隊ターボレンジャー)
 高速戦隊のサブリーダーで力持ちのパワーファイター。
 都立武蔵野学園高校では陸上部に所属していた。
 屈強な肉体を持ち、走ることをこよなく愛する。
 頭脳面でも秀でており、同じ頭脳派の森川はるなにも引けを取らない。
 普段は落ち着いた性格だが、ときには熱血タイプの力以上の熱さを見せる事も。


『包帯男のシグフェルリポート』-3

作者・ホウタイ怪人

1662

***京南大学付属病院・病室***

嵐「アイタタタッ…!!!! もっと優しく巻いてくれよ!」
ナース長「大の男がグダグダ言わない!」

眼鏡をかけたキツい目つきの中年女性であるナース長が、
ベットの上の毒島嵐の患部に遠慮なしに
ぐいぐいっと締めつけるように包帯を巻いている。

嵐「愛ちゃんはどうした?」
ナース長「魚住さんなら今、伝通院先生のお供で
 静岡の学会に出張中です!」
嵐「チェッ…当てが外れたぜ」
ナース長「何か言いましたか?」
嵐「いえ別に…」

コルベット隊の攻撃から思わずシグフェルを庇って怪我を負った毒島嵐は、
剣持の計らいで京南大学付属病院に入院し、ほとぼりが冷めるまで
退屈な入院生活を過ごしていた。

勇介「よっ! 嵐、元気そうだな?」
嵐「お前ら…?」

天宮勇介、大原丈、岬めぐみの3人が、彼の病室に見舞いに訪れた。

嵐「ふんッ。俺のこの無様な姿を見て笑いに来やがったか…!」
めぐみ「なにその言い方! せっかくお見舞いに来てあげたのに!」
丈「お前そんな態度取ってると、そのうち友達なくすぞ(呆」
嵐「大きなお世話だ!」
勇介「嵐、今日は君にお願いがあって来たんだ」
嵐「…どうした急に改まって?」
勇介「実はな――」

勇介の話によると、嵐=アシュラがシグフェルを庇った際、
その場に居合わせたという謎の少年のモンタージュ写真と似顔絵の
作成に協力してほしいとのことだった。

嵐「まあお前らがどうしてもっていうんなら
 引き受けてやらねえ事もねえ。ただし謝礼はきちんと出るんだろうな?
 無償ボランティアはゴメンだぜ!」
丈「こいつぅ……!##」
勇介「ギャラについては直接向こうに着いてから相談してくれ」

1663

***都内の某廃病院地下***

J「おのれブルースワット!!」

今はGショッカーの巨獣軍に名を連ねるスペースマフィアの元地球攻撃指揮官
ジスプことムッシュJは怒りに震えていた。

生前に一度はクーデターに成功してスペースマフィアの支配者となった彼だが、
ブルースワットとの戦いで戦死し黄泉がえった後は、組織の実権は再びマドモアゼルQこと
クイーンの手に握られていた。クイーンに疎まれたジスプは闇女王同盟の根回しによって
閑職へと追いやられ、今は構成員のための食糧調達班責任者という明らかに左遷先という
地味な立場に回されていたのだ。

その食糧確保作戦も、ブレイバーズに加わったブルースワットの妨害が続き
成果もままならず、ジスプの苛立ちは日々募るばかりなのであった。

黒いコートの男「申し訳ございません!」
白いコートの男「この次こそは必ず!」
J「ええい!もうよい! お前たちもとんだ貧乏くじを引かされたな。
 クイーンの側につくなら今のうちだぞ」
黒いコートの男「それはあまりなお言葉!」
白いコートの男「我々は最後までジスプ様について行きます!」
J「フン!」
黒いコートの男「どちらへ!?」
白いコートの男「お待ちくださいジスプ様!」

腹心である黒いコートの男(ゾドー)と白いコートの男(リーガ)に対しても
このように八つ当たりをする始末である。

J「俺は決してこのような場所で終わる男ではない!
 必ずキングの座に返り咲き、次期創世王となって
 Gショッカーの頂点に立って見せるぞ!
 クイーンめ、今に…今に見ているがいい!!」


***警視庁メガロシティ官舎7階・703号室 沢渡家***

奈津子「優香、ちょっと来てくれる?」
優香「は~い!」

沢渡優香は、警視庁科学捜査研究所のメガロシティ署分室で主任を務めている母・奈津子と
ここメガロシティにある警察職員の官舎で二人で暮らしている。

台所に呼ばれた優香は、奈津子からタッパーに詰められた煮物を渡された。

奈津子「ちょっと今夜の夕飯に食べるつもりだった煮物を作り過ぎちゃったのよねえ。
 捨てるのも勿体ないから、慎哉くん家まで持って行ってあげてくれない?」
優香「えー? でも朝倉くん家は豊洲だよ。わざわざそんな遠くまで行かなくても、
 お隣の鈴木さんにでもお裾分けしてくればいいじゃない」
奈津子「アンタ、最近光平くんと上手くいってないんでしょ?」
優香「そ、そんなことは……」
奈津子「アンタと何年親子やってると思ってるの?
 これでも母親ですもの。そんなのアンタの顔見ればすぐに分かるわよ。
 せっかく仲直りの機会を作ってあげようって言ってんだから、
 さっさと行って来なさい」
優香「お母さん……」

優香は素直に言いだせないものの、母の気遣いに感謝して、
リュックにタッパーを入れて自宅から出かけるのであった。

1664

***豊洲地区・新興住宅街***

ちびうさ「ちょっとうさぎ~! いったいここどこよ?
 目的地はまだぁ~!?(怒」
うさぎ「わ、わかりましぇ~ん…(汗」

一方、こちらは月野うさぎとちびうさの二人である。
ある日、田舎の親戚から大量のみかんが届けられ、
処分に困った月野家では知り合いにお裾分けして
回る事になったのだが、亜美やレイたちのところに配っても
まだ裁ききれずに大量に余っており、どうしたものかと悩んでいると、
うさぎはふと最近知り合ったばかりの沢渡優香の事を思い出したのだった。

以前に聞いておいた連絡先を頼りに、デパートの紙袋一杯にみかんを詰め込んで
ちびうさも連れて、いざメガロシティに向かったまではよかったのだが、
うさぎの勘違いで一つ前の豊洲の駅で降りてしまい、完全に道に迷ったのだったww

うさぎ「みかんの紙袋が重いよォ~! 手も足も疲れて痛い~!
 もう動けない~!(泣」
ちびうさ「……(泣きたいのはこっちだっつーの!)」

うさぎがもう意地でも動かないと言い張って、
情けなく泣きじゃくりながら道端に座り込んでいると……。

優香「あれ、うさぎちゃん……?」
うさぎ「ああーっ! 優香さああ~~ん!!!」

偶然出会った沢渡優香の姿に、これぞ天の助けとばかりに
うさぎは優香に飛びついて抱きつく。

うさぎ「優香さあ~ん! 会いたかったよぉ~!」。゜゜(´□`。)°゜。ワーン!!
優香「…え?…えっ!?(汗」
ちびうさ「さっきまで少しも動けないとか言ってたくせに…(呆」

◇   ◇   ◇

優香「そう、ウチに来るところだったんだ」
ちびうさ「そしたらこのうさぎのドジのせいで、
 全然違う街に降りちゃうんだもん!」
うさぎ「め、面目ありません…(汗」

一緒に歩きながら、ふと優香はちびうさの方に目をやる。

優香「ところでうさぎちゃん、このコは?」
うさぎ「ああコイツはね、ウチの親戚の子でちびうさ!」
ちびうさ「はじめまして♪ どーもウチのドジなうさぎが
 いつもご迷惑を掛けております」<(_ _)>
うさぎ「ちょっとー! 何度もドジって言わないでよ!」
ちびうさ「だってホントの事じゃない!
 おマヌケなバカうさぎのくせにー!」σ(゚┰~ )アッカンベー
うさぎ「言ったわねええ!!(怒」

目の前で繰り広げられるうさぎとちびうさの"どつき漫才"を見た優香は、
つい微笑ましく感じられてクスクスッと笑ってしまう。

優香「まるで二人とも母娘みたい」

うさぎ「えっ…!?」Σ( ̄ロ ̄lll)
ちびうさ「えっ…!?」Σ( ̄ロ ̄lll)

優香の言葉に一瞬固まるうさぎとちびうさ。それもそのはず。
二人の関係は、紛うことなき本物の母娘なのである。

優香「…? ごめんなさい。もしかして私、今何かいけないことを言った?」
うさぎ「いえいえいえ!! 全然そんなことないよ!(汗」
優香「ならいいんだけど……。――あ、ほら、着いたわよ。
 ここが光平くんが住んでいる家」
うさぎ「へぇ~ここが……」

1665

***朝倉家・玄関前***

くらのすけ「ワンワンワンワンワン!!!!!!!」

うさぎ「きゃああーっ!!」(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
ちびうさ「ひいいいっっ!!」(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

玄関の門を通過した途端、いきなり犬小屋に繋がれていた
シベリアンハスキーに吠えられ、ビビリまくるうさぎとちびうさ。
互いに抱きついて震えているww

優香「大丈夫だよ。さあくらのすけ、こっちへおいで」
くらのすけ「クゥ~ン! クゥ~ン!」

優香が優しく手を差し伸べて撫でると、
くらのすけと呼ばれたシベリアンハスキーは途端に大人しくなり、
彼女に懐き始めた。

うさぎ「優香さん、すご~い!」
優香「そんなことないよ。きっと初めてうさぎちゃんたちを見たから、
 くらのすけも驚いただけなんじゃないかな?」
ちびうさ「ふ~ん…この犬、くらのすけって名前なんだぁ…」
優香「そうよ。どうか仲良くしてあげてね」

うさぎとちびうさに敵意がない事を理解したのか、
くらのすけもちびうさを舌でなめてスキンシップをはかってきた。

ちびうさ「きゃはは!! くすぐったい♪」
くらのすけ「キャンキャン!!」

そうしていると、くらのすけの鳴き声に気づいたのか、
玄関のドアが開いて中から朝倉慎哉が様子を見に出て来た。

慎哉「あ、沢渡…」
優香「朝倉くん…」

◇   ◇   ◇

うさぎ「いやーどうも♪ いきなり押しかけて来た上に
 家の中にまで上がらせてもらってすみません」
慎哉「た、大したおもてなしも出来ませんが……(汗」

慎哉は予想外の来客に戸惑いつつも、
とりあえず優香とうさぎ、ちびうさの3人にお茶代わりにジュースを出す。
ちなみに慎哉は月野うさぎとは、この時が初対面である。

光平「助かったよ優香、それに月野さんも。
 男所帯で暮らしてると結構日々の栄養も偏ってさ」
うさぎ「どーいたしまして」
ちびうさ「ところで光平さんは、あちらの慎哉さんと
 一緒に暮らしてるんですか?」
光平「うん、そうだよ。いろいろと込み入った事情があってね」
ちびうさ「………」

1666

光平の話を聞いて、一瞬ちびうさの脳裏には、
「美少年二人が一つ屋根の下で過ごすBL(ボーイズラブ)」という
まだ小学生には早すぎる妄想が思い浮かんだり浮かばなかったり……。

うさぎ「ちょっとぉーちびうさ! 今アンタ頭の中で変な妄想したでしょ!?」
ちびうさ「…し、してないわよ(///)」
うさぎ「光平くんにはね、優香さんっていう立派なガールフレンドがいるんだからね!」
ちびうさ「そ、そんなことわかってるったら…(汗」

そんな会話を交わすうさぎとちびうさの二人を、じっと不安げに見つめている優香。

優香「………(つい成り行きで一緒に連れて来ちゃったけど、
 本当は何が目的で来たのかしら? もしかしてシグフェルの正体を
 探ろうとして光平くんに近づいた??)」

月野うさぎがセーラームーンである事を、この前偶然にも知ってしまった優香は、
どうしても疑心暗鬼を拭い去れないでいた。

うさぎ「それじゃあそろそろお暇します」
光平「またいつでも来てくれよ。そのうち月野さんの彼氏の事についても
 聞かせてほしいな」
うさぎ「もうっ! 光平くんったら!(///)」
ちびうさ「どーもお邪魔しました」
優香「じゃあ光平くん、私も帰るから」
光平「ああ、おばさんによろしくなっ」

こうして朝倉家を後にする優香、うさぎ、ちびうさの3人。

うさぎ「あたし、正直優香さんがうらやましいな」
優香「えっ…?」
うさぎ「あたしの彼氏ね、まもちゃんって言うんだけど、
 今は大事な用事があって離れて暮らしてるの。
 でも優香さんはいつも近くに光平くんがいるんだから」
優香「うさぎちゃん…」
うさぎ「光平くんと何があったかは知らないけど、
 ちゃんと仲良くしなきゃダメだよ♪」

タダの明るい娘だと思っていた月野うさぎも、
優香の様子を見て大体の事情は察していたようだ。
こんな裏表のない優しい心の持ち主が、策術を用いて
何らかの別の意図を持って光平に近づくなどありえない。
自分は何を勝手に疑心暗鬼に陥っていたのだろうと
心の中で悔いる優香であった。

うさぎ「じゃあ優香さん、わたしたちはここで」
ちびうさ「バイバ~イ!」

優香「うん、また今度ね♪」

この日はこうして優香とうさぎ&ちびうさは別れたのであったが……。

1667

優香と帰り際で別れてから数分後の出来事である…。

うさぎ「ハックション!!」

突然、鼻に何か引っ掛かったような感触に襲われた
うさぎが盛大にくしゃみをした。

ちびうさ「どーしたの?うさぎ。風邪?」
うさぎ「あれっ、これ何だろ?」

うさぎの鼻や髪の毛の一部に、
幾つか羽毛のようなものが付着していたのだった。
よくよく調べてみると、それはちびうさも同様であったのだ。

ちびうさ「アレレ…いつの間に…??」
うさぎ「………」

うさぎがその羽毛の一片を手にとってじーっと見つめていると、
突然その羽毛は異常な高音を発して燃え、一瞬で蒸発してしまった。
この前にコルベット准将の部隊の攻撃から逃れて帰って来た時に
変身解除の瞬間に舞い散ったシグフェルの羽の数片がリビングにも紛れ込み、
朝倉家を来訪した時にうさぎとちびうさにもくっついたのだ。

うさぎ「あちちちち!!!」
ちびうさ「な、なんなのこれ!?」


***日本海溝・ブレイバーベース***

不審に思ったうさぎとちびうさの手によって、
直ちに残った羽毛全てはブレイバーベース科学スタッフの
鑑識に回された。そして数日後……。

ギルモア「分析の結果、とんでもないことが分かったんじゃ」

ギルモア博士の話によると、おそらく朝倉家を訪問した際に
付着したと思われるこの羽毛のような物は、地球上に存在する
どの鳥類にも該当する物はないという。

うさぎ「つまりそれって……あの日光平くん家では、
 夕御飯に宇宙から通販で取り寄せた焼き鳥を食べてたのよ!」

うさぎのボケに盛大にズッコける周囲一同。

レイ「そんなわけないでしょーが!!(汗」
まこと「ズバリ! 光平くんの正体はシグフェル!!」
うさぎ「ははは…そんなまっさかあ~!!」

1668

***豊洲地区住宅街・朝倉家近く***

うさぎ「………」

シグフェルの正体は牧村光平――ブレイバーズ司令部の出した推論を
一度は笑い飛ばして相手にしなかった月野うさぎではあったが、
やはり内心は心配らしく、つい朝倉家の様子を見に来てしまった。

ルナ「うさぎちゃん、気持ちは分かるけど…」
うさぎ「でもでも…あたしにはどうしても信じられない。
 あの光平くんがシグフェルだなんて!」

そこへいつもの軍服とは違うスーツ姿の剣持保が現れた。

剣持「やあうさぎ君じゃないか。こんなところで奇遇だな」
うさぎ「剣持さん…」

剣持はそっとさりげなくうさぎに接近し、
周囲に聞こえないように小声で囁く。

剣持「つけられているぞ…!」
うさぎ「――!?」
剣持「振り向くな!」
うさぎ「………」
剣持「なぜまたここへ来た? 不用意すぎるぞ。
 我々ブレイバーズの関係者には、常にコルベット准将の
 息のかかった連中の尾行がついている事を忘れるな」
うさぎ「ごめんなさい……」

何事もなかったかのように装い、剣持とうさぎとルナは
いったんその場から離れるのであった。しかし……。


***下田・地球連邦軍第13格納庫***

部下「これが剣持と月野うさぎが監視していた住宅です」
コルベット「ほほぅ~これはこれは!」

牧村光平の暮らす朝倉家の外観がバッチリと収められた
写真数枚を確認するコルベット准将。

コルベット「直ちにこの住居に住んでいる住人の素性を確認しろ。
 ブレイバーズに先を越されるなよ」
部下「畏まりました」

いよいよ目的の獲物が近くなってきた事を確信するコルベット准将。
もうすでにシグフェルを捕えた気になり、笑いを堪える事が出来ない。

コルベット「待っていろシグフェル、もうお前はワシからは逃れられん。
 フハハハハハハハ!!!!!!!!!!」

1669

○天宮勇介→入院中の毒島嵐を見舞う。
○大原丈→入院中の毒島嵐を見舞う。
○岬めぐみ→入院中の毒島嵐を見舞う。
○毒島嵐→天宮勇介から、シグフェルと一緒にいた謎の少年(朝倉慎哉)の似顔絵作成への協力を依頼される。
○月野うさぎ→沢渡家を訪ねようとして豊洲で道に迷う。その後成り行きで沢渡優香と一緒に朝倉家を訪問。
○ちびうさ→沢渡家を訪ねようとして豊洲で道に迷う。その後成り行きで沢渡優香と一緒に朝倉家を訪問。
○ルナ→牧村光平の事が心配になり朝倉家の様子を見に来た月野うさぎに付き添う。
○火野レイ→朝倉家で月野うさぎとちびうさに付着した未知の羽毛から、シグフェルの正体は牧村光平との推論に至る。
○木野まこと→朝倉家で月野うさぎとちびうさに付着した未知の羽毛から、シグフェルの正体は牧村光平との推論に至る。
○アイザック・ギルモア→朝倉家で月野うさぎとちびうさに付着した未知の羽毛を分析。シグフェルの正体は牧村光平との推論に至る。
○剣持保→心配で朝倉家の様子を見に来た月野うさぎを注意して、一緒に現場から去る。
●ムッシュJ→バルボレラフーズの貯蔵確保作戦がうまく行かず、焦っている。
●ゾドー →ムッシュJ(ジスプ)に従っている。
●リーガ→ムッシュJ(ジスプ)に従っている。
●コルベット准将→月野うさぎに尾行を付け、ついに朝倉家を嗅ぎつける。

○牧村光平→沢渡優香に連れられて朝倉家にやって来た、月野うさぎやちびうさと会う。
○朝倉慎哉→沢渡優香に連れられて朝倉家にやって来た、月野うさぎやちびうさと会う。
○沢渡優香→偶然の成り行きで月野うさぎとちびうさを朝倉家に案内する。
○沢渡奈津子→娘の優香に、作り過ぎた煮物を朝倉家まで届けるように言う。
○くらのすけ→初めて見る月野うさぎとちびうさに対して激しく吠えたてる。

【今回の新規登場】
●ムッシュJ=ジスプ(ブルースワット)
 スペースマフィアの地球遠征軍司令官。当初はザジにインヴェードして破壊活動を行っていたが、
 後に彼をブルースワットに奪還されてからは別の人間にインヴェードして「ムッシュj」を名乗った
 (ムッシュJの素体となった男性の素性と本名は、最後まで明らかにされなかった)。
 一度ブルースワットに敗れた後、改造手術によってパワーアップし怪物のような姿となり、
 それを期にクイーンに対する野心を抱き始めることとなる。終盤ではクーデターを起こし、
 自ら「キングジスプ」を名乗りエイリアンの頂点に立ったが、最終的にはブルースワットの猛攻を受けて戦死した。
 彼が支配者の立場に異常にこだわるのは、故郷の星で彼が支配され、搾取される身分だったことに一因があるらしい。

●ゾドー(ブルースワット)
 ジスプ直属の部下である幹部エイリアン。巨大な水晶の剣を武器とする。
 インヴェードした人間は黒いコートを着た大男。

●リーガ(ブルースワット)
 ジスプ直属の部下である幹部エイリアン。ムチを武器とする。インヴェード体は白いコート姿。

○沢渡奈津子(闘争の系統オリジナル)
 沢渡優香の母。警視庁科学捜査研究所・メガロシティ署分室の主任。
 メガロシティの警視庁官舎で娘と二人きりで暮らしている。実は隠れヒーローオタク。

○くらのすけ(闘争の系統オリジナル)
 朝倉慎哉が飼っている愛犬。犬種はシベリアン・ハスキー。性別はオス。


『包帯男のシグフェルリポート』-4

作者・ホウタイ怪人

1670

早朝……。

***日本海溝・ブレイバーベース***

正夫「間違いない。うさぎちゃんたちの言っていた
 牧村光平君の住んでいる家の同居人・朝倉慎哉君だ」

八神冴子や毒島嵐に協力してもらって作成した似顔絵を確認する、
伝正夫らバトルフィーバー隊の面々。

京介「これで決まりだな」
四郎「時間がない。急ごうぜ!」

ついにシグフェルが牧村光平であるとの確証を掴んだバトルフィーバー隊は
直ちに朝倉家へと向かって急行した。


***春海橋公園***

一方その頃、、朝倉慎哉は愛犬くらのすけを連れて
江東区豊洲から中央区晴海に跨る春海橋公園の辺りで日課の散歩していた。

くらのすけ「わんわんわんわん!!!!!!」
慎哉「あれは…?」

慎哉とくらのすけの目の前を、一台の救急車が通り過ぎて行った。
慎哉にはその救急車に確かな見覚えがあった。この前、光平と一緒に
買い物に出かけたスーパー近くで目撃した偽の救急車だ。

不審に思った慎哉は、無意識のうちに
なんとなくその偽救急車の後をつけていた。
やがてその偽救急車は、もうとっくの昔に廃業・閉鎖している筈の
廃病院の敷地の中へと消えたのである。

慎哉「ここは…」

慎哉はどうしようか迷った。あの時の光平の説明では、
何か得体のしれない怪物が救急隊員に化けて
人々を連れ去り何かを企んでいるらしかった。

このまま知らないフリをして立ち去るべきか…。

しかしその結果、光平は「目の前で被害者を見捨ててしまった」と苦悩する
羽目に陥ったのである。もう彼にそんな思いはさせたくない。

慎哉「くらのすけ、ちょっとここで待ってろ」
くらのすけ「…わん?」

慎哉はくらのすけの首輪の紐を近くの電柱に括りつけると、
単身、真相を確かめるために廃病院の中へと
無謀にも足を踏み入れたのだった。

慎哉「もう光平の手を煩わせるまでもない!
 俺の手で確かめて来てやる…!」

暗く気味の悪い建物の地下を一人彷徨う慎哉。
そして彼は、明かりがさしている一部屋を見つけた。
そーっと中の様子を覗き込む。

1671

そこで慎哉が見た物は、拉致されて来たと思われる多数の人間が、
透明カプセルのような台の中で眠らされ、菌のような物を
培養されているという衝撃的な光景だった。

白いコートの男「小僧、そこで何をしている!?」
慎哉「――しまった!!」

慎哉はコートを着た二人組の男に見つかり、捕えられてしまった。

慎哉「何すんだ!? 放せ! 放せよっ!!」
J「何事だ騒々しい?」
白いコートの男「ジスプ様、侵入者です」
黒いコートの男「おい小僧、いったいどこから入り込んだ!」
慎哉「お前たちこそ、こんな場所でいったい何をしているんだ!?」
J「それを貴様が知る必要はない。小僧、可哀想だがこの場所を見られてしまったからには
 生かしてここから帰す訳にはいかんぞ。ちょうどいい、この小僧にもバルボレラ菌を
 移植してしまえ!」

ボスらしき男の命令で、白いコートの男が注射器を持って来る。
きっとここに監禁されて冬眠させられている人たちも、この注射をされたに違いない。
黒いコートの男にがっちりと取り押さえられて身動きが取れない慎哉の首筋に
注射器の針が迫る!

慎哉「…や、やめろおおおおッッ!!!!!!!」

恐怖で絶叫する慎哉だったが、針が彼の首筋の肌に触れる寸前、
どこからか飛んできた短剣が、白いコートの男の手にある注射器を弾き飛ばした。

慎哉「……!?」
白いコートの男「ぐわっ!?」
J「何者だ!?」

短剣が飛んできた方向へと振り返るムッシュJたち。
そこには女幹部サロメや大勢のカットマンたちを率いる
黒ずくめ姿の包帯男=エゴスのホウタイ怪人が立っていたのである。

ホウタイ怪人「スペースマフィアの方々、その小僧の始末、今しばらくお待ち願いたい!」
黒いコートの男「秘密結社エゴスがここに何の用だ!?
 今この場を受け持っているのは我々スペースマフィアだ!」
サロメ「それは百も承知の上」
ホウタイ怪人「この小僧、我らが至高邪神より直々に内命を受けて追っている
 シグフェルと関わりのある人間だと思われる」
J「なんだと!? それは本当か!?」
慎哉「――!!」

ムッシュJたちは、意外な展開に一斉に色めき立つ。
そして慎哉もホウタイ怪人の言葉に激しく動揺していた。
まさかGショッカーがもうそこまで突き止めていたなんて…。

白いコートの男「なるほど、それでこの小僧を囮にして
 シグフェルをおびき出そうという訳か」
ホウタイ怪人「いかにも。もしシグフェル捕獲に成功した暁には、
 ご協力頂いた貴殿たちに対する至高邪神のお覚えも
 まためでたかろう」
J「ゾドー、リーガ、どうやらこの俺にも、
 ようやく運が向いて来たぞ! フフフッ…」
黒いコートの男「仰るとおりです!」

願ってもなかった思わぬチャンス到来に、歓喜に震えるムッシュJ。

慎哉「…知らない! 俺はシグフェルなんて知らない!!」

慎哉は必死にシグフェルとの関係を否定するが、今となってはもはや後の祭りだ。

サロメ「大人しくおし小僧、大事な獲物が罠にかかる前に、
 餌に騒がれては困るからね…」
慎哉「……んんぐぐっ!?」

サロメは慎哉を黙らせるため、彼の口に手拭いを結んで瘤を作った猿轡を嵌めてしまう。
自分の勇み足がかえって光平の身に危機を招く結果になってしまった慎哉は、
薄れゆく意識の中で深く後悔しているのだった。

慎哉「……(……ごめん…ごめんな、光平)」

1672

***江東区豊洲・朝倉家***

光平「慎哉のやつ、くらのすけともう散歩に出かけたのか…」

慎哉から遅れて起床した光平は、家の中に慎哉とくらのすけの姿がないことに気づく。
洗面所で顔を洗い、パジャマから私服に着替えた光平は、
朝食前に外の空気を吸って深呼吸しようと玄関を出ると、
玄関前の道路には沢渡優香が立っていた。

優香「光平くん、おはよう…」
光平「優香!? お、おはよう…。
 どうしたんだよ、こんなに朝早くから」

優香の話によると、朝からなんとなく胸騒ぎがして
朝倉家まで駆けつけて来たのだと言う。

…するとそこへ、くらのすけが一匹だけで
光平と優香の元へと走って来た。
犬特有の"第六感"で主人の危機を察したのか、
なんと自力で電柱に巻き付けられた紐を解いて、
自分だけ朝倉家へと戻って来たのだ。

光平「くらのすけ!? 慎哉はどうしたんだ!?
 一緒じゃないのか!?」
優香「朝倉くんの身に何かあったの!?」
くらのすけ「ワンワンワンワンワンワン!!!!!」

くらのすけは必死に吠えるばかりである。

光平「よしっ! くらのすけ、案内するんだ!」
くらのすけ「わんっ!!」

どこかへ走り出したくらのすけの後を
光平と優香は追いかけた。


***廃病院の敷地前***

くらのすけの案内で、慎哉が中に消えて行った廃病院の建物前まで
辿り着いた光平と優香の二人。

光平「ここに慎哉が一人で…」
くらのすけ「わんっ!」
優香「朝倉くん、なんて無茶な事を…」
光平「優香、くらのすけを頼む」
優香「どうするつもりなの?」
光平「中に潜り込んでみる。もし俺が30分経っても戻って来なかったら、
 その時は警察に連絡してくれ」
優香「…わかったわ。気をつけて」

くらのすけを優香に任せると、光平は廃病院の中へと入り、
その地下深くへと踏み込んだのだった。

1673

広くて暗い廃病院の地下を探りながら歩く光平。
やがて薄明るい機械室のような配管の多く並んだ空間へと辿り着いた。

光平「――慎哉ッ!?」

慎哉「……んんっ」

光平は、一番奥の配管に縄で手足を縛られて
括りつけられている慎哉の姿を見つける。
慎哉の口には、白い手拭いの猿轡が嵌められていた。

光平「慎哉、待ってろ! 今助ける!!」

慎哉「んんーっ!! んんんーっ!!……(やめろ光平! 来るなあっ!)」

慎哉に近づこうとした光平だったが、その時突然、遥か頭上から大きな網が降って来て、
光平の身体を絡め取ってしまった。光平は全く身動きがとれなくなってしまう。

光平「なんだこれは!?」

光平の身体に絡みついた網に、高圧の電気が流れた。

光平「――ぐあああああっっっっっ!!!!!!」

しばらくして網に流れる電流は止まった。

光平「…ハァ…ハァ!」

光平の額から、汗が幾つもしたたり落ちる…。
気がつくと彼の周囲は、エゴスの戦闘兵士カットマンや
スペースマフィアのエイリアンたちによって完全に
取り囲まれているのだった。

ホウタイ怪人「うわはははは!! 待っていたぞ、シグフェルこと牧村光平!!
 こちらはお前が現れるのを今か今かと待ちかねていたのだ!」
光平「…シグフェル? 何の事だ!」
サロメ「とぼけるのもいい加減およし。今お前を捕えている網に流れたのは、
 普通の人間ならとっくに黒焦げになっているレベルの高圧電流よ。
 それを受けて平然としていられるのは、お前が普通の人間でない何よりの証」
光平「………」

◇   ◇   ◇

その頃、廃病院の近くでは、偶然にもブルースワットのシグと
バトルフィーバー隊が合流していた。

シグ「バトルフィーバー隊の皆さん!? どうしてここに?」
正夫「ブルースワットのシグさんじゃないか!?」

双方はお互いに事情を説明する。シグはスペースマフィアの
バルボレラフーズ製造計画を追跡していたが、バトルフィーバー隊も
シグフェルを追って同じ目的地の廃病院へと急行しているのだった。

最初は朝倉家を訪れたバトルフィーバー隊だったのだが、一足違いで留守であり、
近所の目撃者の話で、光平が女の子と犬を連れて廃病院へ向かったとの
情報を得ていたのだ。

シグ「それにしても驚きました。まさかあのシグフェルも
 我々が目星をつけていた例の廃病院に今いるかもしれないとは…」
正夫「どうやら我々の目的は一つに繋がりそうだ」

1674

***廃病院の敷地前***

優香「………」
くらのすけ「………」

光平が廃病院の中に入ってから、そろそろ30分が経過しようとしている。
言われた通り警察に通報すべきなのか…。しかしもし下手に騒ぎが大きくなれば、
シグフェルの正体が光平だと今度こそ発覚してしまうかもしれない。
優香にはどうしていいか分からなかった。

うさぎ「優香さん!」
優香「うさぎちゃん!?」

バトルフィーバー隊から急遽連絡を受けた月野うさぎたち5人も
現場近くまで駆けつけて来ていた。

レイ「貴女は確かちびうさちゃんの退院見舞いに行った時に
 病院で会った……」

火野レイや水野亜美も、沢渡優香と初めて
顔を合わせた日の事を思い出す。

美奈子「優香さん、どうしてここにいるの?」
まこと「光平くんたちがこの建物の中にいるんだね?」
優香「うさぎちゃん…皆さん…あたし…あたしッ…!!」
亜美「落ち着いて!」

決断の時が来た。もうこの場は彼女たちを信頼して任せるしかない。
優香は決意して口を開いた。

優香「お願いセーラームーン! 光平くんたちを助けてっ!!」
うさぎ「優香さん…!?」

驚いたうさぎだったが、すぐに優香の胸を優しく受け止め、
それ以上は何も追及しなかった。

美奈子「私たちが変身するところを見てたのね…」
うさぎ「任せて! あとは私たちが何とかするから!
 ――行くわよみんな!!」
亜美たち4人「「「「――OK!!」」」」

うさぎ「ムーン・ゴズミックパワー・メイクアップ!!」

変身完了したセーラー戦士たちは、優香とくらのすけが見守る中、
廃病院の中へと突入する。果たして光平たちの運命は!?
ついにシグフェルの正体が周囲に明らかにされるのであろうか!!

1675

○伝正夫→朝倉家に急行するが、一足違いで留守。その後シグと合流して廃病院へと向かう。
○志田京介→朝倉家に急行するが、一足違いで留守。その後シグと合流して廃病院へと向かう。
○曙四郎→朝倉家に急行するが、一足違いで留守。その後シグと合流して廃病院へと向かう。
○シグ→バトルフィーバー隊と合流して、廃病院へと向かう。
○月野うさぎ→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
○水野亜美→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
○火野レイ→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
○木野まこと→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
○愛野美奈子→沢渡優香から牧村光平と朝倉慎哉の救出を託され、変身して一足先に廃病院の中へ突入。
●ムッシュJ→朝倉慎哉を捕える。ホウタイ怪人に協力する。
●ゾドー →朝倉慎哉を捕える。ホウタイ怪人に協力する。
●リーガ→朝倉慎哉を捕える。ホウタイ怪人に協力する。
●サロメ→朝倉慎哉を餌にしてシグフェルをおびき出そうとする。
●ホウタイ怪人→朝倉慎哉を餌にしてシグフェルをおびき出そうとする。

○牧村光平→捕われた朝倉慎哉を救うため廃病院の内部に潜入し、自分も捕まってしまう。
○朝倉慎哉→スペースマフィアの偽救急車を追跡し、勇み足で逆に捕まってしまう。
○沢渡優香→セーラームーンに牧村光平と朝倉慎哉の救出を託す。
○くらのすけ→主人である朝倉慎哉の危機を、牧村光平と沢渡優香に伝える。


『包帯男のシグフェルリポート』-4

作者・ホウタイ怪人

1676

今から12年前――

いじめっ子A「や~い!みどりおばけみどりおばけ~!」
いじめっ子B「お前なんかあっちいけ~!」

幼い光平「…どうして、どうしてみんなボクにいじわるするの?」

いじめっ子A「だっておまえだけ、みんなとちがって目の色がみどりじゃんか!」
いじめっ子B「気持ちわりぃの!」

牧村光平――この時はまだ幼稚園に通う5歳。

日本人男性とアルジェリア人女性の間に生まれた
混血児である光平の瞳は翠色の虹彩をしており、
日本人の大半がブラウンに属す瞳の色とは
明らかに異なっていた。
その事で光平は、幼い時期から辛い経験をする事が
少なくなかったのである…。

幼い慎哉「こら~! おまえら~!」

いじめっ子A「やべえ! 慎哉のやつだ!」
いじめっ子B「逃げろ~!」

いじめっ子たちを追い払う慎哉。
父親同士の仕事関係の付き合いで、小さい時から幼馴染であった慎哉は、
こうしてよく光平をいじめっ子たちから庇っていたのだった。

幼い光平「…う…ううっ!!」
幼い慎哉「泣くな光平! あんなやつら、いつでもおれが
 追っ払ってやるからな!」
幼い光平「慎哉くん……」
幼い慎哉「おれたちふたりはともだちだ!」
幼い光平「…とも…だち?」
幼い慎哉「おれはいつでもぜったいおまえの味方だからな!
 だから安心しろ!」
幼い光平「ありがとう…」

慎哉の優しい言葉で、ホッと可愛らしい笑顔がこぼれる光平。
こうして光平と慎哉の間には長い年月を掛けて
堅い友情が結ばれて行ったのだった。
そして、それから12年後の現在――。


***廃病院の地下***

光平「………」

牧村光平は、捕われた朝倉慎哉を救おうとして逆に罠に嵌まり、
自身も特殊電磁ネット(網)の中に拘束されてしまっていた。

ホウタイ怪人「…牧村光平、17歳。都内の海防大学付属高校に通う高校二年生。
 そして日本政府がその存在をひた隠しにしていた、中東の石油王一族の隠し子」
サロメ「道理で今までGショッカーの諜報網が総力を挙げても、
 なかなかシグフェルの正体が掴めなかったはずだわ」

悪の組織Gショッカーの面々が、網の絡み取られ身動きの取れない光平を
取り囲む中、配管室の奥の方で縛られている慎哉は、口にも猿轡を嵌められたまま
無念そうにその様子をじっと見つめている。

慎哉「………」

幼い頃に親友の光平を守ると誓った筈なのに、自分の勇み足が原因で
その光平を今、窮地に立たせてしまっている。その事が悔しくてならなかった。

1677

ホウタイ怪人「牧村光平、我らGショッカーの仲間になれ!」
サロメ「そうすれば我々の偉大な科学力を持って
 シグフェルに従来の2倍のパワーを与えてやろうではないか」
光平「いやだ! 俺はそんな物に興味なんかない!」
ホウタイ怪人「いいかシグフェル、お前は改造神(ゴッドサイボーグ)なのだ!」
光平「改造神(ゴッドサイボーグ)…?」

自分を言葉巧みに懐柔しようとするホウタイ怪人の口から語られた
「改造神(ゴッドサイボーグ)」という初めて聞く言葉に、
一瞬光平は関心を魅かれる。

光平「お前たちは、俺の今の身体について何か知っているのか!?」
ホウタイ怪人「Gショッカーの頂点に立たれる表裏六柱の至高邪神様は
 何もかも見通されておられる。お前は"神を改造する技術"を施された、
 おそらく宇宙創世の有史以来初めての例となる人間!」
サロメ「普通の人間が改造神(ゴッドサイボーグ)となるための手術に
 肉体が耐えられる筈がないわ。つまりそれだけお前は貴重で稀有な存在なのよ」
ホウタイ怪人「どういう経緯でお前が今の力を手に入れたのかまでは知らんが、
 もうお前は人間ではないのだ。人間どもに義理立てする必要もなかろう」
光平「――!!」

「お前は人間ではない」というホウタイ怪人の言葉に、
光平は激しく拒否反応を示す。

光平「違う! 俺は今だって人間だ!
 誰がお前たちの仲間になんかなるもんか!」
ムッシュJ「…なら仕方がない。お前が"うん"と言うまで、
 お前のお友達に少し痛い目に遭ってもらう必要がありそうだな」

ムッシュJは黒いコートの男(ゾドー)と白いコートの男(リーガ)に
慎哉を痛めつけるよう命令する。二人の剣と鞭が慎哉の身に迫る。

慎哉「……んんっ!?」
光平「やめろぉー! 慎哉に手を出すなぁ!
 責めるなら俺をやれーッ!!」

その時――。

???「――ムーン・ティアラ・アクショーンッッ!!!」

どこからか飛んできた円盤状となった光のリングが、
黒いコートの男(ゾドー)と白いコートの男(リーガ)を吹き飛ばし、
同時に光平を捕えている網と慎哉を縛っているロープを切り裂いた。

慎哉「…な、なんだ!?」
光平「これは…!?」

ホウタイ怪人「何者だ!?」

1678

セーラームーン「そこまでよGショッカー!」

Gショッカーの前に立ち塞がり、光平と慎哉を保護したのは
カラフルなセーラー服ミスチュームに身を包んだ5人の美少女戦士!

セーラーマーズ「ここから先はあたしたちが相手よ!」
セーラーマーキュリー「光平くん、慎哉くん、ここは私たちに任せて早く行って!
 地上で優香さんが待ってるわ!」
慎哉「どうしてセーラー戦士が俺たちや沢渡のことを?」
光平「………」

光平は、自分たちを助けてくれたセーラームーンに
月野うさぎの顔を重ね合わせていた。

光平「やはり彼女が…!」

この前に会ったうさぎが黒猫(ルナ)と話しているのを
見た時から怪しいとは思っていたが、
この時初めて、牧村光平は月野うさぎこそが
愛と正義のセーラー服美少女戦士たちのリーダー、
セーラームーンであることを確信したのだった。

セーラージュピター「さあ早く!」
セーラーヴィーナス「ここは危ないわ!」
光平「…わかった! ありがとう!
 行こう慎哉!!」
慎哉「あ、ああ…」

ムッシュJ「待て! 逃げられると思っているのか!」

ムッシュJたちの周囲から膨大なエネルギーが放出され、
周辺にいる光平たちの皮膚が強い風圧を浴びたように振動する。

光平「うわっ…!?」
慎哉「な、なんだ…!?」

地面に倒れたムッシュJと二人のコートの男から
ジェル状になって3体の怪物が姿を現す。

ジスプ「………」
ゾドー「………」
リーガ「………」

慎哉「…ば、化け物!?」
光平「くっ…!」

ジスプは無言のまま両掌から火球を生み出し、
それが火柱となって光平たちを襲う。
しかしヘルメットと胸部プロテクターで武装した
一人の男が盾となって光平たち二人を庇う。

シグ「ぐっ…!」
光平「あなたは!?」
シグ「ここは私に任せて早く!」
光平「は、はい…!」

自分たちを助けてくれた目の前の装甲服の男の声に
どこかで聞き覚えを感じていた光平だったが、
今はひとまずその男の指示に従いこの場から離れる。

ジスプ「久しぶりだなブルースワット!
 他の二人はどうした?」

シグの仲間だった鳴海 翔(ショウ)と美杉 沙羅(サラ)の二人は、
今はゴールドプラチナムの意思を引き継いで各次元の平和を守る旅に出ており、
地球を離れている。

シグ「ジスプ、お前などこの私一人で充分!」
ジスプ「抜かしたな! 目に物見せてくれる!」

1679

必死に地上を目指す光平と慎哉だったが、
まだ地下からの出口は遠く、行く手には先回りした
ホウタイ怪人とサロメ、それに大勢の兵士カットマンたちが
道を塞いでいて先に進めない。

光平「くっ…!」
慎哉「どうするんだ光平!?」

ホウタイ怪人「くくくっ…逃がさんぞ。やれっ!」
サロメ「ハハッ」

???「待てーっ!!」

光平たちとホウタイ怪人たちの間に割って入る、
4人の男と1人の女性で構成された5人。
その中の一人――曙四郎の顔を見て驚く光平と慎哉。

光平「…あれっ? 大五郎さん!?」
慎哉「どうしてこんなところに!?」
四郎「…違う違う! 俺は曙四郎!
 青梅大五郎とは知り合いだ!」

曙四郎は、光平たちの指摘を慌てて否定。

光平「えっ…!? 大五郎さんの…知り合い?」
慎哉「双子の間違いじゃないのか…??」
マリア「はじめまして牧村光平くん」
京介「いきなり色男が4人も目の前に揃って
 びっくりしたろ?」
光平「いったいあなた方は?」
誠「もうそろそろ、お互いに隠し事は無用にしないか?」
正夫「今こそ我々のもう一つの顔をお見せしよう!
 ――フィーバー!!」

伝正夫たちが掛け声と共にくるりっと一回転すると、
世界各国の国旗をモチーフとした強化服の戦士たちが
その勇姿を敢然と現した。

バトルジャパン「我々はバトルフィーバー隊!」
光平「じゃああなた方もブレイバーズの?」
バトルコサック「ここは我々に任せて早く行きたまえ!」
慎哉「光平、ここはこの人たちの言うとおりにして早く!」
光平「…いや、もういいんだ慎哉」
慎哉「光平…?」
ミスアメリカ「光平くん…?」
光平「もう俺は逃げるのはやめた!」

光平は意を決して自ら前に進み出て、
翔着のポーズを取る。

光平「――翔着(シグ・トランス)!!」

1680

牧村光平は、その身を灼熱の神の炎に我が身を包み込む事によって、
異形の生命体シグフェルへと化身する事ができるのだ。

シグフェル「………」

背に生えた二枚の大きな翼をはためかせる
シグフェルの様子を呆然と見ている慎哉。
ついに光平は、その正体を他者に公然と明かしたのだった。

慎哉「光平……」
バトルジャパン「シグフェル、君の変身、確かに見届けたぞ!」
シグフェル「………」

自分の立てた仮説の正しさが証明され、狂喜するホウタイ怪人。

ホウタイ怪人「とうとう変身を見せたなシグフェル!
 貴様はもう後戻りは出来んぞ!」
シグフェル「…だとしてもいい。たとえ周りからどう思われようとも、
 俺は友を、家族を守るだけだ!!」
ホウタイ怪人「家族ぅ~? バカを言うな。
 お前は天涯孤独の身の上の筈だぞ!」
慎哉「………」

慎哉は思った。シグフェル――光平の言う「友と家族」とは、
きっと自分と沢渡優香の事なのだと…。

バトルケニア「シグフェルに手出しはさせん!」
バトルフランス「俺たちが相手だホウタイ怪人!」
サロメ「かかれ~!!」

シグフェル、バトルフィーバー隊とエゴスが
戦闘状態へと突入する。万能棒コマンドバットを奮って
次々とカットマンを倒していくバトルフィーバー。
一方のシグフェルは、ホウタイ怪人と一対一で対決。
自慢の十字剣で、シグフェルに容赦なく斬りかかるホウタイ怪人。

シグフェル「くっ…フレイムアーム!!」
ホウタイ怪人「ぐわあああっ!!」

シグフェルの炎の手刀がホウタイ怪人に深手を負わせた。

ホウタイ怪人「うぬぬ~おのれぇ!! 弟よ~!!」

ホウタイ怪人は声高く叫び、弟の悪魔ロボットを呼び寄せる。

◇   ◇   ◇

地割れ、地響きと共にその巨体を露わにした、
兄と同じ姿をしたホウタイロボットは、
大きな足音と共に地上で破壊活動を引き起こす。

優香「な、なんなのアレ…!?」(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

地上で光平たちの無事な帰りを一人で待っていた沢渡優香は、
突然現れた巨大なホウタイロボットの姿に驚愕する。

ホウタイロボット「………」

1681

ホウタイロボットの出現によって、廃病院の地下施設も
徐々に震動で崩落を始める。

バトルジャパン「シグフェル、ここは我々に任せて早く地上へ!
 優香ちゃんが待っている!」
シグフェル「ありがとう! 行こう慎哉!」
慎哉「ああ!」

シグフェルは慎哉を連れて一足先に地上へと脱出する。

バトルジャパン「スクラムだ!」
他4人「「「「――おう!!」」」」

バトルジャパンの号令の下、5人が整列して
それぞれのコマンドバットを天空へと投げる。

バトルフィーバー全員で「「「「「――ペンタフォース!!」」」」」

空中で合体したコマンドバットは大型ブーメランとなって
ホウタイ怪人に炸裂するのであった。

ホウタイ怪人「ぐぎゃああ~!! 弟よ、兄の仇を取ってくれぇ~!!」

ペンタフォースを食らったホウタイ怪人は、
弟のホウタイロボットに自分の仇討を託し、
爆発・消滅してしまった。

サロメ「神子~!」
リーガ「ジスプ様、この場はひとまず!」
ジスプ「なぜこうなるのだ~!?」

崩壊を始めた地下現場から逃げ出すサロメとジスプたち。

◇   ◇   ◇

シグフェル「優香ぁ!!」
優香「光平くん!!」

地上で待っていた優香と合流するシグフェルと慎哉。
すでに辺り一帯はホウタイロボットの出現によって混乱の様相を呈している。
しかもその混乱に乗じて、シグフェル、慎哉、優香の3人にを
あっという間に銃口を向けて取り囲む軍の特殊部隊らしき一団の姿が…。

連邦軍兵士A「動くな!!」

シグフェル「――!?」
慎哉「なっ…!?」
優香「えっ…!?」

1682

同じく廃病院地下施設の崩落から逃れて
地上へと出るバトルフィーバー隊、セーラー戦士、シグ。

バトルケニア「また出やがった!」
セーラームーン「あわわわ…こっち来る~!?」(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
バトルジャパン「バトルシャーク発進願います!」

日本海溝の海底深くでブレイバーベースとドッキングしている
秘密基地ビッグベイザーから万能戦艦バトルシャークが発進する。
現場上空に到着したバトルシャークの艦体が二つに分離し、
中から鎧兜を身に付けた武将をモチーフにした
巨大なバトルフィーバーロボが地上に降り立つ。

バトルジャパン「ホウタイロボットの瞬間移動能力に気をつけるんだ!」

バトルフィーバーロボに搭乗した5人のバトルフィーバー隊は、
早速ホウタイロボットに向かって攻撃を仕掛けるが、案の定
ホウタイロボットは以前に戦った時と同じく、瞬間移動能力を駆使して
バトルフィーバーロボを翻弄する。

ホウタイロボット「………」

その様子を地上で見守るセーラー戦士たちとシグ。

セーラーヴィーナス「あ~もう何やってるのよバトルフィーバーロボ!」
シグ「セイジ、聞こえますか?」
セイジ@通信「感度良好! 聞こえるよシグ」
シグ「すぐに敵の巨大ロボットの出現予想位置を割り出して、
 そのデータをバトルフィーバーロボに送信してください!」
セイジ@通信「OK!」

シグは会社の通信指令センターで待機していたセイジに連絡を取り、
瞬間移動を繰り返すホウタイロボットの出現位置を割り出させた。
その分析データは、直ちにバトルフィーバーロボのコクピットへと転送される。

バトルケニア「どこから出て来るか分かればこっちのもんだ!」
バトルジャパン「クロスフィーバー!!」

バトルフィーバーロボは、両足に備えたソードフィーバーを引き抜き、
クロスさせた後に敵の出現予想位置めがけて投げつける。
そして見事ホウタイロボットに命中して大ダメージを与えた。

ホウタイロボット「――!!」

バトルジャパン「電光剣唐竹割り!!」

バトルフィーバーロボは鞘から電光剣を引き抜き、刀身にゆっくりと
宇宙のエネルギーを集めて一刀の下にホウタイロボットを斬り捨てた。
ホウタイロボットは真っ二つになって爆発四散した。

セーラームーン「やった~♪」

1683

戦いは終わった。月野うさぎ、シグ、伝正夫たちは
先に地上に避難した筈の牧村光平たちの姿を探して
廃病院跡地の周辺を駆け回る。

うさぎ「光平く~ん!」
四郎「お~い、いたら返事をしてくれ~!」

しかしどこを探しても光平たちの姿はなかったのである。

マリア「いったいどこに行ったのかしら?」
京介「まさかまた俺たちから逃げ出したんじゃ…」
うさぎ「まさか! 光平くんはそんな人じゃありません!」
レイ「うさぎ…」

そこへ遅れてレッドマフラーの剣持隊が到着した。

正夫「剣持中佐」
剣持「伝少佐、遅れてすまん。それでシグフェルは?」
誠「それが……」

村中「隊長! こっちに足跡があります!」

村中隊員が3人分の足跡を発見した。
その場に駆け寄り集まる一同。

シグ「間違いありません。光平くんたちの足跡です」
村中「それと隊長、すぐ近くに軍用車両と思しき数台分のタイヤ痕が」
剣持「なにっ…?」

すぐにその不審なタイヤ痕を調べる剣持たち。

村中「もしかしてこれはコルベット准将の部隊のものでは?」
剣持「…拉致されたな」
正夫「しまった!!」
うさぎ「そんな…!!」

愕然とするバトルフィーバー隊や月野うさぎたち。
秘密結社エゴスのホウタイ怪人とホウタイロボットの兄弟に勝利したのも束の間、
牧村光平は一緒にいた朝倉慎哉や沢渡優香共々、コルベット准将配下の特務部隊によって
下田へと連れ去られてしまった。果たして彼らの運命は!?

1684

○月野うさぎ/セーラームーン→牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。
○セーラーマーキュリー →牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。
○火野レイ/セーラーマーズ→牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。
○セーラージュピター →牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。
○セーラーヴィーナス→牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。
○シグ→牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。
○宇佐美星児→ホウタイロボットの出現予想位置を分析して、バトルフィーバーロボにそのデータを送信する。
○伝正夫/バトルジャパン→牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。ホウタイ怪人&弟ロボットを倒す。
○神誠/バトルコサック→牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。ホウタイ怪人&弟ロボットを倒す。
○志田京介/バトルフランス→牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。ホウタイ怪人&弟ロボットを倒す。
○曙四郎/バトルケニア→牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。ホウタイ怪人&弟ロボットを倒す。
○汀マリア/ミスアメリカ→牧村光平と朝倉慎哉を守ってGショッカーと戦闘。ホウタイ怪人&弟ロボットを倒す。
○剣持保→遅れて現場に到着。
○村中隊員→遅れて現場に到着。
●ホウタイ怪人→バトルフィーバー隊と戦い、戦死。
●ホウタイロボット→バトルフィーバーロボと戦い、戦死。
●サロメ→崩落する廃病院地下から脱出。
●ムッシュJ/ジスプ→崩落する廃病院地下から脱出。
●ゾドー →崩落する廃病院地下から脱出。
●リーガ→崩落する廃病院地下から脱出。

○牧村光平/シグフェル→ついにブレイバーズとGショッカーに自らの正体を明かす。
 しかしその直後にコルベット准将の部隊に連れ去られてしまう。
○朝倉慎哉→セーラー戦士、ブルースワット、バトルフィーバー隊によって助けられるが、
 その直後に牧村光平と一緒にコルベット准将の部隊に連れ去られてしまう。
○沢渡優香→牧村光平や朝倉慎哉と一緒にコルベット准将の部隊に連れ去られてしまう。

【今回の新規登場】
●ホウタイロボット(バトルフィーバーJ)
 秘密結社エゴスのホウタイ怪人の弟悪魔ロボット。
 額にエゴスマークがついている以外は、兄とほぼ全く同じ姿。
 瞬間移動能力を駆使して敵を翻弄する。


『光平を救え! 結集せよブレイバーズ戦士たち』-1

作者・ホウタイ怪人

1685

***下田・地球連邦軍第13格納庫***

光平「ぐわああああ!!!!!!!」

大勢の取調官の軍人に取り囲まれている中、
椅子に拘束され、両耳にヘッドホンを取りつけられている光平。
取調官の一人が手に握るスイッチを入れると、
光平は耐えがたい苦しみで絶叫した。

それは超音波による拷問だった…。

取調官A「いい加減この調書にサインしたらどうだ?」
光平「………」

ブレイバーズの助けで地上へと逃れた光平たちだったが、
そこで彼らは待ち伏せしていたコルベット准将配下の特務部隊に
取り囲まれた。シグフェルとなった自分一人だったら
この程度の窮地も難なく切り抜けられただろう。
しかしその時、側には慎哉と優香も一緒にいた。
二人にも銃口を突き付けられては、光平も大人しく従う他はなかったのである。

下田に連行されてからの光平は、慎哉や優香とも引き離され、
一方的に「スパイである事を認めろ!」と言われ続け過酷な拷問を受け続けた。

光平「俺は…スパイなんかじゃない!」
取調官A「はい、ハズレ」
光平「うわああああ!!!!!!」

再度、非情にも取調官は超音波のスイッチを入れる。
悲鳴をあげる光平。もう何時間もこの光景の繰り返しだ。

取調官B「もう一度聞く。お前は地球外の侵略者のスパイだな?」
光平「違う!…何度言ったら!!」
取調官C「そろそろ正解してくれないとさあ、
 次は君の大事なお友達に、代わってクイズに
 答えてもらうことになるよ」

ヘラヘラと笑いながら光平に詰め寄る取調官。

光平「くっ……」

◇   ◇   ◇

慎哉「おい、ここから出せー!!」
優香「………」

いきなり軍隊に問答無用で連行され、光平とも引き離されて
同基地内の監獄に放り込まれた朝倉慎哉と沢渡優香。
やがてそこへ将校らしき男がやって来た。

将校「出ろ、釈放だ」

1686

慎哉「…え?」
優香「どういうこと…?」

突然の釈放を告げられ、戸惑う慎哉と優香。
言うがままに鉄格子の中から廊下へと出る。

優香「あの、光平くんは?」
将校「お友達に感謝するんだな」( ̄ー ̄)ニヤリ
慎哉「――!!」

今の一瞬ニヤリと笑った将校の言葉で、慎哉は全てを察した。
光平はきっと、自分と優香の二人の身の安全を条件に脅迫され、
やむなくその圧力に屈したのだ。

慎哉「てめええええええ!!!」

激昂した慎哉は将校に掴みかかろうとするが、
将校はそれを簡単にかわして、逆に慎哉の腹部に
パンチを一発お見舞いする。倒れる慎哉。

慎哉「ぐはっ!?」
優香「朝倉くん!? ――何をするんですか!
 暴力はやめてください!!」
将校「フン……」

◇   ◇   ◇

無念の思いを浮かべながら、基地正門へと出る慎哉と優香。

将校「最後に一つだけ忠告しておこう。外に出ても下手に騒ぐな。
 もし騒ぎが大きくなれば、"お友達"は勿論、君たちの家族も無事では済まない」
慎哉「………」
優香「そんな……」

一方正門の外側では、釈放された慎哉たち二人の身柄を引き取るため、
伝正夫たちバトルフィーバー隊が待機していた。

正夫「朝倉慎哉君に沢渡優香さんだね?」
誠「君たちにちょっと聞きたい事がある」

しかし慎哉は冷たく拒否反応を示す。

慎哉「アンタたちになんか話す事は何もない!」
優香「朝倉くん…」
京介「おい君、そんな言い方はないんじゃないのか?」

地球連邦軍の内部事情など知る由もない一般人の慎哉や優香にとって、
光平の身柄を不当に拘束している軍隊も、ブレイバーズに所属している
バトルフィーバー隊も、どちらも同じ傲慢な態度の軍人にしか見えないのだ。
特に慎哉の頑なな態度に困り果てていたバトルフィーバー隊だったが……。

フィリナ「そこから先は私がお話します」

慎哉「…え!?」
優香「フィリナさん!?」

1687

突然の聞き慣れた声に驚く慎哉と優香。
確かに目の前には黒塗りの高級車から降りて来た
フィリナ・クラウディア・アルシャード本人と、
彼女を守る黒服のSP数人が立っていた。

慎哉「フィリナさん!?」
優香「いつ日本に?」

何の前触れもなしにフィリナが現れた事に
まだ驚きが冷めない様子の慎哉と優香。

フィリナ「たった今成田に着いて、車を走らせてきたばかりよ。
 大方の事情は聞いたわ」
優香「フィリナさん…」
正夫「フィリナ・クラウディア・アルシャード嬢ですね?」
フィリナ「はじめまして伝少佐。立ち話もなんですから、
 まずは皆さんもご一緒に車の中で。慎哉、この方たちを
 貴方の家にご案内してもいいわね?」
慎哉「は、はい…」

慎哉は不本意そうながらも、フィリナに言われたのでは
仕方がないと渋々従った。

バトルフィーバー隊5人、朝倉慎哉、沢渡優香は
フィリナの車に同乗してひとまず東京の朝倉家を目指す。

◇   ◇   ◇

シグフェルを捕獲した以上、もはや日本国内に長居は無用とばかりに
早速撤収の準備を始めるコルベット准将の部隊。

コルベット「先発部隊の準備を急がせろ!」

コルベットが指揮を執る指令室のモニターに、伊豆の岡防衛長官から通信が入る。

コルベット「何の用だ岡? 今こちらは忙しいのだがな」
岡@通信「相変わらず強引な男だな、貴官は…」
コルベット「今や我々人類は、地球防衛の最大の切り札を手にしたのだぞ。
 祝いの一言も言ってはくれんのか?」
岡@通信「牧村光平の身柄をこちらに引き渡せ――と言っても無駄なようだな」
コルベット「気の毒だがそういう事だ。お前も要らぬ画策はしないことだな」
岡@通信「わかった。貴部隊の健闘を祈っている」

こうして通信は切れた…。

コルベット「フフフ…岡、今回ばかりはワシが笑う番だ」

1688

女性士官「ひどい環境ですね。人道的な見地からも早急に手続きを済ませましょう」
光平「………」

弁護士資格を持つと称する女性士官から、これから日本国外へ出国するための
手続きについて説明を受ける牧村光平。

女性士官「週末までには政府再建委員会の施設に移動できると思います。現状に対して何か要望などは?」
光平「………たくありません」
女性士官「え、なあに?」
光平「…どこにも行きたくなんかありません」

国外への連行を拒否するように暗い表情で呟く光平に対し、
その女性士官は冷たく言い放った。

女性士官「まだ自分の立場というものを理解していないようね。
 貴方には選択の権利はないの」

◇   ◇   ◇

***東京・豊洲 朝倉家***

くらのすけ「くぅ~ん!くぅ~ん!」
優香「くらのすけ、光平くんはいつになったら
 帰って来れるのかしらね…」

家の玄関前で優香は優しく、そして寂しそうな顔をして
くらのすけの毛並みをそっと撫でている。

一方の家の中のリビングルームでは、
伝正夫らバトルフィーバー隊の5人が通され、
フィリナからこれまでの経緯について
説明を受けていた。

正夫「どうして今まで黙っていたんですか!?」
フィリナ「それについてはお詫びします。
 ですが、今のあの子の難しい立場も察してください」

牧村光平は母方の血筋に世界の石油経済を一手に握る
石油王一族の血を引いている。旧西暦1970年代の中東戦争に
端を発するオイルショックによる経済混乱の生々しい記憶が
今も鮮明に残っている日本の政財界や霞が関関係者の中には、
光平の存在自体を邪魔に思い、疎ましく思っている者も多いのだ。

誠「だから、迂闊に名乗り出る事が出来なかった訳か…」
四郎「………」
フィリナ「今更こんな事を頼めた義理ではないのは重々承知していますが、
 どうかあの子を…光平を助けてあげてください!
 私からもこの通りお願いします」
マリア「それは勿論です」
正夫「たとえ、光平くんが我々ブレイバーズの仲間に
 なってくれなくてもね」
フィリナ「ありがとう…」

1689

***メガロシティ署***

メガロシティ警察署のチャック・スェーガーと桂美姫の
両刑事を訪ねて来る弁護士の北岡秀一。

チャック「何しに来た?悪徳弁護士!」
北岡「これはまた、相変わらず御挨拶ですね」
美姫「いったい何の用? こっちはこれでも忙しいんだけど」
北岡「実は今日はお二人に耳寄りなお話を持って来ましてね」

いかにも勿体振るように話を切り出す北岡。

チャック「へえ~そりゃいったい何の話だ?」
北岡「実はですね、ついにあのシグフェルの正体が判明しました」
美姫「ふ~ん、そうなの」
北岡「いったいシグフェルは誰だったと思います?
 お二人もよく知っている人物ですよ。名前を聞いたら
 きっと驚きますよ」

自慢げにドヤ顔で話す北岡だったが、次の美姫の言葉で
その空気は一変した。

美姫「牧村光平でしょ?」
北岡「ど、どうしてそれを!?」

あっさり美姫に言い当てられ、驚いたのは北岡の方だった。

北岡「もうすでにそちらにも情報が届いていましたか…」
美姫「いいえ、たった今知ったばかりよ。
 たぶんそんなところじゃないかと思って、一つカマをかけてみたのよ」
北岡「やれやれ…やはり貴女には敵わないな」

北岡は降参の姿勢を示す。

北岡「おそらく牧村光平君の身柄は、明日には国外に移送されるでしょう。
 もし万一ティターンズの本拠地ジャブローにでも連れていかれたら最後、
 彼の奪還は永遠に不可能になるでしょう。日本政府も人身保護請求を出していますが、
 おそらくそんなものは無視されるでしょうし、伊豆の連邦正規軍も建前とは言え
 友軍相手では手が出せません」
チャック「だが、独立した行動権限を持つ俺たちブレイバーズになら
 それが出来る!」
北岡「ご名答! それで、お二人ともどうされますか?」
美姫「聞かれるまでもないわ!」

1690

***秩父山赤心寺***

シグフェルの正体は牧村光平だった。その知らせを聞いた沖一也は、
玄海老師のいる秩父山中の赤心寺へと急行した。

玄海「どうした一也? 久しぶりに顔を見せたかと思ったら、
 そのような怖い顔をして…」
一也「老師! 老師はシグフェルの正体が光平君だと
 前々から気付いていらっしゃったのではありませんか!?」

問い詰める一也に、玄海老師は静かに答える。

玄海「…だとしたらどうする? 本人の意思を無視して、
 彼を無理やりブレイバーズの仲間に組み込んだか?」
一也「それは…」
玄海「地球の平和と人々の平穏を守るために戦おうとするのは、
 あくまでもその戦いに身を委ねる者たち自身の意思によるもので
 なければならん。嫌がる者に戦いを無理強いしたとしても意味はない。
 それゆえわしは、光平君が自分から名乗り出て来るのを待っておった…」
一也「老師…」
玄海「しかし、それがかえって彼の異形の力を邪な野心に利用せんとする輩に
 付け入る隙を与えてしまった。これは間違いなくわしの不覚であった。
 一也、なんとしても光平君を助け出すのだ!」
一也「はい、必ず!」


***ポイントゼロ・無幻城 十二邪将円卓の間***

地獄大使「どうするのだ村上よ!」
ジャーク将軍「せっかく苦労してシグフェルの正体を突き止めたというのに、
 このままでは奴の身柄をロゴスの地球至上主義者どもに奪われてしまうぞ!」
村上「………」

漁夫の利をさらわれる形で、まんまとシグフェルをロゴスに横取りされてしまった件について
他の同僚の邪将たちから糾弾の矢面に立たされている村上峡児。

村上「まだ打つ手はある!」

村上は、すぐさま側近の部下二人を
その場へと呼び寄せた。

村上「なんとしてでも牧村光平の身柄をこちらに奪い取って来てください。
 もし彼が拒むようなら命を奪っても構いません」
村上の部下A「畏まりました」
村上の部下B「直ちに!」

1691

○伝正夫→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○神誠→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○志田京介→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○曙四郎→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○汀マリア→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○岡防衛長官→コルベット准将に牧村光平の身柄引き渡しを要求するが、拒否される。
○チャック・ウェーガー →牧村光平がシグフェルである事を知る。
○桂美姫→牧村光平がシグフェルである事を知る。
○北岡秀一 →牧村光平がシグフェルである事を伝えにメガロシティ署を訪れる。
○沖一也→牧村光平がシグフェルである事を知る。
○玄海老師→沖一也に牧村光平救出を命じる。
●コルベット准将→日本からの撤収準備を開始。伊豆の岡防衛長官からの牧村光平の身柄引き渡し要求を一蹴する。
●地獄大使→シグフェルをコルベットに横取りされた件で村上峡児を糾弾。
●ジャーク将軍→シグフェルをコルベットに横取りされた件で村上峡児を糾弾。
●村上峡児→部下に牧村光平の身柄奪取を命じる。
●村上の部下A→村上峡児から牧村光平の身柄奪取を命じられる。
●村上の部下B→村上峡児から牧村光平の身柄奪取を命じられる。

○牧村光平→コルベット准将に拘束され、やむなく脅迫に屈して彼らの言うがままに従う。
○朝倉慎哉→コルベット准将に拘束されていたが、釈放される。
○沢渡優香→コルベット准将に拘束されていたが、釈放される。朝倉家で牧村光平の身を案じる。
○くらのすけ→帰って来た沢渡優香に優しく撫でてもらう。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→急遽来日。朝倉家にてバトルフィーバー隊に全ての事情を説明。

【今回の新規登場】
●村上の部下A=ライノセラスビートルオルフェノク(仮面ライダー555)
 スマートブレイン本社のエリート社員の1人。 裏切り者の澤田亜希を始末するよう村上峡児から命じられる。
 カブトムシの特質を備えたオルフェノクで、動きは鈍重だが、頑強な鎖帷子を身に纏い、鋭利な薙刀を武器とし、スタッグビートルオルフェノクとの連携で相手に襲い掛かるタッグ戦法を得意とする。

●村上の部下B=スタッグビートルオルフェノク(仮面ライダー555)
 スマートブレイン本社のエリート社員の1人。 裏切り者の澤田亜希を始末するよう村上峡児から命じられる。
 クワガタムシの特質を備えたオルフェノクで、ライノセラスビートルオルフェノクとのタッグ戦において相手を翻弄する役割を担い、刺股を自在に振るって相手と斬り結ぶ攻撃を得意としている。


『光平を救え! 結集せよブレイバーズ戦士たち』-2

作者・ホウタイ怪人

1692

***下田・地球連邦軍第13格納庫***

???@電話「では例のサンプルは一週間後には
 当研究施設にお引き渡し頂けるのですな?」
コルベット「その通りだ。だがこの世に一体しかない
 貴重なサンプルだ。扱いはくれぐれも慎重にな…」

司令室にいるコルベットが、何者かと携帯電話で
国際通信を介して話している。

???@電話「それは勿論。しかし残念ですな。
 送られてくるモルモットが藍羽ルリちゃんみたいな
 背の低くて可愛い女の子だったら、こちらも解剖の際に
 メスで切り刻み甲斐があるというのに」
コルベット「………(フン、この変態め!)」
???@電話「それでは准将、ジャブローにて
 無事なお帰りをお待ちしています」
コルベット「こちらこそ君の研究開発の腕に
 期待しているよ、ドクター研見」

携帯を切るコルベット。たった今彼が電話で話していた男は、
「研美 悠士 (けんみ ゆうじ)」という名の日本人科学者である。

セイクリッドセブンの力を持つ者たち「セイクリッドテイカー」の保護を目的とした
機関である研美研究所と、それを中核とする研見グループの総帥である。
その実態は「セイクリッドテイカーの保護」とは名ばかりの非道な人体実験を
繰り返していたマッドサイエンティストであり、その悪行を丹童子アルマと藍羽ルリに
暴かれて一度倒されたが、再び現世に黄泉がえった後、今はこうしてロゴスに拾われていたらしい。

将校「しかし准将、報告では"サンプル"はあのアルシャード財閥の血筋です。
 後になってアルシャード家からクレームが来たりする可能性も…」
コルベット「そんなものは無視すればいい。アルシャード家の方も
 厄介者の隠し子を処理してくれて、むしろ我々に感謝しているかもしれんぞ」
将校「ハッ!」
コルベット「明朝に全部隊は、"サンプル"を護衛しつつ
 下田を発してジャブローに向かう!」


***東京・江東区豊洲 朝倉家***

慎哉「………!!……くっ!!」

朝から自室のパソコンルームに籠ったきりの慎哉は、
必死にモニターと睨めっこしキーを連打しながら
下田の地球連邦軍第13格納庫のセキュリティへの
ハッキングを試みていた。その目的は、基地内のどこに
光平の身柄が拘束されているのか詳細を突き止めるためだ。
その表情からは焦りの色がうかがえる…。

慎哉「くそっ!!」

どうしても最後のブロックを突破できない…。
ここさえクリアできれば、光平を救えるのに。
自分の無力に、慎哉は悔しさで涙が溢れそうになる。

そこに慎哉の横から寄り添うように手を差し出して
何やらいろいろとプログラムを打ち込む蝶ネクタイの青年が現れた。

慎哉「…セイジ…先生?」
セイジ「手伝うよ」

1693

***永田町・首相官邸***

レディ・アン「お待たせして申し訳ない。リリーナ様からお預かりして来ました」

地球連邦大統領直轄下の諜報組織「プリベンター」の長官であるレディ・アンが、
分厚い書類の収まった封筒を携えて急遽飛行機で来日、総理大臣官邸を訪問した。
彼女が黒いアタッシュケースを開けて中から大事そうに取り出した
A4サイズの封筒の中身には、コルベット准将が部隊を率いて日本国内に
駐留している法的根拠の無効性を示す証拠が揃っていた。

土橋「ありがたい! これで我々もようやく動けます」

プリベンターの水面下での調査が実を結び、
レディ・アンから書類を受け取る土橋内閣安全保障室長。
これこそが内閣総理大臣・剣桃太郎が言っていた
「しかるべき打つ手」であった。


***下田・地球連邦軍第13格納庫近くの茂み***

――日も暮れて、夜になった。

夜陰の紛れて基地周辺に各自配置に着いたブレイバーズ。
明日になれば、コルベット隊は日本から離れてしまう。
その前になんとしても牧村光平の身柄を奪還しなければならない。

セーラーマーキュリー「チャックさん、全員配置につきました」
チャック(ボーグマン)「了解!」
美姫(FS)「貴方のその姿を見るのも久しぶりね」
チャック(BM)「そうだな…」

久々に、超音戦士ボーグマンとしての装甲服バルテクターに袖を通したチャック・スェーガー。
仲間のアニス・ファームがカーチス・火鷹にさらわれ、ボーグマンシステムによって作られた
強敵オメガと戦った時以来である…。同じく桂美姫もファントムスワットの装甲服に身を包んでいる。

チャック(BM)「しかし北岡、お前が人助けに加わるなんてどういう風の吹きまわしだ?」
ゾルダ「こちらは顧客(クライアント)から、あの少年に寄って来る全ての障害となる者を
 排除するように言われているんですよ。こっちはあくまでビジネスの一環として
 勝手にやっていますんで、どうかお気遣いなく」
チャック(BM)「そりゃ心強いこって…(汗」

仮面ライダーゾルダ(北岡)がこの場に来て一緒に光平救出作戦に協力するのは、
フィリナとの契約上の依頼に基づくものらしい。
そして他にも、北岡と同様この場に一見場違いに見える男がもう一人いた。
毒島嵐ことドクター・アシュラだ。

美姫(FS)「―で、そこの貴方は何の目的なの?」
チャック(ボーグマン)「言っておくが、もうシグフェルに賞金は出ないぞ」
アシュラ「そんなことはもうどうだっていい。俺はあの威張り腐った
 軍人の奴らにお礼参りがしたいだけだ!」
チャック(BM)「やれやれ…(呆」

何日か前に、コルベット隊に不意打ちで襲われたシグフェルと朝倉慎哉を
思わず庇ったアシュラだったが、それが元で彼は軽傷を負っていた。

セーラーヴィーナス「そういえばシグさんはどうして今回の作戦に加わったんですか?」
セーラーマーズ「特にエイリアン絡みでもないのに…」
シグ(BS)「息子の学校での大事な友達です。知らないフリなど出来ませんよ」

シグ――厳密に言えば彼が宿り同化している広瀬剛の息子ザジは、
牧村光平とは同じ学校に通う親友同士である。

1694

そこへ公用車に乗った冴島十三・内閣危機管理監が駆けつけた。

美姫(FS)「これは冴島管理監」
冴島「諸君、待たせてしまって申し訳なかったが、
 ようやく裁判所から令状が取れた!」

先刻、首相官邸にて土橋竜三がレディ・アンから受け取った動かぬ証拠に基づいて、
地球連邦裁判所の日本地裁が、コルベット准将の日本からの出国差し止めと
牧村光平の人身保護請求を認めたのだ。

スーパー1「これで我々は心置きなく踏み込めます。
 感謝します! 冴島管理監」
チャック(BM)「…ま、仮に令状が下りなくても
 踏み込むつもりではいたけどな」
セーラーマーキュリー「残る問題はセキュリティね」
セーラームーン「マーキュリーちゃん、なんとかならないの?」
セーラーマーキュリー「さっきからやってはいるんだけど…」

HMDゴーグルとポケットコンピューターを用いて
外部からの基地セキュリティの操作を試みている
セーラーマーキュリーだったが、その作業は難航していた。
そうしているところへ、ブルースワットの現場指揮車ガバナーがやって来て、
その運転席からセイジが降りて来た。

シグ(BS)「セイジ、どうしてここへ?」
セイジ「みんな、基地入口のセキュリティなら解けたよ!」
セーラーマーキュリー「…本当だわ!」

セーラーマーキュリーも手元のポケコンで確認した。
これで基地内への侵入が容易になる。

シグ(BS)「セイジ、よくやってくれました」
セイジ「いや、これは彼の力だよ」
シグ(BS)「…?」
セーラームーン「え…?」

セイジが停車しているガバナーの方に皆の視線を誘導すると、
助手席から慎哉がそっと静かに降りて来た。

慎哉「………」
美姫(FS)「…慎哉!?」
スーパー1「慎哉君!?」
慎哉「…俺は、まだアンタたちを信用した訳じゃない」
チャック(BM)「………」
慎哉「でも頼む! 光平を…俺の友達を助けてやってくれ!」

慎哉は地面に膝をついて頭を垂れた。
それに優しく手を差し伸べるセーラームーンたち。

セーラームーン「安心して。光平くんは必ずあたしたちの手で助けるから!」
セーラージュピター「ど~んと大船に乗った気でいな!」
セーラーヴィーナス「任せて!」
慎哉「……!」

1695

チャック(BM)「相手は地球至上主義者のエゴイスト共とはいえ、
 普通の生身の人間だ。言わなくても分かっているとは思うが、
 特にそこの二人! くれぐれも殺したりするなよ」
ゾルダ「私は契約金以上の仕事をするつもりはありませんよ。
 その点ならご心配なく」
アシュラ「あんな奴ら殺す価値もねえ!」
チャック(BM)「…いい答えだ」

シグ(BS)「セイジ、ガバナーの中から
 サポートをお願いします!」
セイジ「了解!」

いよいよ突入を控え、美姫が全員に指示を出す。

美姫(FS)「全員時計は合わせたわね?」
セーラーマーズ「OKです!」
美姫「今から30秒後に一斉に突入します!
 30…29…28…27…――――――――
 ――――――――…4…3…2…1!!」」


1696

○レディ・アン→急遽来日。首相官邸でコルベット准将告発の証拠書類を土橋竜三に直接手渡す。
○土橋竜三→首相官邸で、急遽来日したレディ・アンからコルベット准将告発の証拠書類を受け取る。
○冴島十三→下田で待機している突入チームのために、地球連邦裁判所からの令状を持参して来る。
○チャック・スェーガー(BM)→牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○桂美姫(FS)→牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○仮面ライダースーパー1→牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○仮面ライダーゾルダ→牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○ドクター・アシュラ→牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○セーラームーン→牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○セーラーマーキュリー →牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○セーラーマーズ→牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○セーラージュピター →牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○セーラーヴィーナス→牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○シグ(BS)→牧村光平を救出するため、下田の地球連邦軍第13格納庫に突入。
○宇佐美星児→朝倉慎哉に協力して、下田の地球連邦軍第13格納庫のセキュリティを解除。
 引き続きガバナーの中から突入チームをサポートする。
●コルベット准将→国際電話で研美悠士と密談。
●研美悠士→国際電話でコルベット准将と密談。現在はジャブローに滞在している模様。

○朝倉慎哉→宇佐美星児の協力を得て、自宅のPCからハッキングして
 下田の地球連邦軍第13格納庫のセキュリティを解除。

【今回の新規登場】
○レディ・アン(新機動戦記ガンダムW/同Endless Waltz)
 OZ総帥トレーズ・クシュリナーダの副官で、OZの実働部隊の指揮を取る。
 眼鏡を着用した凛とした風貌とを持った厳格な軍人。その態度は高圧的で冷酷非道。
 作戦が進むにつれて自分の行動がトレーズの意向と食い違ってきていることに
 二つの人格の中で葛藤するが、やがてトレーズの意志を真に理解し、ヒイロ・ユイたちの味方になった。
 終戦後は政府直轄の諜報機関「プリベンター」を発足し、自ら指揮を取る。

●研美悠士博士=サイクロプス(セイクリッドセブン)
 セイクリッドセブンの力を持つ者たち「セイクリッドテイカー」の保護を目的とした機関、研美研究所の所長。
 セイクリッドセブンの能力の研究も行っており、擬似的にその力を発動できるアーティジェムスーツの開発を手がける。
 輝島ナイトのようにセイクリッドセブンの力を悪用する者たちの捜索には、自らのアーティジェムスーツ「サイクロプス」をまとって戦うこともある。趣味は筋力トレーニングで、ミネラルウォーターを愛飲し、健康志向には余念がない。
 当初は藍羽ルリたちに善意ある協力者を装っていたが、実はこの男こそが全ての事件の黒幕だった。


『光平を救え! 結集せよブレイバーズ戦士たち』-3

作者・ホウタイ怪人

1697

***下田・地球連邦軍第13格納庫 正面ゲート***

美姫(FS)「地球連邦裁判所の日本地裁よりの正式な命令です!
 牧村光平の身柄を即刻こちらに引き渡しなさい!」
将校「バカな! あの少年は自ら地球外侵略者のスパイであると
 自白し、調書にもサインしたのだ! そのような要求になど
 応じられるか!」
チャック(BM)「古今東西、拷問や脅迫で得られた自白に証拠能力はないことを、
 そこの無学・無教養な軍人の皆さんはご存知ないようですな」
将校「なにをっ!? 失敬な!」
美姫(FS)「従わなければ強制的に踏み込みます!」
将校「やれるものならやってみろ! たかが極東の島国の
 所轄の警部補風情が!」
美姫(FS)「所轄の警部補ではないわ」

美姫は、日本の警察手帳ではなく、ICPO(国際刑事警察機構)の
捜査官としての身分証を提示する。

将校「…こ、これは!?」
美姫「私はICPO、対妖魔特別捜査部隊ファントムスワット隊長、
 桂美姫警視です! そこをどきなさい!」

桂美姫は、日本の所轄署であるメガロシティ署の女刑事(警部補)の他に、
ICPO特務部隊を率いるエリート指揮官(警視)でもあるという、治安を司る
警察官としては二つの顔と身分を持っているのだった。

こうして美姫とチャックが押し問答で相手の注意を引きつけている内に、
ブレイバーズの各チームがそれぞれの侵入ポイントより敷地内へと潜入した。
一方その頃、その動きに呼応するかのように…。


***同基地内・独房棟***

バルザック「コルベット准将からの命令だ。
 万一の場合に備えてサンプルを移送する」
警備兵A「そのような命令はこちらに伝わっては
 おりませんが…?」
バルザック「…そうか、伝わっていないのか。
 なら仕方がない!!」
警備兵A「――なっ!? ぐおおっ!!」
警備兵B「ぐわああっ!!」

バルザックは警備兵二人を殴り倒して、
目の前の独房の扉を開ける。中では、
両腕に手錠を掛けられたままの光平が、
隅の方で静かに膝を抱えて座っていた。

光平「…あなたは?」
バルザック「ひどく痛めつけられたな。ちょっと待ってろ。
 今手錠を外してやるからな」
光平「……??」

1698

ポケットから鍵を取り出して光平の手錠を外すバルザック。
当の光平は、何が起きているのかさっぱり分からず茫然としている。

バルザック「急げ! ここから出るぞ!」
光平「いったいどういうことなんですか!?」
バルザック「ここから逃げたくないのか!?
 グズグズしてる暇はないぞ!」
光平「…え?……は、はい!」

独房から出るバルザックと光平の二人。
しかし外にはすでにコルベット准将に率いられた
警備部隊が銃口を向けて待ち構えていた!

光平「――!?」
バルザック「チッ…!」
コルベット「とうとう尻尾を見せおったなバルザック。
 貴様が岡の命令でワシの下にスパイとして送り込まれて
 きたことぐらい先刻お見通しだ」
バルザック「やれやれ…参りましたよ准将。俺の負けです」
コルベット「殊勝だな。しかし今まで散々目を掛けて来てやったワシを
 裏切った以上、当然覚悟は出来ているのだろうな?」

絶体絶命の光平とバルザック。しかし――

          从"、 ;从
        ヾ(( ;  ;"、; :、))/
        ((;".  ;  ";.;")) ドカーン!
       /((; ;";   .;"))ヽ
        """"""""""""""
――その時、基地内の大きな揺れと共に
各方向から銃撃音や爆発音や聞こえ始めた。

兵士A「な、何事だ!?」
コルベット「え~い! うろたえるな!!」

その動揺で出来た一瞬の隙を見逃すバルザックではなかった。

バルザック「とりゃああ!!!!」
兵士B「――なっ!?」
兵士C「うわああ~っ!!」

彼は瞬く間に自分らを取り囲んでいる兵士たちを
叩き伏せて全員の気を失わせると、
一人残ったコルベット准将を人質に取った。

コルベット「――!!」
バルザック「さあて准将、俺たち二人を安全な場所まで
 案内して頂きましょうか?」
コルベット「…バルザック! 貴様あああッ!!!」

1699

たちまち下田の第13格納庫の敷地内では
各所で戦闘が開始されていた。
しかしそれは光平を救い出そうとする
ブレイバーズによるものだけではなかった。

ライノセラスビートルオルフェノク「………」
スタッグビートルオルフェノク「………」

強固な甲冑を身に纏ったような姿の2体のオルフェノクの周りには、
「使徒再生」に耐えきれなかったコルベット体の兵士たちの
屍から発生した灰の山が出来ていた。

皮肉にも、ブレイバーズの侵入作戦を容易にするために
朝倉慎哉とセイジが基地のセキュリティを外部から解除した事が、
この2体の招かれざるイレギュラーの侵入をも容易にしてしまったのだ。

さらに間の悪い事に、コルベットに銃を突き付けつつ
出口を目指すバルザックと光平が、彼らオルフェノクと
出くわしてしまったのだった。

バルザック「チッ…なんてこった!」
コルベット「…ひいいいいいいい!!!!!」(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
光平「………」

バルザックは邪魔になったコルベットを横に突き飛ばすと、
2体のオルフェノクめがけて連続して発砲した。
しかしオルフェノク相手に普通の銃弾など効く訳がない。
次第に追い詰められるかと思った瞬間――

スーパー1「――スーパーライダー月面宙返りキック!!」
セーラーマーズ「――バーニング・マンダラァァ!!」
セーラージュピター「――スパークリング・ワイド・プレッシャー!!」

ライノセラスビートルオルフェノク「……!?」

仮面ライダースーパー1の必殺キックと、
セーラーマーズの曼荼羅から出た八つの凄まじい炎、
そしてセーラージュピターが両手に圧縮した超高電圧球が
まとめてライノセラスビートルオルフェノクに炸裂する。

バトルケニア「おっと、お前さんの相手は俺たちだ!」
スタッグビートルオルフェノク「ぐぅぅぅぅ……!!」

苦戦する相棒のライノセラスビートルオルフェノクの加勢に向かおうとした
スタッグビートルオルフェノクだったが、その前にはバトルフィーバー隊が
立ちはだかった。刺股を自在に振るうスタッグビートルオルフェノクに対して、
バトルケニアは得意のアニマルアクションで翻弄し対抗する。

ミスアメリカ「バルザック・アシモフ中佐ですね?
 話は全て伊豆の岡長官から聞いています」
バトルジャパン「ここは我々に任せて早く!」
バルザック「助かったぜ! さあ早く行くぞ!」
光平「…え、あ…はい!」

1700

バルザックと共にその場から離れようとした光平だったが、
突然彼の右足首を何者かが掴んだ。

光平「――!?」
兵士D「…た、頼む。助けて…くれ……」
バルザック「何してる!? 早く行くぞ!」
光平「で、でも…」

光平は、倒れながら助けを求める兵士に手を差し伸べようとしたが、
その瞬間、兵士は無残にも砂となって、光平の目の前で崩れ落ちたのである。

兵士D「……た、たすけ…グボボボオオォォ!!」
光平「――!!」

突然の事に衝撃を受ける光平。
ふと辺りを見回すと、周囲には今のと同じような砂の山の塊が
あちこちに溜まっているように出来ていたのだ。

光平「…あ……ああ!!」

もしかすると――いや確実に、周囲に不自然にある砂の山は全て
人の屍だ。今すぐ近くでブレイバーズと戦っている
Gショッカーの怪人の仕業に違いない。
その2体の怪人は自分を狙って現れた。
…だとすれば、これら数多くの人間を死へと至らしめた原因は
遠からず自分にある。光平は恐怖した。

光平「…そ、そんな…そんなの…イヤだ!」
バルザック「おい!どうした!? しっかりしろ!!」
光平「うわあああああああああ!!!!!!!!」
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                ≧=‐-≦「

1701

コルベット「…お、おのれ! このままで終わるワシではないぞ!
 お~い! 誰かおらんのかああっ!!!」

バルザックの手から逃れ、一人で基地内を彷徨っている
コルベット准将だったのだが……。

コルベット「…バ、バカなっ!? う…うわああああ!!!!!!!!!!!」

爆発に巻き込まれた基地内の瓦礫の下敷きとなって、
あっけなく死亡した。

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 从;: `:、リ゙W゛jリw''、`'.、,:`:,,‐'゛' ~    彡;:'ヘ;;ハバ ノハヽ、,ツノノ;:'ハ;;:. ノハil;:ヽゝ ノハil;:ヽゝ
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.wj从リj`'.、 ,:,-‐'゛,,vw-‐W゛w从 W:;,',:从シハノシ;:,';,ノノゝハハ,ゝヘ,::..ヘ.:;ilゞ ハ';'ヽ..::...,ヘ、ハ.:;>
 ̄~^ ̄^ ̄ ̄~`^゙'、,゛jリw :;.:".:;.:'"゙:.:゙,;`彡ハノ;|ililヾvフノ;:,'ハ';'ヽ;;ハバゝハ';' ハ';'ヽハil;:ヽハ,ハ';'ヽ、
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~              ``'‐;.:".:;.:'"゙:jリ . " .ノ /''ーニッui,,゙__、  _____,,....ニ--‐r'". ‐´:..::ハ::
     ~' '  ,;''        ~'ー:;.:;;wリ゙、从リ.゛  !  .′.!  ̄~| ヽ ′゙'  ゙ゝ li>ノハハ
           ~'   '      ``リ゙ jリwj从jr、'^  シハノシ;:,';:, ノノハハl;:.'ilゞヾノvノ;:,l'
~         '゚   ;  ~' ',;''       `゙''、:w从jリ 彡ハハノ;;:, フノ;:,'ハノハハレ;;:ノノハハ
   ~' ',;''                     `゙'':::..wj 彡ヾ;:ノハハレ;:,.'ilヾ ノノハハノノ;:'ヘ;;ハハ

下田の基地は、建造物ごと跡形もなくなり、
後には大きなクレーターだけが残っていたのだった。

バトルケニア「お~い! みんな無事か?」
ゾルダ「ええ、なんとかね」
アシュラ「いきなりびっくりしたぜ!
 いったいどういうこった!?」
バトルジャパン「おそらくシグフェルが感情を高ぶらせて
 力を制御できなくなり、一時的に暴走したんだ」
バトルコサック「恐るべきシグフェルの戦闘能力だ…」

1702

美姫「負傷者の搬送は全て終えたわ」
チャック「あれだけの爆発で、Gショッカーの怪人に襲われた者を除けば
 死んだのはコルベット一人だけだったってのも奇跡だな」
バトルフランス「そういえばそのシグフェルは?」
バルザック「さっきから、あそこにずっと立ってるぜ…」

シグフェル「………」

出来たクレーターの中心に茫然と立ち続けているシグフェル。

セーラームーン「シグフェル…」
シグフェル「………」

セーラームーンの呼び掛けた声に、少し振り向いて見せたシグフェルだったが、
その瞳にはうっすらと涙が滲んでいるように見えた…。

セーラームーン「シグフェル…!?」
シグフェル「………」

シグフェルは、無言のまま背に生える二枚の大きな翼を羽ばたかせて
この場から立ち去るかのように浮上した。

セーラームーン「…あ、待って!……あうっ!!」
セーラーマーキュリー「セーラームーン!?」

シグフェルを追いかけて止めようとしたセーラームーンだったが、
走っている途中で足を躓いて転んでしまう。そうしている間にも、
シグフェルは遥か大空の彼方へと飛翔して消えたしまったのであった。

セーラーヴィーナス「大丈夫セーラームーン!?」
セーラームーン「待って! シグフェル!! 光平く~~ん!!!!!!」

無情にもセーラームーンの叫びは、今は結局シグフェルの耳に届く事はなかった…。

1703

○チャック・スェーガー →下田で牧村光平救出作戦を敢行。
○桂美姫→下田で牧村光平救出作戦を敢行。ICPO捜査官としての身分を示す。
○バルザック・アシモフ→実は岡長官がコルベットの下に潜り込ませていたスパイであり、
 ブレイバーズの味方だった。牧村光平を独房から救出する。
○仮面ライダースーパー1→ライノセラスビートルオルフェノクと戦闘。
○仮面ライダーゾルダ→下田で牧村光平救出作戦を敢行。
○バトルジャパン→スタッグビートルオルフェノクと戦闘。
○バトルコサック→スタッグビートルオルフェノクと戦闘。
○バトルフランス→スタッグビートルオルフェノクと戦闘。
○バトルケニア→スタッグビートルオルフェノクと戦闘。
○ミスアメリカ→スタッグビートルオルフェノクと戦闘。
○ドクター・アシュラ→下田で牧村光平救出作戦を敢行。
○セーラームーン→下田で牧村光平救出作戦を敢行。飛び去るシグフェルを呼び止めるが無視される。
○セーラーマーキュリー →下田で牧村光平救出作戦を敢行。
○セーラーマーズ→ライノセラスビートルオルフェノクと戦闘。
○セーラージュピター →ライノセラスビートルオルフェノクと戦闘。
○セーラーヴィーナス→下田で牧村光平救出作戦を敢行。
●コルベット准将→下田基地の崩壊から逃げ遅れて死亡。
●ライノセラスビートルオルフェノク→牧村光平の身柄奪取に現れるが、シグフェルの暴走により作戦中断。
●スタッグビートルオルフェノク→牧村光平の身柄奪取に現れるが、シグフェルの暴走により作戦中断。

○牧村光平/シグフェル→自分のために戦いが起こり、死者が多数出た事に激しく動揺。
 シグフェルの力を一時的に暴走させてしまう。