『北海道孤立作戦』-6

作者・ユガミ博士

1201

***北海道・ビッグネイザー***

デスダークとブラックマグマの作戦を阻止して、ツインブリッジを完全に
破壊させない事に成功したモモレンジャーとゴーグルファイブ、ゲッター
チームはゲッターチームの基地であるビッグネイザーへと帰還した。

赤間「ありがとう、ゲッターチーム。君達のおかげでツインブリッジは無事に済んだ」
號「ゴーグルファイブの赤間さんに、そう言ってもらえるなんて照れるぜ」

変身を解いたゴーグルレッドである赤間健一から、感謝の言葉を聞いて
號は照れ臭そうにする。

凱「ですが、一応無事とはいえツインブリッジも、相当なダメージを受けています。
 ツインブリッジはどうなるのですか?」
黒田「確かに、ナウマンモンガーやデスファイター、ヘルファイターの攻撃で
 所々に修繕の必要がある部分も出て来ているからな。そこはブレイバーズに
 協力している中川グループや四葉財閥の所の建設会社が急ピッチで工事をしているそうだ」

先の戦闘で、ツインブリッジは完全に落ちはしなかったが敵の攻撃にボロボロになった
部分がり、凱は心配になるが黒田官平からブレイバーズのスポンサーである企業が
工事をしていると説明される。因みに以前、青森第4中隊が幻獣と戦ったと時にも
敵の自爆でツインブリッジに穴が出来た時を境に、ブリッジをより強固な素材と技術で
ちょっとやそっとでは落ちないように改修されている。

翔「ブレイバーズ・・・軍と民間の垣根を越えた部隊ね」
號「早乙女研究所の所のゲッターチームも参加しているんだろうなぁ。
 ・・・スーパーロボット大戦に未だ参戦できていないから、アニメ版
 名義で早く参戦したいぜ」
凱「何の話をしているんだ?號」
桃園「私達の所属している未来科学研究所も、ブレイバーズに協力する事に
 なっているわ」
青山「一度、ブレイバーズの基地であるブレイバーベースって所に行ったけど
 ものすごくデカくて、広くてまさに科学の要塞って感じだったよ」
黄島「そうそう、それにコンボイ(コンピュータボーイズ&ガールズ)みたいな
 子供もぞろぞろいたなぁ。そんな彼らで無人島へキャンプしたって話も聞いたよ」

ブレイバーズの話題になり、ゴーグルファイブの所属する未来科学研究所は
既にブレイバーズに協力しており、ゲッターチームにブレイバーベースで
見た事を話す。

號「そいつは、おもしれぇ。俺達もブレイバーズの一員になりてぇぜ」
橘博士「君達も、いずれブレイバーズに合流してもらう。だが、今回
 Gショッカーは北海道を狙ってきた。またこの地を狙ってくるかも
 しれない今は、北の守りが最優先だ」
Dr.ポチ「そうだワン!」
Dr.タマ「そっちが、最優先だニャ~」
翔「父さ・・・いえ、橘博士!」

まだ號達のゲッターチームはブレイバーズと合流していないので
合流したいと思うが、そこへ橘博士がDr.ポチとDr.タマの
2人の博士を伴ってやって来ると、今は北方の守りが優先で合流は
まだまだ先だと伝える。父親である橘博士が来たので、娘である翔は
咄嗟に父さんと呼びそうになるが、今は公然の場として言い直した。

Dr.ポチ「北極にランドウの基地があったように、北極には
 悪の組織の基地がいっぱい何だワン!」
Dr.タマ「だから、十分気を付けないといけないんだにゃ~!」
黒田「確かに。今回のブラックマグマやゴーゴーファイブの戦った
 災魔一族、という組織の拠点があるというのを聞いた事がある」

Dr.ポチとDr.タマから北極には悪の組織の拠点が多いと聞かされ
黒田も自分の知っている組織の情報を話す。

青山「そういえば、ペギーさんは?」
橘博士「彼女なら、青森で戦っていた新命君に連絡をしている所だ」

青山はモモレンジャーとなって戦っていたペギー松山がいないので、疑問に
思うと、橘博士から彼女は新命と連絡をしている最中だと話すのであった。

1202

***青森県・青森邪麻田高校***

一方、青森の方でも新帝国ギアからツインブリッジを守った第4中隊をはじめとする
一同は戦闘を終えて、ようやく青森邪麻田高校へと帰還した。

野口「ああ・・・僕と愛しい彼女達、戦闘で傷ついただろう?すぐに整備を
 してあげるからね」
一平「何だ、あれ?」
百華「彼はメカフェチで、いつもああなの」
乃恵留「いつもの事、いつもの事」
愛梨沙「気にしな~い、気にしな~い」

帰還して栄光号や光輝号が格納庫に搬入されると同時に、整備班長である
野口直也が栄光号に抱きつき始める。彼はかなりメカフェチであり、
機体に女性の名前を付けて大切にしているのだ。一平は呆れた目で見るが、
第4中隊ではいつもの光景なので、同じ整備班の工藤百華に説明され、
乃恵留や愛梨沙は気にしないでと言う。

亜美「ゴオさんと杏奈さんの合体からのトドメの必殺技は、熱い展開で
 とても興奮しました!」
竜馬「うむ、あれこそ男の機体!」
ゴオ「いや、君達が隙を作ってからこそ、俺達は合体できたんだ。感謝する」
亜美「巨神戦争の英雄に感謝されるなんて、そんな光栄であります!」
竜馬「ムフーン」

少年漫ゴオは合体が出来る隙を作ってくれた第4中隊に感謝の言葉を送ると
英雄として尊敬している亜美や普段から戦士として鍛えている竜馬は
嬉しさに照れ、竜馬に至ってはつい、鼻息を荒くしてしまう。

杏奈「はい、ゴオちん。喉が渇いたと思ったから飲み物を持ってきたよ」
ゴオ「すまない、杏奈」
岩崎「はぁ~、俺も咲良ちゃんとあれぐらいの仲になりたいなぁ」
葉月「はいはい、そんな事を喋っている暇があるなら、整備を手伝いなさい!」
岩崎「ああ、ちょっと!」

ゴオと杏奈のやり取りに、整備班で咲良に惚れている岩崎仲俊は羨ましがるが、
同じく整備班の女子である山口葉月に整備の手伝いをしろと連れてかれる。

咲良「郷さんも、助けて下さりありがとうございました」
郷「いや、俺も北海道には用があったからね。助ける事が出来てよかったよ」
健一「北海道へはNISARへ行くそうですね」
郷「ああ、俺はスペースシャトルのパイロットだったからね。その経歴から
 教官として向かう所だったんだ」
めぐみ「あちらにも、戦闘があったようですけど、ゴーグルファイブや
 ゲッターチームの活躍で事なきを得たそうです」
大次郎「北海道を孤立化させようとは、Gショッカーもひどい作戦を
 考えたものでごわす」
日吉「郷さんも、ゲッターチームに会ったらよろしく言ってね」
郷「勿論、伝えておくさ」

咲良や健一達ボルテスチームは助けに来てくれた郷史朗にお礼を言い、
NISARへ向かう彼にゲッターチーム達によろしく伝えてほしいと
頼むのであった。

新命「・・・そっちの戦闘も終わったようだな。ペギー」
ペギー@『新命さんもお疲れ様』

一方、新命はペギーから連絡を受け取りお互い労いの言葉を掛けていた。

新命「今回、事なきを得たが同じ事が起こらないとは限らない。九州にいる
 大ちゃんのようにお互い頑張っていこう」
ペギー@『ええ、美輪長官によって皆バラバラになったけど・・・いずれ
 また一緒に戦いましょう』
新命「ああ!」

新命とペギーは今はゴレンジャー全員バラバラとなっているが、いずれ
一緒に戦っていこうと誓うのであった。

1203

さて、皆が格納庫に集まっている中、担任である小島空がやって来る。

空「実は、次の任務が来たんだけど...」
咲良「任務ですか?」

空が受けた第4中隊への任務というのは、幻獣やガストレアの
勢力圏となっている北関東のT県で行われている戦闘の
最前線への戦列に加わるようにという内容だった。

乃恵留「マジッ!?」
愛梨沙「最前線なんて、信じられな~い!」

最前線への投入と聞いて、乃恵留や愛梨沙は信じられないと
ショックを受ける。

ゴオ「北関東にあるT県か・・・そこの状況なら、俺も噂で聞いた事がある。
 幻獣やガストレアで犇めいていると...」
彩華「我々のような辺境の中隊も、戦列に加わるように辞令が来るとは
 それほど危険な地という事でしょうか?」
虎雄「ガストレアって、襲われたら自分もガストレアになるって化け物だろ?」
竹内「幻獣はもう、何度も見た事あるけどガストレアは見た事無いよなぁ」

この辞令に第4中隊はざわざわと騒ぐ。この地では幻獣との戦闘は
何度も行っているが、今の所ガストレアとの戦闘はまだ無い。

咲良「皆、不安になるのは分かるけど、これも命令だから従うしかないわ。
 でも、前向きに私達が頼られていると思って行きましょう」
乃恵留「・・・そうね。もしかしたら、素敵な彼が見つかるかもしれないし」
亜美「はい、中隊長殿。私達の力を見せましょう!」

不安になっている皆を見て、咲良は前向きな気持ちで勇気づける。
その言葉に刺激されて、皆をやる気を見せ始める。

真央「でも、その戦いに行っちゃったら、ここはどうなるの?」
空「それについては、青森第4中隊が帰還するまでの間、
 ダンナーベースの猿渡さん達とボルテスチームの皆が留守を
 するようにとの事だよ」
健一「俺達にも...」
杏奈「それじゃあ、皆が帰ってくるように頑張ってお留守番をしないとね!」
ゴオ「ああ、そうだな!杏奈」
咲良「・・・それじゃ、第4中隊、北関東戦線へ向かいます」

第4中隊がT県まで行っている間は、ゴオやボルテスチームが
留守番をする事となり、第4中隊は北関東のT県へと向かうのであった。


 
1204 
○一文字號、橘翔、大道凱→戦闘後、ゴーグルファイブと交流する。
○橘博士→號にブレイバーズの合流は遅れると伝える。
○Dr,ポチ、Dr.タマ→橘博士の言葉を補足する。
○赤間健一=ゴーグルレッド→ゲッターチームに感謝を述べる。
○黒田官平=ゴーグルブラック→ツインブリッジの修繕について話す。
○石田咲良→北関東で行われる最前線への任務を受ける。
○野口直也→栄光号、光輝号の整備を始める。
○工藤百華→野口の性格を峰一平に教える。
○岩崎仲俊→ゴオと杏奈の仲を羨ましがっていた所、葉月に連れてかれる。
○山口葉月→岩崎に整備を手伝うように連れて行く。
○上田虎雄→ガストレアの存在に不安になる。
○小島空→第4中隊に北関東へ行く任務を伝える。
○郷史朗=レッドワン→咲良や健一から、感謝される。
○新命明=アオレンジャー→ペギー松山と通信する。
○ペギー松山=モモレンジャー→新命明と通信する。
○猿渡ゴオ→青森第4中隊が留守の間の任務を引き受ける。
○剛健一→青森第4中隊が留守の間の任務を引き受ける。
○剛日吉→郷史朗に「ゲッターチームによろしくと伝えてほしい」と頼む。

【今回の新規登場】
○Dr.ポチ(ゲッターロボ號)
橘博士の助手。語尾に「~ワン」とつく。

○Dr.タマ(ゲッターロボ號)
橘博士の助手。語尾に「~にゃん」とつく。

○野口直也(ガンパレードオーケストラ 白の章)
18歳の青森第4中隊の整備班長。かなりのメカフェチで、メカを大切に
するように口うるさく言う。栄光号や光輝号に女性の名前を付けている。
咲良達が本部から無断で持ち帰ってきた光焔号のバランサーを再調整
して、戦力として使えるようにした。(因みに直也とかいて「みちや」と読む)

○岩崎仲俊(ガンパレードオーケストラ 白の章)
16歳の整備班員。女たらしで、山口葉月に世話になっている
天性の食客。葉月の事は母親のようなものと思っている。鉄の
胃袋を持っており、腐った物でも食べられる。石田咲良に惚れている。

○山口葉月(ガンパレードオーケストラ 白の章)
16歳の整備班員。幼い弟妹の母親代わりで、大柄な体格の割に
足が速い。

○工藤百華(ガンパレードオーケストラ 白の章)
16歳の整備班員。優しいだけの伯父の為に、魔性の女となる。
乃恵留や愛梨沙と行動を共にするが、2人のように咲良に反抗的というわけではない。


『忍び寄る真の敵の影』-2

作者・ティアラロイド

1205

→時空編/30世紀>3からの続き。

そして現代…。21世紀、新西暦189年

***東京・品川区某所・ランニングコース***

その日の早朝、まだ人通りの少ない時間帯。
浅見竜也はいつもの日課通りランニングに出かけていた。
そんな竜也が見たのは、目の前に倒れている
ピンク色でシニヨン付きツインテールにセットした髪の
小学生くらいの幼い少女だった。

ちびうさ「………」
竜也「…ひどい怪我だ!
 おい君! しっかりしろ!」

そこへ突然、竜也とちびうさを銃撃が襲う。

竜也「お前は…!?」

銃撃の主は、竜也と瓜二つの顔ながら、
オールバックの髪型に、竜也とは対象的な冷たい瞳をした
あの男だった!

リュウヤ「久しぶりだったな、浅見竜也。
 まさかこんなところでお前に会うとは思わなかったぞ」
竜也「リュウヤ隊長、どうしてアナタが現代に!?」
リュウヤ「そんなことはどうでもいい。
 その娘をこっちに渡してもらおうか」
竜也「この子をどうするつもりだ?」
リュウヤ「いいからさっと渡せ!
 さもなければ、貴様も殺す」

リュウヤはいきなり銃を竜也に向ける。

竜也「先祖の俺を殺せば、子孫の貴様も
 無事ではいられないんじゃないのか!?」
リュウヤ「フッ…この私を誰だと思っている。
 今の私はそんなタイムパラドックスなど超越した存在だ!」

持っていたレーザー銃で躊躇なく竜也を狙撃するリュウヤ。
かわした竜也は気を失っているちびうさを抱え、一目散に逃げ出す。
それを執拗に追跡するリュウヤ。

しかし、そのリュウヤの追跡を食い止めたのは
どこかから発せられた謎の強い衝撃波であった。

リュウヤ「これは…テレキネシスか!」

カッと目を見開くリュウヤ。
その先に立っていたのは、立折襟のスーツに身を固めた
精悍そうな男だった。

バロン「………」
リュウヤ「貴様…23世紀人か!?」

バロン影山――かつて東京を恐怖のどん底へと叩き落とした
シリコン生命体による犯罪組織デストラップの前線指揮官…とはあくまで
表向きの顔であり、その正体は23世紀から現代に飛来した未来人であり、
組織の総統フューラーすらも裏で操る真の黒幕でもあった。

バロン「フフ…何やら時空の波長の乱れを感じ取って
 ここまで来てみれば…。30世紀人がこの時代に
 いったい何の用だ?」
リュウヤ「ほざくな! コンピューター風情の
 下僕になり下がった下等人類が!」

リュウヤのレーザー銃の殺人光線と、
パロン影山の指先から発した閃光が激しくぶつかる!


***警視庁地下・ZAC本部***

凶悪化した都市犯罪の多発に対抗すべく、政府は警視庁直属特殊部隊ZAC(ザック、ZERO-SECTION ARMED
CONSTABLE 0課装甲警察部隊)を編成。織田久義キャップの下、ビットスーツと呼ばれる
パワードスーツを身に纏うサイバーコップたちが、日夜犯罪摘発に明け暮れていた。

エマージェンシーのサイレンが鳴り響く。

矢沢「レーザー銃で武装した男が銃を乱射しながら、
 サイコキネシストと見られる男と交戦しつつ、
 品川方面より移動中!」
北条「都市ゲリラか!? 毛利、西園寺、出動だ!」

1206

***品川近辺***

颯爽と現場へと出動したマーズ、サターン、マーキュリーの
3名のサイバーコップは、意外な人物との悪夢の再会を果たす。

マーズ「お、お前は…まさか!」
サターン「バロン影山!」

レーザー銃を乱射していたオールバックヘアの男と
交戦していたのは、宿敵・バロン影山であったのだ!

バロン「これはこれはサイバーコップの諸君。
 懐かしい顔に会えたものだ…」
マーキュリー「お前もやはり黄泉がえっていたのか!」
バロン「今は私よりもあの男の相手をした方が
 よいのではないのかな? このままだと犠牲者は増える一方だぞ」
マーズ「くっ…!」

バロン影山の言ったとおりだった。
周囲の物や人間を次々とレーザー銃を乱射して
排除しながら、まるで何かに取りつかれたように
執拗に竜也とちびうさを追跡するリュウヤによって、
被害は増える一方だった。

マーズ「悔しいがひとまずバロン影山は後回しだ。
 まずはあの男を追うぞ!」
サターン「マーキュリー、ブラックチェンバーだ!」
マーキュリー「ラジャー!」

近くの公衆電話ボックスへと駆け込んだマーキュリーは、
アカウント情報が記録されたカードを差し込み口に挿入し、番号を入力した。
すると都市の地下に張り巡らされたシューターを利用して、
本部に収納されている武装入りアタッシェケースが瞬く間に
地上へと呼び出されるのだ。

マーズ「ロックバスター、セットアップ!!」
サターン「ディスクラッシャー、セットアップ!!」
マーキュリー「スラッシュキャリバー、セットアップ!!」

実はこのシステム、ブレイバーズ出資スポンサーの特権として
三千院財閥も共用しているのだが、その話はまた別の機会に…。


◇  ◇  ◇


いつしか廃工場跡へと逃げ込んでいた竜也とちびうさは、
いよいよリュウヤによって追い詰められようとしていた…。

竜也「くっ…!」
リュウヤ「二人とも死ね」

竜也は抱えていたちびうさを横に置くと、
左腕のブレスレッドのボタンを押す。

竜也「クロノチェンジャー!」

竜也はタイムレッドへと変身した。

リュウヤ「フン…!」

するとリュウヤも静かに同じ赤いクロノスーツ姿へと変身した。
おそらくタイムレッドと同型のスーツなのだろう。
二人のタイムレッドは互いに長剣スパークベクターを交え激しく衝突する。
追いついてきたサイバーコップは、この光景を見て混乱した。

マーズ「あれは…確か未来戦隊タイムレンジャーのタイムレッドか!」

マーズのビットスーツに内蔵されたコンピューターに照会し、
目の前で戦っている人物を照合する。

サターン「どっちを攻撃すればいいんだ!」
???「…敵は向こうです!」

突然、どこからか女の声がした。

マーキュリー「誰だ!?」

セーラープルート「
――破滅喘鳴(デッド・スクリーム)!!
タイムイエロー「
――ボルバルカン!!

時空の杖の宝珠のタリスマンが発する烈風の波動と、
1秒間に10発連射される2連装の光弾が、
片方のタイムレッド(リュウヤ)を弾き飛ばした。

タイムレッド(リュウヤ)「ぐわあああっ!!」
タイムレッド(竜也)「ドモン…もしかしてドモンなのか!?」
タイムイエロー「竜也、詳しい話は後だ! まずはコイツを片づける!」
竜也とドモンは、ザンギャック第一次地球遠征軍とのレジェンド大戦以来の再会となる。
マーズ「事情はよくわからんが…タイムレンジャー、
 あとは俺たちに任せてくれ!」
タイムレッド(竜也)「サイバーコップ!」

マーズのロックバスター、サターンのディスクラッシャー、
マーキュリーのスラッシュキャリバーが、タイムレッド(リュウヤ)を
次々と突いては切り裂いていく。

リュウヤ「ぐわあああっ!!」

リュウヤの変身は解除され、その場に倒れこんだ。

1207

ちびうさ「ううっ…」

気を失っていたちびうさが目を覚ました。

竜也「気がついたのか、よかった」
プルート「スモールレディ、ご無事で…」
ちびうさ「プー、いえ…セーラープルート、来てくれたのね」

一方、北条たちは、リュウヤを締め上げて尋問する。

毛利「さあ、いろいろと話してもらおうか?
 あの女の子を狙っていた目的は何だ?」
北条「誰の命令で動いていた? それともお前の単独犯行か!?」
西園寺「どうせコイツもGショッカーの手先ですよ」

西園寺の言葉を聞いたリュウヤは思わず鼻で笑ってしまう。

北条「何がおかしい…?」
リュウヤ「馬鹿め。我が主はそんな連中ではない」
ドモン「なんだと?」
リュウヤ「私に命令を下していた御方は――」

そこまで言いかけた時、なんと突然リュウヤは人体から発火した。
火は瞬く間に全身へと燃え広がり、リュウヤの断末魔の悲鳴と共に、
たちまち灰と化してしまったのだった。

リュウヤ「お、お許しを~!! ギャアアァ―!!!!!!!」

竜也「バ、バカな…」
毛利「いったい何が起こったというんだ…」

いつの間にか傍にはバロン影山が立っていた。

バロン「フフフッ…やはりそういうことか」
西園寺「バロン影山!」
北条「貴様、いったい何を知っている!?」
バロン「私も全てを把握しているわけではない。
 だがこれだけは言える。お前たちは何か大きな勘違いをしている」
ドモン「どういうことだ?」
バロン「お前たちブレイバーズの真の敵は
 Gショッカーなどではないということだ」
竜也「なんだって!?」
バロン「いずれまた会う時もあるだろう。
 それまでさらばだ。ブレイバーズの諸君!」
北条「待て!」

何かを悟ったかのように、バロン影山は姿を消した。

ちびうさ「これって…」
竜也「真の敵はGショッカーではない。いったいどういう意味なんだ…」


***???***

限りなく暗黒に近い紫色と灰色に混じりあったような空。
明らかに地球とも、また三次元銀河宇宙のどことも違う
謎の広大な空間にそびえる巨大な宮殿のような建造物。

その奥のある一室…。

正面に設置された大きな水晶球のモニターを介して、
地球で起こっていた一部始終を監視していたローブ姿の男が
静かにこう呟いていた。

アークシセイザー「愚か者めが…」

1208

○浅見竜也→現代に来たちびうさを救助。リュウヤと交戦。
○ドモン→ちびうさとリュウヤを追って現代にやってくる。
○ちびうさ→リュウヤに追われていたところを、浅見竜也に救われる。
○セーラープルート→ちびうさとリュウヤを追って現代にやってくる。
○北条明→浅見竜也(タイムレッド)に加勢してリュウヤと交戦。バロン影山とも遭遇。
○毛利亮一→浅見竜也(タイムレッド)に加勢してリュウヤと交戦。バロン影山とも遭遇。
○西園寺治→浅見竜也(タイムレッド)に加勢してリュウヤと交戦。バロン影山とも遭遇。
○矢沢大介→出動命令をマーズたちに伝える。
●リュウヤ→アークシセイザーの命令で動いていたと思われるが、口封じで消される。
●バロン影山→リュウヤと交戦。サイバーコップとも遭遇。去り際に意味ありげな一言を言い残す。
●アークシセイザー→余計な事を喋りかけたリュウヤを遠隔操作で始末する。

【今回の新規登場】
○矢沢大介(電脳警察サイバーコップ)
 ZACのコンピューターオペレーター。情報収集及び解析を行い、作戦を補佐。
 コンピュータや科学に関する知識が豊富。

○浅見竜也=タイムレッド(未来戦隊タイムレンジャー)
 日本の政財界に強い影響力を持つ浅見グループのの御曹司。
 父の跡継ぎを断り、親の敷いたレールに乗ることを良しとせず、
 偶然から時間保護局の4人を救ったことにより、独立して、
 彼らとともに便利屋「トゥモローリサーチ」を開業しつつ、
 未来犯罪者ロンダーズファミリーと戦った。「たとえ歴史は変えられなくとも
 自分たちの明日くらいは変えられる」を信念とし、自らの道を歩もうとする。

○ドモン=タイムイエロー(未来戦隊タイムレンジャー)
 30世紀の格闘技グラップの元プロ選手だったが、試合出場を放棄して追放され、
 時間保護局に転がり込んだ。トゥモローリサーチでは「護身術コーチ」を担当。
 7人兄弟の大家族で、一本気な性格の人情家。現代では「土門太郎」と名乗る。
 タイムレンジャーを追い回すスクープ記者 森山ホナミといつしか恋に落ちるが、
 彼女との間にできた自身の子を見ることなく、30世紀へ帰還した。
 その後、時間保護局でかなりの地位に出世したらしく、海賊戦隊ゴーカイジャーによって
 意外な形で過去の時代に生きる我が子の息災を知ることとなる。

●バロン影山(電脳警察サイバーコップ)
 犯罪組織デストラップの前線司令官。実はデストラップの真の支配者であり、
 ジュピター(武田真也)やルシファーと同じ23世紀出身の未来人。強力な光線を放つ指輪が武器。
 最終決戦時に総統フューラーの頭脳を取り込んで超人類となった。

●アークシセイザー(闘争の系統オリジナル)
 堕神の一族の大審官。堕神王リリスに次ぐ実力者である。全宇宙・全次元各地で時空クレバスや黄泉がえり現象を発生させ、背後から見えない糸で戦乱をコントロールしている黒幕と目されるが、まだ誰もこの男の存在を知らない。
 ブレイバーズを陰ながら支援する星間評議会高官ジュリアス・カミュエルとは声色、雰囲気、背格好の全てにおいて酷似しているが、現在のところ両者の関係は不明。


『天凰輝シグフェル 前章』

作者・ティアラロイド

1209

***京南大学附属病院***

うさぎ「――ちびうさ!?」
ちびうさ「うさぎ~!」

急報を受けて病院に駆けつけて来た月野うさぎたちは、
病室のベットの上でパジャマに着替え、横になっていたちびうさと再会した。
もうすっかり元気な様子だが、うさぎは思わずめいいっぱい
ちびうさを抱きしめたのであった。

うさぎ「えっと、確か浅見…竜也さんですよね。
 ちびうさの危ないところを助けてもらって、
 本当にありがとうございました!」
竜也「大したことはしてないよ。それよりも
 特にどこも怪我がなくてよかった」

うさぎが深々と頭を下げて礼をする一方、
レイと美奈子は、長身イケメンの竜也をまるで
女豹が獲物を狩る目のようにじっと見つめている。

レイ「………(この人が未来戦隊タイムレンジャーのリーダー、
 タイムレッドの浅見竜也さん。確か浅見グループの御曹司だって
 聞いてたけど…)」
美奈子「………(玉の輿のチャ~ンス!)」
竜也「……???」

そこへ冥王せつなが、うさぎたちに病室の外へ出るよう促す。

せつな「うさぎさん、皆さん、少し外でお話が…」
うさぎ「えっ?…あ、はい」
愛「ここは私が見ていますので、安心してください」

ちなみにちびうさの病室の担当ナースは、この病院に勤務している
セイザーパイシーズこと魚住愛だった。

亜美「よろしくお願いします」


***同病院・一階敷地内の庭園***

ここは、入院している患者たちが主に散歩などに利用する遊歩道である。
ここでせつなは歩きながら、うさぎたちと本題に入る。

せつな「30世紀で大きな時空の乱れが観測されました。
 おそらくこの時代で起こっている時空クレパスの発生現象に
 起因していると思われます」
亜美「30世紀でもそんなことが…」
せつな「そこで私はクィーンの内命を受け、
 時間保護局のドモン隊長と極秘に調査を続けていたのです」
まこと「そう言えば、そのドモンって人は?
 その人も竜也さんと同じタイムレンジャーなんだろ?」
せつな「ドモン隊長でしたら、すでに30世紀に帰還されました」
まこと「えーっ!? もう? 戦友だった竜也さんに
 何の挨拶もなしに? なんか冷たいな…」
竜也「そんなことはないよ。時間保護局の人間は
 不必要に別の時代の人間との接触は禁じられているらしくてね。
 職務である以上、仕方がないさ」
まこと「そういうもんかなあ…」
竜也「………」

まことの言葉に、ただ黙ってうつむく竜也…。
共に死地を潜り抜けた友である自分と久々に言葉を交わすのは元より、
ドモンにはこの時代に残してきた愛する妻子がいるのである。
きっと叶うものならば、せめて一目なりとも妻子と会って
言葉を交わし、うんと抱きしめたかったであろう。
竜也は同じタイムレンジャーの仲間であるからこそ、
ドモンの本音の気持ちが痛いほどわかっていた。

せつな「あのリュウヤという男は、スモールレディが
 現代の人間に接触しようとするのを阻止しようとしました。
 リュウヤの背後にそれを指示した何者かがいるとすれば、
 現代に住む人間達…特に貴女方ブレイバーズに、
 30世紀でも起こっている時空の異変を知られると、
 大変都合が悪い人物が存在するということでしょう…」
美奈子「それってGショッカーじゃないんですか?」
せつな「Gショッカーでは、スモールレディを襲わせた
 動機の説明がつきません。そして今現在で考えられることは
 ただ一つ。この時代で起こっている時空クレパス現象や
 黄泉がえり現象は、決して自然現象などではありません。
 どこかの何者かが人為的に起こしているということです」

せつなの口から衝撃の発言が告げられる。
動揺するうさぎたち。

うさぎ「そんなことが…!?」
竜也「もしかするとそれが…あのバロン影山とかいう奴が
 言っていた、俺たちにとっての"真の敵"なのか?」
せつな「それはまだわかりません。私はこれより30世紀に戻り、
 時間保護局と共に調査を続けます。うさぎさんたちも
 くれぐれもご用心を!」

1210

一方、その頃…。

***海防大学付属高校***

東京湾岸メガロシティにある、海防大学及び同付属高校。
中心部のメガロビルから数km離れた位置にあり、
将来の外交や通商、国防、そして海洋科学のエリートを育成する名門校である。
老朽化した教養学科校舎の代わりとして、建設中の新校舎は
3月末には完成予定であり、4月からの新入生の学び舎となる。

とりわけ、その新校舎は直線距離で3kmはあり、
内部は4つのゾーンに仕切られている。
全ての空間の通路はアトリウム様式の通路で
繋がれている。

明日の完成記念式典を前に、今日は完成部分が在校生徒に一足早く、
お披露目される日であった。

慎哉「…にしても、なんで実際の完成より早く
 完成記念式典を行うんだろうな」
光平「たぶん明日のK国大統領の来日に
 合わせてるんだと思うぜ」

牧村光平と朝倉慎哉――二人とも同じ海防大付属に通う高校2年生。
部活も同じテニス部という親友同士であり、
訳あって光平は慎哉の朝倉家に居候している身である。

話に上ったK国大統領とは、昨年病にて急死した前大統領に代わって
新しく就任した人物であり、それまで続いていた軍事政権から
民主政治へと転換した切れ者と評判の人物だ。
新校舎完成記念式典の一番のVIP招待客でもある。

光平「50年以上続いていた軍事政権から民政に移管した
 大統領は、次の仕事に教育面を考えたんだよ。それで
 日本の教育制度を参考にしたいと日本政府に打診してきたのさ」
慎哉「でもなんでわざわざウチの学校なんだろう」
光平「K国大統領は、ウチの学校の理事を務める
 後原元外務大臣と昵懇の仲だからな。たぶん後原氏が
 勧めてきたんじゃないのかな」
慎哉「やけに詳しいじゃんか?」
光平「フィリナからの受け売りさ。昨日もメールで
 やり取りしたばっかだし」
優香「光平くん! 朝倉くん!」

一人の女子生徒が、セミロングの髪を揺らしながら
光平と慎哉の二人の姿を見つけて側に駆け寄ってきた。

沢渡優香――光平や慎哉と同じく海防大付属高に通う2年生。
同校の生徒会副会長を務め、女子陸上部きってのエースでもある。
ちなみに光平と優香はつきあっており、自他共に認める
お似合いのカップルとなっている。

慎哉「あっ、沢渡」
光平「よっ、優香」
優香「二人とも随分探したわよ。ここにいたのね」
光平「新校舎は広いからな。迷うのも無理ないよ」
慎哉「じゃ、お邪魔虫は退散するよ。お二人ともごゆっくり♪」
優香「あ、朝倉くん…!?」
光平「ま、待てよ慎哉!」

慎哉はニヤニヤ笑いながらその場を去る。

光平「…ったく、慎哉のやつ、余計な気回しやがって」
優香「どうするのこれから?」
光平「せっかくだからホールの方まで回ってみるか」

巨大な吹き抜けで外光が入るアトリウム廊下の下を歩む光平と優香。
途中で休憩スペースの自販機で、光平は二人分のコーヒーを購入する。

光平「はい、優香」
優香「ありがとう」

二人でコーヒーを飲んでいると、ふと光平は
廊下の向こうの隅で何やら話し込んでいる
白衣を着た研究室男性職員と大人の女性の姿が目に留まった。

研究室職員「………」
セーラ「………」

光平「………(一見すると、さえない中年の研究室職員と
 美人教師の図か。でもあんな奇麗な人、ウチの学校にいたか?)」
優香「どうしたの、光平くん?」
光平「…あ、いや、別に」

1211

その時、反対方向から何やらざわめき声が…。

生徒A「おい見ろや」
生徒B「あの男、なんか妙なものでこっちを狙ってるぞ」
生徒C「近くで同好会がサバゲーでもやってるのかな?」

光平「どうしたんだ?」

光平が窓から外をのぞくと、そこには大筒を抱えて
こちらを伺う怪しいサングラスの男が…!

光平「――(本物のロケットランチャー!?)」

次の瞬間、ロケットランチャーの砲口が火を吹いた!

                  ,..._
          ,.r-、 ,ry   ヒ;;;::}
      ィt:、 ,:'::::// '''´   ,、.、  ,..,..._
      {:::}::}/::::r'ノィー::、   ヾ、゙、//::::jr;::、
     ,rヾ''"ゞ=' 'ヾ.....⊃'   ヽ''ヾ:、::;' `''",.=-、
     ー'’._ ,r'う {::jj ,.、、 _,...::::::''ヽ  ,.,´  {{::::::::ヽ.
    ,;'"'" ̄ヾ´,.., r::';;〃l'l::::;;:::::::f'_ ヾ'〃) `ヾ::::::/
   〈::::::::/ノ ヾ,jヽ='. ,,ヽへ-(ヾ::゙、 ゞ',.,.、 //::::/
    ヾ:::::゙、゙、 {{) {:::jj' ",,,,、 c;、ヽ='  ゙、::゙;ヾヾ/_
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     ゙ー' /:::::;}}`",.,rt:、゙´ //::::/ ゙ー',.r::::、  _`'’
     r:::、、ヾ-''n.く:::;:::゙、゙、 ヾー' { ̄:::::ノ!,ィ'r':::|
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1212

***内閣府***

土橋「冴島さん! メガロシティの海防大付属高校の新築校舎で
 爆破事件が起きたとの緊急連絡がたった今――」
冴島「やはりスメルスの工作員ですか?」
土橋「おそらく九分九厘…」

内閣府の危機管理センターにいる土橋竜三・内閣安全保障室長と
冴島十三・内閣危機管理監の許に情報が届いたのは、実際に爆破事件が
起こってから3分後の事だった。

冴島「土橋さん、申し訳ないが私に代わって現場の指揮をお願いしたい」
土橋「わかりました。それで冴島さんはどちらに?」
冴島「元外務大臣・後原代議士のところですよ」

冴島はエレベーターへと乗り込み、地下の駐車場へと向かった。


***海防大学付属高校・新校舎第一ゾーン***

光平「優香! 怪我はないか?」
優香「…光平くん。ううん…私なら大丈夫よ」

光平は、爆風で床に伏せていた優香をゆっくりと抱え起こす。

光平「いったいアイツは何者だったんだ!?
 学校にテロなんかしかけてどうするんだよ!」

すると、先ほどの爆撃で床に開いた穴に、
一人の女性が必死に摑まりながらぶら下がっている
光景を目にした。さっき研究室の中年職員と
何やら話し込んでいた女性だ。

セーラ「くっ……」

光平「俺はあの人を助ける。ここは危ないから
 優香は一刻も早くここから外に出るんだ!」
優香「でもっ!」
光平「いいから早くしろっ!!
 俺も後から必ず行くから!」
優香「…わかった。でもきっとよ!」

優香は光平に一喝され、
不安を隠しきれない様子ながらも走り去っていく。

光平「さてと…」

優香が無事にこの場を離れたのを確認した光平は、
穴へと近寄り、ぶらさがっていた女を引っ張り出す。

光平「よっと…」
セーラ「ありがとう…と言いたいところだけど、
 君、早く私から離れなさい! 敵に私の存在が
 バレたのよ! さっき廊下がロケットランチャーで
 吹き飛ばされたのはそのせいよ!」
光平「敵…?? いったいなんのことだよ?」
セーラ「キミ、名前は?」
光平「人に名前を聞く時は、まず自分から名乗る
 もんじゃないですか?」

この非常時にも妙に落ち着き払った光平の態度に、
女――セーラ・深町は内心呆れつつも、どことなく興味を覚える。

セーラ「…OK、わかったわ。私の名はセーラ深町。
 東亜新聞社会部の記者よ」
光平「セーラ・フカマチ…? 日系人の方だったんですか?
 俺は牧村光平、ここの高校2年生です」
セーラ「光平、ゆっくり説明している暇はないわ。
 今の爆発で道案内役の男も吹き飛ばされたわ」
光平「……(道案内役…? さっきまで一緒にいた研究室職員の男か)」
セーラ「キミもまだその若さで死にたくはないでしょう?
 さあ!早くここから立ち去りなさい!」

???「そうはいかんぜ、CIAのお嬢さん!」

1213

気がつくといつの間にか、光平とセーラ深町は
清掃業者の制服を着た男たちに完全に周りを取り囲まれていた。
そしてその男たちの手には銃が握られ、その銃口は光平とセーラの二人を狙っている…。

光平「清掃業者の人……じゃないよな(汗」

男A「女狐め、ゆっくりと手を挙げろ」
男B「そして後ろを向け。小僧、お前もだ!」

セーラ「…(光平、合図したら伏せるのよ)」
光平「…(えっ?)」
セーラ「…(Good luck!!)」

セーラは大人しく両手を挙げるとみせかけつつ、
男たちに聞こえないように小声で光平に合図し、
自身の髪の中に隠していた超小型爆弾を男たちに投げつけた!

セーラ「伏せて!」
光平「うわ!」

ドオオオンッッ!!!!

爆発と共に炎上し、残った跡には
男たちの爆死体が転がっていた。

セーラ「やったわ…」
光平「さっきCIAとか言ってましたよね。
 やっぱりタダのブン屋さんじゃないんでしょ?」
セーラ「そこまでよ。それ以上無用な詮索をすると、
 私はキミのこともこのまま帰すわけにはいかなくなるわ」
光平「………」

その時、轟音と共に天井ドームのシャッターが閉じ始めた。

セーラ「なにっ!?」
光平「きっと今の爆発を警報装置が感知して、
 シェルターシステムが作動したんだ!」


***同校舎正面玄関前・外***

慎哉「いったい何がどうなってんだ!?」

他の生徒たちと一緒に建物の外に避難していた慎哉は、
新築校舎全体が巨大なシェルターに包まれていくのを目の当たりにしていた。
そこへ、優香が泣きじゃくりながらすがる様に慎哉のところへ駆け寄る。

慎哉「…沢渡!? 光平は?…光平はどうしたんだよ!?
 泣いてちゃわかんないだろ! しっかりしろ!」
優香「光平くんが…光平くんがまだあの中に!!」
慎哉「なんだって!!」

1214

***海防大学付属高校・新校舎第一ゾーン・正面玄関前***

正面玄関の出入り口は、完全に壁で閉ざされていた。

この新校舎は災害などの非常時に、近隣住民の避難所としても活用するため
完全シェルターシステムが導入されていた。核攻撃にも耐えられるという設計である。
今や新校舎部分は完全に鉄壁によって隔離されていたのである。

セーラ「完全に閉じ込められたわね…」
光平「これからどうするんです? セーラさん」
セーラ「この緊急事態によく笑っていられるわね」
光平「そりゃあ、一人ぼっちで閉じ込められたならともかく、
 二人ならまだできることもいろいろありますからね。
 よかったなあ。もし俺一人だけだったらどうしようかとか思ってさ」
セーラ「………」

光平の言葉に苦笑するセーラ。絶体絶命の危機に直面しても、
希望を捨てずに楽観的態度を保っていられる――
――そんな人間を、セーラ深町も決して嫌いではなかった。

セーラ「しかたないわね、ついてらっしゃい!
 その代わり、私の足を引っ張ったら承知しないわよ」
光平「はい!」


***同校・新校舎第二ゾーン***

セーラ「さっき私たちを襲ったのはスメルスの工作員よ」
光平「スメルスって、あの多国籍企業の?」

多国籍企業とはあくまで表向きの顔、
その実態は、世界の武器売買の約60%のシェアを持つ、
死の商人のスメルス。

スメルスは各国に違法な兵器売買ルートを幾つも抱えているが、
数ヶ月前にCIAによってその大手のものを潰された。
しかし最近になって別ルートができたという情報が流れたのである。

光平「それってまさか日本!?」
セーラ「半分当たりよ。正確には日本を中継点にして
 K国へと繋がるルートよ」
光平「K国だって!? あそこは新任の大統領の力で
 民主化したんじゃ!?」
セーラ「50年以上続いた体制がそんな簡単にひっくり返るわけがないじゃない。
 国際政治の世界はそんなに単純じゃないわ」
光平「………」
セーラ「それに今の大統領は、実は軍部と裏で手を組んでいるって話よ。
 民主化自体が、国際社会からの非難から目を逸らすための茶番だったってとこかしら」

スメルスは国際社会の監視の目を掻い潜って兵器を輸出するために、
スパイ天国と呼ばれている日本を中継点として利用するつもりだという。
K国大統領は一日だけ尤もらしい理由をつけて来日し、ブツを受け取って
何食わぬ顔で自国へと戻る段取りらしい。

光平「明日の式典を利用するつもりなのか!?」
セーラ「日本の内調との合同捜査の結果、例のブツは
 この新校舎の第三ゾーンの東側壁近くの柱の中に
 隠してあるという確かな情報を掴んだのよ」
光平「そのブツっていうのは?」
セーラ「新型ミサイルの集積回路よ。ANS対艦ミサイルよりも
 さらに改良されたものよ。低コストで破壊力は2倍に跳ね上がるわ」

1215

光平「急ごう、セーラさん! 少し回り道になるけど、
 2階を通って第三ゾーンへ――」
男C「待て、ブツのところへは行かせん!」
男D「さっきはよくもやってくれたな女狐。
 倍にして返してやるぜ」
セーラ「――!!」

他のスメルス工作員たちに見つかってしまう光平たち。

光平「よせっ!!」
セーラ「光平!?」

光平は必死の形相で身を挺して、男たちの銃口から
セーラを庇おうとする。その時、辺り一帯に
コンピューターの音声が鳴り響いた。

電子音声「キケンキケン!!…銃器反応有リ。
 スミヤカニ対処セヨ…」
男E「なにっ!?」
男F「ぎゃあああ!!!!」

突然天井の警報装置からレーザーのような光線が発射されて、
工作員たちを残らず焼き殺してしまった。
あまりの惨状を目撃して呆然となる光平。

光平「どうなってるんだ…」
セーラ「シェルター化でコンピューターの反応が敏感になってるのよ。
 これはもう使わない方がよさそうってことね…」

セーラは自分の持っていた銃を床に投げ捨てた。


***同校舎正面玄関前・外***

土橋「おおー、君たちか!」
慎哉「あれっ、もしかして土橋さん?」

現場で指揮を執るべく到着した内閣安全保障室長・土橋竜三。
光平たち3人は、光平の父親の仕事の関係で、土橋とは以前から面識を持っていた。

土橋「慎哉君、優香ちゃん、光平君の姿が見えないがどうしたんだ!?」
優香「土橋さん! 光平くんがまだあの中に!」
土橋「なんだって! そりゃマズイな…」
慎哉「どういうことですか!?」
土橋「今専門家から報告を受けたばかりなんだが、
 どうもあの新校舎には手抜き工事の疑いがある」
優香「…手抜き工事!?」

土橋の話によると、新校舎のセキュリティコンピューターは
予算を削ったせいで中古の欠陥品が使われ、中の人間よりも
まずシェルターそのものを守ることを最優先に作動するという。

土橋「…つまりだね。言いにくいんだが、中の人間を殺してでも
 シェルターだけは守れというコマンドが動き出している状態なんだ」
慎哉「なんだって……」

今の話を聞き、呆然となり立ち尽くす慎哉。

優香「土橋さん!お願いです!光平くんを助けてください!!」
土橋「優香ちゃん、落ち着くんだ!」
慎哉「…土橋さん、指令車のコンピューターをお借りできますか?
 それと新校舎の正確な見取り図を…」
土橋「どうするつもりかね?」
慎哉「いいから早くっ! 光平の命がかかってんだ!!」

1216 *

**同校・新校舎第三ゾーン***

セーラ「あったわ、集積回路よ」

セーラ深町は、柱の隠し扉から集積回路の納められた小箱を取り出す。

光平「こんな小さなものが兵器に…?」
セーラ「世界一のミサイルが出来るわ。これがK国軍部の手に渡ったら
 間違いなく西側の安全保障は脅かされたでしょうね」

これでセーラ深町の任務は完了――となるはずであったが、
二人ともさっきから妙な息苦しさを感じていた。

セーラ「おかしいわね…。少し目眩がするわ」
光平「妙だなあ、換気はちゃんとされてるのに…」

換気扇の方を見やる光平。換気扇は確かに作動している。
…いや、作動しているとは言っても、それは急激に中の空気を
外へ吸い出しているように見えた!?

光平「まさか!」
セーラ「どうしたの?」
光平「シェルター内の空気が凄い勢いで外に排出されているんだ!
 道理で息切れするはずだ! このままだと俺たちは窒息する!」
セーラ「そんなバカな!」
光平「きっとコンピューターが狂って誤作動を起こしたんだ。
 さっき第二ゾーンのところで銃を持った男たちをレーザーが
 狙って焼き殺しただろ。正常なら怪我をさせる程度で済ます事だって
 出来たはずなのに」
セーラ「今のセキュリティシステムは私たち人間より
 シェルターそのものの方を守ることを最優先されてるってことね」

慎哉@館内放送「その通りだ、光平!」

光平「――慎哉!?」

いきなり館内放送で鳴り響いた親友の声に驚く光平。

慎哉@館内放送「よかった。俺の声が聞こえるんだな?」
光平「慎哉、今どこにいるんだ?」
慎哉@館内放送「土橋さんに指令車を借りて、災害緊急回線を使って
 館内放送を利用して話してる」
光平「土橋さんもそこに来てるのか?」
土橋@館内放送「いいかね光平君、君たちのいる空間は
 あと20分ほどで空気がなくなる。その前になんとしても
 脱出してくれ。第一ゾーンでの火災のせいで、
 コンピューターが導き出した結論が、全館エアーの排出だ」
光平「やっぱり…」
慎哉@館内放送「第四ゾーンの天井裏に回転空調がある。
 その空調システムにこっちから割り込んで一分間だけ停止させる。
 空調用のプロペラが停止したら、そこから外に出るんだ!
 時間は今から10分後、4時5分ジャストだ!」
光平「わかった。今から回転空調に向かう。
 慎哉、信じてるぜ…!」
慎哉@館内放送「ああ、任せとけって!」
セーラ「急ぎましょう。あと9分30秒しかないわ!」

1217

***同校・新校舎第四ゾーン天井裏***

必死に走った光平とセーラ深町は、
なんとか時間内に梯子を登って目的地へと到着した。

セーラ「あそこが回転空調ね…」
光平「ハァ…ハァ…」
セーラ「キミには悪いことをしたわね。
 ただの学生なのにこんなことに巻き込んでしまって…」
光平「そういう話だったら、無事にここから出た後に
 ゆっくり聞きますよ」
セーラ「まだ4時2分。3分も余裕があるわ。
 どうやら間に合いそうね。行きましょう」

その時、銃声が響き、セーラ深町がその場に倒れこんだ。
左肩からは血が流れている。

セーラ「…くっ、私としたことが油断したわ。
 まだ敵が残っていたなんて…」
光平「セーラさん!?」
セーラ「光平、これを!」

セーラ深町は集積回路の入った小箱を
光平に投げて渡した。

セーラ「それを持ってあなただけでも逃げるのよ!」
光平「ここまで来て何言ってんだよ…」
セーラ「怪我をして動けなくなったのは、諜報員としての私のミスよ。
 私の事はもういいわ! 時間がないのよ! 集積回路を持って脱出を!
 私の代わりに使命を果たすのよ!」
光平「うるせえ! 使命なんざ知るか! 俺はアンタと一緒に脱出する!!
 いいから黙ってろ!!」
セーラ「…光平」

光平は怪我をしたセーラ深町を抱きかかえて脱出しようとする。

セーラ「光平、後ろ!!」
光平「――!!」

光平は背後から襲いかかってきたスキンヘッドの大男を
すかさずキックで蹴り飛ばす。

男G「ぐわあああ!!」
光平「セーラさん、悪いけど一人で先に空調のところに行っててくれ。
 時間がない。俺はコイツをなんとかする…」
男G「バカめ、逃げられると思っているのか!
 お前たちはここで一緒に死ぬんだ!」

光平はスキンヘッド男と殴り合いの死闘を展開する。

光平「……ったく、酸欠寸前だっていうのに
 アクションはきついぜ」
男G「小僧、学生の分際でなかなかやるな…。
 格闘技の心得でもあるのか?」
光平「少々ね…」
男G「だがそこまでだ!」

スキンヘッド男はがっしりとした両手で光平の首を掴み、
ぐいぐいと締め上げていく。

光平「うわあああ…!!」
セーラ「光平!」
光平「…セーラさん、来るな!…行くんだ!」

その時、4時5分ジャスト、空調の大型プロペラが止まった。
隙間からは充分人間が潜り抜けられるほどの大きさである。
プロペラが止まっている時間は60秒間だけ…。

光平「…慎哉のやつ、やったんだな。セーラさん、
 そこから早く脱出しろ…!!」
男G「人の心配よりまず自分の心配をしたらどうだ…?」
光平「いーかげんに…はなせ…こいつぅぅっっ!!!!」
男G「なっ? ぐわあああ!!!!」

光平は残された渾身の力を振り絞り、
スキンヘッド男にパンチをお見舞いして振り解くと、
脱出口へと走る!

セーラ「光平、急いで、あと10秒よ!」

10……9……8……7……

男G「………」

倒れていたスキンヘッド男がむっくりと立ち上がる。
そして追ってくる!

6……5……4……

セーラ「飛んで!」
光平「うおおおおっっっ!!!!!」

3……2……1……

男G「ギャアアァァ――!!!!」

光平「………」
セーラ「…助かったわ」

無事に外へと脱出したセーラ深町と牧村光平の二人。
しかし、スキンヘッド男だけは間に合わず、
高速回転を再開したプロペラの餌食となり、
無残なミンチ状に…。

光平「………」
セーラ「……気にすることはないわ。下手をしたら
 私たちが殺されていたのよ」
光平「そうですね……」

新校舎の屋外へと出て地上へと降りた光平とセーラを、
涙で顔を濡らした慎哉と優香、そして土橋竜三が温かく出迎えた。

1218

***元外務大臣・後原惟継邸***

後原「海防大学付属高校で破壊工作が起きた?」
冴島「はい」

衆議院議員・後原惟継(うしろばら・ただつぐ)。
野党第一党である主民党の現・副代表であり、
主民党政権時には外務大臣も歴任していた、政界の大立者である。

冴島「後原先生は明日、この学校の新校舎の式典セレモニーに
 出席なさると伺っておりますが?」
後原「冴島君、わざわざそんなことを報せに来たのかね?
 内閣危機管理センターも暇なようだね。秘書に電話してくれれば
 済むことなのに」
冴島「………」
後原「だいたい私はあの高校に理事として確かに名を連ねているが、
 実態としては名義を置いているだけでね。新校舎や式典にも
 ほとんど関心はないんだ。K国大統領がどうしても出席したいと
 仰るので、それに随行するだけでね。私にとってはその後の
 大統領との会食の方が重要なんだ」
冴島「新校舎のシェルター建設における我々が計算した総経費と、
 先生が建築会社に発注した見積もりには随分と差額があります。
 よくあそこまで安く見積もれましたね?」
後原「何が言いたいのかね?」

急に後原の顔つきが変わった。

冴島「浮いた分の不明金、次の選挙の資金にでもしましたか?
 それともまだどこかにプールしてあって、明日来日予定の
 K国大統領への手土産になさいますか?」
後原「君、妙な言いがかりはやめてもらおう。
 名誉毀損で訴えるぞ!」
冴島「この上は単刀直入に申し上げます。
 K国へのこれ以上の接触・介入はやめていただきたい」
後原「それは命令かね?」
冴島「貴方のためです」

冴島は話を続ける。

冴島「K国の民主化は表向き。実際は裏で大統領が軍部と今も癒着している。
 そのために最新兵器をスメルスから直に安く購入したいと考えた」
後原「………」
冴島「それで白羽の矢を立てたのが日本。K国は日本を経由して
 スメルスと取引するつもりです。そのブツはすでに我々が回収しました」
後原「なっ…!?」
冴島「貴方の外交手腕は剣総理も大変買っておられます。
 こうして野党に転じられた今も、貴方は国際政治に多大な影響力をお持ちだ」
後原「くっ……」
冴島「ですから自重していただきます。貴方に拒否権はありません。
 こちらはいつでも新校舎建設の使途不明金における件を
 地検特捜部に提出できる用意はできておりますからな」

後原代議士はがっくりと無言で崩れ落ち、
それを見届けた冴島十三は後原邸を後にした。

1219

***メガロシティ署***

今回の事件を無事に切り抜けた光平たち。
慎哉などは「感謝状がもらえるかも」と期待していたが、
現実はそう甘いものではなかった。

慎哉「なんだって!?」
セーラ「今日見聞きしたことは、一切全て
 きれいさっぱりと忘れなさい」
慎哉「なんだよそれ! あれだけ人を巻き込んでおいて、
 出てくる言葉がそれかよ!」
セーラ「忘れなさい!」
慎哉「うっ…」

セーラの一喝でたじろぐ慎哉。

光平たち3人は、当事者として警察の取調室に呼ばれ、
事件の事は一切部外者に口外しないよう圧力を加えられていた。

優香「私たちは事件には一切関わらなかったことにしろと言うことですか?」
セーラ「その通りよ。それがあなたたち自身のためでもある」
光平「慎哉、仕方ないよ。言うとおりにしよう」
慎哉「光平…」
光平「セーラさん、今日は大変だったけど
 一緒にいられて楽しかったですよ。
 またお会いできる日を楽しみにしています」
セーラ「私もあなたに会えて本当によかったわ、光平。
 でも二度と会うことはないでしょうね。それがあなたたちの
 ためでもある…」

署の玄関で、解放されて帰宅する光平たちを見送るセーラ深町。
そこへ車に乗ってやってきた冴島十三が降りてくる。

冴島「セーラくん」
セーラ「冴島危機管理監、どうやらそちらは終わったようですね」
冴島「ああ、たった今全てを片付けてきた。明日来日する予定だった
 K国大統領も、急遽来日を取りやめたそうだ」
セーラ「そうですか。今日、とても勇敢なジャパニーズボーイに
 会いましたわ」
冴島「…ジャパニーズボーイ?」
セーラ「もう二度と会うことはないだろうと伝えましたけど、
 不思議ですね。あの少年にはなぜかまたどこかで再会するような
 気がするんです…」

1220

翌朝。

朝の登校風景…。
自転車に乗った光平と慎哉は、通学路の途中で優香と合流し、
学校へと向かう。

慎哉は昨日の警察署での事がまだ不満らしく、膨れっ面である。

慎哉「それにしてもあのセーラ深町とかいう女。
 本当にムカつくぜ。顔を思い出しただけでも腹が立つ!」
光平「まだ怒ってるのか慎哉。いい加減許してやれよ。
 あの人だって仕事なんだからさ…」
慎哉「光平はホント人が良すぎるよ」
優香「………」
光平「…優香?」

光平は、先ほどから暗い表情で押し黙っている優香を気遣い声をかける。

優香「昨日、光平くんや朝倉くんがあんなに頑張っていたのに、
 私…ただ見ているだけで何も出来なかった」
光平「そんなことを気にしてたのか。気にすんなよ。
 普通あういう状況に巻き込まれたら、何かできる人の方が
 少数派だと思うし、俺だってただがむしゃらに突っ走ってた
 だけなんだからな」
優香「光平くん…」

光平の励ましをあり、笑顔を取り戻す優香。
そうこうしているうちに学校へと到着して校門をくぐり、
自転車を置き、3人で元気に笑いあいながら登校する。
いつもの繰り返される日常である。

その様子を2階の生物室から、じっと不気味に凝視している一人の女がいた。

理乃「………」

東条寺理乃――海防大学付属高校に勤務する生物担当の女教師。
管理教育的傾向が極めて強く、一般生徒たちの評判はすこぶる芳しくない。
今、この女の周辺で、何人かの女子生徒が行方不明になっているという
噂が校内に流れていた…。

理乃「沢渡優香さん…次の私の実験材料には貴女になって
 もらおうかしら。フフフッ…」

運命は着実に動き出していた…。

1221

○ちびうさ→京南大学附属病院に入院したが、すっかり回復。月野うさぎたちと再会。
○月野うさぎ→京南大学附属病院に入院中のちびうさを見舞う。
○水野亜美→京南大学附属病院に入院中のちびうさを見舞う。
○火野レイ→京南大学附属病院に入院中のちびうさを見舞う。
○木野まこと→京南大学附属病院に入院中のちびうさを見舞う。
○愛野美奈子→京南大学附属病院に入院中のちびうさを見舞う。
○冥王せつな→月野うさぎたちに新たな敵の存在を警告した後、時空異変の調査続行のため30世紀へ帰還する。
○浅見竜也→月野うさぎからちびうさを救った礼を言われる。
○ドモン→時空異変の調査続行のため30世紀へ帰還する。
○魚住愛→ちびうさの病室を担当。
○土橋竜三→海防大学付属高校で起こった新校舎爆破テロ事件で、対策のため陣頭指揮を執る。
○冴島十三→CIAと合同でK国と死の商人スメルスの秘密取引を内偵していた。
△セーラ深町→K国と死の商人スメルスによる秘密取引を内偵中、牧村光平と出会う。

○牧村光平→K国と死の商人スメルスの秘密取引に絡む爆破事件に巻き込まれる。
 セーラ深町と共に事件を解決し、無事に生還。
○朝倉慎哉→シェネター内に閉じ込められた光平とセーラ深町を救うため、
 得意のハッキング技術で新校舎のセキュリティシステムに介入。
 光平とセーラの脱出に一役買う。
○沢渡優香→自分の知らぬ間に、東条寺理乃に狙われている。
●後原惟継→K国と死の商人スメルスの秘密取引を仲介していたが、
 冴島十三にきついお灸をすえられる。
●東条寺理乃→沢渡優香をモルモットとして狙っている。


【今回の新規登場】
△セーラ深町(真・仮面ライダー 序章)
 財団の改造兵士製造計画を調査していたCIAの工作員。内偵を進める最中に、
 風祭真=仮面ライダー・シンと出会う。任務には忠実で非情ではあるが、
 結果的に却下されたものの、CIA上層部に真の助命を具申していた。


○牧村光平=天凰輝シグフェル(闘争の系統オリジナル)
 海防大学付属高校・法科英文コースに通う高校2年生。17歳。クラブはテニス部に所属。
 父・光一郎は、主に中東で活躍していた日本の外交官。母・エメリアは、
 アルジェリアの石油王一族の令嬢。二人は駆け落ちの末に結ばれ、光平はその間に生まれた
 日本人とアルジェリア人のハーフという事になる。両親は光平が小学生の頃に、
 海外でテロに遭い死亡。その後は父の仕事の縁で朝倉家に引き取られた。
 海外の紛争地域での和平調停活動などに奔走していた父の影響で、
 差別や争いごとといった事には敏感に反応し、正義感も強い。
 後に天凰輝シグフェルとなり、ブレイバーズとも大きな関わりを持っていくことになる少年である。

○朝倉慎哉(闘争の系統オリジナル)
 海防大学付属高校・情報処理技術科に通う高校2年生。17歳。クラブはテニス部に所属。
 牧村光平の幼馴染み。家族構成は父(大手商社マン)、母(専業主婦)、姉(女子大生)。
 両親は仕事の都合でニューヨークに在住。姉も家を出て一人暮らししているため、
 日本の自宅で一人留守を守っている。父の仕事の縁で、光平を自宅に居候させている。
 実は優れたハッカー技術を持ち、過去に「守護者/ゴールキーパー」や
 「電子の女帝/サイバーエンプレス」といった名だたるネット上の伝説的大物に
 ハッキング勝負を挑み、あと一歩のところで惜敗している。

○沢渡優香(闘争の系統オリジナル)
 海防大学付属高校・総合学科に通う高校2年生。17歳。生徒会副会長。
 クラブは陸上部に所属。牧村光平のガールフレンドである。

●東条寺理乃=ラミアクィーンイーバ・スネイザ(闘争の系統オリジナル)
 堕神の大審官アークシセイザーの命令で動く堕神の幹部。
 海防大学付属高校に勤める生物担当の女教師であり、父親はマッドサイエンティストとして非難され
 学会から追放された、東条寺宗晴博士。父親の憤死をきっかけとして前世の記憶が甦り、
 堕神として覚醒した。

●後原惟継(闘争の系統オリジナル)
 元外務大臣で、野党第一党・主民党に所属する大物代議士。
 海防大学の理事でもある。K国や多国籍企業のスメルスと癒着していた。
 今シナリオ限りのオリジナルキャラクター。 


『天凰輝シグフェル 序章』-1

作者・ティアラロイド

1222

***メガロシティ・海防大付属高校前の学園通り***

例の校舎爆破テロ事件から一週間近く経過した…。

いつも通りの朝の登校風景である。
牧村光平と朝倉慎哉は、普段は江東区豊洲の住宅街にある自宅から、
お台場とメガロシティを経由して結ぶ臨海新交通線(ゆりかもめの延長)と
自転車を乗り継ぐ形で通学している。
駅を降りた後、通学路の途中で大抵の場合、別方向から同じく自転車で登校してきた
沢渡優香とちょうど合流して一緒に学校に向かうスタイルだ。

チャック「よぉ、坊主ども、今日も元気してるか?」
光平「チャックさん」
優香「おはようございます。チャックさん、美姫さん」
美姫「おはよう優香ちゃん」

自転車で学校に向かっていた光平たち3人に、
巡回パトロール中の警官が、パトカーの中から声をかけて来た。

チャック・スェーガーと桂美姫。

両人ともメガロシティ警察に勤務する刑事である。
光平たちの通学路をよく巡回している関係から、以前からの顔見知り同士であるのだが、
そのチャックが、かつてメガロシティを妖魔の侵攻から守り抜いた超音戦士ボーグマンの一人、
そして美姫がICPOの対妖魔特殊部隊ファントムSWATのリーダーだった事までは、
一般人の光平たちには知る由もなかった。

慎哉「朝から何か事件ですか?」
チャック「お前たちもニュースで見て知ってるとは思うが、
 最近若い女性の原因不明の失踪が相次いでいてな」
光平「その話なら、俺も今朝新聞で読みました」
美姫「優香ちゃんも女の子だから気をつけなきゃだめよ。
 そうでなくても最近は特に物騒なんだから」
優香「ありがとうございます」
チャック「じゃあな、学生諸君♪ 今日も頑張って勉強に励めよ!」

こうしてチャックと美姫は光平たちと別れた。
パトロールを続ける二人は、パトカーの中で雑談する。

美姫「この間のブリアン島の合宿の話、チャックのところにも来てたんでしょ。
 遠慮せずに行けばよかったのに…」
チャック「今回の連続女性失踪事件のヤマがなかったら行ってたかもな…。
 忙しい時期に俺一人だけ捜査陣から抜けるわけにもいかんだろ」
美姫「今回の事件、またGショッカーの仕業かしら。
 それとも、もしかして妖魔…」
チャック「例の黄泉がえり現象の報告以来、まだ妖魔の再活動は確認されていない。
 それにGショッカーにしろ妖魔にしろ、今までの奴らの手口と比べて
 妙な違和感を感じる…」

1223

***海防大学付属高校・生物実験室前廊下***

その日の放課後、たまたま生物実験室前の廊下を歩いていた光平は、
偶然、部屋の中からの話声を聞いてしまった。

優香「―――でも、そんな…私には無理です」
理乃「沢渡さん、どうしても貴女にお願いしたいの…」

光平「この声は、優香…それに東条寺じゃないか」

光平は中の人間に気づかれないように、そっと聞き耳を立てる。
どうやら優香と話している相手は、教師の東条寺理乃であるらしい。

東条寺理乃――いつしか海防大学付属高校に生物担当として赴任してきたこの女。
単に管理教育的傾向が強いばかりでなく、生徒に対して執拗に不当な権力を振りかざす
この女に対して、全校生徒の評判はすこぶる悪い。
大半の生徒は影では彼女の事を「東条寺」と苗字を呼び捨てにしており、
心から「先生」と敬意を持って呼んでいる生徒など、まず皆無であろう。
現に光平も、この女教師の事は快く思ってはいなかった。

理乃「そう。貴女は私の事が気に入らないわけね」
優香「そんな、違います!」
理乃「いいのよ、無理しなくても。ただ貴女が断ったために、
 貴女の所属しているクラス、陸上部、それに生徒会にも
 迷惑がかかることになるでしょうね」
優香「…わかりました。今晩、先生のお宅にお伺いします」
理乃「助かるわ。感謝するわね、沢渡さん…」
優香「………」

ドアを開け生物実験室から出て来た優香と理乃は、
光平とバッタリ遭遇した。

優香「光平くん!?」
理乃「あら牧村君、もう下校時刻はとっくに過ぎているわ。
 早くお帰りなさい」
光平「東条寺先生、今優香と何を話していたんですか!?」
理乃「貴方には関係のないことよ!」

理乃は光平を一瞥してそそくさと逃げるように立ち去った。

光平「優香、中で一体何があったんだ!?」
優香「………」


***同校内・食堂***

慎哉も交え、光平は優香に生物実験室での中で
起こった事を問い質した。
優香の話によると、東条寺理乃の自宅での
私的な化学実験の手伝いを頼まれたのだという。
もし断るなら、優香の周囲に嫌がらせをすると
暗に仄めかされたのたらしい。明確な強要だった。

慎哉「それって明らかな脅迫じゃないか!」
優香「でも、簡単な助手みたいな作業だけらしいし、
 今晩だけ私一人が我慢すれば済むことよ」
慎哉「でも相手はあの性悪女の東条寺だぜ。
 いったい何をされるか…」
優香「………」

優香は困ったように黙りこくってしまう。
それを見かねた光平が思い切って発言する。

光平「そうだ、俺が代わってやるよ!」
優香「光平くんが!?」

光平のいきなりの宣言に、慎哉も優香も驚く。

慎哉「おいおい大丈夫かよ…」
優香「そんな、悪いわ!」
光平「大丈夫だよ。女の子一人ならともかく、
 まさか東条寺だって男子生徒相手に淫らな真似はしないさ」
優香「…だと、いいけど」
光平「安心しろって♪」

満面の笑顔で優香を安心させようとする光平。
それでも優香と慎哉は心配そうに光平の顔を見つめている。
光平にしてみれば、困っているガールフレンドを見捨ててはおけないという
正義感とほんの軽い気持ちだったのかもしれない。

だがこの夜、牧村光平は例え自ら望んだとしても
現実にはまずありえないであろう、恐怖と絶望の体験をすることになる。
それは光平の人生を根底から覆してしまうような、
決して後戻りはできない驚天動地の出来事であった。

1224

***東条寺理乃邸***

都心地から離れた寂れた工業地帯のさらに奥に、
林に囲まれた東条寺理乃の屋敷はあった。昔は理乃の父である
さる高名な科学者の自宅兼研究施設であったらしい。

理乃「沢渡さんは急な発熱で来られなくなった?」
光平「ええ、ですんで、優香の代わりに俺が――」
理乃「…そう、まあいいわ。入ってちょうだい」

すでに夕方もとっくに過ぎた時間帯。
今朝の快晴とは打って変わって、周囲は大荒れの雷雨である。
外の天気も手伝ってか、薄暗い屋敷の中はまるで妖怪屋敷の雰囲気であった。
居間へと通された光平は、理乃に紅茶を差し出された。

理乃「さ、仕事に取り掛かる前に、まずは飲んでちょうだい」
光平「いただきます」

光平は紅茶を一口だけ飲む。その瞬間、急激な眠気に襲われた。

光平「――どう…したんだ? 急に…眠気が……」
理乃「ふふふ…その紅茶には睡眠薬が入れてあったのよ」
光平「――!!」

信じられないといったような表情の光平に、
理乃は冷たい視線で話を続ける。

理乃「驚いたようね。普段生徒たちから嫌われている私でも
 まさかここまでするとは思っていなかったでしょう?」
光平「どう…して、こんな……ことを!?」
理乃「若い女ばかりはもう飽きたわ。たまには貴方のような
 美しい男の身体を、私のメスで切り刻んでみるのも悪くはない」

理乃はそう言い放つと、部屋奥のカーテンを開けて見せた。
なんと中には、血まみれの若い女性の惨殺死体が
無残に幾つも転がってゴミのように放置されていたのだ!

光平「や…め……ろ………」

自分はホラー映画の夢でも見ているのであろうか…。
未だ自分の身に何が起ころうとしているのか理解できぬまま、
光平は必死に立ち上がり、その場から逃れようとする。
だがすでに眠り薬は光平の全身に回っており、
抵抗する術はもはや完全に失われていた。

光平「………」

がっくりと床に崩れ落ち、意識を失う光平。

その日の深夜遅く、東条寺理乃邸は突如の落雷により炎上。
屋敷跡は灰となって完全に消滅した。

1225

○チャック・スェーガー→都内の連続女性失踪事件を警戒してパトロール。
○桂美姫→都内の連続女性失踪事件を警戒してパトロール。

○牧村光平→沢渡優香の代わりに東条寺理乃邸を訪問。そこで睡眠薬を盛られる。
○朝倉慎哉→放課後の校内食堂で、牧村光平と一緒に沢渡優香の相談に乗る。
○沢渡優香→東条寺理乃に私的な実験への協力を強要されていたが、牧村光平に代わってもらう。
●東条寺理乃→沢渡優香に自身の研究の助手を強要。代わりにやってきた牧村光平に睡眠薬を盛る。

【今回の新規登場】
○チャック・スェーガー(超音戦士ボーグマン/超音戦士ボーグマン2 -新世紀2058-)
 元サイソニック学園の体育教師。周囲からはキザで女垂らしと思われがちだが、
 響リョウとは宇宙飛行士訓練生時代からの親友で、コンビとしての能力は高い。
 細身に似合わぬ怪力の持ち主で、広域攻撃用の緑のバルテクターを装着する。
 武器はバトルランチャー。初期は改造を施したバギーを乗用していたが、
 後に戦闘車ビーグルヘッドに乗り換える。
 『ラストバトル』では美姫とともにメガロシティ警察に勤務しており、
 頻発する怪事件の捜査に当たっていた。また、続編OVA『超音戦士ボーグマン2 -新世紀2058-』では
 桂研究所の所長となっており、復活した妖魔と戦う第2世代ボーグマンの指揮を執っていた。

○桂美姫(超音戦士ボーグマン)
 桂コンツェルンの令嬢であり、世界警察・対妖魔特殊部隊ファントムSWATのリーダー。
 性格は負けず嫌いで勝気。戦闘時には専用のプロテクターを着用するが、
 戦闘能力はボーグマンに劣る。後にチャックと恋仲になる。


『天凰輝シグフェル 序章』-2

作者・ティアラロイド

1226

***京南大学附属病院・1階待合室ロビー***

美奈子「ちびうさちゃん、退院おめでとう!」
ちびうさ「ありがとうみんな」

京南大学附属病院に入院していたちびうさが退院の運びとなり、
うさぎたちが迎えに出向いていた。

愛「おめでとうちびうさちゃん。これは伝通院先生と私から―」

ナースの魚住愛は、ちびうさに退院を祝う花束を渡す。

ちびうさ「ありがとう、愛おねえちゃん。
 わぁ~素敵なお花だ!」
愛「精密検査の結果も全く異常なしでしたので、
 もう安心していいと思います」
うさぎ「本当にありがとうございました。
 あのー、ところでちびうさのやつ、入院している間
 何かワガママ言いませんでした…?」
ちびうさ「もーっ! うさぎったらぁ~っ!」

ムッとなって頬を可愛らしく膨らませるちびうさと、
それを取り囲みながら明るい笑いにどよめく一同。

まこと「その調子ならもう大丈夫だ!」
うさぎ「…で、ちびうさ、アンタこれからどうするつもりなの?」
ちびうさ「今の時代にもGショッカーっていう悪い奴らが暴れてるんでしょ?
 だったらあたしもみんなと一緒に戦う!」
亜美「今私たちが戦っている敵は、今までとは比べ物にならない
 くらいの強敵よ。きっと辛い戦いになるわ」
レイ「それでもいいの?」
ちびうさ「うん。あたし、決めたから!
 私だってセーラー戦士の一員だもん!」
うさぎ「ありがとう…ちびうさ!」
ちびうさ「――!?」

うさぎはそっと、そして力強くちびうさを抱きしめた。
それに困惑するちびうさ。

ちびうさ「…ちょ、ちょっとうさぎ! みんな見てるし!
 それに…そんなことされたらこっちだって調子狂うし…(///)」

うさぎは、恥ずかしがるちびうさをやさしく解放した。

うさぎ「さ、帰ろっか? 家ではママがおやつを
 用意してくれているって」
ちびうさ「うん♪ 育子ママの手作りのおやつ楽しみだな。
 それに久しぶりにほたるちゃんにも会いたいし」

1227

こうして全員そろって帰ろうとしていたうさぎたちだったが、
突然、病院正面玄関の方から走ってきた紅いセミロングの髪の少女と
うさぎが出会いがしらに不注意で激しくぶつかってしまった。

うさぎ「――イタッ!!」
優香「キャッ!!」

その場に尻餅をつくうさぎ。

うさぎ「ちょっとぉーっ!! なにすんのよ!?ヾ(。`Д´。)ノ彡☆ブーブーッ!!」
優香「ごめんなさい!」
うさぎ「……(ハッ…この娘、きれいな人…(。・・。)ポッ)」

亜美たちに両脇を支えられてなんとか起き上ったうさぎは、
最初こそ激怒したものの、ぶつかった相手の顔を見て、
一瞬その美しくウェーブのかかった髪と優しい瞳に心を奪われた。
廊下の向こう奥からは、この目の前の少女の友人だろうか、
同じ年頃の高校生らしき少年が呼ぶ声がする。

慎哉「お~い、沢渡! 何してんだ!
 光平の病室はこっちだぞ!」
優香「待って! 今行くから!」

ぶつかった相手の少女――沢渡優香は深々と頭を下げ、誠意をもって謝る。

優香「本当にごめんなさい!」
レイ「ああ、気にしないで。このうさぎがドジだっただけだから!」
うさぎ「ちょっとレイちゃん!」
まこと「知り合いが入院してるんだろ? ほら、早く行ってあげなよ」
優香「ありがとうございます!」

再度深々とお辞儀した優香は、慎哉の声のした方向へと
必死の形相で慌てて走り去って行った。

まこと「いったいどこの娘だろう」
レイ「何か焦って、とても必死そうだったけど…」
亜美「…あの制服、確か海防大付属のものよ」
美奈子「海防大付属!? それって超エリート高じゃない!」
うさぎ「お友達でも入院してるのかな…」


***同病院10階・1025病室***

慎哉「バカヤロウ! 心配させやがって!」
光平「ごめんな、二人とも…」

慎哉は烈火の如く鬼のような形相で声を荒げ、
一方優香は大声をあげてずっと泣き続けている。
その様子を、光平はただ申し訳なさそうに
ポリポリと頭を掻きながら見つめていた。

病室のベットの上で横になっている光平の額には包帯が巻かれ、
頬にも大きなガーゼが装着されている。そして足にもギプスが
取り付けられていた。

――あの落雷事故の後、光平は奇跡的に現場から救助された。
全身に大火傷を負っていた光平は、すぐさま救急車によって
この京南大学附属病院へと担ぎ込まれ緊急手術を受けた。
その後も意識不明の危険な状態が続いていたが、
集中治療室での懸命な治療の結果、ようやく意識を取り戻し、
そして2週間後の今日、ようやく面会謝絶も解かれる形となったのだ。

光平は痛々しい姿ながらも、穏やかな笑顔で
見舞いに駆けつけて来てくれた慎哉と優香を出迎えた。
しかし優香だけは、それに自分の笑顔で返すことができなかったのである…。

優香「あたしのせいだわ!」

優香は何かを否定するように懸命に首を横に振り、
大粒の涙をこぼす。

優香「あたしが光平くんに代わりに行ってくれだなんて
 頼んだから!」
光平「違うっ! 優香のせいなんかじゃない!
 仮にもしそうだとしてもさ、優香を守るための
 名誉の負傷。男の勲章みたいなものだろ?」
優香「バカッ!!」

なかなか泣きじゃくるのをやめない優香。
慎哉も見かねて優しく声をかける。

慎哉「なあ沢渡、気持ちはわかるけど、
 こうして光平も助かったんだ。誰も
 お前のせいだなんて思ってないよ…」
優香「でも…!」

光平と慎哉の慰めに、興奮状態だった優香も
だいぶ落ち着いてきた。自分を責める優香に気をかけつつも、
話を切り替えようと慎哉にある事について尋ねた。

光平「なあ慎哉、あれからいったいどうなったんだ…?
 俺…全然何も覚えてなくてさ……」
慎哉「それが……」

1228

その時だった…。
コートを羽織った背広姿の二人組の男がナースの制止を振り切り、
ズカズカと光平の病室に乗り込んで来たのだ。

ナース「ちょっと待ってください!
 いきなり事情聴取だなんて困ります!」
小森「ほんの少しだけだから! いいね!」
ナース「先生を呼んできます!」

ナースは医師を呼びに走って行った。

慎哉「何なんですか、アンタたちは!?」
小森「あー失礼。我々は桜田門署の者だ」

男二人は徐に警察手帳を提示する。
"桜田門のバットマン"を自称する小森好次郎警部と、
その部下の高井戸志郎刑事である。
落雷事故が起こった東条寺理乃の屋敷が
ちょうど桜田門署の管轄内にあったため、
光平に事情聴取に来たようだ。
ただこの二人組の刑事、(事件解決にかけるデカとしての熱意は
ともかくとしても)あまり優秀な警察官とは言い難い…。

小森「君が牧村光平君だね?
 早速だけど、二週間前の落雷事故のあった
 あの日の夜の事、何か覚えていないかな?」
光平「あの日の…夜…??」
優香「やめてください! 光平くんはまだ
 意識が戻ったばかりなんです!」
小森「なんだ君たちは? 邪魔をするなら
 公務執行妨害で逮捕するぞ!」
慎哉「なっ…!」

小森警部の側には特に悪気はなかったのであろうが、
これを警察権力の高圧的な態度だと受け取った慎哉は
顔の表情に露骨に不快感を表す。

高井戸「ごめんね、本当にほんの少しの間だけだから…」

部下の高井戸刑事はまだ良心的なのだろうか、
誠に申し訳なさそうにフォローを加える。

小森「あの日の落雷事故の後、東条寺理乃の屋敷跡からは、
 大量の女性の焼死体が発見されたんだよ。昨今の
 連続女性失踪事件の犯人は東条寺理乃に間違いない!
 東条寺の行方について何か知らないか?
 君はあの日の夜、東条寺と一緒に屋敷の中にいたんだろ!?」
光平「大量の…女性の…死体…??
 東条寺……屋敷……あああああっ!!!!」

あの日の夜、東条寺理乃の屋敷の中で見た幾多の女性の惨殺体の光景――
――思い出したくもなかった微かな記憶が、フラッシュバックとなって
光平の脳裏に次々と蘇る。

光平「…やだ…やめろ……やめてくれえええ!!!!!
 うわああああっっ!!!!!!」
優香「光平くん、しっかりして!」

頭を両手で抱えて極度の興奮状態になった光平を、
優香が抱いて懸命に庇う。

小森「ど、どーしたんだ!?」
高井戸「け、警部…どうしましょう!!(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
慎哉「アンタたちもういい加減にしろよ!
 出て行ってくれ!!」

慌て始める小森たちの対応に激怒する慎哉。
そこへようやく、ナースに呼ばれて駆けつけた
担当外科医の伝通院洸が制止に入った。

伝通院「いったいこの騒ぎは何事だ!?」

1229

光平の病室前の扉には、再び「面会謝絶」の札が、
ナースによってかけられた。

伝通院「今起こった件については、後日改めて
 病院の方から警視庁に対して厳重に抗議します!
 本日のところはどうかお引き取りください!」

こうして小森警部と高井戸刑事は病院から叩き出されてしまった。
病院の外から悔しそうに光平の病室のある階の方向を眺める小森警部。

小森「くそ~! あと一歩のところだったのにな!」
高井戸「警部、いくらなんでもアレはやりすぎですよ…」
小森「うるさい! あの高校生は事件の貴重な生き証人なんだぞ!
 必ず何か事件解決の鍵を握っているに違いないんだ!」
高井戸「それはそうですけど…」
小森「こうなったらあの男子高校生の周辺を、
 たとえ病院の外からでも徹底的にマークだ!
 わかったな!」
高井戸「わ、わかりました…(汗」

1230

○ちびうさ→無事退院。セーラー戦士の一員として戦線復帰を宣言。
○月野うさぎ→退院したちびうさを出迎えに行く。偶然、沢渡優香と出会う。
○水野亜美→退院したちびうさを出迎えに行く。偶然、沢渡優香と出会う。
○火野レイ→退院したちびうさを出迎えに行く。偶然、沢渡優香と出会う。
○木野まこと→退院したちびうさを出迎えに行く。偶然、沢渡優香と出会う。
○愛野美奈子→退院したちびうさを出迎えに行く。偶然、沢渡優香と出会う。
○小森好次郎→病室内で牧村光平の事情聴取を行おうとするが、伝通院洸に追い返される。
○高井戸志郎→病室内で牧村光平の事情聴取を行おうとするが、小森警部共々伝通院洸に追い返される。
○魚住愛→ちびうさに退院を祝って花束を渡す。
○伝通院洸→入院中の牧村光平に無理な事情聴取を強行しようとした小森警部と高井戸刑事を病院から追い出す。

○牧村光平→落雷炎上事故の後、奇跡的に助かる。京南大学付属病院に入院。
 小森警部に事情聴取で問い詰められ、フラッシュバックにより極度の興奮状態に陥る。
○朝倉慎哉→意識を取り戻した牧村光平の見舞いに駆けつける。
○沢渡優香→意識を取り戻した牧村光平の見舞いに駆けつける最中、病院内で偶然月野うさぎたちと出会う。


『天凰輝シグフェル 序章』-3

作者・ティアラロイド

1231

***京南大学付属病院・外科診察室***

あれから数日後、牧村光平は無事に退院して行った。
一方、光平の手術と治療を担当した医師である伝通院洸は、
あれからずっと数枚のレントゲン写真を集中するように見つめている。

愛「先生、どうされたんですか…?」
伝通院「…ん? ああ、魚住君か…」

伝通院の様子が気になった魚住愛が声をかけた。

愛「そのレントゲン写真って…確か」
伝通院「ああ、先日退院した牧村光平君のものだ」
愛「あの高校生の男の子のですね。これが何か?」
伝通院「いや、どこも異常は全くない。
 正常な健康体そのものだ」
愛「先生…??」
伝通院「……(だが、なぜだ? このレントゲン写真には
 何か奇妙な違和感がある。それに光平君の手術を担当した
 あの日から、なぜか胸騒ぎが消えない。いったい彼の肉体に
 何が起ころうとしているんだ…?)」


***海防大学付属高校・男子硬式庭球部テニスコート***

そして光平が学校に復帰するようになってから、異変が相次ぐようになった。
放課後でのテニス部での練習中の事である。

部員A「いくぞ牧村~!」
光平「おう! どんと来い!」

相手の部員が打って来たサーブを、光平はラケットで打ち返した。
だがその瞬間、打ち返されたボールは言いようのない物凄いスピードで、
部員を掠めてネットを突き抜けるどころか、背後の校舎のコンクリートの壁にまで
鋭い破壊力でめり込んだのである。

部員A「…アワワワ(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」

相手の部員は腰を抜かして、ただ震えている。

部員B「……( ゚д゚)ポカーン」
部員C「……( ゚д゚)ポカーン」
慎哉「光平…!?」

光平「……!?」

一部始終を見ていた慎哉や他の部員たちが唖然とする中、
光平自身にもいったい何が起こったのかわからず、
ただその場に立ち尽くすしかなかった…。


***江東区豊洲・住宅街 朝倉家***

部活での練習を終えて帰宅した光平と慎哉。
その日の食事当番だった光平は、さっそく調理の準備に取り掛かろうし
キッチンの水道の蛇口を捻ったのだが…。

光平「うわあっ!?」

突然蛇口が捻じ切れ、水道管から勢いよく水が大量に噴き出したのである。
キッチンは水浸しになったものの、すぐに水道業者に来てもらい修理してもらった。
光平と慎哉は、汚れた台所の床を二人で手分けして雑巾で拭いている。

慎哉「だけどオカシイなあ。まだ水道管の蛇口の交換の時期には
 早いはずだけど…」
光平「……(違う…! あれは水道の蛇口部分が古くなっていたんじゃない!
 俺が力で蛇口を捻じ切ってしまったんだ。いったい俺の身体はどうなっちまったんだ!)」

自分の身体の異変に気づき、徐々に不安に駆られていく光平。
こうして今日もいつものように夜が更けていく…。

1232

一方、その頃…。

***神の神殿・精神と時の部屋***

マジマザー「――ジー・マジーネ!!」
メイジ「えいっ!!」

Barrier!!

マジマザーがワンドのエレメントキャップから連射した氷の矢を、
仮面ライダーメイジが六角形の障壁を生成して防ぐ。

Teleport!!

今度は魔法のリングの力で瞬間移動したメイジがマジマザーの背後に回り込み、
左腕のクロー型武器スクラッチネイルで奇襲を試みるが、マジマザーもさるもので、
すかさずマジカの呪文で自ら宙に浮き、メイジの攻撃を難なくかわした。

ここは地球の神の神殿にある、主に戦士たちの修行場所として利用されている、
「精神と時の部屋」である。この空間では、外の世界に比べて時間の進み方が違っており、
また、環境は極めて苛酷である。まず空気が外の約4分の1と非常に薄い。
エベレストの山頂ですら約3分の1の薄さと言われるため、
きちんと高所順応せずに動いてしまうと、常人なら即座に高山病に陥るでだろう。
さらには空間全体に常に10Gの重力までかかっている。

マジマザー「マジ・マジュナ!!」
メイジ「きゃあああっ!!」

マジマザーの放った強烈な冷気がメイジを襲う!
攻撃を防ぎきれなかったメイジは、あえなく冷気の壁に吹っ飛ばされた。

マジマザー「さあ、今日の稽古はもうここまでにしましょう」
メイジ「はい、先生」

マジマザーとメイジは部屋の外へと出て変身を解き、
各々小津深雪と稲森真由の姿に戻る。

デンデ「お二人とも、お疲れさまでした」
ポポ「シャワーの準備、出来ている」
真由「ありがとうございます」

両親と姉の敵である宿敵メデューサとの戦いを経て、
個人の復讐を超え、与えられた魔法の力を人を救うために使うことを決意した稲森真由。
現在、彼女は警視庁国家安全局0課に民間人協力者の形で所属している。
改めてしかるべき師匠の下で魔法の修行をし直した方がいいだろうとの周囲の判断で、
魔法戦隊マジレンジャー=小津兄弟の母である小津深雪=マジマザーをブレイバーズを介して紹介された。
奇しくも真由は、最初の師ともいうべき存在だった笛木奏と同じ「白い魔法使い」に
再び弟子入りすることになったのである。
(それにしても目の前の2本の触覚を生やした異星人の少年が
地球の神様だと聞かされた時は、さすがの真由も驚いたが…)

深雪「順調に魔法の腕を上げているわ。
 このぶんだと私が真由ちゃんに教えてあげられることも
 そう多くはないわね」
真由「とんでもありません。まだまだ先生には教えてもらわなければ
 いけないことがたくさんあります!」
深雪「そうね。でも焦りは禁物よ。貴女には充分に魔力が伸びる
 素質があるのだから…」

そこへデンデが真由に、地上からの連絡を取り次いでくる。

デンデ「真由さん、国安0課の大門刑事から連絡です。
 稽古が終わったら、至急来てほしいと」
真由「凛子さんが?」

1233

***日本・東京・聖居桜田門前 警視庁***

凛子「ごめんね。急に呼び出したりして。
 今警視庁の内部もゴタゴタしていて人手不足で…」
真由「いえ、全然大丈夫です。気にしないでください」

元々は警視庁鳥井坂署の新米女刑事だった大門凛子だが、
本庁の国安0課の幹部だった木崎政範警視の根回しで、
現在は同じく国安0課に配属されている。

今、警視庁内部では、スピンクス1号・2号と名乗った謎の二人組による
大規模な連続テロ事件の解決後の事後処理のためにごった返しており
極端な人手不足に陥っていた。

凛子「大門です。稲森真由を連れてまいりました」
尾上「ご苦労」

真由が凛子に連れてこられた部屋には、
立派な軍服を着込んだ中年の男性が立っていた。

真由「凛子さん、こちらの方は…?」
凛子「紹介するわ。こちらは地球連邦政府・国防省の尾上参謀よ」
尾上「尾上だ。よろしく」

そして凛子と真由は、尾上からある物を見せられる。
それは美しく輝きを放つ、大きな鉱石物だった。

真由「これは…魔宝石? いや違う!」
尾上「その通り、これは反重力鉱石だ」
真由「反重力鉱石?」
尾上「近年某所にて発掘された、太陽光のエネルギーを浴びることで
 とてつもないパワーを発揮する石だ。これをブレイバーベースまで
 運ぶことになったのだが、運搬中の護衛の人手が足りない。
 そこで警視庁の国安0課にも応援を要請したというわけだ」
真由「事情はわかりました。任せてください!」

1234

○伝通院洸→牧村光平のレントゲン写真に奇妙な違和感を感じる。
○魚住愛→牧村光平のレントゲン写真を見つめたままの伝通院洸を気遣う。
○小津深雪→稲森真由の魔法の師匠となり、精神と時の部屋で稽古をつける。
○尾上参謀→国安0課に、反重力鉱石運搬の警護任務への協力を依頼。
○稲森真由→新たに小津深雪に弟子入り。反重力鉱石の運搬の警護任務に就く。
○大門凛子→稲森真由を警視庁に呼び出し、共に反重力鉱石の運搬の警護任務に就く。
○デンデ→小津深雪と稲森真由の魔法の稽古に付き添う。
○ミスターポポ→小津深雪と稲森真由の魔法の稽古に付き添う。

○牧村光平→無事退院したが、徐々に自身の肉体の異変に気付いていき、不安に駆られる。
○朝倉慎哉→牧村光平が捻じ切った水道の蛇口を業者に修理してもらう。


【今回の新規登場】
○小津深雪=マジマザー(魔法戦隊マジレンジャー)
 夫・勇の留守を守りつつ、女手一つで5人の子供を育てあげた小津家の大黒柱。
 長年修行を続けたことから魔法使いとしての能力と経験は高く、
 夫を含む天空聖者同様そのままの状態での巨大化が可能。
 冥府神トードによって長らくコレクションとして囚われていたが、
 成長した自身の子供たち=マジレンジャーによって救出された。

○尾上参謀(バトルフィーバーJ)
 国防省の参謀で、同じ一光流開祖・藤波白雲に師事した倉間鉄山将軍の弟弟子。
 鉄山将軍を挑発しておびき出す餌として、エゴスのヘッダー指揮官に惨殺された。

○稲森真由=仮面ライダーメイジ(仮面ライダーウィザード)
 ファントムの女幹部メデューサのゲートだった稲森美紗の双子の妹で、
 涼泉学園高等学校の生徒。メデューサによって家族が皆死んだことを知らされ
 絶望させられるが、生前の姉の言葉と、自らの強い意志によって
 ファントムを生み出すことを回避し、そのことで白い魔法使い(笛木)に認められ、
 魔法使いとなった。メデューサとの決戦後は笛木の正体を知り、魔法使いとして
 戦うことに迷いを抱き始めるが、大門凛子の励ましもあり、再び戦いに臨んだ。
 決戦後は旅立った操真晴人の代わりを果たすべく、大門凜子と共に国安0課の
 サポートメンバーとなる。

○大門凛子(仮面ライダーウィザード)
 警視庁鳥井坂署の新米女性刑事。「人を守るのが警察の務め」という信念を持ち、
 管轄上ファントムの事件に関われないことに不満を抱く。

   ファントム・ミノタウロスに狙われていたゲートであり、
 自分を救ってくれたウィザード=操真晴人を慕い、面影堂に出入りするようになる。
 その後木崎警視の根回しにより国安0課へと配属(出向扱い)となった。

○ミスターポポ(ドラゴンボールシリーズ)
 古くから地球の神の付き人をしている、実質的な神の神殿の管理者。
 年齢は1000歳以上。肌が黒く、ずんぐりむっくりの体型、どんぐり眼に
 タラコ唇でほとんど表情の変化を見せない。着ている服はアラビア風で、
 ターバンも身につけている。神仙界の事にも詳しい。


『天凰輝シグフェル 序章』-4

作者・ティアラロイド

1235

***???***

光平「………ん…ううっ!!」

そこは真っ暗な闇に閉ざされつつも、所々が青白い光の点を明滅している不気味な空間。
どこかの建物の中というよりは、何らかの広い異空間といった感じがする。

光平「……ここは…?」

気がつくと光平は、一糸纏わぬ全裸の姿で、
何か魔法陣のような意味不明の図形が刻まれた床に
仰向けになって寝かされていた。両手両足は頑丈な鉄枷と鎖によって
大の字になる形で拘束されている。
よく見ると周囲には、手術に使うような見たこともない器具が幾つも置かれていた。
光平は必死にもがいて拘束から逃れようとするが、鉄枷はビクともしない。

光平「くそっ!!」
理乃「…お目覚めのようね?」
光平「――お前は!?」

光平の足元には、東条寺理乃が囚われの光平を見下ろすように立っていた。

光平「東条寺! いったい俺をどうするつもりだ!?
 早くこの鉄枷を解け!!」
理乃「そういうわけにはいかないわ。
 貴方はもう私の可愛いモルモットなのだから」
光平「ふざけるなあっ!! さっき俺に見せたあの死体の山は
 いったい何なんだ?」
理乃「貴方もニュースくらいは見て知っているでしょ?
 連続婦女失踪事件…。あの女たちは私の実験に耐え切れずに
 死んでいった、云わば失敗作」

この理乃の言葉で、光平は全てを理解した。
最近都内で連続で失踪していたという若い女性たちは、
皆、この目の前の狂った女の恐ろしい人体実験の犠牲にされていたのだ。
それがいったい何の実験だったかまでは分からないが、
今夜ももし優香が東条寺邸を訪れていたら、
きっと彼女も同じ運命をたどっていたに違いない。

光平「……くそおっ!!」
理乃「ジタバタするのはおよしなさい!
 見苦しいわよ!」

理乃が叫ぶように言い放つと、周りの空間が少しだけ
薄らと明るくなった。そして辺りを見回した光平は、
さらに驚きと恐怖の感情に支配された。

ゴブリンイーバ「グゥゥゥゥ…!!」
コボルトイーバ「ガルルルッ!!」
トロルイーバ「ウォ~ンッ!!」
ヴァンパイアイーバ「キキキキキッ…!!」
キマイライーバ「ウラァァァッ…!!」

獰猛で凶暴そうな怪物たちの群れが、
まるで餌を前に舌舐めずりするかのように
殺気に漲らせながら、身動きの取れない光平を
睨みつけていたのだ!

光平「な、なんなんだこの化け物たちは!?」
理乃「さあ、そろそろ始めましょう」

光平の疑問を無視して、理乃は右手の5本の指の爪を長く鋭く伸ばし、
それを徐々に光平の顔の頬へと近づけていく…!

光平「…やめろ…俺を自由にしろ…
 …やめろぉっ……やめてくれええっっ!!!!!!!!!!」

1236

***朝倉家・2階 光平の寝室***

光平「うわあああああっ!!!!!」

まだ早朝の朝倉家…。
突然大きな叫び声をあげて、光平はベットから飛び起きる。
隣の部屋で寝ていた慎哉も、大声を聞きつけて
パジャマ姿のまま慌てて光平の部屋に飛び込んできた。

慎哉「どうしたんだ光平!!」
光平「………」

慎哉の問いにも答えることができず、
大量の汗をかいた様子の光平は、ただ茫然自失としている。

光平「……(なんだったんだ今のは!? ただの夢…??)」


***海防大学付属高校・校門前***

その日も光平と慎哉は、いつもと同じく普段通り登校した。
だがこの日は、光平に対する他の生徒の態度がどこか
よそよそしく感じられた。

優香「光平くん! 朝倉くん! おはよう♪」
慎哉「よっ、沢渡、おはようっ!」
光平「………」

光平は優香のかけた声に気付かない。

優香「…光平くん?」
光平「……え? あ、優香…おはよう」
優香「光平くん、大丈夫…?」
光平「うん、大丈夫だよ…。早く教室に行こうぜ。
 授業が始まっちゃう」

光平はなんとなく生気が感じられない笑みを浮かべると、
生徒用玄関でズックに履き替え、教室へと向かっていった。

優香「光平くん…」
慎哉「………」

◇  ◇  ◇

昼休み、光平と慎哉の級友で同じ部活仲間でもある小林が
心配そうな表情で話しかけて来た。

小林「なあ牧村、お前大丈夫なのか?」
光平「大丈夫って…何が?」
小林「学校のみんなが噂してるぜ…。
 お前と東条寺が手を組んで怪しげなオカルトに
 手を出してたとか、お前が女子生徒を密かに
 物色してたとか…」
慎哉「なっ…!!」

それを聞いた瞬間、慎哉は鬼気迫る顔つきになり
小林の胸ぐらを両腕でつかんで問い詰める!

小林「く…苦しいっ!」
慎哉「誰だそんなことを言ってたのは!」
光平「慎哉、やめろ!」

光平は慌てて仲裁に入り、
小林を締め上げている慎哉に両腕を解かせた。

慎哉「光平だって東条寺の被害者なんだぞ!
 そんな風に疑うだなんて、お前それでも友達かよ!」
小林「落ちつけよ朝倉! 俺だってわかってるよ。
 ただ…聞き込みに来た刑事さんがそんな風に
 言ってたんだよ」
慎哉「…刑事??」
小林「まだあそこにいるぜ…」

小林が恐る恐る指差した窓の向こう側には、
階下に停めてあるパトカーの中から
じっと光平たちの教室方向を監視している
小森警部と高井戸刑事の姿が…。

ここ最近、都内で発生していた連続婦女失踪事件について
捜査当局は東条寺理乃の犯行であると断定。容疑を殺人に切り替えて、
全国に指名手配した。事件の被害者の中には海防大付属高の女子生徒も
多数含まれていたため、自然とそのような噂が流れてしまったのだろう。

慎哉「あいつら~! まだ性懲りもなくっ!」
光平「…ごめん慎哉、しばらく一人にしてくれ…」
慎哉「光平っ!」

光平は慎哉が引き留める間もなく
人を避けるように教室から出て行った。

1237

その日の夜…。

***朝倉家前***

今日一日中、ずっと光平の事をしつこく尾行・監視していた
小森&高井戸の両刑事。光平と慎哉が帰宅した後も、
覆面パトカーの中からずっと朝倉家の様子を監視している。

高井戸「警部、夕食のアンパンと牛乳を買ってきました」
小森「ご苦労だったな」

高井戸刑事から紙袋を受け取る小森警部。

小森「それで、牧村光平について何か解ったか?」
高井戸「はい。ちょっと待ってくださいね」

高井戸刑事は懐のポケットからメモ帳を取り出して開く。

高井戸「えーっと…牧村光平、現在17歳、海防大学付属高校の2年生です。
 父親は牧村陽一郎、外務省の元参事官で、母親はアルジェリア人。
 両親共に光平本人が小学四年生・10歳の時に、サラジアでのテロ事件で死亡しています。
 それ以来、父親の仕事の関係で縁のあった朝倉家に引き取られて育ったようです」
小森「あのイケメン小僧、ハーフだったのか。道理で顔が
 どこか外人っぽいと思った。それで母親の詳しい素性は?」
高井戸「それがわかりません」
小森「なにっ?」
高井戸「どうも外務省全体に緘口令が敷かれているらしくて、
 牧村光平の母親について調べることができませんでした…」
小森「どういうことだ…??」

小森警部が高井戸刑事の報告内容に不思議に思っていると、
突然車のドアをノックする音がした。

チャック「コラ、桜田門署の凸凹コンビ!
 こんなところで何してる!」
小森「なんだお前たちはっ!?」
美姫「アナタ達と同業者よ!」

美姫とチャックは小森たちにバッジを提示した。

小森「チッ、メガロシティ署か…」
チャック「ここら辺の地区はうちの署の管轄でしてね。
 勝手に人んちのシマを荒らすのはよしていただけますか、警部殿!」
高井戸「警部、今よその所轄と揉め事を起こすのはマズイですよ!」
小森「う~む、仕方がない! 今日のところは引き下がるが、
 あの高校生は事件の重要参考人だ。これで諦めたわけじゃないからな!」

チャックと美姫に促される形で、
小森と高井戸はようやく引き揚げて行った。

◇  ◇  ◇

朝倉家の玄関で、ピンポンッ♪とチャイムが鳴る。
中からドアを開けたのは優香だった。

優香「美姫さん」
美姫「優香ちゃん!? 貴女も来てたのね」

光平の身を案じていた優香も
朝倉家を訪れていたのだった。

美姫「あの刑事たちなら帰って行ったわ。
 もう安心しても大丈夫よ」
優香「わざわざすみません…」
美姫「気にしないで。あの小森って警部はね、
 警視庁管内でも"コウモリ警部"の渾名で有名なのよ。
 それで、光平君は?」
優香「こっちです」

優香は美姫を2階の光平の部屋へと案内する。

慎哉「美姫さん」
美姫「慎哉君、光平君はずっとこの中に?」
慎哉「あいつ…帰って来てから夕食も食べずに
 ずっと籠ったままなんだ。…おいっ光平!
 美姫さんが心配して来てくれたぞ!
 出て来いよ!」
美姫「よしなさい慎哉君、今はそっとしておいて
 あげるしかないわ…」
慎哉「でも…」

部屋の中では、明かりもつけずに
光平はだだじっとベットの上で蹲っていた。

光平「………」

1238

○小森好次郎→牧村光平を尾行・監視する。
○高井戸志郎→牧村光平を尾行・監視する。
○チャック・スェーガー→牧村光平を監視していた小森警部と高井戸刑事を追い払う。
○桂美姫→牧村光平を監視していた小森警部と高井戸刑事を追い払う。

○牧村光平→悪夢を見る。その後精神的ショックで、一時的に自室に引き籠る。
○朝倉慎哉→牧村光平を心配する。
○沢渡優香→牧村光平を心配する。
●東条寺理乃→あの落雷事故の夜の事が、牧村光平の悪夢に出る形で明らかに。
 どうやら光平に何らかの人体実験を施していた模様。連続殺人犯として全国に指名手配される。


『天凰輝シグフェル 序章』-5/ファーストコンタクト

作者・ティアラロイド

1239

***国防省官舎・尾上参謀宅前***

いよいよ今夜、大鷲連山から偶然発掘された反重力鉱石が
警視庁からブレイバーベースまで輸送される。
その指揮を執る国防省の尾上参謀を迎えに、
大門凛子と稲森真由の二人は車に乗って来ていた。

尾上「では、行ってくる」
尾上の妻「あなた、お気をつけて」
尾上の息子「…パパ、行っちゃダメだ!」

尾上の妻は夫を見送ろうとするが、
まだ幼稚園に入るかどうかくらいの幼い尾上の息子は、
ひどく狼狽したように必死な顔で父親の手を放そうとしない。

尾上の妻「こら、パパを困らせちゃいけません!」
尾上の息子「…おねがいパパ! 行かないで!
 行ったら…パパが死んじゃう!」
尾上「ハハハ、大丈夫だそ。パパは強いんだ。
 どんな悪い奴らがやって来たって負けやしないぞ!」

稲森真由は車の助手席からずっと
尾上とその家族の光景を眺めている。

真由「………」
凛子「どうしたの?」
真由「すみません。つい、両親と姉の事を思い出しちゃって…」

真由は尾上の家族の様子を見て、
今は亡き自分の家族の事を思い出し、
しんみりとした気持ちになっているのだった。
それを聞いて凛子が口を開く。

凛子「実を言うとね、尾上参謀は秘密結社エゴスとの戦いで
 一度殉職されて亡くなられているのよ」
真由「えっ! すると尾上さんって黄泉がえり現象で
 生き返られた方だったんですか?」
凛子「その通りよ。だからご家族の方が心配されるのも
 無理ないわ。大切な肉親を失う思いは、誰だって
 二度としたくはないはずよ…」

だが、この時の必死に父親を引き止めようとする尾上の子供の叫びと訴えが、
実は後々の運命を予感させる言葉であろうとは、まだこの時は
誰も気づいてはいなかった…。


***都内某所・Gショッカー秘密アジト***

モグラルギン「見ろ、これがGショッカー秘密警察の諜報網が
 独自入手した、極秘の運搬ルートだ!」

銀帝軍ゾーンの銀河闘士モグラルギンの指揮の下、
バツラー兵たちが集まり作戦会議を行っている。
かつて大鷲連山で反重力鉱石の隠し場所の捜索を行った経験もある
モグラルギンだが、当時はせっかく見つけた反重力鉱石を
銀河商人ドンゴロスが薄汚い石と勘違いして放り投げてしまい、
そのまま光の彼方に消えてしまった。そしてモグラルギン自身も
地球戦隊ファイブマンとの戦いで戦死したのである。

こうして黄泉がえり現象により地獄から生還した
モグラルギンにとって、今回の反重力鉱石強奪作戦は
まさに雪辱戦と言えた。

モグラルギン「手はずは今言ったとおりだ!
 抜かるなよ貴様ら!」

1240

***江東区豊洲・住宅街 朝倉家前***

すっかり周囲も寝静まった夜。
明かりも消えた朝倉家の様子を、
ゴミ捨て場のポリバケツの中に潜みながら、
じっと息を潜めて窺っている見るからに怪しげな
二人組の男たちがいた。

チャック・スェーガーと桂美姫に一度は追い払われながらも、
またしつこく戻ってきた小森警部と高井戸刑事である。

小森「メガロシティ署の奴らなんかに手柄を横取りされてたまるか!
 必ず尻尾をこの手で掴んでやるっ!」
高井戸「でも警部、この中何か臭いませんかぁ?
 ううっ…臭いですよぉ」
小森「我慢しろ」

いつもなら何かの拍子に頭からポリバケツに
突っ込むという災難に遭うことの多い小森警部だが、
最近はとうとう自らの意思で進んで
ポリバケツの中に入るようになってしまったようである…(汗。


***朝倉家2階・光平の部屋***

光平「………」

光平はまだ学生服姿のまま着替えることもなく、
ベットの上で仰向けで横になり、いつしか深い眠りについていた。

≪目覚めなさい。≫

どこかから『声』がした。
ん? ここは……どこだ……?
気がつくと光平は、白一色の靄に満たされた
空間の中を漂っていた。上下も、左右もわからない。

光平「また…夢か…」

不思議な浮遊感に包まれる中で、光平は思った。
これはこの間とはまた別の悪夢なのだろうか…。
それに、今確か誰かの声がしたような。
あれは……何と言ったんだ……めざ……そう、目覚めよ、と……

≪そうです。目覚めの時は来ました――鳳凰の騎士よ≫

◇  ◇  ◇

高井戸「警部! 出て来ました!」
小森「なにっ!?」
高井戸「ほら、あそこです!」

高井戸刑事の指差す方向には、玄関から外へ出て、
まるで夢遊病者のようにフラフラと
道路を歩き出す光平の姿が確かにあった。

光平「………」

小森「ビンゴだ! すぐに奴を追うぞ!」
高井戸「了解です!」

1241

***有明・台場方面***

サターン「貴女方のような美しいお嬢さんたちと
 ご一緒できるだなんて光栄だなあ。どうですか?
 この任務が終わったら、僕と一杯お茶でも…」
凛子「え、遠慮しときます…(汗」

警視庁を出た輸送隊は豊洲を抜けて有明地区を通り、
海から輸送任務を引き継ぐ潜水艇が待機しているポイントまで向かう。
警護は主として地球連邦軍兵士が担当し、応援として警視庁からも
ZACと国安O課が加わっている。

そしてお台場に差し掛かった辺りの事だった。
輸送車列がモグラルギン率いる部隊に奇襲を受けたのである。

モグラルギン「聞けブレイバーズ!
 反重力鉱石は我々Gショッカーが頂いた!」

車列の先頭を走っていたZAC専用車両・ZACローダーから
マーズ、サターン、マーキュリーの3名のサイバーコップが飛び出してくる。

マーキュリー「運搬ルートが敵に漏れていたのか!」
マーズ「直ちに応戦準備! なんとしても反重力鉱石を守るんだ!」

真由も凛子の運転していた車から出て変身し、
臨戦態勢に入る。

真由「――変身ッ!!」

シャバドゥビタッチヘンシ~ン!!

◇  ◇  ◇

一方、彷徨う牧村光平を尾行して、お台場近くまで来てしまった
小森&高井戸の迷刑事コンビだったが、途中で光平の姿を
完全に見失ってしまった。

高井戸「警部、ダメです。どこにもいません!」
小森「ちきしょー、あのイケメン小僧、どこ行きやがった!」

その時、背後から誰かが小森警部の右肩を叩いた。

小森「なんだ高井戸?」

小森警部は後ろを振り返らずに右肩だけ
面倒そうに振り払う。

高井戸「…け、警部! ボクじゃありません!」
小森「なにっ!?」
高井戸「う、後ろ後ろぉ~!!(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」

横にいた高井戸刑事に言われるがままに小森警部が後ろに振り向くと、
そこには暗い紫の不気味な肌に、頭に生えた角が一本と尖った両耳、
牙むき出しの裂けた口に、気味の悪い目つきをした醜い怪物が2体、
小森警部と高井戸刑事の目の前に立っていたのである。

ゴブリンイーバA「グゥゥゥゥッ!!」
ゴブリンイーバB「グォォォッッ!!」

小森「ギャアアッ!!!」
高井戸「でたあああっ!!!」

小森と高井戸の二人は悲鳴を上げて、
情けないことにそのまま気絶してしまった。

1242

一方、輸送中の反重力鉱石を守るブレイバーズと、
それを狙うGショッカーの戦いはまだ続いていた。

マーズ「バツラー兵はあらかた片づけた!」
サターン「あとはお前だけだ! モグラ野郎ッ!」
モグラルギン「フンッ、いい気になるな!
 幸い今は真っ暗やみの夜。こんな物はもういらん!」

モグラルギンは装着していたサングラスを投げ捨てた。

モグラルギン「ゆくぞぉぉッ!!」

両腕の鋭い爪を武器に挑みかかろうとしたモグラルギン。
それに対して構えるサイバーコップと仮面ライダーメイジ。
だが、その時信じられないことが起こった。

モグラルギン「――!!」

マーズ「――!?」
サターン「――!?」
マーキュリー「――!?」
メイジ「――えっ!?」
凛子「――なに??」
尾上「どういうことだ!?」

なんとモグラルギンの背中から腹部にかけて、
何者かが剣で貫き、その腹からは鮮血が噴き出していたのである!

モグラルギン「な、なんだ…。何が起こったんだ…!」
ゴブリンイーバA「グゥゥゥッ!!」

モグラルギンを刺していた謎の怪物は、
自らの剣をモグラルギンの胴体から乱暴に引き抜いた。
モグラルギンは後ろに振り返ろうとするが、その瞬間に
もう一体の同じ姿の怪物が第二撃の斬撃を加える。

ゴブリンイーバB「グェェェェッ!!」
モグラルギン「ぐわあああっ!!!!!!!」

哀れモグラルギンは、自分の身にいったい何が起こったのか
理解できぬまま爆死してしまった。

マーズ「…な、なんだあの化け物は!?」
マーキュリー「仲間割れですかね…?」
サターン「いや、どうもGショッカーの怪人ではないようだけどね!」

1243

ゴブリンイーバA「グゥゥゥゥッ…」
ゴブリンイーバB「グォォォッッ…」

モグラルギンを片づけた2体の怪物は、
今度はゆっくりと歩いてこちらに向かってくる。

凛子「こっちに向かってくるわ!」
マーズ「あいつらの狙いも反重力鉱石か!」
尾上「いかん! 反重力鉱石を守るんだ!
 射撃隊、構えッ!!」

尾上の指示で、連邦軍兵士たちが列を成して、
一斉に謎の怪物2体に対して銃を構える。
それでも構う様子もなく、怪物たちは徐々にこちらへと近づいてくる。

尾上「撃てーッ!!」

連邦軍兵士たちは銃撃を開始した。
凛子もそれに連携する形で一緒に怪物めがけて発砲する。
しかし、発射された弾は全て、怪物たちの手前寸前のところで
小さな時空クレバスが幾つも発生し、全て吸いこんでしまった。

マーズ「な、なにっ!?」
凛子「なんなの今のは!?」
サターン「時空クレバスか!?」
マーキュリー「そんなバカな!!」

半ばヤケになった状態で銃剣片手に突撃していく連邦軍兵士たちを、
2体の怪物は軽くあしらうように振り払っていく。

連邦軍兵士A「うわああっ!!」
連邦軍兵士B「ぎゃああっ!!」

ゴミのように吹き飛ばされていく連邦軍兵士たち…。

マーズ「ならばこれならどうだ! セットウェポン!」

マーズはあらかじめブラックチェンバーで運び込んでおいた
CW-002メガストームを装着する。普通なら超高層ビルすら
一瞬にして瓦礫の山にしてしまう威力だ。
ヘッドキャップを開くと6発のミサイルが一斉発射された。

ゴブリンイーバA「グゥゥゥゥッ…」
ゴブリンイーバB「グォォォッッ…」

だが案の定というべきか、やはり怪物たちの一歩手前のところで、
時空クレパスが出来て全て吸いこんでしまう。いや…今度はそれどころか、
サイバーコップたちの背後にも同時に時空クレパスが出来て、
なんと彼らめがけて、今吸い込んだばかりのミサイル弾を排出したのだ!

マーズ「なんだと!?」
サターン「そんな!!」
マーキュリー「うわあああっ!!」

サイバーコップの3人は爆風で吹き飛ばされたしまった。

1244

凛子「そんな…」
尾上「いかん! このままでは反重力鉱石が…!」
メイジ「くっ…!」

しかし、2体の怪物たちは、反重力鉱石が納められた輸送車には
全く目もくれず、尾上や凛子たちのいる方向へと近づいてきたのである。
その怪物たちの殺気漲る目線の先には、尾上参謀がいた。
それに気がついたメイジがハッとなる。

凛子「どういうことなの…?」
メイジ「…違う! こいつらの目的は反重力鉱石
 なんかじゃない! 狙いは尾上参謀よ!」
凛子「なんですって!!」
尾上「なぜ私がっ…!?」

そうこうしているうちに怪物たちは剣を振りかざして
すぐそこまで襲いかかって来た。

メイジ「尾上参謀に手出しはさせない!
 私が守って見せる!」

メイジはスクラッチネイルやウィザーソードガンを駆使して
謎の怪物2体に挑む。が、その攻撃はことごとくかわされた揚句、
メイジの首は怪物の腕につかまれ締め上げられてしまった。

メイジ「ああああっ!!!」
凛子「真由ちゃん!」

ゴブリンイーバA「ジャマダ……」
ゴブリンイーバB「ドケ……」

メイジ「――!!」

メイジは怪物によって遥か遠くにぶん投げられてしまった。
そして尾上参謀を庇うように立ちふさがった凛子も、
同じようにあっさり振り払われ投げ飛ばされてしまう。

メイジ「キャアアッ―!!」
凛子「アアアアッ―!!」

ついに尾上の眼前へと到達する2体の怪物。
その手に持つ凶器の剣が、非情にも尾上参謀の身体に振りおろされた。

メイジ「やめてえええっ!!!」
尾上「ウギャアアアッ!!」

メイジの叫びもむなしく、尾上参謀は謎の怪物たちの手によって
無残に殺されてしまった…。

1245

凛子「そんな……」
マーズ「くそっ! なんてことだ!!」

ダメージで未だ立ち上がることのできない凛子とメイジ、
そして3人のサイバーコップたち。この時、マーズは
ふと、あの時のバロン影山の言葉を思い出していた。

マーズ「もしかして…奴らがバロン影山の言っていた、
 Gショッカーとは全く違う…俺たちの真の敵なのか……!?」

尾上参謀を惨殺した2体の怪物は、地表に倒れたままのサイバーコップや
メイジ、凛子には全く関心すら示そうともせず、もう用は済んだとばかりに
その場から引き揚げようとする。

サターン「ちきしょう……」
マーキュリー「待ちやがれ……」

怪物たちを追おうとするも、全く動くことすらできない彼ら。
だがその時だった! 突然眩い光と一陣の風と共に
一人の異形の戦士が舞い降りたのは…!

ゴブリンイーバA「グゥゥゥゥッ…!?」
ゴブリンイーバB「グォォォッッ…!?」

大きく翼を舞い広げたその姿、
そして巻き起こった風とその炎を司る力によって
周囲一帯は灼熱の熱風に包まれた!
相対する異形の戦士と謎の怪物…。

マーズ「いったい誰なんだアイツは!?」

その異形の戦士を見た怪物の片割れが、その名を呟く。

ゴブリンイーバA「シィグゥフェェルゥゥッ…!!」

メイジ「…シグフェル?」

シグフェル「………」

次の瞬間、サイバーコップたちにはほとんど碌に見向きすらしなかった
2体の怪物が、今度は敵意をむき出しにしてシグフェルと呼ばれた
異形の存在に襲いかかっていったのである!

ゴブリンイーバA「グゥゥゥゥッ!!」
ゴブリンイーバB「グォォォッッ!!」

肩部の装甲からビーム砲を発射する怪物たちだったが、
シグフェルの起こした爆炎の壁によって遮られる。
怪物の一体がシグフェルに飛びかかるが、
逆にシグフェルは怪物の頭を掴み上げ、
それを胴体から脊髄ごと力ずくで引っこ抜いた!
怪物の体液が周囲に飛び散る。

ゴブリンイーバA「オグルボホオオォォッッッッッ!!!」
シグフェル「フンッ…!」

シグフェルによって無慈悲に打ち捨てられた怪物の首と胴体は、
不快な断末魔の悲鳴と共に爆発四散して消滅した。
残るもう一体の怪物も、剣を振りかざしてシグフェルに斬りかかるが、
そう思った瞬間には、もう怪物の腹はシグフェルの拳によって
貫かれていたのである。

ゴブリンイーバB「グブゴゲエェッッ!!!」

苦悶の表情を浮かべながら、残り一体の方の怪物も
先ほどの片割れと同じように爆発して消滅したのである。

シグフェル「………」

戦いを終えたシグフェルは、一言も言葉を発さぬまま、
静かに振り向きその場から立ち去って行く…。

サイバーコップ、仮面ライダーメイジ、大門凛子、
他に生き残った一部連邦軍兵士たちは、
この状況をただ黙って見ているしかなかった。

メイジ「………」
マーズ「シグフェル…奴はいったい何者なんだ!」

ブレイバーズと、後に天凰輝シグフェルと呼ばれることになる異形の戦士…。
これが両者のファーストコンタクトであった。

1246

○小森好次郎→深夜、牧村光平を尾行中にゴブリンイーバに遭遇。悲鳴をあげて気を失う。
○高井戸志郎→深夜、牧村光平を尾行中にゴブリンイーバに遭遇。悲鳴をあげて気を失う。
○大門凛子→反重力鉱石の運搬護衛中、ゴブリンイーバに襲われ敗北。シグフェルを目撃する。
○仮面ライダーメイジ/稲森真由→反重力鉱石の運搬護衛中、ゴブリンイーバに襲われ敗北。シグフェルを目撃する。
○マーズ/北条明→反重力鉱石の運搬護衛中、ゴブリンイーバに襲われ敗北。シグフェルを目撃する。
○サターン/毛利亮一→反重力鉱石の運搬護衛中、ゴブリンイーバに襲われ敗北。シグフェルを目撃する。
○マーキュリー/西園寺治→反重力鉱石の運搬護衛中、ゴブリンイーバに襲われ敗北。シグフェルを目撃する。
○尾上参謀→反重力鉱石の運搬護衛中に襲撃を受け、ゴブリンイーバによって惨殺される。
●モグラルギン→反重力鉱石の輸送隊を襲撃し、サイバーコップらと交戦するが、ゴブリンイーバに惨殺される。

○シグフェル/牧村光平→深夜、謎の声に導かれて家を出る。シグフェルの姿に初変身。
 2体のゴブリンイーバ相手に圧倒的な強さで無双し、ファーストバトルに勝利。
●ゴブリンイーバA→モグラルギンと尾上参謀を惨殺する。その直後、シグフェルに敗北し爆死。
●ゴブリンイーバB→モグラルギンと尾上参謀を惨殺する。その直後、シグフェルに敗北し爆死。

【今回の新規登場】
●モグラルギン(地球戦隊ファイブマン)
 銀帝軍ゾーンの銀河闘士で、銀河商人ドンゴロスに雇われて、
 古代宇宙人の遺した財宝(実は反重力鉱石)を探索した。
 その姿の通り自在に地中を掘り進む能力を持つ。
 日光が苦手なため、昼間の地上では常にサングラスを着用している。


『天凰輝シグフェル 序章』-6

作者・ティアラロイド

1247

***ビッグベイサー・メインルーム***

海底深くに建造されたバトルフィーバー隊の秘密基地・ビッグベイサーである。
尾上参謀の突然の訃報は、倉間鉄山将軍の元にも届いていた。

伝「将軍、尾上参謀が昨夜の反重力鉱石輸送の任務中、
 殉職されました」
鉄山「………」

鉄山は向こうを向いて立ち尽くしたまま、全く動かず、
その表情はこちらから窺い知ることはできない。

伝「将軍…?」
鉄山「…すまんが、しばらく一人にしてくれんか」

伝正夫は無言で深く一礼すると、静かに退室した。
その時、苦楽を共にした弟弟子を再び失った
鉄山将軍の頬に一筋の涙がうっすらと流れていた事を
知る者は誰もいない。


***地球連邦軍極東支部・伊豆基地 戦死者用霊安室***

地球連邦軍伊豆基地の霊安室では、大門凛子と稲森真由も立ち会う形で、
亡くなった尾上参謀とその家族との涙の対面が行われていた。
夫の亡骸を前にして激しく慟哭して崩れ落ちる尾上の妻。
そしてその様子を、指を口にくわえながらただ茫然見つめている、
まだ幼い尾上の男の子。

その光景にいたたまれなくなった真由は、思わず廊下へと飛び出した。
凛子もその後を追う。

凛子「真由ちゃん、いらっしゃい…」

声を押し殺して泣いている真由をそっと支えながら、
凛子は優しく声をかけた。

真由「あたし…誰も守れなかった!」、

力なく首を振る真由を廊下の椅子に腰かけさせ、
その隣に座った凛子は真由を慰める。

凛子「それは違うわ。よく聞きなさい、真由ちゃん」

真由の震えている肩を抱きながら、凛子はゆっくりと喋りだした。

凛子「今回の事はあたしたち全員の責任。
 決して真由ちゃんだけのせいではないわ…。
 だからもう、自分だけを責めるのはおやめなさい」
真由「でも、あたしはこの魔法の力を、
 人を守るために使うって決めたのにっ…」
凛子「そうね…。でもそれなら尚更、貴女は自分を
 せめてはいけないわ」
真由「凛子さん…」
凛子「亡くなられた尾上参謀のためにも、
 私たちが頑張らなくちゃ。ね」
真由「………」

背中を撫でてくれる凛子の優しい手を感じながら、
真由は黙って何度も何度も頷いた。

1248

***神の神殿・精神と時の部屋***

マジレッド「うわあああっ!!!!!」
マジグリーン「ぐわああああっ!!!!!!」
マジイエロー「うわあああっ!!!!」

真由が変身した仮面ライダーメイジの魔法攻撃で、
マジレッド、マジグリーン、マジイエローの3人は吹っ飛ばされた。

マジグリーン「痛タタタッ…。どうしたんだ、今日の真由ちゃん?」
マジレッド「凄い気迫だ…」
マジイエロー「この前の特訓の時とは、まるで別人じゃねえか…」

メイジ「ハァ……ハァ……!!」

マジピンク「コラッ、しっかりしろ男ども!
 女の子一人相手にだらしがないぞ!」
マジブルー「次は私が相手よ!」
メイジ「お願いしますっ!」
マジブルー「――ジー・マジカ!!」

マジブルーの水を自在に操る呪文で発生した大津波がメイジに迫る!

自分を責めるのはやめられないかもしれない。
でも、そればかりにいつまでも囚われていては、
亡くなった尾上にも、そして尾上の妻と子にも顔向けできない。
そして自分が尊敬する魔法使い・操真晴人のようにもなれないかもしれない。
でも自分は、今出来る限りの事を精一杯頑張ろう。
真由は自分の心にそう誓うのであった。


***警視庁・捜査本部会議室***

加賀美「これが、君たちが遭遇したという、
 新しい敵かね?」

昨夜、反重力鉱石輸送隊を襲撃した謎の怪物たち、
そして現れた正体不明の異形の戦士について、
加賀美陸警視総監も加わる形で、本庁幹部たちから
事情聴取を受ける、北条明、毛利亮一、西園寺治の3名。

中央正面のスクリーンには、ビットスーツのカメラに収められた
昨夜の様子の映像が映し出されている。しかし動画の一部は
ピンボケしており、所々ハッキリ映っていない個所もある。

捜査管理官「時空クレパスを意のままに操る怪物か…」
刑事部長「それからこれ、最終的に襲ってきた怪物たちを
 撃退したという謎の生物だが、いったいなんなのかね?」
西園寺「それもまだわかりません」
毛利「怪物たちは、その生物の事を"シグフェル"と呼んでいました」
北条「我々が昨夜遭遇した怪物たちは、Gショッカーではないと思います」
捜査管理官「Gショッカーを超える、新たな敵が現れたとでも言いたいのかね!?」
北条「はい!」

北条の返答に、本庁幹部たちはどっとどよめく。

公安部長「総監、どのように考えられますか?」
加賀美「………」

公安部長からの問いかけに、加賀美陸は暫し沈黙した後、
このように発言した。

加賀美「君たちの言うことが本当であれば、
 それはもう、EBE(イーバ)としか言いようがないな…」
刑事部長「総監?」
加賀美「この件については当面の間、トップシークレットとする!」

1249

***警視庁地下・ZAC本部***

島津「イーバか…。加賀美総監も上手いネーミングを考え付いたもんね」

ZAC本部へと戻った北条たち3人は、
織田キャップと島津キャップ代行に報告する。

西園寺「なんなんですか? そのイーバっていうのは」
島津「イーバとは本来、米国の極秘文書の中などに登場した
 "Extra-terrestrial Biological Entities=EBE 地球外生命体"
を指した用語の事よ。要するに正体不明ってこと。地球にも堂々と
 異星人が普通に訪れるようになった今のご時世じゃあ、
 もう完全に死語だったんだけどね」
矢沢「そのイーバを倒したシグフェルってのも気になりますね。
 我々の味方なんでしょうか?」
織田「それも含めて、今のところは正体不明というところなんだろうな…」
西園寺「こんな時に先輩がいてくれたら…」

ふと西園寺は、長らく空席となってままのデスクに視線を向ける。
その机は、かつて自分たちと同じサイバーコップに所属し、
"ジュピター"のビットスーツを装着して共に戦った武田真也が
座っていた席である。

武田の正体は、23世紀の未来世界から時空を超えて現代に流れ着いた、
コンピュータによる支配と戦う人類解放軍の戦士で、Z-226(ゼット・ダブルツーシックス)であった。
デストラップとの最終決戦の後、武田は、サイバーコップの実質的まとめ役であった上杉智子や
一度は敵同士となったものの和解した戦友ルシファーと共に未来世界へと帰還した。
その後の武田たちの消息については、杳(よう)として知れない…。

北条「武田の事はもう言うな。それよりもイーバはなんで
 反重力鉱石を無視して尾上参謀を狙ったんだ?」
毛利「尾上参謀にそんな得体のしれない化け物に
 恨まれるような心当たりがあったとも思えないしな…」
西園寺「――あっ!!」

突然何かを閃いたように大声を上げた西園寺に、
周囲はびっくりする。

毛利「…な、なんだよ突然! ビックリさせんなよ」
西園寺「いたんですよ!」
島津「何が?」
西園寺「イーバがあの日の夜、手にかけた人間が尾上参謀の他にも!」
北条「なにっ…?」
西園寺「ほら、あのモグラのエイリアン!」
北条「――!!」

確かにあの日の夜、イーバ2体が直接手を下して死に至らしめたのは、
尾上参謀とモグラルギンだけである。他にも警護にあたっていた北条たちに
大門凛子や稲森真由、連邦軍兵士たちもそれぞれ重傷こそ負ったが、
いずれも生き残り殺されてはいないのである。

北条「尾上参謀とGショッカーの怪人に何の共通点があるって言うんだ?」
西園寺「尾上参謀は一度エゴスとの戦いで殉職されていて、
 あのモグラの化け物だって一度は地球戦隊ファイブマンに
 倒されてるじゃないですか!?」
織田「すると何か、お前は"一度死んで黄泉がえり現象で生き返った人間"が、
 イーバに標的にされてると言いたいのか?」
島津「それはちょっと考えすぎじゃないかしら。
 推理としては強引すぎるわ」
織田「…いや、ちょっと待て。その強引な推理が案外当たっているかもしれないぞ!」
北条「キャップ、この警視庁やブレイバーズの中にも、
 "一度死んで黄泉がえり現象で生き返った人間"は大勢所属しています。
 イーバもあの2匹で終わりだとは到底思えません。早く該当者に警告して
 注意を促さないと!」
島津「でもこの件はトップシークレットなんでしょう?」
織田「それについては私から総監に進言しよう」

1250

○伝正夫→倉間鉄山に尾上参謀殉職を報告する。
○倉間鉄山→尾上参謀の訃報に接し、涙する。
○大門凛子→落ち込んだ稲森真由を励ます。
○仮面ライダーメイジ/稲森真由→イーバとの戦いの敗北で精神的に落ち込むが、大門凛子の励ましで吹っ切れ、立ち直る。
○マジレッド/小津魁→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○マジグリーン/小津蒔人→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○マジイエロー/小津翼→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○マジピンク/小津芳香→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○マジブルー/小津麗→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○加賀美陸→謎の怪物を「イーバ」と命名。この件をトップシークレットに指定する。
○北条明→本庁幹部たちにイーバとシグフェルに遭遇した一部始終を報告する。
○毛利亮一→本庁幹部たちにイーバとシグフェルに遭遇した一部始終を報告する。
○西園寺治→本庁幹部たちにイーバとシグフェルに遭遇した一部始終を報告する。
○矢沢大介→ZAC本部に戻って来た北条明たちから、イーバとシグフェルに関する報告を聞く。
○島津瑞恵→ZAC本部に戻って来た北条明たちから、イーバとシグフェルに関する報告を聞く。
○織田久義→ZAC本部に戻って来た北条明たちから、イーバとシグフェルに関する報告を聞く。

【今回の新規登場】
○島津瑞恵(電脳警察サイバーコップ)
 ZACの秘書兼キャップ代行。織田キャップのサポートを行い、織田の不在時には指揮を執ることもある。
 かつてビットスーツの研究員と恋仲になった過去があるが、その彼は研究所を襲ったミサイルの犠牲になっている。以来独身を通し、彼の子供とも言うべきビットスーツを使用するZACの仕事に従事している。

○小津魁=マジレッド(魔法戦隊マジレンジャー)
 小津家三男、末っ子の17歳。桐東高校の2年生で、
 所属しているサッカー部のマネージャー・山崎由佳に想いを寄せていた。
 得意な魔法は物質変換をする練成術。5聖者守護隊の炎を司る
 天空聖者フレイジェルの力によってマジレッドに変身、さらに魔法大変身で
 炎の剣を持つマジマジン・マジフェニックスに2段変身する。
 最終決戦後は、インフェルシアと人間界をつなぐ「インフェルシア親善大使」となった。
 のちに地球にやって来たゴーカイジャーのマーベラスとハカセの勇気を試し、
 彼らにマジレンジャーの大いなる力を託した。

○小津蒔人=マジグリーン(魔法戦隊マジレンジャー)
 小津家長兄の24歳。自宅近くに「アニキ農場」という畑を持っている農場経営者で、
 父・勇と母・深雪不在の期間は、家計は事実上彼一人で支えていた。植物と心を通わせたり
 操ったりする「植物魔術」が得意。5聖者守護隊の大地を司る天空聖者グランジェルの力でマジグリーンに、
 さらに魔法大変身で怪力を武器とするマジマジン・マジタウロスに2段変身、「マッスルグリーン」と言う
 筋肉質体型に変身することが可能。将来ブラジルに「大アニキ農場」を作る夢を持ち、
 英語も流暢に話せる。

○小津芳香=マジピンク(魔法戦隊マジレンジャー)
 小津家長女の第2子で22歳。変身呪文を得意とする。
 者守護隊の風を司る天空聖者ウインジェルの力でマジピンクに変身、
 さらに魔法大変身でやはり変身能力が武器のマジマジン・マジフェアリーに2段変身する。
 自由奔放な性格で、天然ボケな小津家のムードメーカー。

○小津麗=マジブルー(魔法戦隊マジレンジャー)
 小津家次女の第3子、20歳。母と同じ占いを水晶玉を使って行える。
 5聖者守護隊の水を司る天空聖者スプラジェルの力によってマジブルーに変身、
 さらに魔法大変身で水中戦を得意とするマジマジン・マジマーメイドに2段変身する。
 最終決戦直前においてヒカルと結婚。現在は夫と共に天空聖界マジトピアで暮らしている。


『天凰輝シグフェル 序章』-7

作者・ティアラロイド

1251

***海防大学付属高校・校門前***

いつも通りの朝の登校風景。
登校してきた光平、慎哉、優香を今か今かと待ち構えていたのは、
満面のどや顔を浮かべた小森警部と高井戸刑事だった。

慎哉「またコイツらかっ…」
光平「………」
小森「やあやあ、おはよう牧村光平君!
 今日はとってもいい天気だねえ♪( ̄∇ ̄)v ドヤッ!」
優香「なんなんですかアナタたちは!
 まだ光平くんを疑っているんですか!?」
小森「いやいやお嬢さん、我々はねえ、
 もう疑いの段階を通り越して確信をもっているのだよ」
慎哉「なに言ってんだ、このヘボ刑事っ!」
高井戸「牧村光平、昨夜の反重力鉱石輸送隊襲撃事件の
 重要容疑者として逮捕する!」

高井戸刑事は光平の両腕に手錠を嵌めた。

光平「――!!」
慎哉「ハァ…!?」
小森「えっへん! 我々二人はな、
 昨夜遅くにこの少年がこっそり家から抜け出し、
 事件現場の近くまで来た事をしっかりと
 この目で確認しているんだ!」
高井戸「その通り!」
優香「そんなっ…何かの間違いです!」
小森「申し分があれば署の方で聞かせてもらう」
高井戸「さあ、乗るんだ!」
慎哉「光平!」
光平「大丈夫だよ、慎哉、優香。
 きちんと話せばきっと疑いも晴れるからさ」

こうして光平はパトカーに乗せられ、桜田門署へ連行されてしまった。

優香「どうしようっ朝倉くん!
 早く美姫さんとチャックさんに連絡して
 なんとかしてもらわないと…!」
慎哉「…いや。美姫さんとチャックさんには悪いけど、
 やっぱり警察は信用できない」
優香「じゃあどうするのっ!?」
慎哉「………」


***フランス南西部・アルカション***

フランス・アキテーヌ地域圏・ジロンド県にあるアルカション。
ランド地方、ボルドー南西34マイルの大西洋岸にあり、人気の海水浴場がある。
良質の砂浜と穏やかな気候により、時のフランス皇帝ナポレオン3世の妻、
ウジェニー皇后の静養地としても知られている。

そのリゾート地に、東京ドームの数十倍はあろうかという広大な敷地と森林、
そして緑豊かな庭園に囲まれた邸宅があった。その昔さるフランスの大貴族が
暮らしていたという城であり、現在の所有者はアルジェリアの石油王一族として
セレブ界にその名を知られるアルシャード家である。

老執事「お嬢様、日本の朝倉慎哉さまからお電話が届いております。
 何か急なご用件だとかで…」
フィリナ「…慎哉が? すぐに繋いでちょうだい」

まだシャワーを浴び終えたばかりでバスローブ姿のフィリナは、
王朝様式の家具やマントルピース、絵画など、すべてにエレガンスが薫る空間の
広い居間で寛ぎながら、老執事から受話器を受け取る。

フィリナ「…もしもし慎哉、久しぶりね。その後光平や優香は元気?
 ――えっ!? なんですって!!」

1252

舞台は、再び日本に戻る…。

***東京・桜田門署 取調室***

光平「だから何度も言ってるじゃないですか。
 僕は昨日の事は何も覚えてはいません」
小森「しらばっくれるな! "何も覚えていない"と言えば
 それで通ると思ったら大間違いだぞっ!!」

光平に対する小森警部の厳しい取り調べが続く中、
部屋の中に入って来た高井戸刑事が不安そうな顔で、
小森の耳にそっと耳打ちする。

小森「…なにっ!?」
高井戸「弁護士の北岡が現れました。
 証拠不十分で不当逮捕だと言って抗議してるんですよ。
 どうします…?」
光平「どうしたんですか?」
小森「な、なんでもない!
 ちょっとここで待ってろ!」

北岡秀一 ――どんな不利な裁判でも逆転無罪にし「クロをシロにしてしまう」ほどの実力を持つ
凄腕の悪徳弁護士。警察官で捜査に携わる者あれば、その名を知らぬ人間などはいない。そんな大物がなんで
一介の名もない男子高校生の弁護など引き受けたのだろうか…。意外な展開に動揺する小森たちだが、
まずは刑事捜査課の応接の席まで通し、ともかく応対に出る。

北岡「どうもはじめまして。弁護士の北岡と申します」
小森「北岡先生、貴方のお噂は伺っています。拝金主義のペテン師だそうで?」

さっそく小森警部から北岡弁護士に対する、嫌みの先制攻撃である。だが、しかし…

北岡「こちらも存じていますよ。小森好次郎警部、恰好つけたがりのドジな三流無能警官。
 これまで数々の事件を迷宮入りさせてきた華麗な実績をお持ちで、最近のご趣味は
 ゴミバケツに顔を突っ込む事。それでついた渾名が"コウモリ警部"…」
小森「なんだとぉぉ――ッ!!!!!!!ヽ(`Д´)ノウワァァン!!」

「コウモリ警部」というのは小森警部にとって最大の禁句である。
普段ならこれで呼ばれたり耳にした途端に激怒して手が付けられなくなるのだが、
脇に控えていた高井戸刑事が必死に押しとどめる。

高井戸「け、警部! どうかこの場は抑えてください!」
小森「…うぬぬぬぬぬっ!!!!」
北岡「牧村光平君は学校生活においても成績優秀で、
 優等生の部類に入る健全な生徒であり、これまでに
 不良行為の類も一切認められません。速やかに釈放を要求します」
小森「そうはいくか! あのイケメン小僧は重要容疑者として
 まだ取り調べ中だ!」

1253

小森と北岡の押し問答が続く中、
チャック・スェーガーと桂美姫が桜田門署にやって来た。
どうやら優香から連絡を受け取り、光平の身柄を引き取るべく
乗り込んできたようだ。

チャック「お前は…!?」
北岡「これはこれは、メガロシティ署の桂美姫警部補に
 チャック・スェーガー巡査部長ではありませんか。
 こんなところでお会いするとは奇遇ですねえ」

チャックと美姫も、これまで自分たち逮捕してきた犯人の中で、
マフィアのボスなどの大物何人かを法廷の土壇場で北岡にひっくり返されて、
泣く泣く釈放してきた経緯がある。そのような事情で、
チャックも美姫も北岡とは因縁の仲であり、快く思ってはいない。
さらに美姫には、実家の桂コンツェルンも幾つかの裁判で
北岡を雇っていたという過去の事情もあり、ばつが悪かった。

チャック「うわっ、イヤな奴の顔を見ちまったぜ…」
北岡「これはご挨拶で…」
美姫「なんでアナタがこんなところにいるの!」
北岡「牧村光平君の弁護を依頼されました」
美姫「なんですって!?」

驚く美姫とチャック。確か今の光平の身よりと言えば、
沖縄で農家と小さな琉球古武術の道場を営んでいるという
父方の年老いた祖父母しかいないはず…。
光平を預かっている朝倉家も、一流の大手商社マンの家であり
比較的裕福な家庭ではあるが、それでもとても北岡を雇えるような
大金をすぐに用意できるとは思えない。

小森「またお前らか? 今度は何しにきた!」
美姫「牧村光平の身柄を引き取りに来たのよ!」
小森「くどい! あのイケメン小僧は昨夜の事件の
 重要容疑者なんだぞ!」
チャック「おや、まだ何も聞いていないんでありますか、小森警部殿…( ̄ー ̄)ニヤリ 」
小森「な、なんだその思わせぶりなニヤニヤ笑いは!?」
美姫「本庁からの通達よ! 昨夜の反重力鉱石輸送隊の襲撃事件は、
 被疑者死亡のまま書類送検。この事件はもうとっくに決着がついたのよ」
小森「……えっと、つまり、どーゆーことなんだ?」
高井戸「警部、つまりこれって誤認逮捕ってことですよぉっ!」
小森「…ご、ご、誤認逮捕~っ!?」

小森警部はようやく何が起こったのか事態を理解し、
部下の高井戸刑事共々顔面蒼白となる。

北岡「やれやれ…現場のヘボ刑事のとんだ先走りで、未来ある若者の人生が
 壊されるところでした。しかも別件による不当逮捕。未成年者に対する重大な人権侵害ですな!
 本来であればマスコミを動かして大々的な追及キャンペーンを張るところですが、
 幸いにして私の依頼主は、事を公にすることを望んではいません。
 お二人とも、命拾いをしましたな…」
小森「………」
高井戸「………」
北岡「それじゃあ、牧村光平君の身柄はこっちで引き取らせてもらいますよ」

1254

***江東区豊洲・住宅街 朝倉家玄関先***

優香「おかえりなさい、光平くん」
慎哉「待ってたぜ」
光平「ただいま。慎哉、優香」

釈放されて無事に帰って来た光平を、
慎哉と優香は暖かく迎えた。

北岡「では、私はこれで…」
光平「どうもありがとうございました」

北岡は光平を朝倉家まで送り届けると、
秘書兼ボディーガードの由良吾郎の運転する車に乗り、
早々に帰って行った。

慎哉「なんだかキザな弁護士だったなぁ…」
光平「それよりも慎哉」
慎哉「なんだよ?」
光平「慎哉なんだろ? フィリナに連絡して、
 あの弁護士を雇ってくれたのは?」
慎哉「へへっ…バレたか」
光平「アルシャードの力がなかったら、
 俺は留置場から出られなかったよ」

◇  ◇  ◇

自宅兼事務所に向かう帰路の最中の北岡秀一は、
車中から国際電話をかけていた。電話の相手は
今回の依頼主である。

北岡「お困りだった事態は全て解決しました。
 どうかご安心ください」
フィリナ@電話の声「ありがとう。報酬は
 直ちにご指定の口座に振り込ませていただくわ」
北岡「それはどうも。ところで、あの光平という少年と
 貴女とはいったいどのようなご関係で?」
フィリナ@電話の声「………」
北岡「いや、こんな噂を耳にした事がありましてね。
 かつてある日本人の若い外交官と中東の石油王一族の令嬢が
 恋に落ち、駆け落ちに近い形で結ばれました。
 当然令嬢の実家である石油王の一族は激怒し、
 日本への石油輸出があわやストップ寸前にまで陥ります。
 外務省でもその外交官の罷免論が浮上しますが、
 そんな彼の窮地を救い、拾い上げたのが、彼の外交官としての
 手腕を惜しんだ時の首相・板垣重政氏と、まだ当時は
 外務副大臣だった今の総理・剣桃太郎氏ですよ」
フィリナ@電話の声「初めて聞く話だわ……」
北岡「なかなかおとぼけもお上手だ。
 …で、この話にはまだ続きがあるんです。
 日本人外交官と石油王一族の令嬢との間には
 男の子が一人生まれましてね。今も生きていれば
 ちょうど高校生くらいの年頃でしょうかねえ…」
フィリナ@電話の声「………」
北岡「この話は日本の外務省では完全に禁句(タブー)とされています。
 もしこの噂が事実だとすれば、世界有数の石油王一族の血を引く
 ご落胤が、今もこの日本のどこかにいることになる…」
フィリナ@電話の声「そこまでよ北岡さん!
 それ以上の余計な詮索はやめてちょうだい」
北岡「詮索だなんてとんでもない。
 今のは単なる私の独り言だとご理解ください」
フィリナ@電話の声「…まったく、貴方だけは
 敵に回したくはないわね」
北岡「お褒めの言葉と受け取っておきます。
 それでは、これにて失礼」

そうして北岡は電話を切った。

<シナリオ完結。次シナリオへと続く>

1255

○小森好次郎→牧村光平を先走りで逮捕し、後になって誤認逮捕が発覚して顔面蒼白。
○高井戸志郎→牧村光平を先走りで逮捕し、後になって誤認逮捕が発覚して顔面蒼白。
○北岡秀一→フィリナ・クラウディア・アルシャードからの依頼で、
 牧村光平の釈放に漕ぎ着ける。光平の素性にも気づいている模様。
○チャック・スェーガー→桜田門署で小森警部たちと押し問答。偶然、北岡秀一とも顔を合わせる。
○桂美姫→桜田門署で小森警部たちと押し問答。偶然、北岡秀一とも顔を合わせる。

○牧村光平→小森警部と高井戸刑事に誤認逮捕されるが、北岡秀一の手で釈放される。
○朝倉慎哉→牧村光平が逮捕された事をフィリナに伝え、光平救出を依頼。
○沢渡優香→釈放されて帰って来た牧村光平を、朝倉慎哉と共に温かく迎える。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→朝倉慎哉からの連絡で、
 北岡秀一に牧村光平の弁護を依頼。釈放に持ち込ませる。 


『鳳凰の覚醒』-1

作者・ティアラロイド

1256

***メガロシティ署管内・とある山荘***

ここは、東京湾を挟んで湾岸副都心とは反対側にある、
千葉県側の海岸から少し離れた丘の上にひっそりと建つ、
寂れた山荘である。

垂金「…ひ、ひいいいいっっ!! く、来るなぁっ!!
 頼む殺さないでくれっ!!」

コボルトイーバA「グルルァーッ!!」
コボルトイーバB「グゥラァーッ!!」

犬のような顔をし、全身を青緑の体毛に覆われ、
右腕には大型のビーム銃のような武器を装着している
2体の獣人に今にも襲われようとしているこの男…。

垂金権造――かつてBBC(ブラックブッククラブ)に
所属していた元宝石商。飛影の妹・雪菜を捕らえ、
様々な拷問を加えて氷泪石を無理やり作らせていた非道な男である。
浦飯幽助たち霊界探偵の活躍により雪菜を奪還され、左京との
大博打にも負けて破産したところを、戸愚呂弟によって殺害された。

黄泉がえりにより幸運にも再びこの世に舞い戻って来た垂金は、
こんなこともあろうかと密かに別の場所にプールしてあった
隠し財産と共に、この山荘に人目を避けるように隠れ住んでいたのだが…。

垂金「金ならいくらでもやる!!
 命だけは助けてくれ!!」

しかし、垂金の命乞いを最初から無視するかのごとく、
獣人の一体は、右腕の大型銃の照準を垂金へと合わせた。

コボルトイーバA「ガルグゥゥゥッ…」
垂金「や、やめろおおおっっ!!!!」

次の瞬間、獣人の銃口から青白い光が放たれると、
垂金の肉体は分子分解で膨張し、内蔵諸共破裂して、
周囲に飛び散った一部の血痕や肉片を除いて
ほぼ蒸発して消滅した。

◇  ◇  ◇

火が放たれ激しく炎上する山荘から出る、
2体の獣人――コボルトイーバ。
だが、引き揚げようとしていた彼らの前に現れたのは、
あの時の鳳凰の姿をした異形の戦士――シグフェルだった。

シグフェル「………」

コボルトイーバA「シィグゥフェェルゥゥッ…!!」
コボルトイーバB「グゥルアアアッッ!!」

まるで狼のように素早く飛びかかった2体のコボルトイーバは、
それぞれ鋭い牙をむき出しにして、シグフェルの両腕に勢いよく噛みつく。
シグフェルはそれを意に介さぬように強引に振り払うと、
指先から2体の敵めがけて猛烈な火炎を迸らせた。

2体のコボルトイーバは、すぐに自分たちの前に
盾代わりに大きめの時空クレパスを発生させ攻撃を防ごうとしたが、
シグフェルの発した一筋の火炎は、時空クレパスに触れるや否や、
まるで物理的に突き破るかのように、時空クレパスを胡散霧消させてしまった。

コボルトイーバB「グギャアアッ――!!」

火炎はコボルトイーバの片割れに纏わりついて、
その身体を執拗に焼き尽くし、あっという間に灰へと変えてしまった。

コボルトイーバA「ギィィィッッ…!!」

片割れを失い、形勢不利を悟ったのか、
残る一体のコボルトイーバは、また新たに発生させた
時空クレパスの中へと逃げ込んだのだった…。

1257

シグフェル「………」

周囲から敵の姿がなくなったことを悟ったシグフェルは、
何事もなくその場を去ろうとしたが――

美姫「待ちなさい!!」
シグフェル「…!?」

立ち去ろうとしたシグフェルを林の中から取り囲む、
青と白のカラーリングの装甲服を着込んだ一団があった。

美姫「私たちはICPO直属の対妖魔特殊部隊ファントムSWATの者よ!
 シグフェル、貴方にはいろいろ聞きたい事があるわ。両手を上げて
 そのまま大人しくしなさい!」
シグフェル「………」

重火器を向けて慎重にシグフェルを包囲するファントムSWATの隊員たち。
だがシグフェルは、ファントムSWATたちを敵と認識したのか、
背の大きな翼を羽ばたかせ、強烈な風圧で周囲を威圧すると、
ファントムSWATたちにその牙をむいてきた!!

シグフェル「フンッ…!」
SWAT隊員A「キャアアッ―!!」
SWAT隊員B「イヤァァーッ!!」

次々とシグフェルにあっけなく吹き飛ばされていく
ファントムSWATの隊員たち。残った隊員も一斉にスマートガンを
発射するが、シグフェルには全くダメージを与えられている様子がない。

美姫「…くっ! ならばこれなら!!」

隊の指揮を執る美姫は、シグフェルめがけて接近戦を挑む。
シグフェルの動きを冷静に見切り、すっと後ろへとかわす美姫。
しかし逆にシグフェルの方から美姫のふところに飛び込むや、
手刀で美姫の頭部を斬り上げた!

美姫「アアァァ―ッッ!!!」

今の衝撃で、美姫の頭からプロテクターのヘルメットが外れてしまった。
シグフェルは素顔を晒して地面に倒れている美姫の首を両腕で掴み上げると、
ぐいぐいと締め上げていく…。

美姫「グッ…アァッ…ギャアアッッ!!!!!」
SWAT隊員C「隊長ーォッ!!」
シグフェル「――!!」

苦しむ美姫の顔を見た途端、突然シグフェルは両腕の力を緩め、
美姫を解放した。その場に崩れ落ちる美姫。

美姫「…ゲホッ…ゲホゲホッ!!」
シグフェル「ウ…ウウッ…ウオオオオオッッ!!!!??」

咳き込む美姫。そしてシグフェルは絶叫すると頭を抱えて
まるで逃げるようにその場から去って行った。

SWAT隊員D「隊長、大丈夫ですか!?」
美姫「…え、ええ。なんとかね……」

他の隊員たちに助け起こされる美姫。
その視線は、シグフェルが立ち去った方向を見つめていた。

美姫「シグフェル、いったいなぜ…?」

1258

翌朝、垂金権造の山荘跡前…。
昨夜の火災ですっかり黒焦げに焼け落ちてしまった山荘跡では、
すでにメガロシティ署による現場検証が始まっている。
垂金の死体は満足な形では発見されなかったものの、
所々に垂金本人の血痕や焼け焦げた肉片が見つかったため、
捜査当局は垂金権造は死亡したと断定した。

チャック「これで黄泉がえった人間の犠牲者は5人目か…」
美姫「ええ…」

山荘の焼跡の中を入念に調べながら、
昨夜の事件について考察するチャック・スェーガーと桂美姫。

警視庁によって"イーバ"と暫定的に
命名された正体不明の怪物たちによって、
黄泉がえり現象により復活した人間が殺害されたのは、
昨夜の垂金で5人目となっていた。

チャック「元々垂金は悪どい商売で有名だった男だ。
 警視庁が極秘に内偵を進めていた分だけでも、
 相当な余罪がある。気の毒ではあるが、
 自業自得というやつだろう…」
美姫「ええ、そうね…」
チャック「…で、昨日会ったんだろ?
 例のシグフェルとやらにも」
美姫「投降を促したけど、見事に襲いかかられたわ」
チャック「なら決まったな。やっぱりシグフェルは"敵"だ」
美姫「………」

美姫は何やら思いつめたような顔をして、何かを考え込む。

チャック「どうした?」
美姫「ちょっと気になる事があったのよ。
 ねえ…反重力鉱石の輸送車が襲撃されたあの日の翌日、
 桜田門署の小森警部が言っていた事、覚えてる?」
チャック「ああ。確か事件当日の夜に光平が家を抜け出して
 事件現場の近くまで行ったっていう…アレか」
美姫「………」
チャック「おいおい、まさかお前まで光平を疑ってる
 わけじゃないだろうな!?」
美姫「いや、そういうわけじゃないけどね」
チャック「どうせあの凸凹コンビのことだ。
 寝ぼけてたんだろ」
美姫「………」


***警視庁・総監執務室***

一色「昨夜でイーバに襲われた被害者はこれで5人目。
 こうなってはもう"あの仮説"が間違いないものと
 確定せざるを得ません」
加賀美「………」

昨夜の垂金権造の殺害事件について、
一色哲夫警視監から報告を受ける加賀美陸警視総監。
"あの仮説"とは、例の「イーバは黄泉がえり現象で
生き返った人間をターゲットにしている」という推理である。

加賀美「総理に報告してくる。
 首相官邸まで車を出してくれ」

1259

***首相官邸・総理執務室***

土橋「どうしてもっと早く報告して
 いただけなかったんですか!」
加賀美「まだ確証を得ていない段階での報告は、
 かえって余計な混乱を招くだけであると私が判断しました。
 報告が遅れましたことは、全てこの私の責任です」
桃太郎「………」

加賀美総監がすぐに官邸に情報を上げなかった事も無理からぬことと言えた。
不確かな情報を迂闊に不用意に世間に広めるようなことにでもなれば、
世の中に不安を煽り、パニックを引き起こす懸念もあったからだ。

桃太郎「土橋室長、それに加賀美総監、今は誰彼の責任を論じ合っている時ではない。
 冴島危機管理監、今現在、日本国内に黄泉がえりで復活した人間はどれくらいいる?」
冴島「厚生労働省が把握しているだけで、およそ38000人です。
 その内、警察、消防、海保や自衛隊及びブレイバーズの関係者だけで
 ざっと約2000人ほどになります」
桃太郎「38000人か…」

土橋内閣安全保障室長は、あまりの膨大な数字にため息をつき、頭を抱えた。

土橋「あぁ…それだけの人間を警察だけでガードするのは無理ですなぁ…」
桃太郎「たとえ無理でも人の命がかかっている以上、出来る限りやるしかない。
 それと、今後海外でも同様のイーバによる事件の発生も懸念されると、
 ICPOを通じて各国の治安機関にも注意を促してくれ」
冴島「わかりました」

1260

***お台場テレビ局・1F正面玄関前***

球体展望台で有名な某テレビ局社屋の正面入口前。
その日の休日、沢渡優香はボーイフレンドの牧村光平と
デートの待ち合わせをしていた。服装はこの夏流行のワンピース。
髪もつい先ほど美容院で整えたばかりである。

優香「光平くん、遅いな…」

自分の腕時計の時刻を確認する優香。
ふと顔を見上げると、道路を挟んで向こう側にある
ショッピングモール沿いの歩道で、どこかで見覚えのあるような
自分と同じ年頃の女の子3人と、外国人の紳士が押し問答をしていた。

優香「あれっ…あの娘たちって、確かこのあいだの……」

◇  ◇  ◇

白人紳士「Je voudrais aller à la gare de
 Tokyo Waterfront Area Rapid Transit?」
うさぎ「ど、どうしよう…! 何を喋ってるのか全然わからない!
 (((((((( ;゚Д゚)))))))アワワワ……」
まこと「美奈子ちゃん、昔イギリスにいたことあるんだろ!?
 なんとかならないのっ!?」
美奈子「ごめん…。全然ダメ。何を言ってるのか全く解らないわ。
 たぶんこの人の話してる言葉、英語じゃないと思う…」
うさぎ「ええーっ!?(汗」
まこと「く~っ! こんな時に亜美ちゃんがいてくれたら…!」

お台場に3人で遊びに来ていた月野うさぎたち。
水野亜美と火野レイは別の急用で今日は来られなかったのだが、
道端でいきなり外国人観光客に話しかけられ困り果てていた。
そこへ見かねるように優香が近づいて行き声をかける。

優香「あのー、すみません。どうしましたか?」
まこと「…あれっ? アンタは確かこの前の病院で…」
うさぎ「この外国人の人が何を話したいのかわからなくて
 困ってるんです!」

優香は事情を聞くと、落ち着き払って白人の紳士に尋ねる。

優香「Qu'est-ce que vous avez fait?
 (どうしましたか?)」
白人紳士「Je voudrais aller à la gare de
 Tokyo Waterfront Area Rapid Transit?
 (東京臨海高速鉄道の駅に行きたいのですが?)」
優香「Eh bien, il se pencha en bas de carrefour à droite,
 il est juste une promenade droite au-delà de la construction
 de la station de télévision.(それなら、そこの十字路を右に曲がって、
 テレビ局の建物を越えてまっすぐ歩いてすぐです。)」
白人紳士「Merci(ありがとう。)」

白人の紳士は帽子を脱ぎ一礼して、近くの駅の方角へと立ち去って行った。

うさぎ「す、すご~い!」
優香「いまあの人が話していたのはフランス語だったから、
 たぶんフランス人の方だったのね」
美奈子「さすが海防大付属!」
まこと「フランス語もペラペラとは…」
優香「この間はぶつかってごめんなさい…」
うさぎ「うんうん気にしないで♪ それよりも助けてくれてありがとう!
 あたし、月野うさぎ。十番高校の一年生よ」
まこと「同じく木野まこと」
美奈子「愛野美奈子よ」
優香「沢渡優香、海防大付属高の二年生です」
まこと「二年生!? じゃあアタシたちより一年先輩だ…」
優香「学校も違うし、気にしなくてもいいわ」
うさぎ「じゃあ、優香ちゃんって呼んでもいい?」
優香「ええ勿論。それなら私もうさぎちゃんって呼んでもいいかしら?」
うさぎ「もちろんいいよっ♪ これからよろしくね、優香ちゃん!」

1261

すっかり打ち解けて仲良くなる優香とうさぎたち。
ちょうどそこへ、さっきから優香の姿を探していた光平がやって来た。
ちなみに光平はというと、ジーンズにTシャツ、
そしてスニーカーというラフなスタイルである。

光平「どうしたんだよ優香、こんなところで! 探したぞ」
優香「あっ、光平くん!」

駆け寄って来た光平の顔を見るなり、
うさぎたちは彼のルックスに注意を惹かれる。

美奈子「……(うわっ、なにこのイケメン!?)」
うさぎ「……(かっこいい人。まもちゃんには劣るけど)」

光平「優香、この人たちは?」
優香「ほら、この前話したでしょ。
 光平くんのお見舞いに行った時、
 私の不注意から病院でぶつかって
 しまった人たち…」
光平「えっ?」

優香は光平に今起こった事のいきさつを説明する。

光平「そんなことがあったのか…。
 はじめまして、俺は牧村光平、海防大付属の二年生です。
 この前は優香がお世話になりました」

光平のさわやかな笑顔から白い歯がこぼれる。

うさぎ「………(///)」
まこと「………(///)」
美奈子「………(///)」

光平「あ、あの……??」

うさぎたち三人は、ハッと我に帰る。

うさぎ「ご、ごめんなさい…!」
美奈子「つい見とれちゃって」
光平「…は??」
まこと「いやいやいや…なんでもない!なんでもない!
 ところでお二人はこれからどっちの方へ?」
優香「とりあえず海の科学館の方へと行ってみようかと…」
うさぎ「ねえねえ! あたしたちは"お台場共和国"の方に
 行ってみるつもりなんだけど、よかったら一緒に行かない?」

現在、お台場テレビ局前の催事用スペースの敷地では、
"お台場共和国"なるイベントが絶賛開催中である。
しかしまことと美奈子の二人がうさぎの袖をつまんで引っ張り、
光平たちを誘った事をそっと咎める。

まこと「ちょっとうさぎちゃん、空気読みなよ…!」
うさぎ「え、なんで?」
美奈子「光平くんと優香ちゃんはこれから二人きりで
 デートなのよ…!
うさぎ「あ、そっか…」
優香「あの…私たちは別に構いませんけど。大勢の方が楽しいし」
美奈子「えっ? でも悪いわよ…」
まこと「これから二人でデートなんだろ?」
光平「俺は退院がてら、ある意味リハビリをかねて外出したみたいなもんで、
 それに優香にも付き合ってもらったようなものだからさ。俺は優香さえよければ…」
うさぎ「よ~し♪決まり! さあ、みんな行こうっ!!」

うさぎが先導する形で、みんなでイベント会場の方へと元気よく走り出した。


***お台場共和国イベント会場・パビリオン「お菓子の家」***

パビリオン内に入場した観客たちが、あちらこちらで
全員気を失って倒れている…。

ジェダイト「作戦は順調のようだな、妖魔ムーリド」
ムーリド「はい、ジェダイト様」

Gショッカーに加盟する悪の組織ダークキングダム四天王の一人ジェダイトと、
配下の妖魔ムーリドである。彼らは今回のイベントを偽装して多くの人間達を
おびき出し、一気に大量のエナジーを吸い取り尽くさんと画策していたのだった。

ジェダイト「我々ダークキングダムがバトルファイトに勝利し、
 我らが大いなる支配者が次期創世王の座を獲得するためには、
 まだまだ人間どものエナジーが必要だ! クインベリル様も
 吉報を待っておられる。もっと人間のエナジーを奪うのだ!」
ムーリド「ハハッ。お任せを!」

何も知らない光平とうさぎたちに危機が迫る!

1262

○桂美姫→垂金権造の山荘前でシグフェルと交戦。翌朝、同場所でチャック・スェーガーと共に現場検証する。
○チャック・スェーガー→焼け落ちた垂金権造の山荘跡を、桂美姫と共に現場検証する。
○一色哲夫→加賀美陸に垂金権造殺害事件の報告をする。
○加賀美陸→首相官邸に一連のイーバの事件の報告に赴く。
○剣桃太郎→加賀美陸から、一連のイーバの事件の報告を聞く。
○土橋竜三→加賀美陸から、一連のイーバの事件の報告を聞く。
○冴島十三→加賀美陸から、一連のイーバの事件の報告を聞く。
○月野うさぎ→お台場でフランス人に話しかけられ困っていたところを、沢渡優香に助けられる。牧村光平とも初めて会う。
○木野まこと→お台場でフランス人に話しかけられ困っていたところを、沢渡優香に助けられる。牧村光平とも初めて会う。
○愛野美奈子→お台場でフランス人に話しかけられ困っていたところを、沢渡優香に助けられる。牧村光平とも初めて会う。
●垂金権造→黄泉がえりで復活していた後、所有する山荘に隠れ住んでいたが、コボルトイーバに殺害される。
●ジェダイト→お台場共和国イベント会場を利用し、人間のエナジーを集める作戦を遂行中。
●妖魔ムーリド→お台場共和国イベント会場を利用し、人間のエナジーを集める作戦を遂行中。

○牧村光平→お台場で沢渡優香とデートの待ち合わせ。月野うさぎたちと初めて会う。
○沢渡優香→お台場で、外国人に話しかけられ困っていた月野うさぎを助ける。
●コボルトイーバA→垂金権造を殺害。その後、シグフェルと交戦するが、形勢不利を悟って自分一人だけ逃走。
●コボルトイーバB→垂金権造を殺害。その後、シグフェルに倒される。

【今回の新規登場】
○一色哲夫警視監(特捜エクシードラフト)
 桂木本部長が極秘任務でパリへ赴いていた期間、本部長代理を務めていた警視庁幹部。

●垂金権造(幽☆遊☆白書)
 飛影の妹・雪菜を捕らえ、様々な拷問を加えて氷泪石を無理やり作らせていた非道な宝石商。
 桑原曰く「薄汚い腐れ外道」。人間とは思えない化け物じみた容姿をしており、
 幽助からも「妖怪よりも酷い容姿」と揶揄されていた。BBC(ブラック・ブック・クラブ)という
 富豪層による賭博団体のメンバーでもある。最期は左京の命令を受けた戸愚呂弟によって
 頭部を蹴り飛ばされて殺害される。

●ジェダイト(美少女戦士セーラームーン)
 ダークキングダム四天王の一番手。極東支部長の肩書を持つ。
 大勢の人間からエナジーを集める作戦を指揮したが、
 セーラー戦士たちの活躍によって失敗が続いたため
 最期はクインベリルによって処刑された。

●妖魔ムーリド(美少女戦士セーラームーン)
 ダークキングダム四天王ジェダイト配下の妖魔で、遊園地「夢ランド」の動物管理人「ドリーム姫」として、
 手にしていたリンゴの果実で動物を操る他、園内施設「お菓子の家」に入った来場者からまとめてエナジーを
 奪おうとしてした。首が一旦胴体に引っ込み、再び突き出すことで本性を現す。

●コボルトイーバA(闘争の系統オリジナル)
●コボルトイーバB(闘争の系統オリジナル)
 堕神の使徒として仕え、地上で暗躍する謎の怪物。犬型の獣人のような姿をしており、
 右腕には大型のビーム砲(分子分解銃)を兼ね備えている。ゴブリンイーバと同様に二体一組で行動。


『鳳凰の覚醒』-2

作者・ティアラロイド

1263

***お台場共和国イベント会場・歩道***

男の子「……。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。エーン!!」
母親「もう無理だから諦めなさい!」

会場内の街路樹が立ち並ぶ通路で、
幼稚園児くらいの幼い男の子が大声を上げて泣いている。
母親らしき女性が男の子を窘めて注意している様子を
たまたま見かけた優香が声をかける。

優香「どうしたんですか?」
母親「すみません。実はこの子の風船が
 あそこの木の枝に引っかかってしまって…」

見上げると、すぐ傍の街路樹の高いところの枝に、
確かに風船が引っ掛かっている。

光平「どれ、俺が取って来てやるよ!」
優香「光平くん、危ないわ。気をつけてね」
光平「大丈夫だよ。任せとけって」

光平は街路樹に軽々と登って、男の子のために
風船を取って来て上げた。

光平「ほら、もう大丈夫だぞ」
男の子「うん。おにいちゃん、ありがとう♪」
母親「どうもありがとうございました」

母子は深々と頭を下げて礼を言い、去って行った。
ふと優香は、光平の右手の甲が少し擦れて
血で赤くなっていることに気づく。

優香「光平くん、その怪我…?」
光平「えっ?…ああ、ほんの掠り傷だよ」
優香「ダメよ。ちょっと待って」

優香はポーチから絆創膏を取り出すと、
それを光平の右手の甲に貼った。

うさぎ「……ほぉ~お二人さん、アツイわねえ。(⌒-⌒)ニコニコ...」
美奈子「……このリア充が。(⌒-⌒)ニコニコ...」

気がつくと、月野うさぎたちが
光平と優香をニヤニヤと笑みを浮かべながら
じーっと見つめていた。

光平「――!!」
優香「――!! うさぎちゃん!? それに木野さんに愛野さんも見てたの?」
うさぎ「うん。ずっとさっきから」
光平「……(///)」
優香「……(///)」

光平も優香も赤面して押し黙ってしまう…。

光平「…そ、そうだ優香! あっちのパビリオンにでも行こう!(汗」
優香「…そ、そうね! そうしましょう! ごめんね、うさぎちゃんたち。
 私たち、あっちの"お菓子の家"に行ってるから!(汗」

光平と優香は、恥ずかしさから慌てて逃げるように
「お菓子の家」の入場者の列へと駆け込んだ。

1264

美奈子「光平くんって今時珍しいタイプの、
 なかなかいい感じの男の子よね」
まこと「悔しいけど優香ちゃんとはお似合いのカップルだ」

そこへ二匹の猫がうさぎたちの元へと走って来た。

うさぎ「あれっ、ルナ?」
美奈子「アルテミス? こんなところまでどうしたのよ?」
ルナ「ハァ…ハァ…やっと見つけた!」
アルテミス「どうしたのよ?じゃないっ!!
 美奈っ! この会場から妖魔反応だ!!」
まこと「なんだって!?」

急いで駆けつけて来たルナたちの通報を受け、
セーラー戦士に変身して現場へと急行するうさぎたち。
…だが、その様子を物陰からじっと息を潜めて
伺っていた謎の怪物の影があったことに、
まだセーラームーンたちは気づいてはいなかった…。

コボルトイーバA「グゥラァァァッ…!!」


***「お菓子の家」内部***

パビリオンの中は不思議な色のブレスで充満した空間であり、
入場した観客たちは皆、意識を失って倒れてしまっていた。

ムーリド「ふふふ…夢を見ている間にエナジーを頂くわ!」

ムーリドが手にしていたリンゴが再び怪しい光を放ちだすと、
術にかかった入場客達のエナジーは次々と吸い出されていく。

光平「――おいっ! 優香っ! しっかりしろ!!」
優香「………」

ムーリド「…ん?」

よく見ると、入場客の中に一人だけ、
なぜか意識を失っていない人間がいた。
その少年は、連れと思しき気を失っている少女を
必死に起こそうとしている。

ジェダイト「小僧、どうしてお前だけ他の客とは違って
 ムーリドの幻覚に囚われんのだ?」
光平「なんだお前たちは…!?」

他の入場客が全員倒れている中で、
唯一意識を保っている少年=光平が声をした方を振り返ると、
ややウェーブがかった金髪のショートヘアの男=ジェダイトが
配下の妖魔と共にこっちを向いていた。

光平「…幻覚? するとこれはお前たちの仕業なのか!」
ジェダイト「なんにせよ、エナジーを吸い出せないのであれば
 用はない。ムーリドよ、こやつをさっさと始末しろ」
ムーリド「お任せを」
光平「――!!」

ムーリドは光平に急接近して頭突きをかます。。

光平「ぐわああぁぁっっ!!!」

抵抗むなしく、光平は壁にぶつかった衝撃で
意識を失ってしまった。

1265

ムーリド「フフフッ…今すぐに楽にしてあげるわ」
???「――お待ちなさい!!」
ムーリド「――!?」

いよいよムーリドが、倒れている光平の息の根を完全に止めようとしていた時、
颯爽と登場したのは、セーラームーン、セーラージュピター、セーラーヴィーナスの
三戦士であった。

ムーリド「フンっ…。来たか!」

ムーリドは気を失っている光平を腕で掴んで拾い上げると、
適当にそこら辺へと投げ捨てる。

ムーン「光平くん!?」
ジェダイト「久しぶりだったな、セーラームーン!
 そしてセーラージュピターにセーラーヴィーナス、
 お前らとは初めてになるな。我が名はダーク・キングダム
 四天王が一人、ジェダイトだ! 覚えておけ」
ムーン「ジェダイト…!」
ヴィーナス「いったい何をたくらんでいるの!?」
ジェダイト「我らが大いなる支配者がGショッカーのバトルファイトを
 制されるためには、もっと大量のエナジーが必要となる。そのための
 エナジー集めだ」
ジュピター「やっぱりダークキングダムもGショッカーに加わっていたのか!」
ジェダイト「一度は貴様たちのために"永遠の眠りの刑"に処された屈辱!
 今こそこの場で晴らしてくれる! やれっ、ムーリド!!」
ムーリド「ハハッ!!」

ムーン「おなかをぺこぺこに減らしてお菓子の家にやって来たお客さんから、
 逆にエナジーを絞り取ろうだなんて許せない! この愛と正義のセーラー服
 美少女戦士、セーラームーンが月に代わっておしおきよ!」

               __      _ ,ィ.二 ヽ
              /´__ >ー_'二 - ┴L. } }
                 { 〈 /´  - '      、 Y ノ!
                z'´j   , - ¬,  ,   ヾ. !
             /    、 {ーx '-ァ イ_ ノ  、} ',
             {/,  、 ヽ.トLj/z=‐くィ_ チ|   ',
             l ヽ. 、_7ヨハ.ヽ  {しリ | Y li   !
      , ィ       |  ト-:ハ. 弋り i:. ゞ' ,, jソ l',  l
      {. {      l  /  ヽヌ ''  r ヘ.  /┘  ! ,  ヽ
 r - ――ゝ \   / //  _└'>  二 イ __  ヽヽ  |
   ̄ ̄フ --  ヽ/ //   l }  _ハr:ッ'´/ ̄`ヽ, l| ',
     {   ,'  ∨ / r‐、/ ':T TT//イ´, -- 、  ',l ', ヽ
    // ̄ ヽ  ヽ! } ‐' ´_`!少'/  {´_    ヽノヽ ヽ  ',
   .〈/     /ヽ  \! i ´ /〉ィ´ }/´ ̄  ヽ._/ | ', ヽ.|
        /' ,-',   ヽ __ ノ_, -'´     /  |_}  !  l ヽ
         / /{ ハ.   / /「´     , -'´   /     ヽ. ヽ ',
       / {. ヽ_V l l|   , - '、 ___./      |  ! |
     /    lー-- ' ヽ {. '、 ヽ -'´     /- ― ┐   ヽ ヽ ヽ


対峙するセーラー戦士と妖魔ムーリド。

ムーリド「この私を以前の私と同じだと思っていると、
 痛い目を見るぞ!」

ムーリドは幻覚のブレスを吹くと、無数の毒蛇が宙を舞って
一斉にセーラー戦士達に襲いかかった。それを必死に振り払って
逃げようとするセーラー戦士達。

ジュピター「くっ…!!」
ムーン「やだやだやだあ~っ。蛇怖~い!!」
ヴィーナス「落ち着いてセーラームーン!
 これは幻覚よ!」

ジェダイト「ハッハッハッハ!! 二度も同じ手に引っかかるとは
 相変わらずバカな奴。ムーリドよ、あとは任せるぞ」
ムーリド「ハハッ。お任せを」

ジェダイトは身を翻すと一瞬でテレポートして姿を消した。

1266

セーラームーンの右腕に一匹の蛇が噛みつく!

ムーン「――痛ッ!!」

噛まれた傷からセーラームーンの右腕が徐々に石化していく。

ムーン「や~ん!このままじゃ石になっちゃう!!」
ジュピター「なら、そうなる前に倒すまでだ!
 ――スパークリング・ワイド・プレッシャーッ!!!!!」
ヴィーナス「――ヴィーナス・ラブ・アンド・ビューティ・ショォーック!!!!!」

セーラージュピターは薔薇のピアスからティアラの避雷針へ放電し、
両手に圧縮して超高電圧球を投げつけ、セーラーヴィーナスが生成した
ハート形の衝撃光弾と合体、妖魔ムーリドに命中する。

ムーリド「ぐわあああっ!!」

ムーリドは大ダメージを受けてよろめいた。

ヴィーナス「今よ、セーラームーン!」
ムーン「わかったわ!!」

セーラームーンは、エターナル・ティアル先端の飾りから
巨大なハート形の光の塊を放ち、妖魔ムーリドに激突させる。

ムーン「――ムーン・スパイラル・ハート・アタック!!!!!」
ムーリド「…む、無念ッ!!!」

ムーリドは見事に浄化されて消滅した。
それと同時に、石化しかけていたセーラームーンの
右腕も元通りに治る。

ムーン「ふ~ん、助かった…」
ヴィーナス「終わったわね」
ジュピター「でもおかしい…。部屋の中に充満している霧が
 全然晴れないぞ」
ヴィーナス「そういえば……」

敵を倒したにもかかわらず、なぜか言い知れぬ緊張感から
全く解放されないセーラー戦士3人。その時、同じ部屋の中から
女性の悲鳴がした。

???「キャアアッ――!!」

ムーン「なに!?」
ヴィーナス「あっちの方から声がしたわ!」
ジュピター「行ってみよう!」

1267

ムーン「あっ!? あの人はさっきの!?」
ヴィーナス「光平くんが風船を取ってあげた親子…!?」

見れば、先ほどの母子連れが、犬の獣人のような姿をした
怪物にじわじわと追い詰められていた。

母親「…あ、ああ…やめて……こっちに来ないで!」
男の子「ママ、怖いよぉ~!!」

コボルトイーバA「ガルルルグゥッ…!!」

ヴィーナス「なんなのアイツは!?」
ジュピター「まだ妖魔が残っていたのか!?」
ムーン「あの母子を助けないと!
 ――ムーン・ティアラ・アクション!!!!!」

セーラームーンは謎の怪物の注意をこちらに引きつけようと、
額のティアラを外し、エナジーを纏わせ円盤状に変化させて
怪物向かって投げつける。その攻撃は当たったものの、
怪物=コボルトイーバAは全く意に介する様子もなく、
まるで何も感じていないか、あるいは無視するかのように、
自らの鋭い爪を母子に伸ばそうとする!

ジュピター「バカにしてるのか!」
ヴィーナス「それなら腕ずくでも止めて見せるわよ!」

セーラージュピターとセーラーヴィーナスは、
コボルトイーバの両脇から抑え込みにかかるが、
凄まじい怪力と腕力を持つコボルトイーバにAに
逆にぶん投げられてしまう。

コボルトイーバA「グォォバァァァッッ!!!」
ジュピター「うわああっっ!!」
ヴィーナス「いやああっっ!!」

激しい衝撃で壁にぶつかるジュピターとヴィーナスだが、
それでもなんとか懸命に立ち上がり、体勢を立て直そうとする。

ムーン「ジュピターちゃん! ヴィーナスちゃん!」
ジュピター「…くそぉっ!!」
ヴィーナス「ならこれならどう!?
 ――クレッセント・ビーム・シャワーァッ!!!!!」

全身の光のエネルギーを指先に集中させたヴィーナスは、
上空にビームを放ち、光の雨の様に拡散乱射して、
コボルトイーバAを周囲から蜂の巣攻めにして攻撃する。
だが、いきなりコボルトイーバAを庇うように
無数の小型の時空クレパスが開き、ビームを全て吸収。
そして同時にセーラー戦士たちの背後にもたくさんの
時空クレパスが空間に穴をあけ、そこから今吸収したばかりの
ビームが降り注がれた!

ジュピター「――なっ!?」
ヴィーナス「そんな!!」
ムーン「きゃあああっ!!」

自分たちの攻撃で逆に大ダメージを受けてしまったセーラー戦士たち。
こうしている間にも、例の母子にコボルトイーバAの魔手が迫る。

母親「お願い…せめて…この子だけは!」
男の子「ママ、怖いよぉ~!!」

コボルトイーバA「グアアルァァァ…!!」

ムーン「やめて!!」

その時だった。今まで気を失い
床に倒れたままだった光平の両眼がカッと見開き、
妖しくも鋭く紅い眼光を放ったのは…!

光平「――!!」

1268

ヴィーナス「アレは妖魔じゃないわ!」
ジュピター「他の組織のGショッカーの怪人でもない…。
 …とすると、アイツがブレイバーズから情報のあった
 新たな敵――イーバ!?」
ムーン「このままじゃあの母子が!!」

コボルトイーバAの鋭く研がれた爪がいよいよ
母子へと振り下ろされようとしていたその時、
その腕を片手で掴んで制止した人影があった。

コボルトイーバA「グアァッ…!?」
光平「………」

光平はコボルトイーバAの腕を掴んだまま
軽々と背負い投げをする。

ヴィーナス「いったい誰なの!?」
ジュピター「霧のせいで顔が全然見えない!」
ムーン「………」

部屋に充満している霧のため、
コボルトイーバAが誰と戦っているのか
まったく視認できない状態のセーラー戦士たち。
これまでブレイバーズの歴戦のヒーローたちでさえも
ほとんど手も足も出なかった謎の怪物イーバ相手に
互角の戦いを見せるとは、いったい何者なのだろうか…。

コボルトイーバA「ググガァァァッッ!!!」
光平「………」

逆上したコボルトイーバAは光平に掴みかかるが、
光平は構えをとりながら、まるで赤子をあやすかのように
あっさりと振り払いながら、無意識のうちに
大きく両腕を動かすポーズを取る。

光平「――翔着(シグ・トランス)ッ!!」

光平の全身が瞬く間に、真っ赤に燃える炎と熱気に包まれ、
やがて刺々しい装甲部分が皮膚の外へと突き破るように浮き出ていき、
その姿は異形の戦士――シグフェルとなった。

シグフェル「………」

変身者の素顔こそ霧のせいで確認できなかったものの、
予想を超える意外な展開に呆気にとられて
茫然としているセーラー戦士たち。

ムーン「あれは…!?」
ヴィーナス「変身…したの??」
ジュピター「もしかしてアレが、情報にあったシグフェル…!」

1269

○セーラームーン/月野うさぎ→妖魔ムーリドを倒す。その後、コボルトイーバAと交戦。
 変身者の素顔こそ見れなかったもののシグフェルの変身を目撃。
○セーラージュピター/木野まこと→妖魔ムーリドを倒す。その後、コボルトイーバAと交戦。
 変身者の素顔こそ見れなかったもののシグフェルの変身を目撃。
○セーラーヴィーナス/愛野美奈子→妖魔ムーリドを倒す。その後、コボルトイーバAと交戦。
 変身者の素顔こそ見れなかったもののシグフェルの変身を目撃。
○ルナ→お台場イベント会場での妖魔反応を、月野うさぎたちに知らせに来る。
○アルテミス→お台場イベント会場での妖魔反応を、月野うさぎたちに知らせに来る。
●ジェダイト→妖魔ムーリドに任せてさっさと撤退する。
●妖魔ムーリド→セーラームーンに倒される。

○シグフェル/牧村光平→妖魔ムーリドに襲われ気絶するが、突然起き上がり変身してコボルトイーバAと戦う。
○沢渡優香→妖魔ムーリドに襲われ、気を失う。
●コボルトイーバA→ターゲットの母子を襲うが、セーラー戦士、続いてシグフェルと交戦。

【今回の新規登場】
○アルテミス(美少女戦士セーラームーンシリーズ)
 セーラーヴィーナスこと愛野美奈子のパートナーで雄の白猫。
 真面目かつクールな性格で使命には忠実。お調子者の美奈子に頭を悩ませている。
 ルナと同様、額に三日月模様がある。


『鳳凰の覚醒』-3

作者・ティアラロイド

1270

コボルトイーバA「シィグゥフェェルゥゥッ…!!」

コボルトイーバAは右腕の分子分解銃を構え、
獰猛な咆哮と共にビームを連射した。
しかしシグフェルは両手を前面に突き出して
炎の障壁を生み出し、相手のビーム攻撃を全て無効化する。
次の瞬間、敵の眼前まで急突進したシグフェルは、
右手の拳でコボルトイーバAの分子分解銃を粉々に砕く。

コボルトイーバA「グゥゥアァァッッ…!!」
シグフェル「――!!」

苦しむ唸り声をあげるコボルトイーバAの左腕を掴むと、
シグフェルは一回転して振り回した後、上空高々へと
勢いよく放り投げた。パビリオンの屋根を突き破って
遥か高空へと舞い上がったコボルトイーバAめがけて、
シグフェルも背の大きな翼を強風と共に羽ばたかせてジャンプ。
猛スピードで突進し、そのまま空に浮かぶ敵の身体に体当たりする形で
コボルトイーバAの肉体を突き破った。

コボルトイーバA「ブギャアアッッ――!!」

四方に粉々に散らばったコボルトイーバAの肉片と体液は、
断末魔の雄たけびと共に全て蒸発して跡形もなく消えてしまった。

シグフェル「………」

戦いに勝利し、ゆっくりと元の場所の地面に着地するシグフェル。
その様子を3人のセーラー戦士は注意深く観察している。

ヴィーナス「凄い…。これがシグフェルの力…」
ジュピター「これって、やっぱり助けてもらったってことかな?」
ムーン「………」

セーラームーンは緊張した面持ちでシグフェルに近づく。

ヴィーナス「セーラームーン、近づいたら危ないわよ!」
ムーン「大丈夫よ…たぶん」

セーラームーンはこちらに敵意のないことを示すため、
そっと右手を差し出し、シグフェルに握手を求めた。

ムーン「あたしはセーラームーン。助けてくれてありがとう」
シグフェル「……ううっ」
ムーン「どうしたの…?」
シグフェル「……ウウッ…グオオオッッッッッッ!!!!!!!」
ムーン「――!?」
ジュピター「危ない!!」

突然狂ったような雄叫びをあげて、セーラームーンに襲いかかるシグフェル。
セーラージュピターが咄嗟の機転で飛び出し、セーラームーンを庇って事なきを得る。

1271

ジュピター「大丈夫かセーラームーン!?」
ムーン「ありがとう。あたしは大丈夫!」
ヴィーナス「やっぱりシグフェルは敵だったのよ!!」

セーラーヴィーナスは、腰に付けているチェーンを
赤い宝玉の鎖の形の長いムチに変換する。

ヴィーナス「――ヴィーナス・ラブ・ミー・チェーンッッ!!!!!」
ジュピター「――シュープリーム・サンダー・ドラゴンッッ!!!!!」

ヴィーナスがハート型の光の鎖でシグフェルの身体を巻きつけ拘束。
そこにジュピターのティアラの避雷針で受けた落雷のエネルギー電撃を放ち、
それらを収束しドラゴンの姿に変化させてシグフェルめがけて攻撃する。

シグフェル「グゥウオオオォォッッ!!!!!」

身体の自由を封じていた光の鎖を強引に引きちぎったシグフェルは、
右の掌だけで電撃攻撃を全て受け止めて見せた。

ジュピター「なんてやつだ!?」

シグフェルは背中の翼を大きくはためかせ、
凄まじいまでの強風を引き起こした。
その衝撃でセーラームーンたち3人は吹き飛ばされ、
それぞれ壁へと打ちつけられてしまう。

ムーン「きゃあぁぁっ!!」
ジュピター「うわああっっ!!」
ヴィーナス「ああああっっ!!」

天地を鳴動が揺るがした。シグフェルは自らの気を解放すると、
呻くように天を仰ぐ。だがそこへ先ほどの幼い男の子が、
何を考えているのかシグフェルに近づいていく…。

ヴィーナス「ダメよ! 危ないわ!」
男の子「ねえ……」
シグフェル「……?」

セーラーヴィーナスが叫んで止めるが、
男の子は恐れる様子もなくシグフェルに語りかける。

男の子「ボクとママを…助けてくれてありがとう」
シグフェル「……!?」

男の子が礼を言った瞬間、シグフェルは急に頭を両手で抱えて
激しく苦しみだした。

シグフェル「…ううっ…うっ!!…うわあああっっ!!」

ジュピター「急にどうしたんだ!?」
ヴィーナス「早くその子を連れて逃げてください!」
母親「は、はい…!!」

母親は男の子を抱えると、出口の方向へと
一目散に走り出した。シグフェルは尚もまだ
苦しみもがき続けている。

1272

ムーン「もしかしたら―!!」

特に何かが解ったわけではないが、
これからすべきことを直感で感じ取り理解した
セーラームーンがエターナル・ムーン・アーティクルに
手をかざしながら高らかに叫ぶ。

ムーン「ムーン・エターナル!メイクアップ!!」

セーラームーンは、スーパーセーラームーンの段階を超えて
一気に最終形態エターナルセーラームーンへとチェンジした。

ヴィーナス「どうするつもりなの!?」
ムーン「任せて! ――シルバームーン!!」

エターナル・ティアルとホーリー・ムーン・カリスの融合すると、
ムーン・パワー・ティアル先端の水晶から金色の光線が放たれ、
同時に羽根の嵐が四方に飛び散る。

ムーン「――クリスタル・パワー・キッス!!」

強力な浄化の光がシグフェルの身体に纏わりつく!

シグフェル「――!!」
ムーン「今よっ! 幻の銀水晶よ、あたしに力を貸して!
 ――ムーン・ヒーリング・エスカレーションッッ!!!!!」

エターナルセーラームーンの頭上にスターシードが現れ、
シルバームーン・クリスタルが蕾が開くように
蓮の花を思わせる形状に花開く。
銀河最強の無限の浄化力が周囲一面の空間全てを
追いうちのように広範囲に満遍なく満たす。

シグフェル「うわあああっっ!!!!!」

浄化の光に耐え切れなくなったのように、
シグフェルは大声を上げて飛び去って行った。
パワーを使い果たしたため基本形態の姿に戻り、
ホッと一息つくと共にぐったりと腰を下ろすセーラームーン。

ジュピター「セーラームーン!!」
ヴィーナス「大丈夫!?」
ムーン「ε=( ̄。 ̄;)フゥ…。疲れたよ……。
 シグフェルは、逃げたのかな…?」

1273

先ほどの母子の他、事件に巻き込まれた入場客たちはほとんど、
駆け付けた救急車によって無事に病院へと運ばれていった。
その後の調査で、イーバに狙われていた母子は、以前に爆破テロ事件に
巻き込まれた犠牲者であり、黄泉がえり現象によって生き返っていた人物
だったことが判明した。

◇  ◇  ◇

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すっかり日も暮れ、真っ暗になった夜。
お台場には花火が打ち上げられている。

うさぎ「たまや~!!」

事件も解決したことで、花火見物に興じている
月野うさぎ、木野まこと、愛野美奈子、そしてルナとアルテミス。

ルナ「あいかわらず呑気ねえ、うさぎちゃんは…。
 新たな敵が現れたっていうのに!」
うさぎ「それってイーバだけじゃなくてシグフェルのことも?
 でもなぜかなぁ…。あたしにはシグフェルが
 敵だとはどうしても思えない」
まこと「どうしてだい?」

うさぎは、シグフェルに男の子が近づいた時の事を語る。

うさぎ「あの男の子が助けてくれたお礼を言おうとした時、
 シグフェルの動きが一瞬止まったじゃない」
アルテミス「うさぎ、シグフェルがその男の子の声に反応して
 攻撃をやめたと考えるのは少し早計だ」
うさぎ「そうかなあ…」
美奈子「…あれっ、そういえば光平くんと優香ちゃんは
 どこ行ったんだろ?」
まこと「救急車で他の客と一緒に運ばれたか、
 もう帰ったんじゃないのかな?」

1274

***海浜公園***

花火会場からは少し距離の離れた位置にある海辺。
人通りは花火会場の方に集中しており、こちらに人の姿はほとんどない。
誰にも気づかれることもなく、ゆっくり海岸へと降り立ったシグフェルは、
浜辺の海面に映った自分の姿を見た。

シグフェル「――」

その姿は人間ではない。赤く光るメタリックな装甲に、
背には二枚の巨大な翼。まるで鳳凰、不死鳥を模したような
明らかに異形の姿がそこにはあった。

シグフェル「…う、ううっ、そんな…うわああああっっ!!!」

絶叫するシグフェル。

シグフェル「――リフレェーシュッッ!!!!!」

それは邪悪なる者が、セーラームーンの浄化の光によって
清められ、元の姿に戻る時に叫ぶ言葉である。
次の瞬間、一瞬の眩い光と共に、シグフェルは牧村光平の姿へと戻った。

光平「………」

今、全ての出来事の記憶が一本の糸で繋がった。
光平は己の身に起こった異変、そして、
もはや自分が"人間でなくなってしまった"事に至るまで
全てを理解した。

光平「うわあああああっっっ!!!!」

ガクリと両膝を折り、崩れ落ちるように
その場に座り込んた光平は絶叫した。
大声を上げて泣いた。両眼からは枯れることなく
涙がこぼれ続ける。

優香「…光平…くん?」
光平「……!?」

ふと背後から、聞き慣れた温かい優しい声がした。
光平は思わず振り向く。優香だ。
優香は目を覚ました後、姿が見えなくなった光平を探して
あちこちを走り回ったのであろうか、少し疲労の表情が見える。
優香の方はと言えば、やっと見つけた光平が顔を満面に涙で濡らしており、
いったいどうしたのか?と戸惑っていた。

優香「光平くん、いったいどうしたの!?」
光平「――!!」

光平は優香の姿を見るなり、いきなり飛びつくように抱きついた。

優香「ちょ、ちょっと光平くん!!」
光平「……ごめん。少しだけ…少しだけこのままでいさせて…!」
優香「光平くん!?」
光平「助けて……」
優香「………」

何が起こったのかも全然理解できず
戸惑うばかりの優香だったが、
今はただ、自分に救いを求めるように抱きつく光平を
優しく抱擁するしかなかった…。

1275

○セーラームーン/月野うさぎ→シグフェルをシルバームーン・クリスタルの力で浄化。
○セーラージュピター/木野まこと→シグフェルと交戦。
○セーラーヴィーナス/愛野美奈子→シグフェルと交戦。
○ルナ→月野うさぎのシグフェルに対する楽観論を戒める。
○アルテミス→月野うさぎのシグフェルに対する楽観論を戒める。

○シグフェル/牧村光平→コボルトイーバAを撃破。セーラームーンによって変身後の凶暴性を浄化され、
 自分が異形の存在シグフェルと化してしまったことを知る。
○沢渡優香→海浜公園の浜辺で見つけた牧村光平を優しく抱擁する。
●コボルトイーバA→シグフェルに倒される。


『光平、慎哉、優香、三人の友情と絆』-1

作者・ティアラロイド

1276

***埼玉県内の某採石場 Gショッカー秘密基地***

ここは埼玉県の中心部から離れた採石場の地下に秘密裏に建設されていた、
Gショッカーの出先の秘密作戦基地である。

アポロガイスト「なんだこれは…」

アポロガイストは、目の前の戦闘員や科学者の死体の山に絶句する。

実はここ最近、関東地方各地に築かれた幾つかの前線基地において、
戦闘員や科学陣スタッフのうち何名かが連続して
何者かに襲われ変死するという事態が続発していた。
それも基地内にいた全員が皆殺しにされたのではなく、
まるで襲撃の際に選別でもしたかのように、
一定の数の基地要員が殺害されていたのである。

いずれのケースも監視カメラには何も映ってはおらず、
犯人の正体は未だ不明。そのため、こうしてGショッカー
秘密警察長官であるアポロガイストが自ら直々に
現場検証へと赴いてきたのであるが…。

アポロガイスト「警備隊長、生き残った戦闘員や科学者たちは
 全員検束してあるな?」
GP隊長「ハッ! その点は抜かりなく!」
アポロガイスト「死亡した戦闘員たちのリストをまとめて、
 至急、私のオフィスまで持ってこい!」


***無幻城・秘密警察長官執務室***

部下に命じて取り寄せた被害者リスト全てに
丹念に目を通しているアポロガイスト。

アポロガイスト「やはりそうか…間違いない。今回の件でも
 襲われたのは、黄泉がえり現象で生き返った後に、
 Gショッカーに再合流した者たちばかりだ。
 いったいどこの何者がそんな手の込んだ真似を…」

普通、外見だけで「黄泉がえり現象で生き返った者」を見分けるのは
まず難しい。無理と考えてもいいだろう。わざわざそんな
手間のかかる真似までして、黄泉還った組織構成員ばかりを
襲うとは、いったい犯人にどんな利益があるのだろうか…?

灰色の老人「お取り込み中かの?」
アポロガイスト「…貴様か?」

秘密警察長官の執務室に入って来た、
灰色の顔に、よれよれの黒いモーニングコートを着込んだ老人。
この老人こそ、Gショッカー秘密警察に所属し、
今は地球遠征軍本部であるこの無幻城の警備主任を務める、
GOD神話怪人・死神クロノスの仮の姿である。

アポロガイスト「銀帝軍ゾーンの銀河闘士モグラルギンと、
 ダーク・キングダムの妖魔ムーリドの不審死について、
 その後何か解ったか?」
灰色の老人「モグラルギンとムーリドの二名が
 それぞれブレイバーズに倒され戦死したのは
 確かなようじゃ。ただ……」
アポロガイスト「ただ…何だ?」
灰色の老人「この両件について、なぜかブレイバーズは
 厳重な情報統制を敷いておる」
アポロガイスト「情報統制だと…?」
灰色の老人「妙だとは思わんか?」

常日頃から「自由」や「平和」を口癖のように標榜する
ブレイバーズにしては、徹底した情報統制などという、
まるで専制国家のような手段をとるとは、確かに奇妙な話である。
しかもモグラルギンもムーリドも戦死している以上、
この件はもう終わっているのである。

アポロガイスト「なるほど。確かに普段からの連中にしては妙だな…」
灰色の老人「奴ら、よほど我らGショッカーに知られたくない事が
 あると見た方がよさそうじゃな」
アポロガイスト「これは俺自らが現場まで赴かねばなるまい」

1277

一方、その頃…。

***日本海溝・ブレイバーベース***

ブレイバーズの基地・ブレイバーベースでは、
謎の敵イーバ、そしてシグフェルに関する映像の分析が
昼夜問わず続けられていた。佐原博士の長女である千恵隊員と
OO3がコーヒーを差し入れに持ってくる。

千恵「お父さん、皆さんもお疲れでしょう」
003「熱いコーヒーをお持ちしました」
佐原「ああ、気がきくね…」
ギルモア「すまんのう。そこに置いておいてくれんか」

司令部前の扉の前では、レッドマフラーの隊員たちが警備していた。

海野「交代の時間だ」
村中「異常なし!」

村中隊員と持ち場を交代する海野隊員。
ところが持ち場に着いた途端、背後から何者かに
いきなり銃を突きつけられた!

海野「――!!」
???「騒ぐな! 声を立てれば射殺する!」

あっという間に司令部の中へと押しまくられた海野隊員は、
司令部への侵入を許してしまう。
突然現れた謎の侵入者に、その時中にいた者は一斉に
銃を構えて警戒するが…。

009「――何者だッ!?」
???「貴様たちの警備はなっておらん!
 もし私がGショッカーの破壊工作員だったら、
 ここにいた博士たちは全員殺されていたところだ!」

侵入者の男は、持っていた銃を人差し指で
西部劇のガンマンよろしく回転させて
腰のホルスターにしまう。

村中「…あ、あなたは!」
海野「隊長!!」
???「明日からお前たちを徹底的にトレーニングする!
 覚悟していたまえ!」
003「佐原博士、これはいったい?」
佐原「ハハハ、相変わらず荒っぽいご登場だね、剣持君」
009「剣持…??」

侵入者の男の顔を見た途端、村中隊員と海野隊員の表情から
緊張が一気に解け、また佐原博士も笑顔で男を出迎えた。
その場に居合わせたゼロゼロナンバーサイボーグたちは
全員チンプンカンプンといった表情をしている。

剣持「レッドマフラー隊隊長、剣持保中佐、
 ただ今着任しました!」

1278

剣持保――殉職した前隊長・中井の跡を継いで就任した、
国際平和部隊レッドマフラー隊の現隊長。
巨人頭脳ブレインとの激戦を見事勝利へと導いた功労者でもある。
まだロゴスの勢力が日本に巣食っていた頃、三輪防人に睨まれて
危険なアフリカ戦線の僻地へと飛ばされていたのだが、この度
佐原博士の招聘に応じて、ついに日本に帰国したのだった。
(その際に剣持は、佐原博士から大佐への昇格を打診されたが、
これを固く固辞している…。)

009「……(この人が佐原博士の懐刀と恐れられた
 カミソリ剣持か…)」
003「……(目的のためなら手段を選ばない人だと
 聞いているけれど…)」

009たちは緊張した視線で、じっと剣持を観察している。

佐原「すまないが、これから剣持隊長と二人きりで話がしたい。
 みんなは席を外してくれないか?」
村中「わかりました」

佐原博士は村中隊員や009たちに人払いを命じると、
剣持隊長と二人きりで本題に入った。

佐原「アフリカではいらぬ苦労をさせてしまったね」
剣持「いえ、とんでもありません。こちらこそ、
 まだ暫くはアフリカ戦線に留まりたいという
 私の我儘を聞き届けてくださり、博士には感謝しています」
佐原「早速だが君に見せたいものがある」

佐原博士はモニターのスイッチを入れると、
紅蓮に彩られた装甲と翼をもつ異形の戦士の姿が
映し出された。

剣持「これが例のシグフェルですか?」
佐原「そうだ。新たに現れたイーバと呼称される怪物群に対し、
 今現在のところ唯一対抗できる力を持つと見られる謎の戦士だ」
剣持「………」
佐原「今後ブレイバーズがイーバの脅威に対抗するためにも、
 シグフェルはなんとしても味方につけたい」
剣持「確かにその通りですな」
佐原「そこで剣持隊長、君にはこのシグフェルの追跡、
 及び捕獲のための任務に就いてもらいたい」
剣持「わかりました。ですが博士、もしそのシグフェルが
 我々の敵だと判明した場合はどうしますか?」
佐原「………」

剣持の問いに、佐原博士は暫しの間沈黙した後、
こう答えた。

佐原「その時は抹殺するしかないだろう…」

1279

***海防大付属高校・校舎裏自転車置き場***

慎哉「なんだよ沢渡、話って…」
優香「ねえ朝倉くん、最近なにか光平くんに
 変わった事はない…?」

その日の放課後、部活の練習中に
沢渡優香はこっそり朝倉慎哉を校舎裏へ呼び出した。
慎哉は片手にラケットを持ったテニスウェア姿、
優香も陸上部のウェア姿である。

慎哉「何って…別に何も」
優香「そう、ならいいんだけど…」
慎哉「俺、部活の練習あるから、もう行くぜ」
優香「うん。急に呼び出したりして、ゴメンね」

その場は別れる二人。優香には、一週間前での
お台場で牧村光平とデートした日の夜、人のいない浜辺で
いきなり号泣していた光平に抱きつかれた記憶が
今も脳裏に残っていた。

優香「……(確かに今朝も通学路で会った光平くんは
 いつも通りだった。でも、どこか無理してるような
 気がする…)」


***同校・男子硬式庭球部テニスコート***

部員たちが互いにサーブを撃ち合い練習している中、
慎哉がコートに戻って来た。

光平「…慎哉? どこ行ってたんだよ!
 主将(キャプテン)カンカンだぜ」
慎哉「今、沢渡に呼ばれていろいろ聞かれた…」
光平「えっ…」

慎哉から聞いた光平の表情が一瞬曇る。

慎哉「どうするんだ光平? いつまでも
 沢渡に隠し通してはおけないぜ」
光平「………」

1280

実は3日前の出来事である…。

◇  ◇  ◇

その日の夜更け。光平がまるで何かに導かれるように
密かに家を抜け出したことに偶然気がついた慎哉は、
その後を追った。

慎哉「光平のヤツ、いったいこんな夜遅くに
 どこまで行くんだ…?」

そこで見てしまったのである。
光平が大きな翼をもつ異形の戦士に姿を変え、
蜥蜴のような化け物と戦っている様子を…。

リザードマンイーバ「グギャアアァァッ―!!!!!」

その蜥蜴の怪物は、光平の変身した姿=シグフェルの灼熱の炎に焼かれ
苦痛の雄叫びを上げながら爆発四散したが、一部始終を見ていた慎哉は
当然の如く悲鳴を上げて腰を抜かした。その気配にシグフェルが気づいてしまう。

シグフェル「――慎哉!?」

シグフェルは慌てるように変身を解除し、元の光平の姿に戻る。
しかし時すでに遅く、全てを慎哉に見られてしまった後だった。
腰を抜かしたままの慎哉が、異形の姿に化身した自分を
奇異の目で見つめていることは、光平にもよく解っていた。
光平は悲しい表情を見せたまま、何も言わずに無言でその場を立ち去った。

慎哉「………」

一方の慎哉は事態を理解できず、しばらくは驚愕と恐怖のあまり、
一言も言葉を発せられず、ピクリとも動くことはできないでいた。
しかしそんな慎哉が思い直したのは、去り際の光平の悲しそうな目を見たからだった。
なんとか自分を奮い立たせ、急いで家へと戻る慎哉。
案の定、光平は荷物をまとめて朝倉家から出ていくところだった…。

慎哉「光平、お前どこ行く気だよ!」
光平「…慎哉? ごめん。やっぱりこんな化け物と
 一緒に暮らすのは嫌だよな…。出ていくよ。
 しばらくは沖縄のじいちゃんのところにでも
 身を寄せようと思う。今までありがとなっ…」
慎哉「バッキャロウウッッッ!!!!!」
光平「……うっ!?」

慎哉はいきなり光平にタックルをかます。

光平「…慎哉!?」
慎哉「ああそうだよ! 確かに今のお前は鳥の化け物かもしれない!
 でも人間だろうと化け物だろうと、光平は光平だろ!!」
光平「………」
慎哉「お前はうちの大事な居候だ!
 居候が家主に無断で勝手に出ていくな!」

光平は、慎哉に今までの事を全て打ち明けた。

慎哉「そんなことが…」
光平「どうやら東条寺は俺の肉体に何か細工をしたらしい。
 いや、本当は細工なんて生易しいもんじゃないのかもしれない」
慎哉「これからお前、どうするんだよ…?」
光平「俺の頭の中に響いて来るんだ。
 あの化け物たちを倒せって声が…」
慎哉「それでお前、これからもあの怪物たちと
 戦い続けるっていうのか!?」
光平「本能の赴くままに戦っていれば、
 いつかは俺の変わってしまった身体の秘密も
 わかるかもしれない…」
慎哉「………」
光平「それと慎哉、お願いがあるんだ」
慎哉「なんだよ?」
光平「優香にはこの事は黙っててくれ」
慎哉「えっ」
光平「優香がこの事を知ったら、
 きっと自分のせいだと負い目を感じる。
 俺は彼女にそんな辛い思いはさせたくない…!」

◇  ◇  ◇

3日前の夜の事を回想する光平と慎哉。

慎哉「なあ、やっぱり沢渡にもこの事は
 話した方がいいんじゃ…」
光平「ダメだっ! 優香にだけは
 絶対に知られたくはないんだ…!」
慎哉「光平……」

慎哉は、ただ黙って事態の推移を見守るしかできなかった…。

1281

○佐原正光→剣持隊長にシグフェルの追跡及び捕獲(場合によっては抹殺)を指示。
○剣持保→アフリカから日本に帰国。佐原博士からシグフェルの追跡及び捕獲(場合によっては抹殺)を指示される。
○村中隊員→剣持隊長と再会。
○海野隊員→剣持隊長と再会。
○佐原千恵→剣持隊長と再会。
○アイザック・ギルモア→シグフェルやイーバに関する分析を進める中、剣持隊長着任の場に居合わせる。
○009/島村ジョー→剣持隊長着任の場に居合わせる。
○003/フランソワーズ・アルヌール→剣持隊長着任の場に居合わせる。
●アポロガイスト→関東圏でのGショッカー構成員連続怪死事件の捜査を行う。
●死神クロノス→銀河闘士モグラルギンと妖魔ムーリドが戦死した状況について調査を行う。

○牧村光平→朝倉慎哉に変身を見られ、全ての事情を打ち明ける。
○朝倉慎哉→シグフェル変身の瞬間と戦いの現場を目撃。牧村光平から事情を全て打ち明けられる。
○沢渡優香→牧村光平を心配する。
●リザードマンイーバ→シグフェルに撃破される。尚、関東各地のGショッカー基地を
 襲っていたのは、この怪物の模様。

【今回の新規登場】
○佐原千恵(大鉄人17)
 佐原正光博士の長女。レッドマフラー隊員でもあり、主に通信班として活動する。
 剣持隊長の前任者であり戦死した前隊長・中井の婚約者だった。
 既にこの世を去っている母の代わりに佐原家の家事全般もこなしている。
 南三郎からは「千恵姉さん」と呼ばれることもある。

○村中隊員(大鉄人17)
 レッドマフラー隊の一員。剣持隊長が不在の際は、隊長代行を務める。
 幼いころ炎に巻かれて死にかけたことがあり、その時の恐怖がまだ残っていたが、
 後に克服した。また大学で未来科学を専攻し、佐原博士の助手を志願して
 レッドマフラー隊に入隊したことから、ワンセブンの体内に入り、
 修理を行なった経験もあり、佐原博士がワンエイトからサタン回路を
 取り外す際も助手を務めている。

○海野隊員(大鉄人17)
 レッドマフラー隊の一員。明るくお調子者で、
 南三郎に対しても面倒見の良い人物。
 岩山鉄五郎(ガンテツ)から「豆狸」と呼ばれている。

●リザードマンイーバ(闘争の系統オリジナル)
 堕神の使徒で、蜥蜴人間の姿にメカの装甲が融合したような姿をした怪物。


『光平、慎哉、優香、三人の友情と絆』-2

作者・ティアラロイド

1282

***原宿・竹下通り***

その日の休日の昼、沢渡優香はクラスメイトの瑠奈と柚希と共に
三人で原宿でのウィンドウショッピングを楽しんでいた。
屋外席で注文したクレープを口にしながら、
ガールズトークに花を咲かせる女の子たち3人。

瑠奈「アタシは断然ザ・ハーツ派よ!」
柚希「えーっ、私はANGELの方が好きだなあ」
瑠奈「なんでよ~!? 完成されたアイドルであるザ・ハーツに比べて
 ANGELはまだまだ発展途上って感じじゃない」
柚希「わかってないなあ瑠奈は。そこがまたこの先の成長の夢があって
 可愛いんじゃない! 特に疾風くんが!」
瑠奈「ザ・ハーツの藤丸くんの方が可愛いわよ!」
柚希「ねえ、優香はどう思う?」
優香「………」

瑠奈と柚希が互いの応援しているアイドル談義で夢中になる中、
さっきから優香はクレープ片手にずっとボーッとしていた。
クレープの中のアイスが溶け始めている事にも全く気付いていない様子である。

瑠奈「優香、話聞いてる?」
優香「……えっ! あ、ごめん。何の話だっけ?」
柚希「優香、最近元気ないみたいだよ。
 もしかして光平くんと喧嘩でもした?」
優香「そんなこと、ないけど……」

優香の自信なさげな返事に、瑠奈と柚希も
「あー、これは何かあったな」と女の勘ですぐに察した。

瑠奈「優香、こういう時は"当たって砕けろ"だよ」
柚希「光平くんと何があったかは知らないけどさ、
 いつまでもウジウジしててもしょうがない!」
瑠奈「思い切って光平くんに自分の思いをぶつけてみなよ」
優香「当たって砕けろ、か……」


***江東区豊洲・住宅街 朝倉家前***

優香「瑠奈と柚希のアドバイスにも一理あるかも…。
 なんだか人の家を覗き見してるみたいでイヤだけど、
 こうして朝倉くん家を見張っていれば、そのうち
 何かわかるかもしれない…!」

その日の夜、優香は電柱の陰に隠れて
こっそり朝倉家の様子を監視した。
一方、その頃…。

1283

光平「――!!」

家の中では、光平が何かを感じ取ったかのように
突然立ち上がった。

慎哉「光平、行くのか?」
光平「…ああ、奴らが来た!
 ごめん慎哉、あとの事は頼む」

光平は2階のベランダへと上がると、
両腕を大きく動かし変身のポーズを取る。

光平「――翔着(シグ・トランス)!」

シグフェルの姿に変身した光平は、
目的の場所に向かって一目散に飛び立った。

慎哉「光平、気をつけてこいよ…」

心配しながらもシグフェルを見送る慎哉。
そんな時、1階の玄関のドアからチャイムが鳴る音がした。

慎哉「誰だろう、こんな時間に…??」

玄関を開けた慎哉は驚く。
目の前には沢渡優香が立っていたのだ。
優香の顔は、何か信じられないものを見たという、
凍りついたような困惑の表情をしている。

慎哉「…さ、沢渡!? お前、こんな時間に
 いったい何しに来たんだ!」
優香「朝倉くん、今のは…なに?」
慎哉「え…」

◇  ◇  ◇

現場作業員「ひ、ひええ~!! た、助けてくれええっ!!」
ホブゴブリンイーバ「グァァァァッ…!!」

下水道工事の現場作業員の男が、
トゲのついた鉄球で武装した怪物=ホブゴブリンイーバに襲われている。
以前に出現したゴブリンイーバを少し長身にしたような姿の、
新種のイーバである。

ちなみにこの現場作業員の男、実は以前にも同じ深夜の作業中に
偶然ショッカーの作戦行動を目撃してしまい、口封じに
怪人の溶解液で溶かされてしまったのだが、幸運にして
黄泉がえり現象で復活できた人物だった。

現場作業員「ちくしょー! この野郎!」

現場作業員の男は果敢にも鉄製のシャベルを片手に挑むが、
ホブゴブリンイーバにシャベルを簡単に叩き折られてしまう。

ホブゴブリンイーバ「グァァァァッ…!!」
現場作業員「ああ、もうダメだぁ~!
 ついてねえ…。せっかく生き返れたのに…。
 母ちゃん! 息子! また父ちゃんの先立つ不幸を
 許してくれ~!!」

現場作業員の男が諦めかけたその時、
颯爽と間に降り立ったのが、紅蓮の翼の戦士シグフェルだった!

ホブゴブリンイーバ「グァァァァッ…!?」
現場作業員「――な、なんだぁ!?」

シグフェルは現場作業員の男を庇うようにして
ホブゴブリンイーバと戦う。

シグフェル「早く逃げて!」
現場作業員「…だ、誰だか知らないが、恩に着るぜ!
 ありがとよっ!!」

現場作業員の男はお言葉に甘えるとばかり、
さっさとその場から逃げだした。

1284

ホブゴブリンイーバ「シィグゥフェェルゥゥッ…!!」

ホブゴブリンイーバは鉄球を振り回して襲ってくる。
それをものともしないシグフェルは、相手に対して左手で正拳突き、
そして右手で上段への正拳突きを行う。
斜め上空に吹っ飛ばされるホブゴブリンイーバ。

ホブゴブリンイーバ「グァァァァッ…!?」
シグフェル「今だ! くらえ!!」

シグフェルはジャンプすると、全身に灼熱の炎を纏って、
敵に対して強力な飛び膝蹴りをお見舞いした。

ホブゴブリンイーバ「グギャアアァァ――!!!!!」

ホブゴブリンイーバは木っ端微塵に爆発して果てたのだった。

シグフェル「小さい頃に沖縄のじいちゃんから習った
 琉球空手がこんなところで役に立つなんてな…」

普段の牧村光平の学校でのスポーツ部活動はテニス部だが、
父方の祖父が農業の傍ら琉球古武術の道場を開いていたこともあり、
以前から光平はそこそこの格闘技の心得も修得していた。
まだなんの武器も持っていないシグフェルにとって
戦闘での頼りとなるのは己の肉体と拳だけなのである。

――その時だった!
突然、シグフェルを周囲から幾つもの眩しい照明が照らしたのは…。

シグフェル「――!!」

気がつくと、いつの間にかシグフェルは軍の装甲車両と思しき部隊と、
赤いマフラーを身に付けた多数の兵士たちに包囲されていたのだ。
一人の兵士が銃口をシグフェルに向けようとするが、隊長らしき人物がそれを制止する。

剣持「よせ! 銃を向けるな!」
兵士「しかし剣持隊長…」
剣持「俺がいいと言うまで発砲は断じてならんぞ!」

剣持と呼ばれた隊長は、拡声器のマイクを取って
シグフェルに呼び掛ける。

剣持「シグフェルに告ぐ。我々は地球連邦軍国際平和部隊、
 レッドマフラーに所属する剣持隊だ。我々は君に危害を加える
 つもりは毛頭ない! 君とじっくり話がしたい!」
シグフェル「………」

だがシグフェルは、剣持の呼びかけを無視して
翼を広げてあっという間に夜空の彼方に飛び去ってしまった…。

村中「隊長、追わなくていいんですか?」
剣持「構わん。今日のところは挨拶だけでいい。
 シグフェル…奴さんとは長い追いかけっこになりそうだな」

1285

戦いが終わって朝倉家へと戻って来たシグフェル=光平は驚愕した。
何しろそこには、恋人の沢渡優香がいたのだから…。

光平「――優香!?」
慎哉「ごめん、光平…。沢渡に全部見られた…」
光平「………」

光平は目の前が真っ暗になった。
迂闊だった。まさか優香が家の近くまで来ていたとは…。
変身する際に、もう少し警戒するべきだった。
しかし、もう後の祭りだ。

優香「光平くん! どういうことなの! 説明して!!」
光平「優香……」

やむを得ず、光平は慎哉と共に、
優香を家の近くの公園まで連れだし、
全ての事情を包み隠さず説明した。

優香「そんな……!」

あの忌まわしい落雷事故があった日、
光平は自分の身代わりとなったばっかりに、
人間ではない異形の姿へと変貌してしまった。
本来であればそんな話はとても信じられない、
いや、信じたくなどないであろう。
しかし、目の前の現実を目の当たりにした以上、
全てを受け入れざるを得なかった。

優香「私のせいだわ…!
 私のせいで光平くんの身体が
 こんなことに!!」
光平「落ち着くんだ優香!
 あの時先に身代わりをと言いだしたのは
 俺の方じゃないか! 優香は決して
 何も悪くなんかないっ!!」
優香「でもっ…!でもっ…!」

話を聞いたショックでその場に崩れ落ち、
わっと泣き出した優香を懸命に慰めようとする光平。
だが、光平は次に意外な一言を言いだした。

光平「優香、落ち着いて聞いてくれ…」
優香「………」
光平「別れよう…」
優香「えっ…」

これには、優香のみならず、側にいた慎哉も
驚きの表情を隠せない。

慎哉「お前、いきなり何言い出すんだっ!!」
光平「もう俺はこんな肉体になっちゃったからさ…。
 今まで通り優香と付き合う事はできない。
 きっと優香には俺なんかよりもっと相応しい
 彼氏が見つかるよ」

光平の言葉に反応した優香は、ゆっくりと立ち上がる。

優香「そうだよね。私のせいで…そんな怪物みたいな
 身体になっちゃったんだもんね…。恨まれても
 仕方がないよね…」
光平「違う! そんなんじゃないんだ!
 俺はただ、お前を危険に巻き込みたくないだけで――」
優香「――さよならっ!!」

優香は泣きながら走り去っていった。
光平はその様子をただ茫然と見ながら立ち尽くすのみだった。

慎哉「なにボーッと突っ立ってんだ光平!!
 早く追いかけろよ!!」
光平「………」
慎哉「…見損なったぜ!」

慎哉は光平に対して吐き捨てるように言う。
それでも光平は、優香が走り去った方向を
ただ涙を流しながら見つめているしかできなかったのである。

1286

次の日の夕方、優香は自宅の近所の公園のブランコに
静かに佇んでいた。

優香「当たって、見事に砕けちゃったな……」

優香はうっすらと両眼に涙を浮かべながら、、
光平と初めて会った日の事を思い出す…。

◇  ◇  ◇

まだ中学三年生だったセーラー服姿の沢渡優香は、
模試会場へと向かう途中、苦しみうずくまっている老婦人と遭遇した。

優香「すみませーん! 誰か助けてください!!」
老婦人「ううっ…」

都会の雑踏の中、通行人たちは皆冷たいように無視して去っていく。

優香「……(どうしよう! 救急車を呼ぼうにも
 携帯を家に忘れてきちゃったし…!)」

そんな時、困り果てる優香に声をかけて来たのが、
学ラン姿の牧村光平だった。

光平「あの…どうしました?」
優香「このおばあさんが苦しそうなんです!」
光平「どれ、手を貸して!」

光平は老婦人を背負うと、近くの病院まで駆け込んだ。
ナースの話では、あともう少し病院に運ばれるのが
遅かったら、危なかったらしい。
光平と優香のおかげで老婦人は一命を取り留めたのだった。

優香「よかった…」

優香はホッと胸をなでおろす。

光平「じゃ、俺はこれで…」
優香「あっ、待ってください!」

せめて名前くらいは聞いておこうと、
優香は去ろうとする光平を慌てて呼びとめる。
振り返った光平を、優香はただじっと見つめている。

優香「………」
光平「なに? 俺の顔に何かついてる?」
優香「…あ、その、ごめんなさい。
 あなたの瞳がとってもきれいだったものだから」
光平「ああ、これか…」

光平は困ったように表情を曇らせて、目を逸らす。
日本人とアルジェリア人の混血である光平は、
生まれた時から瞳の色が翠色だった。
そのため周囲から偏見の目で見られ、
小さい歳から辛い思いをして育って来たのだ。

光平「気味が悪いだろ。日本人なのに
 両目が翠色なんてさ…」
優香「そんなことない! とってもきれいだよ!」
光平「えっ…」

光平にとっては初めて聞く言葉だった。

光平「初めてだな。女の子から
 そんな風に言われるなんて」
優香「私、沢渡優香と言います。あなたは?」
光平「牧村…光平…」

こうして二人の交流が始まった。
その日、光平は優香と同じ模試会場に向かっていたのだが、
揃って遅刻し、模試は欠席扱いの上不合格となった。
しかし受験で同じ海防大付属高を目指していた事が分かり、
二人は意気投合して徐々に仲良くなっていった。
そして海防大付属高に無事合格、晴れて同じ学校に通う
高校生となってから、二人は正式に交際を始めたのだった。

◇  ◇  ◇

慎哉「沢渡…」
優香「朝倉…くん?」

優香は慎哉がやって来た事に気づく。

慎哉「家の人に聞いたら、ここにいるって聞いたからさ…」
優香「そう…」

優香は力なく答える。

1287

慎哉「あいつの気持ちも解ってやってくれ。
 光平はこれからも妙な怪物と戦い続けなきゃならないんだ。
 だからお前を危険に巻き込みたくないんだよ!」
優香「そうだよね…。私なんか、もうただの
 足手まといだもんね…」
慎哉「そう言うお前の気持ちはどうなんだよ?」
優香「………」
慎哉「光平が鳥の化け物みたいな姿になっちまったから、
 もう…あいつのことが嫌いか?」
優香「――!!」

慎哉の問いに、思わず優香は激昂して反論する。

優香「そんな…そんなわけないじゃない!!
 私、今でも光平くんの事が好き! 大好きだよ!!
 たとえ怪物だろうが化け物だろうが関係ない!!
 光平くんは光平くんだよ!!」
慎哉「………」
優香「出来る事なら光平くんの力になりたい。
 その苦しみを分かち合いたい…!
 でも、今の光平くんになんて話しかけたらいいのか
 わかんないよ…」

慎哉はその言葉を待ってましたとばかりに、
ニヤリッと笑みを浮かべ、わざとらしく大声で叫ぶ。

慎哉「…だそうだ! 光平!!」
優香「えっ…!?」

驚いた優香が、慎哉が呼びかけた方向に視線を向けると、
滑り台の物陰から、申し訳なさそうな表情の光平が出て来た。

優香「光平くん!?」
慎哉「俺がアイツの首に紐をつけてここまで引っ張って来た」
光平「ごめん、優香。俺、お前の気持ちも考えずに
 勝手なこと言って…。俺が間違ってた」
優香「………」
光平「俺、今正直途方にくれてるんだ。
 こんな情けない俺だけど、助けてもらえるかな…?」

優香は嬉し涙を浮かべながら光平に飛びついた。
光平はそれをしっかりと抱きしめて離さない。

光平「好きだ、優香…!」
優香「私もだよ…」

慎哉はその光景を満足そうに眺めている。

慎哉「やれやれ、世話焼かせやがって…」

1288

***朝倉家・リビングルーム***

優香「シグフェル…?」
慎哉「光平の変身した姿って、シグフェルって言うのか」
光平「うん…」

改めて朝倉家の居間に集合した三人は、今後の事を話し合う。

光平「あの怪物たちも、俺が遭遇した軍や警察の人たちも、
 みんな変身した俺の事を見てシグフェルって呼んでいたんだ…」
優香「それで、これからどうするの?」
光平「俺はとにかく、この変貌した自分の肉体の秘密を知りたい。
 もしかしたら俺が元の人間に戻れる方法がわかるかもしれない」
慎哉「それだったら、やっぱり東条寺の行方を探すのが第一じゃないか?」
優香「東条寺理乃…いったい今どこにいるのかしら?」

光平に謎の人体実験を施した張本人と思われる東条寺理乃は、
警察によって全国に指名手配されているが、今もまだ捕まってはいない。

光平「東条寺があの落雷事故で死んだとは、俺にはどうしても思えない。
 きっとあいつはまだ今もどこかで生きている…!」
優香「光平くん…」
慎哉「いいか、光平がシグフェルに変身できる事は
 ここにいる俺たち三人だけの秘密だ。約束だぞ!」
優香「うん、わかった!」
光平「ありがとう。慎哉! 優香!」

それぞれ右手を中心に差し出し、秘密を守る誓いを立てる三人。

今、世界は、正義のスーパーヒーロー軍団「ブレイバーズ」
全宇宙制覇を狙う悪の組織大連合軍「Gショッカー」
地球至上主義者の連帯「ロゴス」など、
名だたる大勢力が群雄割拠している状況にある。
そこに新たに加わった、謎の怪物群=イーバ(EBE)の脅威。

そして今ここに、牧村光平、朝倉慎哉、沢渡優香という
たった三人の素人による高校生の同盟が、
戦いの列に名乗りを上げることとなったのだ。

1289

***お台場イベント会場跡地***

すっかり寝静まった夜、妖魔ムーリドの事件以来
警察によって立ち入り禁止となっている区域に、
侵入した一人の男の姿があった
Gショッカー秘密警察長官アポロガイストの仮の姿である、
白いスーツの男である。

白いスーツの男「見たところ、別に不審な点は何も見当たらん。
 いったいここで何があったのだ…?」

じっくりと辺りを現場検証する白いスーツの男。
そこへ、何者かが近づく気配がした。

白いスーツの男「誰だ…?」

現れたのは、ダーク・キングダムの幹部・四天王のメンバーである、
ジェダイト、ゾイサイト、クンツァイトの三人だった。

白いスーツの男「これはこれは、ダーク・キングダム四天王のお歴々が
 こんな夜更けにわざわざ何の御用かな? もっとも、今は一人足りないようだが」
クンツァイト「………」
ゾイサイト「何の御用とはご挨拶ですわね…」
ジェダイト「この地は我らダーク・キングダムが任された作戦区域!
 いかに至高邪神直属の秘密警察といえども、勝手に人の縄張りを
 嗅ぎまわるのは感心せんな!」

ドルドラ「それは私たちからも言わせてもらう!」

白いスーツの男「…ん?」

さらにやって来たのは銀帝軍ゾーンの銀河博士ドルドラと
いつも連れている片腕の銀河の牙ザザだった。

ドルドラ「当方配下の銀河闘士モグラルギンは
 敵と正々堂々と戦っての戦死を遂げたのだ。
 秘密警察に要らぬ詮索をされるのは甚だ迷惑!」
ザザ「速やかにお引き取り願いましょう」
白いスーツの男「それにしてはモグラルギンの戦死時に
 ゴルリンが出動した形跡がないようだが?」
ドルドラ「うっ、それは…!」
白いスーツの男「そもそもそれはダーク・キングダムと銀帝軍ゾーンの
 組織としての正式な要請か? それともお前たちの背後にいる
 闇女王同盟の古狸のご老女方の思惑かな?」
ゾイサイト「なんですって…!」
白いスーツの男「まあいいだろう。自分たちの尻拭いは
 あくまで自分たちでするというのであれば、それもよかろう」

白いスーツの男は一瞥して立ち去って行った。

ゾイサイト「くっ…! おのれ言わせておけば!」
クンツァイト「やめぬか、ゾイサイト!」
ゾイサイト「しかしクンツァイト様!」
クンツァイト「今、表だって秘密警察と事を構えるのはマズイ。
 今日のところは引き揚げるのだ」
ドルドラ「ザザ、私たちも戻りましょう」
ザザ「ハッ」

1290

***無幻城・秘密警察長官執務室***

無幻城へと戻ったアポロガイストを待ち受けていたのは、
思わぬ来客であった。

ゴメス「お待ちしておりましたよ、アポロガイスト殿」
アポロガイスト「キャプテンゴメス…」

キャプテンゴメス――元は世界中から恐れられた
プロ中のプロである国際テロリストで、ブレイン党の作戦指揮官。
巨人頭脳ブレインに反旗を翻した経緯から、今はブレインや
ハスラー教授のグループとは別行動を取っている身ではあるが、
その経歴が経歴だけに、Gショッカー秘密警察のブラックリストにも
不穏分子としてその名前が載っている。それは彼も当然承知であろうに、
自分の方から天敵ともいえる秘密警察を訪れるとは、
恐るべし厚顔ぶりである。

ゴメス「さしものキレ者の秘密警察長官殿も、
 組織の縦割りにはだいぶ難儀をされているご様子ですな」
アポロガイスト「ご用件は何かな?」
ゴメス「この男をご存じか?」

ゴメスはアポロガイストに一枚の写真を手渡す。

アポロガイスト「剣持保…。確か貴公とは因縁の間柄だったな」
ゴメス「その剣持が日本に戻ってきている」
アポロガイスト「ほぉ…」
ゴメス「今までアフリカにいた剣持が、突然日本へと
 呼び戻された。これはきっと何かある…」
アポロガイスト「それをわざわざ俺に知らせに来たのか?
 何を企んでいる」
ゴメス「企むなどとはとんでもない。長官閣下に
 耳寄りな情報ではとお知らせに伺ったまで。
 今後とも何とぞよしなに」

ゴメスはアポロガイストに恭しく一礼して退室した。
実は剣持の動きについては秘密警察の情報網も前々からキャッチしていた。
それを知らないようなキャプテンゴメスでもないはずである。
その行動の裏にはどんな真意があるのか、それを読み取るのが難しい厄介な男――
――それがキャプテンゴメスという男なのだ。

アポロガイスト「キャプテンゴメス、食えん男だ…」

1291

○剣持保→シグフェルに初の接触。今日は挨拶だけに留めるといい、あえて追跡せず。
○村中隊員→シグフェルに初の接触。
●アポロガイスト→妖魔ムーリドの戦死現場を検分に訪れるが、ダーク・キングダムと銀帝軍ゾーンから抗議される。
●クンツァイト→妖魔ムーリド戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●ゾイサイト→妖魔ムーリド戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●ジェダイト→妖魔ムーリド戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●銀河博士ドルドラ→銀河闘士モグラルギン戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●銀河の牙ザザ→銀河闘士モグラルギン戦死の状況を調査しているアポロガイストに不快感を示す。
●キャプテンゴメス→アポロガイストの執務室を訪問する。

○シグフェル/牧村光平→沢渡優香に変身の瞬間を見られ、事情を全て打ち明ける。
○朝倉慎哉→破局しそうになった牧村光平と沢渡優香の仲を取り持つ。改めて光平の秘密を守ると誓う。
○沢渡優香→牧村光平がシグフェルに変身する現場を目撃。光平の秘密を守ると誓う。
●ホブゴブリンイーバ→現場作業員の男を襲うが、シグフェルに倒される。

【今回の新規登場】
●ゾイサイト(美少女戦士セーラームーン)
 ダーク・キングダム四天王の一人。欧州支部長の肩書を持つ。
 オネエ口調で喋るオカマであり、クンツァイトとは相思相愛の仲である。
 ウェーブのかかった長い金髪を後ろに結んでいる。

●クンツァイト(美少女戦士セーラームーン)
 ダーク・キングダム四天王の筆頭格。中東支部長の肩書を持つ。
 ゾイサイトを背後から操り、邪魔者だったネフライトを謀殺した。
 ゾイサイトと愛し合っている仲。その実力は非常に高い。

●銀河博士ドルドラ(地球戦隊ファイブマン)
 銀帝軍ゾーンの冷酷な女科学者。兵器開発などを担当する作戦参謀的な存在。
 銀河皇帝メドーに絶対的な忠誠を誓っていたが、そのメドーの正体が
 バルガイヤーが作り出した虚像だったことを知った際には大きなショックを受け、
 バルガイヤーを「化け物」と罵って発狂。配下のザザと共に
 合身銀河闘士バラドルギンに改造され、スターファイブに倒され戦死した。

●銀河の牙ザザ(地球戦隊ファイブマン)
 銀河博士ドルドラの腹心。ドルドラの生体改造によって生み出された改造生命体で、
 自分の命を救ってくれたドルドラに絶対の忠誠を誓っている。
 メドーの正体を知ったショックで発狂したドルドラを蔓から救おうとして
 クリスナイフで蔓に切りつけていたところ、バルガイヤーのエネルギーを浴びて、
 ドルドラ共々バラドルギンに変えられてしまった。

●キャプテンゴメス(大鉄人17)
 国際テロリストとして悪事の限りをつくしてきた男。
 巨人頭脳ブレインに招かれ、ブレイン党の指揮官に任ぜられる。
 忠誠を誓いつつも、機会あらばブレイン支配を企む野心に溢れていた。
 ハスラー教授と手を組みブレインに挑戦するも教授の裏切りにあい、あえなく失敗する。
 その後、戦艦ロボットに搭乗し大鉄人17へ戦いを挑むも敗北。
 最後は部下のチーフキッドにまで裏切られ、戦艦ロボットと共に爆死した。

●ホブゴブリンイーバ(闘争の系統オリジナル)
 堕神の使徒で、ゴブリンイーバの上位種と思われる。
 ゴブリンイーバよりも細身長身でありマントを着用。
 鉄球のついたモーニングスターが武器。


『紫蛇の女王』

作者・ティアラロイド

1292

***新宿副都心・高層ビル街***

夜景の輝く高層ビルが立ち並ぶ新宿の街並み。
人々や多くの車が行き交うその上空では、
激しい空中追跡劇が繰り広げられていた。

剣持「ライディーンの諸君、今日こそは逃がすなよ!」
イーグル「了解です!」

新宿一円を見渡せる都庁屋上から剣持隊が指揮を執る中、
超者ライディーンたちが懸命に追尾しているのが、あのシグフェルだ。

コンドル「シグフェル、我々は君と話がしたいだけだ!
 ここは止まって地上に降りてくれないか!」
シグフェル「………」

ライディーンコンドルの呼びかけにも
シグフェルは全く応じる気配はない。

ホーク「おんどりゃあ! こっちはこんだけ頭を下げとるっちゅうのに、
 シカトとはいい度胸じゃ! ワイらは貴重なレッスン時間も削って
 来とるんやぞ!」
シグフェル「……(レッスン…??)」
ホーク「もうアッタマ来たわ! これでもくらえ!
 ――ホークサンダーッ!!!!!」
アウル「よせっ、ホーク!」

ライディーンホークは落雷攻撃を繰り出すが、
シグフェルは難なくそれを避けて、
結局ライディーンたちの追跡を振り切り、
品川方面へと飛び去ってしまった。

ファルコン「あーあ、また逃げられちゃったよ。
 これでもう13回目だよ…」
コンドル「いや、15回目だ…」
ホーク「キィーッッ!! ムカつくわ!!
イーグル「仕方がない。今日はもう撤収だな」

今夜もシグフェルに逃げられた事は、
都庁屋上の剣持隊も確認していた。

剣持「マッハ6以上を誇るライディーンたちの超スピードを
 もってしても追跡は無理か…」
ガンテツ「あーもうッ! なにをやっとるんじゃ!
 ライディーンのみんなは!!」

剣持の隣にいる、まるで昭和の浪人生のような学ラン姿のこの人物。
名前を岩山鉄五郎――通称、ガンテツ。
「柔道四段・空手四段・浪人四年」が座右の銘で東大合格を目指していたが、
レッドマフラー隊の活躍に憧れて、あっさり東大合格を諦めた。
普段からこんな恰好で通してはいるものの、一応、
今では念願叶って正式なレッドマフラー隊員……らしい(汗。

剣持「仕方がない。我々も撤収するぞ!」
村中「了解です」
ガンテツ「いやあ、残念じゃのう…」
剣持「…ん? ちょっと待てガンテツ。
 その後ろに隠し持っているのは何だ?」

剣持に指摘され、ガンテツは右手に持っていた
5人分のサイン色紙を慌てて隠す。

ガンテツ「あ、いや、その…これはですなぁ~。
 せっかくの機会なもんで、ANGELのみんなから
 サインでも貰っとこうかと…」
剣持「やれやれ、お前という奴は…(汗」
海野「お前って意外にミーハーなところがあるよなあ」

ガンテツの意外な一面に呆れて苦笑する剣持たち。

剣持「よーし、撤収だ!」
ガンテツ「あのー、隊長、ANGELのサインは…?」
剣持「次の機会にしろ!!」
小野「そんなにサインが欲しいんだったら、
 ガンテツさん、これお願いね♪」
ガンテツ「うわわっ!? なんじゃこりゃ!」

小野隊員はガンテツに大きな紙袋に入った荷物を5つ分も押しつける。

小野「ライディーンのみんなの分の着替えよ。
 天賀井玲子さんから頼まれてたのよ。助かったわ~。
 それじゃあしっかりお願いね!」
村中「よかったなガンテツ。今をときめくアイドル5人の
 全裸を拝めるなんて、滅多にある機会じゃないぞ」
海野「じゃ、後はヨロシクな!」
ガンテツ「お~い! みんな待ってくれ!
 ワシはサインは欲しくても、野郎の裸なんかには
 興味ないんじゃ! 置いていかんでくれ~!!(泣」

1293

その翌日…。

***東京都内 某大手スタジオ・稽古場***

一夜「遅いッ!!」
電光「好きで遅れたんやないわいッ!!」

その日、今や飛ぶ鳥落とす勢いの美少年人気アイドル、
ANGELとTHE HEARTSの両グループは、来たるべきライブに備えて
今日も合同稽古を実施する予定であったのだが…。

忍武「寝坊するだなんてプロとしての自覚が足りないな。
 弛んでる証拠なんじゃないのか?」
飛翔「いやぁ…面目ない」
電光「毎晩毎晩シグフェルとの追いかけっこに駆り出される
 ワイらの身にもなってみいや! 寝不足にもなるわ!」
カイル「フフン…聞いたでござるヨ、電光殿。
 昨日もまた、シグフェルにまんまと逃げられたそうでは
 ござらんか?」
電光「ほっといてんか!!」

カイルの嫌みに、電光はそっぽを向く。

藤丸「シグフェルってそんなに手強いんですか?」
疾風「手強いっていうかさあ、いつもいつも
 凄いスピードで僕らの追跡を振り切って
 逃げちゃうんだ…」
銀牙「おまけに我々の攻撃すら全く受けつけぬ
 あの身のこなし…。やはり只者ではないな」
電光「さらにアタマに来るのがコレや!」

電光は、今日の朝刊の社会面の記事を
THE HEARTSの面々に突き出す。
その記事には、昨日昼間に起こった火災現場の様子と
その場にいたシグフェルらしき姿が写真に写っていた。

忍武「…え~と、なになに。"謎の鳥人間、白昼の高層マンション
 火災現場にて人命救助。ニューヒーロー誕生か!?"
 なんじゃこりゃ…??」
エース「なんか俺たちブレイバーズ所属のヒーローの
 お株を奪われてるみたいだな…」

エースはそう言って苦笑する。

聖人「確かシグフェルの件に関しては報道管制が
 敷かれていたはずだろ…?」
銀牙「真っ昼間からあれだけの目撃者がいたんだ。
 マスコミも無視はできまい」
一夜「そのシグフェルとやらが何者だろうと関係はない。
 今俺たちの成すべきことは、まず目の前の敵を叩き潰すことだ」

1294

一方、その頃…。

***江東区豊洲 朝倉家・リビングルーム***

慎哉「光平、なんだこれは…?(;一一) ジィー」
光平「いや…その、なんというか……(汗」

慎哉は今朝の朝刊の社会面の記事を突きつけ、
光平に説明を迫っている。
その記事の内容は、シグフェルによく似た鳥人間が
はしご車も届かないような火災現場から、逃げ遅れた人々を全員
見事に救助したというものだった。その鳥人間は名も名乗らずに
あっという間にその場から飛び去って行ったという。

光平「たまたま昨日の通学途中で高層ビルの火事の現場に
 出くわしてさ。それで見過ごしておけなかったというか…」
慎哉「お前、あんなに目立ちたくないって
 自分で言ってたじゃないか…」
光平「それは…まあ、そうなんだけどさ…。
 消防の到着も遅れてたみたいだし、
 救助するなら早い方がいいかと思って……」

慎哉の追及に困り果てた様子の光平に、
その場に居合わせた優香が助け船を出す。

優香「あら、私は困っている人を見捨てておけなかった
 っていう光平くんのそういうところ、好きだけどな」
慎哉「沢渡まで…!」

慎哉はムシャクシャしたように右手で頭を掻く。

慎哉「光平、まさかとは思うけど、
 せっかく変身できるようになったんだからこの際、
 正義の味方になろう♪――だなんて思ってないよな…!?」
光平「まさか。俺だってそこまで考えてないよ…」
慎哉「いいか光平、本来こういった人命救助は警察か消防、
 あるいはブレイバーズあたりの仕事だ。俺たちは単なる民間人
 なんだからな。あまり余計なことに首を突っ込むなよ…」

心配そうに光平に忠告した慎哉だったが、
気を取り直して分厚い文書ファイルを光平と優香の前に差し出した。

光平「慎哉、これは…?」
慎哉「昨日、一日かけて東条寺理乃の事について
 調べてみたんだよ。ここまでまとめるのに苦労したんだぜ。
 何かアイツの行方を捜す手がかりになるかもしれない」

光平と優香は二人で手分けして
調書の束に関心深く目を通して見る。

優香「凄い…。よくここまでわかったわね」
光平「サンキューな、慎哉。早速、東条寺の父親が
 勤めてたっていう大学から当たってみるよ」


***城南大学・長沢キャンパス***

東条寺理乃の父親、東条寺宗晴博士は、
国に無認可で人体改造学の研究を密かに推し進め、
妻を人体実験で死なせてしまい、業務上過失致死罪で逮捕され服役。
当然学界からも追放され、出所後はどこかで人知れず亡くなったらしい。

光平と優香は、宗晴博士が勤めていたという城南大学を訪れた。
しかし残念ながら現在は当時を知る関係者は誰もおらず、
僅かに噂だけなら聞いたこともあるという初老の事務員の男性から
話を聞けた程度だった。

事務員「あまり大きな声じゃ言えませんけどね。
 あまり東条寺宗晴博士の周辺を探ろうなんて
 しない方がいいよ。どうもあの人は変なオカルトにも
 手を出してたみたいでね。下手にかかわると
 ろくなことにはならんと思うよ…」
光平「ありがとうございました」

光平と優香は事務員に一礼して退席して行った。
ちょうどそれと入れ違いに事務室に入って来たのは、
その普段から鍛え抜かれた肉体が一目でわかる
屈強な体つきの白衣の人物――そう、本郷猛である。
彼の日常の顔は、ここ城南大学の生化学研究室に在籍する研究員なのだ。

事務員「これは本郷先生」
本郷「今の二人は? うちの大学の学生にしては
 見ない顔ですが…」
事務員「いや、うちの学生じゃなくて高校生ですよ」
本郷「高校生? すると来春の受験希望者ですか」
事務員「それが違うんですよ。なんでも昔、本学に在籍していた
 東条寺宗晴博士の事を詳しく聞きたいとやって来たんですわ」
本郷「東条寺宗晴……」

その名に、本郷は少しだが聞き覚えがあった。

本郷「……(確かその昔、緑川先生の弟子の中に
 そんな名前があったような。ルリ子さんなら
 何か知っているかもしれないな。まあ、
 どうでもいいことかもしれんが…)」

1295

キャンパスの通用門から外の脇道へと出た光平と優香。
結局今回は何も手がかりを得られず空振りに終わった。

優香「宗晴博士の人体実験で亡くなった奥さんって、
 やっぱり東条寺理乃のお母さんよね…」
光平「たぶんな…。あまりこういうことを言っちゃ
 いけないのかもしれないけど、あの東条寺理乃が
 あんな奴だったのもなんとなく納得だぜ。
 "親も親なら子も子"ってやつなのかな…」
優香「宗晴博士が関与していたオカルトって、
 いったい何なのかしら…」

そして、あまり人通りのない道に差し掛かった時…。
突然二人は、すぐ側を通りかかったワゴン車から飛び出してきた
チンピラ風の男たち数人に襲われた!

優香「むぐっ!うぐううううぅっ!!」
光平「――優香っ!? むぐぐっ!」

二人は悲鳴を上げる間も無く、ハンカチを顔に押し当てられ、
そのまま急発進するワゴン車の中へ連れ込まれてしまった。


***広域指定暴力団・龍神会総本部***

優香「イヤッ、放してください!」
光平「何なんだ! アンタたちは!?」

ロープで縛られた光平と優香が連れ込まれた場所は、
大きく立派な一筆が掲げられた額縁と、飾られた高価そうな甲冑と日本刀。
そして居並ぶ強面の男たち。素人が見ても明らかにヤクザのアジトである。

光平「……(ここって暴力団の組事務所じゃないか!?)」

組員A「親分、連れてまいりやした!」
組長「ご苦労!」

親分と呼ばれた組長らしき恰幅のいい老人が、
得体の知れぬ笑いを浮かべながら、光平と優香に近づいて来る。

組長「いやあ、おどろかせて悪かったね。
 実は私たちはね、東条寺博士に研究費として
 多額の融資をしてましてね。その返済が
 滞ったままで困ってるんですよ」
光平「それと俺達と何の関係があるんだ!」
組員B「このガキッ、口を慎め!」
組長「まあ待て。いたいけな子供を怖がらせるもんじゃない」
光平「………」

激昂する子分を宥める組長だが、そもそも未成年者をこうして
強引に拉致させておいて何を言ってるんだと、光平は内心呆れる。

組長「聞けば東条寺博士の身辺を嗅ぎまわっているという
 妙な高校生の二人組がいると言うじゃないか。そこで、
 これは是非とも詳しいお話をお聞きしたいとお越し願ったわけで…」
優香「そんなっ…! 私たちは何も知りません!」
組長「何も知らない人間が、どうしてその人物の身辺を
 探ろうとしていたんだね…?」
優香「それは……」

光平も優香も言葉に詰まる。まさか「東条寺宗晴の娘に得体のしれない
人体実験を施されて怪物にされた。だからその張本人である娘の行方を
探している」などと正直に申告したところで、ヤクザたちは到底
信じてはくれないだろう。

組長「どうしても話す気がないのなら仕方がない。
 おいっ、この子たち二人をVIPルームへとお連れしろ!」
組員C「わかりやした!」
組員D「大人しくこっちに来い!」
光平「やめろ! 何をするんだ!」
優香「放してっ!」

1296

光平「うわぁっ!!」
優香「きゃあっ!!」

光平と優香は組事務所の中にある冷凍庫室に押し込められてしまった。

組員C「カチンコチンにならないうちに
 全部話す気になった方が身のためだぜ!」

ヤクザたちはそう言い放つと、冷凍室の重い扉を閉めてしまった。
そして外からはしっかり鍵がかけられる音が聞こえた。
あの「東条寺宗晴には関わるな」という城南大学事務員の
忠告が、不幸にして的中した格好だ。

光平「くそっ、とんだVIPルームだぜ…」

光平はひょこっと立ち上がると、目を瞑って精神を集中させる。
そして両腕の筋肉に力を入れて、自分を縛っている縄を力ずくで引き千切った。
その後、すぐに優香を縛っていた縄も解き自由にする。

光平「優香、大丈夫か?」
優香「ありがとう。私は大丈夫よ」
光平「東条寺の父親って、闇金にまで手を出していたんだ…」
優香「これからどうするの…?」
光平「危ないから少し後ろに下がってて!」

突然、大轟音と共に冷凍室の分厚い鉄製の扉が破られた。
見張りに立っていた組員たちはびっくり仰天する。
冷凍室の中からは、紅蓮の翼をもつ異形が姿を現した。

シグフェル「………」

組員C「な、なんだ、てめえは!?」
組員D「やっちまえ!!」

組員たちは一斉に懐から拳銃を取り出し片っ端から発砲するが、
勿論そんな弾などシグフェルには掠り傷一つすら与えられない。

組員C「…バ、バケモンだ!?」
組員D「ひいっ…助けてくれええっ!!」

叶わないと悟ったヤクザたちは、
あっという間に一人残らず一目散に逃げ出した。

優香「光平くん…?」
シグフェル「優香、俺の側を離れるなよ!」
優香「うん…」

その時、さっき連れてこられた組長の部屋の方向から
幾多の悲鳴が聞こえた。

「ギャアアッッ――!!」
「誰か助けてくれええっ!!」

優香「何かしら!?」
シグフェル「行ってみよう!」

1297

優香「キャアァァッ――!!」
シグフェル「これはっ…!?」

辺り一帯には、悲惨な光景が広がっていた。
きっきの組長も含め、組員たちは無残に大量の血を流して
全員惨たらしく死んでいたのだ。
その光景に、シグフェルと優香は戦慄する。

キマイライーバ「ゴォォォォォッ…!!」

そして中央には、死んでいるヤクザの一人をその大きな口に銜え、
残忍そうに噛み砕いて楽しんでいる怪物がいた。
金属の胴体に四本足の四肢、そしてライオンと雌山羊とドラゴンの頭に
蛇の尻尾が生えている、全長5メートルはあろうかという巨体。
ギリシャ神話の魔物キマイラが、メカの装甲と融合したような姿である。

シグフェル「コイツっ…! あの怪物たちの仲間か!?」
キマイライーバ「グゥオオオンンッッ!!」

キマイライーバはシグフェルたちに一瞥をくれると、
口に銜えていたヤクザの死体を放り投げ、
コンクリートの壁を突き破って外に出て行った。

シグフェル「待て!!」

シグフェル、そして優香もその後を追いかけていく。
そしてそこにいたのは、まるで自身のペットのように
キマイライーバを手懐けていた"あの女"だった。

理乃「フフフッ…よしよし、いい子ね」
キマイライーバ「キャイイィィンンッッ…!!」

シグフェル「お前はっ…!?」
優香「――!!」

理乃「あら、これは驚いたわ…。
 妙なところで会うものね」

シグフェルたちの存在に気づく東条寺理乃…。
以前とは違って、まるで西洋の魔女のような黒衣を
身に纏った姿をしているが、間違いなく、
光平に謎の人体実験を施した"あの女"その人だった…。

理乃「久しぶりねえ、牧村光平君……いえ、今は
 シグフェルと呼んだ方がいいのかしら?」
シグフェル「…シグフェルシグフェルシグフェルッ!!
 お前までシグフェルって言うのか! シグフェルってのは
 いったい何なんだ!?」
優香「光平くんの身体に何をしたの!?
 彼の身体を元に戻して!!」
理乃「おや、貴女がそれを言うの? 沢渡優香さん。
 そもそも自分の彼氏に災難を押しつけたのは、
 どこのどなたさんだったかしらね…」
優香「――!!」

理乃の言葉は優香の罪悪感を鋭く刺激した。
まるでナイフで心臓を抉るかのように…。

優香「いや…やめて……聞きたくないっ!」
シグフェル「優香…!?」
理乃「自分の大切なボーイフレンドを
 醜い怪物の姿に変えた張本人は、
 沢渡優香さん、貴女よ!!」
優香「いやああっ!!」

優香は両手で両耳を塞ぎ、
精神的ショックで激しく動揺する。

1298

シグフェル「落ち着くんだ優香!
 お前は何も悪くなんかない!
 アイツの言葉なんかに惑わされるな!!」
優香「………」

シグフェルの必死の叫びで優香は落ち着きを取り戻すが、
その瞳からは放心状態が抜け切らない様子である。

理乃「あら、優しいのね。アハハハ…」
シグフェル「黙れッ!! それ以上優香を傷つけるなぁぁっ!!」

シグフェルは理乃に殴りかかるが、その前に理乃を庇うように
時空クレパスが三つ発生し、中からろくろ首のように
ライオン、雌山羊、ドラゴンの頭が伸びて来て
シグフェルに攻撃を仕掛けて来た。

シグフェル「くっ…!?」

キマイライーバの三位一体の攻撃に苦戦するシグフェル。
そうしているうちに三つの時空クレパスが一つに合体し、
中からキマイライーバの本体が突進してきた。
驚いた隙を突かれたシグフェルは、キマイライーバの右前足に
踏みつけられ、その動きを封じられてしまった。

シグフェル「くそっ! 放せコイツっ!!」
キマイライーバ「ゴォォォォォッ…!!」

シグフェルは懸命に逃れようとするが、
キマイライーバの右前足はビクとも動かない。

シグフェル「東条寺、今まであの怪物たちを操っていたのはお前か!
 なんで人間を襲わせる!?」
理乃「我ら"堕落の烙印を押されし神々"に仕えし者の使命は、
 "女神の器"を探し出すこと…。黄泉がえった人間を始末して
 回っているのはそのためよ」
シグフェル「……("堕落の烙印を押されし神々"…?
 "女神の器"…? いったい何の事だ…??)」

シグフェルには、理乃の発した言葉の意味を
理解できなかった。

シグフェル「あのヤクザたちを皆殺しにしたのも
 そのためなのか?」
理乃「…ああ、アレは違うわ。東条寺宗晴の余計な痕跡を
 単に消していただけよ。後々誰かさんに無用な勘ぐりを
 されないためにね」
シグフェル「まるで他人みたいな言い方だな。
 自分の父親なのにっ…!」
理乃「父親ですって…? そういえばそうとも言えるわね。
 でもそれはもう過去の事だわ」
シグフェル「……??」
理乃「さあ、お遊びはもう終わりにしましょう」

1299

シグフェルをキマイライーバに任せて、
理乃は優香に近づく。

優香「――!!」
理乃「さあ、沢渡さん、貴女は私と一緒に来るのよ」
シグフェル「やめろ! 優香に近づくな!!」
理乃「あの日に貴女と二人きりでやるはずだった、
 実験を改めてやり直しましょう。私のメスで
 今度こそ奇麗に切り刻んであげるわ!」
優香「いや…いやあっ! やめてえっ!!
 助けてええっ!!」
シグフェル「――優香ァァッ!!!!!」

優香の危機にシグフェルは渾身の力を振り絞って、
キマイライーバの右前脚を力ずくで振り払うと、
蛇の尾部分を掴んで勢いよく振り回し、
理乃のいる方向へと放り投げた。

キマイライーバ「グゥオオオンンッッ…!?」
理乃「――!!」

シグフェルはすぐさまに理乃と引き離された優香を保護する。

シグフェル「優香に指一本でも触れてみろッ!!
 その時はお前を殺すッ!!」
優香「光平くん……」

理乃「………」
キマイライーバ「ゴォォォォォッ…!!」

理乃は澄ましたように、シグフェルと優香を見つめている。

理乃「チッ、仕方がないわね!」
シグフェル「――!?」

理乃は右手の爪を自分の額に突き立て、
そこから体全身に向けて引っ掻くように
自分の皮膚を剥ぎ取った。それはまさに驚愕の光景だった。
中から現れたのは、不気味な紫に光る鱗に覆われた
大蛇のような怪人だったのだ。

優香「あ…ああッ……!?」
シグフェル「東条寺…お前はッ!?」

スネイザ「我が名は紫蛇(シジャ)の女王スネイザ!
 死ねいっ!シグフェルッ!!」

一瞬の出来事だった。東条寺理乃――いや、スネイザと名乗った女怪人の
頭部から長く伸びている巨大な尾が、シグフェルの身体に何重にも巻きついたのだ。

シグフェル「うっ…うわあああっ!!」
スネイザ「アハハハ…そのまま骨まで砕けておしまい!!」

スネイザの尾に強い力でぐいぐいと締め付けられる
激痛に苦しむシグフェル。

優香「――光平くん!!」

優香はスネイザの尾に捕らわれたシグフェルの側に駆け寄った。

シグフェル「…優香ッ…何してる!?……
 俺なんかに…構わずに……早く、逃げろッ…!!」
優香「いやっ!! 絶対に放さないっ!!」

その時、遠くからパトカーのサイレンが鳴る音が
段々と近づいてきた。

スネイザ「――チッ!!」

スネイザは尾を頭部まで巻き戻すと、
解放されたシグフェルはその場にぐったりと崩れ落ちた。

シグフェル「ぐっ…!!」

スネイザ「命拾いをしたわね。
 いずれまた会いましょう…」
キマイライーバ「グォォォォォッ…!!」

警察が来て騒ぎが大きくなっては
いろいろと面倒だと考えたのか…。
スネイザとキマイライーバは発生させた
時空クレパスの中へと消えていった。

シグフェル「くっ…待て!」
優香「光平くん、早くしないとパトカーが来ちゃう!
 私たちも行きましょう!」
シグフェル「くそっ……」

今回は東条寺理乃に再び接触できたにもかかわらず、
その目的も、シグフェルの身体の秘密も詳しい事は
何も掴むことはできなかった。

"堕落の烙印を押されし神々" "女神の器"

果たしてその二つの単語は、いったい何を意味するのか…?
そして最後に一つだけだが、確かにわかった事がある。

東条寺理乃は、今も沢渡優香を狙っている…!

シグフェル「優香……」
優香「なに?」
シグフェル「君は必ず俺が守る…!
 例えこの命に代えても!!」
優香「光平くん……」

優香を横にしてしっかりと両腕で抱き上げ、
上空に飛翔するシグフェル。その意思は
新たな決意に燃えていた。

1300

数日後…。

***東京赤坂・某高級料亭***

伊達「龍神会の総本部が壊滅した話は聞いたな?」
富樫「ああ、驚いたな…」

盃を酌み交わしながら話している人物は、
片や日本の首領(ドン)と恐れられる江田島平八の懐刀である
男塾OBのまとめ役・富樫源次。
そしてもう片方は、関東極天漠連合会長、初代伊達組組長として
日本の極道界に重鎮として重きをなす、同じく男塾OB・伊達臣人である。

伊達「組長から末端の構成員に至るまで皆殺し…。
 しかも発見された死体はどれもこれも、
 野獣に噛まれたような惨い傷跡ばかりだった。
 人間の仕業とは考えられん」
富樫「龍神会は勢力拡大のためなら堅気の衆も
 危険に巻き込むことすら何とも思っていない
 外道どもの集まりだったからな。どこの誰だか
 知らんが組織が崩壊してくれたのは、市民の安全に
 とっても何より――と、言いたいところだが……」
伊達「龍神会がなくなって出来たポッカリ空いた穴を狙って、
 また有象無象どもが一悶着を起こす恐れがある」

龍神会の縄張りをめぐって、暴力団同士の抗争が
激化する事を伊達は危惧する。

伊達「尤も、そちらの方は俺の方で何とか抑える。
 子分どもにも下手な挑発には乗るなと伝えてある。
 それよりも問題なのは、その現場に"紅蓮の翼"が
 いたことだ…」
富樫「"紅蓮の翼"…? 例のシグフェルか…?
 しかし警察が駆けつけた時には誰もいなかったと
 報告には聞いてるが…」
伊達「子分たちに詳しく調べさせた。どういうわけか
 どうもシグフェルもその場に居合わせたらしい。
 間違いない。もしもシグフェルの存在を
 ダッカー辺りに嗅ぎつけられる可能性が
 ないとも言い切れん」
富樫「わかった。そっちの方の報道管制は引き受けるぜ。
 しっかし、この間は火事の現場で人命救助をしたかと思えば、
 今度はヤクザの事務所に殴りこみとはな。
 シグフェル…奴さんの考えがどうにも今一つ読めん…」

一方、その頃…。

***GOD秘密基地アポロン宮殿・総司令室(キングダーク謁見の間)***

ジンギスカンコンドル「キングダーク様!」
ガマゴエモン「東京侵攻作戦の準備、整いましてございます!」

GOD悪人怪人軍団が一斉に集う中、上座にその身長42mもあろうかという
巨体を寝転がせて鎮座する、Gショッカー巨神邪将キングダーク!
GODでは総司令に次ぐ大権力者である。

キングダーク「今こそ時は来た! 我らはザンギャック艦隊による
 艦砲射撃のサポートの元、一気に東京に攻め込む。
 人間どもを皆殺しにするのだぁ~!!」

キングダークの号令に応え、怪人たちがおぞましい雄叫びを次々に上げる。
Gショッカーによる東京総攻撃が今、まさに始まろうとしていた…。

1301

○剣持保→都庁屋上でシグフェル追跡の指揮を執る。
○村中隊員→都庁屋上からシグフェル追跡作戦に参加。
○海野隊員→都庁屋上からシグフェル追跡作戦に参加。
○小野隊員→都庁屋上からシグフェル追跡作戦に参加。
○岩山鉄五郎→ANGELにサインをねだろうとして、小野隊員から着替えを押しつけられる。
○ライディーンイーグル/鷲崎飛翔→新宿上空でシグフェルを追跡するが、振り切られる。
○ライディーンコンドル/エース羽田→新宿上空でシグフェルを追跡するが、振り切られる。
○ライディーンホーク/鷹城電光→新宿上空でシグフェルを追跡するが、振り切られる。
○ライディーンアウル/鳥飼銀牙→新宿上空でシグフェルを追跡するが、振り切られる。
○ライディーンファルコン/大鳥疾風→新宿上空でシグフェルを追跡するが、振り切られる。
○南条一夜→稽古場でANGELの面々からシグフェルについて話を聞く。
○カイル・ムーン→稽古場でANGELの面々からシグフェルについて話を聞く。
○椿聖人→稽古場でANGELの面々からシグフェルについて話を聞く。
○海堂忍武→稽古場でANGELの面々からシグフェルについて話を聞く。
○武者小路藤丸→稽古場でANGELの面々からシグフェルについて話を聞く。
○本郷猛→城南大学の事務室で、訪れた牧村光平、沢渡優香と偶然に入れ違う。
○富樫源次→龍神会崩壊後の極道の世界の均衡について協議。
○伊達臣人→龍神会崩壊後の極道の世界の均衡について協議。
●キングダーク→東京攻撃作戦開始を号令する。
●ジンギスカンコンドル→キングダークの号令に従う。
●ガマゴエモン→キングダークの号令に従う。

○シグフェル/牧村光平→東条寺理乃と対峙。理乃の変身したスネイザと交戦。
○朝倉慎哉→東条寺理乃の父親について調べ上げる。
○沢渡優香→東条寺理乃と対峙。理乃がスネイザの正体を現したのを目撃。
●スネイザ/東条寺理乃→スネイザの正体を現し、自らを紫蛇(シジャ)の女王と称する。
●キマイライーバ→シグフェルと交戦。

【今回の新規登場】
○岩山鉄五郎(大鉄人17)
 レッドマフラー隊の押しかけ隊員。通称ガンテツ。
 赤シャツに学ラン、下駄履きという典型的な浪人生スタイル。
 東大合格を目指していたがレッドマフラー隊の活躍に憧れて
 あっさり東大合格をあきらめたという経緯から、
 幾度も南三郎やレッドマフラー隊の危機を救った。

○小野隊員(大鉄人17)
 レッドマフラー隊の女性隊員で、主に佐原千恵と同じく
 通信班として活動する。村中隊員とは恋仲らしい。

○鷲崎飛翔=ライディーンイーグル(超者ライディーン)
 アイドルグループ「ANGEL」のメンバーで、中学3年生。
 両親が離婚しており、母まりえ、妹であるつばさとの3人暮らし。
 家はあまり裕福とは言えなかった。学校の屋上から落ち昏睡状態に
 陥ったガールフレンドの宮坂瑠璃を常に気にかけていた。
 ライディーン戦士としては火の力を操り、ANGEL5人の中で
 攻撃・防御・技・スピードの全てにおいてバランスがとれている。

○エース羽田=ライディーンコンドル(超者ライディーン)
 アイドルグループ「ANGEL」のメンバー最年長。
 日本人である父とアメリカ人である母(既に他界)のハーフ。
 以前はニューヨークでストリートギャングのボスをやっていた。
 超魔に襲われライディーンとして覚醒するも、自分のためらいのせいで
 仲間達を殺されてしまったことを悔いている。その後天賀井玲子と出会い、
 天使更生組合のタレント第一号となる。ライディーン戦士としては大地の力を操り、
 ANGEL5人の中で最も攻撃力に優れている。

○鷹城電光=ライディーンホーク(超者ライディーン)
 アイドルグループ「ANGEL」のメンバーで、中学3年生。
 実は大企業の御曹司だが、将来お笑い芸人になりたいという夢のために
 関西人でもないのに関西弁を喋り、出会って間もなく飛翔と無理矢理お笑いコンビを組む。
 ライディーン戦士としては雷の力を操る。ANGEL5人の中で最も防御力に優れている。

○大鳥疾風=ライディーンファルコン(超者ライディーン)
 アイドルグループ「ANGEL」の最年少メンバーで、
 IQ250の天才で、自ら設立したゲーム会社の社長。
 ライディーン戦士としては風の力を操り、
 ANGEL5人の中で最もスピードに優れている。
 ザ・ハーツの武者小路藤丸とは大の親友同士である。

○南条一夜=ライディーンクロウ(超者ライディーン)
 人気絶頂のロックバンド「THE HEARTS」のリーダーであり、ギター担当。
 鷲崎飛翔を一方的にライバル視している節がある。
 ライディーン戦士としては影の力を操り、攻撃・防御・技・スピードの
 全てにおいてバランスがとれている。

○カイル・ムーン=ライディーンアーザス(超者ライディーン)
 人気絶頂のロックバンド「THE HEARTS」のメンバーで、
 ドラム担当のオーストラリア人。趣味は日本のアニメ・時代劇鑑賞。
 日本語は流暢であるが、全てアニメや時代劇から学んだため
 語尾が「〜でござる」など多々怪しい部分がある。
 ライディーン戦士としては虹の力を操り、技に優れている。

○椿聖人=ライディーンフェニックス(超者ライディーン)
 人気絶頂のロックバンド「THE HEARTS」のメンバーで、ベース担当。
 ニューヨークでエース羽田率いるストリートギャングの一員となり、
 一度超魔に襲われ死亡するも、ゴッドフェザーによって甦り、
 南条一夜と出会いザ・ハーツに入るという数奇な運命を辿る。
 鷲崎飛翔とも幼馴染の関係。ライディーン戦士としては炎の力を操り、
 防御力に優れ、ヒーリング能力も持つ。

○海堂忍武=ライディーンブラッド(超者ライディーン)
 人気絶頂のロックバンド「THE HEARTS」のメンバーで、ヴォーカル担当。
 根っからのスポーツマンで、暇さえあればいつも腕立て伏せをしている。
 ライディーン戦士としては音の力を操り、攻撃力に優れている。

○武者小路藤丸=ライディーンダイノ(超者ライディーン)
 人気絶頂のロックバンド「THE HEARTS」の最年少メンバーで、キーボード担当。
 趣味は俳句を読む事。ライバル関係にあるANGELの大鳥疾風とは大の仲良し。
 ライディーン戦士としては氷の力を操り、スピードに優れている。

●キングダーク=呪博士(仮面ライダーX)
 GOD機関悪人怪人軍団を率いる最高幹部。
 身長42m、重量1500tを誇る巨大ロボットである。
 GOD総司令から全権を委任されており、怪人を将軍へ推薦する権限を有している。
 その正体は、GOD機関の支配者・呪博士のサイボーグボディであり、
 内部には侵入者を迎撃するためのトラップが仕掛けられていたり、
 戦闘工作員が巡回警備しており、このロボット自体が呪博士を守る要塞の
 役割を果たしている。

●ジンギスカンコンドル(仮面ライダーX)
 世界最大の帝国を築いた独裁者チンギス・ハンの死体に
 コンドルの能力を与えたGOD悪人怪人。口から火炎を吐く。
 吸血鬼ビールスで都民の吸血鬼化を計画した。

●ガマゴエモン(仮面ライダーX)
 伝説の大泥棒石川五右衛門とガマガエルのGOD悪人怪人。

●キマイライーバ(闘争の系統オリジナル)
 堕神の使徒で、ギリシャ神話の怪物キマイラに、メカの装甲を融合
 させたような姿の、4本足で歩く全長5メートルほどの魔物。
 別々に発生された時空クレパスからライオン、雌山羊、ドラゴンの
 三つの頭部を伸ばして行う攻撃が得意。武器はドラゴンの口から
 吐き出す高熱ガスと、雌山羊の口から吐く冷気。そして両前足の鋭い爪。