『大追跡!鳳凰を狩る餓狼』-3

作者・凱聖クールギン

1398 

***東京メガロシティ・港湾地帯***

舞「あっ、八荒さんあそこ!」
八荒「シグフェルが、ネロスの奴らと戦ってるんだ」
舞「メタルダーもいるわ!」

タクシーを降りて走り、戦場へやって来た仰木舞と北八荒は、
置かれているコンテナの陰に身を隠しながら様子を窺う。

八荒「あのユニコーンみたいな化け物は一体何だ…?
 見たところ、ネロスの仲間じゃなさそうだけど」
舞「もしかして、あれが流星さんの言っていた、
 イーバっていう新種のモンスターかしら」

舞と八荒の目は、戦場の中心に陣取っている、
一際おぞましい姿の怪物に引かれた。
二足歩行で馬に似た頭部を持ち、額からは鋭い角が一本生え出ている。
胸はメカの装甲で覆われ、両肩には一門ずつ太い砲塔が装備されていた。
伝説の一角獣を擬人化し機械と融合させたようなその怪物こそ、
イーバの一種、ユニコーンイーバである。

ユニコーンイーバ「グゥゥゥ…!」
クロスランダー「な…何だこいつは…!?」
ゴブリット「ク、クロスランダー様、こいつはもしかして、
 あのイーバとかいう怪物なのでは…?」
クロスランダー「何!? これがあのイーバ…?」

イーバの情報はGショッカーでも掴んではいたものの、
実物を目にするのはこれが初めてである。

メタルダー「シグフェル、これが君の戦っていた…」
シグフェル「ああ。これがイーバ。俺が戦うべき敵…」
メタルダー「………」

イーバを前にしたシグフェルの闘争本能が激しく燃え立つのを、
メタルダーは戦慄を覚えつつ感じ取る。

ユニコーンイーバ「グォォ…!」
デデモス「な、何だてめえ、やろうってのか!?」

しばし戦場を睥睨していたユニコーンイーバは、
やがてネロス軍団員達に狙いを定め、大きく咆哮すると、
両肩の砲塔から青白いビームを放って攻撃した。

ゴチャック「ぬおおっ!」
ゴブリット「ひゃああっ!」

強力なビームはネロス帝国の戦闘ロボット達を薙ぎ払い、
周囲のコンテナや倉庫を次々と爆発させる。

ゴチャック「イーバは黄泉がえった者を狙うと聞いていたが…。
 ま、まさか、狙いは我々か…!?」

敵の真意に気付いてゴチャックが愕然とする。
これまでネロス帝国では、シグフェルを引き付ける存在であるイーバが
黄泉がえった者を標的にするという情報から、
一般市民の中で黄泉がえった者達をマークしイーバの出現を待ち伏せていた。
だが、かく言う彼らネロス軍団員も黄泉がえった者の一人には違いなく、
イーバは彼らを狙ってこの戦場に現れたのである。

ゴブリット「ぐわあっ!」

既に両腕を負傷していたゴブリットはビームを避けられず、
吹き飛ばされてダウンしてしまった。

デデモス「野郎! 舐めんなっ!」

左手の鋭い鉤爪を向けてユニコーンイーバに突進したデデモスは、
ユニコーンイーバの胴体を覆う装甲に勢いよく鉤爪を突き立てるが、
装甲には傷一つつけられず、逆に鉤爪の方が砕けてしまう。

デデモス「そ…そんな!?」
ユニコーンイーバ「ウォォォッ!!」
デデモス「うぎゃぁっ!」

一際大きく咆えたユニコーンイーバに、デデモスは何メートルも殴り飛ばされる。
衝撃で電子頭脳がクラッシュし、デデモスも戦闘不能となった。

クロスランダー「どいつもこいつも邪魔をしおって…。
 ふざけるなぁっ!!」

激怒したクロスランダーは二丁拳銃でユニコーンイーバを射撃するが、
ユニコーンイーバは時空クレバスを発生させ、
放たれたビーム弾をその中へ吸収する。

クロスランダー「な、何っ!?」

今度はクロスランダーの目の前に時空クレバスが開き、
先程発射したビーム弾が至近距離から撃ち返された。

クロスランダー「ぐおおっ! ば、馬鹿な…!」

自分の弾丸を腹に喰らい、クロスランダーは悶えながら倒れた。
ユニコーンイーバは更にビームを乱射して攻撃、暴れ回る。

舞「きゃあっ!」
八荒「舞ちゃん!」

戦いの様子を撮影しようとカメラを向けた舞だったが、
狙いを外れたビームの一発は舞と八荒が隠れていたコンテナに命中。
大爆発を起こしてコンテナを炎上させた。

1399 

メタルダー「ヤァッ!!」

舞と八荒の危険を見て、メタルダーは自分の方へユニコーンイーバの注意を引き付け、
レーザーアームを光らせて斬りかかろうとするが、
ユニコーンイーバが盾のように時空クレバスを作って自分の前に展開したので
それ以上突っ込む事ができずに後退する。

メタルダー「くっ…。時空クレバスを自在に操るのか」

時空クレバスが消えると同時に両肩からのビームで攻撃するユニコーンイーバ。
メタルダーの頑丈なボディもビームの直撃を受けて火花を上げた。
負けじと突進するメタルダーだが、やはり形成された時空クレバスによって
進路を塞がれてしまい近付けない。

メタルダー「駄目だ。これではどうしようもない…!」

攻め手を封じられて苦戦するメタルダー。
だがその時、メタルダーの後ろから飛んで来た一筋の火炎が、
時空クレバスをまるで物理的に破壊するかのように突き破り、
ユニコーンイーバの体に命中してダメージを与えた。

メタルダー「……!」
シグフェル「イーバは俺に任せろっ!」

メタルダーが振り返った先にいたのはシグフェルだった。
ユニコーンイーバに指先からの火炎を当てたシグフェルは、
猛ダッシュでメタルダーを追い抜き、ユニコーンイーバに突っ込んで行った。

シグフェル「行くぞ!」
ユニコーンイーバ「シィグゥフェルゥ…!」

ユニコーンイーバも牙を剥き、シグフェルに向かって突進する。
正面から激突した両者は激しく殴り合った。

クロスランダー「これが、シグフェルとイーバの戦いか…」
メタルダー「どちらも凄まじいパワーだ」

さしものクロスランダーも、
しばらくはシグフェルとイーバの格闘を呆然と見ていたが、
やがて冷静さを取り戻したゴチャックがクロスランダーに進言した。

ゴチャック「イーバなど今はどうでもいい。
 とにかくシグフェルの捕獲を最優先すべきと心得る。
 それが帝王のご命令ですぞ!」
クロスランダー「よし分かった。見ていろ…」

ゴチャックの進言を受けたクロスランダーは銃を取り、
ユニコーンイーバと戦うシグフェルを横から奇襲射撃した。

シグフェル「うわっ!」
メタルダー「クロスランダー!」
クロスランダー「フハハハハ!
 どんな好機も決して逃さんのが真の殺し屋というものよ!」

銃撃を浴びて倒れたシグフェルに、
ユニコーンイーバは長い角を向けて突進し跳ね飛ばす。
シグフェルのピンチを見て、再びメタルダーが割って入り、
ユニコーンイーバの正面に躍り出て注意を引き付けた。

1400 

シグフェル「くっ…!」

痛みを堪えて立ち上がり、すぐにメタルダーに加勢しようとするシグフェルだったが、
その前にゴチャックが立ち塞がる。

シグフェル「邪魔だ、どけ!」
ゴチャック「ククク…。そうは行かんな。
 我こそは戦闘ロボット軍団・爆闘士ゴチャック!
 いざ尋常に勝負だシグフェル!」

やむなくゴチャックに向かって戦闘体勢を取るシグフェル。
琉球空手を戦闘スタイルに生かして戦うシグフェルだが、
ゴチャックも恩師である巨人ビッグウェインから
あらゆる武術を徹底的に叩き込まれてきた格闘家ロボットである。
構えや間合いの取り方一つ見てもただ者ではないと、
格闘技の経験からシグフェルはすぐに悟った。

ゴチャック「ゴチャックフライング!」
シグフェル「おっと!」

シグフェルが距離を詰めようと踏み込んだ瞬間、
ゴチャックは両腕でシグフェルを捕らえ力一杯投げ飛ばす。
放り投げられたシグフェルは翼で浮力を作り、
空中で体勢を立て直して着地したが、
すかさず突っ込んで来たゴチャックに押さえ込まれ、首絞めをされた。

ゴチャック「ゴチャックロック~!」
シグフェル「ぐ……がっ……」

シグフェルの首をねじ切らんばかりに捻るゴチャック。
意識が危うく落ちそうになるシグフェルだったが、
最後の力を振り絞り、渾身の肘打ちをゴチャックの脇腹に炸裂させた!

ゴチャック「うおっ!?」

凄まじいパワーの一撃を受け、ゴチャックの脇腹にクレーターができる。

シグフェル「止めだ!」

絞め技を振りほどいたシグフェルは、
琉球空手の型に倣った見事な正拳突きでゴチャックの頭を殴り、
電子頭脳をショートさせて倒したのだった。


一方、ユニコーンイーバと一対一で戦うメタルダーは、
相変わらず敵の繰り出す時空クレバスに翻弄され、手出しができずにいた。

メタルダー「何とかして時空クレバスを破らなければ、
 奴に攻撃を当てる事は不可能だ」

メタルダーの戦闘マニュアルコンピューターがフル回転し、
イーバの無敵の盾とも言うべき時空クレバスへの対処法を模索する。
そして導き出された答は――。

メタルダー「――流星キックだ!」

先刻、舞から借りたタブレットで見たウルトラマンジャックの技である。
ジャックがキングザウルス三世のバリアを飛び越えて攻撃したように、
イーバの時空クレバスもジャンプで突破する事は可能なはずだ。

メタルダー「問題は、奴がどこに時空クレバスを作るかだ」

キングザウルス三世のバリアと違って難しいのは、
時空クレバスがいつも決まった位置にではなく、
イーバの任意の位置に出現するため、ジャンプの距離間隔が計りにくい点である。
事前に時空クレバスの位置を確定できない以上、
ユニコーンイーバが時空クレバスを発生させた直後にこれを飛び越え、
二つ目の時空クレバスが張られる前に懐に飛び込んで攻撃するという、
疾風の如き素早い動きが求められる。

メタルダー「よし…。やってみるしかない」

猛然とユニコーンイーバに突進を開始するメタルダー。
ユニコーンイーバは自分の正面に時空クレバスを展開して防御する。

メタルダー「今だ!」

時空クレバスが張られた瞬間、両脚で力強く跳躍するメタルダー。
空中で体を捻り、そのままキックの体勢に入る。
ユニコーンイーバは咄嗟に自分の斜め上に二つ目の時空クレバスを張ろうとするが、
急降下するメタルダーはそれをギリギリで間に合わせず、
必殺の流星キックをユニコーンイーバの角に炸裂させて蹴り折った。

ユニコーンイーバ「グァォッ!?」
メタルダー「ヤァッ!」

ユニコーンイーバの懐へ飛び込んだメタルダーは折れた角をキャッチし、
そのままユニコーンイーバの腹に突き刺した。
長く鋭い角がメカの装甲を貫通し、
ユニコーンイーバは口から血とも体液ともつかない液体を吐いて
悶えながら仰向けに倒れる。

ユニコーンイーバ「グォ…ヴァァッ…!」
メタルダー「やった…!」

遂に絶命するユニコーンイーバ。
ブレイバーズの戦士が、初めて自力でイーバを仕留めた瞬間であった。

1401 

メタルダー「クロスランダー!」
シグフェル「残るはお前一人だ!」
クロスランダー「フフフ…。望むところだ。
 今度こそ俺はメタルダーを討ち取り、シグフェルを捕らえて
 ネロス帝国のナンバー1ロボットの座に輝いてみせる!」

ユニコーンイーバがメタルダーに倒され、
ゴブリット、デデモス、ゴチャックもことごとく戦闘不能となったところで、
クロスランダーは再びシグフェルとメタルダーに挑戦する。

メタルダー「行くぞ!」
クロスランダー「来いメタルダー!」

まずはメタルダーが仕掛けた。
クロスランダーに正面から攻めかかるメタルダーだが、
二丁拳銃の乱射で容易に近付けない。

シグフェル「うおおっ!」

シグフェルも続けて突っ込み、一発目のビーム弾を身軽にかわしたが、
もう一丁の銃から間髪入れずに放たれた二発目の直撃を受け、
手痛いダメージを負って倒れ込んだ。

シグフェル「くっ…! 二丁拳銃ってのはなかなか厄介だぜ」
メタルダー「こうなったら、二人のコンビネーション攻撃だ!」
シグフェル「よし…!」

一人に同時に二丁の銃を向けられると厳しいが、
一丁ずつなら何とか対処できる。
メタルダーとシグフェルは距離を取って左右に分かれ、
クロスランダーを挟み撃ちにする態勢を取った。

クロスランダー「フン、小癪な…」

自分の右に立つメタルダーに右手の銃を、
左に立つシグフェルに左手の銃を向け、
クロスランダーは仁王立ちの姿勢で身構える。

メタルダー「レーザーアーム!!」

メタルダーの右手に、青白い高熱の電光が走る。
メタルダーの必殺技・レーザーアームである。

シグフェル「なるほどね…。俺もやってみるか!」

メタルダーのレーザーアームを見て閃いたシグフェルは、
ごく自然に、その動作を真似るようにして右手を振り上げた。

シグフェル「フレイムアーム! …ってとこかな」

指先から迸った真っ赤な炎がシグフェルの手を包み、
レーザーアームの火炎版とでも言うべき灼熱の手刀が完成する。
「フレイムアーム」。シグフェルは一見してレーザーアームの要領を掴み、
自分の技に応用して新技を編み出したのである。

シグフェル「………」
メタルダー「………」
クロスランダー「さあ、どこからでもかかって来い!」

二人の突進するタイミングがズレては、
クロスランダーに片方ずつ順に対処されてしまい意味がない。
左右に分かれたメタルダーとシグフェルは互いの動きをよく注視し、
呼吸を合わせて仕掛けるべき時を計る。

メタルダー「――今だ!」
シグフェル「――よし!」

寸分のズレもなく、左右から同時に駆け出した両者。
クロスランダーは二人に一丁ずつ向けていた二丁拳銃を同時に発砲した。

シグフェル「とうっ!」
メタルダー「ヤァッ!」

飛んで来たビーム弾を、シグフェルとメタルダーはジャンプで飛び越え、
空中で腕を振り上げ手刀の斬りつけ態勢に入る。

メタルダー「つぁっ!!」
シグフェル「喰らえぇぇぇっ!!」

さしものガンマンロボット・クロスランダーも、
素早く上に跳んだ両者を同時にロックオンして二発目を撃つのは不可能だった。
右からはメタルダーが青い光の手刀・レーザーアームを、
左からはシグフェルが赤い炎の手刀・フレイムアームを降下と同時に振り下ろす。

クロスランダー「ぐわぁぁぁっ!!」

両肩から胸まで斜めに斬り下げられて、クロスランダーは大爆発。
胴体が木端微塵に吹き飛び、首から下を失った頭部が爆風に乗り宙を舞った。

1402 

舞「やっぱり強いわ。さすがシグフェル!」
八荒「舞ちゃん、そんな事より、ほらシャッターチャンス!」
舞「ええ、分かってる!」

戦いが終わり、コンテナの陰から出て来た舞はカメラを向け、
炎の中で残心の姿勢を取るシグフェルを撮影する。

メタルダー「シグフェル…」

シグフェルに歩み寄り、声をかけようとするメタルダーだったが、
シグフェルは何かを逡巡している様子で顔をそむけ、寂しげにうつむいた。

メタルダー「………」

本当なら、ブレイバーズに加わるようシグフェルを勧誘すべき立場のメタルダーだが、
訳ありげなシグフェルの態度がそれを躊躇わせた。
本当は共闘した事を称え合い、喜び合いたいのに、
何かがそれをさせてくれない様子である。
シグフェルの事情、また胸中は、恐らく予想以上に複雑だ。
今はまだ、仲間に誘う言葉はシグフェルには届かないとメタルダーは判断した。

メタルダー「シグフェル、一つだけ聞かせてくれ。
 君は何のために戦っている?」
シグフェル「…よく分からない」

メタルダーの問いかけにそれだけ答え、
シグフェルは背を向け、悲しそうに空を見上げると、
そのまま翼を羽ばたかせて飛び去ってしまった。

八荒「何だよ。やたら強いくせに、愛想だけは良くねえの…」
舞「謎のスーパーヒーロー・シグフェル。
 できれば直撃インタビューと行きたかったけど、
 あの様子じゃそういうのは無理そうね…」
メタルダー「シグフェル…」

メタルダーは気付いていた。
去り際に向けられたシグフェルの目が、とても悲しげだった事に、
それは自分の存在そのものに悩み、苦悩している者の目である。
「風よ、雲よ、太陽よ、心在らば教えてくれ。なぜこの世に生まれたのだ――」
かつてそう叫んだ自分と相通じる心境がシグフェルの目に読み取れた気がして、
メタルダーは胸に詰まるものを感じるのであった。

 ◇   ◇   ◇

バルスキー「シグフェル…。
 次こそは必ず、お前を捕らえてみせるぞ…!」

地面に転がったクロスランダーの首を拾って小脇に抱えながら、
バルスキーは夕暮れの空を見上げて言った。

クロスランダーの首「ぐ…軍団長殿…。
 も…申し訳…ございません…。俺は…お、俺は…!」
バルスキー「もう何も言うなクロスランダー。
 お前はよく戦った。この敗戦の責任は俺が取る。
 さあ、帰るぞ。車を出せ」
ゲバローズ「了解。発進します!」

無残に破壊されたクロスランダーら戦闘ロボット達を収容し、
バルスキーはゲバローズに命じてドライガンを走らせた。

1403 

八荒「えっ? 写真を雑誌に載せない!?」
舞「ええ。何だか、その方がいい気がするの」

事件後。せっかく激写に成功したシグフェルの写真を、
『週刊アップ』に掲載するのをやめるという舞の発言に八荒は驚く。

八荒「ど、どうして…?
 せっかくあんな危険な目に遭ってまでモノにした
 最高のスクープ写真なのに」
舞「だって…。この写真に映ったシグフェルの目、
 何だかとっても悲しそうに見えて来るんですもの」
八荒「目…?」

舞から手渡されたシグフェルの写真を、
八荒はまじまじと見詰めて首を捻る。

流星「シグフェルは、自分が戦っている理由は何か分からないと言っていた。
 古賀博士に眠りから覚まされて、起動したばかりの僕と同じだ。
 彼は自分が置かれた状況にきっと戸惑っている」
舞「これは私の凄~く勝手な推測だけど…。
 シグフェルは、きっと自分から望んでシグフェルになったわけではないのよ。
 どういう経緯かは分からないけれど、何か思わぬ出来事があって、
 自分の意思に反してシグフェルになってしまった人がいて…。
 そう、仮面ライダーの本郷さんや一文字さんみたいに、
 シグフェルっていうのは誰か普通の人が、
 何かの力で強制的に異形の姿に変えられてしまったものなのかも知れないわ」
流星「僕もそんな気がする。
 彼はきっと、色々と悩み苦しんでいるんだ。
 ブレイバーズの呼びかけにすぐに応じようとしないのも、
 彼自身、まだどうしていいか分からないからじゃないだろうか」
八荒「う~ん、なるほどねえ…。
 あくまで推測に過ぎないけど、確かにその可能性はあり得るな」
舞「そういう事を考えると、
 今シグフェルを興味本位で追い駆け回して報道のネタにするのは、
 ちょっと不謹慎な気がするのよ。
 だからせっかく撮ったスクープ写真だけど、これはお蔵入り。
 シグフェル特集がなくてもしっかり読者に楽しんでもらえるような、
 別のネタを探して写真にするわ」
八荒「舞ちゃんは偉いな~。
 そこらの下世話な金儲け主義のパパラッチとは大違い。
 これぞマスコミの鑑だね」
舞「もう、八荒さんったら~」

少し照れくさそうに笑う舞。
次号の『週刊アップ』はシグフェル特集こそなかったものの、
舞があちこち駆けずり回って撮影した「東京街並み探訪 ~豊洲編~」が充実の内容で、
読者からまずまずの好評を得たという。

 ◇   ◇   ◇

数日後――。
包帯を巻いた右手でゆっくりとページを捲りながら、
優香は光平と一緒に『週刊アップ』の最新号を読んでいた。

光平「フレイムアーム! か…///
 何で俺、あんな風にしたんだろう」

自分の右手を見ながら光平が呟く。
レーザーアームの要領を一瞬で掴んで我流にアレンジしたシグフェルの高い戦闘センスは、
変身している光平自身、驚きを禁じ得ないほどのものである。
技の名前を叫んだのも含めて、本能に導かれるようにして自然にできてしまった事だったが、
後で思い出してみると不思議であり、微妙に気恥ずかしい面もなくはないのであった。

光平「(ともかく、技を一つモノにできたのは収穫…かな)」
優香「ねえ光平くん! 聞いてる?」
光平「…あ、悪い悪い。ちょっとぼんやりしてた。
 ええっと、何の話だっけ?」
優香「ほら、ここのお店、今度行ってみたいなって」

ボーイフレンドの自宅の近所という事もあってか、
『週刊アップ』で紹介されている豊洲の町並みを優香はとても楽しそうに眺めている。

慎哉「どの雑誌も揃いも揃ってシグフェル特集ばかりな中で、
 こういう地味に面白い企画をやるんだから
 『週刊アップ』はやっぱり違うよな」
光平「でもさ…豊洲特集って、思い切りうちの近所じゃん!
 この新しくできたラーメン屋なんて、すぐ裏のあそこだろ?
 もしかしてあの仰木さんって人、
 もうそこまで分かってるんじゃ…」
優香「それはないと思うけど…。
 …あ、ここの公園も素敵ね。今度連れて行ってよ」
光平「ああ。ここもうちのすぐ近くだよ…」

近所の街並み、美味しいレストラン、素敵なデートスポット…。
これでもかと言わんばかりに馴染みの場所ばかりが撮られた雑誌を、
冷や汗をかきながら読む光平であった。

1404 

○メタルダー→シグフェルと共闘し、ユニコーンイーバとクロスランダーを倒す。
○仰木舞→シグフェルのスクープ写真の撮影に成功するが、雑誌への掲載は取りやめる。
○北八荒→シグフェルのスクープ写真を雑誌に載せないという舞の決断に驚く。
●クロスランダー→メタルダーとシグフェルの同時攻撃で敗れる。
●デデモス→ユニコーンイーバに倒されてダウンする。
●ゴブリット→ユニコーンイーバに倒されてダウンする。
●ゴチャック→シグフェルと戦うが敗れる。
●バルスキー→シグフェルに敗れたクロスランダー達を収容し撤退する。
●ゲバローズ→シグフェルに敗れたクロスランダー達を収容し撤退する。

○シグフェル→メタルダーと共闘し、ゴチャックとクロスランダーを倒す。
       その後、『週刊アップ』の豊洲特集を読んで冷や汗をかく。
○朝倉慎哉→『週刊アップ』の豊洲特集を読む。
○沢渡優香→『週刊アップ』の豊洲特集を読む。
●ユニコーンイーバ→ネロス軍団員を襲うが、メタルダーに倒される。

【今回の新規登場】
●ユニコーンイーバ(闘争の系統オリジナル)
 堕神の使徒で、ユニコーンにメカの装甲を融合させたような怪物。
 両肩に一門ずつビーム砲を装備している。


『赤心少林拳、梅花の型』-1

作者・ティアラロイド

1405 

***暗峠・奈良と大阪の県境付近***

花が散り、青葉の季節。

暗峠(くらがりとうげ)は、奈良県生駒市と大阪府東大阪市との境にある峠道。
古くは闇峠とも書かれた。

一人の伊賀者が山伏に扮し、険しい坂道を登りながら、
深編笠の老僧の後を見え隠れに尾行している。

山伏「……(どこまで行く気だ?)」

日差しが暑い中、深編笠の老僧はその見かけの歳に似合わず足が速い。
分厚い肩と、バネのような腰を持っていた。
この老僧がどこに行き、誰と会い、どんな話をするのかは、
後を静かにつける山伏の雇い主の最大の関心事だった。

雑木の枝が鬱然と道を覆い、緑の洞穴を行くようである。
ここの坂の険しい道さえ越えれば、向こうには大和盆地が見えるはずだ。
登って曲がり角に来ると、ふと、路上に笠が落ちていた。
尾行対象の老僧がかぶっていた物だ。

山伏「……?」

山伏は思わずそれを拾おうとしてしまった。
地面の編笠に手を伸ばそうとした時――。

玄海「手数をかける」
山伏「――!!」

背後から老僧の低い声がした。山伏は驚いたが身体が動かない。

玄海「よい道連れが出来た。もし行く方向が同じであれば、
 一緒に山を下らぬか?」
山伏「は、はい…」
玄海「拙僧は秩父山中にある赤心寺の住職で、玄海という者だ」

玄海老師――秩父連山の大森林に建つ、赤心寺という由緒ある禅寺の住職であり、
高名な拳法流派・赤心少林拳の最高師範でもある。

山伏「ご高名は承っております。旅の空の下でなければ、我々卑賤の修験者が
 お側にも寄れぬ御方にございます。しかし玄海禅師様といえば、恐れ多くも
 聖天子様より紫衣を賜りたるほどの御方。それがお弟子を一人も連れず、
 公共の交通機関も利用されずに一人旅をなされるとは、
 どういうご酔狂でございましょう?」
玄海「単に癖だ。この玄海、文明の利器とやらは常々苦手でな。気にするな」

二人は苔を踏んで山道を歩いて行く。

山伏「申し遅れました。拙者は吉野蔵王堂の修験者にて、備前坊了角と申しまする。」
玄海「そうか。しかし御坊もわしと同じく妙な癖を持っているようだ。
 一昨日は農家、昨日はガソリンスタンドの店員、そして今日は山伏か。ご苦労な事だな…」
山伏「――!!」

偽山伏の正体は、最初から玄海には見破られていた。
しかし玄海の側には、それで化けの皮を剥いだ相手と事を構えようとも、
また逃げようとする様子も全く見せない。ただ二人で一緒に並んで
悠然と険しい峠道を歩いているのみである。

玄海「もうよい。わしはつけられるのには慣れておる。
 天童菊之丞殿という御仁も風変わりなお人だ。
 お前たちのような伊賀甲賀の者を多数扶持なされて、
 なにをなさろうというのか」
山伏「………」

ここまで素性を暴かれた今となっては、偽山伏=天童配下の密偵は、
ただ茫然とするのみであった。

玄海「わしは奈良へ行く」
山伏「奈良へ…?」
玄海「奈良に住む遠戚の者が病に伏せっておるのでな。とうに調べはついておろう。
 赤心寺玄海、奈良の親類の病気見舞い。帰って雇い主にそう伝えるがよい」

1406 

***ネロス帝国・ゴーストバンク***

クールギン「我が帝国にゾルベゲールなどという者は
 滞在してはおらん」
メガール「とぼけるな! こちらにはゾルベゲールが
 ネロス帝国に匿われているという確かな情報があるのだ!」

応対に出たネロス帝国のヨロイ軍団長・凱聖クールギンと
延々と押し問答を続けているのは、ドグマ王国の大幹部である
メガール将軍である。メガールは、かつて不逞な野心を抱いて
帝王テラーマクロに反逆した元ナチスの科学者・ゾルベゲール博士が
密かにネロス帝国に身を寄せたとの情報をどこからか聞きつけ、
その抗議及びゾルベゲールの身柄引き渡しを要求しに
ここゴーストバンクに乗り込んで来たのだが…。

クールギン「そこまで言うからには、どうぞ気の済むまで
 このゴーストバンクを家捜しされるがよかろう」
メガール「無論そのつもりよ!」
クールギン「ただしメガール将軍、わがネロス帝国の母なる聖域を
 土足で踏み荒らした揚句、結果お探しの物が何も出てこなかった時は、
 それ相応の御覚悟は当然できておられような?」
メガール「そ、それは…!」

クールギンの言葉にメガールは怯んでしまう。
生まれながらの生粋の武人であるクールギンに対して、
メガールはその正体は奥沢正人という名の日本人科学者であり、
元々は文人肌の性分の持ち主。
双方から放たれる威圧感というものは、
自然とその差が明白に出ていたのであった。

クールギン「これ以上の話し合いは時間の無駄。
 速やかにお引き取り願おう」
メガール「おのれっ!」

メガール将軍は腰の刀の柄に一瞬手をかける。
しかし、クールギンの気迫に押されてたじろいでしまう。

クールギン「やるかな!?」
メガール「ぐっ…ぬぬっ!!」


***ドグマ王国・宮殿***

親衛隊「それで何も反論できずに、おめおめと帰って来たのか!!」
メガール「………」

ここは日本国内のどこかにある霊山に建設された、
ドグマ王国の本拠地にして、帝王テラーマクロの居城でもあるドグマ宮殿である。
ネロス帝国との交渉に失敗してすごすご追い返されて来た
メガール将軍は、案の定、親衛隊から叱責を受けていた。

メガール「え~い!黙れえっ!! この上はネロス帝国よりも先に
 シグフェルの正体をこの手で暴き、奴等の鼻を明かしてやるまでよ!」
親衛隊「ふんっ! メガールよ、貴様にそのようなことが可能なのか!?」
メガール「見ているがいい。出でよ、ドグマ超A級怪人ギョストマよ!!」

ドグマ超A級怪人ギョストマとは、ドグマで暗殺拳の達人を養成する
地獄谷の出身であり、仲間からすら悪魔の生まれ変わりとまで恐れられる、
寄生虫型の改造人間である。

ギョストマ「ドグマ超A級怪人ギョストマ、これに…」
メガール「ギョストマよ、お前はこれから東京都内に居住する
 あらゆる武術家を片っ端から打ちのめし、シグフェルと思しき
 武術に覚えのありそうな猛者を絞り込むのだ!」
ギョストマ「ハハーッ! お任せを…」

1407 

***海防大学付属高校・空手部道場***

光平「よろしくお願いしますっ!」

両手に格闘技用のグローブを身につけた稽古儀姿に着替え、
明るい声で礼をして、しっかりと拳を構える牧村光平。
空手部の部員たちが次々と光平に挑みかかるが、
ほぼ全員が仰向けになって倒れこんでしまう。

部長「さすがだな牧村!」
光平「………」

海防大付属高の部活動の拘束は、他校に比べて緩い。
幽霊部員は当たり前。部の練習よりもアルバイトに精を出したり、
幾つかの部を掛け持ちしている生徒も珍しくない。
一般の中高のクラブ活動よりは、大学のサークル活動に近い形だ。
普段の正式に所属している部活動はテニス部である光平だったが、
空手の心得もある事から、時折こうして助っ人部員として
空手部の練習や試合にも参加する事がある。

部長「やはりお前は五年、いや十年に一度の逸材だよ!」
光平「そんなことはないですよ。からかわないでください」
部長「惜しい! 実に惜しい! お前がいれば
 インターハイ優勝も間違いないのに、なんでテニス部なんだ!
 今からでも遅くはないぞ。テニス部なんか辞めて
 空手部に移籍しないか? お前なら全部員を挙げて大歓迎だ♪」
光平「ハハハ……(汗」

部長からの熱烈な勧誘を、光平は笑って誤魔化した。

慎哉「ちょっと待ってください先輩!
 光平はうち(テニス部)の大事なエースなんですから!
 勝手に引き抜かれるのは困るっスよ!」
部長「う~ん、それでも本当に勿体ないよなあ…」

道場内の脇で、沢渡優香と二人で見学していた朝倉慎哉が、
慌てて空手部からの引き抜きに待ったをかける。
それでも部長は未練そうな表情を浮かべたままだ。
そこへ一年生部員が、部長に何やら報告しにやって来た。

部員「部長、沖コーチがお見えになりました」
部長「そうか。すぐにお通ししてくれ」
優香「沖コーチ? 誰かしら…」
光平「先輩、沖コーチってどなたなんですか?」

少し気になった光平たちは、それとなく部長に尋ねてみた。

部長「そうだな、せっかくの機会だ。お前たちにも引き合わせよう」

1408 

部長「紹介しよう。こちらは赤心少林拳、沖一也さんだ。
 元アメリカ国際宇宙開発研究所所属の宇宙飛行士で、
 我が校の空手部の非常勤コーチを引き受けていただいている」
一也「やあ!」

光平たちが部長から紹介されたのは、
ボリュームがあり先端が跳ね上がった髪型が特徴の、
さわやかながらも禁欲的な顔立ちの男性だった。

優香「セキシンショウリンケン…??」
部長「まあ、沢渡と朝倉は知らないかもしれんが、
 牧村なら噂くらい聞いたことはあるだろう」
光平「………」

光平も、秩父連山の大森林に、赤心寺という寺院があり、
そこに集まった修行僧たちが日夜修業に明け暮れているという
中国拳法の大修練場があるという話は、幼い時に沖縄にいる
父方の祖父から聞いたことはあった。

光平「はじめまして、牧村光平と言います」
一也「沖一也だ。こちらこそよろしく!
 牧村光平君、よく君の話は部長から聞いているよ。
 ここは一つ、手合わせをお願いできないかな?」
光平「勿論いいですよ。よろしくお願いします!」

両者向かい合い、それぞれに拳を構えて対峙する。
光平にとって、実際に本物の赤心少林拳を間近で見るのは
初めての機会である。

光平「………」
一也「……(美しい。完璧にスキのない構えだ。
 だがっ…!!)」

光平は一也めがけて渾身のボディーブローを放ってくる。
しかしその一撃は、一也の鍛え抜かれた鋼の腹筋によって
軽々と受け止められた。

一也「やあっ!!!」
光平「――!?」

一也は気合に満ちた声を張り上げる。
空手道とは精神のぶつけ合いであることも
理解している一也の発した、尋常ではない気迫と澄んだ瞳に、
まるで光平は金縛りにあったかのように動けない。

一也「せいやっ!!!」
光平「うわああっ!!」

一也の拳が命中した光平は、その場に倒れこんだ。
光平が空手で敗れる様を生まれて初めて見た
慎哉と優香も驚きを隠せないでいる。

優香「ええっ!?」
慎哉「ウソだろ! あの光平がこうもあっさりと
 負けるなんて…」

1409 

光平「まいりました」

起き上った光平は潔く負けを認め、勝者である一也に敬意を払い
深々と一礼する。しかしその表情には悔しさや無念さといった類のものは
一切なかった。むしろ胸に来る強烈な、しかし心地よい刺激を受け、
まさにそれは満面の笑顔と言ってもよかった。

一也「技が少し大ぶりだ。ちょっと力み過ぎたな」
光平「はい!」
一也「しかし、拳の握り方、姿勢、筋肉の使い方など、
 突きの何たるかはしっかりと学びとっているようだな。
 さすがだ…」
光平「沖コーチ…いえ、一也さん、
 また相手をしてもらってもいいですか?」
一也「俺でよければ、いつでもよろこんで」
光平「ありがとうございます!」

牧村光平と沖一也は、固い握手を交わすのであった。

◇  ◇  ◇

部活動の練習時間も終わり、
すっかり日も沈んで完全下校時刻になった。
更衣室で制服に着替えた光平は、
校門前で待っていた慎哉や優香と合流して
自転車に乗り校外へと出る。

優香「光平くんったら、沖一也さんとすっかり仲良くなっちゃって…」
慎哉「なんだよ、男同士の友情に嫉妬か?」
優香「そんなんじゃないけど…」

優香は少し脹れて不満そうな表情を浮かべる。

光平「でも一也さんは凄いよ。あの人と組み合っていると、
 なんて言うかさ、今までに無い、肉体を直にぶつけあう
 ような魅力を感じるんだ」
優香「ふ~ん、そう…。そんなに気に入ったのなら、
 いっそテニス部を辞めて空手部にでも入っちゃえばいいのに」
慎哉「おいおい、沢渡まで勘弁してくれよ。
 光平が抜けたらテニス部の方はどうなるんだよ!」

光平は一方的に格闘技の魅力を熱く語るものの、
やはり優香のような女の子には今一理解できないらしい。
慎哉は"本気で光平が空手部に移籍するのでは?"と心配を口に出す。

こうして空手部の練習に顔を出すようになったのも、
数日前の超人機メタルダーとの思わぬ出会いと共闘以来、
光平自身にも何か思うところがあったらしい。

そうして自転車で道なりに進んでいると、
一台のパトカーが待ち構えていた。

1410 

優香「あれっ、チャックさんに美姫さん?」
光平「どうしたんですか?」
チャック「どうしたんですか…じゃない!!」

光平たちとも知り合いである、
メガロシティ署の刑事のチャック・スェーガーと桂美姫だ。
だがチャックも美姫も二人とも、いつもとは違って
鬼気迫るような形相をしている。

美姫「あなたたちに一つ確認しておきたいことがあるの!」
チャック「お前ら、最近、東条寺理乃の身辺を探っているそうだな?」

チャックの突然の追及に、たちまち光平たちは青ざめる。

光平「……Σ(゚Д゚;)ギクッ!!」
慎哉「な、なんのことかなぁ…(;゙゚'ω゚'):」
チャック「とぼけるな!」
美姫「その顔を見ると、やっぱり図星ね…」

美姫は呆れるような顔をする。

チャック「俺たちが何も知らないと思ったら大間違いだぞ!
 どういうつもりかは知らんが、探偵ごっこもたいがいにしろ!」
優香「待ってください、チャックさん!美姫さん!
 これにはいろいろと訳が……」
チャック「訳…?」
光平「――優香ッ!」
優香「あっ…!」

光平が何かを言おうとした優香を制止し、
彼女もハッとなって口に出すのを思い留まる。
光平たちとチャックや美姫とは親しい付き合いの間柄ではあるが、
詳しい事情まで話せば、シグフェルの正体に触れない訳にはいかなくなる。

チャック「いいか! どういう訳があるのかは知らんが、
 東条寺理乃は殺人事件の容疑者なんだぞ。お前たち高校生が
 関わっていい相手じゃない」
美姫「もし迂闊に凶悪犯に関わって、危険な目にでも
 遭ったらどうするの!」
光平「すみません。チャックさん、それに美姫さん。
 以後気をつけます」
チャック「後の事は俺たち警察に任せてくれると
 約束してくれるな?」
光平「はい」
美姫「わかったわ。光平君、あなたの言葉を信じましょう。
 慎哉君、優香ちゃん、あなたたちもよ!」
慎哉「は…はい!」
優香「わかりました」
チャック「よしっ! それなら今日は寄り道せずに
 まっすぐ家に帰るんだ!」

チャックと美姫は、光平たちにキツく忠告だけして、
今日のところはパトカーに戻り去って行った。

優香「チャックさんも美姫さんも私たちの事を
 心配してくれているのはわかるんだけど…」
慎哉「これ以上、東条寺理乃について調べられないとなると、
 どうする光平?」
光平「………」

1411 

一方、その頃……。

***東京都内・某民間道場***

師範代「や、やられたあ~~!!!」
大石「フン、ふがいない。どうやらここにも
 シグフェルの正体に該当しそうな格闘家は
 誰もいないようだな…」

中国拳法・拳竜会の最高師範である大石秀人。
恐るべき殺人拳法の使い手であり、その正体は何を隠そう、
あのドグマ超A級怪人ギョストマである。
大石の周囲には、無残にも敗れ去った門下生たちが、
まるで屍のように何人も横に倒れ重なっている。

大石「では、この看板は頂いていくぞ!
 文句はないな?」

道場の看板を奪い取った大石は、意気揚々と引き揚げていく。
外では、背広姿のキャプテン・ゴメスが一部始終を見ながら待っていた。

ゴメス「見事だな。さすがはドグマ拳法最高の使い手と呼ばれる
 だけのことはある。…で、シグフェルらしき武術の使い手は
 見つかったかね?」
大石「ダメだ。どいつもこいつも弱すぎる。てんで話にならん!」
ゴメス「だがおかげで数は順調に絞り込めている。
 スマートブレインもシグフェル捕獲作戦には全面協力の方針だ」
大石「それはありがたい。それで、次はどこだ?」
ドグマファイター「ハッ、次はこの場所です!」

待機していた戦闘員ドグマファイターから
次の目的地が記された地図を見せられた大石は一言だけ呟く。

大石「海防大学付属高等学校、空手部か…」

1412 

○玄海老師→奈良県境の峠道で、天童菊之丞配下の密偵の尾行をやり過ごす。
○沖一也→牧村光平と出会い、彼に空手の稽古をつける。
○チャック・スェーガー→もう東条寺理乃には関わらないよう、牧村光平たちにキツく忠告する。
○桂美姫→もう東条寺理乃には関わらないよう、牧村光平たちにキツく忠告する。
●凱聖クールギン→ドグマ王国からのゾルベゲール博士の身柄引き渡し要求を拒絶。
●メガール将軍→ネロス帝国にゾルベゲール博士の身柄引き渡しを要求するが拒絶される。
 ギョストマにシグフェル捜索を命じる。
●ドグマ親衛隊→ゴーストバンクから帰ってきたメガール将軍を叱責。
●大石秀人/ギョストマ→シグフェルの正体を掴むため、都内各所で道場破りを行う。

○牧村光平→空手部の助っ人部員として稽古に参加。沖一也と出会う。
○朝倉慎哉→牧村光平と沖一也の手合わせに立ち会う。
○沢渡優香→牧村光平と沖一也の手合わせに立ち会う。

【今回の新規登場】
○玄海老師(仮面ライダースーパー1)
 沖一也の拳法の師である禅僧であり、中国拳法・赤心少林拳の総帥。
 老年だがその拳法の腕は凄まじく、素手でドグマ怪人ストロングベアを倒している。
 一也に「梅花の型」「真剣白刃取り」等の極意を伝授。ドグマ王国との最終決戦で
 カイザーグロウと戦い命を落とすが、見破ったその弱点を一也に伝えた。

●ドグマ親衛隊(仮面ライダースーパー1)
 ドグマ王国の帝王テラーマクロ直属の部下であり、メガール将軍よりやや上位の地位にある。
 メガール将軍との関係は不仲。剣や槍などを使ってスーパー1と交戦する事もある。
 複数体存在するが、便宜上個人として記載する。

●大石秀人=ライギョン=ドグマ超A級怪人ギョストマ(仮面ライダースーパー1)
 中国拳法・拳龍会の最高師範。その正体はドグマの殺人拳法の使い手。
 犯罪者や街のならず者に私刑(リンチ)を加えて民衆の支持を獲得し、
 ドグマ秘密警察を設立するために暗躍する。ライギョンはスーパー1の
 SR旋風キックを受けて呆気なく倒されるが、ギョストマはそのライギョンの腹を
 食い破って出て来て生まれ変わった姿。目からギョストマ幻魔光線を放ち、
 敵の手足を麻痺させ、思考能力を低下させる。


『赤心少林拳、梅花の型』-2

作者・ティアラロイド

1413 

***海防大学付属高校・テニスコート***

授業の時間も終わり、放課後のクラブ活動の練習風景である。
部員たちはそれぞれサーブやスマッシュの練習に打ち込んでいる。
その中で玉拾いをしている一年生部員がいる。名前は岡島雄大。
牧村光平や朝倉慎哉とは兄弟みたいに親しい仲の後輩だ。
そこへ空手部の一年生部員が血相を変えて駆けこんで来た。

雄大「お前、空手部の武井じゃないか!?
 どうしたんだよそんな顔色変えて…」
武井「ゼェ…ゼェ…ゼェ……岡島ッ…!
 牧村先輩はいるか…!?」

空手部の一年生部員・武井を、雄大は光平のところまで連れて行く。
ちょうど光平は、トスを背中側に上げてラケットを右上に振り向き、
ネット向こう側の慎哉に向けてスピンサーブを打ち込むところだった。

雄大「光平先輩~ッ!! 大変ですぅ~!!!」
光平「どうした雄大? 君は確か空手部の…?」
武井「ま、牧村先輩、すぐ来てください!!」
雄大「道場破りです!!」
慎哉「道場破り?」

雄大と武井の言葉に、思わず何の事かと
光平と慎哉は互いに顔を見合わせる。
江戸時代以前の昔、百歩譲っても昭和の時代ならともかく、
今時このご時世に「道場破り」だなんて
少なくとも自分の周囲では今まであまり聞いた事がない。

雄大「なにボケッとしてるんですか!
 早く道場の方に来てくださいよ!」
武井「お願いしますッ!」
光平「あ、ああ…」

武井の話によると、突然学校に何の前触れもなく
大石秀人と名乗る格闘家が現れ挑戦してきたのだと言う。
すでに剣道部、柔道部、ボクシング部、相撲部までもが全滅。
残る空手部もかなり危うい状況らしい。

1414 

***同校・空手部道場***

部長「む、無念…ッ。ぐぶっ…」
大石「………」

光平たちが駆けつけて来た頃にはすでに遅く、
部長以下空手部員たちは全員、大石に倒されてしまった後だった。
他の部活の生徒たちも騒ぎを聞きつけて大勢集まって来ていて、
その中には陸上部の沢渡優香もいた。

優香「光平くん! 朝倉くん!」
光平「優香も来てたのか!」
慎哉「こりゃひでぇ。何もここまでしなくたって…」

大石に敗れた部員たちは皆、ひどい痣だらけで
ほとんどが意識も失い倒れこんでいる。
中には大怪我を負い骨折している者までいた。
光平は横たわっていた部長をそっと安静に抱き起こす。

武井「部長!」
光平「先輩、何があったんですか!?
 しっかりしてください!!」
部長「ま、牧村か…。よく…来てくれた…。うっ……!!」

一方の大石は、いかにも欲求不満のつまらなそうな顔をしながら、
また部室の看板を取り上げて立ち去ろうとする。

大石「フン! では、看板は頂いて行くぞ」
光平「……待てよッ!!」
大石「……?」

部長の身を武井に預け、静かに立ち上がり大石を引きとめる光平。
その両目の瞳には怒りがこみ上げていた。

大石「なんだ君は?」
光平「こんなのは空手でも格闘技でもなんでもない!
 ただの暴力じゃないか!!」
大石「甘いな。この世の中は常に弱肉強食!
 弱い者はこういう末路をたどって当然なのだ!」
優香「…なんて人なの!」

大石の言葉を聞いていた優香も憤慨する気持ちを隠さない。

大石「…何だ? 何か文句があるようだな。
 見たところ君はテニス部員のようだが、ハハ…
 まさかそのラケットで俺を倒すつもりか?」
光平「武井、空手部の道着を貸してくれ…」
武井「えっ…!」
慎哉「待てよ光平! こんな奴の挑発に乗るな!」
優香「そうよ! 光平くんらしくないわ!」
雄大「よした方がいいですよ!!」

慎哉たちは光平を必死に止めるが、
光平の決意は変わらなかった。

光平「いいから早く!!」
武井「…は、はい!」

1415 

武井から予備の道着を借りてテニスウェアから着替え、所定の位置についた光平は、
臨時で主審を務めることになった武井を挟んで、目の前の大石秀人と対峙する。
光平と大石は無言で立礼する。

武井「勝負始め!」

大石にめがけて上段突きを繰り出す光平。
しかし自分の拳が大石の肉体の肌に接した時、
光平は何とも云い知れぬ違和感を覚えた。
まるで人間の体ではなく、無機質な鋼鉄の壁に
拳を打ち付けたような感触だった。

大石「どうした? その程度か!」
光平「……(まるで効いてない!?)」

光平は、目の前の相手・大石秀人が
実はドグマ王国の改造人間であることなど全く知らない。
違和感の正体を掴めず困惑する光平に、
今度は大石の側が容赦なく上段蹴りを浴びせる。

大石「とりゃああッ!!!」
光平「うわああッッ!!!」

光平は道場の壁際まで吹っ飛ばされる。
その後の光平は一方的に大石の繰り出す技に
打ちのめされ続けた。もう立っているのも
やっとな状態の光平に、大石は止めの顔面殴打をお見舞いする。

光平「うっ………」

がっくりと床に崩れ落ちてしまう光平。

優香「光平くんッ!!」
雄大「光平先輩ッ!!」

もはや勝負あったかに見えたが、それでも大石は
攻撃の手を止めるどころか、ますます光平を徹底的に痛めつける。

慎哉「何やってるんだ武井! 早くやめさせろ!!」
武井「は、はいッ!! やめーッッ!!」

主審が試合終了を宣言したのにも関わらず、
尚も大石は光平をいたぶり続けた。

大石「どうしたッ! さっきまでの大きな口を叩いた態度はどこへ行った!
 さあ立て! 立つんだこの腰ぬけがァッ!!」
優香「もうやめてください!!」

堪らずに飛び出した優香が光平を大石から庇う。

大石「どけッ! 邪魔だ!」
優香「いいえ退きません! もう充分だわ!
 やめてください!!」
光平「優…香……」

優香に介抱される光平を、大石は鼻で笑って見下した。

大石「女の子に助けてもらうとは…情けない奴め!」
光平「なん…だと…ッ」
優香「もうやめて光平くん!!」
大石「俺はたとえ女といえども容赦はしないぞ。
 お望み通り、二人まとめて地獄に叩き落としてやろう!」
光平「優香…逃げろ……逃げ…るんだッ」
優香「イヤッ!!」
大石「覚悟!!」

雄大「光平先輩!!」
慎哉「光平ッ!! 沢渡ッ!!」

大石の拳が光平と優香の二人に振り下ろそうとされたその時、
危うく寸前のところで別の拳によって防がれた。

大石「貴様はッ!?」
一也「もうそのくらいでいいだろう!」

沖一也が現れて間に入り助けに入ってくれたことで、
慎哉たちや他の観衆の生徒たちは皆、一様にホッと胸をなでおろして安堵する。

慎哉「た、助かった~!」
雄大「慎哉先輩、あの人誰なんです?」
慎哉「え~っと確か沖一也さんって言って、
 ここの空手部のコーチだよ」

1416 

大石「ここでは落ちついて話も出来ん。表へ出ろ」
一也「いいだろう!」

大石は周囲の生徒たちの目を気にし、
沖一也に一緒に外へと出るように促した。

慎哉「一也さん、大丈夫なんですか!?」
一也「大丈夫だ。後は俺に任せろ。それから救急車を呼んで、
 光平君たち怪我人を病院に運んでくれ」
慎哉「わかりました」

道場の裏手に出て、二人きりになる沖一也と大石秀人。

一也「よくもあんな惨い事を! 許さん!
 次は俺が相手だ!」
大石「慌てるな。今はまだお前と戦うつもりはない。
 お前たちブレイバーズも、シグフェルの正体は
 喉から手が出るほど知りたがっているはずだ」
一也「するとシグフェルの正体を突き止めるために
 こんな真似を!」

そこへパトカーのサイレンの音が、
校舎の方に近づいて来るのが聞こえた。

大石「…チッ! 面倒な奴らがやって来たようだ。
 沖一也、いや、仮面ライダースーパー1!
 勝負はいずれまたの機会に預けるぞ!
 …フハハハハハハ!!!!!」
一也「待て!!」

大石は空高くジャンプして校舎の屋上へと上がり、
そのまま引き揚げて姿を消してしまった。

1417 

***京南大学附属病院***

京南大学附属病院の病室へと収容された光平を見舞う沖一也。
ちょうど優香も、光平の病室をお見舞いと介抱のために訪れていたところだった。

優香「あ、一也さん」
一也「どうだい、光平君の様子は?」
光平「心配かけてすみません。ほらこの通り、
 もう大丈夫で――痛てッ!?」

ベットの上の光平は、もうすっかり全快したとアピールしようとして、
無理に腕を振り回して一瞬激痛が走り、表情を歪めてしまう。

一也「コラコラ、無理をしちゃいけないな」
優香「もう光平くんったら、まだ無茶しちゃダメよ!」
光平「本当にもう大丈夫だったら!」

一也や優香が止めるも、ムキになった顔をして不満そうな光平。
そこへ担当医が今日の回診にやって来た。

伝通院「おや、沖さん?」
一也「伝通院先生じゃないですか」
優香「…え? 一也さん、先生とお知合いなんですか?」
一也「あ、いや…」
伝通院「まあ、ちょっとね…」

沖一也と伝通院洸。
その正体はそれぞれ仮面ライダースーパー1と超星神グランセイザーのセイザーレムルスであり、
スーパー1の方がグランセイザーより戦いを開始した時期が早いため先輩ヒーローに当たるが、
どちらも裏の顔は、共に同じブレイバーズに所属する地球の平和を守る戦士である。
無論、そんな事を一般人の光平と優香が知る由もない。

伝通院「光平君、すっかり元気になったようだね。
 その調子なら明後日にも包帯が取れて退院できるだろう」
光平「ありがとうございます!」
伝通院「沖さん、ちょっと今いいですか?」
一也「ええ」

病室を出て廊下に出た一也と伝通院は、
光平の事について話し始めた。

一也「では光平君は以前にもこの病院に入院した事が?」
伝通院「ひどい火傷でしたが、驚異的な生命力で回復しました。
 どうもあの少年は我々とも何かと縁があるようだ」
一也「………」
伝通院「沖さん、光平君は怪我の方こそ回復しましたが、
 立て続けに大きな災難を経験しています。見た通りの強い子ですが、
 きっと内面にも傷を負い心中も決して穏やかではないでしょう。
 もし今後も引き続き彼に会う事があれば、精神面のケアの方をお願いします」
一也「わかりました」

1418 

***豊洲住宅街・朝倉家***

雄大「慎哉先輩! 見つけましたよ!」
慎哉「どれどれ、どこだ!?」

自宅自室のパソコンで、後輩の岡島雄大も部屋の中に連れ込んで
何やらずっと検索して調べている朝倉慎哉。
パソコンのモニター画面に映し出されているサイトのトップページには、
大きく「中国拳法・拳竜会」の文字が書かれてある。

雄大「大石秀人……中国拳法団体・拳竜会の代表で、
 数年前に一度謎の失踪を遂げてますけど、最近になって
 また姿を現し、門下生の数を急激に増やしつつ勢力を拡げてます。
 市議会議員とか街の有力者の中にもスポンサーになっている人間が
 かなりいるみたいです」
慎哉「光平の仇だ! 絶対にコイツの正体を暴いて
 尻尾を掴んでやる!」

慎哉は拳竜会のホームページの誰も近づけぬ最深部に
更なるアクセスとハッキングを試みる。


***拳竜会本部道場***

本部のコンピューターの異変に気付いた弟子の一人が、
すぐに大石に報告する。ちなみに大石の周りにいる弟子たちは、
皆全てドグマファイターの変身である。

弟子「先生、道場地下のメインコンピューターに
 何やら不法アクセスを試みる者がいます!」
大石「なんだと!? 小癪な…。
 よーしっ、直ちに逆ハッキングして発信元を割り出し、
 そいつをこの場に引きずり出せ!」
弟子「ハハーッ!」

1419 

***京南大学附属病院***

伝通院洸との話を終え、光平の病室へと戻る沖一也。

一也「おや、優香ちゃんは?」
光平「もう帰りました」
一也「そうか…」

光平はベットの上に横になったまま
意を決したように一也に話を切り出す。

光平「一也さん、実はお願いがあります」
一也「どうしたんだ? 急に改まって」
光平「退院したら、俺に稽古をつけてください!」
一也「光平君、まさか君は大石に再挑戦するつもりじゃ
 ないだろうな?」
光平「………」
一也「そうか…それでその話を聞かれたくなくて
 優香ちゃんを無理に早く帰したな?」

図星を突かれた形の光平だが、
一也に特訓を頼む姿勢に一歩も引く様子はない。

光平「どうかお願いします! 一也さん!」
一也「光平君、大石は恐るべき暗殺拳の使い手だ。
 とても君のような平凡な高校生の太刀打ちできる
 相手じゃない。危険だ。あの男の事は俺に任せて、
 あとはもう忘れるんだ」
光平「俺にはどうしても負けられない理由があるんです!」
一也「なぜだ? なぜそうまで勝ちにこだわる?」
光平「それは……」

光平は思い出していた。シグフェルに変身した自分が
東条寺理乃の化身スネイザに一方的に痛めつけられ、
その時一緒にいた優香の身を危険に晒した事を…。
そしてネロス帝国の戦闘ロボットに偶然襲われた時も、
幸い軽傷だったものの、優香は怪我を負った…。
そして今回の大石秀人との件…。

自分の大切な人を守るためには、
どうしても自分自身が強くなければならなかった。

光平「お願いします! 一也さん!!」
一也「わかった。考えておこう…」

1420 

○沖一也→重傷を負わされた牧村光平を救い、大石秀人を追い払う。
○伝通院洸→牧村光平の事について沖一也と話す。
●大石秀人→海防大学付属高校空手部に道場破りに現れ、牧村光平に重傷を負わせる。

○牧村光平→大石秀人に敗れ大怪我を負い、京南大学附属病院に入院。
○朝倉慎哉→拳竜会のメインコンピューターにハッキングを試みる。
○沢渡優香→京南大学附属病院に入院した牧村光平をお見舞いにする。
○岡島雄大→拳竜会のメインコンピューターにハッキングを試みる。

【今回の新規登場】
○岡島雄大(闘争の系統オリジナル)
 海防大学付属高校・情報処理技術科コースに通う高校1年生。16歳。牧村光平たちの一年後輩。
 クラブ活動は光平や慎哉と同じくテニス部だが、一方でオカルトや都市伝説に興味があり、
 民俗研究会にも掛け持ちで所属している。ネット上ではハンドルネーム「YOU」を名乗り、
 その世界ではかなり知られているオカルトサイトを運営しており、そのサイトを通じて
 (リアルでの直接の面識こそ無いものの)日向冬樹や佐天涙子、清十字怪奇探偵団の清継と
 連絡を取り合っている。ちなみにサイソニック学園の卒業生であり、響リョウ、チャック・スェーガー、アニス・ファームの3人は小学校時代の恩師に当たる。


『赤心少林拳、梅花の型』-3

作者・ティアラロイド

1421 

***秩父山中***

三日後、無事に退院した牧村光平は沖一也に案内されて、
秩父山中にある赤心少林拳の総本山、赤心寺へと向かった。
麓まで草波ハルミの運転する車に同乗させてもらい、
途中からは車を降りて徒歩での山道である。

光平「どうもすみません。俺なんかのために
 わざわざ案内してもらって…」
ハルミ「いいのよ、気にしないで♪」
一也「この先が赤心寺だ。早く着かないと日が暮れるぞ! 急ごう」
ハルミ「それにしても知らなかったわ。
 一也さんがこんなカッコいい高校生の男の子と
 知り合いだったなんて」

その時、3人の先頭を歩いていた一也の足が突然立ち止った。

光平「一也さん…?」
ハルミ「どうしたの?」
一也「………」

一也だけは気づいていた。自分たちを密かに取り囲みながら、
先程からずっと尾行・監視している者の気配に…。

一也「……(前方、右に二人…左にも二人…。
 そして背後にも二人…いや、三人か……。
 いったい何者だ?)」

最初は大石秀人の配下が自分たちを見張っているのかとも思ったが、
この気配はドグマ王国の者とも、また別のGショッカー組織とも明らかに違う。
ハッキリと隙のない敵意は感じるが、殺気は全くない。

一也「……(この感じは拳法の使い手とは違う。
 忍びの術を心得た者たちか…!?)」
ハルミ「ねえ一也さんったら、いったいどうしたのよ!
 突然立ち止って黙り込んじゃって!」
一也「…いや、すまない。少し考え事をしていた。
 さあ、行こう!」

森林に身を隠す正体不明の監視者たちは、
特にこちらに襲いかかってくる様子もなかったため、
とりあえず一也はそれらを無視して、
ハルミと光平を連れて赤心寺へと急ぐことにした。

1422 

***秩父山・赤心寺***

多くの拳法家を志す若き修行僧たちが日夜その腕を磨いている、
流派・赤心少林拳の大修練場、禅宗・赤心寺である。

弁慶「おおーっ、一也か! よく来たな!!」
一也「弁慶か! 元気そうじゃないか!!」
弁慶「水臭いぞ。たまには顔を出せ」
一也「アハハハハ!!」

寺の境内に到着するや否や、出迎えた巨漢の僧が一也と再会を喜び合う。
彼の名は弁慶。この寺の住職である玄海老師の一番弟子であり、
老師の不在時には寺の留守居の役目も担っている。

ハルミ「弁慶さん、ご無沙汰しております」
弁慶「ハルミさんもお元気そうで。
 それで一也、その少年は?」
光平「はじめまして、牧村光平といいます。
 よろしくお願いします」
一也「弁慶、老師は今ご在宅か?」
弁慶「昨日旅路から戻られたばかりだ。案内しよう」

本堂へと通される一也、ハルミ、そして光平。
そこで光平は、寺の住職である老僧と出会った。

玄海「一也か。久しぶりじゃな。達者そうでなによりじゃ」
一也「老師、ご無沙汰しております」

一也は敬愛する師に深く一礼する。

一也「光平君、紹介しよう。こちらは玄海老師。
 赤心少林拳の最高師範にして、俺の拳法の師でもある」
光平「……(この人が玄海老師)」

赤心少林拳の頂点に立つ高僧を、初めて間近に見る光平。
こうして側にいるだけで、目に見えないオーラのような物が
体中にひしひしと伝わってくるのが解る…。

玄海「昨日一也からの手紙を読んで、大方の事情は知っておる。
 光平君とやら、君は拳法の腕を磨き、今よりも強くなりたいとのことじゃが…」
光平「はい! 是非ともお願いします!」
玄海「よいか、拳法に限らず武道の道は、敵よりもまず己に克つ事。
 精神の修養こそが大事じゃ。まずは座禅から始めなさい」
光平「座禅…ですか?」

てっきり何か新しい技でも伝授してもらえると思い込んでいた光平は、
玄海からの意外な言葉に呆気にとられる。

玄海「不満かな?」
光平「い、いえ…そんなわけじゃ」
玄海「では、光平君を部屋まで案内してあげなさい」
弟子「ハハッ。さあ、こちらへ」
光平「は、はい…」

1423 

控えていた弟子の一人に案内され、光平は修行着に着替えさせられて
座禅をするための部屋へと連れていかれて行った。
そして本堂の部屋には、玄海、弁慶、一也、ハルミの四人だけが残る。

一也「それで、老師は今までどちらに」
玄海「うむ。少し吉野の方に足を伸ばしておった」
一也「吉野?」

平安時代の昔、当時の京の都には魔化魍と呼ばれる魑魅魍魎が跳梁跋扈し、
都の人々はその恐怖に怯え眠れぬ日々を過ごしていた。
事態を憂慮した当時の朝廷が、希代の陰陽師・安倍晴明をはじめとする
手錬の術法者たちを集め、魔化魍を駆逐するよう対策を命令したのが、
鬼の一門、猛士(たけし)の始まりである。
現在その総本部は奈良県吉野郡にあり、表向きは
オリエンテーリングのNPOとして活動している。
近年ではその鬼の中から何人もの仮面ライダーを輩出して
活躍している事も記憶に新しいところだ。

玄海「幾多の魑魅魍魎や物の怪の事情にも通じる彼らであれば、
 例のイーバなる正体不明の魔物どもの正体についても
 何か掴めるかもと思ってな。まあ、結果は徒労に終わったが。
 ハハハハ…」
ハルミ「でもニュースで聞いたけれど、そのイーバって
 黄泉がえりで生き返った人たちを襲ってるんでしょ。
 和尚様まで襲われたりしないかしら…」
一也「老師、俺もハルミと同意見です。
 迂闊に出歩かれて、もし老師の御身に
 万一の事があっては!」
玄海「心配してくれるのは嬉しいがな…」
一也「現にここに来る途中も、何者かが寺の周囲を
 監視しながら様子を伺っているようでした」
ハルミ「ええーっ!? それってどういうこと?」
一也「ハルミ、実はな…」

ここで一也は初めてハルミに、光平を含めた3人でここまで来る途中、
正体不明の何者かがこちらをずっと監視していた事を打ち明ける。
話を聞いてゾッと背筋が凍るハルミ。

ハルミ「そんなことがあっただなんて…」
一也「老師、いったい奴等は何者なんでしょう?」
玄海「ブレイバーズのヒーローたちが、やがて権力を握る野望を抱くに至る…。
 そんな余計な心配をする御仁が、どうも政府の中におるようじゃ」
ハルミ「でも今の剣総理大臣って、ブレイバーズの味方なんでしょう?」
玄海「これは残念なことじゃが、日本政府も必ずしも一枚岩とは言い難い。
 特に聖天子様お側近くにお仕えの補佐官、天童菊之丞殿などは、
 ブレイバーズに対して強い不信の念を抱いておられるようじゃ」
一也「天童菊之丞といえば、影の総理との噂も名高い大物」

これで一也にもいろいろ合点がいった。
赤心寺までの山道で自分たちを見張っていたのは、
ほぼ間違いなく天童配下の忍者だったのだろう。

ハルミ「そんな偉い人に睨まれてるだなんて…一也さん大丈夫?」

話を聞いたハルミは心配そうに一也の顔を見つめる。

一也「なあに、俺の事なら心配ない」
弁慶「すでにこの寺の周囲も天童の鼠どもが
 常に目を光らせている」
玄海「奈良までの道中でも天童の忍びにずっとつけられたわ。
 おそらくその監視の目は、谷さんたちや
 ジュニアライダー隊にも例外なく向けられておろう。
 天童が直ちに彼らに危害を加えたりするような事は
 あるまいと思うが、念のため心に留めて
 用心するように伝えておいてはくれぬか」
一也「わかりました。おやっさんやチョロたちには
 必ず伝えておきます」

1424 

○沖一也→牧村光平を赤心寺に連れて行く。
○草波ハルミ→沖一也と牧村光平を車に乗せて、赤心寺近くまで連れて行く。
○弁慶→赤心寺を訪れた沖一也たちを出迎え、一也と久々の再会を喜び合う。
○玄海老師→奈良から赤心寺に帰還。牧村光平に座禅を組む事を命じる。

○牧村光平→大石秀人に勝つための特訓を受けるべく、沖一也と共に赤心寺を訪問。

【今回の新規登場】
○弁慶(仮面ライダースーパー1)
 玄海老師の一番弟子を務める巨漢であり。沖一也の兄弟子。
 一也を弟のように思っているが、拳法家として心を鬼にして、彼を厳しく鍛える。
 ドグマ王国との最終決戦で、ドグマ親衛隊が放った矢から一也を守るべく盾となり絶命。


『赤心少林拳、梅花の型』-4

作者・ティアラロイド

1425 

***秩父山・赤心寺***

ドグマ超A級怪人ギョストマの人間体である、
拳竜会最高師範・大石秀人によって
完膚なきまでに叩きのめされた牧村光平。

光平「………」

その光平が玄海老師の言いつけに従い、祠に籠って座禅を組み、
静かに瞑想を始めてから、すでに3日が経過した。
朝昼夜三度の質素な食事がその度に差し出される以外は、
あれから特に何も他に指示はない。

大石の声「牧村光平、お前は弱い!
 所詮は負け犬だ! フハハハハ!!!」

スネイザの声「シグフェル、お前は私の実験の失敗作に過ぎない…」

キングダークの声「さあシグフェル、お前も来るのだぁ~!」
タイガーネロの声「我らと共に、深く暗い地獄の闇へ~!」

クロスランダーの声「青いな。貴様はまだまだ甘ちゃんのルーキーよ!」

これまで敵対してきたの者たちの姿の幻が、
次々と脳裏の中に浮かんできては、
光平を精神的に追い詰めて苦しめる。

優香の声「光平くん……キャアアッッ――!!!!!!!」

光平「――優香アアッッ!!!!!!」

沢渡優香が傷つき命を落とす不吉なビジョンが見え、
光平はハッとなって思わず大声をあげて我を取り戻す。

光平「夢か……」

いったいいつになったら
大石に勝つための技を伝授してもらえるのだろう。
光平は焦りといら立ちを覚え始めていた。

1426 

そして翌日のこと。
光平のいる祠の中に、一人の訪問者が…。

優香「光平くん」
光平「優香…?」

光平の身を心配した優香が、沖一也と草波ハルミに頼み込んで、
ここ赤心寺まで連れて来てもらったのだった。

優香「差し入れを作って来たの。…あっ、ちゃんとお寺の人からは
 許しはもらってあるから安心して」
光平「………」

その様子を、祠の横に立つ大樹の影からそっと
見守っている沖一也と草波ハルミ。

ハルミ「一也さんもいいところあるじゃない♪」
一也「根を詰め過ぎては、かえって修行の成果もなくなる。
 余分な緊張を取り除くためには、たまには息抜きも必要さ」

しかしそんな一也とハルミの気遣いをよそに、
事態は思わぬ方向へ…。

光平「優香、悪いけど…今は帰ってくれないか…?」
優香「何も食べなければ身体に悪いわ。光平くん、さあ食べて」
光平「うるさいッ――!!」

光平は突然激昂して、せっかく優香が持って来た差し入れの
弁当箱を地面に投げ捨ててしまう。

優香「――!?」
一也「何をする!!」

様子を見ていて驚いた一也とハルミが、
慌てて飛び出してくる。

一也「光平君、君には優香ちゃんの気持ちが解らないのか!?
 今すぐ彼女に謝るんだ!」
ハルミ「そうよ! 謝りなさい!!」
光平「一也さん、俺はあの大石秀人に勝たなくちゃいけないんです!
 もう黙って座禅なんて飽き飽きです! 早く技を教えてください!」
優香「……!」

光平の態度に居た堪れなくなった優香は、
両目に涙を浮かべながら必死に泣くのを押し堪えて
その場から走り去ってしまった。

ハルミ「優香ちゃん!!」
一也「…ハルミ、優香ちゃんを頼む」
ハルミ「OK、任せて」

ハルミは優香の後を追いかけて行った。

光平「一也さん、早く俺に稽古をつけてください!
 お願いします!!」
一也「……いいだろう。お前のその曲がった根性を、
 俺が叩き直してやるッ!!」

1427 

その頃、ようやく優香に追いついたハルミ。
優香は林の中で佇まって、声を押し殺して泣いていた。

優香「すみません…。みっともないところを
 見られちゃいましたね…」
ハルミ「優香ちゃん、気にしないで…。
 光平くんもきっと気が立っているのよ」
優香「わかってます。私なら大丈夫ですから…」
ハルミ「優香ちゃん……」

とりあえず優香を寺のお堂の部屋まで連れてきて、
落ち着くまでそこで休ませる事にしたハルミは、
その後、一也や玄海老師たちのいる本堂に合流した。

一也「ハルミ、優香ちゃんは?」
ハルミ「大丈夫よ。だいぶ落ち着きを取り戻したみたい」
一也「そうか、それはよかった」
ハルミ「…それで、光平くんの方は?」

光平は自業自得とは言え、先程沖一也にボコボコに打ちのめされ、
今は寺の養生部屋で眠っているところだった。

ハルミ「もうっ、一也さんったらやりすぎよ!」
一也「いやあ…俺もつい大人げなかったよ。反省してる」
玄海「ははは、一也よ。まるでお前が大石相手に
 初戦で挑んだあの時のようじゃのう」

玄海老師に痛いところを突かれて恐縮する一也。
沖一也はかつて大石秀人に敗れ、荒れていた時期があった。
自らの五感と魂で、赤心少林拳極意"梅花の型"を会得した
一也ことスーパー1は、大石ことギョストマに再戦を挑み、
見事勝利して見せたのだった。

一也「今思い出してもお恥ずかしい限りです。
 ハルミ、あの時は君にもひどい事をしてしまったね…」
ハルミ「いいのよそんな昔の事なんて。
 でも和尚さま、光平くんが大石に勝つためには、やっぱり…」
玄海「うむ、大石に勝つためには"梅花の型"を会得する
 以外にはあるまい」
ハルミ「でも相手の正体はドグマの怪人なんですよ。
 いくら"梅花の型"を会得できたとしても、
 普通の高校生に勝てるかしら…」
一也「ハルミ、俺は光平君には他の平凡な高校生とは違う
 拳士としての隠れた資質を感じるんだ」
玄海「一也の人を見る目に間違いはあるまい。
 わしもその光平という少年に賭けてみようと思う」
ハルミ「でも和尚さま、今は梅の咲く季節じゃありませんよ」

今のハルミの言葉を聞き、その場にいた玄海、弁慶、一也の3人は
一瞬( ゚д゚)ポカーンとしたような顔をしていたが、すぐに吹き出したように
クスクスッと笑いだした。

ハルミ「何よぉ~っ! みんな自分たちだけ
 わかってるみたいな顔をしてぇ!!」
玄海「いや、すまぬすまぬ…(汗」
一也「ハルミ、確かに今は梅の花の咲く時期じゃないが、
 この山の中には鳥の鳴き声や、風が木々を揺らす音、
 そして小川のせせらぎ。梅の花の代わりに
 生命の息吹を感じ取れるものならいくらでもある」

1428 

日も沈み、すっかり暗くなった寺の境内。

光平「てりゃああ!! たああッッ!!」

祠の中からは蝋燭の微かな明かりが外に漏れると同時に、
床から起きて再び自主的に鍛錬に励む光平の声が聞こえる。
まさにそれは狂ったように強さだけを追い求める
獣の叫び声そのものだった。

優香「………」

優香には、ただその様子を心配そうに見守るしかできない。
そこへ玄海老師とハルミがやって来た。

玄海「彼の事が心配かね?」
優香「老師さま…」
玄海「今はただ信じて待ってやりなさい。
 それだけでも、充分に彼の力となるはずじゃ」
ハルミ「優香ちゃん、今日は遅いわ。
 天気も悪くなってきたし、もう帰りましょう」
優香「はい…」

優香はハルミに一緒に送られて、その日は東京へと帰って行く。
その夜、祠の中から光平の修行の掛け声が絶える事はなかった。
寺一帯を急激な嵐と豪雨が襲う中、冷気の中に自ら進んで身を置く光平。
そして夜が明けた…。

光平「………」

朝日が差し込むのに気がついた光平は、祠の外へと出た。
そこで見た者は、昨夜の激しい嵐の中でも懸命に生き延びた
野兎や昆虫などの小動物、そして木々や草花の姿だった。
光平は思わずそれらを優しく両手で包むような動作をする。

光平「…これは!?」

光平の目に、一瞬美しい一輪の梅の花の姿が思い浮かんだ。

光平「今のは…!」

ハッと我にかえり、明確に何かを掴んだ光平。
そこに玄海老師、弁慶、そして沖一也が笑顔で現れる。

一也「光平君、ついに掴んだようだな!」
光平「はい…!」
玄海「梅の花は寒さの中にあってこそ、可憐な花を咲かせるものじゃ。
 それは他のあらゆる生きとし生けるものも例外ではない。
 嵐の冷たさを生き抜いた小さい生命を、君は今、両手で優しく
 守るように包み込んだ。荒々しい戦いの中にあっても、
 か弱い生命を慈しむ心こそ、赤心少林拳の極意じゃ」
光平「玄海老師…」
玄海「光平君、今こそ赤心少林拳の極意、"梅花の型"を授けよう!」

玄海老師直々に"梅花の型"を伝授される光平。
ついに光平は強敵・大石秀人に打ち勝つための極意を
完全に自らの物としたのだった。

優香「光平く~ん!!!」
ハルミ「一也さん、大変よ~!!!」

ちょうどそこへ、昨夜帰ったはずの優香とハルミが
血相を変えて走って来た。

光平「優香!?」
一也「ハルミ、そんなに顔色を変えて、
 いったいどうしたんだ!? まずは落ち着くんだ!」
ハルミ「それどころじゃないのよ! とにかく大変なの!
 光平くんのお友達が!」
優香「ハァ…ハァ…! 朝倉くんと岡島くんが、
 拳竜会の人たちに連れて行かれたの!!」
光平「なんだって!!」

優香の話では、光平の仇打ちをしようと勇み足をした
朝倉慎哉と岡島雄大が、拳竜会のメインコンピューターに
ハッキングをしかけ、逆にそれが相手側に露見してしまい、
拳竜会の本部道場へと連れ去られたらしい。

光平「あいつらッ…なんでそんな無茶な事をッ!!」
一也「光平君、急ごう! どうやらゆっくりしている時間はなさそうだ」
光平「はいッ! …待ってろよ、慎哉、雄大!
 必ず助けてやるからな!」

果たして光平は間に合うのか。
拳竜会に拉致された慎哉と雄大の運命や如何に?
次回へと続く!

1429 

○沖一也→修行に明け暮れる牧村光平を見守る。
○玄海老師→牧村光平に、赤心少林拳の極意"梅花の型"を伝授。
○弁慶→修行に明け暮れる牧村光平を見守る。
○草波ハルミ→修行に明け暮れる牧村光平を見守る。

○牧村光平→修行の末、赤心少林拳の極意"梅花の型"を会得。
○沢渡優香→修行に明け暮れる牧村光平を見守る。


『赤心少林拳、梅花の型』-5

作者・ティアラロイド

1430 

***拳竜会本部道場***

慎哉「ぐはッ…!!」
雄大「うぐっ…!!」
大石の弟子A「さあ吐け! 正直に答えるのだぁー!!」

大石秀人率いる拳竜会の本部道場へと連れ込まれてしまった
朝倉慎哉と岡島雄大は、二人とも天井から吊るされて
続けざまに竹刀で打ちすえられるという拷問を受けていた。

大石の弟子B「しぶといガキどもめ!」
大石「こんな小僧どもがブレイバーズの仲間だとは思えん。
 なぜ我が拳竜会の本部道場のメインコンピューターにハッキングした?
 あの牧村光平とかいう小僧に頼まれたのか!?」
慎哉「…違うッ! これは全部俺一人だけでやったことなんだ…!」
大石「なに…?」
慎哉「…なあ、この事に雄大は関係ないんだ。
 そいつだけは帰してやってくれないか…?」

慎哉は雄大を庇おうとするが…。

雄大「…何言ってんスか…慎哉先輩。
 一人だけいいカッコしないでください……。
 僕だって光平先輩があれだけひどい目に遭わされて
 黙っていられなかったんッスよ…。
 ここまで来たら…もう一蓮托生ですからね…!」
慎哉「雄大、お前……」
大石「麗しい友情だな。お望みとあらば、
 もっと痛めつけてやる! やれッ!!」
大石の弟子たち「「――押忍!!」」

雄大「……(もう駄目だッ…!)」
慎哉「……(やられるッ…!)」

慎哉と雄大が覚悟を決めて目を閉じた時、
大きく叫ぶ光平の声がした。

光平「待てッ!!」

驚いて目を開ける慎哉と雄大。
そこには、大石配下の弟子たちを押しのけて道場に乗り込んで来た
牧村光平と沖一也の姿があった!

慎哉「光平…!?」
雄大「…光平先輩!!」

慎哉と雄大の痛々しい姿に愕然とする光平。

光平「慎哉! 雄大!」
慎哉「わりぃ…ドジ踏んじまった……」
雄大「へへへ…面目ない……」
光平「ごめんな…慎哉、雄大。俺なんかのために……」

1431 

大石「久しいな沖一也、そして牧村光平。
 いったい何しに来た?」
光平「大石秀人、お前に再戦を申し込む!」
大石「…なるほど。それで沖一也、貴様が助っ人というわけか?」
一也「いや、俺はあくまでも見届け人として立ち会うだけだ。
 お前には光平君が一人で挑む!」

今の一也の言葉に大石は憤慨する。

大石「なんだとぉ!! たかが高校生の小僧一人に
 俺の相手が務まると思っているのか!!
 俺も随分と舐められたものだな!」
光平「その代わり俺が勝ったら、その二人を自由にしてもらう!」
大石「いいだろう! 返り討ちにしてくれる!」

大石配下の弟子たちが大勢取り囲むアウェイの状況の中、
こうして牧村光平と大石秀人の再戦が開始された。
両者が対峙する中、前回とは打って変わって互角の戦いが展開される。

光平「……(大石はまるで獣のような強さだ。
 だがその鋭い牙も、生命を慈しむ梅花の構えが
 全て受け流してくれる!)」
大石「バカな! こんな年端もいかない小僧に
 この俺が苦戦するというのか!?」

徐々に追い詰められる予想外の展開に、
焦る大石は光平に必殺の回し蹴りをお見舞いしようとするが、
回し蹴りの技は本来、相手に当たるまでの時間がかかる。
その隙を光平は見逃さなかった!

光平「いくぞ! 赤心少林拳、梅花上段突き!!」
大石「ぐわあああッッ!!!!」

壁際まで吹っ飛ばされる大石。

慎哉「やったああ!! ざまあみろ!!」
雄大「凄いや光平先輩!!」
一也「見事だ!!」

光平「勝った…のか…」

1432 

大石の弟子A「せ、先生!?」
大石の弟子B「大丈夫ですか!?」
大石「ええい! よるなあ!!」

弟子たちの助け起こされる大石だったが、
まさかの自身の敗北に怒り心頭となっていた。

大石「…許さんッ! こうなれば貴様ら全員皆殺しだぁーッ!!
 ぐおおおおッッ……!!!」

大石は気勢を上げ、不気味な光が身体を包みこんだかと思うと、
ドグマ超A級怪人ギョストマの正体を現した!
それと同時に配下の弟子たちも全員ドグマファイターの姿に戻る!

ギョストマ「グハハハハッ!!!」

慎哉「――なっ!!」
雄大「…ば、化け物!?」
光平「そういうことだったのか…!
 これでいろいろと合点が行ったぜ」

これで光平は、大石の初戦の時に感じた違和感の正体を理解した。
大石は実は人間ではなく、Gショッカーの怪人だったのだ。

一也「光平君、ここは俺が引き受ける!
 君はその二人を連れて早く逃げるんだ!」
光平「でもッ…!」
一也「いいから急げ!!」
光平「は、はい…!」

光平は慎哉たちを連れて道場から脱出した。

ギョストマ「これでようやく貴様と戦えるな。
 お前を倒した後で、あの小僧たちも後から追いかけて
 血祭りに上げてくれるぞ」
一也「そうはさせん! ――変身ッ!!」

一方、ドグマファイターの追手を振り切って、
安全な場所まで無事逃げのびた光平たちだったが…。

光平「慎哉、雄大のこと頼めるか?」
慎哉「おう! 任しとけ」
雄大「ちょ…ちょっと、光平先輩どこ行くんですか!?
 今戻ったら危ないですよ!!」
慎哉「光平なら大丈夫だ」
雄大「慎哉先輩…??」

二人と離れて一人きりになった光平は、
心置きなく紅蓮の鳳凰の姿へと変身する。

光平「――翔着(シグ・トランスッ)!!」

1433

原っぱで死闘を繰り広げている仮面ライダースーパー1とギョストマ。

ギョストマ「喰らえ! ギョストマ幻魔光線~!!」

ギョストマの両目から発射される幻魔光線には、
相手の手足を麻痺させ、思考能力を低下させてしまう能力があるのだ。

スーパー1「く、苦しい…! 身体が痺れるようだ…ッ」
ギョストマ「見たかスーパー1。お前との再戦を期していた俺は、
 密かに幻魔光線のパワーを強化していたのだ!
 いかに赤心少林拳・梅花の型といえども、容易にこれを
 破る事はできんぞ~!」

だが突然横からビーム状の灼熱の炎がギョストマめがけて浴びせられた。
超高温の熱さに苦しむギョストマ。それによって攻撃の手は緩み、
スーパー1は幻魔光線から解放された。

ギョストマ「…あ、熱い~!! 身体が焼け爛れそうだぁ~!!」
スーパー1「――君は!?」
シグフェル「仮面ライダー!?」

いきなり何の前触れもなくシグフェルが現れた事に驚くスーパー1。
しかし驚いたのはシグフェルの方も同じ事だった。
ギョストマと戦っているはずの沖一也はどこに行ったのだろう。

シグフェル「ライダー、沖一也さんは!?」
スーパー1「……(なぜシグフェルが沖一也の事を知っている?)」

シグフェルの言葉を不審に思ったスーパー1だったが、
とりあえずその場を取り繕う事にする。

スーパー1「大丈夫だ。沖一也なら、私が安全な場所まで避難させた」
シグフェル「そうか…。よかった」

ホッと胸を撫で下ろしているように見えるシグフェル。
不思議に思ったスーパー1だったが、敵をすぐ目の前にして、
今はそんな事をゆっくり考えている時間はなかった。

シグフェル「ライダー、詳しい事情は言えないけれど、
 今は一緒にアイツと戦わせてくれ!」
スーパー1「それはこちらこそ願ってもない事だ。
 俺は仮面ライダースーパー1。いくぞシグフェル!」
シグフェル「おう!!」

スーパー1とシグフェルのW攻撃によって一気に形勢は逆転。
続々と繰り出される突きや蹴りの攻撃を前にして、
もはやギョストマに勝機はなかった。しかし……。

ギョストマ「……(シグフェルのその構え、どこかで見たような)」

シグフェルの技の動きに、どこか見覚えがあるギョストマ。
それはついさっきまで自分より格下だと散々見下していた
あの少年の動きと同じものだった。

ギョストマ「……ま、まさかあの小僧が!
 そうか…そうだったのか! あの小僧がシグフェルだったのか」

だがそれに気づいた時には既に遅し。
スーパー1とシグフェルは同時に
ギョストマに止めを刺す態勢へと移行していた。

スーパー1「赤心少林拳、梅花二段蹴りッ!!!」
シグフェル「てりゃあああッッッ!!!!!」

スーパー1とシグフェルの偶然の絶妙なタイミングでの
梅花二段Wキックがギョストマに炸裂した。

ギョストマ「…テ、テラーマクロォォッ!!!」

ギョストマは死の直前にようやく突き止めたシグフェルの正体を
他の誰にも告げる事が出来ないまま、壮絶に爆死したのであった。

1434 

戦いが終わった後、スーパー1と別れ、
シグフェルの姿から変身を解いた光平は、
慎哉と雄大、沖一也、そして後から追い付いてきた
沢渡優香に草波ハルミと合流した。

慎哉「一也さん、無事だったんですね!」
一也「ああ、仮面ライダーが助けてくれたんだ」

皆が互いの無事を喜び合う中、
光平は一人神妙な面持ちで一也に話す。

光平「一也さん、ブレイバーズのヒーローたちが
 どんな気持ちで普段悪と戦っているのか、
 少し解ったような気がします…」
一也「どうしたんだいきなり、そんな話を切り出して?」
光平「いえ、なんでもありません。気にしないでください」

これまで偶然にも超人機メタルダーや仮面ライダースーパー1と共に戦う機会を得て、
その戦いぶりを間近で見ていたシグフェル=光平にとって、
「激しい戦いの中にあっても、生命を慈しむ心を忘れない」という
赤心少林拳の極意と重なるモノを感じたのであろう。
しかしそのような事情を、当の沖一也が知る由もなかった。

光平「一也さん、ハルミさん、本当にありがとうございました。
 玄海老師や弁慶さんにはよろしくお伝えください」
一也「わかった。老師たちには君の成長を確かに伝えておくよ」
ハルミ「みんな元気でね♪ また会いましょう」

こうして光平たちは深々と礼をして、
沖一也たちと別れたのであった。

雄大「でも光平先輩、なんか以前と変わりましたよね」
慎哉「うんうん俺もそう思う。なんか一回り大きく成長したっていうかさあ」
光平「そうかなあ……」

慎哉と雄大の褒め言葉に、光平はなんとなく照れる。

光平「優香、この間はひどい事をして本当にごめん!
 埋め合わせならなんでもするからさ。遠慮なく言ってくれ」
優香「そう? なら湾岸マリンタワーの展望台に
 夜景のきれいなレストランがあるの。今度の日曜そこに連れてって」
光平「…えっ?(…あそこ確か料金が凄く高いんだよなあ)(汗」

優香の提案に、思わず心の中で自分の財布の中身と
相談を始めてしまう光平だったが……。

優香「ダメ…?」
光平「そ、そんなことないよ! 男に二言はない!
 どんと任せとけって!!」
優香「ホントに? うふふ、嬉しい♪」

慎哉「やれやれww」
雄大「きっと光平先輩って、結婚してからも
 お嫁さんの尻に敷かれるタイプっスね」

1435 

笑顔で去っていく光平たちをじっと見送る沖一也。
その見つめる視線には、一つの疑念が浮かんでいた。

一也「………(なぜシグフェルはこの俺、沖一也の事を知っていた?
 それにシグフェルがギョストマと戦っていた時の構えは、まさしく梅花の型。
 赤心少林拳で梅花の型を会得している者は、玄海老師、弁慶、それにこの俺の
 3人だけのはずだ…。――!!…いや待て、他にもう一人いる!!)」
ハルミ「どうしたの一也さん、そんな怖い顔して?」
一也「…まさか、な」
ハルミ「え…?」
一也「いや、なんでもない。さて、俺たちもそろそろ帰るか。
 谷のおやっさんたちが心配してる」

谷モーターショップのある方角へと戻っていく一也とハルミ。
その様子を近くの丘の上から見ている玄海老師と弁慶。
実は彼らも先程のギョストマの戦いからずっと陰ながら彼らを見守っていた。

玄海「………」
弁慶「老師、あの光平という少年に何かまだ思うところでも?」
玄海「いや、なんでもない。我らもそろそろ寺に戻るとしようか」

弁慶を伴い秩父山の赤心寺へと戻って行く玄海老師。
果たして光平を見つめる玄海老師の胸には何が去来していたのであろうか。
こうしてドグマ王国によるシグフェル捜索作戦は完全に失敗に終わり、
この日はそれぞれが無事に帰路に着いたのだった。

1436 

○沖一也→シグフェルと共闘してギョストマを倒す。
○草波ハルミ→沢渡優香を麓の市街地まで送り届け、牧村光平たちと別れる。
○玄海老師→スーパー1とシグフェルがギョストマに勝利したのを見届ける。
○弁慶→スーパー1とシグフェルがギョストマに勝利したのを見届ける。
●大石秀人/ギョストマ→死の直前にシグフェルの正体に気がつくが、誰にも報告できずに爆死。

○牧村光平/シグフェル→仮面ライダースーパー1と共闘してギョストマを倒す。
○朝倉慎哉→拳竜会本部で拷問されるが、牧村光平に助けられる。
○岡島雄大→拳竜会本部で拷問されるが、牧村光平に助けられる。
○沢渡優香→牧村光平と日曜にデートの約束をして仲直り。


『砂漠の姫の来日』-1

作者・ティアラロイド

1437 

***成田・新東京国際空港***

その日、成田にサングラスをかけた一人の若い外国人女性が降り立った。
滑らかな褐色の肌と、長いプラチナブロンドの髪が風に揺れる。

フィリナ「………」

その女性――フィリナ・クラウディア・アルシャードはタクシーを拾うと、
東京方面へと向かった。しかし車通りの少ない海岸沿いのコンテナ地帯へと
通りかかった辺りで、突然そのタクシーはアラビア風のターバンを着用して
武装した男たちに襲われた。男たちの発砲した銃弾が何発か車体に命中し、
タクシーは道路脇の電柱に突っ込んで停車してしまう。

フィリナと運転手は、襲撃してきた男たちによってタクシーから引きずり出される。

運転手「た、助けてください! 私は別に何の関係も…!!」
フィリナ「そんな物騒な物はしまってくれないかしら?」
幻の睦月「声を出すな!」

武装したターバンの男たち=作戦を指揮する
幻の睦月と幻の如月の二人に率いられた独立幻野党の目的は、
どうやらフィリナの誘拐にあるようだ。
銃を突き付けられたフィリナは彼らの車に強引に乗せられそうになるが……。

弦太郎「俺も一緒に連れてってくれねえかなあ!?」

フィリナが乗っていたタクシーのトランクから
男の声がした。するとトランクの扉が勝手に開き、
中からカウボーイスタイルの熱血漢風の若い男が威風堂々と姿を現す。
それを見た独立幻野党の面々は、一様に恐れおののいた。

幻の如月「し、静弦太郎!?」
幻の睦月「貴様いつの間に!!」
弦太郎「そうビビりなさんなって! 可愛い女の子を見ると
 つい手を出したくなるのが俺の癖でね」
幻の睦月「ほざくな!!」

幻の睦月は弦太郎に向けて発砲するが、
弦太郎はその銃弾を難なくかわして手榴弾を投げつけて攻撃。
その混乱の隙をついてフィリナを助け出す。

フィリナ「キャアッ!!」
弦太郎「こっちに来るんだ!」

機関銃の銃弾の雨の中を必死に逃げる弦太郎とフィリナ。

1438 

幻の睦月「我らの革命戦争の邪魔はさせん!
 怪獣ロボット、ザイラユニコンよ!
 静弦太郎を襲え~!!」

幻の睦月は髑髏型コントローラーを天高くかざして
配下の怪獣ロボットを呼び出す。

ザイラユニコン「グオオオ~ンン!!」

怪獣ロボット・ザイラユニコンの巨体が、逃げる弦太郎とフィリナに迫る中、
どこからともなくアイアンキングが現れて、ザイラユニコンの尻尾を捕まえて
その動きを必死に食い止めようとする。

アイアンキング「……!」

フィリナ「あれは!」
弦太郎「アイアンキング、いいところに来てくれたぜ!」

しかしザイラユニコンは口から内蔵していたマシンガンを吐きだして
アイアンキングを容赦なく攻撃する。

ザイラユニコン「グオオオ~ンン!!」
アイアンキング「……!?」

必死にその攻撃に耐えているアイアンキング。
地上にいる弦太郎もアイアンベルトで援護するが、
以前よりも強化されているらしいザイラユニコンは
全く怯む事はない。

幻の睦月「フハハハハ、いいぞいいぞザイラユニコン!!」
幻の如月「そのまま静弦太郎とアイアンキングを倒すんだ~!!」

徐々に追い詰められる弦太郎とアイアンキングだったが、
その時突然、空中で太陽の光を遮って大きな二枚の
紅蓮色に輝く翼が羽ばたいたかと思うと、
眩い炎を全身に纏ったその何者かがザイラユニコンを攻撃した。

ザイラユニコン「――!?」
シグフェル「――フレイムアームッッ!!」

その紅蓮の翼の戦士――シグフェルの灼熱の手刀が
ザイラユニコンの右眼に命中。
思わぬダメージを受けて苦しむザイラユニコン。
その間にシグフェルはフィリナの側に降り立つ。

シグフェル「大丈夫かフィリナ!?」
フィリナ「あなたは…!」

フィリナの無事を確認したシグフェルは、
すぐさま飛び立ち、続けざまに梅花二段キックをお見舞いした。
その衝撃でザイラユニコンの巨体は地上に倒れ込む。

幻の如月「ザイラユニコンがやられた!!」
幻の睦月「ザイラユニコン! 帰れ~!!」

幻の睦月と幻の如月たちは無念の表情を浮かべつつも、
まずは再起を期すために怪獣ロボット共々退却していったのだった。

1439 

弦太郎「てめえはいったい…」
シグフェル「………」

弦太郎からの問いかけにも応じることなく、
すぐにシグフェルはまたどこかへと飛び去ってしまった。
そこへアイアンキングから元の姿に戻った霧島五郎、
そして藤森典子も駆け寄ってくる。

五郎「おい弦の字、今のは…!?」
弦太郎「あれが今巷で評判の謎のヒーロー・シグフェルか。
 チッ…! いきなり出て来て美味しいところだけ
 かっさらって行きやがって!」
フィリナ「あれがシグフェル……」
弦太郎「……?」

遥か遠くに飛び去っていくシグフェルを見つめるフィリナの態度に、
弦太郎は何か引っ掛かるモノを感じる。

典子「お怪我はありませんか?」
フィリナ「ええ、ありがとう。あなたたちは?」
典子「私たちは国家警備機構の者です」
フィリナ「ではあなた方もブレイバーズの?」
弦太郎「おっと、俺たちをあんな仲良しごっこのグループ
 なんかと一緒にしないでもらいてえなあ!」
典子「静君! まだそんな事言ってるの!」
弦太郎「うるせェ!」

弦太郎たちのやり取りを見て、ついフィリナはクスクスと笑ってしまう。

弦太郎「何がおかしいんだ!?」
フィリナ「あらごめんなさい。つい見てて面白くって」
弦太郎「なんだとォ!」
五郎「まあまあ弦太郎、こんな可愛い美人な外国人のお嬢さんを前にして
 そんな怖い顔しないのッ! どうもはじめまして、僕、霧島五郎といいますッ!」
典子「藤森典子です」
フィリナ「危ないところを助けてくださってありがとう。
 フィリナ・クラウディア・アルシャードよ」

1440 

宇都宮での釣天井による聖天子暗殺計画を未然に防いだ
国家警備機構の静弦太郎&霧島五郎一行であったが、
目的地の関門海峡・ビルドベースへと向かう途中、
せっかくの通り道なので東京の国家警備機構本部へも
立ち寄って久々に顔を出すことにした。
そうしてちょうど千葉県内を通りかかったところで、
偶然フィリナが襲われている現場に遭遇したのだった。

弦太郎「それで、世界で一か二の石油王一族のお嬢様が、
 ボディーガードも連れずにどうしてわざわざ日本に?」
フィリナ「さすがは日本の国家警備機構で随一の切れ者といわれた
 静弦太郎さんね。私の事をそこまでお見通しなら話が早いわ」
弦太郎「俺の事を前から知っているみたいだな」
フィリナ「当然よ。これでも日本で活躍している
 スーパーヒーローたちの事については結構詳しいつもりよ。
 勿論、そちらの霧島五郎さんの正体がアイアンキングであることもね」

常に情報戦を制する者はビジネスをも制する。
これはフィリナの元々持っている矜持的考えである。

五郎「さすがは情報通のお嬢様だ。こりゃ参ったね~♪」
弦太郎「海外にまで俺たちの名が知れ渡っていたとは、コイツは光栄だな」
フィリナ「せっかくですけれども、今回はビジネスではなく
 プライベートの目的で来ておりますの。これ以上の詮索は
 どうか無用にしていただけますかしら?」
弦太郎「そうはいかねえなあ! 独立幻野党に狙われてると知ってて
 アンタを放っとけるか!」
フィリナ「矢吹コンツェルンの矢吹郷之助会長を通じて、
 日本政府に身辺警護は一切不要だと事前にお伝えしているはずです」
弦太郎「そんなこと知った事か!」
フィリナ「なら勝手にすれば。私はもう行きますから」

フィリナは弦太郎の制止も聞かず、自分一人だけで
さっさと歩いて行ってしまった。

典子「さすがアルジェの石油王のお嬢様、キレイよねえ…。
 まるでアラビアンナイトの物語から抜け出て来た
 砂漠のお姫様みたい…」
五郎「いやいや、全く同感ですな!」
弦太郎「バカッ! 二人ともいつまで見とれてんだ!
 さっさとあの世間知らずのお嬢ちゃんを追いかけるぞ!」


***スマートブレイン本社ビル・54階・社長室***

シグフェル出現の急報は、直ちにGショッカーでシグフェル捕獲作戦の総指揮をとる、
スマートブレイン社の社長・村上峡児の元へももたらされた。

村上「シグフェルが出現した!?」
スマートレディ「はい。相手は極左暴力革命集団、独立幻野党の一味ですわ♪」
村上「独立幻野党といえば、まだ我らがGショッカーの傘下には加わっていませんでしたね。
 いったい何を企んでいるのやら…」
スマートレディ「それがど~も女が一人絡んでいるらしくて…」
村上「女が…?」
スマートレディ「調べてみます?」
村上「無論です。今はシグフェルに関わる情報であれば
 どんな些細な物でも欲しいところですからねえ…」

1441 

***千葉・舞浜 プラトン東京***

東京ネズミーランド近くの外資系高級リゾートホテル。
この日フィリナはこのホテルの部屋にチェックインした。
弦太郎と五郎は、ひとまず典子だけを先に国家警備機構本部に帰還させ、
自分たちは24時間体制で、フィリナの泊まっている部屋の扉の前で常時張り込む構えだ。

客室係「失礼致します。ルームサービスをお持ちしました」
弦太郎「ちょっと待った。少し調べさせてもらうぜ」
客室係「…は、はい。どうぞ(汗」

客室係の若い女性が運んできたルームサービスの台車に
何か不審な点がないか調べる弦太郎だったが、特に異常は見当たらなかった。

弦太郎「すまなかったな。中に入っていいぜ」
客室係「ど、どうも…(汗」

こうしてフィリナの部屋の中に客室係が入って行き、
そして数分後、その客室係は何事もなく部屋から出て来た。

客室係?「……」

その客室係が去り際に、弦太郎たちに気づかれないよう
少し可愛らしく舌をペロッと出してほくそ笑んでいた事に、
弦太郎と五郎は全く気付いてはいなかった。

そして数分後、妙に部屋の中が静かでおかしい事に
ようやく気付いた弦太郎は、強引に扉をこじ開けて中に突入すると、
客室の中にいたのはフィリナではなく、なんとさっきの客室係の女性だったのだ!

客室係「す、すみません…! お客様からチップを渡されて、
 互いの着ている衣装を交換してくれとお願いされたものでつい!」
弦太郎「しまった! さっき出て行った客室係の女だ!」

弦太郎たちは慌てて客室係に変装したフィリナを追いかけたがすでに遅し。
ホテル中のどこにもフィリナの姿はなかったのである…。

五郎「大変だ弦の字! もう砂漠のお姫様の姿は
 ホテルのどこにもいやしないぜ!」
弦太郎「ちきしょう! やられた!」

まんまとフィリナにしてやられ、
悔しそうに地団太を踏む弦太郎であった。

1442 

***国家警備機構本部***

津島「ハッハッハ!! そんなことがあったのか。
 それは災難だったねえ」
弦太郎「笑いごとじゃないですよ博士」

その後のフィリナの足取りの手掛かりも掴めず、
仕方なく国家警備機構に戻って一部始終を津島博士に
報告する弦太郎と五郎。

津島「だがフィリナ嬢のことだったら心配はいらない。
 彼女が今どこにいるのかは見当がついている」
五郎「それは本当ですか博士?」
津島「二人にも紹介しよう。こちらは内閣安全保障室の土橋竜三室長だ」
土橋「土橋だ。よろしく」
弦太郎「ど、どうも…」
五郎「はじめまして…」

津島博士から紹介されたこの初老の官僚は、
弦太郎たちに事情を説明し始める。

土橋「いいかね静君、それに霧島君に藤森君も…。
 これから私がする話はくれぐれも他言無用だよ」

土橋竜三は、今からおよそ20年ほど前の
一人の日本人外交官とアルジェの石油王一族の令嬢との
間に起こった出来事を話し始めた。そしてその二人の間には
男の子が生まれ、今は日本で17歳の高校生として成長して
暮らしている経緯も明かした…。

五郎「こいつは驚いたなあ…」
典子「ではフィリナさんは、その牧村光平君に
 密かに会いに来ているというわけですね」
弦太郎「この日本に石油王一族の隠し子がいたとはねえ…。
 それで来日を公にできなかったってわけだ」
土橋「この事は我が国の経済外交にとっても大変
 デリケートな問題なんだ。そこでなるべく穏便に
 事を荒立てないように取り計らってもらいたい。
 なんとか頼むよ」
弦太郎「………」

1443 

***スマートブレイン本社ビル・54階・社長室***

スマートレディ「フィリナ・クラウディア・アルシャード、19歳。
 世界有数の大富豪である石油王アルシャード家の令嬢で、
 一族が保有する事業部門の3分の1の経営権を握る才媛です♪」
ゴメス「ほう、それはそれは…」
村上「………」

調査結果を村上社長とキャプテンゴメスに報告するスマートレディ。

スマートレディ「おそらく独立幻野党が彼女を拉致しようとしたのも、
 身代金を要求して活動資金を確保するためね♪」
村上「いかにも時代遅れの革命家気取りがやりそうなことです…」
ゴメス「それで、そのフィリナ嬢は日本に何をしに来たのかね?
 何か重要な商談でも?」
スマートレディ「それが不明なんです~!
 少なくとも公用による来日ではないようなんですけどォ♪」
ゴメス「するとプライベートということか」
村上「もしかすると、シグフェルに会いに来たのかもしれませんね」
スマートレディ「ええっ!?」
ゴメス「……!?」

村上のいきなりの突拍子もない発言に、
スマートレディとゴメスは驚く。

村上「そもそも妙ですね。今までイーバが現れる現場にしか
 原則として姿を現す事がなかった筈のシグフェルが、
 どうしてわざわざアルシャードの令嬢の危機を救いに
 現れたのか…」
ゴメス「確かに言われてみれば…」

もしシグフェルが事前にフィリナの来日を知っていて、
密かにガードしていたのだとしたら、全ての辻褄が合うのだ。

村上「その女がシグフェルの正体と何らかの関わりが
 あるのだとすれば…」
ゴメス「独立幻野党のリーダーである幻の月光は、
 以前に中近東では一緒に暴れまわった仲です。
 そちらには私の方から当たってみましょう」
村上「わかりました。そちらの方は貴方にお任せしましょう」

実はこの会話を、ビルの社長室の壁の反対側に張り付いて
じっと静かに盗聴している者がいた。
ネロス帝国ヨロイ軍団・爆闘士ガラドーに仕えている
下忍の軽闘士"影"の一人である。

影「急いで軍団長にお伝えせねば…!」

影はすぐに地上へと飛び降りると、
周囲の通行人には目にも止まらぬ速さで
あっという間に街の雑踏の中を駆け抜けて姿を消した。

村上「どうやら下の下な鼠がちょこまかと
 嗅ぎまわっているようですねえ…」
ゴメス「今のはおそらくネロス帝国の下忍。
 村上社長、壁に耳あり障子に目あり。
 くれぐれもご油断召されるな」


***ネロス帝国・ゴーストバンク***

急ぎゴーストバンクに舞い戻った"影"は、
すぐさま一部始終を上司に報告した。

クールギン「なにっ! シグフェルの正体に関わりが
 あるかもしれない女だと!?」
影「ハハッ!」
ガラドー「それもただの女ではありません。
 フィリナ・クラウディア・アルシャード。
 あのアルジェの大富豪アルシャード家の令嬢です」
クールギン「若くして一族の事業の一翼を担っている才女だな。
 私も名前くらいは聞いた事がある…」

北アフリカ有数の石油王アルシャード一族と言えば、
サラジアを拠点に中東方面へも事業を展開している桐原コンツェルンにとっては
商売敵とも言うべき存在であり、その経営権の一部を握るフィリナの名は
桐原剛造の影武者を務めるクールギンも耳にしていた。

クールギン「なるほど。確かに、フィリナの行く所にまたシグフェルが
 出現する可能性は高い。彼女が危機に陥れば尚更だ」
ガラドー「ならば軍団長、直ちにその女の身柄の確保を!」
クールギン「待て!」

逸る気持ちのガラドーをクールギンは制止する。

クールギン「何も慌てる事はない…」

1444 

***江東区豊洲・住宅街 朝倉家***

もうすっかり陽も沈んで夜の7時になった頃、朝倉家の玄関で
ピンポ~ン♪と来客を告げるチャイムが鳴った。

慎哉「は~い!!」

慎哉と光平が玄関のドアを開けると、
そこには長いプラチナブロンドの髪の美少女が立っていた。

慎哉「フィリナさん!?」
フィリナ「久しぶり、元気そうね光平」
光平「やあ、フィリナ」

顔を合わせた途端すぐに親しげに会話を交わす光平とフィリナ。
実はフィリナと光平の母親は姉妹であり、つまり二人は母方の従姉弟同士に当たる。
アルシャード一族の血を引く光平が、一般庶民として日本で暮らして来れたのも、
フィリナの後見と援助によるところが大きかったのである。

光平「随分と遅かったじゃないか。心配してたんだぞ」
フィリナ「ちょっとお節介なボディーガードさん達を
 撒くのに手間取っちゃってね♪」
慎哉「ボディーガード…? 確かフィリナさん
 日本には一人で来たんじゃ…」
フィリナ「ううん、こっちの話よ。
 それより優香も来てるの?」
光平「リビングで待ってる」

リビングルームでは、優香がソファに座って待っていた。

優香「フィリナさん、お久しぶりです」
フィリナ「元気そうね優香。とても会いたかったわ。
 …それで、その後光平との仲はどれだけ進展したの?」
優香「もうっ…フィリナさんったら!(///)」
光平「茶化すなよフィリナ。優香が困ってるじゃないか…(汗」
フィリナ「うふふ♪…ごめんなさい。だってあなたたちの
 慎ましい仲を見てると、ついからかいたくなっちゃうんだもの」

和やかに談笑している光平とフィリナ達だったが、
フィリナが真顔になった辺りから雰囲気は緊張したものに一変する。

フィリナ「早速本題に入りましょう。光平、さっきは助けてくれてありがとう」
光平「慎哉からの手紙は読んでくれたんだな」
フィリナ「正直、今でもまだ信じられないわ…。
 でも実際に私は見てしまった。そうである以上、
 事実を認めるしかないのよね。光平、いえ、シグフェル…」
光平「………」

1445 

***独立幻野党・地下秘密アジト***

幻の月光「おのれシグフェルめええ!!!」

アルシャード家令嬢の誘拐作戦が失敗した事に、
独立幻野党の首領・幻の月光は怒り狂っていた。

幻の月光「幻の睦月、幻の如月、
 お前たちに与えておいた任務は何だ!」
幻の睦月「石油王アルシャード一族の令嬢フィリナを誘拐する事」
幻の如月「そしてアルシャード家から莫大な額の身代金を奪い、
 我らの革命成就のための活動資金を確保する事」
幻の月光「それがなんたるザマだ!
 たかがぽっと出の新人ヒーロー如きに
 いいようにあしらわれおって!!」
幻の睦月「め、面目ない…」
幻の如月「右に同じく…」

幻の月光は憂さ晴らしに酒瓶に手を伸ばそうとするが、
口にしようとしたその瞬間、一発の銃弾が酒瓶を貫通して、
中身の酒ごとガラスの破片が周囲一面に飛び散った。

幻の月光「誰だ!」

銃弾が発射された方向へ一同が振り向くと、
そこにはナチス式の黒い軍服を着こんだ中年の
口髭を生やした男が立っていた。

幻の睦月「誰だ貴様は!?」
幻の如月「いったいこの秘密アジトにどこから入って来た!」

ゴメス「久しぶりだな、ミスター月光」

その男は、幻の月光にもよく見覚えのある男だった。

幻の月光「キャプテン・ゴメス…!」

1446 

○静弦太郎→独立幻野党に拉致されそうだったフィリナを救う。
○霧島五郎/アイアンキング→独立幻野党に拉致されそうだったフィリナを救う。
○藤森典子→独立幻野党に拉致されそうだったフィリナを救う。
○津島博士→静弦太郎たちに土橋竜三を引き合わせる。
○土橋竜三→国家警備機構本部を訪れ、静弦太郎たちにフィリナと牧村光平の関係を説明する。
●村上峡児→フィリナとシグフェルの関係を疑う。
●スマートレディ→村上社長とキャプテン・ゴメスに、フィリナに関する調査報告を行う。
●キャプテン・ゴメス→幻の月光に接触する。
●凱聖クールギン→シグフェル捕獲作戦に絡み、スマートブレインの動きをキャッチする。
●爆闘士ガラドー →シグフェル捕獲作戦に絡み、スマートブレインの動きをキャッチする。
●幻の月光→フィリナ誘拐作戦をアイアンキングとシグフェルに邪魔される。
●幻の睦月→フィリナ誘拐作戦をアイアンキングとシグフェルに邪魔される。
●幻の如月→フィリナ誘拐作戦をアイアンキングとシグフェルに邪魔される。
●ザイラユニコン→フィリナ誘拐作戦をアイアンキングとシグフェルに邪魔される。

○牧村光平/シグフェル→独立幻野党に拉致されそうだったフィリナを救う。
○朝倉慎哉→朝倉家でフィリナを出迎える。
○沢渡優香→朝倉家でフィリナを出迎える。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→従弟の牧村光平と再会するため、お忍びで来日。

【今回の新規登場】
●幻の睦月(アイアンキング)
 独立幻野党・幻十二人衆の一員。幻の如月とコンビを組み、
 怪獣ロボット・ザイラユニコンを使い、アッサム王国のカトリーヌ王女誘拐を任務とした。

●幻の如月(アイアンキング)
 独立幻野党・幻十二人衆の一員。幻の睦月とコンビを組み、
 怪獣ロボット・ザイラユニコンを使い、アッサム王国のカトリーヌ王女誘拐を任務とした。

●ザイラユニコン(アイアンキング)
 独立幻野党の怪獣ロボット。サイのような姿をしたロボット恐竜で、角から破壊光線を出し、
 内蔵する巨大なマシンガンで攻撃する。


『砂漠の姫の来日』-2

作者・ティアラロイド

1447 

実は一か月前ほど前のこと。
フィリナはフランス南西部・アルカションの自邸で、
日本にいる慎哉から手紙を受け取っていた。
「親愛なるフィリナ様」で始まるその手紙には、
光平がシグフェルとなってしまった事情が
詳細に綴られていた。

紅蓮の鳳凰シグフェルとして謎の怪生物イーバとの戦いに身を投じる事になった光平。
しかし光平を異形の身体へと変えた張本人・東条寺理乃の手掛かりはぷつりと途絶え、
ブレイバーズとGショッカーの戦いにも否応なく巻き込まれる事が多くなり、
今後の先行きに不安を抱き思い悩んだ光平たちは、後見人であるフィリナに思い切って
事情を打ち明けて相談を仰ぐこととしたのだった。

フィリナ「これは…!?」

手紙を読んだフィリナは、最初は何の冗談かと思った。
しかし慎哉はこんな幼稚な冗談を手紙にしたためて
送ってくるような人間ではない。
それに電子メールではなく、わざわざ手書きの手紙にして
国際郵便書留にして送った来たという事は、
万一の他者による傍受や誤送信を恐れたのだろう。
それだけ用心深く行動したという事は、
これは只事ではないという事をフィリナも察し、
急遽スケジュールを調整して来日の運びとなったのである。

…とはいえ、これは正直フィリナにも手に余る事であった。
いかに世界有数の石油王一族で重要な地位を占めるフィリナといえども
彼女一人でどうにかなることではなかった。
国際ビジネスの世界や社交界では経験豊富ではあっても、
「海外で暮らす従弟が突然、異形の超人的存在に変貌した」など
人生初めての経験だ。どうしてよいものか見当すらつかない
というのが本音だろう。

ただ「シグフェルの正体」の秘密を誰にも漏らさずに黙っていれば
これからもそれで済むという事ではないだろう。現に光平たちはこれまで
本来ならば無関係な事件に何度も巻き込まれている。
相応の対策を講じなければならない。それも急を要する。

フィリナ「私たちだけでいくら思案したところで、何も見えてはこないわ。
 やはりしかるべき専門家か組織に相談すべきよ」
慎哉「まさかフィリナさんは、光平の事をブレイバーズに知らせる
 つもりなんですか?」

慎哉はブレイバーズに助けを求める考えには難色を示した。
ブレイバーズが光平を「ただの戦力」と看做して利用するだけに
終わるのではと疑って心配しているのだ。

フィリナ「必ずしも頼る相手はブレイバーズだけとは
 限らないわ。私の知っているフランスのある有名医科大学に、
 信頼できるサイボーグ工学の先生がいらっしゃるわ。
 その先生にお願いしてみるのも、一つの手段ね」
優香「でもそうなると、光平くんはしばらく日本から
 離れる事になるんですか…?」
フィリナ「そうなるわね…」
光平「フィリナ……」
慎哉「………」

「光平が日本から離れる」というフィリナの言葉に、
優香と慎哉の顔は一様に曇った。
やはり光平と長期間別れる事になるのは
寂しいのだろう。

フィリナ「ごめんなさい。何も慌てて今決める事はないわ。
 みんなでじっくり一番よい選択肢を考えていきましょう」
光平「そうだよ。まだ時間はたっぷりあるんだ。
 ゆっくり考えようぜ」
優香「光平くん…」
慎哉「そうだな。ここでうじうじ悩んでたってしょうがないよな」
フィリナ「その東条寺理乃という女と
 その父親についても私の方で詳しく調べてみるわ。
 じゃあこの話はいったんはお開きにしましょう。
 ところで明日はお休みなのよね。慎哉、優香、明日は
 二人とも時間は空いてる?」
慎哉「俺なら空いてますよ」
優香「私も大丈夫です」
フィリナ「そう、それなら明日は光平と一緒に
 私と付き合ってくれないかしら」

1448 

***独立幻野党・地下秘密アジト***

独立幻野党=幻兵団のアジトに突如として姿を現した、
元ブレイン党作戦指揮官キャプテン・ゴメス。
果たしてその真意は何か…?

幻の月光「キャプテン・ゴメス…ブレイン党での下剋上に失敗した男が
 こんな場所に何の用だ?」
ゴメス「これは御挨拶だな。昔は中近東で共に暴れまわった
 私と貴殿の仲ではないか」
幻の月光「言っておくが、我々はGショッカーなどと手を組むつもりはないぞ」
ゴメス「しかしアルシャードの令嬢誘拐に失敗した今、
 今やテロ社会での諸君ら幻兵団の面目は丸潰れだ」
幻の睦月「なんだと!」
幻の如月「我らを侮辱するのか!」
幻の月光「よせ!!」

激昂する幻の睦月と幻の如月だが、
幻の月光が彼らを制止する。

ゴメス「アルシャードの令嬢はお前たちにくれてやろう。
 ただその令嬢を囮にしてシグフェルをおびき出したい」
幻の月光「シグフェルをだと?」
ゴメス「我々Gショッカーは、令嬢とシグフェルにはかなりの高確率で
 何らかの繋がりがあると見ている。君たちも令嬢誘拐を邪魔してくれた
 シグフェルには恨みがあるだろう」
幻の月光「わかった。今回は特別にお前の話に乗ってやる!」


翌朝…。

***朝倉家・玄関前***

朝倉家の玄関には、外出の装いに着替えた光平、慎哉、優香、そしてフィリナの姿が集合していた。
フィリナは頭にはベースボールキャップを被り、青のジャケットに、健康的な両足を惜しげもなくさらす
白のタイトなミニスカートにブーツという、お忍びの際の専用ルックである。

優香「あのフィリナさん…」
フィリナ「どうしたの優香?」
優香「さっきからあの人たちがこっちをじっと見てる
 みたいなんですけど…」

優香の指差す方向を見ると、カウボーイスタイルと登山者のような格好をした
二人組の若い男がこちらをずっと監視しているようだった。
内閣安全保障室長の土橋竜三からここの住所を聞き出した
国家警備機構の静弦太郎と霧島五郎だ。

慎哉「なんか怪しい感じの奴らだなあ…」
光平「俺が行って追っ払ってやろうか?」
フィリナ「昨日の国家警備機構の人たちね。あの人たちなら大丈夫よ」
優香「そうなんですか?」
フィリナ「構わないから放っておいて行きましょう」

フィリナたちは、尾行する静弦太郎たちのことなど
お構いなしに目的地に向かってさっさと出発した。

弦太郎「おい、出発したぞ! つけるぞ五郎」
五郎「合点!」

1449 

***矢吹コンツェルン本社・会長室***

矢吹「そうか、それではフィリナ嬢は無事に目的の少年には
 会えたのだね?」
めぐみ「そのようです」

昨夜フィリナが無事に光平の暮らす朝倉家に到着した事を、
秘書の桂めぐみから報告を受ける矢吹郷之助会長。

矢吹「私はその光平という少年に会った事はないが、
 彼の父親、牧村陽一郎についてはよく知っている。
 今でも彼の事を国賊と呼んで蔑む者も少なくはないが、
 それは決して違う」
めぐみ「矢吹さん…」
矢吹「彼はエリートコースを順調に歩み、将来は外務事務次官や
 駐米大使の地位も約束されていた男だった。しかし自らその道を蹴って、
 日本国の国旗を一外交官として代表して背負いながら、
 自分の意思で志願して、率先して危険な紛争地帯や貧困地域に向かい、
 世界平和の実現のために戦い続けた熱き男だったのだ」

矢吹郷之助は、自分の知人である今は亡き日本人外交官の事を回想し、
思いを馳せるのであった。

矢吹「せっかくの従姉弟水入らずの時間だ。
 楽しい時間を過ごしてもらえればよいのだが…」
めぐみ「フィリナ嬢を狙った独立幻野党の動きが気になります」
矢吹「彼女には余計なお節介かもしれないが、
 例の国家警備機構の二人には引き続き厳重に
 ガードしてもらおう」
めぐみ「承知しました。国家警備機構の方へはそのように」


***東京エネタワー・大展望台***

フィリナ「うっわー! 広い!!」

その日の東京エネタワーは、休日という事もあり、
観光客でかなり込み合っていた。
展望台から見下ろす東京の街並みを見てはしゃぐフィリナ。
普段は国際ビジネスの舞台や華やかな社交界に身を置く石油王令嬢も、
今この時間だけは歳相応の普通の女の子に戻っていた。

光平「もっと上の特別展望台の方に行ってみようか?」
フィリナ「ええ!」

フィリナと光平たちは特別展望台行きのエレベーターの列に並ぶ。

慎哉「なあ、なんで東京エネタワーなんだ?」
優香「どういうこと?」
慎哉「だって時代は今スカイツリーの方だろ」

フィリナと光平とは少し離れて列に並んでいる慎哉が、
つい身も蓋もないツッコミを口にする。

優香「フィリナさんの話だと、エネトロンを集積して
 都心全域に送電するシステムを司る日本独自の技術の
 エネタワーを直接自分の目で見てみたいんだって」
慎哉「どう見ても純粋に観光を楽しんでるようにしか
 見えないよなあ…。あ、いや別にそれが悪いって
 言ってるんじゃないぜ」
優香「光平くんがシグフェルになってから、私たちも
 いろいろと大変だったじゃない。きっとフィリナさん、
 私たちの緊張を解き解そうとしてくれているんだと思う」
慎哉「それにしてもさっきからフィリナさん、光平の奴にべったりじゃないか。
 沢渡、よくお前嫉妬しないよな?」
優香「久しぶりの従姉弟水入らずなんだもの。
 今日くらいは光平くんをフィリナさんに譲ってあげる♪」
慎哉「お前は心が広いよなあ…」
優香「そういう朝倉くんこそもしかして妬いてるの?」
慎哉「…俺がなんで!? そもそも誰にだよ!!…(///)」

1450 

そんな時、ツーリング風の人相の悪い青年二人組が
列に並ぶ他の入場客強引にを押しのけて、
光平とフィリナのいる位置へと近づいて行く。

井沢「どけっ!」
優香「キャアッ!」
慎哉「なんなんだアンタたちは!?
 ちゃんとルールを守って並べよ!」
ロングコートの男「邪魔だ!」
慎哉「うわっ!?」

二人組の男に突き飛ばされる慎哉と優香。
場内はたちまち騒然となる。

井沢「フィリナ・クラウディア・アルシャードだな?」
フィリナ「――!!」
光平「なんなんだお前たちは!?」
ロングコートの男「失せろ小僧。お前に用はない」

その男=井沢博司と相棒のロングコートの男は、
それぞれスティングフィッシュオルフェノクと
エレファントオルフェノクに変身した。
スマートブレインがシグフェルをおびき出そうと
フィリナに狙いを定めて襲撃してきたのだ。

光平「危ないっ!」
フィリナ「光平ッ!?」

スティングフィッシュオルフェノクの三又のトライデントから
咄嗟にフィリナを庇って逃げる光平。
周囲に他の一般入場客たちの目があるため、
ここではシグフェルに変身できない。

光平「だめだ! ここで変身すれば正体がバレちまう。
 いったいどうすれば…!」

1451 

スティングフィッシュオルフェノク@井沢の影「これまでだな…」
エレファントオルフェノク@ロングコートの男の影「死ね……」

他の観光客たちが皆、悲鳴を上げて逃げ惑う中、
光平とフィリナは二体のオルフェノクによって
たちまち展望台の隅の方へと追い詰められてしまう。
その様子を遠くの物陰から観察している
キャプテン・ゴメスと幻の睦月、そして幻の如月。

幻の睦月「おい! アルシャードの令嬢を殺してしまっては意味がないぞ!!」
ゴメス「心配するな。ただシグフェルをおびき出すためには、
 こちらも本気で襲っているそぶりを見せないといかん」

怯えるフィリナと、必死に彼女を身を呈して庇う光平は、
絶体絶命の窮地に陥る。

光平「くそッ!!!」
フィリナ「光平っ!!」

オルフェノクの触手が光平とフィリナの心臓めがけて
伸びようとしたその時、間一髪でそれを防いだのは
アイアンベルトの見事な鞭捌きであった。

スティングフィッシュオルフェノク@井沢の影「誰だ!?」
光平「あなたは!?」
フィリナ「弦太郎さん!」

弦太郎「よォ! 大丈夫かお二人さん!」

光平とフィリナを守るようにして、
二体のオルフェノクの前に敢然と立ちはだかる静弦太郎。

エレファントオルフェノク@ロングコートの男の影「貴様、何者だ?」
弦太郎「そういえばGショッカーの諸君とはこれが初対面だったな。
 俺は静弦太郎っていうモンだ。よく覚えといてもらおうか!」
スティングフィッシュオルフェノク@井沢の影「静弦太郎…だと?」
エレファントオルフェノク@ロングコートの男の影「あの国家警備機構の!?」

果たして東京エネタワー大展望台を舞台とした
静弦太郎とオルフェノクの対決の行方は…。
そして命を狙われるフィリナと光平の運命や如何に!?

1452 

○静弦太郎→東京観光を楽しむフィリナたちをガードする。
○霧島五郎→東京観光を楽しむフィリナたちをガードする。
○矢吹郷之助→引き続き国家警備機構に来日中のフィリナの警護を依頼。
○桂めぐみ→引き続き国家警備機構に来日中のフィリナの警護を依頼。
●幻の月光→フィリナ誘拐とシグフェル捕獲のため、キャプテン・ゴメスと手を結ぶ。
●幻の睦月→フィリナ誘拐とシグフェル捕獲のため、キャプテン・ゴメスと手を結ぶ。
●幻の如月→フィリナ誘拐とシグフェル捕獲のため、キャプテン・ゴメスと手を結ぶ。
●キャプテン・ゴメス→フィリナ誘拐とシグフェル捕獲のため、独立幻野党と手を結ぶ。
●井沢博司/スティングフィッシュオルフェノク→キャプテン・ゴメスの命令で、東京エネタワーでフィリナを襲う。
●ロングコートの男/エレファントオルフェノク→キャプテン・ゴメスの命令で、東京エネタワーでフィリナを襲う。

○牧村光平→東京エネタワーで二人組のオルフェノクに襲われる。
○朝倉慎哉→東京エネタワーで二人組のオルフェノクに襲われる。
○沢渡優香→東京エネタワーで二人組のオルフェノクに襲われる。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→東京エネタワーで二人組のオルフェノクに襲われる。

【今回の新規登場】
●井沢博司=スティングフィッシュオルフェノク(仮面ライダー555)
 仮面ライダーファイズが最初に戦ったスマートブレイン配下のオルフェノクで、
 オコゼの能力を持つ。躊躇いも無く人を殺す冷酷非情な性格。
 直径1mのコンクリートでも砕く威力のトライデントを武器に使用し、
 下半身を魚の尾鰭に変化させた遊泳態となり、時速180㎞で空中を飛行して移動できる。

●ロングコートの男=エレファントオルフェノク(仮面ライダー555)
 スマートブレイン傘下のオルフェノクの1人で、象の能力を持つ。
 人間態はバイクを乗り回す青年だが、その服装は上半身裸に
 ロングコートという明らかに怪しい風貌。身長220㎝、体重152㎏とかなり大柄。
 頭部の両側に象の顔があり、両側から伸びた鼻が牙になっている。
 身体は鎧のような装甲で覆われている。下半身が巨象の胴体と四肢に変化した
 突進態にも変化できる。


『砂漠の姫の来日』-3

作者・ティアラロイド

1453

***東京エネタワー***

スティングフィッシュオルフェノク@井沢の影「邪魔をするな…」

スティングフィッシュオルフェノクは下半身が魚のような遊泳態となり、
まるで水の中を泳ぐように宙を舞って、静弦太郎と光平たちに襲いかかる。
弦太郎はアイアンベルトでスティングフィッシュオルフェノクの尾部分を絡め取り、
その動きを封じる。

弦太郎「なにボサッと突っ立ってる!? 早く逃げろ!」
光平「…は、はいッ!!」

光平はフィリナを連れて非常階段の方へ逃げようとするが、
その前にエレファントオルフェノクが立ちはだかる。

エレファントオルフェノク@ロングコートの男の影「待て。逃がさないぞ…」

光平「くっ…! フィリナ、こっちだ!!」
フィリナ「ええ!!」

必死に反対方向へと走る光平とフィリナだが、
下半身が四肢に変化したエレファントオルフェノクにあっという間に
追いつかれてしまい、その巨体に突撃されて二人は引き離されてしまう。

光平「うわあああッッ!!!」
フィリナ「キャアアッッ!!!」

弦太郎「まずいッ!?」

二人の危機に弦太郎が傍まで駆けつけ、まずはフィリナの手を握るが、
逃げ惑う観光客の群れによる混乱に巻き込まれ、光平に近づけない。
そうこうしているうちに、光平はエレファントオルフェノクに蹴り飛ばされて
展望台のガラス窓を突き破って外へと放り出されてしまった。

弦太郎「しまった!」
フィリナ「光平ッ!!」

光平「うわあああッッ!!!」

1454

 ***同タワー 非常階段***

なんとか非常階段へと逃げ込んだ静弦太郎とフィリナ。
しかしフィリナは元来た方向へと戻ろうとする。

フィリナ「放して! 光平が…! 光平が…!」
弦太郎「諦めろ! あの高さから落ちたらもう助からんッ!」
フィリナ「――!!」

自分を引き留める弦太郎の言葉に、
思わずフィリナは激昂して平手打ちをお見舞いしてしまう。

弦太郎「………」
フィリナ「ごめんなさい……」

フィリナはすぐに我に返って冷静さを取り戻し、
弦太郎に謝罪する。

弦太郎「気にするな。女に殴られるのは慣れっこだ。
 それにしても本当に家族として愛しているんだな。
 あの光平っていう坊やのことが」
フィリナ「ええ、そうよ。私が子供の頃から大好きだった、
 まだ何も知らなかった幼い私に広い世界の事をいろいろと
 教えてくれた大切な叔母様の忘れ形見…。それが光平よ。
 もし光平の身にもしものことがあったら、私は天国にいる
 叔母様に顔向けが出来ない」
弦太郎「そうだったのか…」
フィリナ「光平はきっと無事よ」
弦太郎「そう信じたい気持ちはわかるがな…」
フィリナ「いいえ、光平はきっと大丈夫だわ」
弦太郎「………」

その時、タワー全体が激しく揺れるのが感じられた。

弦太郎「なんだこれはいったい!?」

1455 

***同タワー 地上・正面入り口近く***

地上に落下した光平は、先に地上へと避難していた慎哉と優香と合流した。

優香「光平くん!」
慎哉「光平! フィリナさんは!?」
光平「わからない…。途中ではぐれて見失ってしまったんだ」
慎哉「なんだって! お前がついていながら!!」
光平「あの静弦太郎って人が一緒だから大丈夫だと思う」

その時、地面が激しく揺れた!

優香「地震…?」

それは地震ではなかった。大きな影が東京エネタワーに抱きつくように
張り付いている。幻兵団の怪獣ロボット・ザイラユニコンがエネタワーを
揺らしているのだ。

慎哉「か、怪獣ッ!?」
光平「フィリナを助けに行く!!」

ようやく変身のタイミングを掴んだ光平はシグフェルにその姿を変えると、
ザイラユニコンに向かって飛翔し立ち向かっていく。
しかしそれこそが策士キャプテン・ゴメスの罠だった!

ゴメス「今だ! やれッ!!」

森林緑地の陰に隠れて待機していた幻兵団の伏兵数人が、
ゴメスの指示を合図に一斉にシグフェルめがけてバズーカ砲のような砲筒から
特殊ゴムネット弾を複数発射する。

シグフェル「…な、なんだこれは!? うわあああっっ!!!」

シグフェルは身体をネットに絡め取られ、地上に落下してしまう。

シグフェル「くそっ、こんなもの!!」

シグフェルはネットを引き千切ろうとするが、まるで鳥黐(とりもち)のように
身体中にネットが粘着して思うように動けない。炎の力で焼き切ろうとしても、
結果は同じ事だった。

ゴメス「無駄だ。その特殊ネットは高温を吸収すればするほど強度が上がる仕組みになっている。
 我々の誇る科学陣が君のデータを詳細に分析して、地道に研究を積み重ねた成果だよ」
シグフェル「誰だお前は!?」
ゴメス「はじめましてシグフェル。私はGショッカーのキャプテン・ゴメス」
シグフェル「Gショッカー…?」

"Gショッカー"と聞いて、この前のクロスランダーとの一件を思い出したシグフェル。
彼らは明らかに自分=シグフェルを捕えようとしていた。
そういえばあの大石秀人=ギョストマも、後から聞いた噂では
その目的はシグフェルを探し出すことにあったらしい。
かなり以前からGショッカーは自分を捕獲しようと機会を狙っていたのではないか…。
シグフェルはそんな嫌な予感に駆られた。

シグフェル「俺をどうするつもりだ!?」
ゴメス「君をこれからGショッカーへと御招待する」
シグフェル「イヤだ! 俺はGショッカーなんかには行かない!」
ゴメス「君に拒否権はない」

初めてシグフェルと直接言葉を交わし、その生の声を聞く機会を得たゴメス。
自分が想像していたのよりも意外に若く聞こえるその声色と口調に、
ゴメスには一つの疑問点が思い浮かんだ。
今までは"シグフェルはもっと年長の猛者"という先入観を知らず知らずのうちに
抱いていたが、実はシグフェルは意外に年少、もっとハッキリ言ってしまえば
10代の年頃の少年なのではないか…と。

よく考えてみれば、Gショッカーと敵対する宿敵ブレイバーズの構成員に未成年者は珍しくない。
かつて自分を散々手こずらせた大鉄人ワンセブンのパートナー南三郎もまだ中学生であった。
これはシグフェルに対する考察を一から見直さなければならないかもしれないと
考えるゴメスであった。もっとも、ここで捕まえてしまえばどうでもいいことだが…。

ゴメス「運び出せ」
ショッカー戦闘員「イーッ!!」

配下のショッカー戦闘員たちにシグフェルを連行するよう命令するゴメス。
果たしてシグフェル=牧村光平の運命は!?

1456 

○静弦太郎→スティングフィッシュオルフェノク、エレファントオルフェノクと交戦。フィリナを連れて脱出。
●スティングフィッシュオルフェノク→静弦太郎と交戦。
●エレファントオルフェノク→静弦太郎と交戦。
●ザイラユニコン→東京エネタワーを揺らす。
●キャプテン・ゴメス→巧妙に罠を貼り、特殊ネット弾でシグフェルを捕獲。

○牧村光平/シグフェル→東京エネタワーの中でフィリナとはぐれる。変身してザイラユニコンに立ち向かうが、
 待ち構えていたキャプテン・ゴメスの罠にはまり特殊ネットの中に捕獲される。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→東京エネタワーの中で牧村光平とはぐれ、静弦太郎と共に非常階段に逃げ込む。
○朝倉慎哉→東京エネタワー地上の入り口近くで牧村光平と合流。
○沢渡優香→東京エネタワー地上の入り口近くで牧村光平と合流。


『砂漠の姫の来日』-4

作者・ティアラロイド

1457

ゴメス「運び出せ」
ショッカー戦闘員「イーッ!!」

キャプテン・ゴメスの命令で、特殊ネットに捕らえたシグフェルを
運び出そうとするショッカー戦闘員達。
だが、その様子を物陰から密かに覗き見ている者がいた。
ネロス帝国が放った忍びの爆闘士ガラドーである。

ガラドー「そうはさせるか…!」

幻兵団とスマートブレインにシグフェルを先取りされまいと、
妨害を試みる事にしたガラドーは手裏剣を投げつけ、
シグフェルを捕らえているネットを切り裂いた。

シグフェル「…!? ネットが破れた!」

咄嗟に何が起こったのか分からないながらも、
ともかくネットの裂け目を思い切り引っ張って広げ、
そこから脱出するシグフェル。

ゴメス「しまった! 逃がすな!」
ショッカー戦闘員「イーッ!!」

キャプテン・ゴメスの指示でショッカー戦闘員が一斉に飛びかかるが、
敢えなく翼の一振りで全員薙ぎ倒され、
飛翔したシグフェルはそのまま逃げてしまった。

シグフェル「フィリナ、今行くぞ!」

追尾を振り切り、そのまま高度を上げてザイラユニコンに挑もうとするシグフェルだが、
不意に斜め下から飛んで来た二つのボクシンググローブに撃墜され、
体勢を崩して地上に落ちてしまう。

シグフェル「くっ…、何だ!?」
ジャムネ「フハハハハ!
 俺はネロス帝国・ヨロイ軍団激闘士ジャムネ!
 逃がしはせんぞシグフェル!」

肩を揺らして現れた激闘士ジャムネは、
両手のボクシンググローブをミサイルのように射出して攻撃する。
シグフェルがかわすと、二発のボクシンググローブは背後の電柱と街路樹にそれぞれ命中し、
どちらも真っ二つに叩き折った。

シグフェル「ネロス帝国と言ったな!」
ジャムネ「いかにも!
 戦闘ロボット軍団のクロスランダーは口ほどにもなく敗れ去ったが、
 最強の格闘技であるボクシングを極めたこの俺はそうは行かんぞ。
 たっぷりと痛めつけてやる!」
シグフェル「なるほど、ボクサーか…」
 
両手に装着した黄色いグローブ。
小刻みに体を揺らしながらステップを踏むフットワーク。
ジャムネのファイティングスタイルは一見して明らかにボクシングのそれである。
それに対し、シグフェルは得意の琉球空手の型に倣って
踵をやや浮かせて胸を張り、直立の姿勢で迎撃体勢を取る。

ジャムネ「行くぞオッ!」
シグフェル「来い!」

一気に距離を詰め、ジャブやフックを続けざまに撃ち込んでくるジャムネ。
シグフェルも軽妙な体捌きで敵の攻撃をかわしつつ、
機を見た突きと蹴りでカウンターアタックを仕掛ける。

ジャムネ「つぁっ!」
シグフェル「くっ…、キックもか!」

敵の両手の動きに神経を集中していたシグフェルを
振り上げられたジャムネの右足が勢いよく襲った。
ボクサーだけにパンチ専門かと思いきや、
ジャムネはキックボクシングも抜かりなく鍛えており、
拳での打撃に華麗な足技も織り交ぜて激しく攻め立てる。

1458

ジャムネ「どうした! その程度かシグフェル!?」
シグフェル「(落ち着け…! フィリナを助けるためにも、
 まずはこいつを倒す事に集中するんだ…!)」

フィリナ救出を急ぎたいばかりに焦りの気持ちがあったシグフェルだが、
それが原因で苦戦していては元も子もない。
自分に喝を入れたシグフェルは、改めて意識を目の前の勝負に集中する。

シグフェル「(赤心寺での修業の成果、見せてやる!)」

体得したばかりの梅花の型で、
ジャムネの攻撃を次々とガードしていくシグフェル。
ボクシングの技に対しても赤心少林拳の奥義はその力を如何なく発揮し、
打撃の勢いを巧みに削いで無力化していく。

ジャムネ「馬鹿な…! この俺のパンチが、
 ことごとく抑え込まれているだと!?」

予想以上に洗練されたシグフェルの武術に驚きを禁じ得ないジャムネ。
これでもかとばかりにパンチを連打し猛攻を加えるが、
シグフェルはその全てを梅花の構えで完璧に封じてしまう。

ジャムネ「おのれ…、喰らえ~っ!」
シグフェル「はぁっ!」

激昂したジャムネが打ち出した渾身の右ストレートパンチを、
梅の花弁のように包み込むシグフェルの両手が受け止めた。

ジャムネ「ぐ…ぬぬ…!」
シグフェル「たぁっ!」

すかさずローキックでジャムネの足を払ったシグフェルは、
転倒したジャムネが立ち上がったところに
紅蓮の炎を纏った右手で斬りつける。

シグフェル「フレイムアーム!!」
ジャムネ「ぐおおっ!」

ガラドー「こ、これはいかん…!」

大ダメージを負って倒れ込んだジャムネの近くに
物陰から戦いを見守っていたガラドーが煙幕を投げつける。
黒い煙が立ち込めてシグフェルの視界を塞ぎ、
それが晴れた時にはジャムネの姿は消えていた。

シグフェル「逃がしたか…!
 それより、早くフィリナを助けなきゃ!」

ジャムネに勝利したシグフェルはすぐに飛び立ち、
フィリナを助けるべく東京エネタワーの方へ向かった。

1459

●キャプテン・ゴメス→ガラドーの妨害により、シグフェルに逃げられてしまう。
●ガラドー→シグフェルを捕らえた特殊ネットを手裏剣で切り裂き、キャプテン・ゴメスの作戦を妨害。
●ジャムネ→シグフェルに戦いを挑むが敗退する。

○シグフェル→特殊ネットから脱出。ジャムネと戦い勝利する。

【今回の新規登場】
●激闘士ジャムネ(超人機メタルダー)
ネロス帝国・ヨロイ軍団激闘士。
ボクシングを得意とする戦士で、両手のグローブはロケットパンチとなる。
拳だけでなく蹴り技にも優れるが、その足が弱点。


『砂漠の姫の来日』-5

作者・ティアラロイド

1460

激闘士ジャムネを降したシグフェルは、ザイラユニコンめがけて飛翔するが、
今度はタワーの大展望台から空中を舞うように出て来た
スティングフィッシュオルフェノクの遊泳態に遮られる。

シグフェル「くそっ!! 邪魔をするなッ!」

自由自在に宙を舞って動くスティングフィッシュオルフェノクに邪魔され、
シグフェルは思うように前に進む事が出来ない。
そうしている間にもザイラユニコンに揺り動かされている
東京エネタワーは今にも倒壊寸前の様相を呈してしていた。

五郎「中の弦太郎が危ない! 今行くぜ!
 ――アイアン・ショック!!!!!」

霧島五郎はアイアンキングに変身し、ザイラユニコンに抱きついて
懸命にその巨体をタワーから引き離そうとする。
一方のシグフェルは背中の両翼を羽ばたかせ、
焦る気持ちを抑えて精神を集中して
灼熱の炎に身を包み一点突破を図る。

シグフェル「うおおおおッッッッ!!!!」
スティングフィッシュオルフェノク「――!!」

シグフェルの突撃を食らったスティングフィッシュオルフェノクは、
青白い炎をあげて肉体が灰化し消滅した。
その様子を非常階段から見ていた静弦太郎とフィリナの二人。

弦太郎「今が脱出のチャンスだ。少々怖いだろうが我慢しろよ!」
フィリナ「まさかここから飛び降りる気!?」
弦太郎「行くぜ!!」

弦太郎はアイアンベルトの先端を鉄柱に撒きつけてしっかり固定すると、
フィリナを抱きかかえたまま地上めがけて飛び降りた。

フィリナ「いやああああああっっ!!!」

二人は無事に地上に着地する。
その様子を確認するキャプテン・ゴメスと幻兵団。

ゴメス「そろそろ潮時だな」
幻の睦月「待て。まだターゲットはどちらも確保してはいないぞ!」
ゴメス「アルシャードの令嬢を拉致する機会ならまだいくらでもある。
 退き際を見誤って、今あの怪獣ロボットを失うには早すぎるぞ」
幻の睦月「チッ…! 仕方がない。ザイラユニコ~ン! 戻るのだぁ~っ!!」

幻の睦月は無念の表情を浮かべながらも、ドクロ型コントローラーで
ザイラユニコンに退却の指令を出す。ザイラユニコンはアイアンキングを振り払うと
浮上してどこかへと猛スピードで飛び去って行ってしまった。
大展望台に残っていたエレファントオルフェノクもいつの間にか姿を消した。

1461

光平「フィリナ!!」
フィリナ「光平!!」
優香「よかった。みんな無事で…」

襲ってきたGショッカーの姿も消え、平静な姿を取り戻した東京エネタワー一帯。
光平たちはお互いの無事を確認して喜び合う。

弦太郎「………」

そんな中で、静弦太郎はじっと牧村光平の姿を凝視していた。

光平「あ、あの…僕の顔に何かついてますか?」
弦太郎「いや、そうじゃねえ…。ただあの高さから落ちて
 よく無事だったなと思ってな」
五郎「そういえばそうだなあ…」

弦太郎の至極もっともな指摘に、その場にいた光平たちは一瞬凍りついた。
確かに地上15Omの高さの大展望台から落ちて、普通の人間なら助かるはずがない。
どうやって言い訳したらいいものか困り果てる光平だったが、
機転を利かしたフィリナが光平の袖を引っ張り、こっそりと目線で合図を送る。
その視線の先には、子供向けのイベント会場のテントが張られてあった。

光平「…そ、そうだ! あれ、あれですよ!
 たまたま落下した先があのテントの真上で、
 クッションの代わりになって助かったんです!」
五郎「それにしたってお前さん、随分と運がいいねえ」
光平「そ、そうですよね。アハハ…(汗」
典子「でも一応病院で精密検査を受けた方がいいわ」
光平「いえ、本当に大丈夫ですから」

なんとかその場を取り繕う事に成功した光平たちであった。

フィリナ「弦太郎さん、今回ばかりは貴方に大きな借りが出来ちゃったみたいね」
弦太郎「こちとらこれが仕事でね。お前さんに貸しを作っただなんて
 思っちゃいねえよ」
フィリナ「さっきの大展望台からの二人きりのダイブ。
 正直ちょっと怖かったけど、ふふっ…実を言うと楽しかったわ。
 あんなスリルを体験したのは生まれて初めてよ」
弦太郎「大したお嬢さんだよ、アンタは…」

こうしてフィリナと光平たちは静弦太郎たちと別れた。
…と言っても、フィリナが日本に滞在している間はずっと
陰ながら彼女の身辺を尾行・監視しつつ警護しているのであろうが…。

慎哉「なあ沢渡…」
優香「なに…?」
慎哉「あの静弦太郎って人とフィリナさん、なんかいい雰囲気じゃなかったか…( ̄▽ ̄メ )」
優香「…朝倉くん、顔が引きつってるわよ…(汗」

そして夕暮れ時…。
誰もいなくなった東京エネタワーの敷地内を一人歩くキャプテン・ゴメス。
彼は足元に落ちていた一枚の手裏剣を見つけて拾う。

ゴメス「これは…?」

1462

その日の夜の出来ごと…。

***矢吹郷之助邸***

フィリナ「おじ様、それではお話が違います。
 私が来日する件は関係者には伏せてくださると…!」
矢吹「いや、誠に申し訳ない。この年寄りの不徳の致すところだ」

矢吹邸を訪れていたフィリナに、日本財界の雄と呼ばれた老人が
平身低頭に頭を下げて詫びている。

元々フィリナは、日本の経済界各位関係者には
自分の来日の件が漏れないように、
幼い頃から実の祖父の様に慕っていた
矢吹郷之助翁に依頼していた。
今回の来日の目的があくまでもプライベートなものであるためだ。

しかし、フィリナが今日本にいる事が
どういうわけかどこかから漏れてしまったらしい。
世界最大のエネルギー産業を牛耳る石油王一族の令嬢のお忍びの来日とあって、
すでに経済産業省や資源エネルギー庁、石油関連業界各団体は大騒ぎとなっている。
さっそく都内の某高級ホテルにて、石油公団主催の歓迎パーティーが
大々的に催されることとなってしまった。

矢吹「無論、君がその招待に応じる義務は全くない。
 バカな大人たちが勝手に騒いでいるだけの話だ」
フィリナ「…いいえ、せっかくご招待ですから出席しますわ。
 ここで断ればアルシャードと日本の経済界との間に波風が立つでしょうし、
 何より矢吹のおじ様のお顔を潰す訳にもいきませんもの」
矢吹「本当にすまん…」


***朝倉家***

光平「それで、その財界のパーティーに出席するのか?」
フィリナ「仕方ないわ。日頃からお世話になってる
 矢吹のおじ様にもご迷惑はかけられない」

フィリナの話では、その明日の夜のパーティーでは
誰か一人をパートナーとして随行させなければならないらしい。

優香「だとしたら光平くんが一緒?」
フィリナ「………」

優香の言葉にフィリナは少し顔を曇らせる。

フィリナ「優香、それは無理よ。光平が表舞台には立てない
 微妙な立場だということは貴女もわかっているはずよ」
優香「…!?」

フィリナの言葉に優香は思わずハッとなる。
光平はアルシャード一族の隠し子だ。
日本の石油外交にも絡む複雑かつ微妙な問題であり、
今の光平はとても公の場には出られないのだ。

優香「ごめんなさい。私…」
フィリナ「私こそごめんなさい。何も貴女を責めるつもりはなかったの」
光平「そう深刻な顔をするなよ優香、俺は全然気にしてないからさ」
優香「光平くん…フィリナさん…」

さて、ここで話は再び"フィリナに随行するパートナー"を誰にするか
という問題に戻る。

慎哉「あ、あの…もしよかったら俺が――(///)」
フィリナ「そうだわ。優香、貴女が一緒に来て!」
慎哉「――!?」
光平「ええっ!?」
優香「わ、私が…?」
フィリナ「何も随伴するパートナーが異性じゃなきゃダメなんていう
 ルールはないんだし、ここは私を助けると思って、お願いっ♪」
優香「…で、でも私、パーティーに着ていくドレスなんか持ってませんし…」
フィリナ「それなら私の方で用意するから心配ないわ」
優香「フィリナさんがそこまで言うなら…」

慎哉「………」

1463

慎哉「ハァ……」

慎哉は二階のベランダで空しく溜息をしながら、
一人寂しく夜空を眺めながら佇んでいた。
そこへ風呂上がりの光平がひょっこりと顔を出した。

光平「よっ、慎哉。邪魔していいか?」
慎哉「光平か。なんだよ?」

光平に語りかけられて振り向いた慎哉は、
いかにも不機嫌そうなムスッとした顔をしていた。

光平「バカだなお前は。押しが弱いんだよ」
慎哉「何の事だ?」
光平「好きなんだろ? フィリナのこと」
慎哉「…なっ!?(///)」

図星を突かれた慎哉の顔が真っ赤になった。

慎哉「バババババ…バカ言うな!
 なんで俺がフィリナさんのことを!(汗」
光平「お前とここで何年一緒に暮らしてると
 思ってんだよ。それぐらいわからない俺じゃないぜ♪」
慎哉「そんな訳ないだろ…。一介の商社マンの息子から見れば、
 世界有数の石油王のお嬢様だなんて雲の上の存在だ」

朝倉慎哉の両親は、日本の大手商社に勤めるビジネスマンとその妻(専業主婦)であり、
現在はニューヨーク支社長夫妻として子供を日本に残し海外に赴任している。
アルシャードの血を引く光平を家に引き取ったのも、そうしたビジネス上の付き合いの
経緯からでもある。

光平「じゃあお前は、その石油王の隠し子の俺の事も
 そんな風に"雲の上の存在"だなんて見てたのか?」
慎哉「そんなことはねえよ。光平はあくまで光平だよ」
光平「ならフィリナにも畏まらないで同じように接してみろよ。
 あいつも日本に来る時だけが"お嬢様"の自分から離れられる
 貴重な一時なんだ。可能性がないわけじゃないんだからさ」
慎哉「可能性かぁ……」

1464

翌日の夜…。

***東京赤坂・皇国ホテル 大宴会場「飛天」***

石油公団主催のパーティーである。
表向きの開催の口実は、エネルギー産業関連の財界関係者の親睦を深めるためだが、
その本当の理由は、世界有数の石油王一族の有力後継者候補と目される令嬢の接待である。

淡い優しい青色をしたアルジェリアの民族衣装のドレスを身に纏ったフィリナが
日本の財界関係者と談笑する中、ミントグリーンの高級パーティードレスを着た優香が
その傍でぎこちなく緊張していた。滅多に履かないハイヒールにも慣れていないようだ。

フィリナ「優香、緊張しなくていいわ。いつも通りの貴女でいいの」
優香「は、はい…」

そこへ石油公団総裁が挨拶に現れた。

総裁「これはフィリナ・クラウディア・アルシャード嬢、ようこそお越しくださいました」
フィリナ「この度はお招きにあずかりまして光栄です」
総裁「事前に来日をお知らせくだされば、もっときちんとした形で歓待できたのですが」
フィリナ「いいえ、今回はあくまで個人的なプライベートの目的で来ておりますので、
 余計なお気づかいをさせては申し訳ないかと」
総裁「いやいや、天下のアルシャード家のご令嬢を素通りさせたとあっては
 我が国の面目が立ちませんよ。ワハハハ!! ところで、そちらのお嬢さんは?」
優香「…え! わ、私ですか?」
フィリナ「彼女は日本での私の大事な親友です」
総裁「ご学友か何かのご関係で?」
フィリナ「そのようにお考え頂ければ幸いです」

一方、パーティーの招待客の中に、
そのフィリナたちの様子を離れた場所から
見ていた者たちがいた。

村上「なるほど、あの彼女がフィリナ・クラウディア・アルシャード。
 いかにも噂通りのシンドバットの物語から飛び出して来たような、
 上の上たる美しさを持つ姫君ですね」
桐原「全く同感ですな」
村上「…ん? これは桐原さん。貴方も招待を受けておられましたか」
桐原「こんばんわ、村上さん」

スマートブレイン社の代表取締役社長兼CEO・村上峡児と、
桐原コンツェルンの総帥・桐原剛造である。
双方共にそれぞれ自分の秘書(すなわちスマートレディ、
そして美人秘書のKとS)をパートナーとして随伴させている。

1465

桐原「噂の石油王一族の美しき姫君をぜひ一度間近で見てみたいと思いましてね。
 少々無理をしましたが友人に頼み込んでなんとか出席に漕ぎ着けましたよ」
村上「ほぉ~それはそれは。貴方にしては随分とご酔狂な…」
桐原「聞いた話では元々フィリナ嬢は日本側に来日の件は伏せていたのだとか。
 それをどこかの誰かが日本の財界関係者に情報をリークし、このパーティーを
 急遽開催させたのだという噂ですよ」
村上「それは初耳ですね」

日本の財界にフィリナ来日の情報をリークしたのはスマートブレインの仕業だった。
それを察知したネロス帝国は、強引な手を使って桐原剛造自らが
パーティーの出席者の中に割り込んで来たのだ。

スマートレディ「ふふっ♪ まるで狐と狸の化かし合いね。
 ねーねー、貴女達だってそー思うでしょ?」
秘書K「………」
秘書S「………」

からかってくるスマートレディを、
美人秘書のKとSの二人は徹底して無視する。

村上「そういえば桐原さん、これはお返しします」
桐原「これは…?」

村上が桐原に差し出したハンカチの中に包まれていたのは、
キャプテン・ゴメスが東京エネタワーの近くで拾ったガラドーの手裏剣だった。

桐原「見たところ手裏剣のようですが、これが何か?」
村上「またまた御冗談を。これが何なのかは、
 貴方が一番よくご存知のはずだ」
桐原「何の事を仰っているのかはよく分かりませんが、
 せっかくお返しくださると言うのであれば、
 これは私の方でお預かりしておきましょう」
村上「では我々はいったん失礼」
桐原「また後ほど」

桐原たちといったん別れる村上たち。

スマートレディ「ねえ社長さん、あの桐原剛造は本物の方かしら?
 それとも影武者?」
村上「さあ、どうでしょうかねえ…。今の私たちにはどうでもいいことです」

1466 
○静弦太郎→東京エネタワーから空中ダイブしてフィリナと共に脱出。
○霧島五郎/アイアンキング→東京エネタワーに抱きつくザイラユニコンと交戦。
○藤森典子→牧村光平に病院への受診を勧めるが断られる。
○矢吹郷之助→来日の情報が漏れてしまった件をフィリナに詫びる。
●スティングフィッシュオルフェノク→シグフェルと交戦し、戦死。
●エレファントオルフェノク→キャプテンゴメスの指示で撤退。
●村上峡児→石油公団主催の財界パーティーに出席。
●スマートレディ→村上峡児のお伴で石油公団主催の財界パーティーに出席。
●ザイラユニコン→幻の睦月の指示で撤退。
●幻の睦月→いったん退却する。
●キャプテンゴメス→東京エネタワーの側で爆闘士ガラドーの手裏剣を拾う。
●桐原剛造(クールギン)→石油公団主催の財界パーティーに出席。
●美人秘書K→桐原剛造のお伴で石油公団主催の財界パーティーに出席。
●美人秘書S→桐原剛造のお伴で石油公団主催の財界パーティーに出席。

○牧村光平/シグフェル→スティングフィッシュオルフェノクを撃破。
○朝倉慎哉→フィリナのパートナーとしてパーティーに出席できずがっかりする。
○沢渡優香→フィリナのパートナーとして急遽石油公団主催の財界パーティーに出席。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→沢渡優香をパートナーに指名し、石油公団主催の財界パーティーに出席。


『砂漠の姫の来日』-6

作者・ティアラロイド

1467

***東京赤坂・皇国ホテル***

警備員「ですからここから先はお通しできません」
弦太郎「え~い! 話のわかんねえ野郎だなあ!」
五郎「あのね、だから俺たちはね、国家警備機構の人間なの。
 いいからそこちょっとだけ道開けて」
警備員「例え国家警備機構の方であろうと、
 そのような服装の方をこのまま
 お通しするわけにはいきません」

フィリナを密かに身辺警護していた静弦太郎と霧島五郎のコンビであったが、
いつものウエスタンスタイルと登山服の格好のままなのが災いしたのか、
パーティー会場のドレスコードに引っ掛かり、会場に近づけないまま
警備員と押し問答を延々と繰り広げていた。

めぐみ「その方たちなら大丈夫よ。お通しして」
警備員「しかし…」
めぐみ「いいから」
警備員「わ、わかりました。どうぞ…」

弦太郎と五郎が困り果てていたところに現れて助け船を出したのは、
矢吹郷之助の秘書である元MJ隊員の桂めぐみであった。

弦太郎「アンタ、確か矢吹コンツェルンの…?
 とにかく助かったぜ」
めぐみ「フィリナ嬢ならこっちよ。案内するわ」

一方、パーティー会場の中では、
フィリナが財界要人との社交辞令の談笑を交わす中、
それに同行してついて来た優香は完全に浮いてしまっていた。
何しろこのような華やかな社交の場に出るのは人生初めての経験のため、
どうしたらよいものかわからないのだ。

優香「できたら光平くんと一緒に来たかったな…」

もし光平がこの場に一緒にいたら、
自分をきちんとエスコートしてくれたのではないかと、
優香は少し寂しく残念に思うのだった。
そこへ一人のボーイが近づいて飲み物を勧めて来た。

優香「い、いえ…私は未成年ですから、お酒は……」
ボーイ「ご心配なく。こちらはソフトドリンクです」
優香「そうですか。なら…」

優香はボーイの持つトレイから、飲み物の入ったグラスを一つ受け取り飲み干した。
その瞬間、ボーイがニヤッと笑った事に優香は気づいてはいなかった。
実はこのボーイは、パーティー会場に潜り込んでいた幻の睦月の変装だったのだ!

1468

麗子「あの時はいろんなコスプレをさせられて」
 本当に大変だったのよ」
フィリナ「あははは♪」

フィリナと親しく思い出話をしている金髪のロングストレートヘアの若い女性がいる。
神戸の貿易会社「秋本貿易」の社長である父の秋本飛飛丸(あきもと ぴゅんぴゅんまる)と
フランス人でファッションデザイナーである母フランソワーズ(デザイナーネーム:マリィ・ローラン)の
長女である秋本・カトリーヌ・麗子である。

二人ともフランス育ちのハーフであり、昔から気が合う仲である。
先程まではビジネス上の社交辞令の言葉しか口から発していなかったフィリナも、
この麗子とだけは心を許し合える関係の様だ。

フィリナ「麗子さんが正直羨ましいわ。その両津さんという
 人にも機会があれば一度会ってみたいです」
麗子「それだけは絶対止めておいた方がいいかも。
 一度両ちゃんの悪企みに巻き込まれたら後始末が大変よ」

そこへ優香がフラフラしながらフィリナに近寄って来た。

フィリナ「…優香?」
優香「ふぃりなは~~ん…(///)」
フィリナ「優香、貴女お酒飲んだわね!?」

フィリナはつい優香から目を離してしまった事を悔やんだ。

麗子「フィリナ、そちらはお連れの方?」
フィリナ「ええ、そうなんだけど…。どうしよう…」
優香「ふわあ~~い…(///)」
麗子「とにかくどこかで休ませないと!」

そこへ様子に気がついたボーイ数人が駆け付けて来た。

ボーイA「どうされました?」
フィリナ「この娘が間違ってお酒を飲んでしまったみたいなんです…」
ボーイB「お部屋を用意しております。ご案内いたしましょう」
麗子「私も一緒に行くわ」
ボーイC「いいえ、ここはわたくし達にお任せください。
 お客様はどうかこのままこの場に…」
麗子「………」

それからしばらくして静弦太郎たちがやって来た。

めぐみ「あら麗子さん、フィリナ嬢は今どちらに?」
麗子「フィリナなら今、連れの女の子と一緒に
 ボーイさんに案内されて部屋の方に向かいましたよ」
弦太郎「しまったッ!!」

1469

ボーイたちに案内され、用意された部屋へと着いたフィリナは、
まずは酔っ払った優香をベットの上に寝かせた。

フィリナ「ふぅ~これでひとまず安心ね」
優香「Zzz……」

安らかな寝顔でベットの上に横になっている優香に、
フィリナはそっと優しく語りかける。

フィリナ「ごめんなさい優香。無理してついて来てもらったのに、
 つい私が貴女から目を離してしまったばっかりに…」

そして気がつくと、部屋の中にいるのは自分と優香の二人だけで、
案内してきたボーイたちはいつの間にか全員姿を消していた。
さらによく見渡してみると、部屋の中には窓が全くない。
不審に思ったフィリナが部屋のドアを開けようとすると、
外側からロックしてあるようで全く開かずビクともしなかった。

フィリナ「これはいったい…!?」
???「フハハハ!! 無駄だ!!」
フィリナ「誰!?」

フィリナが振り返ると、部屋の中のテレビが勝手に作動し、
その画面にターバンを被った一人の男が映っていた。

幻の月光@モニター「はじめましてフィリナ・クラウディア・アルシャード嬢。
 私は独立幻野党のリーダー、幻の月光だ!」
フィリナ「独立幻野党ですって? 目的は何?」
幻の月光@モニター「我々の崇高な革命の目的を成就するため、
 君の御実家に是非とも軍資金を融通してもらおうと思ってな。
 無論、君の身柄と引き換えにだ」
フィリナ「なら目的は私の身代金ってわけね。
 それなら人質は私一人で充分なはずよ。
 今私と一緒にいるあの女の子は無関係なわけだから、
 彼女だけ解放してはくれないかしら?」
幻の月光@モニター「そうはいかん! 恨むなら巻き込まれた
 自分の身の不運を恨んでもらおう!」
フィリナ「くっ…」

今まで皇国ホテルの壁面に張り付いていながら、
ステルス機能で身を潜めていた怪獣ロボット・ザイラユニコンが姿を現した。
フィリナと優香の二人が閉じ込められた部屋は、
実はこのザイラユニコンの体内に内蔵されていたのだ。


***豊洲地区・朝倉家***

慎哉「光平、大変だ!!」
光平「どうしたんだ慎哉?」
慎哉「いいからニュースを見てみろよ!」

家でずっと留守番をしながら
フィリナと優香の帰りを待っていた光平たちだったが、
テレビの臨時ニュースで、パーティー会場の皇国ホテルで
怪獣が出現したとの報道が流れていた。
事態を理解した光平は、慌てて家から飛び出していこうとする。

光平「フィリナと優香を助けに行く!」
慎哉「待てよ光平」
光平「でも急がないと二人が!」
慎哉「慌てるな。こいつを持ってけ」

慎哉は光平に小型装置のような物を手渡す。

光平「慎哉、これは?」
慎哉「こんなこともあろうかと、沢渡にこっそり発信機を持たせておいたんだ。
 そいつで受信すれば二人の居所はすぐにわかるはずだ」
光平「サンキュ♪慎哉!」

光平はシグフェルに変身して、2階のベランダから飛び立っていく。

シグフェル「待ってろよ! フィリナッ! 優香ッ!」

1470

○静弦太郎→パーティー会場に潜入するが、一足違いでフィリナを拉致される。
○霧島五郎→パーティー会場に潜入するが、一足違いでフィリナを拉致される。
○桂めぐみ→静弦太郎と霧島五郎をパーティー会場に招き入れる。
○秋本・カトリーヌ・麗子→パーティー会場でフィリナと談笑。
●幻の睦月→ボーイに化けて、沢渡優香に酒を飲ませる。
●幻の月光→フィリナと沢渡優香をザイラユニコンの体内の一室に監禁する。

○牧村光平/シグフェル→朝倉慎哉から受け取った電波受信機を頼りに、フィリナと沢渡優香を助けに向かう。
○朝倉慎哉→牧村光平に電波受信機を手渡す。
○沢渡優香→幻の睦月の罠でお酒を飲まされ、フィリナと一緒にザイラユニコンの体内の一室に監禁される。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→沢渡優香と一緒にザイラユニコンの体内の一室に監禁される。


『砂漠の姫の来日』-7

作者・ティアラロイド

1471

桐原「ガラドーめ、しくじったな…」

村上から渡された手裏剣をテーブルの上で弄び、
そっと胸元に仕舞う桐原剛造の影武者クールギン。
そこへ驚くべき人物がやって来る。

桐原「あ…貴方は…!」
月影「お久しぶりです、桐原総帥」

現れたスーツ姿の男は、大宮コンツェルンの月影ノブヒコ。
日本財界でもかなりの大物だが、驚くべき理由はそれだけではない。
彼はゴルゴムの影の王子シャドームーンの仮の姿なのである。

桐原「これは突然のお越し、いかがなされましたか」
月影「いや、どうしたというほどの事でも。
 たまには華やかなパーティーも悪くないと思いましてな。
 無理を言って出席させていただく事にしたのです」

桐原「(世紀王候補の筆頭の地位にありながら
 しばらく姿を現さず、不気味な沈黙を守っていたシャドームーン…。
 一体何を考えているのかと皆が訝しんでいたが、
 まさかここで動こうとは…)」

以前、無幻城の謁見の間の前で、
クールギンはシャドームーンに己の心中を見抜かれ、
その底知れぬ恐ろしさを体感した事がある。
戦慄を覚える桐原に対し、その隣に腰を下ろした月影は
悠然とワイングラスを手に取り傾ける。

桐原「なるほど、確かに考えてみれば、
 そちらにはそちらの思惑がおありでしょうな。
 黙って見てなどいられぬわけだ」
月影「いえ、貴方がたのような格別な思惑などは特にありません。
 ただ、私もしばらく暇を持て余していたところでしてな。
 今宵の宴は退屈凌ぎにはちょうどいいかと」
桐原「(高見の見物に来たという事か。
 影の王子シャドームーン……やはり喰えない男だ)」

シャドームーン率いるゴルゴムが独自の思惑をもって
シグフェル争奪戦に乗り出してきたのかと警戒したクールギンだが、
ワインを味わいながらゆったりと寛いでいる月影は、
何かを企むというよりは、状況を純粋に楽しんでいるように見える。

月影「そろそろ始まりますか。お待ちかねの見世物が」
桐原「どうやらそのようですな…。報告が来たようです」

そう言って後ろを振り向く桐原。
賑やかに談笑しているパーティー客の人混みをかき分け、
美人秘書KとSが彼らの席にやって来た。

秘書K「総帥…!」
秘書S「動き出したようです」
桐原「そうか…」

フィリナが別室へ連れ込まれたのを見て桐原に報告する秘書の二人。
次の瞬間、建物が大きく揺れ、
少しして避難警報のサイレンがパーティー会場に響いた。

館内放送「怪獣が出現しました! 直ちに避難して下さい!」

会場がパニックになる中、桐原はゆっくりと立ち上がって
ネクタイの位置を直し、小さく呟いた。

桐原「さあ、始めるとするか…!」

1472

月影ノブヒコと桐原剛造が何やら会話している様子を、
遠くから伺っている村上峡児とスマートレディ。

スマートレディ「しゃ、社長さん…(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
村上「まさかあの男までもが、この場に居合わせようとは…」

スマートレディはさっきからずっと月影ノブヒコの放つ
気配と威圧感に震え上がっている…。

これまで大宮コンツェルンを率いて来た大宮幸一が名誉会長の座へと退き、
代わって財閥全体を率いる持ち株会社のCEOに就任したのが、この月影ノブヒコである。
世間的にはその前身や過去については一切不詳となっている…。

オルフェノクの王アークオルフェノクを世紀王候補として擁立する
スマートブレイン社にとって、まさに月影ノブヒコ=シャドームーンは
最終的に打倒すべき目標とも言える存在なのである。

スマートレディ「まさかシャドームーン様もシグフェルを…?」
村上「いや、おそらく余興がてらに見物に来ただけでしょう。
 今は別段気にする必要もない」

そして突然の怪獣出現の報。
逃げ惑うパーティーの賓客たち。

五郎「現れたな怪獣ロボット!
 ――アイアン・ショックッ!!!」

霧島五郎はアイアンキングに巨大変身して、
ホテルから離れてどこかへ行こうとするザイラユニコンを
取り押さえようとする。しかし、ザイラユニコンは
まるでカメレオンの保護色のように体色を変化させて
夜の闇の中に消えてしまい、アイアンキングは敵を
思うように捉えられない。

アイアンキング「――!?」

弦太郎「どうなってやがる!? 以前の戦いの時には
 あんな能力はなかったはずだ!」

一方、別の場所からザイラユニコンに指令を出しながら
一部始終の様子を見ている幻の睦月&葉月、そしてキャプテン・ゴメス。

ゴメス「いかがかな? スマートブレインが開発した最新鋭の
 ステルス機能の威力は」
幻の葉月「これならばアイアンキングなど恐れるに足らん!」
幻の睦月「ザイラユニコ~ン! アルシャードの令嬢さえ確保できれば
 もうこんな場所に用はない! アイアンキングなど放っておいて
 そのまま逃げ切るのだぁ~!!」

ザイラユニコン「ウォオオ~~んん!!!」

1473

弦太郎「俺はアイアンキングを助太刀に行く!
 ここは任せたぜ!!」

後の事は桂めぐみと麗子に任せて、直ちに
アイアンキングに加勢に向かおうとした弦太郎だったが、
その行く手の前に立ち塞がった者たちがいた。
それは頭部から伸びた二本のアンテナに単眼のような
フルフェイスマスク型ヘルメットと装甲服に身を包んだ謎の一団であった。

麗子「仮面ライダー?」
弦太郎「違う! コイツらはライダーなんかじゃねえ!」

ライオトルーパーA「………」
ライオトルーパーB「………」

スマートブレインの暴徒鎮圧用騎兵・ライオトルーパーだ。
装着者は全員怪人クラスのオルフェノクであり、
並の戦闘員とは比べ物にならない戦闘能力を持つ。
さらには、その中に混じって数人の
独立幻野党の党員たちの姿も見えた。

弦太郎「やはり独立幻野党はGショッカーと手を組んでいたようだな。
 侵略者と手を組んでおいて革命が聞いて呆れるぜ!!」

専用武器アレクセイガンを剣モードにして連携攻撃で
次々と弦太郎に襲いかかるライオトルーパーたち。
弦太郎もアイアンベルトで応戦する。

めぐみ「麗子さん、拳銃は?」
麗子「あいにく今は非番なんで携帯していないわ。
 でもあの程度の連中なら素手で充分よ♪」

麗子は自身の着ている高価なドレスのスカートをビリビリと引き裂き、
動きやすいように短くして、襲い来る敵に対して敢然と戦いを挑む。
めぐみも射撃で援護する。

一方、天王洲アイル方面へと出てそのまま海へと出ようとする
怪獣ロボット・ザイラユニコン。その体内の内部では、
フィリナがなんとか自力で脱出しようと
いろいろと試してはいたのだが…。

フィリナ「ダメだわ…。この扉ビクともしない。
 いったいどうなってるのよ!」

その時、ベットの上で寝ていた優香がようやく目を覚ました。

優香「う、うう~ん……」
フィリナ「優香、気がついたのね!?」
優香「フィリナさん、いったいここは…?」
フィリナ「わからないわ…。私たち、完全に
 この中に閉じ込められてしまったみたい…」

その時、優香のドレスの右胸に付けられたブローチが
点滅音と共に光った。

フィリナ「優香、それは!?」
優香「なんだかよくわからないけど、
 朝倉くんから持っているように
 言われてたんです…」
フィリナ「もしかしたらこれで助かるかもしれないわ!」
優香「……??」

1474

優香の所持する発信機から居場所を割り出したシグフェルは、
猛スピードで品川上空を飛行していた。

シグフェル「優香とフィリナがいるのはあの方向か!
 待ってろよ二人とも!!」

だがその途中でシグフェルは、いきなりどこかからか
ジャンプしてきた象のような巨体に突進された。

シグフェル「うわあっ!?」

一瞬何が起こったのか解らず、その場に着地するシグフェル。
その目の前には、鎧のような装甲で覆われた象のような巨体の怪物が立っていた。
それはまさしく、この前の東京エネタワーで襲って来た怪物の片割れだった。

エレファントオルフェノク「………」
シグフェル「またお前か!? 今急いでるんだ! 邪魔をするな!!」

激突するシグフェルとエレファントオルフェノク。
シグフェルのスピード攻撃と、重戦車すら破壊するパワーを活かした
エレファントオルフェノクの体当たり攻撃がぶつかり合う。

シグフェル「くっ…!!」
エレファントオルフェノク「――!!」

エレファントオルフェノクは武器の大砲から光弾を連射するが、
シグフェルは飛翔してそれらを華麗にかわしつつ、
徐々に敵との間の距離を狭めていき、一瞬の隙を突く!

シグフェル「とりゃあああッッッ!!!!!!!!」

全身を灼熱の炎に纏ったシグフェル渾身のキックが命中。
エレファントオルフェノクは絶叫と共に灰化して崩れ去ったのだった。

シグフェル「フゥ~ようやく片づけたか…。
 早く急がないと――」

フィリナと優香が助けを待つ方向へと向かって
再びシグフェルが飛び立とうとした、その時――!!

1475 
○霧島五郎/アイアンキング→逃げるザイラユニコンと交戦。
○静弦太郎→独立幻野党、ライオトルーパーと交戦。
○桂めぐみ→独立幻野党、ライオトルーパーと交戦。
○秋本・カトリーヌ・麗子→独立幻野党、ライオトルーパーと交戦。
●月影ノブヒコ→パーティー会場に現れる。
●ザイラユニコン→夜陰に紛れるステルス機能が追加され、フィリナと沢渡優香を拉致したまま逃げきろうとする。
●エレファントオルフェノク→シグフェルを品川上空で襲うが、敗れ去る。 ○シグフェル→フィリナと沢渡優香救出に向かう途中、品川上空で襲ってきたエレファントオルフェノクを撃破。


『砂漠の姫の来日』-8

作者・凱聖クールギン

1476

シグフェル「っ…!」

戦闘を終え、一息つきかけたシグフェルを一筋のビームが襲った。
間一髪でかわしたシグフェルだったが、
翼の先端にビームが掠って白煙を上げる。

シグフェル「誰だ…!?」

銀色のメタリックボディを陽光に輝かせながら、
ゆっくりとこちらへ歩いて来る一人の戦士の方へ
シグフェルは振り返った。

シャドームーン「エレファントオルフェノクを容易く退けるとは
 噂に違わぬ実力。なかなかやるな」
シグフェル「仮面ライダー…? いや、違う!」

飛蝗を模した煌びやかなそのマスクは、
一見すると仮面ライダーの仲間にも見えなくはない。
だが、以前のスーパー1との邂逅の時とは明らかに違う、
底冷えのするような闇のオーラがそれをはっきりと否定していた。
彼が一歩を踏み出すごとに、両足から牙の如く生え出た
強化装具レッグトリガーが不気味な金属音を上げる。

シャドームーン「我が名はシャドームーン…。
 邪将キングダークを葬り、クロスランダーやギョストマも倒した
 シグフェルというのはお前だな」
シグフェル「シャドームーン…?」

シャドームーンが帯びている風格とエネルギーは、
これまでシグフェルが遭遇してきたどの敵よりも桁違いに大きい。
身構えて戦闘態勢を取るシグフェルだが、
敵の威圧感に戦う前から怯んでしまいそうになる。
こんな感覚は、光平がシグフェルに覚醒して以来初めての事だった。

シャドームーン「このマイティアイのサーチ機能をもってしても
 分析不能か…。その上、計り知れぬほどの潜在能力。
 なるほど、これは邪将どもも大騒ぎするわけだ」

シグフェルの生体構造の解析を諦めたシャドームーンは立ち止まり、
目の前に立つ紅蓮の鳳凰の姿を今一度じっくりと眺め渡す。

シグフェル「お前もGショッカーの怪人なんだな?」
シャドームーン「我がゴルゴム帝国は、
 Gショッカーの先鋒として間もなくこの地球を支配する。
 だがその前に、巷を騒がす新たな超戦士とやらの姿を拝んでみたいと思ってな。
 我らの邪魔立てをする存在ならば、いずれ消し去らねばなるまい」
シグフェル「くっ…!」

シャドームーンのベルトに埋め込まれたキングストーンが眩しく発光し、
放射された凄まじいエネルギーが烈風となって周囲の物を吹き飛ばした。
シグフェルも危うく吹き飛ばされそうになり、
両腕で風を防ぎながら地面に足を踏ん張って堪える。

シグフェル「何て強烈なパワーだ…!」
シャドームーン「そう臆する事もあるまい。
 お前とて、途轍もないエナジーをその内に秘めているではないか。
 それとも、自分ではまだそれに気付いていないかな」
シグフェル「何っ…!?」
シャドームーン「見せてみろ。お前の実力を…!」

瞬間移動の如き神速で、シグフェルとの距離を詰めたシャドームーン。
シグフェルがはっと気付いた時には、
肘の強化装具エルボートリガーで威力を増幅されたパンチが
シグフェルの胸を目がけて打ち込まれていた。

シグフェル「うわぁぁぁっ!」

1477

桐原「あのシャドームーンが出て来るとは…。
 これは思いもかけぬイレギュラーよ」

皇国ホテルの庭園へ避難した桐原剛造の影武者クールギンは、
思わぬ珍客の出現に戦慄していた。

桐原「凄絶な死闘となった仮面ライダーBLACK RXとの交戦以来、
 シャドームーンは無幻城の奥の間に引き籠もり、
 ずっと傷が癒えるのを待ち続けていた。
 だが、シグフェルがGショッカーを騒がせているこのタイミングで、
 いよいよ満を持して動き出したと見える」
秘書K「ゴルゴムも独自の思惑をもって
 シグフェル捕獲に乗り出したという事でしょうか?」
桐原「いや、そうではあるまい。
 ゴルゴムが対シグフェルに関して
 組織立って動いている様子は今のところ全くない。
 恐らく様子見といったところだろうが、
 あれほどの御仁が何の打算も下心もなく、
 純粋に〝戦いのための戦い"を楽しもうとして来たのであれば、
 それはそれで厄介ではある…」
秘書S「場合によっては、
 シグフェルがシャドームーンに倒されてしまう事も…」
桐原「どうであろうな。
 ここで呆気なく殺されてしまうようなら、
 無敵と言われたシグフェルも所詮その程度だったという話だ。
 もっとも私は、帝王のお眼鏡に決して狂いはないと見ているがね」

桐原(影武者)は遠くを見ながら、その表情に複雑な陰影を浮かべた。

桐原「とにかく、我々の計画に変更はない。
 各員持ち場につくよう、すぐに差配しろ」
秘書K・S「ははっ!」

 ◇  ◇  ◇

シグフェル「うわぁぁっ!」

強烈なシャドーパンチの一撃を、シグフェルは咄嗟に梅花の構えでガードした。
赤心少林拳の秘技によってダメージは大幅に緩和したが、
それでも抑え切れなかった衝撃によって数m後ろへ弾き飛ばされる。

シグフェル「(凄いパンチだ…。
 まともに喰らっていたらただじゃ済まなかった)」
シャドームーン「なかなかいい防御の構えだ。
 そのパワーで武術も使いこなすとは、ますます面白くなってきた」

早くフィリナと優香を助けに行かねばという焦りに加え、
かつてない敵の圧倒的な力に気圧され気味のシグフェルに対して、
一方のシャドームーンはこの勝負に何ら気負うところもなく、
純粋に強い相手との対戦を楽しんでいる様子である。

シャドームーン「そろそろ本格的に行くぞ。シャドーセイバー!」

シャドームーンが叫ぶと、彼の両手に光が宿り、
血のように赤い二振りの剣となって実体化した。

シグフェル「よし…。ダブルフレイムアーム!」

シグフェルも右手を力強く振り上げ、
続いて左手を天に向けて両手に炎の手刀を生成した。
メタルダーのレーザーアームと同じく、フレイムアームも二刀流が可能なのである。

シグフェル「うぉぉぉっ!」
シャドームーン「フン…!」

じりじりと間合いを測り合った末、遂に接近して激突する両者。
シグフェルが激しく両手の手刀で攻め立てるのを、
シャドームーンは左右の剣を巧みに用いて受け流し、薙ぎ払い、隙を見て反撃する。
一見すると互角のせめぎ合いだが、必死に猛攻を加えているシグフェルに対し、
シャドームーンにはまるで剣舞を楽しんでいるような余裕がある。

シグフェル「つぁっ!」

シャドームーンの剣戟をかわしたシグフェルは、
隙ありと見て渾身の右手チョップを打ち込んだ。だが…。

シグフェル「う…!」
シャドームーン「フフフ…。
 パワーは大したものだが、まだ経験は浅いか。
 焦って突っ込むのは得策とは言えんぞ」

シグフェルのフレイムアームを左肘のエルボートリガーで受け止め、
シャドームーンはせせら笑う。

シャドームーン「フン!」
シグフェル「うわぁぁっ!」

右手のシャドーセイバーが逆袈裟に斬り上げられ、
シグフェルを再び数m向こうへ吹き飛ばした。

1478

シグフェル「く…っ!」
シャドームーン「しかし筋は悪くない。
 フフフ…。ブラックサンとの再戦前のウォーミングアップのつもりだったが、
 これは思った以上に面白い勝負ができそうだ」
シグフェル「ブラック、サン…?」
シャドームーン「スーパー1とは共闘したと聞いたが、
 その分では奴との邂逅はまだらしいな。
 仮面ライダーBLACK RXと名乗る男が、
 いずれ貴様の前にも現れるだろう。
 その男こそ、俺が何としても決着をつけねばならない宿命の相手だ…!」
シグフェル「実は、俺にもやらなきゃいけない事があってな。
 怪獣に襲われてる仲間を助けに行くんだ。
 悪いけど、お前のウォーミングアップにゆっくり付き合ってる暇はない」
シャドームーン「ならば、次でケリをつけるつもりで
 全力でかかって来たらどうだ」
シグフェル「ああ、そうさせてもらう!」

シグフェルは羽ばたいて上空へ飛翔し、
指先から火炎を発射してシャドームーンを攻撃する。

シグフェル「燃えろっ!」

これでもかと火炎を連射するシグフェル。
続けざまに幾筋もの炎がシャドームーンを襲うが、
シャドームーンはそれを二本のシャドーセイバーで次々と叩き落とす。

シグフェル「うぉぉぉっ!!」
シャドームーン「焦るなと言っておろうが…。
 ここまで未熟だとは、少々見損なったぞ」

シグフェルの火炎は乱射気味で、狙いを外れて地面に命中するのも少なくない。
火炎の炸裂によって爆発が何度も起き、シャドームーンを猛火に包むが、
炎の中でもシャドームーンは至って涼しげな様子である。

シャドームーン「愚かな…」
シグフェル「…今だ!」

半ば呆れムードのシャドームーンが反撃に転じようと
シャドーセイバーをおもむろに振りかざした刹那、
シグフェルが疾風の如き速さで動いた。

シャドームーン「何っ!?」
シグフェル「もらったぜ!」

ムキになって火炎を乱れ撃ちしている…というのはシグフェルの演技だった。
シャドームーンの油断を誘ったシグフェルは爆炎を一瞬でくぐり抜け、
敵の懐へ飛び込んでフレイムアームを横薙ぎに一閃した。

シャドームーン「くっ…!」
シグフェル「…ダメか!」

虚を突かれたシャドームーンもさるもの、
咄嗟にシャドーセイバーでガードしフレイムアームの直撃を免れた。
しかし防御に使ったシャドーセイバーは弾き飛ばされて持ち主の手を離れ、
宙を舞って地面に突き刺さる。

シャドームーン「未熟者を装っての奇襲とは…。
 見事だ。お前がここまでやれるとは思わなかった」
シグフェル「お褒めはありがたいけどさ…。
 結局防がれちまっちゃ仕方ないな」

ブラフに使った火炎の連発で、シグフェルも少なからず体力を消費した。
ここでシャドームーンが全力で攻撃してきたら勝ち目はない…。
だが、既にシャドームーンは戦いへの興味を失った様子で
落としたシャドーセイバーを拾い上げると立ち去って行った。

シグフェル「待て! 逃げるのか!」
シャドームーン「ウォーミングアップだと言ったはずだ。
 またいつか続きをしよう。それとも、仲間を助けに行く必要はないのか」
シグフェル「うっ…!」

悠然と去って行くシャドームーン。
シグフェルはしばし逡巡したが、とにかくフィリナと優香を助けるため、
戦いを切り上げて再び空へと飛び立ったのだった。

1479

○シグフェル→突如現れたシャドームーンと交戦。その力に圧倒される。
●シャドームーン→シグフェルと交戦。圧倒的な力を見せつけて去る。
●クールギン→シャドームーンの出現に戦慄しつつ、シグフェル捕獲作戦を指揮。
●秘書K→クールギンの指示でシグフェル捕獲作戦を手配する。
●秘書S→クールギンの指示でシグフェル捕獲作戦を手配する。


『砂漠の姫の来日』-9

作者・ティアラロイド

1480

一方、透明化して夜の闇に溶け込んだザイラユニコンの姿を捉える事が出来ず、
困惑しているアイアンキング。そこへ、影の王子シャドームーンの攻撃を
なんとかやり過ごしたシグフェルが飛来した。

シグフェル「あれは…いったいどうなっているんだ!?」

シグフェルの目には、アイアンキングがただ闇雲に暴れているだけのように見える。
だが他よりも優れた空間認識能力を有し、赤心寺での特訓で「気配」というものを
感じ取る技能にも長けるようになったシグフェルには、アイアンキングが「何か
姿の見えない巨大な相手と戦っている」事態に気づくのに、そう時間はかからなかった。

そして慎哉から渡された発信機の反応は、その「透明な巨大な何か」から電波が届いている。

シグフェル「待ってくれ! この中に閉じ込められている人が
 いるかもしれないんだ!」
アイアンキング「……!?」

シグフェルは間に割り込んでアイアンキングを制止すると、
見えない敵に向かってその精神を集中させた。

シグフェル「もし相手の中に優香とフィリナがいるなら迂闊な攻撃はできない。
 ――それなら!」

シグフェルは指先で印を結んで、熱光線を発射した。
あまり全力を出し過ぎると中の人間まで焼き殺してしまいかねないため、
全神経を研ぎ澄ませて熱線の温度を微妙に調節しながら、
ザイラユニコンの全身にコーティングされているステルスミラーを
適切な高温で溶かしていく。すると醜い巨大怪獣の姿が
夜の東京の街の中に露わになった。

ザイラユニコン「ウォォ~ンン!?」
シグフェル「今だ!!」

すかさずシグフェルはフレイムアームでザイラユニコンの腹部を切り裂く。
装甲が剥げ落ち、優香とフィリナが幽閉されていた部屋が露わになる。

フィリナ「シグフェル!!」
優香「光平くん!!」

シグフェル「優香! フィリナ! さあこの手を取って!!」

ザイラユニコン「グゥオオ―ンンッッ!!!」

シグフェル「うわあっ!?」

ザイラユニコンが暴れるため、シグフェルは思うように
優香とフィリナのいる場所に近づけない。

シグフェル「くそっ! いったいどうしたらいいんだ!?」

1481

そんな時、どこからか長い鞭がビュンッと伸びて来て、
カウボーイハットの男が颯爽とザイラユニコンの体内に飛び乗った。

優香「あなたは!?」
フィリナ「静弦太郎さん!!」

ライオトルーパーたちの妨害を退けて来た静弦太郎が
ようやく現場へと駆けつけて来たのだった。

弦太郎「よぉ! 待たせたな。お美しいお嬢さん方…つっても
 もう一人はまだガキみたいだな」
優香「……ムッ!!(何よガキって…)ブツブツ」

弦太郎の今の言葉に内心ムッとする優香。
弦太郎のような大人の漢から見れば、優香のような高校生世代は
まだまだ発展途上のお子ちゃまに見えるらしい。

弦太郎「ここから逃げるぞ! 二人ともしっかり俺につかまってな!」
フィリナ「やっぱりね…(苦笑」
優香「…え、まさかここから飛び降りるの!?
 ――いやあああああッッッ!!!」

フィリナと優香を連れて即断即決問答無用で強引に地上へと飛び降りる静弦太郎。
一度東京エネタワーで空中ダイブを経験しているフィリナは半ば諦めムードだったが、
優香はめいいっぱいの悲鳴を上げた。

優香とフィリナが無事脱出したのを確認したシグフェルとアイアンキングは、
もはや遠慮は無用とザイラユニコンへの猛攻撃を開始する。

シグフェル「よくもフィリナと優香を怖い目に遭わせてくれたな! 許さん!!」
アイアンキング「――ジュワ!!」

アイアンキングはポーズを取ってエネルギーを集中させると、
辺りまで真っ赤に染めるほどの赤い光を全身から発し、
シグフェルに向けてアイアンファイヤーのパワーを送る。

シグフェル「……!? 俺に力を貸してくれるのか! よぉーし!!」

真っ赤に燃える火炎の弾丸と化したシグフェルは
両翼を羽ばたかせて超スピードで飛来突撃し、
ザイラユニコンの巨体を貫いた。

ザイラユニコン「グギャアア~~ンンッ!!!」

大爆発するザイラユニコン。シグフェルとアイアンキングの無言の連携プレーが
見事彼らに勝利をもたらしたのであった。


1482

ザイラユニコンを倒し、地上へと舞い降りたシグフェル。
周囲に誰もいないのを確認し、変身を解こうとしたその時、
背後に凄まじい殺気が迸るのを感じて振り返った。

クールギン「フンッ!」
シグフェル「…!?」

ビルの陰から突如として飛び出してきたクールギンは
剣を抜き、跳躍して大上段から斬りかかる。
反射的にガードしようと振り上げられたシグフェルの右腕に、
クールギンは容赦なく鋭い凶剣を振り下ろした。

シグフェル「うわぁぁっ!!」

まさに一瞬の出来事。奇襲によるクールギンの一撃は、
シグフェルを右腕からその下の翼にかけてざっくりと斬り下げた。

シグフェル「ぐ…!」
クールギン「………」

傷を負い、地面に片膝を突いて呻くシグフェル。
クールギンはシグフェルの方に向き直ると、
剣を軽やかに空へ向けて振り上げる。
斬り落とされ、刃に付着していたシグフェルの赤い羽根が一枚、
ふわりと宙に舞った。

クールギン「ふむ…」

剣を脇差に仕舞ったクールギンは、
落ちてきたシグフェルの羽根を片手でキャッチし、
目の前にかざして眺めた。
シグフェルの体色と同じ紅蓮色の羽根が、
陽光を透かして美しく輝いて見える。

シグフェル「お、お前は…!」
クールギン「…帝王のご尊命、これで果たせたぞ」

満足そうに嗤うクールギン。
痛みを堪えて立ち上がり、次の攻撃に備えて身構えたシグフェルだが、
クールギンはそんなシグフェルに一瞥をくれると、
そのまま止めを刺すでもなく立ち去ろうとする。

シグフェル「ま…待てっ!」
クールギン「この羽根が…」

何とか立ち上がって追おうとするシグフェルに、
立ち止まったクールギンは採取した羽根をかざして見せた。

クールギン「この小さな一枚が、やがてお前に試練をもたらすだろう。
 茨の道を往く覚悟、今からしておくのだな」
シグフェル「ど…どういう意味だ!」
クールギン「いずれ分かる時が来る」

それだけを言い残し、クールギンはマントを翻して悠然と去って行った。

シグフェル「く…うっ…!」

クールギンを追う力もなく、
深手を負って地面に崩れ落ちたシグフェルは、
そのまま牧村光平の姿へと戻った。

フィリナ「光平!」
優香「光平くん!」

静弦太郎に助けられたフィリナと優香が、
腕から血を流して倒れている光平を見て驚いて駆け寄る。

五郎「おいおい、大丈夫か坊主!」
弦太郎「早く血を止めねえと…。
 おいお嬢さん方、ハンカチは持ってねえか」
優香「は、はいっ!」

優香がポケットから取り出したハンカチを光平の右腕に縛り、止血の応急措置をする。
フィリナに肩を貸されて、光平は何とか立ち上がった。

1483

○アイアンキング→シグフェルと連携してザイラユニコンを撃破。
○静弦太郎→ライオトルーパー部隊を片づけ、フィリナと沢渡優香を救出。
●ザイラユニコン→シグフェルとアイアンキングの連携攻撃の前に敗れる。
●凱聖クールギン→シグフェルの羽を一枚奪い去る。

○シグフェル→アイアンキングと連携してザイラユニコンを撃破。その直後クールギンに襲われる。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→ザイラユニコンの体内から静弦太郎に助け出される。
○沢渡優香→ザイラユニコンの体内から静弦太郎に助け出される。


『砂漠の姫の来日』-10

作者・ティアラロイド

1484

***羽田空港・国際線ターミナル***

あれから数日後、フィリナが無事に離日する日がやって来た。
先日に手傷を負った腕に包帯を巻いている光平は、
慎哉や優香と共にロビーまで彼女を見送りに来ていた。

慎哉「なんかあっという間だったよなあ~」
フィリナ「いろいろと大変だったけどね(苦笑。
 ごめんなさい光平、大して役に立てなくて…」
光平「そんな気にしなくていいよ。
 久しぶりにフィリナの元気な顔が見られただけで
 大分気が晴れたしな」
フィリナ「なら、いいたんだけど…」

フィリナは従弟の光平の事が心残りなのか
心配そうな表情で彼を見つめる。そこへ
静弦太郎と霧島五郎、そして藤森典子がやって来た。

弦太郎「よぉ! もうフランスに帰るのか?」
フィリナ「あら弦太郎さん♪」
優香「この前はお世話になりました」
弦太郎「なあに、いいって事よ。
 そっちの坊主はもう怪我の方はいいのかい?」
光平「ええ、おかげさまでこの通り――」

光平は"もう大丈夫"と言わんばかりに
腕を大きく振るが……。

光平「イテテテッッ…!!」
五郎「おいおい、あんまり無理しちゃいけねえよ」
優香「もうっ、光平くんったら大丈夫?」
光平「ごめんごめん、もう本当に平気だから…」

フィリナと光平たちの元気そうな姿を見届けた
弦太郎たちは去ろうとする。

弦太郎「じゃ、俺たちはこれでな」
フィリナ「あら、もう行っちゃうの?
 なんだか名残惜しいわ」
弦太郎「アンタが無事に日本から離れるのを見届ける
 ところまでが俺たちの任務だ。それが終われば
 また次の目的地に向かって旅立つだけさ」
フィリナ「またいつか会えるかしら」
弦太郎「さあな。縁があったらまた会おうぜ!」
典子「では皆さんもお元気で」
優香「こちらこそ、皆さんもどうかお気をつけて」

こうしてフィリナと光平たちは、静弦太郎たちと別れた。

1485

再び周囲には秘密を共有する者たちだけになったフィリナは、
光平に諭すように改めて話しかける。

フィリナ「ねえ光平、この際ブレイバーズに名乗り出て
 保護を求めてみてはどうかしら?」
光平「フィリナ…」
慎哉「いきなり何を言い出すんですかフィリナさん!」

フィリナからの提案に、光平たちは困惑の色を見せる。

フィリナ「あなたたちも静弦太郎さんたちの活躍ぶりを見たでしょう。
 ブレイバーズの人たちなら決して悪いようにはしないと思うわ」
光平「わかったよフィリナ。考えてみる」
フィリナ「勿論急いで結論を出す必要はないけど、
 よく考えてみて」

フィリナの言葉に頷く光平。
その後フィリナは光平たちの見送る中、
フランス行きの便に乗り無事に離日して行ったのだった。

一方こちらは、本来の目的地の関門海峡に向けて
再び旅を再開した静弦太郎一行である。

五郎「なあ弦の字、お前今何考えてる?」
弦太郎「五郎、やっぱりお前もそう思うか」
五郎「シグフェルの正体ってのは、やっぱり……」

地上150メートルの高さから落下しても無事だった事。
そして独立幻野党の怪獣ロボットと戦った現場にも
手傷を負って居合わせていたこと。
やはりシグフェルの正体は"あの少年"以外には考えられない。
五郎がそれに言及しようとしたところで
弦太郎がそれを制止するように遮る。

弦太郎「よせよせ、俺たちの今の任務は
 関門海峡のビルドベースに向かう事だ。
 シグフェルの正体探しなんかは
 他の奴らにでも任せとけ!」
典子「…え、なに? 二人とも何の話!?」
弦太郎「なんでもねえよ! そら急ぐぜ!」

弦太郎たち3人を乗せたジープは、
今日も青空の下を爽快にひた走るのであった。

ま~ぼろしのぉ~♪みどぉ~りもとめてぇ~♪


1486

***ネロス帝国・ゴーストバンク***

ゴーストバンクの広間に置かれた台座の上に、
シグフェルの羽根を乗せてその前に跪くクールギン。
周囲を取り囲むネロス軍団員達からはどよめきにも似た声が漏れる。

クールギン「これがシグフェルの翼から切り取った羽根です。
 凱聖クールギンより、謹んで帝王にご献上申し上げます」
ゴッドネロス「うむ。これへ」

羽根を乗せた台座は秘書KとSの二人によって
ゴッドネロスの玉座の前へと運ばれた。
紅蓮色の羽根を手に取り、まじまじと見詰めるゴッドネロス。

ゴッドネロス「よくやったクールギン。
 これぞまさしくシグフェルの羽根…。
 早速、ゾルベゲール博士を主任とする科学班に引き渡し、
 解析に及ばん」
クールギン「御意」
ゴッドネロス「これで我が野望はようやく実現を見る…。
 よいか、スマートブレインを初めとして、
 他のGショッカー組織はシグフェルの謎を血眼になって追っておるが、
 我がネロス帝国がシグフェルの羽根を入手した事は、
 くれぐれも他言無用…。万が一にも情報を漏らした不埒者は、
 即刻、首を刎ねると覚悟せよ」
タグスキー&タグスロン「………」

反逆者の抹殺役を任されているタグ兄弟が
無言で剣と薙刀を構えると、他の軍団員達は一斉に慄いた。

ゴッドネロス「大手柄を上げたクールギンには、
 何なりと褒美を与えよう。何か望みのものはあるか」
クールギン「………」

クールギンは深く跪いたまま、しばし沈黙し、
やがてゆっくりと口を開いた。

クールギン「帝王のありがたきご配慮を賜り、
 我が身は既に過分の栄達に浴しておりますれば、
 これ以上、望むものなど何一つございませぬ。
 ただ帝王におかれましては、何とぞこれからもお変わりなく、
 帝王に粉骨砕身お仕えする忠義の軍団員らをご愛顧下さりませ。
 我が願いはそれだけにございます」
ゴッドネロス「ふむ…」

ロビンケン「さすがは我らの軍団長殿。
 このような時にあっても実に謙虚に、
 我々部下どもの身ばかりを考えて下さるとは」
ゲルドリング「何じゃいクールギンの奴、
 ええカッコしおって。
 ワシなら金銀財宝、山ほど頂戴するところやけどなあ」
 
クールギンの発言に、他の軍団員達は感銘を受けたり、
逆に嫌味に感じたりといった感想を漏らす。
だが当のゴッドネロスだけは、クールギンの真意を吟味するかのように
しばし黙ったまま、恭しく足元に跪くこの側近の姿を見詰めていた。

ゴッドネロス「フフフ…、よう分かった。
 そちも、これからも変わりなく励めよ、クールギン」
クールギン「は…ははっ!」

願いを快諾したゴッドネロスの言葉になぜクールギンが戦慄したのか、
その理由を知る者は誰もいない。
帝王ゴッドネロスと凱聖クールギン。
二人の胸に去来するものとは…?


 1487 
○静弦太郎→フィリナの離日を見届けて、東京から離れる。
○霧島五郎→フィリナの離日を見届けて、東京から離れる。
○藤森典子→フィリナの離日を見届けて、東京から離れる。
●クールギン→シグフェルの羽根をゴッドネロスに献上。
●ゴッドネロス→クールギンからシグフェルの羽根を受け取る。

○牧村光平→羽田空港でフィリナを見送る。
○朝倉慎哉→羽田空港でフィリナを見送る。
○沢渡優香→羽田空港でフィリナを見送る。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→日本を離れる。


『希望の名を持つ海賊』-1

作者・ユガミ博士

1488

***火星・極冠遺跡***

北辰によってエリカと侍女のマルガレーテは、かつてボソンジャンプの
演算ユニットが封印されていた極点にある極冠遺跡に連れて来られた。
そして遺跡でエリカ達を待ち構えていたのは、3人の人物――“木星帰りの男”
パプテマス・シロッコ、火星の後継者の首班を務める草壁春樹、元火星開拓基地
長官で、現在はタカ派の宇宙連合と通じているハザード・パシャだった。

シロッコ「我々のお招きに応じて下さり、歓迎いたします。エリカ代表」
マルガレーテ「・・・・よくも、ぬけぬけと!」
北辰「――ム!」
マルガレーテ「ヒィ!」

シロッコの言葉にマルガレーテは苦々しく思うが、北辰の睨みに
マルガレーテは怯んでしまう。

草壁「やめよ!ここは良い。下がっていろ」
北辰「・・・・御意」

草壁の言葉に従い、北辰は影の中へ消えるようにその場を
後にした。

シロッコ「失礼した。さて、エリカ代表に来てもらったのは、貴方に
 やっていただきたい事があるからだ」
エリカ「・・・・やっていただきたい事とは、何ですか?」

エリカはシロッコ達に思う所があるが、まず彼らの話を聞く事にした。
シロッコ達が言うには、『現在内乱状態のバームを正常化する為、
オルバン大元帥との和平を結んでほしい』との事だった。

ハザード「オルバン大元帥は、同じバーム人同士が争いあう事を嘆いていますぞ!
 一刻も正常なバームにしたいそうです」
マルガレーテ「何を馬鹿な!?」
エリカ「私も同じ種が争う事は心を痛めます。しかし、オルバン大元帥の正常な
 バームというのは、支配の事を言うのではないのですか?私と和平をしたい
 というのは、私が和平を結ぶ事で平和を望むバームの民達を従わせる事が
 出来ると思ったからでしょう。ですが、私は屈しません。必ず一矢達が真の平和を
 実現してくれる事を私は信じます!」

ハザードはヘラヘラと笑みを浮かべながら、エリカに和平を結ぶように
促すが、オルバンの目論みに気づいているエリカは断固拒否した。

シロッコ「流石はリオン大元帥の娘にして、リヒテル提督の妹君であらせられる。
 しかし、事は上手くいきますかな?ふふふふ・・・・・」

エリカの気丈な態度にシロッコは賞賛と共に、不敵な笑いをするのであった。

1489

***火星・都市船***

北辰に連れ去られた小バームの代表であるエリカの行方とクリュス基地を
襲った宇宙連合の探索をするべく一矢やルリ、J9チーム達は火星に
おいて情報収集と補給を行うべく、とある都市船にやってきた。

マリン「あまり都市船という場所に来た事が無かったが、かなり治安が悪いなぁ」
京四郎「立て続けによる戦争で、経済は疲弊・・・・自治政府に働きをかけてはいるんだが
 どうにも其処の代表は正直に言って、無能の部類だからなぁ。軍備にばかり金を掛けて
 市民の懐は貧しいままで、治安が悪くなる一方だ・・・・哀しい事だがな」
スバル「その無能な代表って、アレかぁ~?」

都市船に訪れたマリンに京四郎は火星の現在の状況を話す。そしてスバルが
指した方には、その無能な代表こと火星自治政府の首席アンナ・グレースが
テレビを通じて演説を行っていた。

アンナ『・・・・・火星市民の皆様。現在の火星はバームの内乱を始め
 悲しい事ですが不穏な状況となっています。しかし今はつらい現状
 でも、それに耐えさえすればかならずや報われる日がやって来ます。
 皆様、それまで戦いましょう!』

ナオト「・・・・あれが、火星自治政府の政府首席であるアンナ・グレースか」
アキラ「何か、キツそうなおばさんだなぁ」
ナナ「ヴァースのアセイラム姫も、和解したヴェイガンの人達と一緒に支援しようと
 頑張っているけど、あっちも地球との和平に反対している人達との相手で
 ままならないのよ」

アンナ・グレースの演説を聞いていたジャックを始めとする一同は、その
あまり具体的な話が無かった事に呆れる。ナナは同じ火星に国家を築いてる
ヴァース帝国やヴェイガンも火星の現状を回復させようと動きがある事を話すが
やはり地球を敵視している反対勢力との諍いで、それもままならない事も話した。

アイザック「・・・・さて、こう固まって動いていても埒があかない。それぞれ
 手分けをして情報を集めよう」

アイザックの提案により、それぞれ手分けして情報収集を行うのあった。

***火星・都市船の外***

一方、都市船の外では一隻の戦艦が近づいていた。

????「さぁ~て、久しぶりの都市船だし商売といきますか!」

この人物の正体は?

 
1490


○エリカ→シロッコ達から、オルバン大元帥との和解をするように言われるが拒否をする。
○夕月京四郎→火星の現状を語る。
○和泉ナナ→ヴァース帝国やヴェイガンも、内乱が発生しており、火星の現状回復が
    ままならない事を一同に話す。
○マリン・レーガン→都市船に訪れ、現状を知る。
○アイザック・ゴドノフ→それぞれ手分けをして情報を集める事を提案する。
△アンナ・グレース→テレビで火星市民に向けて演説を行う。
●パプテマス・シロッコ→エリカにオルバン大元帥との和解を促す。
●草壁春樹→北辰を下がらせる。そしてエリカにオルバン大元帥との和解を促す。
●北辰→エリカを火星極冠遺跡に連れてくる。
●ハザード・パシャ→エリカにオルバン大元帥との和解を促す。

【今回の新登場】
△アンナ・グレース(絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク)
火星政府首席代表。市民に楽観的なビジョンを語るだけのアイドル政治家だが、
地球からの不当な扱いにストレスを蓄積しており、エノラ誘拐事件を機に、
エノラを保護して夜明けの船を捕まえる事で地球政府に対して優位に立とうと
夜明けの船を付け狙った。


『希望の名を持つ海賊』-2

作者・ユガミ博士

1491

***火星・都市船東側***

手分けをして情報収集を始めてから数時間後。コズモレンジャーJ9と
JJ9チーム、そしてコウとトモカは都市船の東側で情報収集を行っていた。

ロック「・・・・」
キッド「どうした、ロック?もしかして地球に行っちまったバラリベンジャーの
 事を考えていたのか?」
ロック「まぁ、そんな所さ」
キッド「ま、アイツの事だ。地球でも大丈夫だろうぜ」
ロック「そうだな」

同行していたバラリベンジャーは、地球にバラノイアが現れたという話を聞いて、
地球へ帰ったタクヤ達に同行して、地球へと向かったのであった。ロックは
バラリベンジャーを一行に誘った身として、少しばかり寂しく感じていた。
そんなロックをキッドは励まして情報収集を続ける。

ボウィー「良い情報が集まらないな」
ビート「それじゃ、あのチャイナドレスの御嬢さんに聞いてみようぜ?」

それぞれブライガー、サスライガーの操縦を担当するボウィーとビートは
近くを歩くチャイナドレスの女性から話を聞こうと声を掛ける。

ボウィー「お嬢さん♪」
ビート「ちょっと、俺達の話を聞いてくれないかな?」
チャイナドレスの女性「話?」

2人はチャイナドレスの女性に話を聞いてもらうが、美人だった為、
少し鼻の下を伸ばす。そして火星に潜伏しているであろう宇宙連合の事や
連れ去られたエリカについて聞いてみた。

チャイナドレスの女性「生憎だが、私は何も知らない」
ビート「それは残念」
ボウィー「それじゃあ、これも何かの縁。一緒にお茶でもしない?」
チャイナドレスの女性「すまない。連れがいるのでな。失礼する」

残念ながら女性は何も知らなかったので、ボウィーとビートはそのままナンパを
始めるが、彼女は断りその場から離れてしまう。

コウ「あの女の人・・・・・」
ブルース「気づいたかい?コウ君」
アイザック「あの歩き方に、身のこなし・・・・・只の女性ではないようだな」

その場から去る女性の歩く姿や身のこなしから、コウやブルース、アイザックは
只の女性では無い事に気づくが、そのまま去っていてしまったので、彼らは
他のメンバーと合流するべくナデシコへと戻っていく。

◇◇◇◇

アイザック達から離れたチャイナドレスの女性はある食堂に入る。
そこには逆立った髪に眼帯をした長身の男性が飯を食べていた。

チャイナドレスの女性「此処にいたか。そろそろ、アイツに合う時間だぞ、元親」
元親「ん~?もう時間か。それじゃあ行くぜ、思春!」

チャイナドレスの女性に言われ、食堂を出た男性、元親。
この2人こそ三国志と戦国時代で活躍した長曾我部元親と甘寧だった。
手下を引き連れ、彼らが向かう先とは・・・・。

1492

***火星・都市船西側***

一方、都市船の西側ではエステバリス隊とゴッドシグマチームが
情報収集を行っていた。

キラケン「う~む、エリカ代表や宇宙連合の連中は何処におるんじゃ?」
ジュリィ「火星も広いからな。焦っても仕方がない」
スバル「いやに冷静じゃねえか」
ジュリィ「エリカ代表は、和平派のバームにとって重要人物だ。だからこそ
 丁重に扱っているだろうからな」

情報が集まらない事に頭を抱えるキラケンに、ジュリィは冷静に話す。
そんな時、足元に何かが転がってきた。

闘志也「林檎?」
???「其処の兄ちゃん達、林檎を拾ってくれないか?」

足元に転がってきたのは林檎で、闘志也達に声を掛けたのは
バンダナを巻いた小さな少年と少女、そしてその後ろにはオレンジ色の
髪をした女性が近づいてきた。

オレンジ色の髪の女性「ありがとう。この子が林檎を落としてしまったの」
少女「ありがとう」
闘志也「拾うぐらいお安い御用さ」
ガイ「ああ、今度は落とすなよ」
バンダナの少年「・・・・・」
ガイ「ん?どうかしたか」
バンダナの少年「・・・・ああ、其処の兄ちゃんの声が俺たちの仲間の声
 そっくりだったからさ。ちょっと驚いちまった!」

林檎を拾ってくれた闘志矢達にオレンジ髪の女性や少女から、感謝される。
そしてガイの声を聴いたバンダナの少年は自分達の仲間と声がそっくりな事を
話す。

サブロウタ「ちょうどよかった。俺達ある事を聞いているんだけど、もしよかったら
 聞いてもいいかい?」
オレンジ色の髪の女性「ある事?」

サブロウタは彼女達3人に情報を聞いてみるが、やはり彼女達は知らないらしい。

オレンジ色の髪の女性「そんな事を聞く貴方達は何者?」
ガイ「俺達は、世界の平和を守る為、悪と戦う正義の部隊ブレイバーズさ!」キラッ
バンダナの少年「ブレイバーズ?」
スバル「ま、ようするに私らは連邦軍さ」
オレンジ色の髪の女性「(連邦軍・・・・!)」

オレンジ色の髪の女性に何者か聞かされ、ガイは親指を立てて
満面の笑顔で自分達がブレイバーズだという事を話す。だが、
まだ火星にはブレイバーズの事が伝わっていないのか、少年には
あまりピンとこなかったようなので、スバルが分かりやすく連邦軍だという
事を話した。するとオレンジ色の髪の女性は内心、動揺する。

オレンジ色の髪の女性「・・・・(まさか、グラムを捕まえに?いえ、そういう感じ
 じゃないわね)それじゃ、私達もそろそろ帰らないといけないから行くわね。
 お仕事、頑張って下さい。行くわよ、ボン、シエ」
ボン「おう!」
シエ「バイバーイ」

そして3人はエステバリス隊・ゴッドシグマチームから離れ、
その場からいなくなった。

ジュリィ「・・・・・・」
キラケン「どうかしたのか?ジュリィ」
ジュリィ「いや、あの女性・・・・前に何処か見たような気が?」

ジュリィはオレンジ色の髪の女性を以前見たような気がしてならなかった。
その理由は彼が前に読んだ新聞で、彼女――ベステモーナ・ローレンを
見たからだった。

1493

○ロック・アンロック→地球に行ったバラリベンジャーの事を考える。
○ビート・マッケンジー→ボウィーと共に思春に声を掛ける。
○ブルース・カール・バーンスタイン→思春を只者ではないと気づく。
○木戸丈太郎→ロックを励ます。
○スティーブン・ボウィー→ビートと共に思春に声を掛ける。
○アイザック・ゴドノフ→思春を只者ではないと気づく。
○コウ・ヤガミ→思春を只者ではないと気づく。
○壇闘志也→情報収集を行っていた所、ベステモーナ達と出会う。
○ジュリィ野口→ベステモーナを以前見かけた事があるが、思い出せずにいる。
○吉良謙作→情報が集まらない事に頭を悩ませる。
○ダイゴウジ・ガイ→ベス達に自分達がブレイバーズである事を話す。
○タカスギ・サブロウタ→ベス達から情報を得ようとする。
○スバル・リョーコ→ゴッドシグマチームと共に情報収集を行う。
○甘寧/思春→ボウィー、ビートに声を掛けられる。元親と行動を共にしている。
○長曾我部元親→思春と行動を共にしている。手下を引き連れ、食堂を出る。
○ベステモーナ・ローレン→ボン、シエと共に闘志也達と出会う。連邦軍という言葉に動揺する。
○ボン→ベス、シエと行動を共にする。
○シエ→ベス、ボンと行動を共にする。闘志也達に林檎を拾ってもらう。

【今回の新登場】
○甘寧/思春(恋姫無双シリーズ)
三国志の武将が女性化した外史において蓮花(孫権)に仕える呉の武将。字は興覇。
親衛隊長で、蓮花への忠義心が高く、護衛役も務める。江賊の頭領だった
事から、部隊の統率力も高く水軍を扱わせては呉軍でも最強の実力を持つ。

○天衣無縫・長曾我部元親(戦国BASARAシリーズ)
四国と西の海を束ねる戦国武将。自らを「西海の鬼」「鬼ヶ島の鬼」と称する。
大雑把で荒々しいが仲間や部下を大切にしたりする情の厚い性格から
「アニキ」として慕われている。カラクリ好きで、巨大なカラクリ兵器を建造するが
それ故に国政はいつも赤字気味で、資金繰りの為に海賊行為をする事もある。

○ベステモーナ・ローレン(絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク)
地球から夜明けの船討伐の任を帯びて火星方面軍に配属された地球軍新兵の一人。
愛称はベス。元々はグラムと火星生まれの火星育ちの孤児でグラムと同じくアデナの
ダウンタウンで育った幼馴染だったが、地球の富豪ローレン家の養女として引き取られた
為、以降は地球で暮らす。引き取られる際のグラムの態度に複雑な感情を抱いていたが、
夜明けの船の一員となったグラムを追っていく内に打ち解け、現在は共に暮らしている。

○ボン(絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク)
都市船アデナのダウンタウンで暮らす孤児の少年。まだ子供だが、妹のシエを
養う為に、様々な日雇いのバイトで生計を立てている。現在はグラムの船に同行
している。

○シエ(絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク)
ボンの妹。アニとグラムを慕い、日々バイトに出かける兄の帰りを待つ
純真な少女。舌足らずな口調が特徴。


『希望の名を持つ海賊』-3

作者・ユガミ博士

1494

***火星・都市船港地区***

ナデシコCが停泊している港地区では、一矢達ダイマスチームに
クラッシャー隊とブルーフィクサー隊が調査を行っていた。

ケンジ「そろそろ、他の皆も戻ってくる頃合いだな」
タケル「ん?隊長、あっちで何か人だかりが出来てますよ!」

タケルが何やら人だかりが出来ているのを見つけ、クラッシャー隊と
ブルーフィクサー隊はそこへ向かった。

海賊A「金は払ったんだから、文句は無えだろう!?」」
???「おいおい、どう見ても代金が足りねえよ。少しぐらいならまけてもいいが、
 あからさまに代金を踏み倒すのは、よく無いぜ」

どうやら、都市船に来た海賊が露店商から買った商品を少ない代金で
踏み倒そうとして、揉めているらしい。その商品というのはこれまでの
戦い等で海に沈んだ機械のパーツをサルベージして修復したものらしい。

海賊B「てめぇ、言わせておけば!」
一矢「いかん、止めないと・・・・」
???「待ちな!!」

見かねた一矢は海賊に立ち向かおうとすると、集まっていた野次馬から
逆立った髪に眼帯、そして大きな碇を持った長身の男――先程、食堂に
いた長曾我部元親が乱入してきた。

元親「おうおうおう、この“西海の鬼”長曾我部元親様の前で
 狼藉は許さねえぜ!」
海賊A「何をぅ?」
海賊B「野郎ども、やっちまえ!」

元親は高らかと名乗り、海賊達は手下を率いて、暴れ始めるが
元親は碇を振り回して蹴散らしていく。

元親の部下A「アニキに続けー!」
元親の部下一同「応~~!!」

控えていた元親の部下達も、この喧嘩に加わる。そんな中、手分けして
調査をしていたJ9やエステバリス隊等が戻ってくる。ケンジはすぐに
状況を戻ってきた一同に説明をした。

お町「あの元親って人、随分強いわね」
キッド「―?海賊共がどんどん集まって来たぞ!」
一矢「俺達も加勢するぞ!」

海賊の手下を蹴散らしていく元親の元に、海賊の手下がどんどん
集まってきたので、一矢達も加勢した。

一矢「はぁ!!」
海賊C「ぐへぇ!」
元親「何処の誰かは分からねえが、兄さん方強えじゃねえか!」
一矢「それは、どうも!てりゃぁ!」
海賊D「ぐはぁ!!」

一矢の空手の一撃で海賊の一人が倒れてしまう。それを見た元親は
一矢達の大立ち回りに賞賛を送る。

海賊A「待て、こいつがどうなっても知らんぞ!」

分が悪いと感じた海賊は、露天商の首にナイフを突きつけて
人質にとった。人質を心配して、攻撃を止めてしまう一矢達だが
元親はあんまり深刻にはならずに余裕の表情をしていた。

元親「グラム、いつまでおとなしくしている!いい加減蹴散らせ!」
海賊A「何!?」
グラム「・・・悪い、元親。迷惑掛けた!」

グラムと呼ばれた露天商の青年はそのフットワークで、海賊の1人に
ストレートパンチを顔面に喰らわせて、倒してしまう。

海賊B「な・・・・」

仲間が1人倒れた事に仲間の海賊は狼狽えていると、背後にチャイナ
ドレスと長いマフラーをした女性が現れ、気絶させられてしまう。

コウ「あの女の人、さっきの・・・・」
元親「助かったぜ、思春」
思春「・・・・全く、騒ぎなんか起こして。グラム、元親、船に戻るぞ。
 ベス達が待っている」
グラム「ああ、そうだな。あんた達も助けてくれてありがとうな」

チャイナドレスの女性――思春は元親同じくグラムと仲間だったらしく、
船に戻るように言う。そしてグラムは共に戦ってくれた一矢達にもお礼を
言う。

海賊A「くっ・・・このままで済むと思うなよ!おい、やれ!」

グラムに殴られた海賊は気がついて、立ち上がると船で待機している
手下に連絡をする。すると、都市船が大きく揺れ動いた。自棄になった
海賊が手下に命令して、都市船を攻撃するように命令を出したのである。

一矢「俺達も戻るぞ!」

1495

海賊の攻撃を止めようと、ナデシコに戻った一矢達はダイモスを
始めとする各々のロボットを出撃させる。海賊達は戦艦から、
ズゴッグやハイゴッグといった水中に特化したMSを出撃させた。

リョーコ「おいおい、何で火星の海賊が水中用MSに乗っているんだよ!」
ルリ「おそらく、闇ルートで仕入れたのでしょう」

火星の海を舞台にエステバリスやダイモス達スーパーロボット軍団は
戦うが、バルディオス以外は水中戦に適応していないので、動きが
鈍り、苦戦を強いられていた。

ガイ「くっそ~、ゲッター3がいればこんな奴ら!」
ハリー「艦長、この戦域に所属不明の戦艦が2隻現れました!」
ルリ「あれは・・・・」

海賊と戦っているナデシコの前に現れたのは、古い戦艦と木造で出来た
戦艦・・・・いや巨大な要塞だった。

トモカ「おいおい、何だよ!?あの馬鹿デカい戦艦は!!」
ビート「すげぇ・・・・・」

その巨大な要塞の出現に一同は驚愕する。

元親の部下「アニキ、姐さん、次の攻撃の準備が出来たぜ!」
元親「応、この海賊要塞・百鬼富嶽の力を見せてやれ!!」
思春「砲門、目標に撃てー!」

その要塞、百鬼富嶽こそ元親が建造した機動要塞。元親と思春は部下達に
攻撃命令を下す。その攻撃に海賊達の使う水中MS達も形無しである。

ベス「貴方達は地球連邦軍ですね。こちらからも援護します」

もう一隻の戦艦の操縦をする女性、先程エステバリス隊が会ったベスは
ナデシコに自分達も加勢すると通信を送る。すると、戦艦から1体のロボットが出撃する。

キッド「MSか?」
アイザック「いや、あれはRB(ラウンドバックラー)という汎銀河大戦に
 投入された機動兵器だ。今はあまり使われていないが・・・・・」

アイザックはRBをMSと思ったキッドにRBの事を説明する。一方、そのRB
には先程の青年、グラム・リバーが搭乗していた。

グラム「さっきの人達は、連邦軍だったのか・・・・ま、助けてもらった礼だ。
 行くぜ、希望号!」

グラムはそのRB―希望号の名を呼んで、海賊に立ち向かうのであった。

1496

海賊A「こうなったら、あの要塞を落とせー!」

海賊達は百鬼富嶽を攻め落とそうと、MSが近づいてくる。

グラム「そうはさせないよ」

グラムの操縦する希望号は高速で動き、近づいてくるズゴックや
ハイゴッグを蹴散らしていく。

ルリ「皆さん、ここは彼らに協力して都市船を守って下さい」
マリン「よし、ショルダーキャノン!!」

ルリからグラム達に協力して、都市船を守るように言われたマリンは
バルディオスの装備の一つであるショルダーキャノンで攻撃をする。
他の機体も動きが鈍いながらも、水中にいるMSを何とか攻撃していく。

海賊B「このままじゃ、ジリ貧ですよ!」
海賊A「ええーい、やぶれかぶれだ!突っ込め~~!!」
海賊B「そんな『夜明けの船』じゃないんだから、無茶ですよ!」

やけを起こした海賊は戦艦で特攻をしようとしていた。だが、その戦艦の
前に一矢の乗るダイモスが現れる。

一矢「このぐらいの距離ならば・・・・ダブルブリザード!!」

ダイモスのダブルブリザードで戦艦は空高く舞い上がる。

一矢「烈風ダァ~イモキィィィック!!」
海賊「うわぁぁぁぁ!!」

ダイモスの必殺技の一つである烈風ダイモキックが決まり、戦艦は沈黙。
海賊達はすぐに自分達の敗北を認め、戦闘は終了。海賊達は逮捕される
事となった。 

 

1497

○竜崎一矢→元親に加勢。ダイモスに乗り込み、海賊達の戦艦を沈黙させる。
○明神タケル→グラムと海賊とのトラブルを聞きつける。
○マリン・レーガン→バルディオスで海賊の水中MSを攻撃する。
○ホシノ・ルリ→グラム達と協力して海賊と戦闘する。
○マキビ・ハリ→グラムの戦艦と元親の百鬼富嶽が出現した事を報告する。
○トモカ・タイガ→百鬼富嶽の出現に驚愕する。
○長曾我部元親→海賊とトラブルになっているグラムを助ける。百鬼富嶽を動かす。
○甘寧/思春→元親に加勢。百鬼富嶽で指揮を執る。
○グラム・リバー→サルベージした機械等を売っていたが、海賊とトラブルになる。
   元親達に助けられた後、再び希望号に乗って戦う。
○ベステモーナ・ローレン→ルリ達に加勢する事を通信で伝える。

【今回の新登場】
○グラム・リバー(絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク)
元々、都市船アデナのダウンタウンに暮らすフリーターだったが、「夜明けの船」の
アデナ襲撃に巻き込まれた際、現れた希望号に搭乗した事で夜明けの船に
スカウトされる。様々なアルバイトをした経験で、何事もそつなくこなし、特にRBを
含めた搭乗型機械の操縦と料理の腕前は一流。戦闘時以外は食堂で調理を担当。
力は強い方では無いが、以前サーカスにいた経験から身のこなしが軽く、
それなりに強い。その日を精一杯生きる事を信条とし、流れがあれば乗るが
基本的に自分で舵を取るタイプ。現在は「夜明けの船」を離れ、ベス達と
自分の船で旅をしている。


『希望の名を持つ海賊』-4

作者・ユガミ博士

1498

***海賊要塞・百鬼富嶽***

海賊との戦闘後、一同は百鬼富嶽で顔を合わせた。要塞の中に入り
一同はその広さと木造によるからくり技術に驚愕する。

元親「俺様が、長曾我部元親だ」
グラム「俺はグラム・リバー。改めて礼を言うぜ」
ルリ「私は地球連邦軍所属のホシノ・ルリ少佐です。よろしくお願いします」

元親とグラム達はルリ達に自分達の事を改めて名乗る。そしてルリも
グラム達に名乗った。

ビート「あ、そちらのお嬢さんは先程の・・・・」
ボウィー「こちらさんの仲間だったのか」
サブロウタ「そっちのお姉さんも仲間だったなんて驚いたよ」
思春「・・・・まさか、また会う事になるとはな」
ベス「グラムを助けて下さり、ありがとうございます」

ビート達は先程出会った思春やベス達が、グラム達の仲間だった事に
改めて驚く。

元親「ん?何だよ、思春とベス知り合いだったのか」
ビート「へぇ~、思春ちゃんって言うの?俺の名前はビー「シュ」・・・ト?」

思春の名前を知り、ビートも仲良くなろうと自分の名前を言おうとした時、
何故か思春に隠し持っていた暗器を首に突きつけられる。いきなりの
行動にビートやルリ達は驚いた。(ルリの場合は余り表情が変わらなかったが)

元親「おいおい、思春。ここはお前がいた世界じゃないんだぜ?いい加減慣れろよ」
思春「・・・・済まない。私の真名を言われてしまったので、反射的に動いてしまった」

だが元親は見慣れているのか、冷静に思春の行動に驚く事もなく、彼女を
宥める。思春も今の行動を反省し、謝罪した。

アイザック「元の世界・・・・という事は異世界からの転移者か?」
グラム「ああ。俺とベスは火星出身だが、元親や思春は此処とは違う世界の
 人間なんだ」
ルリ「・・・・やはり、長曾我部元親の名前を聞いて、もしやと思ったのですが・・・・」

アイザックは元親の『元の世界』というフレーズに、彼らが異世界から来た人間と
いう事を見抜く。ルリも元親の名前が日本の戦国武将の名前と同じ名前で
ある為、その可能性にうすうすと気づいていた。

元親「・・・・そういう事だ。俺は戦国の世で、野郎共と百鬼富嶽を造り、
 お宝探しの旅に出かけたんだが、妙な穴に入って気が付けば、この
 海にいたんだ。にしてもまさか未来に来ちまうなんてのは思っても
 みなかったぜ」
雷太「だが、日本の戦国時代でこれだけの要塞を作ったなんて話は聞いた事が
 ないぞ」
ブルース「おそらく、少し歴史が違う世界から転移してきたのだろう」

元親達が火星に海に転移してきた状況を知り、彼らが史実とは違う世界から
来たのだと推測する。

闘志也「それで、そっちのお姉さんも・・・・同じ世界の人なのか?」
思春「・・・・いや、私は元親とは違う。私の名は甘寧。字は興覇。
 呉の孫権様の下で親衛隊に所属していた」
ハーリー「甘寧って・・・・三国志に出てくる武将じゃないですか!」
バーディ「それにしては、さっきから違う名前で呼んでいるけど?」

思春の正体が三国志に登場する呉の武将である事にハーリーは
驚き、バーディは名前が違う事に疑問を抱く。

思春「私の世界では【真名】という、もう一つの名前が付けられる。
 真名は親しい者にしか呼ぶ事が出来ず、勝手に呼べば首を
 はねられてもおかしくない事なのだ」
トモカ「随分、物騒だな(汗」
元親「思春とは、この世界で会ったんだが、おかげで首を落とされる所だったぜ」
グラム「俺も俺も」

思春から彼女のいた世界の真名という慣習について説明され、トモカなど
冷や汗を聞く。元親達もその事で首を落とされそうになったが、今では真名で
呼ぶ事を許される程、親しい間柄になったという。

1499

元親「この都市船でグラム達と久しぶりに会う事になったんだが、それで
 あの騒ぎってわけよ」
ルリ「そういう訳でしたか。よく分かりました」
一矢「・・・・所で、俺達はエリカという女性を探しているんだが知らないか?」

一矢は、まだエリカの事で聞いていない元親やグラムに事情を話して、
その事を聞いてみる。

グラム「・・・・そういえば、極点の方に異星人が集まっているみたいな噂が
 あるんだけど、違うかな?」
一矢「それだ!!」
京四郎「落ち着け、一矢」
ルリ「ですが、極点というと極冠遺跡の事かもしれません。彼らが潜伏する
 場所として可能性としては、十分に考えられます」

グラムの言葉にルリ達は極冠遺跡に向かう事にした。

元親「なるほど。事情は分かった。よし、グラムを助けてくれた礼だ!
 俺達も手を貸すぜ」
ハーリー「えっ、いいんですか?」
元親「恩を返せないようじゃ、この西海の鬼の名が廃るってもんだ」
思春「・・・・私も貴様達といれば孫権様のいる元の世界に帰れるかも
 しれない。よろしく頼む」
スバル「いいのかよ、ルリ?」
ルリ「まぁ、別の世界の人やこれだけ巨大な要塞を野放しにするわけには
 いけませんし、連れて行きましょう。貴方方はどうされますか?」

恩を返す為、元の世界に変える為として元親と思春は部隊に同行する事を
申しでる。ルリはそれを承諾し、次にグラム達はどうするのか聞いてみた。

ベス「どうするの?グラム・・・・・」
グラム「・・・・・いや、俺達はこれで失礼するよ。何か政治とか、そういう事に
 巻き込まれそうなんでね。」

グラムは少し考えた後、ルリ達と別れると答える。グラムは政治とかには
興味が無く、その日を精一杯生きる事を信条とする男。ルリ達が良い人達
というのは分かるが、恐らく厄介ごとに巻き込まれていくであろうと考え、
行動を共にしない事にした。

ルリ「・・・・分かりました。無理を言って申し訳ありません」
元親「そうか達者でな。グラム!」
思春「・・・・ボンとシエにもよろしく伝えてくれ」
グラム「ああ、そっちこそ気をつけてな!」

そしてグラム達と別れ、ナデシコは元親達の乗る百鬼富嶽と共に極冠遺跡
へと進路を向けるのであった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

元親達と別れた後、グラムは格納庫に収められている希望号の前に立っていた。
この希望号、前の戦いで乗り捨ててしまい、もう二度と乗る事は無いと思っていた。
だが、元親と思春と出会ったあの日。別の海賊から逃げていた時に、彼らに
助けてもらったのだが、そこへ何故か希望号が自分の所へと流れ着き、再び乗り込んで
海賊を追い払う事が出来た。そして元親達と友人関係を結び、今に至るのである。

グラム「・・・・・・」
ベス「何、黄昏ているのよ。らしくもない」
グラム「ベス・・・・」
ベス「やっぱり、一緒に行きたかったなんて思っているの?」
グラム「そんなじゃないさ。また、こいつに乗れるなんて思っても
 みなかったなって思っていたのさ」

ベスに声を掛けられたグラムは、また希望号に目を向ける。再び、希望号が
現れた理由、それはこの先の大きな戦いに関係するものなのか、それは定か
ではない。
 

1500

○竜崎一矢→グラム達にエリカの事を聞く。
○ホシノ・ルリ→グラムや元親達と顔を合わせる。百鬼富嶽の同行を承諾する。
○マキビ・ハリ→女性となっている甘寧/思春に驚く。
○ビート・マッケンジー→思春の名前を言おうとして、首に暗器を突きつけられる。
○トモカ・タイガ→真名という慣習に冷や汗をかく。
○長曾我部元親→火星に転移した時の事を話す。そしてナデシコに同行する。
○甘寧/思春→ビートに真名で呼ばれたので、反射的に首に暗器を突きつける。
   一同に真名について説明した後、ナデシコに同行する。
○グラム・リバー→宇宙連合が極冠遺跡に集まっている事を話した後、別れる。
  希望号に再び乗った事を思い出す。
○ベステモーナ・ローレン→グラムに声を掛ける。


『エリカ救出!決戦、火星の後継者』

作者・ユガミ博士

1500-1

***火星・極冠遺跡***
北辰に連れ去られたバーム星人の指導者であり、竜崎一矢の恋人であるエリカを救う為、
火星の後継者が拠点としている火星極冠遺跡へ辿り着いたナデシコ一行。
なおナデシコに保護された史実とは異なる戦国時代と三国時代から転移して来た長曾我部元親、
甘寧達だが、地理の関係上、巨大な要塞である「百鬼富嶽」は陸地へ移動させる事が出来ない為、
(何より目立つ為)「百鬼富嶽」は火星に駐留する連邦軍に任せて、ナデシコには元親、甘寧と
数人の部下が同行した。

元親「あれが、そのエリカって嬢ちゃんが捕まっている極冠遺跡っていう奴かい?」
一矢「ああ。エリカは必ず助けて見せる!」
元親「心配しなさんな。富嶽は無いが代わりにコレで戦って見せるぜ」

元親が指差したのは、六足の脚がついた木造の船だった。富嶽同様、長曾我部軍で造られた
「暁丸」というカラクリ兵器である。

リョーコ「そんなので、大丈夫なのか?」
ウリバタケ「心配ご無用!この俺の技術によって見た目は木造のカラクリだが、
 その機動力はエステバリス並みになっているぜ」
元親「へへ、ありがとうな。ウリバタケの旦那」
ウリバタケ「俺もメカニックとして楽しかったぜ!」

元来、カラクリが好きな元親はメカニックであるウリバタケ・セイヤと意気投合。
ウリバタケによる魔改造によって、暁丸はエステバリス同様の機動力となっていた。

甘寧(思春)「とにかく我々は竜崎と共に敵の拠点に辿り着き制圧。目的の人物を
 救出するという事で良いんだな?」
サブロウタ「それで頼むぜ。思...甘寧ちゃん。その間、俺達で敵を引き付けているからさ」
甘寧(思春)「思春で良い。これまでの道中で真名を預けても良いと思えたからな」

甘寧が作戦の確認をすると、タカスギ・サブロウタが同意するが、彼女の真名である
「思春」の名前を言いそうになった為、慌てて言い直した。だが甘寧はこれまでの道中で
皆信頼できる人物であると考えた為、真名を預けた。

キッド「暁丸にはコウとトモカも同行するんだよな?」
コウ「ああ」
トモカ「まあ、俺達が活躍できる所といったら其処ぐらいしかないからな」

コウとトモカも暁丸に乗り込み、作戦に参加する。そして遺跡では木星帝国や
ヴェイガンのMS、火星の後継者が保有するジンシリーズ、バッタ、宇宙連合の各兵器が展開。
旗艦である「かぐらつき」には北辰衆が控えていた。

サブロウタ「どうやら、火星の後継者にはヴェイガンも協力しているようだな」
ルリ「火星の後継者の首謀者・草壁春樹中将に告げます。直ちに武装を解除し、投降してください」
草壁「拒否させてもらう!今度こそ我らの悲願を達成する為、勇敢なる兵士達よ。攻撃せよ!」

ナデシコCの艦長ホシノ・ルリは「かぐらづき」に向けて、火星の後継者のリーダーである
草壁春樹に降伏勧告を行うが、草壁は拒否して全軍にナデシコへの攻撃命令を下す。

ルリ「やはりこうなりましたか。では此方も機動部隊の皆さんは出撃してください」

草壁から予想通りの返答が来て、ルリは冷静に応戦するべく機動部隊へ出撃命令を行う。
ナデシコCからエステバリス隊、ガルバーFXⅡ、ゴッドマーズ、コスモクラッシャー、
バルディオス、ゴッドシグマ、ブライガー、サスライガー、レイズナー、
そして少し遅れて一矢を乗せた暁丸が出撃した。

1500-2        
 ゴステロ@ダルジャン「ハァ~ハッハッハ、また会えたなぁ。エイジィ!」
エイジ@レイズナー「ゴステロ!今度こそ、貴様を倒す!」

出撃した各スーパーロボットは次々とMSやジンシリーズ、バッタといった無人兵器、
異星人連合の起動兵器を撃墜させていく。レイズナーに乗るエイジは宿敵であるゴステロの
乗るダルジャンと対峙し、戦闘を繰り広げていく。その隙を突いて暁丸は「かぐらづき」を目指して進んでいった。

北辰@夜天光「この気配...そのカラクリに竜崎一矢が乗っているな?」
一矢「あれは北辰の乗る夜天光!」
トモカ「何で乗っているって分かるんだよ!」
北辰@夜天光「フフ...貴様もあの男と同じく愛する女を取り戻しにきたか?」

暁丸に一矢が乗っている事に気が付いた北辰の乗る夜天光が暁丸へと迫る。
いくら改造したからとはいえ、夜天光に攻撃されれば暁丸は瞬く間に撃墜されてしまう。

マリン@バルディオス「させるか。亜空間に突入する!」
北辰衆@六連「邪魔はさせんぞ」

暁丸に襲い掛かる夜天光を助けようと、マリンの乗るバルディオスは亜空間に
突入してワープしようとするが、北辰の部下である北辰衆の乗る六連が立ち塞がる。
夜天光の錫杖が暁丸へと振り上げられたその時、夜天光にビームが当たる。

一矢「今のビームは?」
北辰@夜天光「フ...フフフフ...ようやく来たか。テンカワ・アキト!」
一矢「アキト!?」

ビームが放たれた方を向けると、そこには全身を黒い装甲で固めれられた人型兵器が
宙を浮かんでいた。かつてナデシコの一員で、火星の後継者に連れ去られた妻ユリカを
助けるべく復讐者となったテンカワ・アキトの乗るブラックサレナである。

リョーコ@エステバリス「アキト!」
ルリ「アキトさん...!」
ガイ@エステバリス「仲間のピンチに駆けつけるなんて...最高にカッコいいじゃねえか、アキト!」

これまで独自に「火星の後継者」を追って姿を見せなかったアキトの登場に
リョーコやルリ達は驚く。ガイは「ピンチになっている所を仲間が駆けつける」という
所謂“お約束”のシチュエーションに感動していた。さらにブラックサレナの後方から
ドクロのマークが特徴の宇宙船と1機のガンダムタイプ...量産型F91のMSが現れた。

ハーリー「あのドクロのマーク...もしかしてハーロック船長のアルカディア号!?」
ユリカ@通信『やっほー!ルリちゃん、お久しぶり!私もいるよ」
ルリ「ユリカさん、アルカディア号に乗っていたんですね」
ハーロック「久しぶりだな、ホシノ艦長。これよりアルカディア号はナデシコに協力する」

現れたドクロの宇宙船―キャプテン・ハーロックが乗るアルカディア号だった。
以前大豪院邪鬼から接触があったハーロックは協力を要請され、人知れずGショッカー等の
脅威と戦っていた。アルカディア号は前大戦の時にナデシコと共に戦った事があり、
その為、ハーロックは独自に火星の後継者を追っていたアキトとユリカをアルカディア号に
乗せて協力していたのである。

サブロウタ@スーパーエステバリス「それと、そっちのF91は...?」
シーブック@量産型F91「俺だ、サブロウタ」
リョーコ@エステバリス「シーブック!?お前、ティターンズに追われていたって聞くけど、そこにいたのかよ!」
シーブック@量産型ガンダムF91「キャプテンに助けられたんだ。セシリーも無事、保護されている。
 だから、その恩を返す為にもキャプテンに協力している」

量産型ガンダムF91に乗っていたのはティターンズに追われていたシーブックだった。セシリーや家族と共に
逃げていたシーブックはハーロックに助けられ、セシリーと家族も保護された事により、その恩を返す為、
ハーロックに協力していたのであった。

北辰@夜天光「久しいな。テンカワ・アキト...」
アキト@ブラックサレナ「北辰...いい加減、俺の前から消えろ!」

アキトは黄泉還った北辰と再び相対して決着を着けようとしていた。
 
1500-3

***かぐらつき・ブリッジ***


草壁「アルカディア号にテンカワ・アキト...“黒い幽霊”か」
ハザード「ええい、少し増えたぐらいで何だ!例のアレを出せ!」
ドッグ「ハッ!」

ブラックサレナの登場をかぐらづきのブリッジから見ていたハザードは副官であるドッグ・タックに命令を下す。
命令を受けたドッグ・タックによって出撃したのは巨大な戦車だった。

元親「何だあの馬鹿デカいのは!?」
甘寧(思春)「百鬼富嶽よりも巨大なんじゃないのか」
一矢「あれはメガノイドが開発した究極戦車ニーベルゲン!」

現れた巨大戦車はかつてメガノイドが開発した究極戦車ニーベルゲンだった。
ハザードは前大戦でメガノイドとも手を組んでいた事があり、密かに譲り受けていたのであった。
暁丸に乗る元親や甘寧は衝撃を受け、かつての戦いで見た事がある一矢は
ニーベルゲンを説明する。

ハザード「フハハハハ、メガノイドが開発したこのニーベルゲンならば、
 貴様ら等、赤子の手を捻るものだ!」
????@通信「おっと、援軍がアキト達だけと思ったかい?」
ハザード「何者だッ!?」

ニーベルゲンの戦闘力に自信を持つハザードは高笑いをするが、
その時、通信が入り、遠方から巨大な戦闘機と2隻の戦艦が現れる。

タケル@ゴッドマーズ「ダイファイター...という事は!」
アイザック@ブライガー「万丈か!」
闘志也@ゴッドシグマ「それにあの戦艦はマザーバンガードとディーヴァか!」
ナトーラ@ディーヴァ「地球連邦軍所属ディーヴァ艦長ナトーラ・エイナスです。
 火星極冠遺跡奪還の任務により、テロリスト・火星の後継者の制圧を行います」
ベルナデット@マザーバンガード「PU所属のマザーバンガードです。機動部隊出撃してください!」

現れた戦闘機はダイターン3が変形したダイファイターで、通信してきたのは
万丈だった。実は万丈はメガノイドの兵器の開発が火星で行われていると
情報が入り、火星の後継者に協力する木星帝国やヴェイガンを追っていた
マザーバンガードとディーヴァと共に火星に来ていたのである。
マザーバンガードの艦長であるベルナデットにより、両艦からクロスボーンガンダムX1改と
MSクランシェによるアビス隊が出撃し、ダイファイターはダイターン3へ変形した。

トビア@クロスボーンガンダムX1改「シーブックさん...」
シーブック@量産型ガンダムF91「久しぶりだな、トビア...積もる話も多いが、今はこの戦いを生き残るぞ!」
トビア@クロスボーンガンダムX1改「はいッ!」

クロスボーンガンダムX1改に乗るトビアは、かつて「キンケドゥ・ナウ」として共に木星帝国と
戦ったシーブックとの再会を喜ばしく思うものの、今は目の前の戦いに挑む。

万丈@ダイターン3「メガノイドの兵器で人々を苦しめるのであれば、僕が許さない!」
アキト@ブラックサレナ「一矢、ここは俺達に任せて今の内に行け!」
一矢「分かった!頼む、元親」
元親「応よ!しっかり捕まってな」

戦友であるアキト、万丈が駆けつけ、一矢は愛するエリカを救い出すべく、
今エリカが捕われている遺跡に潜入する。果たして救い出せるのか!

 

1500-4


 暁丸が遺跡へと突入した所で、木星帝国の戦艦からクロスボーンガンダムを
黒くした機体―クロスボーンガンダムX2改が出撃する。

ザビーネ@クロスボーンガンダムX2改「キンケドウゥゥ!」
シーブック@量産型F91「X2...!ザビーネ・シャルか!」

X2改のパイロット、ザビーネ・シャルは宿敵であるシーブックがかつて
名乗っていた「キンケドゥ」の名を叫びながら、彼の乗る量産型F91の前に現れる。

ザビーネ@クロスボーンガンダムX2改「フハハハ!キンケドゥ、貴様が再び私の前に
 現れた事を嬉しく思うぞ!さぁ、私の手に掛かり、死ぬが良い!」
シーブック@量産型F91「生憎だがザビーネ。俺はセシリーと...家族と平穏に暮らせるためにも
 死ぬ訳にはいかないんだ!」
トビア@クロスボーンガンダムX1改「シーブックさん...!俺も手伝います」
ザビーネ@クロスボーンガンダムX2改「う~ん?貴様はトビア・アロナクスか。私と
 キンケドゥの邪魔をするな!」
トビア@クロスボーンガンダムX1改「そうはいかない。それに、キンケドゥ・ナウの名は
 今は俺が継いでいるんだ!」

ザビーネの乗るクロスボーンガンダムX2改と、シーブックの乗る量産型F91、トビアの乗る
クロスボーンガンダムX1改は激突する。X2改はビームバルカンや頭部のバルカン砲を撃つ他、
シザー・アンカーで量産型F91を捕えようとする。

シーブック@量産型F91「何とぉ!」

量産型F91は、X2改の攻撃をかわして、バックパックに装備されている
可変速ビームライフル「V.S.B.R.」をX2改に向けて放つ。

ザビーネ@クロスボーンガンダムX2改「ぐぅ...!」
トビア@クロスボーンガンダムX1改「もらったぁ!」

X2改に「V.S.B.R.」が直撃し、その隙を突いてX1改はビームザンバーで
連続攻撃を仕掛けていく。攻撃は見事当たり、X2改から火花が出る。

ザビーネ@クロスボーンガンダムX2改「ちぃ。機体の調整が甘かったか。
 キンケドゥ、今度こそ貴様を葬ってやろう!フハハハ」

ザビーネは機体に限界が来た事でその場から戦線離脱した。

シーブック@量産型F91「ザビーネ...お前が挑んでくるのならば
 また相手をしてやる!」

ザビーネとの再戦を決意しながら、シーブックとトビアは戦いに戻った。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

一方、究極の戦車であるニーベルゲンは車体の砲門から無数のビームが
放たれる。

京四郎@ガルバーFXⅡ「チィッ!やはりあの戦車は厄介だな」
万丈@ダイターン3「ならば火力が高い機体はニーベルゲンを優先的に攻撃。
 破壊するんだ」
セリック@クランシェカスタム「ならばニーベルゲンの破壊が終わるまでMS部隊と
 エステバリス部隊は他の敵を引き付ける」
闘志也@ゴッドシグマ「よっしゃぁ!」
リョーコ@エステバリス「任せろ!」

万丈は火力の高いスーパー系の機体を中心にニーベルゲンを優先的に
破壊する事を指示。そしてアビス隊の隊長・セリック・アビスは、MS部隊と
エステバリス隊に、他の敵との応戦を指示するのであった。

アイザック@ブライガー「ブライカノン装着!」
ブルース@サスライガー「サスライガーはJ9Ⅲ号に変形。バトレインカノンだ!」

J9チームのリーダー、アイザックはブライガーの必殺砲ブライカノンの装着を指示。
JJ9チームのリーダー、ブルースはサスライガーを列車形態のJ9Ⅲ号を変形させ、
全面からバトレインカノンを発射した。

闘志也@ゴッドシグマ「シグマブレスト!」
タケル@ゴッドマーズ「ファイナル・ゴッドマーズ!!」
マリン@バルディオス「亜空間ビーム!」

ゴッドシグマは「シグマブレスト」でニーベルゲンの装甲を急速に劣化させ、
そこにゴッドマーズの必殺技「ファイナル・ゴッドマーズ」を繰り出し、バルディオスは
額の部分から「亜空間ビーム」を放った。

万丈@ダイターン3「日輪の力を借りて、今必殺のサン・アタァァック!」

最後はダイターン3が額に太陽の光を集めて、必殺の「サン・アタック」を放つ。

万丈@ダイターン3「ダイタンクラーッシュ!」

そしてサン・アタックにより劣化した装甲に目がけてトドメの
ドロップ・キックが繰り出され、ニーベルゲンは粉砕されるのであった。

1500-5        

***かぐらづき・ブリッジ***

ハザード「ニ、ニーベルゲンが...!」
草壁「ぬぅ...地球のスーパーロボット、やはり侮れん」

ニーベルゲンが破壊された事にハザードはショックを受け、草壁もニーベルゲンを
破壊したスーパーロボットの軍団に改めて脅威を感じるのであった。

火星の後継者「閣下、敵の戦艦アルカディア号がこちらに向かってきます」
草壁「何だと!」

部下からの報告で草壁はかぐらづきにアルカディア号が接近している事を知る。
接近してきたアルカディア号から通信が送られてきた。

ハーロック「火星の後継者の首魁、草壁春樹。人々の自由を脅かす事は許されない」
草壁「何を言う。地球こそ我々、木星や火星から自由を奪い資源を搾取する忌むべき存在。
 我らこそ自由と正義の為に戦う戦士なのだ!」
ハーロック「貴様自身が、どう思うとも勝手だ。だがその為に悲しむ者がいる事を忘れるな!
 パルサーカノン撃てぇ!」
草壁「こちらも応戦せよ。宇宙海賊に我らの力を見せるのだ!」

自己の正義を主張する草壁に、ハーロックは攻撃を開始し、草壁も応戦する様
部下に命じた。

ハザード「(ニーベルゲンも破壊され、こちらの旗色が悪くなってきたぞ...
 こうなればエリカを連れて、オルバンの下に逃げ出さねば...)ついて来い、ドッグ・タック」
ドッグ・タック「はっ!」

次第に形成の不利を感じ取ったハザードは、エリカを連れてオルバン大元帥の下に
身を寄せようと逃げる算段をつけて部下のドッグ・タックと共に誰にも気づかれず
こっそりとブリッジから出ていくのであった。

***火星極冠遺跡***
外では激しい戦いを繰り広げる中、遺跡の中に突入した一矢達は捕えられている
エリカの下を目指していた。

一矢「せいやぁ!
元親「おらぁ!」
甘寧(思春)「フンッ!」
コウ「てりゃぁ!」
トモカ「そらよ!」

その途中、火星の後継者の構成員や木星帝国の兵士、バーム兵等が立ちはだかり、
暁丸を降りた一矢達はそれらを相手に戦っていた。

トモカ「全くどれだけいるんだよ、こいつら」
元親「へっ!元の世界じゃあ、戦でこのぐらい相手にするのは当たり前。
 まだまだやれるぜ!」
一矢「―!あれは」

戦っている中、一矢は今まさにハザードによって遺跡から連れ去られようとしている
エリカを発見する。

一矢「エリカァァ!」
エリカ「一矢!」
ハザード「お前は竜崎一矢!ええい、こっちへ来るな。でないとこの女が
 どうなっても知らんぞ!」
コウ「くっ...何て卑怯な奴なんだ!」

一矢はエリカに近づこうとするがハザードはエリカを人質にしようとする。
ハザードの卑劣さに、コウは怒りを覚える。

甘寧(思春)「...人質は返してもらうぞ」
ハザード「貴様、何時の間に背後に!?」

だが思春が瞬時にハザードの背後に廻り、暗器をハザードの首に当てる。
その隙を突いてハザードの手から離れたエリカを保護した。

エリカ「会いたかった、一矢!」
一矢「俺もだ。エリカ」
トモカ「こっちにいた女の人も保護したぞ!」
マルガレーテ「おひいさま、ご無事で!」
エリカ「あなたもね。マルガレーテ」

ようやく再会できた事を喜び合う一矢とエリカ。エリカの侍女である
マルガレーテも無事に保護され、エリカは喜んだ。

ハザード「くそっ!ここで終わるか」バァーン
甘寧(思春)「くっ、銃か!」
ドッグ・タック「閣下。今のうちに!」
ハザード「うむ。お前達、この屈辱は忘れんぞ!」

ハザードは懐に忍ばせていた銃を撃ち、思春が怯んだ隙を突いて
ハザードとドッグ・タックはその場から逃げるのであった。

一矢「逃げられたか!」
元親「目的は果たしたんだ!ずらかるぜ!」

ハザードに逃げられたが、エリカを救出する目的は果たしたので、一矢達は
暁丸に乗って遺跡から脱出し、ナデシコへと帰艦するのであった。

1500-6        

ナデシコに帰還した一矢は火星の後継者と決着を着けるため、ダイモスを出撃させる。

エリカ「一矢...ご武運を」
一矢「ああ。必ず戻る!」

出撃の間際、エリカは一矢が無事に戻る事を信じて見送る。一矢もエリカの下に
戻ってくる事を約束して出撃した。

北辰@夜天光「女を取り戻したか。竜崎一矢」
一矢@ダイモス「ああ。そしてエリカを攫ったお前たちと決着を着ける!」
アキト@ブラックサレナ「一矢、北辰と戦うのなら手を貸すぞ」
北辰@夜天光「ふはははは。テンカワ・アキト、竜崎一矢、汝ら2人が
 我に挑むのであれば相手をしよう」

出撃した一矢の乗るダイモスは北辰の乗る夜天光の前へと進み、アキトの乗る
ブラックサレナと協力して夜天光に挑む。
高速で動く夜天光にブラックサレナも高速で動いてハンドガンを繰り出し、
そこにダイモスはファイブシューターを投げつけるが、夜天光の速さに
なかなか攻撃が当たらなかった。

北辰@夜天光「我の速さについて来れまいか?」
一矢@ダイモス「くっ!なんて速さだ」
アキト@ブラックサレナ「...北辰め。以前戦った時よりも速くなっている」
北辰@夜天光「黄泉路より戻り、貴様と再び相対した時の為に我も以前より
 強くなった。さあ、存分に戦おうぞ!」
一矢@ダイモス「...何か奴の気を一瞬でも逸らす事が出来れば!」

以前戦った時よりも強くなった北辰に苦戦するアキトと一矢。このままいけば
敗北する。夜天光の隙を突けないかと考えを巡らせていた時、意外な所から
夜天光は攻撃を受ける。

北辰@夜天光「...何?」
ガイ@エステバリス「完全に俺の事を見落としていた様だな!この俺、ダイゴウジ・ガイを!」
アキト@エステバリス「ガイ!」

夜天光を攻撃したのは、北辰衆や他の木星帝国の機体と戦っていたダイゴウジ・ガイの乗る
エステバリスだった。ガイは親友であるアキト達を助ける為、混戦の中、隙を突いて攻撃をした。
北辰にとってダイゴウジ・ガイは気にも留めない只の雑兵でしかなく、テンカワ・アキトや
竜崎一矢しか見ていなかった為、完全に油断したのである。

アキト@ブラックサレナ「今だ!」
ガイ@エステバリス「俺も続くぜ!ゲキガンフレア!」

隙を突かれた夜天光にすかさずブラックサレナはディストーションフィールドを展開して
突撃。ガイも続けてエステバリスで大好きなゲキガンガー3の必殺技を口にしながら突撃し、
夜天光は大ダメージを受ける。

一矢@ダイモス「エリカを連れ去った怒り、思い知れ!必殺!烈風ダァァイモキックゥ!」
北辰@夜天光「ぐぅぅぅ!」

大ダメージを受けた夜天光に、一矢は愛する女性を連れ去った北辰に怒りを込めて
ダイモスの必殺技の1つ「烈風ダイモキック」でトドメの一撃を繰り出した。

北辰@夜天光「...今のは完全に我の油断だった。今回の所は敗北を認めよう。
 だが、我は再び汝らの前に姿を現そうぞ。さらばだ」
一矢@ダイモス「消えたか」
ガイ@エステバリス「俺達の友情の勝利だぜ!」
アキト@ブラックサレナ「...北辰。何度、現れようと倒すのみだ」

機体に限界を感じた北辰は、敗北を認めて撤退。他の北辰衆も撤退していく。
ガイは勝利に喜び、アキトと一矢は一先ずの戦いが終わり、他の戦場へ戻るのであった。

草壁「北辰までやられたか...!こうなれば、かぐらづきを動かせ!
 前に出る!」
火星の後継者「大変です!かぐらづきのコンピュータが侵入を受けています!」
草壁「...電子の妖精の仕業か!」

部下の北辰衆が徹底し、徐々に戦力が押されている事に草壁はかぐらづきを
前線に動かそうとするが、既にかぐらづきのコンピュータはナデシコCの艦長である
ルリがオモイカネと協力してハッキングした事により、無力化していた。

ルリ「草壁中将。既にコンピュータはこちらで掌握しました。これ以上の戦闘は
 無意味です。投降して下さい」
草壁「...分かった。こちらは投降する。部下の安全は保障してもらいたい」

ルリとナデシコCによるハッキング掌握を受けて、敗北を悟った草壁は部下の
安全の保障を条件に、投降を受け入れる。ここに火星の後継者は壊滅となるのであった。

1500-7

***ナデシコC・ブリーフィングルーム***
戦闘を終えて、主だった面々はナデシコCのブリーフィングルームに集まった。

エリカ「一矢、無事で何よりです」
一矢「君の方こそ。もう誰かに君を奪わせない」

一矢とエリカは戦いを終えて改めて再会を喜び、抱擁する。周囲の面々も
愛する2人が再会した事を喜び、温かく見守る。

トビア「...じゃあ、シーブックさんはブレイバーズに参加するんですね」
シーブック「ああ。ティターンズの政権は終わったとはいえ、ザビーネや木星帝国が
 地球への攻撃を諦めていない以上、セシリーや家族に危機が及ぶ。
 家族を守る為にも、ブレイバーズとして戦うさ」
トビア「本当は、お2人には戦いとは無縁でいてほしかったのですが...よろしくお願いします!」

シーブックと再会したトビアはシーブックがブレイバーズに参加する事を知り、
戦いに戻ってきてしまった事を申し訳ないと思いつつも、共に戦える事を喜ぶ。

ルリ「皆さん。今回の戦闘にご助力して下さり、ありがとうございました」
ハーロック「礼におよばん」
ナトーラ「こちらも任務でしのたで」
ベルナデット「PUとして、御力になれて何よりです」
ルリ「そしてアキトさんもエリカさんもお元気そうでよかったです」
ユリカ「私もアキトも、ルリちゃんと久しぶりに会えて嬉しいよ」

ルリは今回の戦闘に駆け付けてくれたハーロック達に感謝の言葉を述べると共に、
アキトやユリカとの再会を嬉しく思うのであった。

ハーリー「投降した草壁中将以下火星の後継者の構成員、木星帝国、ヴェイガン等は
 火星に駐留している連邦軍に引き取られました。しかし、暗殺部隊の北辰及び北辰衆、
 木星帝国のザビーネ・シャル、元火星開発局局長ハザード長官など一部は消息不明となっています」
元親「ハザードっていうのは、さっき会ったあの野郎か」
甘寧(思春)「やはり、あの時始末しておくべきだったな」
エイジ「ゴステロもいつの間にか消えていた。おそらく奴とはまた戦う事になるだろう」

ハーリーから報告を受け、遺跡でハザードと出会った元親と甘寧は、あの場で始末すべきだったと
少し悔いる。ゴステロと戦っていたエイジは、いつの間にか消えたゴステロと再び戦うであろうと
予想する。

万丈「所でキャプテン。貴方にもブレイバーズに参加していただきたいのですが...」
ハーロック「...今はよそう。俺達は自由を守る為、俺達の道を進んでいく。
 だがもしも、道が交わるのならば、その時はいつでも力を貸そう」
ルリ「分かりました。その時はお願いします」

万丈はハーロックにブレイバーズの加入を要請するが、「今は出来ない」と断る。
しかし、もしもの時は協力をする事を約束するのであった。

ガイ「くぅ~。キャプテン・ハーロック、カッコいいぜ!俺のエステバリスも
 ドクロの意匠をつけようかな」
アキト「相変わらずだな、ガイ。今回お前のおかげで助かった」
ガイ「親友のピンチを救うのは当たり前だろう?リハビリはどうなんだ?」
アキト「順調だ。まだリハビリはかかるが、いつかお前にもラーメンをごちそうするよ」
ガイ「応。待っているぜ!」

ハーロックのカッコよさに憧れるガイは、自分のエステバリスを海賊仕様にしようか
検討する中、アキトは今回戦いで助けられた為、感謝を述べる。
何はともあれ、火星での戦いは一先ず終わるのであった。

1500-8        

○竜崎一矢→遺跡に乗り込んでエリカを救出。ダイモスに乗って夜天光を倒す。
○夕月京四郎→ガルバーFXⅡで出撃する。
○エリカ→助け出されて、一矢と再会する。
○マルガレーテ→助け出される。
○ホシノ・ルリ→火星の後継者と戦い、コンピュータをハッキングしてかぐらづきを無力化させる。
○マキビ・ハリ→戦闘後、火星の後継者の報告を行う。
○タカスギ・サブロウタ→スーパーエステバリスで戦う。
○スバル・リョーコ→エステバリスで戦う。
○ダイゴウジ・ガイ→エステバリスで戦い、夜天光を攻撃する。
○テンカワ・アキト→ブラックサレナで、夜天光と戦う。
○ミスマル・ユリカ→アルカディア号に乗る。戦闘後、ルリと再会する。
○ウリバタケ・セイヤ→暁丸を改造する。
○キャプテン・ハーロック→アルカディア号でナデシコを助ける。
  戦闘後、ブレイバーズの加入を断る。
○シーブック・アノー→アルカディア号に保護され、量産型ガンダムF91で出撃。
  ザビーネ・シャルと戦闘する。
○トビア・アロナクス→クロスボーンガンダムX1改で出撃。ザビーネ・シャルと戦闘する。
○ベルナデット・ブリエット→マザーバンガードに乗ってナデシコを助ける。
○ナトーラ・エイナス→ディーヴァに乗ってナデシコを助ける。
○セリック・アビス→アビス隊を率いて、クランシェカスタムに乗って出撃する。
○破嵐万丈→ダイターン3で出撃。ニーベルゲンを破壊する。
○壇闘志也→ゴッドシグマで出撃。ニーベルゲンを破壊する。
○マリン・レイガン→バルディオスで出撃。ニーベルゲンを破壊する。
○アイザック・ゴドノフ→ブライガーで出撃。ニーベルゲンを破壊する。
○ブルース・カール・バーンスタイン→サスライガーで出撃。ニーベルゲンを破壊する。
○明神タケル→ゴッドマーズで出撃。ニーベルゲンを破壊する。
○アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ→レイズナーで出撃。ダルジャンと戦闘する。
○長曾我部元親→暁丸に乗り込んで、エリカ救出作戦に参加する。
○甘寧/思春→暁丸に乗り込んで、エリカ救出作戦に参加する。
○コウ・ヤガミ→暁丸に乗り込んで、エリカ救出作戦に参加する。
○トモカ・タイガ→暁丸に乗り込んで、エリカ救出作戦に参加する。
●草壁春樹→かぐらづきに乗って指揮を執る。敗北を認め、投降する。
●北辰→夜天光に乗って出撃。ブラックサレナやダイモスと戦い、撤退する。
●ザビーネ・シャル→クロスボーンガンダムX2改に乗って出撃。量産型ガンダムF91や
  クロスボーンガンダムX1改と戦闘して、撤退する。
●ゴステロ→ダルジャンに乗って出撃。レイズナーと戦闘する。
●ハザード・パシャ→ニーベルゲンを出撃させる。旗色が悪くなったので、エリカを
 連れ出そうとするが、一矢達に邪魔されて部下のドッグ・タックを連れて逃亡する。
●ドッグ・タック→ハザードと共に逃亡する。

1500-9

【今回の新登場】
○シーブック・アノー/キンケドゥ・ナウ(機動戦士ガンダムF91/機動戦士クロスボーンガンダムシリーズ)
 コロニー「フロンティアⅣ」に居住する工業科の学生だったが、クロスボーン・バンガードが
 コロニーを襲撃してきた際、練習艦スペース・アークに避難した際、母親が開発に携わっていた
 ガンダムF91と遭遇。なりゆきからパイロットとなって、バビロニア建国戦争の渦中に巻き込まれていく。
 その後、「キンケドゥ・ナウ」を名乗り、宇宙海賊クロスボーン・バンガードのパイロットとなって
 木星帝国と戦った。木星帝国との戦争が終わった後、元の名前を名乗り恋人であるセシリーと結婚。
 パン屋の店主となった。

●ザビーネ・シャル(機動戦士ガンダムF91/機動戦士クロスボーンガンダム)
 クロスボーン・バンガードのエースパイロット。没落貴族のシャル家出身でコスモ貴族主義を
 掲げるロナ家に協力してクロスボーン・バンガードの一員となった。一度クロスボーン・バンガードを離脱するが、ベラ・ロナが立ち上げた新生クロスボーン・バンガードに参加。しかし、木星帝国に
 寝返った後、極度の拷問を受けた事で精神は破綻。ベラを奪ったキンケドゥに強い憎しみをぶつける
 狂人に成り果てる。乗機はクロスボーンガンダムX2改。

○ナトーラ・エイナス(機動戦士ガンダムAGE)
 地球連邦軍所属艦ディーヴァ3代目艦長。元々オリバーノーツ基地で事務系の仕事をしていたが、
 フリット・アスノの要求に対してドレイムス大佐の意趣返しから、実践経験が無いにも関わらず
 艦長に任命されてしまった。当初は気弱で優柔不断な性格をしており、頼りない一面を見せていた為、部下からの信頼されていなかったが、艦の構造を勉強し、部下にも的確な指示を出して次第に艦長として信頼されるようになった。子供好きで趣味は絵画。

○セリック・アビス(機動戦士ガンダムAGE)
 地球連邦軍所属のMS部隊「アビス隊」の隊長。乗機はクランシェカスタム。
 冷静な判断力と推理力を持ち、収集した様々な情報から戦局を判断する事から
 「戦場のホームズ」の異名を持つ。艦長に就任したナトーラを気遣っており、
 彼女への労いの言葉を何度もかけている。子持ちで既婚者であるらしい。

●ドッグ・タック(忍者戦士 飛影)
 ハザードの右腕ともいえる優秀な秘書官。ハザードの命令に忠実で、最後まで
 ハザードに従って共にファミール艦の撃沈によって死亡している。

 

○テンカワ・アキト(劇場版 機動戦艦ナデシコ―The prince of darkness―)
 ブラックサレナのパイロット。元ナデシコのクルーで、コックを目指していたが、

パイロットの適正があった為、コック兼パイロットとなった。

蜥蜴戦争の後、幼馴染のミスマル・ユリカと結婚。しかし事故を装って、火星の後継者に拉致され過度な人体実験を受けて、視覚や味覚など五感の大半を失ってしまう。
 ネルガルシークレットサービスに助けられた後は、ユリカ奪還と復讐を誓って、ブラックサレナのパイロットとなった。

○ミスマル・ユリカ(劇場版 機動戦艦ナデシコ―The prince of darkness―)
 元ナデシコ艦長。地球連合軍の提督、ミスマル・コウイチロウの娘でアキトの幼馴染。
 軍の士官学校を首席で卒業し、ナデシコの艦長となった。天真爛漫でアキトへの思いが強い。
 蜥蜴戦争後、晴れてアキトと結ばれたが、新婚旅行中に火星の後継者に拉致され、演算ユニットの
 コアにされてしまう。