『慟哭の王子達』

作者・シャドームーン

1

***プロローグ***

 
 過去、人類支配と世界征服を目論んだ幾多の秘密組織、
暗黒組織の数々も、人々から“ヒーロー”と称される戦士たちの
決死の活躍によりその多くは滅び、世界は平和が続いていた。

 しかしこの平和は、真の平和なのだろうか?
再び世界を覆い尽くす影は、現れないのだろうか………。
それは、まだ誰にも分からない………。


 ◇    ◇


 11人ライダーとクライシス帝国の決戦から半年後――
南光太郎・仮面ライダーBLACKRXは仲間に別れを告げ、
先輩の10人ライダーに続くように己を鍛える旅を続けていた。
そしてこの日…彼はかつての親友・秋月信彦の墓に参るため、
故郷日本の某所を訪れていた…

光太郎「こ、これは…っ!!」

 信彦の遺体を埋葬した墓は、奇妙な掘り起こされ方をしていた。
いや――掘り起こされたのではなく、中から「這い出た」と表現したほうが
いいのだろうか。まるで遺体が息を吹き返したかのように…。

光太郎「まさか…そんなことが! 信彦が…生き返ったのか!?」

???「いや、そのまさかなのだよ――…クックックック…
 驚く事でもあるまい。奴も貴様同様に“キングストーン”とやらを持つ、
 世紀王の片割れなのだろう…? まったく厄介な存在だな、お前らは…
 なあ。南 光 太 郎 …」

光太郎「…その声…お前は!!」

 暗がりから現れたのは、高貴な身分が伺える装飾品を身に着けた長身の人物。
顔は赤いU字型のシールドがある、白いフルフェイスマスクにすっぽりと覆われて判別が
つかないが、そのマスクの額部分には不気味な“人面”が笑っている。
地球に怪魔界50億の民を移住させるべく、地球の影と言われる怪魔空間より
派遣されたクライシス四大隊長の一人、ボスガンであった。

ボスガン「ふふふふ…。憶えていてくれたとは光栄だな南光太郎。
 いかにも! 怪魔獣人大隊を率いる海兵隊長・ボスガンだ!!
 待っていたぞRX…我らの見当通り、ここへ現れるとはな…ククク」

光太郎「ボスガン!! どういう事だ…お前は確かにあの時、俺が倒したはずだ!
  いやお前だけじゃない、ジャーク将軍も、ダスマダーも、クライシスは怪魔界と
 共に滅んだはず…はっ。 ま、まさか信彦も…!?」

ボスガン「クククク…我らだけではない。今や貴様らの手の及ばぬところで、
 ありとあらゆる闇の住人が復活を遂げた…貴様の親友だった男もなフフフッ
 私がお仕えするのはもはやクライシス皇帝陛下のみに非ず!!
 我らは最強最大規模を誇る無限なる帝国――『ガイストショッカー』の
 一員となり、今再びこの地上に舞い戻ったのだ!!」

2

ボスガン「Gショッカーは永遠不滅にして無敵の帝国…怪魔界は滅びぬ!!
 ククク光太郎。愚かな地球人類を守る貴様らの頑張りも徒労に終わる。
 間も無くこの星は、我らGショッカーの支配下におかれる事になろう。
 何者であろうとこれを阻む事はできぬ…仮面ライダーBLACKRX、貴様でもなッ!」

光太郎「!…ショッカー…その名を冠するということは、お前達を復活させ
 操っているのは、先輩たちが倒した『大首領』なのかっ!?ふざけるなあッ!!
 この平和を守るために…どれだけ多くの人々が犠牲になったと思ってるんだ!!」

ボスガン「ふ…言っただろう、私がお仕えする御方は“一人に非ず”とな…
  おっと、これ以上は貴様などにいちいち答える義理などないわ。
  さてと…そこに眠っていた男が何処へ消えたのか、教えてもらおうか。
  奴と同じキングストーンを持つ貴様ならば“共鳴”とやらで分かるのだろう? 
  私としてはあんな奴など生きていようがいまいがどうでもいいが、命令でな。
  連れて来いとのおおせだ。 さあ、シャドームーンは何処だ?
  今何処にいるのだ南光太郎!!」

光太郎「……フッ。はっはっはっは、冗談じゃないぜ!!
 こっちがお前らに聞きたい事だらけさ! ボスガン! やはりお前は何度蘇っても、
 貴族でもなければ誇り高い戦士でもない、邪悪の塊だな!!
 Gショッカーがどんなヤツらだろうと、俺達11人ライダーが必ず打ち砕いてみせる!!」

ボスガン「ぬうっ、ほざくな若僧! Gショッカーは貴様ら虫ケラが束になっても取るに足らぬわ!
 よかろうRX。シャドームーンの行方は貴様を地獄へ送ったあとで、腹のキングストーンだけ
 抉り出して奴を見つけ出す探知機代わりに使ってやる。…私は怪魔霊界で片時も忘れた
 ことはない…貴様のような下衆な輩に倒された屈辱をなあッ!!
 今度は貴様が味わう番だ…かかれ者共!!」

光太郎「来い!!」

 ボスガンの号令が放たれるや否や、彼の背後から海兵隊長直属のエリート部隊だと分かる、
煌びやかなマントを羽織った兵士チャップの一団が一斉に光太郎を襲撃する。
チャップたちはよく訓練されている選り抜きらしく、見事な連携を組みながら抜刀して上下左右
から断続的な攻撃を仕掛ける。――が、光太郎はこれを難なく受けきり、蹴散らしていた。
すでに10人の先輩ライダーに見劣りしない、歴戦の勇士へと成長していた彼には、
いかに手錬れのチャップ集団といえども敵では無かったのだ。

3 名前

光太郎「クライシス、いやGショッカー!!

 地球は貴様らには渡さん!! 変・身…!」

 万物を照らす太陽の光。その輝きが光のオーロラとなり、光太郎の全身を駆け巡る。
眩い光のエナジーは、体内にある太陽の石・キングストーンと呼応し黒き勇者を誕生させる――

BLACKRX「俺は太陽の子・仮面ライダー、ブラァック!…R・X!! いくぞボスガン!」

ボスガン「フフ、変身したなRX。今度こそ我が剣で息の根を止めてくれるわ、けええぃっ!!」

 鋼も分断する豪剣が放たれ、RXの強固なボディに絶え間無い斬撃を浴びせる。 
マクロアイでも看破しきれないその高速の太刀筋は、幾重にも緑のRXフォームに
鮮やかな火花を導火線のように走らせ、切り裂いていった。

BLACKRX「ぐわっ…!! なんという剛剣だ!! 以前とは比較にならない!!」

 RXは胸から裂傷による白煙を上げながら、しなやかな脚力のバネを効かせて壁を
二回、三回と蹴り、敵の間合いを翻弄する。そして空中で自らの体に捻りを加え、
ボスガンの側頭部目掛けて反撃のキックを見舞った。

BLACKRX「トワァッ!」
ボスガン「フハハハ、ノロい蹴りだ…こうしてくれる!!」

RXの強烈な蹴りを難なくかわし、さらに鋭さと速度の増した豪剣を振るうボスガン。
何とかこれを避けながらRXもパンチを繰り出すが、手数とリーチに勝る大隊長の
斬撃が幾度もライダーの体に襲いかかり、次第に劣勢となっていく……

ボスガン「フフフどうしたRX。貴様の力はこんなものだったのか!?
 我が偉大なる主から頂いたこの力…くっふふ…もはや貴様など
 私の敵ではない、その首、貰ったあ!!!」

BLACKRX「ぐぅぅ…このままでは! 強い…捕らえてGショッカーの事を
 聞きだすつもりだったが、とても手加減しながら戦える相手じゃない!!
 奴の言う通り、Gショッカーとはそれほど強大な力を持っているという事か…。
 俺は負けられない…ボスガンのような卑劣な奴には断じて!!トゥアッ!」

 間一髪、ボスガンの剣がRXの首を刎ねようとした瞬間――RXはその一撃をかわし、
空中高く飛び上がった。10メートル…30メートル…強靭な脚力が生むRXジャンプは
60メートルにも達していた。そして両足を揃えると、足先にエネルギーを集中させ、
赤い閃光を放ちながら一気に落下・加速する!

BLACKRX「アールエックスキィ――ック!!!」

ボスガン「フハハ愚か者めっ! 貴様のキックの隙などお見通しよ!
 電・磁・波・剣!!」

 海兵隊長の愛刀から電撃が放たれ、加速中のRXを直撃する。
しかし彼は雷光にその身を焦がされながらも、技の体制を崩さず渾身の力を込め、
RXキックを攻撃直後で構えの解けぬボスガンに炸裂させた!!

ボスガン「ぬがぁッ!! お、おのれぇぇ…RX…!!」

 咄嗟に肩に装着した短刀を剣に交差させ防御はしたものの、強烈な衝撃を
食らってボスガンは吹っ飛び、RXキックの威力をもろに受けてしまった両腕からは
火花が散り、濛々と硝煙を上げていた。
 よろめきながら、なんとか剣で体を支えている状態である。

4

BLACKRX「リボルケイン!!」

 怯んだ大隊長に勝機ありと見たRX。
すかさずベルトから光のスティック、リボルケインを引き抜き、数々の
怪魔戦士を葬って来た必殺の一撃、『リボルクラッシュ』の体勢に入ろうとする。

 その時。猛烈な風が両者の間に割って入るように巻き起こり、
その渦巻く風がやんだ時…
―――そこには二又の穂先を持つ槍を持ち、雄雄しい二本の角を備える兜と
重厚な甲冑を身に着け黒馬に跨る“騎士”が立っていた。
かつて怪魔界の砂漠地帯でRXと死闘を展開し、敗れ去った誇り高き武人、
怪魔獣人ガイナギスカンである。

BLACKRX「お前は風の騎士ガイナギスカン! やはりお前達は…」

ガイナギスカン「久しぶりだなRXよ。フッフフ、また会えて嬉しいぞ!」
 
ボスガン「何用だガイナギスカン! 手出し無用、まだ私は敗れてはおらぬぞーっ!」

ガイナギスカン「ボスガン様、ジャーク将軍の御命令です…ここはお退きくださいませ。
 …シャドームーンが見つかったそうにございます…」

BLACKRX「信彦が…!?」

 シャドームーンが、秋月信彦が生きている。その言葉がRXには奇妙な
感覚と共に、紛れもない事実としてすぐに認識できた…
 二つのキングストーンが呼び合っているからなのか?
それとも――同じ家で育ち、共に泣き、笑い、互いを認め合った親友だから…?
自分はこの目で確かに、「信彦として息絶えた」シャドームーンを看取ったはずなのに。

ボスガン「何だと…!? 誰だっ、奴を発見したのは!」

ガイナギスカン「ジェネラルシャドウとヘビ女の一派との報告ですが…」
 
ボスガン「チッ…あの“はぐれデルザー”か。あのような者共に遅れをとるとは~!
 この上はRXの首だけでも持ち帰らねば、私のプライドが許さぬ!!」
 
ガイナギスカン「その役目は私めにお任せあれ。ボスガン様は当初の目的が
 失われた今、無理にRX如きの相手をする事もありますまい。
 ここはどうか、このガイナギスカンにRXとの勝負をお許し頂きたい…!」

ボスガン「チイ…将軍の御命令とあらば致し方あるまい。
 だがガイナギスカン、自ら討伐を買って出たからには失敗は許されんぞ!!
 必ずやRXを討ち取り我が怪魔獣人大隊の誉れとせよ!!」

ボスガンの顔を覆うマスクの不気味な人面部が、憎々しげにRXを一瞥したあと、
愛刀を鞘に納めると同時に大隊長は姿を消した――

5

ガイナギスカン「ハハッ…! さぁゆくぞRX。怪魔界では不覚をとったが、
 今度は俺が勝つ! パワーアップした我が風の威力、味わうがいいッ
ハァッ!風魔・ビームハリケーン!!!」

 ガイナギスカンの掌から、虹色の光線のような猛竜巻が放たれた。
風速100メートルを超える風と共に、高エネルギーがRXに襲いかかる!
 
BLACKRX「うわああっ!!ガイナギスカン、こいつも前より
 ずっと手強くなっているのかっ…!」

 リボルケインでビームハリケーンを防御し、必死に耐えるRXであったが、
ついに耐え切れず何十メートルも吹き飛ばされてしまう。
風の騎士は間髪入れずに目からもビームを放ち、体勢の整わぬRXを
猛撃して攻め立てていく。バック転とジャンプでこれを回避するRXだが、
距離を取ればビーム、接近すればビームハリケーンと槍の攻撃に翻弄
され攻略の糸口が見えずに防戦一方にさらされていた。

ガイナギスカン「隙ありRX! どりゃっ! でぃやぁぁぁッ そらそらどうした!!」

 風の騎士の振るう槍捌きは容赦なくRXの体を切り裂き、貫かんとする。
先ほどのボスガンから受けた剣のダメージもあり、さしもの頑強なRXフォームも
悲鳴を上げるように猛烈な火花を散らし、裂け目が露になっていく…

BLACKRX「ぐふっ……俺は、倒れるわけにはいかないんだっ!!」

 劣勢に立たされ、絶対絶命かと思われたその時、RXは一歩も怯まず
ファイティングポーズを取り、目の前の強敵・風の騎士と改めて向かい合う。
そのどっしりとした風格からは追い詰められた者に見られる焦燥感は微塵も
感じられなかった。

BLACKRX「風の騎士ガイナギスカン…お前は強い。卑怯な手を用いずに、
 己の技を駆使して正々堂々と戦う戦士――変わらないな……
 だが俺もここで敗れることはできない! 俺は太陽の子…お前達のような
 暴力から、この平和を…生きとし生ける者の命を守るために戦う戦士!!
 仮面ライダーブラック、アールエックスだ!!!」

ガイナギスカン「…フフ…。そのどっしりとした風格と迷い無き佇まい…
 それは幾多の死戦を己の力のみで打破して来た者のみに備わる、
 真の勇者である証。RXよ、怪魔界で出会った頃より一段と成長を
 遂げたようだな。フフフフ、蘇った俺の初陣、相手にとって不足無し!!」

BLACKRX「己の力? 違う…俺が強くなれたのは、俺だけの力じゃないさ…」
ガイナギスカン「…ほう…では何だと?」

BLACKRX「俺は今日までたくさんの人たちに出会い、助けられて来た……
 彼らがいたから、俺はどんな強敵が現れても戦い抜けた。
 今はもう、会えなくなってしまった人たちも…俺の中にいつまでも生きている。
 たくさんの大切な人たちが、俺を支え励ましてくれている。…だから…!!
 俺は彼らの生きるこの世界をどんなことがあっても守り抜いてみせる!!」

ガイナギスカン「フッ、見事な覚悟だ。ならば俺も、怪魔霊界より今一度、
 貴様との勝負の機会を与えて下さった我が主のために……
 RX!貴様の命、貰い受ける。 貴様がその大切な者どもとやらのため
 命を賭して戦うことが“正義”ならば、これが俺の正義だ!!ゆくぞ!!」

6

再び開始される激闘。風の騎士は長大な槍を自在に振り回し、RXの
ボディを×字に斬り付けたあと、二又に別れた切っ先でライダーを挟み込み、
後方へ投げ飛ばした。

ガイナギスカン「勝負あったなRX! その深手ではもはやこれを回避できまい!
 お前ほどの勇者、俺も最大の技で葬ろう!ビームハリケーンスペシャル!!」

BLACKRX「…うおおおお…っ…ハア!!」

 強化されたガイナギスカンの秘技が両の掌から放たれ、炸裂した。
二本の虹色の光線が渦を巻き、RX目掛けて大爆発を起こす。
立ち昇る黒煙、しかしその中から、突如として黄色い閃光が発射され
勝利を確信していた風の騎士の胸に命中した!

ガイナギスカン「ぬおおっ!! な…何だとバカなぁ! き、貴様は…!?」

 黒煙と逆巻く炎の中から、鋼の足音と共に真紅の複眼が姿を見せる。
黒と黄の鋼鉄の装甲に見を包み、右手に銀の銃を構えた不落の要塞。
無慈悲にも奪われた命への、限り無き哀しみが生んだ闘士、
 その名は――――!

ロボライダー「俺は哀しみと炎の王子…R・Xロボライダー!
 クライシスが奪った一人の少女への慟哭が、俺を目覚めさせた!!
 二度と目前で愛する者を失わせないために、俺の力はある!!」

ガイナギスカン「くっ…ロボライダー、そうか貴様が…ならばこれはどうだ!?」

 ガイナギスカンは体を丸めて体当たりを敢行、そして頭部にある二本の角を伸縮
させロボライダーを刺し貫こうとする。が、ロボライダーは突進して来る風の騎士の
回転を両腕で角を掴み阻止、その強大なパワーを誇る肘鉄で角を叩き折った。

ガイナギスカン「ぐぬぁ…、 ええい、何のこれしきよ! せいやあ!!」
ロボライダー「むん、トオワァ―ッ!!」

 風の騎士は角を折られても怯まない。すかさず槍の一撃を袈裟懸けに振るうが、
ロボライダーの強靭なる“ロボフォーム”はその衝撃を微動だにせず受け止める。
そして手刀で槍を切断、次の瞬間には削岩機の如きパンチが、ガイナギスカンの
顔面に炸裂していた。顔から火花を上げ、吹っ飛ぶ風の騎士。

7

ガイナギスカン「ぬがぁ…ッ!!! やるなロボライダー…フフフ、だが俺もナイトの
 誇りにかけて敗れるわけにはいかぬ!! 風魔ァ~ビィィームハリケーン!!!」

 息も絶え絶えに、ガイナギスカンは全エネルギーを注入して虹色の光線を放つ。
最大級の大渦巻きが地面を抉り砕きながら、ロボライダーに襲い掛かる!!

ロボライダー「ボルティックシューター! …ハードショット!!」
ガイナギスカン「ぬうっ!? ぐ、がああああああっ!!!」

 ロボライダーは襲い来る渦の渦中に、空を斬る光弾を続けざまに発射、
その黄色い閃光はビームハリケーンを潜り抜け、風の騎士の肩と腹に
命中して爆発する。しかし誇り高きガイナギスガンは、深手を負って尚、
悠然と眼前の戦士を見据えて地に倒れ伏そうとはしない。

 ロボライダーが静かに両手を下ろし、光と共にその姿がRXへと戻る。
そしてRXもまた、眼前の戦士を真っ直ぐ見据え、ボルティックシューターが
変化したリボルケインをゆっくり構えた。
 刀身に漲る青白いハイブリット・エネルギーが二人の空間を隔てている
「風」を薙ぐように残像を映しながら輝く。

BLACKRX「……ガイナギスカン」
ガイナギスカン「…フフ…フ…。RX……勝負!!」

 先に仕掛けたのはガイナギスカン。残った角を剣のように伸ばし、
RXに最後の体当たりを敢行する。RXジャンプ一閃―――。
ガイナギスカンの突撃をかわし背後に着地、すかさず前転して
接近し、振り向き様の風の騎士を、渾身のリボルケインが貫いた!!

BLACKRX「リボルケイン…―――――ッ  トァッ!!」
ガイナギスカン「グギャァァアア――ッ!!」

 リボルケインに貫かれた腹部から背中に抜けて、大量に火花を噴出させ
苦しむガイナギスカン…やがて彼は、RXの体を力を振り絞って押し退け、
自らリボルケインを引き抜いた。

ガイナギスカン「グ…フフ…見事也、仮面ライダー……ぬあ!!
 他者への哀しみ…守る力…貴様の成長、しかと見せてもらったぞ。
 これが…お前達の強さの源か……フ……悪く…無い…
 貴様のような男と今一度死合う機会を与えて下さった……
 我が偉大なる…闇の支配者…至高…邪神…様に…
 御武運あらんことを……フ、さらばだRX……」

 ドォォーーォォン
怪魔獣人大隊の誇り高きナイト、ガイナギスカンは大爆発と共に砕け散った。
RXもまた、一度は葬った戦士を再び自分の手で倒したことへの
虚しさと、良き勝負を繰り広げた強敵に敬愛の気持ちを抱いていた。

BLACKRX「俺もまた君と戦えた事を誇りに思うぞガイナギスカン…
 今度こそ、ゆっくり眠ってくれ…。しかし、至高邪神…とは一体…。
 ボスガンはもはや仕える主はクライシス皇帝だけではないと言った…
 話に聞く“大首領”ですら、その一人に過ぎないということか…。
 これだけは分かる―――…今度の戦いは、先輩ライダー達と
 力を合わせても勝てるかどうか…俺達にも、何かもっと大きな力があれば…」

BLACKRX「…信彦…お前は今どこにいるんだ…? 俺は二度とお前に、
 シャドームーンとしてその手を悪に染めて欲しくない…
 お前はあの子供達を命がけで救ってくれたじゃないか…
 それなのに、それなのにまた…――…俺はお前と戦わなくてはならないのか…?
 答えてくれ…信彦ぉぉぉぉぉぉ――ッ!!…」

 南光太郎・仮面ライダーBLACKRXは、新たな敵Gショッカーの胎動と…
二度と会えぬはずのかつての友との、再び巡って来るであろう対決の運命を
感じていた。果たして今度彼の前に現れるのは、人間・秋月信彦なのか?
それとも宿命の強敵・世紀王シャドームーンなのか―――――
そして闇の世界から死した戦士たちを操る、至高邪神の正体とは!?

 今再び、遥かな時代より繰り返されて来た
『光と闇の果てし無い戦い』、“闘争の系統”に新しい神話が生まれようとしている…………。

  ○仮面ライダーBLACKRX→ガイナギスカンを倒す。
新組織ガイスト・ショッカーのかつてない脅威に危機感を募らせている…。
●ボスガン→撤退。復活後はさらに切れ味を増した剣術を持って、打倒RXの雪辱に燃えている。●ガイナギスカン→RXに敗れる。


 【今回の新規登場】
○南光太郎=仮面ライダーBLACKRX(仮面ライダーBLACK、仮面ライダーBLACKRX)
 同じ日蝕の日に生まれた秋月信彦と共に、19歳の誕生日に暗黒結社ゴルゴムによって
 次期創世王候補、世紀王に改造された若者。養父の助力で組織より脱出、人類の
 守護者仮面ライダーブラックを名乗り、一年間の激闘の末ゴルゴムを壊滅させる。
 半年後、怪魔界から襲来した新たな敵クライシス帝国との戦いで、太陽の子RXへ新生を
 果たす。アリゾナから駆けつけた1号以下10人ライダーと協力し、ついにクライシスを倒した。
 二年に渡る戦いの後、世界各地に散った先輩ライダーと連絡を取りながら自分自身を
 鍛えるべく旅をしていた。新組織Gショッカー出現に危機感を募らせる一方、友の姿を
 取り戻して息絶えたはずの、シャドームーン=秋月信彦の黄泉帰りに動揺を隠せない……。

●海兵隊長ボスガン(仮面ライダーブラックRX)
 Gショッカー正規軍・クライシス帝国の怪魔獣人大隊を束ねる幹部。
 純粋なクライシス貴族出身のため、同僚をもれなく軽蔑している節がある。
 剣術の達人で愛刀電磁波剣を振るいRXへの雪辱に燃える。
 野心家の一面もあり、かつてはジャーク将軍失脚後の最高司令官の座を
 無想していた。果たして黄泉帰りし魂で、彼が真に望むのは…。

●怪魔獣人ガイナギスカン(仮面ライダーブラックRX)
 怪魔獣人大隊きっての猛者で、ナイトの位を持つ数少ない怪魔戦士の一人。
 槍術に長け、風を自在に操る。常に正々堂々と勝負したがる豪傑。
 黄泉帰り後は強化改造によりパワーアップしていた。
 通称「風の騎士」 


『孤高の魂』-1

作者・シャドームーン

8 
***?????***

「いよいよ活動を開始する時が来たな…」
「今まで多くの軍団が果たせなかった地球征服を今こそ成功させるのだ」
「待て…それには邪魔者共を一人残らず始末しなければならん」
「当然手は討ってある。最も早い段階で障害になりそうな連中と言えば」
「なるほど。それは彼奴らをおいて他にはおるまい…フフフフ…」
「ククククク…」

『――ゆけ! まず手始めに、連中を地上から抹殺せよ!』
『抹殺せよ! 抹殺せよ!  抹殺せよ!
――――――抹  殺  せ  よ  !!』


   「ガイスト万歳! ガイスト万歳! ガイスト万歳!」

       」」      」」       」」       」」
        __  |    __  |    __  |    __  |
              |          |          |          |   _|  _|  _|
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我  ら  を  狙  う  黒  い  影―――!
懲りること無く、現れては滅びて行った“地獄の軍団”が蘇る。
彼らの決して消えぬ『世界制覇』への妄執が今、かつてない
史上最大規模の脅威となって全世界に迫りつつあった………。

***アリゾナ・11ライダー本部基地***

アメリカ合衆国アリゾナ州郊外―――
荒涼とした砂漠風景と岩山の台地が広がるこの地には、
11人ライダーの海外での秘密アジトが設けられている。
世界に散った仮面ライダー達は、強大な力を持つ敵との決戦を
迎える際には必ず此処に集合し、猛特訓を行って来たのである。

そして現在。クライシス帝国壊滅後、基地を守っているのが
“歴戦の勇士”仮面ライダー1号である。誰よりも永きに渡り悪の
組織と戦い、誰よりも長い間平和の存続を願って来た男、本郷猛。
その彼の元に、日本へ向かった南光太郎から最悪と言っていい緊急
連絡が届いていた。というのも、本郷はここ数ヶ月、嫌な胸騒ぎが
続いていたからだ。FBI捜査官・滝和也からも最近続発している、
奇妙な事件の報告があった…。それは死んだはずの人間が、生前の
ままの姿で突然現れるというもの。RXが交戦したクライシス、
そして消えた秋月信彦の遺体。

猛「そうか…。うむ、光太郎君も充分気をつけてくれ…
 我々も他のみんなにすぐ連絡を付けるよ、じゃあ」

本郷は手元のコーヒーカップを口に付けながら、机に置かれている
小さな写真立を見つめていた。写真には、立花藤兵衛と滝和也…
そして緑川ルリ子らが笑っている。

猛「フ…早いものだ。『あれから』何度、俺達は――」

『あの頃』優秀な青年科学者であり、一流のオートレーサー
でもあった本郷猛。彼を終わり無き闘争の渦中へ引き込んだ“悪の秘密結社”
との戦いが始まってから、一体どれほどの月日が流れただろう。戦い、傷つき、
戦い、倒す。まるでイタチごっこのような日々が、幾度と無く繰り返されて来たのだ。
しかし敵がいなくなる日はまだ遠い…

地球支配を企む者は、名だたる巨大組織ばかりではない。
本郷がそれを知ったのは、日本を一文字隼人に託して海外のショッカーを
追っていた時だった。 世界のありとあらゆる場所に息づく、闇の世界から
地球を狙う者たち。一つの悪が潰え平和の陽が昇る時、それは地下で
爪を研いでいた勢力が、次なる魔手を伸ばす時でもあった。

猛「長い長い戦いだ…だが俺にとってなにより嬉しかったのは、俺の後に
 続いてくれる仲間が何人もできたこと。本当は…二度と俺と同じ境遇の
 人間が現れて欲しくないと願っていたはずなのに…フ、だが彼らなくしては…」
隼人「な~にしかめっ面して物思いにふけってんだよ!」
猛「ん…おお、一文字。帰ってたのか…」
隼人「お前な~~…。さっきからずぅーーっと声かけてたっつうの!
 本郷…お前のその一人で勝手にどんどん向こう側に行っちまう
 因果な性格は、ちっとも直らねえなあ…で、どうしたい?
 里帰りした後輩の便りがあったのにその浮かない顔、悪い報せか?」
猛「ははは…そうだったか、すまんすまん。…ああ、とびきり悪いニュースだ」
 
精悍で凛とした顔立ちながらどこか朴念仁な佇まいを感じさせる本郷とは
対照的に、二枚目で人なつっこく朗らかな性格だが、時折影が覗く男――
一文字隼人。言わずと知れた本郷猛の最も付き合いの長い「戦友」であり、
改造人間という業を背負い戦う、「もう一人の自分」。
1号ライダーと相似形の姿を持つ“歴戦の闘士”仮面ライダー2号である。

9

隼人「そうか奴さん…今度はとんでもなくデカい組織をこさえたみたいだな。
 チッ、クライシスが滅んでまだそんなに経ってねえのに…ご苦労なこったぜ!」
猛「…俺達はこれまでにも、一度倒した連中と再戦した事はあったが…
 今度の相手はただの再生怪人などとは、比較にならん強敵らしい。
 一文字…光太郎君の危惧している通り、今度ばかりは俺たちの力
 だけでは防ぎきれんかもしれんぞ」
隼人「おいおい…らしくねえなあ本郷。先輩の俺達がそんな弱気でいると
 知ったら、光太郎のヤツもがっかりしちまうぜ?
 どんな相手だろうと俺達がいる限り……闘るしかねえ。そうだろ本郷…」
猛「フッ…そうだったな一文字。すまん、冗談だ。
 そうだ…敵がどんなに強大だろうと、それでも…守ってみせる!
 それが俺たち―――仮面ライダーだ!!」

――同時刻…アリゾナ本部基地を離れた台地から監視している、
謎の一団があった。彼らは一様に黒い覆面に黒の全身タイツ姿で、
一つのグループは胸に白骨の模様があり、鷲を象ったバックルのベルト
をしている。もう一つのグループは、胸とベルトに蠍を象ったシンボル
マークのようなものがある。その中心には指揮官らしき二人の影が…。

骨戦闘員「イー! どうやらあれに間違いなさそうです」
デストロン戦闘員「キキー! おそらく外装は岩山で偽装されているはずです!」

???「グフフ…そうかご苦労。ライダー共め、こんな所に潜んでいようとは」
???「まあ待て。念のために確認だけは怠るな…おい」
 
タイホウバッファロー「バッフォー!…ハハ!」

一団の後方から、両肩に二門の大筒を備えた猛牛怪人が躍り出る。
怪人は目前の岩山を両目に内蔵されたスコープで透視を開始した。

タイホウバッファロー「なるほど。内部は人工の構造物がギッシリだ~~っ!」
 
???「そうか。ふん…ダブルラ~イダにはアジトごと消えてもらうとしよう。
 ――やれいっ!! タイホウバッファローよ!!」
タイホウバッファロー「バッフォー! ハイパーカノンのエネルギー充填だ…
 目標は眼前の岩山…1号2号、消えて無くなれい!!」

***アリゾナ本部基地室内***
 
ドドドドドドドド…

その時、アリゾナ本部をまるで巨大な地響きのような揺れが襲った。
外部から何者かが砲撃しているらしく、次々に天井や壁が崩れ出す。
 
一文字「うおぉっ…!! な、なんだ…うわっ…!!」
本郷「むぅ、これはヤツらの仕業か…!?」
一文字「本郷!! 急げ脱出だーーーー!!」
本郷「無念だが仕方がない…いくぞ!」

ドガァァァーーーン!!!


............... ..ヽ . ;: . / .⌒ _,,..__ ヽ  ) ;. :ノ......... .........
:::::::::::::::::::::::::::ゞ (.   (::.! l,;::) .ノ ノ ./::::::::::::::.......:::::
        ._ゝ,,. .-ー;''""~ ';;; - .._´,
       ._-" ,.-:''ー''l"~:|'''ーヾ  ヾ
      ::( ( .     |:  !     )  )
        ヾ、 ⌒~'"|   |'⌒~'"´ ノ
          ""'''ー-┤. :|--~''""
              :|   |
              j   i
            ノ ,. , 、:, i,-、 ,..、
      _,,  ,. -/:ヽ::::::::ノ::::Λ::::ヽ::::-- 、ト、
,,/^ヽ,-''"::::\::::::/:::::|i/;;;;;;/::::;;;;ノ⌒ヽノ:::::::::ヽ,_Λ

木っ端微塵に吹き飛び、大爆発を起こす11人ライダーのアジト。
その様子を対岸の台地から眺め、嘲笑している先ほどの一団。

骨戦闘員「イー! イー!」
デストロン戦闘員「キキー!」

???「フハハハハ、これでは彼奴らも一巻の終わりだな!!」
???「…ラ~イダどもの命運も尽きたか…いや…」

タイホウバッファロー「バッフォー!! さしものダブルライダーも、俺様の
 強化されたキャノン砲の前には一溜りも無かったようだわい!
 基地ごと吹っ飛んだか…グァハハハハ」
クモ男「ウワラァァァァ…待て油断するな…ライダーは悪運が強い、
 そう思わせておいて、いきなりピンピンしたまま現れるかもしれん…ウェェェ…」
タイホウバッファロー「バッフォー! いかに多くの修羅場を潜り抜けたヤツら
 とはいえ、あの様子では助かるはずがあるまい。バァァーフォーッ!!」

ダブルライダー「――はっはっはっはっは! 果たしてそうかな!?」

10

???「ぬうっ!?」
???「……………」

フオオオオオオン!!!

あっけに取られて上空を見上げる一団。赤と白のカラーリングに彩られた
2台のバイクが、フロントから翼を、リアのノズルからパラシュートを射出して
滑空していた。ダブルライダーはそれぞれが駆る「新サイクロン号」を地表に
着地させると翼とパラシュートを格納し、台地の上にいる一団を見据えて
背中合わせに『ライダーファイト』の構えで戦闘態勢とり、挑発する。

タイホウバッファロー「バッフォー! 貴様ら、まだくたばっておらんのか!!」
クモ男「ウワラァァァ…むむむ…やっぱり…!」
 
ライダー1号「Gショッカーを滅ぼすまでは、仮面ライダーは死なん!!」
ライダー2号「ショッカーとデストロンの怪人ども! 何度蘇っても俺たちが倒すまでだ!」

???「我らGショッカーを滅ぼす? ぬふふ…いかにキサマらでもそれは無理な話だ」
???「仮面ラ~イダ共よ、お前達はGショッカーを見縊り過ぎているようだな」

怪人の後ろから聞こえて来たその声は、二人には聞き覚えのある独特の声であった。
忘れようとしても忘れられぬ、幾度となく戦火を交えた闇の世界の好敵手…

ライダー1号「む、貴様達は…!」
ライダー2号「ちっ…やっぱりお前らも復活しやがったのか!」

毒々しい蛇の装飾を纏い、黄金の鷲を象ったベルトに鉤爪状の手を持つ、
かつてのショッカー大幹部・地獄大使。その傍らでぞっとする冷淡な眼差しと蠍を
象った重厚な兜を被り、古代の剣闘士を想起させる盾と斧で武装した髭の男…。
同じくかつてのデストロン大幹部・ドクトルGが、在りし日の姿で軍団を率いている。
ショッカー骨戦闘員、デストロン戦闘員達が二大幹部の足下に跪く。

地獄大使「ぬふふふ…また会えるとはな、ライダー1号、2号よ。
 左様。キサマらを殺すまでワシは何度でも蘇るのだフハハハハ!!」
ドクトルG「仮面ラ~イダどもよ、冥途の土産に教えてやろう。
 我らは『新たなる首領』の御旗に集うため、闇の中から再び蘇った…
 わしはGショッカー十二邪将が一人、“鉄腕邪将”ドクトルGだ!!」
ライダー1号「なに……Gショッカー、十二邪将…だと?」
ライダー2号「へっ、何だか知らんがご大層な肩書きが増えたもんだな」
地獄大使「クックック……そしてこのワシは―――」

ダブルライダー「名乗る必要はないぜ、 暗 闇 大 使 !」

地獄大使「なっ…く、く、暗闇大使だとおおおお~~っ!
 あんなヤツと一緒にするなあーーーーッッ!!!
 1号2号、キサマらぁ~~このワシの顔を見忘れたか!?
 ワシはGショッカーの大幹部!! “猛毒邪将”地獄大使だあッ!!」

左右のこめかみを破裂しそうな勢いでピクピクと紅潮させ、
烈火の如く怒る暗闇…もとい地獄大使。
どうやら従兄弟と間違えられるのは相当に嫌らしい。

ライダー2号「ぷぷ…ぶははは! ほいほい、わあーってるって」
ライダー1号「…思った通りお前もあいつと同じ反応か」
ライダー2号「こりゃ失礼、ゴキブリ大使さんよ!」

地獄大使「…ぬうううう~~ほ、ほざいたな若僧オオ~ッ…!!」
骨戦闘員「イー! イー! …ぷ。ごきぶり大使だって…クスクス」
地獄大使「何か言ったかキサマら!?」
骨戦闘員「イィーっ!! 何でもありません!」

ライダー1号「フッ。忘れたいのはやまやまだが、そうはさせてくれん顔だ。
 地獄大使!  ドクトルG!  何度蘇っても同じことだ。
 悪の野望ほど儚いものはない…仮面ライダーが必ず貴様らを討ち砕く!!」

11人ライダーのリーダーらしく、ズビシッと二大邪将を指差す1号。
しかし、復活した邪将達は不適に笑いながら1号の挑戦をあしらう。

地獄大使「…クックックック…笑止!! 何も分かっておらんようだな。
 復活した我々は、もはや単なる一組織の構成員などではない。
 ありとあらゆる世界の王となり君臨する…至高なる御方の忠実な下僕なのだ。
 仮面ライダー共…キサマらすら知らぬ強大なる軍勢もたくさん控えておる。
 もっとも、ワシらとて地上に舞い戻るまでは知らなかったのだがな…」
ライダー1号「…お前達は組織によって再生されたのではない、という口ぶりだな」
ドクトルG「…お喋りが過ぎるぞ地獄大使。ダブルラ~イダ共よ、キサマらは
 今世界に何が起こっているかも知らずに死ねるのだ。有り難く思うんだな…
 Gショッカーの誇る再生強化怪人の力を思い知るがいい」
地獄大使「グフフフ、仮面ライダー! これを見るのだ」

11

地獄大使が鞭を激しく地面に叩き付ける。するとなんと空中にいくつもの
裂け目…渦を巻く「空洞」が出現し、それが複雑な紋様となって光り始めた。

ライダー2号「―! 本郷、あれは……」
ライダー1号「あれは…まさかバダンの時空魔法陣!?」
地獄大使「そうだ…キサマらに倒された亡者どもが、怨嗟の声をあげて
 闇の彼方より地上へ出たがっているわ。…出でよぉっ! 怪人共ぉ!!」

怪人軍団「ギリギリギリ…ヒョウオオオウ…ギャギャギャ…アブブブブ!!!」

時空魔法陣と化した渦の中から、次々と出現するショッカー怪人達。
あっという間に彼らの立つ台地の上には、夥しい数の怪人軍団が出来上がった。

ライダー1号「これは…! ただの再生怪人ではない…気をつけろ、一文字!」
ライダー2号「ああ…こいつら、手強いぜ…正しく地獄の軍団って言葉が
 相応しいような登場してくれるじゃんかよ…ゴキブリ大使!!」
地獄大使「ぬっ…ぐう~! へらず口を叩けるのもそこまでだ!!
 者共かかれーっ! 仮面ライダーを、殺せえええええええ―ッ!!!」

アリゾナの荒野に響き渡る猛毒邪将の怒号。その号令に従い、
ショッカー怪人軍団の一個小隊が眼下にいる二匹の獲物目掛けて
一斉に襲い掛かる。同時に骨戦闘員たちもオートバイを駆り、土煙を
上げて台地を降り始めていく。

骨戦闘員オートバイ部隊「イー! イー!」

ライダー1号「一文字、いくぞ!!」
ライダー2号「おうさ本郷!!」

ウオオオン!!

荒野を渡る風、ひょうひょうと。二人ゆく二人ゆく、仮面ライダー。
歴戦の戦士たちは愛車のアクセルを捻り、そのエンジンから伝わる振動が
長い戦いを共に支え合って来た友の鼓動のように感じられた。
何処までも澄み切った青空に、マシンの爆音が轟き赤いマフラーがなびく。
―――されど我が友、我が故郷。

ダブルライダー「どんなことがあろうと守り抜く…俺は、俺達は
 …仮面ライダー! 来い、Gショッカー!!」
ドクトルG「地獄大使め調子に乗りおって…まあいいお手並み拝見といくか。
 タイホウバッファローよ、いつでもハイパーカノンを撃てる準備をしておけい」
タイホウバッファロー「バッフォー! しかし…それでは味方も…」
ドクトルG「かまわん!! 我々の任務はダブルラ~イダを確実に消すことだ…
 何としても奴らにはここで死んでもらわねばならんのだ! よいな…?」
タイホウバッファロー「…ハ!」


○仮面ライダー1号→復活したショッカーを迎え撃つ。
○仮面ライダー2号→1号と共にショッカーに挑む。
●クモ男→ショッカー軍団と共にダブルライダー撃滅へ。
●タイホウバッファロー→待機中。
●地獄大使→時空魔法陣から怪人軍団を招聘し、ダブルライダーを狙う。
●ドクトルG→傍観中

12

【今回の新規登場】
○本郷猛=仮面ライダー1号(仮面ライダー)
悪の秘密結社ショッカーによって改造された元青年科学者。
「技の1号」と呼ばれ、多くの必殺技を開発して敵を倒した。
幾多の戦いを経て、11人ライダーのリーダー格としてアリゾナ
に秘密アジトを持ち常に世界中の悪と戦っていた。
FBI捜査官滝和也、立花藤兵衛など協力者も多く信頼は厚い。 

○一文字隼人=仮面ライダー2号(仮面ライダー)
ライダー1号を倒す目的で、ショッカーに改造されたフリーカメラマン。
脳改造寸前で1号に助け出され、以後永きに渡って彼の一番の友となる。
格闘技の猛者でもあり、「力の2号」と呼ばれるパワーファイター。
1号と共に11人ライダーのサブリーダーとして行動を共にする事が多い。

●地獄大使=猛毒邪将地獄大使(仮面ライダー)
かつて1号ライダーに倒されたショッカー大幹部で、復活後は
Gショッカー十二邪将の一人として名を連ねる。
その正体は怪人ガラガランダである。
「必ず蘇ってキサマを倒してやる!」の断末魔が念願かない、
仮面ライダー抹殺に異常な執念を持っている。ドクトルGとは
デストロン時代に復活させられた時から仲は良くない間柄。

●ドクトルG=鉄腕邪将ドクトルG(仮面ライダーV3)
やはり過去、ライダーV3に倒されたデストロン大幹部で、復活後は
Gショッカー十二邪将の一人として名を連ねる。
生前と同じように、強力な機械合成怪人の製作に余念がない。
自身もその正体は、怪人カニレーザーである。
部下であろうと見切りを付けた者は容赦なく処刑してしまう。

●クモ男(仮面ライダー)
最初に1号ライダーと戦ったショッカー第1号怪人。「怪奇蜘蛛男」とも。
この復活怪人は、単なる再生怪人ではなく、本郷の恩師緑川博士を
殺害した張本人であり、復讐に燃えている。

●タイホウバッファロー(仮面ライダーV3対デストロン怪人)
劇場版作品にて、高知で1号・2号・V3の3人ライダーと戦った強力怪人。
パワーアップした砲撃能力は一撃で岩山を木っ端微塵にする威力を持つ。
各部の装甲も強化され衝撃に対する耐久力も高い。
短気で熱くなり易い性格だが、親分肌で仲間の面倒見がいい一面も。

●ショッカー骨戦闘員(仮面ライダー)
地獄大使直属の戦闘員で、覆面に骨模様の戦闘服が特徴。
従来より強化されていると言われながらもちろん弱い。
ナイフや棍棒、剣などを駆使する他、白覆面の科学者タイプも存在。
オートバイを操り集団で襲い掛かる特別チームなどもいる。

●デストロン戦闘員(仮面ライダーV3)
蠍のシンボルマークを覆面や戦闘服にあしらった戦闘員。やっぱり弱い。
集団でアクロバティックな連携攻撃を仕掛けるチームもいる。
黄色い軍服に軍帽を身につけた、首領護衛用の親衛隊員も存在。


『孤高の魂』-2

作者・シャドームーン

12-1

***アリゾナの荒野***

ダブルライダー「サイクロンカッター!!」
怪人軍団「グェーッ!」

砂塵を巻き上げて、エンジンの唸り声が荒野を駆け巡る。
「立花レーシング」エンブレムが輝くフロントカウル。
そこから射出する赤い翼が次々と迫り来る怪人共を斬り捨てて行った。
ダブルライダーは巧みに新サイクロン号を操り、ショッカー怪人の包囲網
を撹乱させていた。洗練されたコンビネーションの前に数は問題ではない。

地獄大使「何をしておる、奴らをマシンから引き摺り降ろせ!」
ドクトルG「ラ~イダ共の連携を絶てい…」
タイホウバッファロー「ハッ。バッフォー!」

二門の大砲が火を噴き、ダブルライダーと怪人軍団の乱戦場に爆炎が
立ち上った。タイホウバッファローは連続で撃ち続け、二人の足並みを
崩しに攻め立てる。炸裂する爆炎を掻い潜り、何とか連携を保とうとする
ライダー1号に山椒魚のような怪人が口から火炎放射を浴びせた。

ザンジオー「死ねえ、仮面ライダー!」
ライダー1号「サイクロンアタック!」

ザンジオーの火炎を裂き、サイクロンの体当たり攻撃が決まった。
だが、吹っ飛ぶ山椒魚怪人の背後から黒い影が飛び出し蜘蛛の糸
で1号ライダーの首を絡め取ってマシンから引き落とした。

クモ男「ホワホワホワ…かかったな1号め」
ライダー1号「グゥ…っ!」
ライダー2号「本郷! うおっ」
サイギャング「ハハハ、バカめぇ~っ」

2号の車体側面から、怪人サイギャングが駆るオートバイが突進した。
グラついたサイクロン号目掛け、昆虫型の怪人が破壊光線を放つ。
2号ライダーは咄嗟にシートからジャンプして飛び降り、これを回避した。

カミキリキッド「キーリー! 2号、キサマの命は俺がもらった!」
ライダー2号「ちょいとお前の光線を借りるぜ」
カミキリキッド「コ…コラ何をする、やめんか!」
サイギャング「うおお、何処を狙ってやがる…ぐわっ!」

カミキリキッドの破壊光線を連続ジャンプで避ける2号。
そして背後に回りこみ、羽交い絞めにした怪人の角を掴むと、
破壊光線をサイギャング率いるオートバイ部隊に向かって乱射
させこれを壊滅させた。ジタバタ暴れるカミキリキッド。

カミキリキッド「え~い、離さんかー!」
ライダー2号「そう言わずに…もう一回頼むぜ」

さらに敵の光線を利用して、1号の首を捕らえているクモ男の
糸を焼き切らせる2号ライダー。

クモ男「ブゥワァァァー!」
ライダー1号「むぅ、トォー!」
クモ男「ホワッ!」

拘束から解かれた1号に追撃の毒針を連射するクモ男と、
これを素早く身を捩って躱すライダー。
1号ライダーは前転しながら接近、クモ男の顔面に手刀を
連続で浴びせると、ジャンプしてライダーキックを放った。

ライダー1号「ライダーキーック!」
クモ男「ウワアァァラァァーッ…ホワッ、ホワッ…ァァ」

技の1号が繰り出した熟練の一撃を顔面に食らい、
クモ男は岸壁に激突して白い泡となり果てた。

カミキリキッド「とんだ大恥をかかせやがって~!
 許さん、その首チョン切ってくれる!!」
ライダー2号「ご苦労さん。再生怪人も役に立つじゃんか」
カミキリキッド「ギィィィリィィ~言ったなあ…殺す!!!!」

怒りに燃えるカミキリキッドが、左手のハサミを振り回す。
2号はこれを避けながら懐に入り、投げ技を決めた。

ライダー2号「ライダー閃光返し!」
カミキリキッド「ガハァッ!」

先程吹っ飛ばされたザンジオーが、液化しながら迫っていた。
逸早く接近に気づいた1号はジャンプして空中で反転、
敵が怪人化した瞬間を狙い、急降下しながらパンチを
2回連続で叩き込んだ。

ライダー1号「ライダー反転ダブルパーンチ!」
ザンジオー「グワァ~ッ」

12-2

地獄大使「バカモノォ!!」
ドクトルG「…タイホウバッファロー」
タイホウバッファロー「しかしまだ味方が…」
ドクトルG「奴らをまとめて葬るチャンスは今しかない。
 ラ~イダが同時に技を決めた瞬間をよく狙え…」

起き上がった二怪人が、二人並んでファイティングポーズを
とるダブルライダーに左右から襲い掛かる。

ライダー1号「左! いくぞ一文字」
ライダー2号「右! おうさ本郷」
ダブルライダー「ライダーダブル錐揉みシュート!!」

1号がザンジオーを、2号がカミキリキッドをとらえ、
二人は阿吽の呼吸でタイミングを合わせるように怪人を
抱えて上昇、錐揉み回転を加えて投げ飛ばした。
強烈な空気の渦が二怪人を空高く舞い上げ両者は激突。

ドガァーーーーン

地獄大使「くぅ、役立たず共めがッ!」
ドクトルG「今だ撃てーい!!」
タイホウバッファロー「ハイパーカノン発射ー!!」

???「フラッシュ・イン・ゴー!」

ズドォン!!

タイホウバッファロー「ぐおっ!?」
ドクトルG「…!? な、何事だ!」

何者かに背後から撃たれ、ハイパーカノンは狙いを外れて
ダブルライダーの頭上を飛び越えて無人の荒野に命中した。
凄まじい光と爆発が起こり、そこにクレーターが出来上がった。

タイホウバッファロー「だ…誰だ~邪魔しやがったのは!」
ドクトルG「…誰だキサマは?」
ライダー1号「(彼は一体…?)」


{     {               }  \
ヽ    ヽ、            /   〉
  \    n ,┐     /   /
    ` ‐_、 | |/./_` ー-‐ '    / 
    ∧ fooo。〉      /   
    〈.  |.(二)ノ`_ー- ‐ァ '    
  /,.ヽ./ー--〉ヽ` ̄/_      
-‐' へ /   /ヽ  ̄iミ〉ー-_、
-‐' ノ/    /  \/ト、三二>

男「邪魔して悪いが、彼らを守るのが俺の任務でね…」
地獄大使「ぬ~~Gショッカーに盾突くとはいい度胸だ!
 何者だ、顔を見せろキサマァ!!」
男「そのGショッカーを叩き潰すために、やって来たのさっ!」
ドクトルG「う…キ、キサマは」

帽子を投げ捨て、黒い衣服を取り去る謎の男。
そこに現れたのは、この場にいる全員が見知った顔であった。

ダブルライダー「風見!!」
ドクトルG「風見志郎…バカな、ラ~イダV3!!」
地獄大使「V3だとぉ! キサマ、いつの間にアリゾナへ!」

アラン「おっとチッチッチ…人違いされちゃあ困るな。
 私は銀河連邦警察の指令を受けてビーズ星から
 やって来た宇宙刑事…アランだ!」

ドクトルG「宇宙刑事か…フン、嫌な男とそっくりな面で
 わざわざ死にに来おったか」
ライダー1号「…どうやら別人らしいな」
ライダー2号「それに本郷。あいつ妙な格好だぜ~。
 あれが宇宙刑事さんってとこの制服かね…」
ライダー1号「とにかく彼は味方のようだ、俺達もいくぞ!」
ライダー2号「おうさ本郷!」

ダブルライダーは互いに頷き合うと、ジャンプして地獄大使らの
立っている台地に着地した。アランと無言でアイコンタクトを取り、
特殊な剣を構える彼と並んで立つ1号2号。

地獄大使「宇宙刑事が一人増えたところで何ができる!
 フハハハハ、我々の力はまだまだこんなものではないぞ?」

時空魔法陣を指差し、高らかに笑う地獄大使。
“向こう側”から、怪人の軍勢らしき雄叫びが風に運ばれて来た。

ライダー2号「奴ら物量作戦で来るつもりか…!」
ライダー1号「むう、確かにこのまま戦い続けてもキリがないか」
アラン「フ…Gショッカーさんよ。私は一人で来たとは言ってないぜ」
地獄大使「な、なんだと?」
ドクトルG「…おお、何だあれは…!?」

アリゾナの雲を二つに裂いて、巨大物体が上空に姿を現す。
銀河を駆ける太陽の使者。宇宙刑事が乗り込む空の要塞――
『超次元戦闘母艦バビロス』である。

12-3

ライダー2号「すげぇ…写真に撮りたいくらいだぜ」
ライダー1号「味方…なのか?」
アラン「ああ、私達の仲間だ。地球担当の宇宙刑事、
 シャイダーとアニーが操縦しているバビロス号さ」

地獄大使「おのれぇぇ…っ! まさか、地球担当の
 宇宙刑事が応援にやって来るとは」
ドクトルG「我々はラ~イダ二人を始末すればいいのだ。
 余計な奴らの足止めは…貴殿らに任せるぞ」

ドクトルGが顔を振ると、何時の間に来ていたのか、
奇怪なマスクを付けた見知らぬ男が傍に立っていた……

ハンターキラー「フフフ…我々の出番が来たようですな」
地獄大使「(ええい、こんな奴の手を借りる事になるとは…!)」
ライダー1号「あの男は君達の敵か…?」
アラン「そう…名はハンターキラー。元宇宙刑事のお尋ね者さ」
ライダー2号「なるほどね…裏切り者ってわけかい」
ハンターキラー「ダブルライダー抹殺計画はあなた方二邪将
 の重大任務…宇宙刑事に邪魔はさせませんよ」
アラン「貴様、持ち出したバリオゼクターを何処へやった!!」
ハンターキラー「クククク…どうした、と思うね?」

ハンターキラーが右手を上げる。すると閃光が起こり、
蒸着メッキが全身に施されるような過程を僅か0.05秒で完了。
封印された黒いコンバットスーツ、『バリオゼクター』を蒸着完了
したハンターキラーが目の前に立っていた。

ライダー2号「何…変身した!?」
ライダー1号「凄まじいエネルギーを感じる…!」
アラン「ハンターキラー、腐っても宇宙刑事ならそれがどれだけ
 危険な代物か知らないはずがあるまいっ! …正気か!?」
ハンターキラー「危険かどうかは装着者の用い方次第よ。
 俺は手に入れたのだ…最強の力をなあッ!!!」

バリオゼクターの仮面に青い目、レーザースコープが点灯する。
それが合図のように、時空魔法陣から大量の飛行物体が
現れバビロス号に攻撃を開始した。
宇宙犯罪組織――「マクー」「マドー」「フーマ」
三つの帝国に所属する戦闘円盤や攻撃空母の混成編隊である。

***バビロス号操縦ルーム***

シャイダー「アニー、彼らの援護を頼む!」
アニー「でもシャイダー、今までより敵の数が多いわ…
 一人で大丈夫?」
シャイダー「奴らはあの時空の穴から戦力を送り込んでる。
 あれを叩けば増援を阻止できるはずだ。やってみるさ!
 それよりハンターキラーがバリオゼクターを解放していた
 となると、アランやライダーが危ないかもしれない…」
アニー「…分かったわ。 気をつけて」
シャイダー「君もな」
アニー「アニーにお任せっ!」

***バビロス号シャイアン格納庫***

アニー「スカイシャイアン、テイク・オフ!」

***アリゾナの台地***

上空では敵の飛行兵器と、バビロス号が激しく戦火を交えている。
一方地上では、ダブルライダーがタイホウバッファローと、アランが
ハンターキラーの率いるマクー、マドー、フーマの下級戦闘員で
構成された集団と戦っていた。

地獄大使「何をしとるか、キサマらも行けい!」
ドクトルG「タイホウバッファローよ! デストロンの意地に
 かけても必ずラ~イダ1号2号はお前が仕留めるのだ!」
ハンターキラー「宇宙刑事アランめ…キサマの首を、
 ギャバンへの再会の手土産として送ってやる!」

骨戦闘員「イー! イー!」
デストロン戦闘員「キキー!」
ミラクラー「シュワ…シュワシュワ」

ライダー2号「ま~た下っ端共かよ。懲りないねえ」
ライダー1号「だが…こう邪魔をされては、怪人に的を絞りづらいぞ一文字」
アラン「トイヤ! チ、後から後からウジャウジャと…!」

アニー「シャイアン・ビーム!」

スカイシャアンが低空飛行しながら、ビーム攻撃で台地の上に
固まっている戦闘員の一団を一掃する。すぐにバビロスを攻撃中の
編隊の一部が、スカイシャイアンを追って迫っていく。
アニーは操縦をオートモードに切換え、ブラスターを手に地表へ飛び降りた。

アラン「アニー!」
ライダー1号「ありがとう、助かるよ」
ライダー2号「サンキュー! やるねえ、あの美人さん」
アニー「さあ、残りを片付けましょう!」

アランと協力しながらアニーは射撃と格闘で残存戦力を倒していく。
あらかた片付くと、彼女はブラスターの銃口を二大邪将に向けた。

12-4

地獄大使「この小娘、ワシらと戦う気か面白い!」
ドクトルG「落ち着け地獄大使。…我らの仕事ではない」
ハンターキラー「クッ…生意気な女宇宙刑事め!」
アニー「ハンターキラー…貴方は何度過ちを犯せば気が済むの?」
アラン「お前も宇宙刑事なら、Gショッカーを倒すためにその力を
 使うべきだろう! またマクーでの屈辱を繰り返す気か!?」
ハンターキラー「うぐぐぐ…黙れ黙れ黙れぇ~~ッ!!
 キサマら能無しの宇宙刑事と、銀河連邦警察のクズ共に、
 俺が最強である事をバリオゼクターで証明してやる!!」

ダブルライダーとタイホウバッファローの激闘が続いていた。
1号と2号は息の合ったコンビネーションで怪人を翻弄し、
何度も匠の技が決まるがドクトルG自慢の強化怪人は
さすがに手強く簡単には倒れなかった。

タイホウバッファロー「バッフォー! キサマらの技など、何十発
 食らおうが効きはせん。Gショッカーの科学力を侮るなよブフー!」
ライダー2号「へぇ。確かに頑丈になったじゃんよ、お前の装甲」
ライダー1号「だが…内部まではどうかな?」
ダブルライダー「ライダー車輪!!」

ダブルライダーは怪人の周囲を高速で周り始めた。
キャノン砲の狙いがつけられず、うろたえるバッファロー。
二人は次第にわざとライダー車輪の速度を緩めていった。
姿が見えるくらいの速度になった時、ライダー2号が闘牛士
のように赤いグローブを突き出し挑発的な誘いをかけた。

タイホウバッファロー「キ…キサマァ~死ねえー!!」
ドクトルG「バカモノ! 距離を取って戦わんか!!」

すでに頭に血が昇っていたタイホウバッファローは角を突き出し
2号に突進した。ライダーは瞬時に力を倍化させる奥の手、
『ライダーパワー』を発動し、猛牛怪人の角を掴んで受け止め、
そのままジャイアントスィングでブン回した。

2号「ライダーハンマー!」
タイホウバッファロー「バ…バァッフォーォォー!」

思いっきりブン回して岩壁に投げ付ける力の2号。
木っ端微塵に砕け飛ぶ岩の破片に埋まりながら、
タイホウバッファローは何とか体を起した。
しかしすでにその時、先に天高くジャンプしていた1号は、
加速を乗せて怪人の背中目掛けて技を放っていた。
さらに2号も、一呼吸遅らせてジャンプして技に入る。

タイホウバッファロー「撃ち落してや…ゲハァアッ!!」
ライダー1号「電光ライダーキーック!」
ライダー2号「ライダー卍キーック!」

頭上から突っ込んで来る2号にタイホウバッファローが照準を
合わせた瞬間、1号の強化版キックが背中に炸裂した。
そして次の瞬間、胸部にも2号の回転キックが炸裂する。

ライダー2号「いくら装甲が厚くてもな、強烈な衝撃を
 連続で与えれば…」
ライダー1号「“なか”は悲鳴を上げるというわけさ。
 心の強化が皆無に等しいお前達では決して勝てん!」

前後からの強烈な衝撃が莫大な負荷となって怪人の内部に
ある精密機器に限界を上回るダメージとなって伝わり、
タイホウバッファローは全身から電流と火花を上げて倒れた。

ドクトルG「…………」

12-5

***バビロス号操縦ルーム***

シャイダー「凄い…! あれが歴戦の勇士ダブルライダー…
 コム長官が仰っていた通りの人達だ!」

地上の様子を映し出しているモニターを見たシャイダーは、
1号2号ライダーの健闘に心の中で賛辞を述べていた。
動きの素早い小型の戦闘円盤はスカイシャイアンがほぼ全滅させ、
残っているのは中型の飛行要塞だけである。あと一息といったところだ。

シャイダー「ようし、一気に叩くか。バビロス・バトルフォーメーション!」

***アリゾナの台地***

地獄大使「ぬ、ぬおーっ!?」
ドクトルG「(これがバード星の科学力か…素晴らしい)」
ライダー1号「これは…驚いたな…」
ライダー2号「ああ、ぶったまげたぜ…」

バビロス号が変形した、人型の巨大ロボットが大地に降り立つ。
向かって来る大型ミサイルをその腕が掴んで逆に投げ返し、
両手から発射する波打つレーザー光線が、飛行要塞から
出て来る戦闘機を撃ち落して行く。そして遂に、残った一番大きい
飛行要塞に、胸の放熱板から超光熱エネルギー波が放たれた。

シャイダー「バビロスファイヤー!!」

バガァァァァン

三大宇宙犯罪組織の混成飛行編隊はこれで全滅した。
シャイダーは仕上げとして、時空魔法陣を消し飛ばすため、
青い光の玉となってバビロス号から地上へ降りて来た。

地獄大使「奴があれを操縦していた宇宙刑事か。何をするつもりだ?」
ドクトルG「(いいぞ…もっと見せてみろ)」

シャイダー「シューティング・フォーメーション!」

巨大ロボット形態から、ガンタイプへとさらに変形するバビロス号。
シャイダーが銃を撃つ動作に入ると、連動して巨大なホログラフ
のようなシャイダーが空に現れ、バビロス号のトリガーを握る。

シャイダー「ビッグ・マグナム!!」

バビロス号から発射された超次元波動砲が、時空魔法陣に命中する。
天を貫くような超々高エネルギーの爆発と共に、魔法陣は消滅した。

ライダー2号「おお、やったぜ!」
ライダー1号「ウム…!」
地獄大使「ヌウウウウ…おのれ宇宙刑事めぇぇッ!!」
ドクトルG「よせ地獄大使。引き揚げ時だ…」
地獄大使「な、なんだとぉっ! …ん?」

ドクトルGがクイッと指差した方向では、バリオゼクターを着込んだ
ハンターキラーがアニーとアランを圧倒していた。しかし……

ハンターキラー「ハハハハ、流石はバリオゼクター!」
アラン「くっ…だ、大丈夫かアニー」
アニー「ええ…何とか」
シャイダー「アニー、アラン!」

二人の窮地に気づいたシャイダーが、すかさず加勢に入る。
ダブルライダーも駆け寄り二人を助け起した。
レーザーブレードとビデオビームガンを構え、シャイダーはハンターキラー
を見据えてアニーと並び立った。

シャイダー「よせハンターキラー。そのバリオゼクターはお前が
 考えているよりずっと危険なんだ! 自滅するぞ…」
ハンターキラー「自滅? フン、何を言うかと思えば…キサマらと
 違って俺はこの最強のコンバットスーツを使いこなせるのだ。
 それが証拠に今俺は最高に気分がいい…ああ、最高だあ!」
シャイダー「やめろ! それ以上パワーを解放したら…!!」
ハンターキラー「ひょっこの地球担当が…キサマにもこの力、
 味あわせてやる。キラァァァァァ・ビィィィィム!!!!」

ハンターキラーが武器を使用しようとした途端、コンバットスーツが
突然暴走を始めた。凄まじい電流が、体中から迸る。

12-6

ハンターキラー「うがぁぁぁ!? ど…どうしたというのだぁ~!」
シャイダー「…今だ! アニー!」
アニー「オーケー!」
シャイダー「ビデオビームガン!!」

突然苦しみ出したハンターキラーに、シャイダーとアニーはビームガンと
ブラスターのダブルスナイパーを浴びせた。さらなる高エネルギーの負荷
に耐え切れなくなったバリオゼクターは装着を自動解除してしまう。
ハンターキラーは意識を失って、その場に倒れた。

ライダー2号「な、何だ? どうしたってんだヤツは」
アラン「バリオゼクターは試作超電導コンバットスーツ。
 強力だが装着者にかかる負荷は恐ろしい……
 危険が大き過ぎるため、使用禁止となって銀河連邦
 警察が厳重に封印していたんだ」
アニー「一歩間違えれば命すら奪ってしまうんです…」
シャイダー「それを元宇宙刑事だったこのハンターキラーが
 強奪して逃げた…でもいくら奴でも、そう易々と機密保管
 ブロックには侵入不可能なはずなのに…?」
アラン「何者かが、手を貸した可能性が高いと上は見ている」
ライダー1号「何者かが……」

数多くの悪と戦って来た1号ライダーは、言い知れぬ不安を抱いた。
彼と共に戦い続けて来た2号ライダーも同様である。

タイホウバッファロー「ぐうう…バッフォー!!」
ライダー1号「――!!」
ライダー2号「こいつまだ? ち、しぶとい野郎だぜ!」

起き上がったタイホウバッファローに身構えるダブルライダー。
しかしなんと、ドクトルGが放った斧が怪人の首を刎ねてしまった。

ドクトルG「…失敗作に用はない」
ライダー1号「ドクトルG、貴様ッ!」
アニー「まだ生きてる仲間を殺すなんて…何て酷い奴なの…!」
シャイダー「奴らハンターキラーを? 待てGショッカー!」

残った数人のミラクラーが、気絶しているハンターキラーを抱えて
消えてしまう。地獄大使とドクトルGが憎々しげに一同を睨んだ。

ドクトルG「ラ~イダ並びに宇宙刑事共よ、今回は我々の敗北を認めよう。
 だがこれで勝ったと思うな。Gショッカーにはお前達が戦った数々の宇宙
 犯罪組織も合流しておるのだ。いづれ彼らと協力し、キサマ達の超兵器
 を超える怪人やマシーンを造り出して御覧に入れよう!!」
地獄大使「ぐぬぬぬ…キサマらの邪魔さえなければ~っ!!」
ドクトルG「ダブルラ~イダ抹殺計画は一先ず失敗した…長居は無用だ
 地獄大使。戦には退き時というものがある」
地獄大使「キサマに言われるまでもないわっ!! …忌々しい1号2号め。
 キサマらだけは…キサマらだけは必ずこの地獄大使が地獄へ送ってやるッ!」

二大邪将はお決まりの捨てゼリフを吐き、その場から姿を消した。
2号があきれたような仕草で皆を見回した。

ライダー2号「お~お~何とワンパターンなセリフだろうねぇ」
ライダー1号「ヘビだけに…執念深さは天下一品だな」
シャイダー「はは…俺達の相手も似たような感じでしたよ」
アニー「やっぱりGショッカーには、復活したフーマ達がいるみたいね…」
アラン「フッ…悪党って奴は、大概つるみたがるものさ。
 だがな…今度ばかりは、こっちもバラバラに戦っていてはダメだ。
 我々もできるだけ多くの仲間を集めて対抗しなければならん」
ライダー1号「“仲間”か……」
ライダー2号「(本郷…)」
シャイダー「そう、仲間です。コム長官から、お二人の事は伺っていました。
 地球の平和を守って来た戦士の中でも、最も勇敢で尊敬できる方だと」
アニー「私も訓練学校でお二人のご活躍をたくさん習いました。
 お会いできてとても光栄ですっ!」
ライダー2号「や、照れるねえこいつは。本郷、俺達の長い戦いも
 まんざら無駄じゃなかったって事だな。他のみんなが聞いたら喜ぶぜ」
ライダー1号「ああ…無駄じゃない。無駄にしてはいけないんだ。
 俺達のこの戦いが、未来へと続く道標になってくれれば」
アラン「(道標か…さすが本郷ライダー、含蓄ある言葉だな)」

彼らは変身を解除し、改めて「人間として」自己紹介を行った。
宇宙刑事シャイダー・沢村大は本郷猛と一文字隼人をコム長官に
会わせるため、二人をバビロス号のブリーフィングルームに案内した。

12-7

***バビロス号ブリーフィングルーム***

本郷は着席してアニーが入れてくれたコーヒーをアランと談笑しながら
飲んでいる。好奇心の塊、カメラマン一文字は、アニーにあれこれ
質問しながら公にしないという約束で、シャッターを押しまくっていた。

隼人「いや~中もすげぇなぁ。ライダー隊の子供達にも
 見せてやりたいよ。お、これは何だいアニーさん?」
アニー「え、えーとそれはですね…(クスクス、子供みたいな人)」
猛「本当に美味いんだ。今度おやっさんに紹介するよ」
アラン「ほ~。いいねえ、その店。是非、今度連れて行って下さいよ」
猛「昔は喫茶アミーゴと言ったんだがね、現在は…かくかくしかじか」
アラン「なるほど、そりゃあますます行ってみたいな!」
大「お待たせしました。コム長官がスクリーンにお見えになります」

皆が談笑をやめ、真剣な表情でスクリーンを見つめた。
ほどなく、バード星と地球の回線が繋がりコム長官が映し出された。

コム長官「初めまして皆さん。私が銀河連邦警察長官のコムです」
マリーン「マリーンです。コム長官の秘書を務めております」
猛「こちらこそ初めまして。貴方がコム長官…(フム誠実そうな方だ)」
隼人「お招き頂きありがとうございます(銀河連邦警察の偉いさんと
 言うからもっと厳ついのを想像してたが…意外に普通だなあ)」
コム長官「仮面ライダーの貴方もご存知の通り、今世界は突如出現した
 超巨大帝国、Gショッカーの猛威に晒されています。地球ばかりではなく、
 この宇宙は元より過去や未来、様々な次元に存在する異世界までも…」
猛「なんとそれほど……」
隼人「こりゃあ…俺達の想像を絶する相手だな。参ったぜ!」

マリーン「Gショッカーは多くの悪の組織が夢見た、地球征服を最優先に
 計画を実行しているのです。その手始めに、世界各地にいるヒーロー……
 あなた方、仮面ライダーのような存在を個別に抹殺しようと…」
コム長官「すでに彼らからお聞きになった通り、皆さんや我々のような
 組織が別々に戦っている時ではないのです。一刻も早く、我々も力を
 合わせて共同戦線を展開していかなければとても対抗しきれません」
猛「お話は伺って良く理解しているつもりです。私にはここにいる隼人を
 含め、後10人の戦う仲間がいます。しかしGショッカーがそれほどの
 規模で全世界制服を企んでいるのなら、是非とも仲間は多いほうがいい」
コム長官「その通りです。そこで我々は星間評議会にある計画を打診
 しました…即ち、全てのヒーローが様々な枠を超えて統合される組織…
 チームと言ってもいいかもしれない。それを誕生させるのです!」

隼人「そいつは凄い!! …でも本当にそんな事、可能なんですか?」
マリーン「確かに乗り越えなくてはならない課題はたくさん出てくるでしょう。
 しかし、何としても実現させなければGショッカーの手に世界は落ちます!」
猛「確かに…それで、我々でお力になれる事はありますか?」
コム長官「星間評議会でこの案件が成立すれば、正式な使節を選抜して
 地球連邦政府に派遣する段取りです。両政府で協約を結び、正式に
 発足させるのが私の願い…そこで仮面ライダー1号、2号のお二人に、
 地球の何処かにいる、志を同じくするヒーロー達をできるだけ探し出して
 意志の統一をお願いしたい。彼らのまとめ役として、私の目に狂いが
 無ければ一番永く、数多くの悪の組織と戦い続けているダブルライダー…
 あなた方お二人が最も適任だと信じております。どうか、お頼みします!」
猛「…分かりました。俺達でお力になれるなら…」
隼人「微力ながら、お手伝いしますよ!…ってね♪」
コム長官「お引き受け頂けますか…!! ありがとう…!!」
マリーン「私からも…お二人には、本当に感謝致しますわ」

12-8

コム長官「アラン及びシャイダーとアニーは引き続き、地球担当刑事として
 お二人に協力して動いてくれたまえ」
大「はいっ!」
アニー「了解しました、長官!」
コム長官「どの星も、不思議界フーマの大侵攻の爪痕からやっと
 復興の兆しが見えたばかりだった。ギャバン隊長も、イガ星担当の
 シャリバンも、息をつく暇もなくGショッカーと戦っている。
 地球の未来は君達にかかっている…頼んだぞ!!」
アラン「私が担当していたビーズ星は、Gショッカーの猛攻にさらされ
 占領されてしまった…。リン王女も再び囚われの身に…クソッ!
 私の力が足らないばかりに、守ることができなかった……!!」
アニー「自分を責めてはいけないわ、アラン…貴方が辛うじて生きて
 助かっただけでも、王女には生きる希望になるのよ?」
猛「そうだったのか…宇宙の人々を守り、占領された星々を解放する
 ためにも力を尽くさなければ。俺達も頑張るよ、アラン君」
アラン「本郷さん…すまん、つい愚痴ってしまった」
隼人「元気だせって! お前にそっくりな後輩にも、会わせてやるからよ」
アラン「風見さんでしたっけ…どんな人なんです?」
隼人「そうだなぁ…まずあいつは…――――」

◇    ◇

アニー「バビロス号、スタンバイオーケー!」
シャイダー「バビロス発進!」

バビロス号の窓から地平線を見つめていた本郷猛は、初めてショッカーに
拉致され改造人間となった日を思い出していた。それはどんなにか辛く、
苦しい孤独な戦いの人生の幕開けだった事だろう……
だが今は、生死を共にする「兄弟」達と、共に同じ道を進む「仲間」がいる。
彼の胸中には、戦士となって初めて去来する安らぎが去来していた。

隼人「なあ、本郷……」
猛「どうした? 一文字……」
隼人「仮面ライダーにも、俺達が知ってる連中以外の仲間がいるかもな」
猛「…そうだな。この世界は広い。きっと何処かに――…」

こうして、まだ見ぬ正義のヒーロー達の統合組織誕生を実現させるべく、
本郷猛と一文字隼人は宇宙刑事シャイダー達と一緒に、仲間を求めて
新たな任務に着いた…果たしてその時は、いつやって来るのだろうか!?
風雲急を告げていく『闘争の系統』――次回をお楽しみに!


***暗黒宇宙の果て????***

(ズラリと並んだチェスの駒を、楽しそうに動かす人物…)

????「アハハハ…哀れだねぇ~ハンターキラー。
 折角、いいオモチャを与えてやったのに…所詮その器じゃあ
 無かったかい。さぁて…次はどれで遊ぼうかねぇ~~…♪
 可愛いボウヤ達もたくさんいるし…まだまだ駒はたくさんあるよ~
 ウフフフフフ…ア~ハハハハハハ…♪」


○仮面ライダー1号→クモ男、ザンジオー、タイホウバッファローを倒す。
 宇宙刑事シャイダーと共に仲間を求めて出発した。
○仮面ライダー2号→サイギャング、カミキリキッド、タイホウバッファローを倒す。
 宇宙刑事シャイダーと共に仲間を求めて出発した。
○アラン→シャイダー、アニーと共に1号2号に加勢に現れる。
○アニー→シャイダー、アランと共に1号2号を援護する。
○シャイダー→本郷猛、一文字隼人をコム長官に会わせ、ヒーロー統合組織
 結成のために二人を乗せてバビロス号で出発。
○コム長官→本郷猛、一文字隼人に地球のヒーローのまとめ役を依頼する。
○マリーン→コム長官と共に本郷、一文字と会見、感謝を述べる。
●地獄大使→ダブルライダー抹殺に失敗して撤退
●ドクトルG→ダブルライダー抹殺に失敗して撤退
●タイホウバッファロー→1号2号に倒され、ドクトルGに処刑される。
●クモ男→ライダー1号に倒される。
●ザンジオー→ライダー1号に倒される。
●サイギャング→ライダー2号に倒される。
●カミキリキッド→ライダー2号に倒される。
●ハンターキラー→バード星からバリオゼクターを強奪、自ら蒸着して
 アニー、アラン、シャイダーと戦うがスーツの暴走で意識を失う。
●ミラクラー→気絶したハンターキラーを抱え、撤退

13

【今回の新規登場】
○沢村大=宇宙刑事シャイダー(宇宙刑事シャイダー)
宇宙刑事訓練養成所第7分隊から派遣された、三代目地球担当刑事。
大学時代、ナスカ高原の図形を解読し、秘密遺跡を発掘した功績と勇気が
認められ宇宙刑事になった。後に銀河連邦警察創設の礎を築いた、伝説の
戦士シャイダーの末裔である事が判明する。訓練半ばで着任したため、未熟な
部分も多かったが、試練を乗り越え成長し遂にフーマに勝利した。
バビロス号から発射されるプラズマ・ブルーエネルギーを浴びて僅か1ミリ秒で
キャンディメタリックブルーに輝くコンバットスーツを“焼結”する。

○アニー(宇宙刑事シャイダー)
シャイダーのパートナーに自ら志願した女宇宙刑事。養成所第16分隊出身。
不思議界フーマに故郷マウント星を滅ぼされ、両親と妹を失っている。
射撃と身体能力は男性刑事顔負けなほど高く、シャイダーと共に果敢にフーマ
と戦い精神的にも大きく成長。また操縦の腕も確かで、上下分離可能な超次元
戦闘車シャイアン搭乗時は主にスカイシャイアンで空中戦を担当する。
フーマ壊滅後は地球に留まり、エジプトに留学して考古学を学んでいた。

○アラン(宇宙刑事ギャバン)
ビーズ星担当の宇宙刑事。宇宙犯罪組織マクーにさらわれたビーズ星の
リン王女を救出する任務を帯びて地球にやって来た。当時地球担当だった
宇宙刑事ギャバンの協力を得て無事に王女を救出し、ビーズ星に帰って行った。
完全武装タイプではない薄い軽量素材の戦闘服を身に纏い、「フラッシュ・イン・ゴー!」
の掛け声と共に剣のエネルギーを発射して戦う。地球のヒーローに顔が似ているらしい。

○コム長官(宇宙刑事ギャバン、シャリバン、シャイダー)
バード星に本部を置く銀河連邦警察の最高長官。若き日には宇宙刑事として
幾多の宇宙犯罪組織と戦い勝利したと言われ、尊敬されている。
ギャバン、シャリバン、シャイダー共通の上司であり、彼らの親代わりのような存在。
3人の地球担当刑事を時に厳しく、そして優しく叱咤激励し見守り続けた。
暗黒宇宙最強最大の侵略者、不思議界フーマとの戦いで若い訓練生の多くが
宇宙刑事として任務に赴き殉職した事に心を痛めていた。そんな折り、さらなる
超帝国Gショッカーが全宇宙に宣戦布告し、心の中で苦悩する日々を過ごしている。
実の娘ミミーがギャバンと結婚したので、ギャバン隊長の義父となった。

○マリーン(宇宙刑事ギャバン、シャリバン、シャイダー)
コム長官の有能な女性秘書。一時期、母の病気見舞いで地球を離れた
ミミーの代わりにギャバンをサポートしていた。コム長官と共にギャバン、
シャリバン、シャイダーの地球での戦いを見守り続けた彼らの良きアドバイザー。
ミミーとは姉妹のように仲が良いが、実はギャバンに気があるので張り合う時も。

●サイギャング(仮面ライダー)
仮面ライダー打倒を目的として、死神博士にアフリカ支部から呼び寄せられた怪人。
口から催眠ガスと火炎放射で攻撃する他、戦闘員オートバイ部隊を率いて本郷と
滝が出場する全日本オートレース選手権の邪魔をした。

●ザンジオー(仮面ライダー、劇場版仮面ライダー対ショッカー)
地球物理学の権威・大道寺博士が発明した人工重力装置、GXの方程式を
奪う事がその使命。死神博士の号令の下、再生怪人の大軍団を率いて
地獄谷で1号2号ライダーを迎え撃ったが、ライダーダブルキックに敗れた。
口から火焔を吐き、泡状の液化能力を具えている。

●カミキリキッド(仮面ライダー、劇場版仮面ライダー対じごく大使)
地獄大使が富士山頂のショッカー大要塞に設置した、日本焦土作戦の要となる
スーパー破壊光線をライダーの妨害から死守するのが使命。また、ショッカー墓場に
眠る怪人達を蘇生させる悪魔祭りに必要な生贄を連行する任務も与えられた。
武器は左手のハサミと口から吐き出す痺れガス、角から放つ破壊光線など。

●ハンターキラー(宇宙刑事ギャバン、宇宙刑事魂)
ギャバンの父ボイサーと共にかつて地球へ派遣された元宇宙刑事。
ボイサーを裏切って罠に嵌め、彼の友人であった星野博士を殺害、ホシノスペースエネルギー
の情報提供と引換えにマクーの幹部となる。後にドン・ホラーの息子サンドルバが帰還したこと
でその地位が危うくなり、宇宙刑事用の暗号を使ってギャバンに情報を漏洩。それが発覚し、
裏切り者として暗黒銀河へ追放される。瀕死状態で漂流しているところを銀河パトロール隊に
保護されるが、収容先の銀河警察病院でボイサーの居場所とX計画の存在を教えて力尽き、
息絶えた。Gショッカーの一員となり蘇った今、何者かの助力を得て銀河連邦警察本部の
機密保管庫を急襲し、試作コンバットスーツ『バリオゼクター』を強奪して逃走している。

●ミラクラー(宇宙刑事シャイダー)
不思議界フーマの下級戦闘員。祭祀に用いる鬼面のようなマスクをしており、
槍と斧が一体化したような武器を持ち集団で襲い掛かる。 


『月と大地の邂逅』-1

作者・シャドームーン

14

***???の心の世界***


―――…夢であるとわかっている………

しかし。だがこの夢は―――

俺という存在の記憶の欠片なのだろうか…?

その夢の中では…周囲に親しみを覚える人達がいる…
誰なのかは思い出せない。一つだけ分かるのは、彼らは自分を
「ノブヒコ」と呼んでいるらしい。

「ノブヒコ」…それが俺の名前なのだろうか?

そう思い始めた時、必ずその気持ちを遮るように現れる別の夢。
――これは…悪夢である。

黒い戦士と、銀の戦士が何処かの原野で闘っている……
やがて空から雷が銀の戦士に降り注ぎ、自分の姿へと変わっていく。
黒い戦士が俺に駆け寄り、まるで古い友人にでも会ったかのように
あの名前で俺に語りかける…「ノブヒコ」と。

次の瞬間、銀の戦士に戻った自分は、鮮血のような赤い剣で
俺を名前で呼んだ黒い戦士を切り裂く…幾重にも。
倒れ伏すその黒い戦士は、最後にもう一度、あの名前で俺を呼んだ。
息絶えた黒い戦士の姿が最初の夢で見た男になって行く。
その顔はとても懐かしく、確かに以前会ったことがあるようだが…――

…ずっと昔から知っているような気がする。だが…思い出せない。
…何だこれは? ……………この記憶は…何なのだ?


***とある牧場近くの草原***


青年「や、やめろ…俺はそいつを知っ…やめろぉぉおお―ッ!!!
 …! はぁ、はぁ…ここは…何処…だ?」
少女「お兄ちゃん、どうしたのー? なんで泣いてるの?」

夢に魘される青年がうっすら目を開けていく。
彼は、目に飛び込んできた日差しに眩しそうに瞬きしながら…
視界にぼんやり映る、見知らぬ少女の姿に目を細めた。
不思議とその子の顔は、何処かで見覚えがあるような気がしたが…

青年「…泣いてなどいない。少し…眠っていただけだ」
少女「ううん、泣いてるよ? ほら、涙が出てるもの」
青年「…涙… 俺が……?」
少女「うん。お兄ちゃん、怖い夢みたんだね。私も見ると泣いちゃうんだっ!」
青年「……俺は自分の事が思い出せないんだ。君の――…」
少女「ふうん。なんだか可愛そう。私の名前は茜よ。お兄ちゃんは?」
青年「俺は…俺の名前は―――…ノブヒコ…だ」
茜「お兄ちゃん、のぶひこっていうんだ! 」

この少女を見ていると、あの夢に出て来る誰かに似ている――
青年…秋月信彦の脳裏に、そんな感覚がふと過る。

誰だったのだろう…大切な、かけがえのない人だったような…。
俺に、この名で、いつも語りかける……「お前達」は一体誰だ?
 
信彦「ありがとう…君と話していると、少し…思い出せそうだ」
茜「本当? じゃあ、全部思い出せるまで一緒にいてあげる!」

15

茜という少女は、信彦を彼女の家がある牧場へと案内した。
どうやら此処は富士の麓であるらしい…また見覚えがあるような景色だ。
牧場…富士の山…そして今眼下に咲いている花々。

自分は以前、此処に来ていたのではないのか…誰かと再び会うために。
その誰かとは、あの男――俺を「ノブヒコ」と呼ぶあいつなのでは……?

茜「お兄ちゃん…?」
信彦「あ…いや、とても綺麗な花だと思って…」
茜「ここのお花、いつもパパ達とお手入れしてるけど、いつまでも
 枯れないのよ。あの銀色のお兄さんが寝てたからかなあ?」
信彦「…銀色の…!? ――ッ!」

普通の人間には聞き取れぬ、“魔物”達の目覚めの声が、彼には知覚できた。
人が見れば魑魅魍魎と呼ぶだろう悪鬼共が、歓喜の産声を上げている……

闇の中で蠢く異形達の鼓動。それを感じ取れるのは、自分も奴らの同類だから…?
戦いの始まる予感がする。奴らの狙いは――――…この俺だ。
全身から湧き上がる闘争の本能…それを抑える感情が今は俺を動かしている。
俺を見つめる少女。彼女とその家族だけは、決して巻き込んではならない。

信彦「さ、もうお帰り。パパ達が心配するよ」
茜「う~ん…うんっ、また遊ぼうね!」

少女は何度も振り返り、手を振りながら家の中へ入って行った。
これでいい、と彼は思った。あの子がもしかしたら、自分の記憶を呼び覚まして
くれたかもしれないが、思い出したところでもう二度と、親しみを感じる人達には
会うことはできないだろう―――…あの男を除いては。

それだけは、夢の中でもはっきりと自覚できていた…
秋月信彦は意を決したように、富士の裾野にある樹海へと歩き始めた。

16

信彦が立ち去ったあと、先程の花畑から一匹の蛇が這い出て来た…
そして白煙と共に、甲高い女の笑い声が響き始める。

ヘビ女「イ~ヒヒヒ…あれが秋月信彦、世紀王シャドームーンか…
 どうやら本当に記憶を全部無くしたまま“黄泉帰った”ようだねぇ…
 ジェネラルシャドウの睨んだ通りかい。…あいつらも動き出したようだねぇ。
 さぁぁぁて…今の状態で、しかも一人で勝てるかねぇ…ヒッヒッヒ…」

ジェネラルシャドウ「――それで消されれば、それだけの男と言うことだ」

頭に二本角を生やす蛇の顔をした女改造魔人の背後から、
白いマントを翻えして透明なフードに被われた顔を持つ怪人物が現れる。

ヘビ女「イヒヒヒヒ…ジェネラルシャドウ様。」
ジェネラルシャドウ「あの男を連れ帰るのも仕事の内だが、記憶喪失の若僧を
 わざわざ俺が組織へ案内するなどつまらん。影の王子…噂通りの器かどうか
 そのお手並みをとっくりと拝見させてもらおうか…フフフ」
ヘビ女「ヒッヒッヒ…でもシャドウ、あいつらを放っておいていいのかい?」
ジェネラルシャドウ「闇女王同盟の企みなど、我々は知ったことではない。
 万一の時は秘密警察が釘を刺すだろうが、連中も静観していると見た…
 フフッ世紀王候補はいくらでもいるからな。後始末も兼ねる連中の事、
 どうせなら不甲斐無い輩は早めに消えて貰ったほうが楽なのだろう」
ヘビ女「ヒヒヒ…このまま無事に連れ帰ったなら、マシーン大元帥の鼻も明かせたものを」
ジェネラルシャドウ「言うなヘビ女よ。俺がそういう事に興味が無いことは知っていよう?」
ヘビ女「ヒッヒ…そうでしたね、ご無礼を。ではシャドウ様…」

ジェネラルシャドウ「クククク…さぁ、宴の始まりか。トランプフェイド!」

ジェネラルシャドウ一派――
Gショッカー内でもアウトローと目されるデルザー改造魔人の二人組は、
不適な笑みを浮かべ姿を消す。後には多数のトランプが舞っていたが、
やがてそれも風と共に消滅した。辺りにはあたかも大地が怯えているかのように、
小さな地鳴りがあちらこちらで起き始めていた……。

△秋月信彦→富士の樹海へと向かう。
●ジェネラルシャドウ→まだ不完全な状態のシャドームーンの実力を見ている
●ヘビ女→分身の蛇を用い、シャドームーンを見張っている。

17

【今回の新規登場】
△秋月信彦=世紀王シャドームーン
(仮面ライダーBLACK/仮面ライダーBLACKRX/仮面ライダーワールド)
暗黒結社ゴルゴムの世紀王にして南光太郎のかつての友、そして最大の宿敵。
三神官の天・海・地の石で復活し、BLACKと宿命の対決の末、崩壊して行く
ゴルゴム神殿と運命を共にしたが記憶という重い代償を払い、生き延びていた。
打倒仮面ライダーの本能に付き動かされ、BLACKRXと再戦、富士で敗れる。
その際に信彦の自我を取り戻し、クライシス帝国の卑劣な罠から子供を助け出したのち、
光太郎達に見守られ静かに息絶えたが…――――。

○柴田茜(仮面ライダーBLACKRX)
富士山麓で牧場を経営している父親、兄と暮らす少女。
クライシス帝国の富士山噴火作戦に巻き込まれ、兄と共に人質にされた
過去を持つ。影の王子を光太郎と共に看取ったが、彼女達は
「疲れて眠っているだけ」と光太郎に聞かされ、安堵して父の元へ帰った。

●ジェネラルシャドウ(仮面ライダーストロンガー)
元ブラックサタンの雇われ幹部で、デルザー軍団主催者の改造魔人。
後に故郷である遠い魔の国から、同胞を呼び寄せてクーデターの末
ブラックサタンを壊滅させデルザー軍団を統制する。トランプカードを駆使した
数々の攻撃・幻惑術と、更にはシャドウ剣による驚異的な剣捌きを具える。
十二邪将筆頭に昇格したマシーン大元帥以下、次期創世王の座に意欲を
燃やす軍団員とは何かと意見が合わず専ら別行動を取る。

●ヘビ女(仮面ライダーストロンガー)
シャドウの片腕と呼ばれる女性改造魔人。 デルザー軍団で唯一、
彼に忠実に付き従う古女房的存在。人間の額に赤い鱗を貼付して
傀儡の吸血蛇人間と化し、左腕の蛇頭からは電気エネルギーさえ
液体状として吸血できる。 


『流浪の超人機』

作者・凱聖クールギン

18

悪の帝王・ゴッドネロスを倒し、ネロス帝国を滅ぼした超人機メタルダー。
だが彼は、その最後の戦いで超重力エネルギー制御装置をネロスに破壊されて自爆の危機を迎え、
地球を道連れにしての爆死を避けるため、
体内の超重力エネルギー装置を仲間の手を借りて破壊せざるを得なかった。
それによって彼は超人機としての力を失い、剣流星の姿へ戻る事すらも不可能になって、
ただ一匹の相棒であるロボット犬・スプリンガーを連れ親愛なる仲間達の前から去った。
「生まれてきて良かった」――そんな言葉を残して。

それからどれくらいの月日が経ったのだろう。
人気のない荒野を、メタルダーとスプリンガーはずっと歩き続けていた。
帰る場所などないし、これからどこへ行こうという当てもない。
傷付いたメカニックが朽ちていつか機能を停止する日まで、
こうして無為に放浪の旅を続けるしかないのかも知れない。

???「そこにいたか、メタルダー」

不意に背中にかけられた声に、メタルダーは驚いて振り返った。
夕焼けの向こうに立っている二つの人影。
それは紛れもなく、かつて倒したはずのネロス帝国の軍団員、
ヨロイ軍団豪将・タグスキーとタグスロンの兄弟だった。

スプリンガー「そ……そんな馬鹿な!?」
タグスロン「驚いたかメタルダー。我ら兄弟、お前を倒すために地獄から蘇ったのだ!」

激しく吠えて威嚇するスプリンガーには目もくれず、
タグ兄弟はゆっくりとメタルダーへ歩み寄りながら語る。

タグスキー「よいかメタルダー。
 一度はお前に敗れた我らネロス帝国だが、今こうして再興の時を迎えた。
 我ら兄弟だけでなく全軍団の戦士が――いや、我らネロス帝国のみに非ず、
 世界征服の志を同じくするあらゆる闇の軍団が地獄からの黄泉がえりを果たし、
 無限なる帝国、ガイスト・ショッカーの旗の下に集ったのだ!」
メタルダー「ガイスト・ショッカー……!?」

19

タグスロン「我ら新たなる帝国の力をもってすれば、
 メタルダー、お前如きをひねり潰すのは最早たやすい事だ。
 だが光栄に思うがいい。メタルダー、帝王ゴッドネロスはお前を高く評価し、
 破壊された超重力エネルギー装置を修理してお前の超人機としての力を回復させた上で、
 バルスキー殿と並ぶ戦闘ロボット軍団凱聖としてお迎え下さるとの仰せだ」
タグスキー「いかにも。我らはその使者として、
 お前をゴーストバンクへと連れ帰るべく参ったのだ」

メタルダーをネロス帝国の戦闘ロボットとして生まれ変わらせる。
それはあの最終決戦の時、確かにネロスが言っていた事だった。だが――。

タグスロン「さあメタルダー、悪いようにはせん。
 我々と一緒にゴーストバンクへ来るのだ!」
メタルダー「――断る! 僕は自分の力を、悪の野望のためになど使いはしない!」

メタルダーが拒絶すると同時に、タグスキーは剣を抜き、タグスロンは薙刀を構えた。

タグスキー「ならば斬る! もしお前が誘いを断った場合、
 我ら兄弟はお前を抹殺せよとの指令を受けているのだ!」
タグスロン「その通り。覚悟はいいか、メタルダー!」
メタルダー「……来い!」

身構えるメタルダーに、タグ兄弟の剣と薙刀が唸りを上げて襲いかかった。
兄弟の息の合った攻撃を素早くかわし、パンチで応戦するメタルダーだが、
超重力エネルギー装置を破壊された彼の拳にかつての破壊力はない。
崖へと追い詰められて逃げ場をなくしたメタルダーは、
たちまちタグスロンの薙刀に左肩を斬り下げられ、裂傷から火花を散らして転倒した。

タグスロン「どうやら本当に戦闘力を失ったようだな…。
 これ以上の抵抗は無駄だ! 大人しく降伏したらどうなのだ?」
メタルダー「くっ…! レーザーアーム!!」

右手を天へ突き上げ、必殺技の構えを取るメタルダー。
だが、壊れた超重力エネルギー装置ではかつてのような十分なエネルギーが発生しない。
弱々しい青い光だけが、メタルダーの手刀に灯った。

タグスロン「――覚悟ォッ!!」
メタルダー「ヤアッ!!」


 20

メタルダーの手刀とタグスロンの薙刀が斬り結ぶ。
空中に爆発が起き、そして吹っ飛んだのはメタルダーの方だった。
危うく崖から転落しそうになったメタルダーを、今度はタグスキーが首を掴んで持ち上げる。

タグスキー「メタルダー、もう一度だけ訊ねる。
 帝王ネロスにお仕えする気は本当にないのか!?」
メタルダー「……くっ……こ…断る…っ……!」
タグスキー「ならば止む無し、首を刎ねてやる!」

既に抵抗する力もなくなったメタルダーの首を放して崖の上に膝立ちさせ、
介錯の剣を一閃、振り下ろそうとした瞬間、
スプリンガーが背後からタグスキーの腕に噛み付いた。

スプリンガー「ワン!ワン! グルゥゥ…!」
タグスキー「うあっ!? 放せ、この犬め!」
タグスロン「ええい、こいつめ、兄者から離れろ!」

メタルダー「ううっ……。ヤアッ!!」
タグスキー「ぐっ!?」

タグスロンがスプリンガーを引っ張って後ろへ放り投げたと同時に、
メタルダーは最後の力を振り絞り、発光した右手をタグスキーの胸に突き刺す。
胸の装甲を突き破られて悶えながら、
タグスキーは遂に大上段から剣をメタルダーに叩き込んだ。

メタルダー「うわぁぁっ!!」
スプリンガー「メタルダーッ!!」

胸を斬り裂かれ、白煙を噴き上げながらメタルダーは崖の下へ転落。
スプリンガーはしばし呆然としていたが、やがて崖を下りる道を探して走り出し、
脇にあった森の中へと姿を消した。

タグスロン「あ、兄者…。やったか!?」
タグスキー「うむ…。だが完全に機能停止した奴の残骸を見るまで安心してはならん。
 咄嗟の事とは言え、崖に落としてしまったのは失策だったな…」

メタルダーの必死の抵抗で少なからずダメージを負いながらも、
タグ兄弟は己の使命を完遂するため、崖の下に消えたメタルダーの追跡を開始した。

21

○メタルダー→タグ兄弟からネロス帝国への勧誘を受けるが、 拒否し戦闘。タグスキーの剣で重傷を負い崖の下へ転落。
○スプリンガー→タグ兄弟に敗れたメタルダーを追って崖の下へ。
●タグスキー&タグスロン→メタルダーをネロス帝国へ勧誘するが、 拒否され戦闘。メタルダーに重傷を負わせ崖の下へ落とす。

【今回の新規登場】
○剣流星=メタルダー(超人機メタルダー)
 太平洋戦争中、旧日本軍の戦闘兵器として古賀竜一郎博士が開発した超人機。
 内蔵された自省回路の働きによって人間に限りなく近い心を持つ。
 剣流星の姿は戦死した古賀博士の息子・古賀竜夫をモデルにしている。


○スプリンガー(超人機メタルダー)
 メタルダーのサポート機として古賀竜一郎博士が開発したドーベルマン型ロボット犬。
 人語を話し、メタルダーの整備や修理を担当する。趣味はアニメ観賞。


●豪将タグスキー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・ヨロイ軍団豪将。タグスロンの義兄。
 柳生石舟斎宗巌の剣術を帝王ゴッドネロスから直々に教え込まれた剣士。


●豪将タグスロン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・ヨロイ軍団豪将。タグスキーの義弟。
 浄妙明秀の薙刀術を帝王ゴッドネロスから直々に教え込まれた薙刀使い。


『戦士を招く戦雲』

作者・凱聖クールギン

22

――翌朝。

スプリンガー「ワン!ワン!」

大きな吠え声で呼びかけながら、スプリンガーは必死に森の中を駆け回りメタルダーを探していた。
鼻の嗅覚センサーを研ぎ済まし、嗅ぎ慣れた相棒のボディ特有の匂いを探す。

スプリンガー「あっちだ。…ようし」

メタルダーの居場所を嗅覚センサーが掴んだ。
煙の匂いが混じっている事から、かなり損傷が激しいらしいと分かる。
スプリンガーが意を決してまた走り出そうとした時、
轟音とともに一機の戦闘機型ロボットが上空を飛ぶのが見えた。

スプリンガー「ネロスの機甲軍団だ。まずいなぁ…。待ってろよメタルダー」

 * * *

一方、タグスキーとタグスロンの兄弟は迂回して崖を下り、
夜の闇が晴れたのを見計らって、メタルダーが隠れている森の中へいよいよ踏み込もうとしていた。
そこへ不意に、ネロス帝国のワゴン型戦闘輸送車両・ダークガンキャリーが到着。
豪将・ブライディ、爆闘士・ダムネン、激闘士・ザケムボー。
モンスター軍団の軍団員らが、ぞろぞろと車から降りて来る。

タグスキー「む、これはモンスター軍団凱聖・ゲルドリング殿では御座らぬか!」
ゲルドリング「ガハハハハ! お主ら、メタルダーの抹殺に失敗したようじゃけんのう。
 このダムネンから知らせがあったわ!」
ダムネン「ヒハハハハ…。惜しかった惜しかった。無念…ダムネンってか」

タグ兄弟はここで状況を理解した。
昨夕の戦闘を陰から監視していたダムネンがゲルドリングに事の次第を報告し、
メタルダーがまだ生きていると知ったゲルドリングが、
ならば自分達で手柄を横取りしようとしゃしゃり出て来たのだ。

タグスロン「メタルダー抹殺の任務は帝王より我ら兄弟が仰せ付かっておりますれば、
 モンスター軍団の助太刀は御無用。速やかにお引き取り願いたい」
ゲルドリング「そうは行かへんでぇ! こうなったらもうメタルダーの首は早いモン勝ちや。
 こちとら次期創世王を決めるバトルファイトの行方も懸かっとるけんのう。
 機甲軍団も偵察に動き出しとるさかい、
 お主らがグズグズしとるの待っとる訳には行かへんのや。オラ行けぇ!」
ブライディ「グォォ…。どけぇ!」
ザケムボー「クヒヒヒヒ…。早いモン勝ち早いモン勝ち!」

軍団長のゲルドリングに率いられて、モンスター軍団は森の中へ踏み込んで行った。
後に残されたタグスロンは悔しそうに歯噛みする。

タグスロン「おのれ、抜け駆けとは!」
タグスキー「落ち着け弟よ。飛んで火に入る夏の虫とはこの事だ。
 凱聖ゲルドリングは手柄を焦って自ら死地へ飛び込んだ」
タグスロン「はっ? どういう事だ兄者」
タグスキー「お前には分からぬか。よく六感を研ぎ澄ますのだ。
 …森の中に二つ、只者ではない恐るべき気を感じる」

そう言ってタグスキーは、自分の剣で森の方を指し示した。

23

機甲軍団激闘士・ストローブは上空を飛び回り、
地上の軍団員達と連絡を取りながら、内蔵されたレーダーでメタルダーを探す。
彼は表向きはゲルドリングに求められてモンスター軍団の加勢に出撃した格好だが、
その裏にはそれを黙認した軍団長、機甲軍団凱聖・ドランガーの、
モンスター軍団の動向を監視しようという思惑があった事は想像に難くない。

ストローブ「――むっ!?」

突然、レーダーが地上の熱源を感知し反応した。
望遠機能のある眼をその場所へ向けると、
森の木陰で煙を噴きながら横たわっているメタルダーの姿が確かに映る。

ストローブ「メタルダー発見! ポイント7へ急行せよ!」

地上のモンスター軍団へ通信を入れながら、ストローブは旋回して照準を定め直すと、
背中に装備された二門のビーム砲でメタルダーを空襲。
発射された光線は森の木々を焼き切り、地面に爆発を起こす。
形だけの連絡を入れつつも、実際はモンスター軍団の到着を待つまでもない――。
機甲軍団の手でメタルダーを抹殺し、ゲルドリングの増長を防ぐのが彼の使命なのだ。

メタルダー「しまった! 見付かった」

森に潜んでいたメタルダーは逃げようとするが、損傷が激しいため動けない。
タグスキーの剣で斬られた胸が痛んでまた火花を発した。

スプリンガー「メタルダー!」
メタルダー「スプリンガー! 危ない、来るな!」

爆発が次々と起こる中、駆けつけたスプリンガーは上空のストローブに向かって激しく吠え、
自分の方へ注意を逸らそうとする。

ストローブ「うるさい犬め、まとめて破壊してやる!」

ストローブの二門の砲塔の片方がメタルダーへ、もう片方がスプリンガーへロックオン。
発射された二筋のレーザーが両者を貫くかと思われたその時、
何者かが茂みから飛び出し、素早く地上を駆け抜けてメタルダーとスプリンガーを抱きかかえた。
間一髪で標的に逃げられたレーザーは地面に命中し大爆発を起こす。

スプリンガー「あ…あんたは……?」

顔の下半分に人間の肌が露出した、青い仮面の戦士。
その顔を見て、スプリンガーが目を丸くする。

ライダーマン「どうやら間に合ったようだな。
 無事で良かった。剣流星君――いや、超人機メタルダー!」

青い仮面の戦士――ライダーマンは、
そう言って仮面からはみ出た口元を微笑に緩ませた。

24

森の茂みを乗り越えて、ゲルドリングの率いるモンスター軍団はポイント7に到着した。
だが、そこには焼き切られた大木が何本か積み重なっているばかりで、
肝心のメタルダーの姿がどこにもない。

ゲルドリング「おんどれぇ、逃げられてもうたか!?」
???「ハハハハハ、やっと来たか。遅かったなGショッカー!」

突然、森の中に響く不敵な笑い声。
ゲルドリングが声のする方へ視線をやると、一本の木の上に赤い仮面の戦士が悠然と立っていた。
緑色の大きな複眼が、挑発するようにゲルドリングを見下ろしている。

ゲルドリング「な、何じゃ貴様は!?」
V3「…俺を知らんとは、お前も大した奴じゃないな…。
 ――俺の名は、仮面ライダーV3!!」

両腕を交差させてポーズを決めながら、赤い仮面の戦士――V3は名乗った。

ゲルドリング「何やとぉ…。ええい、殺ってまえ!」
V3「行くぞ、トォッ!」

すぐさま木からジャンプし、敵のただ中へと飛び降りたV3に、
モンスター軍団員達が奇声を上げて群がる。

ダムネン「ケッ、生意気な改造人間め!」
ザケムボー「ヒヒヒ…。さあどうやって料理してやろうかな」
V3「久し振りに暴れさせてもらうぜ…。来い!」

ダムネンとザケムボーが左右からV3を挟み撃ちにするが、
V3はザケムボーの巨体に体重を預けてダムネンにキック。
ダムネンが吹っ飛ぶと、今度は反転してザケムボーの腹を連続的に殴り付ける。

ザケムボー「ギャーッ!!」

5発目のパンチで遂にザケムボーが殴り倒された瞬間、
ブライディが俊敏な動きで飛びかかり、V3の胸にその鋭い爪で斬撃を浴びせた。

ブライディ「グォアアッ!!」
V3「うわっ!」

奇襲を受け転倒したV3だが、

すぐに立ち直って両足で地面を蹴り、空高く飛び上がる。

V3「トォッ!」
ブライディ「ガゥアッ!」

すかさずブライディも跳躍する。
両者は空中で交錯し――

V3「V3・反転キック!!」

空中回転からのV3のキックがブライディの胸に決まった。
『V3・26の秘密』の一つに数えられるV3反転キックはその名の通り、
一発目のキックの後に空中で反転しそのまま二発目を敵に浴びせる技である。
ブライディを蹴った反動でV3は背面ジャンプし、再び飛び蹴りの体勢に入る。

V3「トォッ!!」
ゲルドリング「な、何やてぇ~!?」

V3反転キックの二発目は方向を変え、何と戦闘を傍観していたゲルドリングに見舞われた。
油断していたゲルドリングは咄嗟の防御が出来ず、右肩にキックを喰らって引っ繰り返る。

ダムネン「――軍団長! しっかり!」
ゲルドリング「おんどれぇ~! V3、よくもやってくれはったなあ!
 こうなりゃワシが相手や……ん?」

激昂しながら立ち直ったゲルドリングだが、V3の姿は既にない。

ゲルドリング「ど、どこ行ったんやV3!?」
V3「ハハハハ…。いきり立つな凱聖ゲルドリング。
 今の俺にお前と戦っている時間はない。この勝負、お預けだ」
ゲルドリング「ええい、出て来んかいV3!!」

どこからか森の中に木霊するV3の声。
ゲルドリングは興奮して叫んだが、V3はそのまま忽然と姿を消してしまった。

25

○メタルダー&スプリンガー→ストローブに狙われピンチの所をライダーマンに救出される。
○ライダーマン→負傷したメタルダーとスプリンガーをストローブの攻撃から救出。
○仮面ライダーV3→ネロス帝国のモンスター軍団を翻弄し足止めした後、撤退。
●ゲルドリング&モンスター軍団員→負傷したメタルダーに止めを刺そうと森へ乗り込むが、仮面ライダーV3に翻弄され足止めを受けた末に逃げられる。
●タグスキー&タグスロン→モンスター軍団にメタルダー抹殺の抜け駆けを許し、ひとまず傍観に回る。
●ストローブ→モンスター軍団の援軍兼監視役として出動。メタルダーを攻撃するが逃げられる。

【今回の新規登場】
○風見志郎=仮面ライダーV3(仮面ライダーV3)
 仮面ライダー1号と2号によって改造され、二人の“技”と“力”を受け継いだ仮面ライダー3号。
 元は城南大学の化学研究員生で、「マットの白い豹」と呼ばれた優秀な体操選手。
 デストロンに両親と妹を殺害され、自分も重傷を負わされるが、 

 1号と2号の手術で改造人間として蘇った。
 『Ⅴ3・26の秘密』と呼ばれる様々な能力を駆使して悪と戦う。

○結城丈二=ライダーマン(仮面ライダーV3)
 デストロンへの復讐のため戦士となった仮面ライダー4号。
 元はデストロンの科学者で次期幹部候補だったが、ヨロイ元帥に粛清されかけ脱走、
 負傷した右腕を改造しライダーマンとなって戦いを挑んだ。
 当初は右腕だけを改造した不完全な改造人間だったが、

 プルトンロケットの爆発から生還後、再改造によりパワーアップを遂げる。
 右腕のカセットアームに様々なアタッチメントを装備。
 
●凱聖ゲルドリング(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団凱聖。
 口八丁手八丁、卑怯な手段を信条とするモンスター軍団の軍団長。
 光線や火炎、頭のフードの中から伸ばす触手などが武器。
 関西弁と広島弁が混じった方言で話す。

●豪将ブライディ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団豪将。
 鋭い爪や牙を持つ俊敏で凶暴な狼型怪人だが、本体は背中に背負っている巨大クモの方で、
 怪人の身体が倒されてもクモさえ無事なら復活が可能。

●爆闘士ダムネン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団爆闘士。
 身軽な動きによる格闘戦を得意とし、目からは光線を放つ小柄の昆虫型怪人。

●激闘士ザケムボー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団激闘士。
 口から吐く溶解液と羽から発する超音波を武器とする大柄の昆虫型怪人。

●激闘士ストローブ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団激闘士。
 戦闘機の能力を持った自律型航空兵器で、偵察や空爆を主な任務とする。
 武器は背中に装備した二門のレーザー砲。


『月と大地の邂逅』-2

作者・シャドームーン

26

謎の飛行物体が雲を突き抜け、富士上空に姿を現して行く。
それは奇怪な生物のようであり、機械の要塞のようでもあった。
太古より宇宙に災厄を齎し続けて来た邪悪な生命体の巣窟――
巨大機械獣母艦・フォッグマザーが今再びこの星の大地を侵そうとしていた。


***フォッグマザー内部***
 
フォッグ「生まれ出でよ…銀河宇宙を支配する我がフォッグマザーの
 申し子たち…歓喜の産声を上げて!!」

ここは怪物達の奥の院。不気味に脈打つ有機物と無機物類で
装飾された部屋の壁の上部に、人面のレリーフらしきオブジェがあり、
そこから女性と思しき「声」を発していた。そのレリーフの前には、
白い衣服を纏った三人の男女が並んでいる…

ガライ「フォッグマザー…例のオトコが近くまで来ているそうです」
ズー「あのオトコがシャドームーン…? クスクス…そうは見えけど」
アギト「ああ。この星に繁殖している脆い生物達と、どう違うというのだ」
フォッグ「ゴルゴムの世紀王を侮ってはなりませんよ王子…
 シャドームーンは世紀王候補のアナタにとって最大の脅威となるでしょう。
 ですが――…今は確かに不完全です…よろしいですね?」
ガライ「…おおせのままに、マザーよ」
 
奇妙な気品を漂わせるガライと呼ばれた長身の男が、傍らに立っている女に
合図のような仕草を行う。その女は美貌とは裏腹に冷酷な笑みを浮かべ、
優雅な足取りで部屋から出て行った―――

フォッグ「シャドームーン…あの男にだけは決して負けてはなりません。
 王子、あなたが次期創世王として君臨する日を楽しみにしていますよ」
ガライ「お任せくださいマザー。貴女の憂いは必ず取り除いて御覧に入れます。
 そして一日も早く…Gショッカーを統べる偉大なマザーとなられる事を……」
アギト「時に此度の生贄だが…相応しい生物を見つけておいた」
ガライ「ほう? どれ…」
 
三人のうち最年長と思しき初老の男が、部屋の中心に置かれた台を指差す。
台といっても勿論、この部屋の装飾に合わせて特注したかのような、奇怪で
グロテスクな形をしてはいるが……。台の中心部には、花壇に水をかけている
あの牧場にいた少女の姿が映し出されていた。

ガライ「うむ、生贄として申し分のない生物のようだ…任せるぞアギト」
アギト「…あァ…すぐに捕獲してくる」

初老の男は踵を返すと、獰猛な肉食獣のような目つきとなり、
およそ人間とは思えぬ速さで駆け出して行った。

27

***富士の樹海***
 
秋月信彦は己の中に宿る、超常の五感を頼りに森を進んでいた。
いや…「突き動かされて」と言うべきなのかもしれない。
すでに周囲の景色は、鬱蒼と生い茂る木々に覆われ、日中であるにも
関わらず頭上からの光は遮られている…不気味な程の静寂が青年の
息遣いと足音だけに反応している。まるで命ある者全てが活動を停止
したかのように、辺りには生物の息吹きの欠片も感じられない。
感じるのは唯一つ―――…

おそらく自分だけが感知できる魑魅魍魎の咆哮。
それが確実に近づいている…いや、すでに“奴ら”の領域内のようだ。

信彦「ケダモノめ……姿を見せたらどうだ」
怪物「――餌ガイルゾ オレタチノ餌ダ…グゲゲゲゲ!!」

鋭い叫び声が飛びすさった。澱んだ大気を伝わって、
その叫び声は無数の魔物達を呼び集める。

怪物「…餌ダ、餌ダ 食ワセロ…食わせろオオオオオ!!!」

この星の生命という生命を食らい尽くすまで、宴をやめぬ悪鬼共が、
飢えた叫び声を上げ森の木々の間から一目散に集まって来る。
その光景はさながらこの世の地獄の様相を呈しており、この青年が
何処にでもいる「普通の若者」ならすでに正気を失っていただろう。
しかし彼は普通の若者とは決定的に異なっていた。

こんな悪夢そのものが具現化したような光景を目の当たりにしても、
恐怖などという感情は彼には微塵も湧いて来ないのだ。
それは「狩る側」の動物が獲物に囲まれようと微動だにしないのと近い……
青年――秋月信彦は「地獄」の渦中へと自ら足を踏み入れる。

信彦「私を食いたいか。愚かなことを―――」

なんだ…? 体の奥底から滾って来るこのドス黒い衝動は……
俺はこいつらを不快だと感じているのか…
身の程を弁えず、我が前に……立ち塞がるこいつらを…………

蜂女ズー「ハハハハ……アーーハハハハハ!」
信彦「――!!」

28

突然冷たい女の笑い声が周囲に木霊する。
木々の間から、何本もの赤い帯が飛び出し彼の身体を縛った。
それは生きているかのように四肢に絡みつき、締め上げた。

見上げると、怪物達の頭上に白い衣服を纏った女が浮かんでいる。
女の唇がニヤリと笑いに歪み、その顔が異形の者へと変貌していく。
やがて女は巨大な雀蜂を思わせる目と羽、そして毒々しい縞模様に
全身を覆われた怪人、蜂女へと変わり果てた。

蜂女ズー「さぁお前達…思う存分こいつを貪り、飢えを満たすがいい。
 だけどウフフ…こいつの中にある月の石は食べるんじゃないよ。
 あの石はガライに…私達の王子に捧げるんだから。クスクス…」
信彦「俺の中にある…月の石だと…?」
蜂女ズー「アハハハ! そうよ…オマエにはもう必要ないでしょう?
 今のオマエはそこいらにいくらでもいる、ニンゲンのオトコと一緒…
 ニンゲンって可愛い生物よねぇ…脆くてすぐに壊れるの。
 これから私達の儀式が始まるわ…ウフフ、またたくさん壊れるでしょうね」
信彦「儀式…ではさしずめ俺はその生贄というわけか」
蜂女ズー「いいえ、生贄はもっと若い生物をフォッグマザーがお望みだわ。
 オマエは私達の王子にとって邪魔な存在…だから始末するのよ。
 シャドームーンになれない今の内にね…ウフフフフ…」
信彦「シャドー…ムーン…ち、違う…俺は…っ!!」
蜂女ズー「そうアナタはシャドームーン。でも今は脆い生物。
 アーーハハハハハハハハハ…おやりッ!!!」

蜂女の冷酷な笑い声が樹海に木霊し、無数の異形達が飛び掛った。
生々しく飛び散る鮮血、赤く血に染まった人肉、死に際の生への執着に
満ち満ちた生命エネルギーは、彼らにとってどんなにか甘美な味がするだろう。

その魔物たちの甘やかな期待を…凄絶なる“力”が、微塵に打ち砕いた。
空を、大地を震わせて、青年の体から迸る蒼い閃光は怪物の数体を吹き飛ばし、
光を浴びた魔物は青白い炎に包まれ砕け散った。
文字通り「消滅」したのである。後には、白い粉しか残っていない………

恐怖が、地を這う異形達に充満した。

怪物「グゲゲゲ…オウダ オウノチカラダ…ゲ…ゲ…ゲ…」
 
じわじわと、怪物共が後ずさる。

29

蜂女ズー「そ、そんなハズは! …うっ?」

蜂女の呪縛を破り、信彦はすでに怪人の頭上へ跳躍していた。
そして蜂女の頭に付いている翅の片方を力任せに毟り取る。

蜂女ズー「ギャァァァァッ!!」

バランスを崩し、蜂女は近くの巨木に激突して地面に転がる。
翅を千切られ悶える怪人を…青年は冷ややかに見下ろしていた。

信彦「人間が脆いと言ったな…だが、俺にとってはお前らも
 同じようだが…? 何だこの力は…何故こんな力が出せるのだ…」

銀の戦士「お前は改造人間の王として君臨する栄光の男だからだ」

秋月信彦の眼前に、あの夢に出て来る銀の戦士が立っている。
もはや幻覚なのかどうかさえ定かでないが、“そいつ”が己の中にいる
もう一人の自分自身だという事だけは理解できた。

銀の戦士「私を受け入れろ…そして小賢しい羽虫共を殲滅するのだ。
 憎むがいい。呪うがいい。お前の前を飛び交う虫ケラは全て抹殺しろ…
 そして今度こそ掴み取るのだ…次期創世王の座をな!!」

信彦「お前を受け入れろだと…断る。そうすればまた、俺はあいつと…
 俺は人間だ! お前を受け入れるくらいなら、このまま人として死を選ぶ!」

銀の戦士「フフフ…嘘はいかんな。私はお前なのだぞ……?
 お前にはこの黄泉帰りし魂で成さねばならぬ事があるのではないか…?
 こんなところで下衆共を相手に果てるというのか…?
 …私が、そしてお前が。殺さねばならぬ男をお前はよく知っているはずだ。
 その男の名は―――仮面ライダーBLACK、南光太郎!!」

信彦「!!…仮面ライダー…光太郎…そうだ。あの黒い戦士、あの男は…」

銀の戦士「そうだ。奴を葬るのはお前であり、この私だ!
 …それに信彦よ。このままではあの少女も危ないようだぞ…クククク…」

信彦「何…!? あの子だけは…あの兄妹だけは―――
 もう二度と…奪わせはしない!!」

凄まじい閃光が、樹海の闇を劈き、眩い光が広がっていく。
轟音と共に地響きが大地を揺るがし……その光がやがて消えていった。

そこに―――世紀王シャドームーンは立っていた。
緑色の複眼を備える銀のマスク。額には三つのセンサーが不規則に点滅している。
西洋の騎士を想起させる白銀の強化皮膚に覆われた体。腹部には黒い装甲で
覆われたベルトがあり、その中心部には蒼く輝く月の石、キングストーンが煌く。

―ガシャン…ッ
無機質な金属音を鳴らし、白銀の戦士が周囲の怪物共を見回し告げた。

シャドームーン「我が名は…世紀王シャドームーン…!! 」
怪物「キキィッ ゲッゲッ グゲゲゲゲッ…」

恐怖と畏怖の念がないまぜになって、辺りを支配している。
 
シャドームーン「このキングストーンを奪うと言ったか。
 貴様ら風情が取れるものなら、取ってみるがいい…」
 
全身から漲る闘気。ゆらりと一歩、影の王子は足を踏み出した。
蜘蛛の子を散らして、異形の者達は逃げ惑う。

30

***フォッグマザー内部***
 
フォッグ「…ギ…アアアアア!!  く、苦しい~…っ!」
ガライ「マザー!?」
フォッグ「おのれシャドームーン……覚醒したか…私をここまで苦しめる
 この力は、まさか…あの大地の精霊エネルギーと同じ…うっ…グウウウウ!!」
ガライ「マザー!!……チィィィィ、許さんぞ…元は下等な生物の分際で!
 ご安心下さいマザー。貴女のその苦しみ、すぐにこのガライが消し去って
 御覧に入れましょう。」


***富士山麓付近***
 
一方その頃―――
かつて地空人によって仮面ライダーJに生まれ変わったカメラマン・瀬川耕司は、
軋み始めた空と大地の声に耳を傾け、各地で頻発する不可思議な現象を
独自に調査して各地を旅していた。

その中には、死んだの人間が突然目の前に現れるという奇妙な報告もあった…
過去にフォッグマザーと知られざる激戦を繰り広げた彼は、この富士一帯に
覚えのある邪悪な波動を察知し、足を踏み入れたのである。

耕司「大地が鳴いている…地球の生命が、救いを求めている!
 このところ世界各地で怪奇現象の報告が後を絶たない……
 あの時と同じだ。地空人が俺に発したテレパシーでは、
 倒したはずのフォッグマザーが復活したと告げていた。くそっ!
 今頃なんでまた、あいつらが生き返って来たんだ……!?
 だが俺は地球の叫びを無視するわけにはいかない。
 もう一度フォッグの侵略から地球の生命を守ってみせる!!」

シャドウ「――ならすぐに麓の牧場に急ぐことだな」
耕司「―…!? 何者だっ!」

一陣の風と共に、巨大なスペードのキングが目の前に現れ、
トランプカードの裏側からジェネラルシャドウが出現した。

シャドウ「お前が大地の精霊の力、Jパワーを宿す仮面ライダーJか。
 俺はGショッカーのジェネラルシャドウ。お見知りおき願おう…」
耕司「Gショッカー! 地空人が俺に警告した新たな脅威とは、お前達の事だな。
 倒したはずのフォッグマザーを復活させたのもお前らの仕業か!」
シャドウ「さぁな。それは俺には分かりかねる」
耕司「……?」
シャドウ「そんな事より…いいのかねライダーJ。俺のトランプ占いによれば、
 間も無くこの付近の人間達に魔の手が伸びようとしているのだが。
 フォッグマザーは大孵化に向け、再び無垢な少女を生贄にするそうだぞ?」
耕司「なんだと!!まさか…あの女の子が狙われているのか!?」
シャドウ「ほう、すでに会っていたのかね」
耕司「ここへ来る途中、奇妙な程に生命力の輝きに満ちた花畑に出会った…
 あの子は銀色の人がそこで寝ていたからだと言っていたが…」

シャドウ「…フッ……。(銀色の…クククなるほど、そういう事か…)
 なら急いで駆け付けねば、何もかも死に絶える事になるぞ…
 その少女も、花も、虫も、それを育んでいる土もな…」
耕司「待てっ! ゼネラルシャドーとか言ったな… 
 何故、わざわざ俺に知らせてくれたんだ?」
シャドウ「まるで人質でもとるようなやり方は、どうにも気に食わん性分でね…
 俺はGショッカーに属してはいるが、勝手気ままにやらせてもらってるのでな。
 むしろフォッグの面々は、俺の仕事の邪魔になっている…と言うべきかな…フフ」
耕司「組織の一員なのに、勝手気まま…? 顔と一緒で変な奴だなあ」
シャドウ「クッ…! 顔の事は余計だっ。 ああ、それから……
 俺の名はジェネラルシャドウだッッ!! ゼネラルシャドーではなーい!!
 まったく…イントネーションに気をつけてくれたまえ。ではごきげんよう」

再び一陣の風が通り過ぎたかと思うと、舞い上がるトランプを残して
白い改造魔人は消えて行った。

耕司「……悪の組織にも、いろんな奴がいるもんだ。
 おっと、急がなくては… ジェイクロッサー!!」

瀬川耕司は傍らに停車していたオフロードバイクのアクセルに手を掛けた。
彼の腹部から精霊エネルギー・Jパワーが輝きを放ち始める。
するとバイクはバッタを模したようなフロントカウルを持つ「ジェイクロッサー」へ
と姿を変え、山麓の牧場に向かって疾走して行った。


△秋月信彦→眠ってた世紀王の人格がついに覚醒。しかし、心の奥底には…。
○瀬川耕司→柴田茜を救う為、牧場に向かう
●ジェネラルシャドウ→本人の美学から瀬川耕司に少女の危機を告げる。
●フォッグマザー→シャドームーンにJパワーと近しいものを感じ苦しむ。
●ガライ王子→シャドームーン抹殺に自ら出撃。
●蜂女ズー→覚醒したシャドームーンの覇気に戦慄する。
●トカゲ男アギト→大孵化の儀式に必要な生贄として、柴田茜に目をつける。

31

【今回の新規登場】
○瀬川耕司=仮面ライダーJ(仮面ライダーJ)
自然を愛する心を持つ、フリーカメラマン。以前は野鳥を中心に全国の山や森で取材していた。
フォッグマザー襲来の折、生贄に選ばれた少女・木村加那を守ろうとして命を落とす。
地空人と呼ばれる地底に生きる民の手で蘇生改造手術を施され、 大地の精霊エネルギー
「Jパワー」を宿す戦士・仮面ライダーJとして生まれ変わった。その名が示す通り、40メートルの
巨人へと変身する力を持つ。フォッグ撃滅後は元通りカメラマンとしての生活に戻っていたが、
地空人より新たな脅威が地球に迫りつつある事を告げられ、個人的に世界各地で起き始め
ている怪現象を調査していた。

●フォッグマザー(仮面ライダーJ)
太古から宇宙に災厄を齎し続けている邪悪な生命体。
巨大機械獣母艦フォッグマザーの深奥部に醜悪な本体が潜んでいる。
内部には無数の怪物達の卵を宿し、大孵化を行ってその星の生物を食らい尽くす。
大地のパワーで巨大化した仮面ライダーJのライダーキックで滅ぼされ、母艦もろとも
爆発四散した。「黄泉帰り」後にGショッカー闇女王同盟に参画している。
フォッグの王子ガライを次期創世王に推しており、 それが成就した暁にはGショッカーの
偉大なるマザーとして君臨する日を夢見ている。次期創世王の証の一つ「月の石」を持つ
シャドームーンを一番の邪魔者と見做しており、覚醒前の秋月信彦の闇討ちを計画する。

●コブラ男ガライ(仮面ライダーJ)
フォッグマザーが生み出した怪物軍団の王子。「自分以外の生物は皆すぐに壊れる」
と評し、冷酷で残忍な性格。仲間の死にすら表情一つ変えることはない。
世紀王候補としてバトルファイトを勝ち抜き、フォッグマザーを支配者に据えるのが望み。
シャドームーンには異様な敵対心を持っている(?)

●蜂女ズー(仮面ライダーJ)
フォッグマザーが生み出した怪物軍団幹部格の一人。ガライ同様に冷酷な性格で
人間の命など塵同然と見做している。王子には忠誠心が厚く、人間の女性に近い
淡い感情を抱いていたような側面もある。
先に孵化したばかりの怪物達を率い、秋月信彦を襲撃するが……。

●トカゲ男アギト(仮面ライダーJ)
フォッグマザーが生み出した怪物軍団幹部格の一人。人間体は初老の男風であり、
密かにマドーのガイラー将軍に容姿が似ていると噂されている。
3人の中では一番怪物の本性を前面に曝け出しやすい性格のようだ。
瀬川耕司を崖下に突き落として殺害した張本人でもある。
生贄の儀式のために柴田茜を狙う。


『復活へのレース』

作者・凱聖クールギン

32

V3とゲルドリングの交戦から数時間後――。

風見志郎が運転する赤いジープは、
助手席に結城丈二、後部座席にメタルダーとスプリンガーを乗せ山道を進んでいた。
舗装されていない砂利道は路面状態が悪く、車体がガタガタと揺れている。

スプリンガー「仮面ライダー、って言ったか…。
 あんた達はメタルダーを知ってるのかい?」
風見「いや、前から知っていた訳じゃないんだがね。
 色々と調べている内に、君達の情報に行き着いたのさ」
結城「アメリカにいる本郷さん――仮面ライダー1号から連絡があったんだ。
 俺達仮面ライダーが過去に倒して来た悪の組織……いや、彼らだけじゃない。
 これまでこの世界に現れたあらゆる闇の軍団が蘇って結集し、再び動き出している、と」
メタルダー「それが、タグスキーの言っていた…」
結城「そう、ガイスト・ショッカー――新たなる人類の脅威だ」

RXが日本で、1号と2号がアメリカでGショッカーと交わした戦闘について、
風見と結城は自分達が知らされた情報を語った。
それはこれから全世界――いや、全宇宙を包もうとしている空前の動乱の序曲なのだ。

結城「俺達は本郷さんから連絡を受けて、日本でGショッカーの行動を調査していた。
 そして行き当たったのが、あのネロス帝国の存在という訳だ。
 奴らは君を回収して改造し、悪の戦闘兵器に生まれ変わらせる事を企んでいた」
スプリンガー「だからあんた達は先手を打ってメタルダーを匿い、
 メタルダーがネロスの手に落ちるのを防ごうとしたのか」
結城「そう。そして流星君、もし君が望むなら、
 俺達は君を修理し、正義の超人機としての君の力を取り戻す手助けをしたい」
メタルダー「僕の超重力エネルギー装置を、直してくれるのか!?」
結城「ああ。Gショッカーは計り知れない程の巨大な帝国…。
 俺達は、このかつてない戦いに君にも力を貸してほしいんだ。
 そのために俺達が力になれるなら喜んで協力する。
 もう一度、超人機となって俺達と共に戦ってくれるか、メタルダー」
メタルダー「勿論だ。ありがとう」

結城が差し出した右手を、メタルダーは強く握る。

スプリンガー「でもあんた達、腕は確かなんだろうな?
 言っとくが、古賀博士の作ったメタルダーの回路は只物じゃないぜ」
結城「実は俺はデストロンの科学班出身でね。
 古賀博士の超人機計画については、デストロン時代に資料を入手している。
 それをロボット工学者の知人に見せたら、
 確かに凄い回路だが、まあ何とかしてみせるって答えをもらったよ」
風見「結城には科学者繋がりで人脈があるからな。
 今回はその人の力を大いに借りる事になりそうだ。
 また新しい仲間にも会えるだろうから、楽しみにしとくといいぜ」
スプリンガー「へぇ、でも何でそのデストロンってのが古賀博士の資料を持ってたんだ?」
風見「デストロンの源流はショッカー。ショッカーの母体の一つはナチスの残党だ。
 超人機計画が戦時中の日本で進められていたものなら、
 ナチスの連中がそれを知っていてもおかしくはないだろ?」

第二次世界大戦中、ドイツでは改造人間、日本では超人機が時を同じくして開発されていた。
当時のドイツと日本が同盟国だった事を考えれば、
両国の軍部科学班の間でそれらに関する情報や技術の交換があっても不思議ではない。

スプリンガー「じゃあメタルダーとあんた達仮面ライダーも、
 言ってみりゃちょっとした親戚みたいなモンって訳か。
 いろんな縁があるもんだな…」

ジープが大きく揺れて砂利道からアスファルトの舗装道路へ入る。
街が近い。風見がアクセルを踏み込むと、ジープは硬い路面を蹴るように一気に加速した。

33

ネロス帝国基地・ゴーストバンク。
そこは正に、百鬼魔界と呼ぶべき悪の牙城。
ヨロイ軍団、戦闘ロボット軍団、モンスター軍団、機甲軍団――。
4軍団、総勢30名を超える精鋭の軍団員達が帝王ゴッドネロスの玉座の前を埋めている。
「――ネロス! ネロス! ネロス! ネロス!」
帝王とその帝国を賛美する軍団員達の声がひとしきり収まると、
ヨロイ軍団凱聖・クールギンは一歩進み出てゴッドネロスに報告を行った。

クールギン「帝王に申し上げます。
 我が部下、タグスキーとタグスロンによるメタルダーへの降伏勧告は失敗に終わり、
 メタルダーは帝王への臣従を拒否。
 タグ兄弟はモンスター軍団及び機甲軍団の助力を借りてメタルダー抹殺を図りましたが、
 仮面ライダーV3に妨害され、これも失敗したとの事に御座います」

モンスター軍団及び機甲軍団の助力を借りて――。
さりげなく抜け駆けを強調して報告を行ったクールギン。
彼の隣に並び立つゲルドリングとドランガーは平静を装いながらもややたじろぐ。

ゴッドネロス「メタルダーめ…。
 あくまでも余に楯突くつもりならば、生かしてはおけん。
 直ちに行方を追い、仮面ライダーともども抹殺せよ!」
 「オーッ! ゴッド・ネロス! ゴッド・ネロス!」

ゴッドネロスの命令に、全軍団員が拳を突き上げて応えた。

ドランガー「では直ちにバーベリィとストローブを飛ばし、
 メタルダーの行方を突き止めます!」
ゲルドリング「どうやらワシらモンスター軍団に復讐のチャンスが来たようじゃけんのう。
 今度こそメタルダーと、あの憎たらしいV3の首を引っこ抜いてやるんじゃ!」

威勢良く言ったゲルドリングだが、ゴッドネロスは沈黙し答えない。
そこへ戦闘ロボット軍団凱聖・バルスキーが口を挟んだ。

バルスキー「抜け駆けが失敗しておきながら未練がましいぞゲルドリング。
 帝王、ここは我ら戦闘ロボット軍団にお任せを」
ゲルドリング「何やてぇ!?」
バルスキー「我ら戦闘ロボット軍団は帝王の御命令に従い戦力を温存した。
 モンスター軍団が仮面ライダーV3に敗れた今こそ、我々の出番であるはずだ」
ゲルドリング「おうおう、言いよるなぁバルスキー。
 だったら勝負じゃ! ガマドーン!!」

ゲルドリングに呼ばれて、群衆の中から大柄なフグのような怪物が進み出る。
その名はモンスター軍団雄闘・ガマドーン。

バルスキー「いいだろう。ジャース!」

バルスキーに指名され、2門のビーム砲を肩に掛けた白い装甲の機械兵が推参する。
戦闘ロボット軍団雄闘・ジャースである。

クールギン「よし、勝負を始めよ!」

クールギンの一声で軍団員達が素早く下がって人の輪を作り、
その中でガマドーンとジャースが対峙する。
ネロス帝国独自の風習、刺客の人選を決めるための御前試合が開始された。

ジャース「悪いが、一撃で終わらせてもらうぞ」
ガマドーン「おっと、そうは行かねえ!」

両肩のビーム砲にエネルギーをチャージしたジャースに向けて、
ガマドーンは口から粘性のスライムを吐き出し、左右の砲塔に浴びせかける。
ビーム砲に蓋をされてたじろぐジャースに、ガマドーンは左手の鞭を巻きつかせた。

ジャース「くっ…!」
ガマドーン「ギャハハハハ! これでお前さんの武器は撃てねえだろう。
 さあて、今度は俺様の番だなあ!」

右手を巨大な鋏に変え、動きを封じられたジャースにじわじわと迫るガマドーン。
鞭から流れる電撃がジャースの回路を痛めつける。
だが至近距離まで迫った所で、ジャースは突如、口から隠し武器の火炎を噴射。
ガマドーンにダメージを与えると同時に、絡まっていた左手の鞭を焼き切った。

ガマドーン「グハァッ!!」
ジャース「油断したな。こんな物は子供騙しだ!」

ジャースの砲塔に紫電がほどばしり、付着したスライムを瞬時に蒸発させる。
2門のビーム砲が、怯んだガマドーンに照準を合わせた。

クールギン「それまで! ジャースの勝ちだ」

ジャースの光線が発射される直前、クールギンがストップをかけ勝敗を裁いた。
囲みの戦闘ロボット軍団員達が歓声を上げ、モンスター軍団員達は悔しそうに嘆息する。

ゲルドリング「ええ~い、おんどれぇ!」
バルスキー「ようし、よくやったジャース!」

囲みが集束して再び全軍団員が整列する。
ゴッドネロスの玉座の前に、勝者のジャースは恭しく進み出て跪いた。

ゴッドネロス「雄闘ジャース…。必ず、メタルダーを討ち取るのだ!」
ジャース「ははっ!」

34

***東京・代々木***

それは言うなれば、六本の足を宙に浮かせながら残る二本の足で直立する蛸の怪物。
突如、東京都内に出現したGショッカーの殺戮者――。
グロンギ族のタコ種怪人ズ・ダーコ・ギは、
通行人を次々と襲い、口から吐く焼けるように熱い墨で跡形もなく溶かし殺害していた。

バルバ「バギング ゲギド ジバンゼ 
 バギング バギング ゲヅン ビンザ(72時間で567人だ)」
ダーコ「パバデデ ギス(分かっている)」

バラのタトゥーの女――ラ・バルバ・デが今回のゲゲルの条件を復唱し、
そのまま遠くへ飛び退って死亡者のカウントを続ける。
彼らグロンギ族にとって、殺戮の数を競うゲゲルは遊戯であり、
また階級の昇進を決めるための儀式でもある。
72時間で567人。昼間の公園は存外に人気がなく、まだ1時間で37人しか殺していない――。
己に課せられたノルマを消化すべく、次の獲物を求めて彷徨い歩くズ・ダーコ・ギ。
触手のように揺れ動いていた足の一本に、飛来した一枚のカードが手裏剣の如く突き刺さった。

ダーコ「――ザセザ!?(誰だ!?)」

ズ・ダーコ・ギが振り向いた先に立っていた人影。
紫色の硬質なボディが陽光を眩しく反射し、ゴーグルに隠れた黄色の目が明るいライトのように点灯する。
人間ではない――。予期せぬ乱入者の出現にたじろぐズ・ダーコ・ギに向かって、
正義の威光を湛えた紫色のロボットは名乗った。

ジャンパーソン「JANPERSON, For Justice!」

腰のホルスターからジャンデジックを取り出し、
ズ・ダーコ・ギに向けて弾丸を連射する特捜ロボ・ジャンパーソン。
999連発のビーム弾が数秒の内に撃ち込まれ、激しい火花を散らす。
だが、ズ・ダーコ・ギはそれでも怯まず体当たりを仕掛けて来る。

ジャンパーソン「ジャスティック!」

素早く特殊警棒・ジャスティックに武器を持ち替え、接近戦に移るジャンパーソン。
電流を帯びたジャスティックとズ・ダーコ・ギの六本の足が何度も斬り結ぶ。
手数の多さで斬撃戦を圧倒するズ・ダーコ・ギだったが、
ジャスティックを何度も受け止めた足は次第に電撃に耐えられなくなり白煙を上げ始めた。

ダーコ「ボギヅゾ ブサゲ(こいつを喰らえ)!」

不利を悟り、後退して間合いを取り直したズ・ダーコ・ギは口から溶解墨を噴射。
咄嗟にかわそうとしたジャンパーソンだが、避け切れず右腕に墨を浴びてしまう。

ジャンパーソン「くっ…、腕が溶かされる!」

まるで熱湯をかけられたかのように右腕が熱い。
ジャンパーソンの右肘から下は表面が溶けて内部のメカニックもショートし、
指に力が入らなくなってジャスティックを地面に取り落とした。

ダーコ「ログ ヅギザ ビギセラギ(もう武器は握れまい)
 ドゾレゾ ガギデジャス(止めを刺してやる)!」

ダメージを受け苦しむジャンパーソンに、ズ・ダーコ・ギはじわじわとにじり寄る。

ダーコ「ギベ(死ね)!」

再び溶解墨を噴射しようとするズ・ダーコ・ギ。
だが次の瞬間、横から飛んで来た2発の弾丸がズ・ダーコ・ギの口元を撃った。

35

黒と銀のメタリックボディが逆光に霞む。
二丁拳銃の射撃の名手、ガンマンロボ・ガンギブソンが、
自慢の愛銃・ガンボルバーとブローソンを両手に構えこちらを見据えていた。

ジャンパーソン「――ガンギブソン!」
ガンギブソン「Hey! 大丈夫かジャンパーソン!」

ジャンパーソン「よし、ニーキックミサイル!」

ズ・ダーコ・ギの一瞬の隙を突き、ジャンパーソンは折り曲げた右足の膝からミサイルを発射。
至近距離から炸裂したミサイルの爆発が、ズ・ダーコ・ギを吹き飛ばした。

ガンギブソン「罪のない人達を大勢殺しやがって…。
 覚悟しろよ、蛸の怪物野郎!」

倒れたズ・ダーコ・ギに向けて、ガンギブソンはガンボルバーを発砲。
ガンボルバーのホーミングブリットは発射後、銃にある十字キーで遠隔操作が可能なのだ。

ダーコ「グァァァァッ!!」

ガンギブソンに操られ魔球のような軌道を描いた弾丸は、
ズ・ダーコ・ギの口から体内へ飛び込んで着弾。
ズ・ダーコ・ギの墨袋を中から破裂させ、溶解墨を体内に漏れ出させた。

ダーコ「ギ…グォォ……ガァッ…!」

口からどす黒い墨をどくどくと流し、それに自らの身を焼かれて溶けて行くズ・ダーコ・ギ。

ゲゲル失敗――。
ムセギジャジャ(ゲゲルプレイヤー)の死を見届けたラ・バルバ・デは、
無言のまま素早くその場を立ち去った。

ガンギブソン「待てっ!」

不審なバラのタトゥーの女を追おうとするガンギブソンだが、敢えなく見失い、
負傷しているジャンパーソンの元へ駆け戻る。

ガンギブソン「酷くやられたな。大丈夫かジャンパーソン」
ジャンパーソン「ああ…。腕を溶かされた。
 帰ってかおるに修理してもらおう」
ガンギブソン「ああ、かおるだったら今は留守だぜ?
 何でも、ロボットを修理してくれって依頼が誰かさんから来たそうでな。
 新しい仲間になるから後で紹介するとか言いながら、朝からどっか行っちまったよ」
ジャンパーソン「新しい仲間…」
ガンギブソン「詳しい事は俺も知らねえけどな。
 しかし、さっきの奴らは一体何者だったんだ?」
ジャンパーソン「分からない。だが今までの敵とは明らかに違う相手だった…」

新たな仲間、新たな敵。
ジャンパーソンとガンギブソンにとっても、かつてない戦いの火蓋が切られつつあったのである。

36

風見志郎が運転するジープは、郊外にある秘密のアジトに到着した。
ここは結城丈二の研究所も兼ねていて、
地下室には改造人間やロボットを修理するための機械類が一通り揃っている。
結城が地下室のドアを開けると、そこには白衣を纏った一人の女性の姿があった。

三枝「お待ちしていました、結城さん。
 無事にメタルダーの身柄が確保出来たんですね」
結城「三枝さん、しばらく。
 …紹介しよう。元国連所属のロボット工学者・三枝かおる博士だ。
 彼女は以前、あのジャンパーソンの開発にも携わっていてね」
メタルダー「ジャンパーソン?」
風見「知らないか? 君と同じ正義のロボット戦士さ。
 まあ、俺もまだ実際に会った事はないんだが、今度の戦いではきっと手を組む機会もあるだろう」
三枝「あなたがメタルダーね。話は結城さんから聞いているわ。
 ジャンパーソン達もあなたに会えたらきっと喜ぶはずよ。
 それにしても、第二次大戦中に古賀博士が作った超人機…。興味あるわ~」
メタルダー「…よろしくお願いします」

ロボット工学者としての好奇心を隠さずボディに手を触れてくる三枝にやや戸惑いながら、
メタルダーは小さく頭を下げた。

三枝「そうそう、それで、
 結城さんに依頼されていた超重力エネルギー装置とその制御装置ですけど」

そう言って足下の大きなアタッシュケースを開け、中の装置を見せる三枝。
メタルダーの体内に埋め込まれている、今は傷付いた装置と全く同じ物がそこにあった。

風見「おお、完成したんだ」
三枝「苦労したんですけどね…。
 戦時中の開発とは思えないほど、複雑で高度な回路でしたから」
結城「ありがとう。さすがジャンパーソンを造った三枝さんだ。
 これでメタルダーの力を再生する事が出来る」
メタルダー「これは……僕の超重力エネルギー装置」
結城「俺が三枝さんに頼んで作ってもらった、君のエネルギーを司る新しい装置だ。
 破壊された君の古いエネルギー装置を取り外し、こいつを代わりにセットする」
三枝「私も手伝わせて頂くわ…。よろしくねメタルダー」
メタルダー「はい、こちらこそ、お願いします!」
スプリンガー「おいおい、こりゃ本気でメタルダーが完全復活かよ…。
 凄い……こいつは凄いぜ!」

こうしてメタルダー復活のための手術が開始された。
手術台の上に横たわり、麻酔をかけられたかのように機能を一時停止するメタルダー。
結城と三枝はその胸板を取り外し、内蔵された超重力エネルギー装置の切除にかかる。
それが完了すると、今度は新しい装置を代わりに入れ、周囲の電線と装置を接続する作業。
加えて、タグスキーの剣で傷付いたボディの修理も…。
手術は数時間に及んだ。


その頃、外では――。

バーベリィ「間違いない。メタルダーはここだ」

駐車していた赤いジープを見止め、ネロス帝国の機甲軍団雄闘・バーベリィが拳を握る。
軍団長ドランガーの指令でメタルダーの行方を空から追っていた彼は、
背中のプロペラを回転させて旋回しつつ、刺客として待機中のジャースに連絡を入れた。

バーベリィ「こちらバーベリィ。メタルダーの居場所はポイント14だ」
ジャース「了解。直ちに急行する!」

連絡を受け、ダークガンキャリーに乗り込むジャース。
純白の砲兵を乗せ、漆黒の戦闘用ワゴン車はポイント14にある結城の研究所へ向かった。

37

同時刻――。
数年振りに日本へ帰国した筑波洋=スカイライダーはV3達と合流すべく、
山林を貫く国道をバイクで急いでいた。
Gショッカーというかつてない巨大な悪の鼓動を察知して、
世界各地に散っていた仮面ライダー達も徐々に集結し臨戦態勢を固めつつあったのだ。

筑波「ん、あれは…?」

普通の人間なら聞き逃すであろう小さな風切り音を上空から耳にキャッチし、バイクを止める筑波。
視線を上げると、白い雲の隙間を抜けて行く謎の黒い飛行物体が見える。
まるでヘリコプターを擬人化したような姿のそれに、筑波は直感的に悪の気を感じた。

筑波「さてはGショッカーか…。よし、追ってみよう」

豪快にエンジンを吹かし、筑波のバイクは再び勢い良く走り出した。

 ◇  ◇  ◇

昼間の山道は車一つ通らず、閑散としている。
だからこそ、そこを疾走する一台のバイクの音にバーベリィは敏感に反応した。

バーベリィ「さっきから俺を追っているな…? 何者だ」

体内のセンサーをバイクの運転手に定め、分析する。
通常の人間からは感知されないメカニック反応――相手は改造人間である。

バーベリィ「ふむ、さては仮面ライダーの仲間だな?
 ようし、血祭りに上げてやる!」

ゴーストバンクへ帰還するのに丁度良い手土産が転がって来たようだ。
素早く旋回して方向転換し、バーベリィはそのバイクに正面からミサイルを発射。
標的へ向け正確な軌道を描いたミサイルは、着弾と同時に大爆発を起こした。

バーベリィ「やった! 仮面ライダーを一匹討ち取ったぞ!」

だが、濛々と立ち込める爆煙の中から、バイクのエンジン音が更に唸りを上げて響く。
バーベリィが異変を感じた瞬間、煙の中で一筋の閃光がスパークした。

筑波「――スカイ・変身!!」

飛蝗を模した明るい緑色のマスク、赤く大きな複眼。
スカイターボで爆煙の中を突破して、仮面ライダー8号・スカイライダーが姿を現した。

バーベリィ「喰らえ!」

腕からミサイルを連射するバーベリィ。
疾走するスカイターボの前後左右で爆発が連続する。

スカイライダー「トォッ!!」

咄嗟にスカイターボからジャンプして爆撃を逃れるスカイライダー。
空中で両手を広げ飛行姿勢に入ると、そのまま高度をどんどん上げて行く。
セイリングジャンプ――。
ベルトに備わった重力低減装置の力で、スカイライダーはその名の通り空を飛ぶ。

バーベリィ「よし、来い!」
スカイライダー「行くぞ!」

ヘリコプター型ロボットのバーベリィにとっても空中戦は本領である。
両者は交錯しながら壮絶なシザーズを展開した。
やがて、振り切ろうと加速したスカイライダーの背後をバーベリィが取る形となり、
高度を下げて山陰に隠れようとするスカイライダーを発射されたミサイルが追尾。
谷間に起こった大爆発が、瞬く間にスカイライダーを呑み込んだ。

バーベリィ「どうだ!」

勝利を確信するバーベリィ。
だが、爆発を潜り抜けたスカイライダーは山を大きく一周して側面に回り、
斜め下からバーベリィを奇襲の体当たりで吹っ飛ばした!

バーベリィ「おおっ…!」

敵を突き抜けるようにして、更に上空高く飛び上がるスカイライダー。
怯んで飛行が不安定になっているバーベリィに向けて、今度は一気に急降下する。

スカイライダー「スカイ・バックドロップ!」
バーベリィ「ぐわぁぁぁぁっ!!」

強烈なバックドロップの一撃がバーベリィの背中を打つ。
背中のプロペラを叩き折られて、バーベリィは黒煙を上げながら墜落して行った。

スカイライダー「Gショッカーは動き出している…。
 急いで風見先輩達と合流した方が良さそうだな」

自動操縦で走り続けていたスカイターボに空から飛び乗って、
スカイライダーはV3達が待つアジトへ向かった。

38

○仮面ライダーV3&ライダーマン→メタルダーをアジトへ迎え、三枝かおると合流。
 メタルダーの新エネルギー回路の接続手術を行う。
○スカイライダー→バーベリィを発見して撃墜し、V3達の元へ急ぐ。
○ジャンパーソン&ガンギブソン→代々木でゲゲルを行っていたズ・ダーコ・ギを倒す。
●ネロス帝国→メタルダー抹殺の刺客に雄闘ジャースを選出し向かわせる。
 バーベリィがメタルダーの居場所を突き止めるがスカイライダーに遭遇し撃墜される。
●グロンギ族→ズ・ダーコ・ギが代々木でゲゲルを行うが、
 ジャンパーソンとガンギブソンに倒される。

【今回の新規登場】
○ジャンパーソン(特捜ロボ ジャンパーソン)
 警視庁がロボット犯罪の鎮圧のため開発した戦闘ロボット・MX-A1を、
 三枝かおるが密かに改修して生まれ変わらせた正義のロボットヒーロー。
 ギルド、ネオギルド、帯刀コンツェルン、スーパーサイエンスネットワークという 四つの悪の組織と戦った。必殺武器はジックキャノン。


○ガンギブソン(特捜ロボ ジャンパーソン)
 ネオギルドに開発された暗殺用のガンマンロボット。
 恋人ロボットのキャロルを破壊された復讐心からネオギルドに反旗を翻し、
 ジャンパーソンと厚い友情に結ばれて共闘するようになった。
 ガンボルバーとブローソンの二丁拳銃を愛用する射撃の名手。


○三枝かおる(特捜ロボ ジャンパーソン)
 天才的な頭脳を持つ若きロボット工学者。
 MX-A1の開発に参加し、暴走し廃棄されたMX-A1をジャンパーソンとして生まれ変わらせた。
 ジャンパーソンの母親的存在として整備や修理を担当する。


○筑波洋=スカイライダー(新・仮面ライダー)
 ネオショッカーに改造され誕生した仮面ライダー8号。
 元は城北大学の学生で、ハンググライダー部に所属していた。
 その名の通り、重力低減装置によるセイリングジャンプで大空を飛行する事が可能。
 後に7人の先輩ライダーによる特訓を経て更なるパワーアップを遂げる。


●桐原剛造=帝王ゴッドネロス(超人機メタルダー)
 ネロス帝国を率いる悪の帝王。

 表の顔は桐原コンツェルンの若き総帥で、慈善事業家として知られているが、その正体は極東軍事裁判で処刑されたはずの旧日本軍技術少尉・村木國夫が整形と改造手術により悪の魔王として生まれ変わった姿である。自らの科学技術を用いてネロス帝国の軍団員達を創造し、世界支配を目論む。


●凱聖クールギン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・ヨロイ軍団凱聖。
 帝国一の剣士で、実質的な最高幹部として帝王ゴッドネロスの信頼も厚い。
 ゴッドネロスの影武者として、仮面の下の素顔は桐原剛造と同じに整形されている。


●凱聖バルスキー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団凱聖。
 格闘能力に優れ、ビームや指先のミサイルなど多彩な武器を装備。
 ロボットながら部下思いで情に厚く、敵であるメタルダーに共感している面もある。


●凱聖ドランガー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団凱聖。
 強力な重火器を全身に搭載した武器の塊のようなロボットで、大剣も振るう。
 質実剛健とした武人肌で、ネロス帝国の番人として控える。


●雄闘ジャース(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団雄闘。
 肩に装備した2門のビーム砲を武器とし、機甲軍団にも匹敵する火力を誇る。


●雄闘ガマドーン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団雄闘。
 腕の触手からの高圧電流が主な武器。腕を鋏に変形させる事も出来る。
 口達者で、騙し討ちなどの卑劣な手段を得意とする。


●雄闘バーベリィ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団雄闘。
 プロペラ機の能力を持った自律型航空兵器で、偵察や空爆を主な任務とする。
 武器は腕に装備したミサイル。


●ズ・ダーコ・ギ(仮面ライダークウガ)
 グロンギ族・ズ階級ギ集団のタコ種型怪人。未確認生命体11号。
 口から吐く溶解墨を武器とする。劇中未登場。


●バラのタトゥーの女=ラ・バルバ・デ(仮面ライダークウガ)
 グロンギ族・ラ階級デ集団。未確認生命体B1号。
 優雅な人間の女性の姿で暗躍し、ゲゲルの監督と審判を務める。


『月と大地の邂逅』-3

作者・シャドームーン

39

***富士の樹海***


「ギシャアアア…ァァ!!」

人や動物のものではない、異質な悲鳴が樹海に響き渡る。
ほんの数分前までここは彼らにとって御馳走にありつける楽園のはずであった。
ところが今は、獲物であるはずの相手によって虐殺の宴が開かれている。

白銀の戦士が振るう破壊の閃光――「シャドービーム」は逃げ惑う怪物共を
次々と蒼炎に包み込み、一匹、二匹、数匹、数十匹と抹殺して行く。
それはもはや、一方的な殺戮の様相を呈していた。

ガシャンッ… ガシャン…ッ
この世ならざる者達の奏でる阿鼻叫喚の断末魔――――
それらが全て消え、再び静寂が辺りに訪れた時、無機質な金属音だけが
樹海に響き渡る。頭上の茂みの隙間から、僅かに差し込む陽光が
緑色の複眼に反射し、エメラルドグリーンの輝きを放っている。
影の王子は、眼前に立ち尽くす女怪人を見据えて冷ややかに語りかけた。

シャドームーン「どうした、蜂女…―――怖気づいたのか…?
 ならば服従せよ、怪人。…我が下僕共よ!!!」

ずしりと、重い声が響く。
 
ズー「う…っ? ア…ア…シャ、ドームーン…様…!?」

シャドームーンのマイティアイを直視してしまった蜂女は、
虚ろな表情を浮かべ膝から崩れ落ちそうになるが…
なんとか踏み止まり、ギィィッと下唇を噛み締めた。

蜂女ズー「クッ…! 私達の王子はガライだけよ!
 オ…、オ、オマエの思い通りには…ならない…!!」
 
世紀王の呪縛を拒絶した蜂女は、気力を振り絞り片方の翅で
空中高く舞い上がった。そして両手を眼下に突き出し、
エネルギー弾・パームニードルを連射する。

シャドームーン「死を選ぶか……」
 
シャドームーンは両肘のエルボートリガーを合わせ、赤い刀身を湛える
剣を二本出現させ両手に構えた。二刀の魔剣、シャドーセイバーが
降り注ぐパームニードルを弾き返し、周囲の木々に命中して爆発して行く。
防戦しながら緑のマイティアイで連射の隙を解析していた影の王子は、
ニードルの雨が止まった瞬間を狙い左手に持つ短剣を飛ばした。 

蜂女ズー「ギャァッ!!」

高速で飛ぶ短いシャドーセイバーが、蜂女の腹部を突き破った。
女怪人は貫れた腹から火花を噴出させ、方向感覚を失った羽虫のように
悶え苦しむ。そして錐揉みしながら地面に激突し、力無く横たわった…

シャドームーン「…他愛のない。命など脆いものだ…人も、魔も。
 命…? 私が以前見たことのある命とは、もっと輝きに満ちていた
 ような気がする……何故だ……」

刹那、影の王子の脳裏にはいくつかの顔がフラッシュバックしていた。
その中で憎悪と親しみを同時に感じる男と、一番最近に見たことが
あるような少女の顔が、何かを彼に訴えかけていた。
しかしその声は、殺気を放つ何者かの気配で掻き消される。

40

ガライ「オマエがセイキオウ・シャドームーンか。目障りな生物め」
 
シャドームーンは機械音と共に顔を上げ、殺気を向けて来た
敵を見据える。蜂女ズーの人間体と同じく、白い衣服を纏った長身の男。
フォッグマザーの慈愛を一身に受けて生まれ出でた怪物達の頂点に立つ者、
コブラ男ガライ王子は地面に横たわる瀕死の女怪人の傍へ降り立つ。

蜂女ズー「…ガ…ラ…イ…」

息も絶え絶えに、その女怪人は愛しげに己の王子の名を呼んだ。
次の瞬間、全身が蒼い炎に包まれ、先程の怪物達同様に消滅した。
白煙を上げる消炭と化した彼女を見て、ガライは首を捻った。

ガライ「――また、壊れたか。オマエはナゼ壊れない?」

フォッグの王子は、同族の死に表情一つ変える事もなく、
まるで関心が無いといった素振りで銀の戦士に鋭い眼差しを向ける。

シャドームーン「…教えてやろう。何故なら体内に蒼く輝く月の石を持つ、
 この世紀王シャドームーンこそが、完全なる生命体だからだ」
ガライ「完全ナル生命体…次期創世王になるのはこのワタシだ!!
 そして全宇宙を母なるフォッグマザーに捧げるノダ…グオオオ―ッ」

男の顔がグニャリと歪み、怪人に相応しい姿へと変貌を遂げる。
白い強化皮膚の鱗に覆われた怪人・コブラ男ガライが全身から禍々しい
殺気を放ち、澱みきった鈍い空気を切り裂くかのようである。

ガライ「セイキオウ・コウホにもうオマエなど必要ないノダ。ワタシこそがその
 キングストーンを持つに相応しい生物…死ねッ、シャドームーン!!!」
シャドームーン「貴様如き醜い怪人が、次期創世王だと…フフフフフ…
 器以上の物を欲する者は身を滅ぼす…ではフォッグマザーとやらには、
 このシャドームーンが相応しい末路をくれてやろう。来るがいい」


△シャドームーン→蜂女ズーを葬り、続いてガライと対決。
●蜂女ズー→シャドームーンに倒される
●コブラ男ガライ→フォッグの王子の誇りをかけてシャドームーンに勝負を挑む。 


『月と大地の邂逅』-4

作者・シャドームーン

41

***富士山麓・柴田牧場***


茜「あのお兄ちゃん、どこへ行っちゃったのかなぁ…」

過去にシャドームーンと関わりを持つ少女・柴田茜は、牧場付近に
美しく咲き乱れる花畑を見つめながら呟いた。ほんの15分ほど前、
ここを通りかかった青年カメラマンも、あのノブヒコと名乗った青年も、
自分が毎日欠かさず手入れをしていたこの花畑に関心を示し、
綺麗だと言ってくれた。それが彼女にはなにより嬉しかった。

「あの日」――――
仮面ライダーBLACKRXとの死闘の末、敗北を認めた影の王子
シャドームーンが、兄妹をこの場所に送り届け永遠の眠りについた日から、
彼の亡骸が横たわっていたこの土に咲く花は枯れる事がなかった。
彼女は幼いながらに、この花を大切にしていれば、いつかまた自分を救ってくれた
「銀色の人」に会えるかもしれない…そう願いながら花畑を見守って来たのである。

トカゲ男アギト「…この花から普通の生物にはない生命エネルギーを感じる…」
茜「えっ…? おじさんは、だあれ?」

少女が振り返ると、白衣を纏った初老の男が花畑を見下ろしていた。

トカゲ男アギト「イヤ…感じるのは、ここの土からか」
茜「ここのお花はね、いつまでも枯れないのよ」
 
トカゲ男アギト「カレない…壊れないというノカ?
  そんなハズはあるまい…ナゼナラバ…」
茜「あっ!」

その男は花に誘われて飛んで来た蝶を掴み取り、なんと口の中へ放り込んだ。
ブチッ…ブチッ…と蝶を噛み潰し、幽鬼のようなゾッとする表情でベロンと
舌を出して呻くような不気味な声を発する。

トカゲ男アギト「ナゼナラバ…この星の生物はミナ脆弱ダカラダ…
 オマエもすぐに壊れる」
茜「きゃあ―っ!! パ…!!」
トカゲ男アギト「グゥオオオオウッ!!」

男は奇声を上げ、血に飢えた獰猛な野獣のように四つん這いの体勢をとる。
肩が盛り上がり、鋭利な棘の生えた鱗状の皮膚が姿を現す。
人面が歪み、口は爬虫類のワニのように裂け、無数の鋭い牙が覗く。
本性を顕わにしたトカゲ男は、少女の悲鳴が父親に届く間も無く抱え上げ、
疾風のように走り出した。

42

その時。猛スピードで牧場から離れて行くトカゲ男の視界に、
バッタを模したオートバイで疾走して来る人影が飛び込んで来た。

ライダーJ「――トゥッ!!」
アギト「グゲェッ!」

真紅の複眼に緑の強化皮膚を纏う大地の戦士、仮面ライダーJ。
トカゲ男の横腹に愛車ジェイクロッサーで体当たりを食らわせ、
ライダーは怪人の手から離れた少女を受け止め、無事を確認して
ジェイクロッサーの後部座席に乗せる。
 
ライダーJ「フォッグめ! 貴様らにこの子は渡さんッ!!」
トカゲ男アギト「グゲゲゲ…キサマハ! オノレ…邪魔はさせんゾ」

トカゲ男のしなやかで強靭な尾が、ライダーJに襲いかかる。
以前この怪人と戦った経験のある大地の戦士は、素早い身のこなしで
尾の一撃を躱すとその尾を掴み、逆にジャイアントスイングで地面に
叩き付けながら投げ飛ばした。

怪人も負けてはいない。すぐに起き上がると勢い良く跳躍し、ライダーJの
頭上から飛び掛った。そのまま押し潰しにかかり、幾重にも生えた牙を持つ
大顎でライダーの頭部を噛み砕こうとしている。

ライダーJ「ぐわぁ…っ!!」
アギト「ガオオオウッ!!!」

眼前に迫る凶悪な大顎を両手で掴み、渾身の力を込めて引き裂く。
怪人はたまらず悲鳴を挙げて離れるが、お返しとばかりにライダーJの
胸に爪を浴びせる。胸部に爪痕状に走る火花、しかし彼は怯むことなく、
退散しようとしているトカゲ男に照準を合わせ、必殺技の体勢に入った。
左手を腰にあて、右手の指でアルファベット「J」を形作る――――
瞬間、腹部にある「コア」から、大地の精霊エネルギーが彼の全身に漲り始める。

ライダーJ「ライダーパァ―ンチ!!」

掛け声と共にジャンプし、強固な鱗もろとも怪人の体を閃光する拳が撃ち抜いた。

アギト「ウガァァァァアア―ッ!!」

トカゲ男は貫かれた皮膚の下から、黄緑色の体液を噴出させ転がる。
しばらく暴れていたが、やがて動かなくなってしまった…

ライダーJ「…ふぅ。茜ちゃんは…良かった、何処も怪我はないようだ。
 気を失っているのか…無理もない」
 
ライダーJは瀬川耕司の姿に戻り、取りあえず少女を家に送り届けるため
ジェイクロッサーから元に戻ったバイクに跨り牧場へ向かった。

耕司「フォッグの怪人にはあと二人、男と女の怪人がいたはず……
 トカゲ男の失敗を知れば茜ちゃんを奪いに来るかもしれない。
 その前に、この子を送り届けたら俺が奴等を全員倒す!!」

瀬川耕司が去った後に、響き渡る謎の声……
 
???「キヒヒヒ…まんまとかかったのう、可愛いボウヤ…」


○仮面ライダーJ→トカゲ男アギトと交戦、撃破。
○柴田茜→生贄の儀式に選ばれ拉致されるところをライダーJに救出されるが…
●トカゲ男アギト→今回もJのライダーパンチで貫かれ絶命。


『甦れ超人機』

作者・凱聖クールギン

43

結城丈二と三枝かおるによるメタルダーの手術開始から2時間が経過していた。
アジトの1階にあるリビングルームで、風見志郎とスプリンガーは果報を待ちながら寛ぐ。

スプリンガー「いや~、TVアニメなんて久し振りに観たぜ。
 やっぱゲキガンガー3は何回観ても面白えなぁ~」

人気ロボットアニメの再放送を観終えて御満悦のスプリンガー。
一方の風見はソファーに腰掛け、コーヒーをすすりながら黙想に浸っている。
その表情が険しいのは、コーヒーの味が苦かったからだけではない。

風見(正義と悪の戦いか…。これがTVの中だけじゃないから大変なんだ。
 Gショッカーの規模は未だ計り知れない。
 ネロス帝国の他にも、俺達の知らない悪の軍団がGショッカーに加わっているとなれば――。
 厄介だな)

 ◇  ◇  ◇

あの中にメタルダーが――。
岩山の上から結城のアジトを見下ろしつつ、クールギンは感慨深げに嘆息した。

一度はこの剣で難なく屠った相手。

だが敗れてもなお立ち上がり、恐るべき勢いで日に日に強さを増して行き、
最後には自分のこの銀仮面を必殺の手刀で叩き割るに至った好敵手…。
片方が斃れるまで、徹底的には勝負する事のないまま終わったのが未練ではあった。
だが自分はこうして戦場に黄泉還った。
そしてメタルダーよ、お前もまた、再び我々との戦いに身を投じるべく復活するというのか――。

クールギン「デストロンの大幹部ともあろう者がハイエナの真似事とは…。
 ヨロイ族の手勢のみならず機械合成怪人まで引き連れている様子を見るに、
 アリゾナでの失敗でドクトルGも焦ったようだな」

眼下に蠢く闇の気を感じ取り、クールギンが呟く。
獲物のおこぼれを狙う連中はジャースにとっては邪魔かも知れないが、
敵はメタルダーだけではないのだ。味方が多くて困る事はあるまい――。
ゆっくりと、クールギンは無言のまま姿を消した。

 ◇  ◇  ◇

結城「よし、これで完了だ」
三枝「後は、エネルギーが全身に行き渡るのを待つだけですね」

長い手術の末、メタルダーの新回路の接続作業は成功した。
電気・神経系統と繋がった超重力エネルギー装置がゆっくりと作動し、
動力エネルギーを発生させてメタルダーの全身に送り出す。
もう数十分もすれば、新たな生命力で満たされたメタルダーが息を吹き返すだろう。
結城と三枝はひとまず休憩を取ろうと、地下室を出て風見らの待つ1階へ上がった。

風見「おっ、終わったか。どうだった?」
結城「ひとまず成功だ。後はエネルギーの充填を待てば――」

結城が言いかけたその時、外で何かが光った。
次の瞬間、窓ガラスを貫いて部屋へ飛び込んだレーザーが床に炸裂し、
リビングルーム全体を真っ赤な爆炎が包み込んだ。

44

ジャース「フハハハハ! これだけ撃てばメタルダーも仮面ライダーも生きてはいまい」

窓から黒煙を漏らしながら炎上する建物を見下ろして、丘の上でジャースが高笑いする。
自慢のビーム砲は標的を一気に壊滅させた。
後はV3とライダーマンの死体とメタルダーの残骸を確認し回収するだけだ。
ジャースが丘を下ろうとしたその時、背後から声が響いた。

V3「俺達を探しに行くのか? その必要はないだろう」
ライダーマン「こんな不意打ちで倒される仮面ライダーではないぞ!」

既に変身を終えた姿で、丘の上に颯爽と構え立つV3とライダーマン。
三枝とスプリンガーも無事に救出され、二人の背に隠れるようにして立っている。

ジャース「おのれ、生きていたか…。
 だがメタルダーはいない。どうやら奴の復活には失敗したようだな」

燃え盛るアジトを手で指しながらジャースが勝ち誇る。
地下室でエネルギーの充填作業中だったメタルダーは咄嗟に運び出す訳にも行かず、
ジャースの言葉通り、火災に包まれたアジトの中に置き去りにされたままだ。

スプリンガー「畜生、あれじゃメタルダーは黒焦げだ」
V3「いや、まだ間に合う。
 俺が奴を引き付ける。結城、その間に地下室に戻ってメタルダーを運び出してくれ」
ライダーマン「分かった。気を付けろよ風見」
V3「スプリンガー、三枝さんを頼むぞ」
スプリンガー「任せときな。さ、安全なトコまで逃げようぜ」
三枝「ええ。頑張って下さいね結城さん、風見さん」
V3「言われるまでもないさ…。トォッ!!」

大ジャンプで一気にジャースとの距離を詰め、格闘戦を挑むV3。
少し遅れてライダーマンも跳び、炎上するアジトへ駆け寄る。

V3「V3パンチ!」
ジャース「グ……ウオオオオッ!」

重装甲のジャースは馬力も強く、V3のパンチを受け止めパワーで押し返す。
拳の一振りで弾き飛ばされたV3に、ジャースの腕の小型ビーム砲が射撃を浴びせた。

ライダーマン「風見! くっ、メタルダーの救出を急がねば…!」

苦戦のV3を横目に、ライダーマンはアジトの火災の中へ乗り込もうとするが、
横から不意に撃ちかけられた銃弾に倒れる。
反射的に振り向いた先には、醜悪な爬虫類の姿をした二匹の怪人が立っていた。

ライダーマン「くっ、お前達は…!」
マシンガンスネーク「シャシャァッ! 貴様がライダーマンだな」
吸血カメレオン「イヒヒヒヒ…!
久し振りだな結城丈二、憎きデストロンの反逆者よ!」

デストロンの機械合成怪人・マシンガンスネークと、ヨロイ族怪人・吸血カメレオン。
片方はライダーマンにも対戦経験のある相手だが、もう一方は初見の敵である。

ライダーマン「吸血カメレオン、貴様が黄泉還ったという事は、やはりヨロイ元帥も…。
 奴もドクトルGのように黄泉還っているのか」
???「――そういう事だ」

ライダーマンの背後に突如として邪悪な殺気が出現する。
紅色の鎧に身を固めたデストロン大幹部にして、忘れもしないライダーマンの仇敵――。
ヨロイ元帥がそこに立っていた。

ライダーマン「ヨロイ元帥…! 貴様!」
ヨロイ元帥「ククク…。驚いたか結城丈二。
 偉大なるGショッカーはあらゆる闇を地上に集めた悪の帝国。
 この私も例外ではなく、再び地獄から黄泉還ったのだ。
 貴様ら仮面ライダーどもを、そしてデストロンの裏切り者である貴様を葬るためにな!」
ライダーマン「…フッ、何度復活しようと同じ事だ。
 いかに巨大な闇の力を集めようとも、悪は必ず滅ぶ!
 ヨロイ元帥、今や仮面ライダー4号となったライダーマンが相手になるぞ!」
ヨロイ元帥「あの時の復讐を果たすか…。フフフ…いいのかな結城? 
 そんな事をしている間にも、貴様らが復活させようとしたメタルダーとやらは炎の中だぞ」
ライダーマン「くっ、相変わらず卑劣な奴め…」

仇敵を前にしてはやる闘志と、メタルダー救出を急がねばという焦燥。
判断を迷ったライダーマンに生じた隙を、怪人は見逃さなかった。

吸血カメレオン「イヒヒ…。死ねぇ!」

吸血カメレオンの舌が伸びてライダーマンの首に巻き付く。
動きを封じられたライダーマンに、マシンガンスネークが腕の銃口を向けながらにじり寄る。
それを眺めて満足そうに哂いながら、ヨロイ元帥は腕組みをする。
ライダーマン危うし――。

45

メタルダーは生きていた。
火災による煙が地下室に濛々と立ち込め、炎も回り始める中、
それでも結城と三枝が接続した超重力エネルギー装置は回転を続け、
手術台に横たわるメタルダーの全身へ新たな生命力を送り続けていた。
常人ならば焼け死んでしまう灼熱の火の中で、超人機は静かに復活の力が満ちるのを待っていた。
そして今、光を失っていたメタルダーの両眼に黄色い電光――超人機の“生気”が灯る。

 ◇  ◇  ◇

V3「うわぁっ!」

ジャースのビームで吹き飛ばされたV3が、

吸血カメレオンの舌に首を絞められたライダーマンの足下に転がる。
至近距離からマシンガンスネークが、やや離れた位置からジャースがそれぞれ武器の照準を定める。
勝ち誇ったように高笑いし天を仰ぐヨロイ元帥。
二人のライダーは、今や絶体絶命の窮地に陥っていた。

ライダーマン「うっ…くっ…!」
吸血カメレオン「イヒヒヒヒ…! 苦しいか結城丈二」

吸血カメレオンの舌がライダーマンを締め上げる。
まるで銃殺刑を執行するかのように、マシンガンスネークはゆっくりと歩み寄り、
ライダーマンの額に腕のマシンガンを押し当てた。

ジャース「どけ! そこに立っていればまとめて射殺してしまうぞ」
マシンガンスネーク「喧しい! こいつらは我がデストロンの宿敵、デストロンの獲物だ」
ジャース「最初にV3達を追っていたのは我らネロス帝国だ。
 アメリカで1号・2号を始末し損ねたデストロンの汚名返上という所だろうが、
 勝手な横槍はこちらとしては傍迷惑。
 どかなければ本当にお前達もこのビーム砲の餌食になるが、良いか!?」
ヨロイ元帥「ええい、愚かな争いはやめんか!」

勝利を目前にして仲間割れを起こしかけたGショッカーの怪人達。
その時、猛然と疾走するバイクの轟音が彼らの注意を引いた。

スカイライダー「ライダーブレイク!!」

弾丸のように突っ込んで来たバイクは、長く伸びていた吸血カメレオンの舌を、
まるでレースの勝者がゴールの横断幕を通過するかのように走り抜け切り落とす。

吸血カメレオン「ギェェェェッ!!」
ライダーマン「――スカイライダー!」
スカイライダー「結城先輩、風見先輩、大丈夫ですか!?」

スカイターボを急停止させ、颯爽と降り立つスカイライダー。
思わぬ乱入者の登場に、怪人達は騒然となる。

ヨロイ元帥「貴様が仮面ライダー第8号か。
 のこのこと現れおって、墓標が一つ増えるだけだわ。殺れぃ!」

ヨロイ元帥の号令で怪人達が身構える。再び戦闘が始まろうとしたその瞬間、
彼らの背後のアジトで稲妻のような眩い閃光が輝き、同時に爆発が起こった。
ほどばしる猛烈なエネルギーが、嵐となって炎の中で渦を巻く――。

46

炎の中から、ゆっくりと歩み出て来る影。
エネルギーが溢れているのだろう。赤と青の光がスパークし、強烈な風となって火炎を薙ぐ。
火の海から姿を現したロボットは、黄色く発光する両眼で敵の群れを正面に捉えた。

ジャース「お、お前は…!」
ライダーマン「良かった…。成功だ」

色めき立つジャースと、安心したように嘆息するライダーマン。
新エネルギー装置の装填が無事成功し、超人機メタルダーが遂に復活を遂げたのだ。

マシンガンスネーク「貴様、何者だ!?」
メタルダー「メタルダーだ」

あくまでもクールに。抑揚の少ない声で名乗ると、メタルダーは地面を蹴って跳躍。
咆え猛るデストロン怪人達の輪の中へ飛び込んだ。

ジャース「おのれ、最も恐れていた事が…。
 こうなれば問答無用。全員まとめて死ね!」

戦慄したジャースが敵味方を区別せず全身のビーム砲を乱射する。
だが、溢れ出すメタルダーの新たな超重力エネルギーは空中に結晶して光の壁を作り、
半月型のバリヤーとなってジャースのビームを反射した。

ジャース「グォォッ!?」

ビームを足下に撃ち返されて怯むジャース。
溢れていた大量のエネルギーを排出した回路がクールダウンし、
心身ともに落ち着いたメタルダーは戦闘の構えを改めて取り直す。

スカイライダー「風見先輩、あれが」
V3「ああ、俺達の新しい仲間さ。――行くぞ!」

混乱した敵の隙を突いて、V3とスカイライダーは空高く跳躍。
立ち尽くす二匹のデストロン怪人に、必殺のキックを見舞った。

V3「V3・回転フルキック!!」
スカイライダー「スカイ・キック!!」

V3のキックでマシンガンスネークが、スカイライダーのキックで吸血カメレオンが爆死する。
すかさずヨロイ元帥に挑みかかるライダーマン。
苛立ちを隠さず応戦しようとしたヨロイ元帥だが、さすがに状況の不利を悟り、
マントを翻して魔法の如く姿を消し撤退した。

メタルダー「雄闘ジャース、行くぞ!」
ジャース「おのれ、メタルダーめ!」

ジャースが放つビームの雨。爆発の中を走り抜け、メタルダーは突進する。
やがて振り上げられたメタルダーの右手に、青白い雷光――眩しい光の刃が煌いた。

メタルダー「レーザーアーム!!」
ジャース「グァッ……オォォォッ!!」

必殺のレーザーアームで胸を一閃され、火花を噴きながらジャースは倒れる。
やがて内部の回路がショートし、大爆発を起こして胴体部分を無残に吹き飛ばした。

47

メタルダー「やった…」

取り戻した力の感触を確かめるように、拳を握り締めるメタルダー。
ライダーマンはメタルダーの元に駆け寄り、後ろから彼の肩に手を乗せた。

ライダーマン「新回路の調子は良好のようだな。良かった」
メタルダー「ありがとうライダーマン。貴方達のお陰で、僕は力を取り戻せた」

どちらからともなく、右手と右手が引き合うようにして握手が結ばれる。
V3とスカイライダーもその上に右手を乗せ、四人の正義の戦士がここに結束を誓い合った。

その時――。

カシャン…ッ カシャン…ッ


規則的な金属音がゆっくりと近付いて来るのを感じて、一同は振り返った。
銀色の甲冑に上半身を包んだ闇の騎士――クールギンが、悠然とこちらへ歩を進め、
四人の視線が向けられたのを機に立ち止まる。
そして不意に抜剣し、恐ろしく素早い跳躍でメタルダーに斬りかかった!

メタルダー「うわっ!?」

間一髪で剣撃をかわすメタルダー。
四人が咄嗟に散開してクールギンを囲み、それぞれ戦闘の構えを取る。

メタルダーを正面に見据えて剣を向けながら、横から仕掛けられたライダーマンの跳び蹴りを難なくかわすクールギン。
更に横から突っ込んだスカイライダーのパンチも、姿勢を変えぬまま片手一本で受け止め押し返す。
間髪入れずV3が正面に回って飛びかかると、数発のパンチを応酬させてから一気に剣で薙ぎ払った。

メタルダー「クールギン…!」
クールギン「メタルダーよ、とうとう力を取り戻したようだな…。
 だが、我らネロス帝国もガイスト・ショッカーの一つとなって現世に復活を果たした。
 ガイスト・ショッカーはその大いなる闇をもって必ず地球を征服するだろう。
 再び我らに楯突く事を選ぶなら、お前の進路は茨の道だ。
 そして仮面ライダーの諸君、君達もな…。――トォッ!!」

不敵に笑いながら剣を収め、丘の上まで一跳びで移動したクールギン。
再びメタルダーに一瞥を送るとマントを翻し、そのまま姿を消してしまった。

メタルダー「クールギン…」
V3「あれが君の宿敵か。
 お互い本気じゃなかったが、さっきの組み手で強さの見立ては大体付いた。
 …恐ろしい奴だ」
ライダーマン「デストロンが黄泉還った上、あんな奴らまでがGショッカーに組しているとは…。
 あのクールギンという男が言う通り、油断ならない戦いになりそうだな」
スカイライダー「しかし、負ける訳には行かない…!
 俺達にも、共に戦ってくれる新しい仲間がまだまだいるはずです」
V3「ああ、きっとその通りだ」

スカイライダーの言葉に全員が頷く。
こうしてメタルダーは復活し、仮面ライダー達と共に再び正義のために立ち上がった。
だが、Gショッカーとの戦いはまだ始まったばかりである。
アメリカの本郷さん達ともう一度連絡を取らなければ――と、
ライダーマンは破壊されてしまったアジトの炎を眺めながら思うのだった。

48

○メタルダー→遂に復活。取り戻した超人機の力でジャースを倒す。
○V3&ライダーマン→アジトを襲撃したジャースとデストロン怪人を迎撃し勝利。
○スカイライダー→V3&ライダーマンと合流しデストロン怪人達と交戦。吸血カメレオンを倒す。
●ジャース→V3とライダーマンのアジトを襲うが、復活したメタルダーに倒され大破。
●ヨロイ元帥→V3とライダーマンのアジトを襲うが、反撃を受け撤退。
●マシンガンスネーク&吸血カメレオン→ライダーマンを襲撃するが、V3とスカイライダーに倒される。
●クールギン→復活したメタルダーと接触。宣戦と警告の言葉を残して去る。

【今回の新規登場】
●ヨロイ元帥(仮面ライダーV3)
 デストロン結託部族・ヨロイ一族を率いる大幹部。
 モンゴルの英雄チンギス・ハンの子孫で、全身を赤い鎧で覆っており、左腕の鉄球を武器とする。
 性格は狡猾かつ残忍。その正体は怪人ザリガーナである。


●マシンガンスネーク(仮面ライダーV3)
 デストロン機械合成怪人。右腕にマシンガンを装備した蛇の改造人間。
 隠密行動などの際には小型の蛇に変身する。


●吸血カメレオン(仮面ライダーV3)
 デストロン結託部族・ヨロイ一族怪人。
 V3に倒された怪人カメレオンが吸血能力を付与されて復活した姿。
 保護色で姿を消し、長い舌を敵に絡めて攻撃する。


『月と大地の邂逅』-5

作者・シャドームーン

49

激闘の末、フォッグのトカゲ男アギトを倒した仮面ライダーJ。
瀬川耕司はここから近い牧場に向かうべく、緩やかな速度で
バイクを走らせていた。後部座席には、怪人から奪い返した
柴田茜が乗せられている。過去にも似たような境遇の少女を
フォッグの生贄から救った経験から、
彼の心はそれとなく安堵感に包まれていたのだが―――

茜「ねぇ…お兄ちゃんは仮面ライダーなの?」
耕司「えっ…あ、茜ちゃん!」

不意に背中で少女の声がした。どうやら気がついたらしい――

耕司「はははは…もしかして、見られちゃったかな?」
茜「ううん、何となく分かるわ。だって私、前にもライダーに助けてもらったもの」

耕司「前にも…(すると俺の他にも地空人に選ばれた戦士がいるのか…)」
茜「ねぇお兄ちゃん。お兄ちゃん達は正義の味方よね?」

耕司「ん? そうだけど…」
茜「じゃあ、お兄ちゃん達がいなくなったら、世界は悪い人達のものになるの?」
耕司「そうだね、でもそうさせない為に俺達がいるんだよ」

茜「じゃ、…死んでちょうだい…」
耕司「茜ちゃん何を…!? ぐわぁッ!」

子供らしからぬ淡々とした口調が途切れた瞬間、首筋から背中にかけて
激痛が走り、もの凄い力でバイクから放り出されてしまった。
鋭い刃物のようなもので、無防備になっていた背後から切り裂かれたのだ。
少女は子供と、いや人間とも思えぬ脚力で後部座席から跳躍し、
さらに地面でのたうつ耕司に襲いかかる。少女の両手は既に鋭い爪を
光らせる人ならざる者へ変貌していた。

耕司「トォッ!」

耕司は迫り来る鉤爪を間一髪受けとめ、巴投げの体勢で投げ飛ばした。
やがて獣のような動きで着地した少女の姿が、完全に野獣に変わり果てた。
それは獰猛な牙を生やした剣歯虎を思わせる、見た事のない怪人。

サーベルダブラー「グハハハ、俺様の変身を見破れないとは…
 噂ほどではないな、仮面ライダーJ」
耕司「貴様もフォッグの怪人かッ!」
サーベルダブラー「フォッグ~? ケッ、あんなウスノロ連中と一緒にするな!
 俺は獣星帝国マクーのサーベルダブラー様よッ!!」
耕司「マクー? そうか、貴様Gショッカーの! 言え、茜ちゃんをどうした!」
老婆の声「エ~ヘヘェ…フォッグマザーにはもちっと頑張ってもらわねば
 ならんのじゃ…本物の娘はとっくにわしの倅が届けておるわい」

50

背後から、薄気味悪い老婆の笑い声が響いた。
振り向くといつ現れたのか、全く気配も音も無く死霊のような笑みを浮かべる
醜悪な老婆が立っている。マクーの首領ドン・ホラーの妻、魔女キバである。

耕司「なんだと…! くっ、変――」
魔女キバ「おおっと、そ~は問屋がおろさんじょ小僧。エェヘヘヘ~
 キバキバイレバマク~~~ッ」

耕司は咄嗟に変身ポーズの構えをとるが、魔女キバ唱えた怪しい呪文に
よって体が硬直し、金縛りに遭ったように全く動かなくなってしまった。

耕司「うわっ!? か、体が動かない…!!」
魔女キバ「さぁてボウヤ。わしらも暇潰しにお前さんの相手をしに来たわけ
 じゃないでの…お主の力の源、“大地の石”を頂こうかえ…」
耕司「…大地の石…何の…ことだ…っ!」

魔女キバ「ほぉ。地空人共はそこまでは説明せなんだか―――
 まぁよいよい、なぁ~んも知らんまま冥土へ送ってやるのも情けじゃて…
 それサーベルダブラー! 此奴の腹を引き裂いて、石を抉り出せい!」
サーベルダブラー「ハハッ。 死ねい、仮面ライダー!!!」

剣歯虎のダブルモンスターが跳躍し、加速をのせた鉤爪を動けない耕司の
腹部に突き立てた。そのまま捩じ込むように爪を突き入れ、地空人が彼に
埋め込んだ「コア」――Jパワーの源泉を抉り出そうとする………

耕司「ぐ! ぐ…ああああ―ッ!!」
魔女キバ「エ~ヘヘ、ええじょ~もっと鳴け、叫んでみいっ!」

―――絶叫する瀬川耕司、冷たく笑う魔女とダブルモンスター。
大量の血がどくどくと流れ出し、彼らの足元に血溜まりを広げていく。
万事休すかと思われたその時、なんと動けないはずの耕司の右腕が
彼を拘束している見えざる念力に抗い、弾き飛ばすように目の前の
サーベルダブラーの顔面にパンチを炸裂させた。

サーベルダブラー「グオオ!? き、貴様ァ…ッ」
魔女キバ「此奴、わしの妖術を力づくで破るとはなんたる精神力じゃ!
 ええ~い生意気なっ! キバキバイレバマクー!!」
耕司「き、貴様らの…思い通りには…させんッ!!
 うおおおおおお――ッ 地球よ、母なる大地よ、俺に力を―!」

地球の生命を育む大地の精霊エネルギー――――
その結晶であるJパワーに選ばれた瀬川耕司の叫びに応えるように、
大地が鳴動し、神秘的な輝きが彼の腹部にある「コア」から放出される。
 
魔女キバ「な、なんとあの深手が一瞬で……!?」

サーベルダブラーの爪で抉られた傷口がみるみる再生し、彼の全身を
生命力に満ちた光のオーロラが包んでいく…その様は、太陽の子RXが
前身ブラックサンから転生を果たした時の光景と酷似していたが、
それを知りえる者は誰一人、この場にはいなかった。

51

***富士の樹海***


シャドームーン「これは…キングストーンの共鳴。ブラックサンが近くに
 来ているというのか? いや違う。これは太陽の石のものではない…
 この私とRX以外に、キングストーンを持つ者がいるだと…バカな!」
ガライ「何処ヲ見テイル、シャドームーン!!」

一瞬の隙を突いて、コブラ男が掌から先の尖った杭を射出する。
その杭は先端から展開し、シャドームーンを背後の巨木に磔け動きを封じた。

ガライ「グッグッグッグ…ジャ―ッ!!」

さらにガライは右手からエネルギーソードを出現させ、罠にかかった獲物を
睨む蛇のような形相で、磔状態のシャドームーンに斬りかかった。

シャドームーン「…シャドーフラッシュ」
ガライ「ナンダ? …ギィ!!」

黒いベルトの中心から凄まじい閃光が起こり、ガライは腕で目を覆い怯んだ。
その光を浴びて、雨細工のように脆くなった「檻」を、シャドームーンは
容易く引き裂き拘束を解く。そうはさせじと再度斬撃に出るコブラ男だったが、
影の王子はそれを素早く回避して、カウンターに肘のエルボートリガーを見舞った。
切り裂かれた鱗状の胸から血を流し、苦しむガライ王子。

シャドームーン「どうした怪人…貴様の力はそれだけか?
  私と同じ世紀王を名乗りたければ―――
  ――これぐらいの力は見せて欲しいものだ!!」

シャドームーンの右拳が蒼い輝きを放ち、ガライ王子の胸部に炸裂する。

ガライ「ジャシャアァァ―ッ!!」

「シャドーパンチ」をもろに浴びたコブラ男は胸部から火花を噴出し、
やがて全身が蒼炎に飲み込まれ肉体が崩壊を始めるが――――

シャドームーン「ほう。怪人にしては上出来だ」

ガライ「なるノダ…ジキ・ソウセイオウに…我が偉大ナル…
 フォッグマザーのタメに…必ず…カナラズ!!!」

シャドーパンチの裂傷から火花を噴出させがらも、全身を焼き尽くさんとする
蒼白い炎を振り払うようにガライ王子は立ち上がり、さらに凶悪さを増した形態へと
肉体を変貌させていく。先程の倍ほども膨れ上がった両腕から、エネルギーソードを
二本出現させシャドームーン目掛けて振り下ろした。

52

シャドームーン「…貴様の負けだ」

――キン…ッ
脚部に備えるレッグトリガーを振動させ、影の王子が天高く跳躍する。

シャドームーン「知るがいい…次期創世王の座が、どれほど過酷で
 熾烈な頂であるかをな。シャドー・キィ―ック!!!」

そして両足先を眼下のガライ王子目掛けて突き出し急降下、
足先に月のキングストーンエネルギーを集中させて放つ必殺の一撃、
「シャドーキック」が獣化したフォッグの王子の巨体に炸裂した。

ガライ「…オオオ…フォッグ、マザァァァァァ!!!」

世紀王の足先に迸る破壊エネルギーがコブラ男の全身を駆け巡り、
やがて限界を迎えた肉体は大爆発を起こし、消滅した……

シャドームーン「…………」

ゴゴゴゴゴゴゴ…


静寂を取り戻したばかりの森に、空中から巨大な飛行物体の影が迫る。
機械獣母艦フォッグマザー!
全ての怪物の母なる者が、シャドームーンもろとも森を押し潰すかの如く、
樹海の木々を薙ぎ倒し、踏み潰しながら地表へ降下する。
凄まじい風圧で森の半径数十メートルが破壊され、吹き飛んで行く中、
影の王子は一歩も微動だにせず敵の牙城を見据えていた………

シャドームーン「フッ…大ネズミの御登場か」

53

魔女キバの呪縛を打ち破り、瀬川耕司は大地の戦士へと変身を果たしていた。
まだ全身からはあの神秘的な輝きが立ち上っており、その瑞々しいエネルギーは、
彼の足元にあった枯れた植物を蘇らせ、所々に花を咲かせている。

ライダーJ「全身が震える程の凄いパワーが俺の中に満ちていくのが分かる…!
 これが…奴らの言う、大地の石の力なのか……??」
魔女キバ「お~あれぞ正しく、次期創世王継承に必要な三つの石の一つ!
 大地の石だけは遥か古代にゴルゴムから別れた種族が持つと聞いとったが…
 …わしの睨んだ通り、この若僧が地空人から託された“Jパワー”こそが、
 三つめのキングストーンに繋がっておったわけじゃ…エヘ、エヘヘ、エヘヘェ~」
ライダーJ「地空人が、俺にそんな大切なものを…」
魔女キバ「よこせぇ~しょれをよこしぇ~!
 わしは何としても倅を次期創世王にしてやりたいのじゃあッ!!
 所在不明であったその大地の石をわしの可愛いサンドルバが手に入れた
 となれば、キヒヒ…他の世紀王候補達を押しのけ、一気にわしらの夢に
 向かってリードできるわい!! 闇女王同盟のお歴々にはちぃ~~と
 悪いがのう…エ~ヘヘヘヘヘヘェ」
ライダーJ「断る! 地空人がこの石を俺に託したのは、この力でフォッグや
 貴様のような奴らから地球の生命を守って欲しいと願っていたからだ!
 Gショッカーの手先などに断じて渡さん!!」
魔女キバ「ええいハナタレ小僧が格好つけよって! サーベルダブラー!」
サーベルダブラー「ウオオオ―ッ 今度はバラバラに切り刻んでから
 後でゆっくりそいつを抉り出してやるぜ!!」

サーベルダブラーは咆哮を上げ、高速移動斬りをライダーに浴びせかける。
その脅威的なスピードと猛攻に翻弄さればがらも、大地の戦士は確実に
敵の動きを看破しながら跳躍・前転・後転を駆使し、応戦する。

ライダーJ「凄い…まるで体が風と一体化しているように軽い。トゥッ!!」

袈裟懸けに斬り付けて来たサーベルダブラーの左腕を蹴り上げ、
体に捻りを加えて強烈な回転Jエルボーを敵の顔面に叩き込む。
怯んだ怪人の鳩尾目掛け、さらに追撃のライダーパンチが炸裂した。

サーベルダブラー「ガハァッ!!」
魔女キバ「何をやっとるかっ! おのれ小僧ォ~キバキバ…~」

ライダーJ「そうはさせるか、ジェイクロッサー!!」

仮面ライダーJが〝コア〟を通じてテレパシーを送ると同時に、倒れていた彼の
バイクが瞬時に専用マシン・ジェイクロッサーとなり、疾風の如きスピードで
魔女キバを跳ね飛ばし、妖術の使用を阻止した。

魔女キバ「ぎゃふん!! へ~イタタ…年寄りに何すんじゃい~っ!
 こぅのぉイカレ暴走族めが~!!」

54

***魔空空間 魔空城***
 
魔空空間とは、宇宙空間の裂け目〝虚空〟の中に存在し、
ここに宇宙犯罪組織マクーの本拠地が浮遊している…
この要塞「魔空城」の奥殿にはマクーの首領ドン・ホラーが鎮座しており、
地球の地軸を操作して、地球上にも小規模の魔空空間を造り出す
恐るべき科学力を備えていた! 魔空空間では、ダブルモンスターの
パワーは3倍にパワーアップされるのだが――

ダブルマン「魔空空間を造り出すのだ!」
クラッシャー「ケェーイッ!」
ホラーガール「キャハハ♪ キャハハ♪」

ドン・ホラー「待て…手助けは無用だ」

ダブルマン「で、ですがこのままでは……」
ドン・ホラー「捨ておけ…此度の出陣は、キバとサンドルバが独断で
 行ったものだ…我がマクーの作戦ではない!!」
ダブルマン「しかし…他の組織よりも早くキングストーンを手に入れ、
 サンドルバ様を有力候補とするのはドン・ホラー様にとりましても有益なのでは……
 だからこそ、シャドームーンの闇討ちをフォッグマザーに持ちかけた御二人の行動を、
 敢えて黙認されていたのではないのですか?」
ドン・ホラー「グフフフ…キングストーンか。一度は勘当を言い渡した、我が愚息には
 宝の持ち腐れよ。間も無くフォッグが滅ぶのも、シャドームーンに実力が及ばなかった
 が為…弱き者はどんどん淘汰され、真の支配者たりえる器を持つ強者のみが……
 Gショッカーの次期創世王として君臨できるのだ。グフフ…果たして誰が勝ち残るか…
 例え息子といえど、ワシの許可無く動く者には相応の末路が来よう。
 よいか、キバとサンドルバには一切手助けは無用だ!!」
ダブルマン一同「ハハー!(今一瞬だが、ドン・ホラー様が別人のように思えたが…)」   
ホラーガール「キャハハハ…キャハハハ…♪」

55

***富士山麓付近***


魔女キバ「ええ~い、ドン・ホラーめ…あくまで静観を決めこむつもりかっ!
 自分の息子の将来がかかっとるというに~おのれこうなれば…!
 サーベルダブラーよ、お前の真の力を見せてやれい!!」

サーベルダブラー「ホオオオンッ!!」

魔女キバが怪しげな印を結ぶと、なんとサーベルダブラーが巨大化を始める!
みるみるうちに、ゆうに40メートルを超える巨体と化した。

ライダーJ「な…怪人が巨大化を!?」
魔女キバ「ぎゃっはっはっは! どうじゃ小僧。ダブルモンスターには、稀じゃが
 生体合体の突然変異種としてこういう芸当を秘めとる固体もおってのう…
 お前の攻撃を受けてその因子が活性化したところに、わしが残った魔力を
 注いで刺激してやったのじゃ。ここでギャバンなら電子星獣を呼びくさるじゃろうが、
 お前には打つ手があるまいて…エ~へへへェヘェ」
ライダーJ「フッ。俺の事をどこまで調べたのか知らないが、肝心な事を知らないとはな」
魔女キバ「な…なんじゃと?  チィィ、小童が負け惜しみを!」
ライダーJ「負け惜しみかどうか、とくと見るがいいぜ! ハァアアア―ッ!!」

大地の精霊エネルギーの全てが結集し、仮面ライダーJの姿を光り輝く巨人に
変身させていく。かつて機械獣母艦フォッグマザーを激闘を繰り広げ、
その大いなる力によって悪しき生命体を討ち滅ぼしたジャンボライダーが復活した。

ライダーJ「見たか! 俺は“J”、巨大変身を可能とした仮面ライダーだ!!」
魔女キバ「( ゜д゜)…ななな……サーベルダブラー、やってしまえ!!」

サーベルダブラー「ホオオオオン!!」
ライダーJ「トォ―ッ!!」

巨大な鉤爪の一撃をかわし、Jパワーの戦士が今、空高く舞う。
巨人と化したその跳躍力は、通常時の数10倍にも達し、
高く高く――――雲の高さまでジャンプしていた――――

魔女キバ「ど、どこまで跳ぶんじゃあやつ…ぬおーっ!?」
ライダーJ「――“J” ライダァ―キィィィック!!!」

大気との摩擦熱で足先を赤熱発光させながら、仮面ライダーJは高空から
彗星のような超・必殺キックをサーベルダブラー目掛けて放った。

サーベルダブラー「グルゥアァアア…ギャアーッ!!」
魔女キバ「まずい、逃げんと…ぬわーーっ!」

ドオォォォ―ン
富士の裾野に、巨大な爆発の轟音が響き渡った…


△シャドームーン→ガライをシャドーキックで葬る。
○仮面ライダーJ→サーベルダブラーと交戦、苦闘の末これを倒す。
○柴田茜→実はすでにサンドルバに拉致されていた
●ガライ王子→善戦空しく、シャドームーンに敗北。
●フォッグマザー→遂に自ら出撃。
●魔女キバ→サーベルダブラーを妖術でサポートする。
●ドン・ホラー→部下に息子らの援護を禁じる

56

【今回の新規登場】
●魔女キバ(宇宙刑事ギャバン)
 宇宙犯罪組織マクーの首ドン・ホラーの妻。
 息子のサンドルバを世紀王候補として次期創世王に据え、Gショッカーの
 生母として君臨する野望を持つ。闇女王同盟に名を連ねる一人。
 残忍かつ陰湿な性格の魔女で、数々の妖術を体得している。
 尚今回は独断専行のためクラッシャー軍団を引き連れて来ていない。

●サーベルダブラー(宇宙刑事ギャバン)
 獣星帝国とも呼ばれるマクーは、侵略した星の生命体を兵士として
 どんどん集めて来た。そうして集まったダブルマンとベム怪獣という名の
 モンスターを生体融合装置で合体させたのが、このダブルモンスターである。
 サーベルダブラーは剣歯虎の特徴を持ち、高速移動と鋭い爪や牙での
 攻撃を得意とする。鉤爪の切れ味はギャバンのコンバットスーツすら切り裂いた。
 尚、このサーベルダブラーやミツバチダブラーのように、稀ながら窮地に陥ると
 巨大化して復活する固体も確認されている。

●ドン・ホラー(宇宙刑事ギャバン)
宇宙犯罪組織マクー首領。巨大な鬼神像のような姿で魔空城の
奥殿に鎮座している。首を斬られても絶命しないパワーを具える。
地軸転換装置などの超科学を自由に操る天才科学者でもある。
威厳ある声を発し、絶対的権力を持つ。
その声は表裏六柱の至高邪神の二人と酷似していると、配下の者達の
間では囁かれている………

●ホラーガール(宇宙刑事ギャバン)
鳥のような頭を持つ、ドン・ホラーの秘書。
いつもホラーの膝の上に乗っていて不気味に笑う。
 
●ダブルマン(宇宙刑事ギャバン)
主に前線で作戦の指揮を執る、混成異星人の種族。様々なタイプが存在する。
スパイ活動を行う女性型のダブルガールもいる。

●クラッシャー
マクーの下級戦闘員。ダブルマンやハンターキラーの号令の下、集団で暴れまくる。 


『月と大地の邂逅』-6

作者・シャドームーン

57

必殺のJライダーキックの前に砕け散るサーベルダブラー。
立ち上る爆炎を背に、巨人となった仮面ライダーJは、ゆっくりと着地の体勢から
体を起こして辺りに目を配る。魔女キバは形勢不利を悟ってか、逸早く姿を
消していた。ほどなく、仮面ライダーJの体が光を放ち、元の大きさに戻っていく。
全ての精霊エネルギーを集結させる巨人変身は、強力無比な必殺技を
繰り出せる半面、パワーの消耗が激しいのだ。

ライダーJ「やれやれ、逃げ足の早い婆さんだな…ん? あれは―!!」

ライダーは此処から少し離れた場所に広がる、樹海の異常に気づいた。
森の中心部を刳り貫くようにできたクレーター、そこに生物とも機械ともつかぬ、
異様な要塞が鎮座しているのだ。「それ」が何なのか、彼にはすぐに分かった。

ライダーJ「フォッグマザー! あの中に茜ちゃんがっ!! …!?」

突如、彼の腹部にある「コア」――が共鳴を起こし始める。
全く同じ現象が、先程あの樹海内で起きていた事を彼には知るよしもなかったが、
大地の戦士としての本能がこの共鳴を呼び起こした者の存在を察知していた…
 
ライダーJ「…凄まじいパワーとパワーのぶつかり合いをフォッグ母艦内
 から感じる…あの中で誰かが戦っているのか…一体、誰が??」

――しかし今は、一刻も早く少女を救い出すことが先決である。
彼は愛車ジェイクロッサーのアクセルを吹かし、機械獣母艦フォッグマザー
に進路を向けてマシンを発進させた。


◇    ◇


魔女キバ「行きおったか…どうやらこれで、フォッグマザーの
 命運も決まったようじゃな」
サンドルバ「キバ! 無事だったか」

疾走して行くジェイクロッサーを憎々しげに見つめる魔女キバ。
その前に、魔法のような術で突然厳つい甲冑を纏った男が現れた。
ドン・ホラーの実子にして彼女の溺愛する息子、サンドルバその人である。

魔女キバ「おお、倅や…すまんのう、生意気な仮面ライダーの小童めが、
 こともあろうに掟破りの巨大化をしおったせいで…大事な宝を手に入れ
 損ねてしもうたわ。…で、そっちの首尾はどうじゃった、ん?」
サンドルバ「うむ。あの小娘はキバの言う通りフォッグマザーに献上したが……
 本当にあんな餓鬼がシャドームーンの弱点になるというのか?
 フォッグの連中に奴を襲わせ、共倒れを期待して月の石を頂くつもりだったが…
 影の王子は噂以上に手強いぞ、キバよ。忌々しいが、全く隙がない」
魔女キバ「キヒヒ…わしの睨んだ通りなら、あのシャドームーンがいかに強かろうと
 必ずあの娘を見れば動揺するじゃろうて。後はフォッグマザーの頑張り次第じゃが…
 大地の石を持っとるボウヤもあちらへ向かった今、おそらく勝負は見えたのう」
サンドルバ「奴を行かせていいのか? キバよ」
魔女キバ「あ~ほっとけほっとけ。わしらがそこまで協力してやる義理はない。
 生贄に必要な娘を届けてやったんじゃから充分じゃ。それに結果的にお前の
 邪魔者の一人、ガライ王子を始末できたからのう…ギヒヒヒ!
 後はシャドームーンがやられるか、フォッグマザーが滅びるか…どっちに転んでも
 わしらに損はない。影の王子もフォッグもよっく働いてくれたわ…エ~ヘェヘヘ」
サンドルバ「それもそうだな。 これで我々マクーの邪魔となる勢力が一つ
 消えるわけだし、父上にも喜んで頂けるだろう。ウワハハハハ!」
魔女キバ「なんせGショッカーには世紀王候補が掃いて捨てる程おるからのう。
 こうやってココ(頭)を使いながら、目の上のたんこぶを潰していくのが賢い者の
 やり方じゃ。 キングストーンを奪取できなんだのは口惜しいが、
 この成果には“あの御方”もご満悦のはず…ま、いづれは消えてもらわねば
 ならんがの。キヒヒヒ…」

58

シャドウ「是非とも、その御方の名をお聞かせ願いたいですな…」

魔女キバ「だ、誰じゃ!?」
サンドルバ「うぬっ、これは…姿を見せろシャドウ!!」

満足のいく結果にほくそ笑むマクー親子の前に、何処からともなく
トランプが舞い飛び、ジェネルシャドウが姿を現した。

サンドルバ「貴様ァ… 盗み聞きかッ!!」
シャドウ「フン。Gショッカーの覇権を巡り、日夜策謀にお励みの方々に
 比べれば可愛いものよ…しかし気に入りませんな、この私まで欺くとは…」

ジェネラルシャドウは二人に背を向け、腰のサーベルの柄に右手を添えて
軽く揺らしながら、淡々と言葉を発しているが……
その一言一言には刺すような殺気が込められていた。

魔女キバ「チィィ、“はぐれデルザー”の分際で無礼じゃぞ!!」
サンドルバ「俺は日頃から、貴様の慇懃無礼なもの言いが癇に障っていた!
 文句があるなら此処で相手になってやるぞシャドウ!!」
シャドウ「私が貴方と戦う? 世紀王候補でもない俺が、わざわざ貴方と?
 ククク…ご冗談を。そんな無益な決闘をするつもりはありませんよ」
サンドルバ「ハッハッハ! 怖気づいたか!!」
シャドウ「フッ…まぁ何とでも言えばよろしかろう。それより、サンドルバ殿の母君…
 先程仰られていた、あの御方とは何方様のことですかな?
 失礼ながら、幾らフォッグマザー様がゴルゴムの影の王子に激しい敵意を持って
 いたとはいえ、貴女の企みに易々乗るとは思えませんのでね…相当な有力者の
 入れ知恵でもなければ、こんな軽挙に及ぶとは考えにくいのです…」
魔女キバ「(ギクッ …こやつ…!)」
サンドルバ「……………」
魔女キバ「キヒヒ…な、何のことやらさっぱり分からんのう。それにお主のような、
 いつ裏切るか分からんような輩に、教えることなぞ何も無いわ!」
シャドウ「ま…いいでしょう。組織間のいざこざなど私にはどうでもいいこと…
 …唯一つだけ忠告しておこう…俺のプライドを悪戯に汚さんことだ…!!」

静かに、しかし重く響く白い改造魔人の言霊。
紳士的な物腰ではあるが、ジェネラルシャドウの透明なフードの奥にある瞳は、
凄みを帯びた迫力で二人を見据えている―――――――

サンドルバ「ヌゥゥ~ッ、貴様ァ!!」
魔女キバ「かまうでないサンドルバ。わしらの用は済んだ、引き揚げるぞい…」
サンドルバ「ちっ…おぼえておれよシャドウ。いづれ貴様もこの槍の錆にしてやる!!」

魔女キバが呪文を唱え終わる頃には、親子の姿は消えていた。

シャドウ「クックック…何とも呆れた醜さよ。憶えておけだと…
 バカめ、貴様らなど俺の眼中に無い! 俺が再びこの世に舞い戻った
 目的は唯一つ―――仮面ライダーストロンガー、城茂を殺すことのみよ…
 さて、向こうも決着が着く頃合か…トランプフェイド!」

再び宙にはトランプが舞い散ったが、やがて消えて行った―――


○瀬川耕司/仮面ライダーJ→樹海に着陸した要塞フオッグマザーに向かう。
●魔女キバ→撤退
●サンドルバ→撤退
●ジェネラルシャドウ→決着を見届け、本来の「仕事」を果たすべくフォッグマザーに向かう。

【今回の新規登場】
●サンドルバ(宇宙刑事ギャバン)
マクーの首領ドン・ホラーの実の息子。マクーのプリンスゆえに我侭である。
まさに親の威光をかさに威張り散らすタイプで、部下の評判はあまり良くない。
しかし武芸の腕前は確かで、槍を駆使してギャバンと互角に渡り合う。
武者修行の旅からマクー城に戻ると、早々にハンターキラーを失脚追放に
追い込み幹部の座を独占した。しかし度重なる失敗とあまりの放蕩ぶりに
父ホラーに愛想を尽かされ、マクー城追放を言い渡されたこともあった……。


『月と大地の邂逅』-7

作者・シャドームーン

59

***フォッグマザー深奥部***


シャドームーンに襲い掛かった怪物の一団が、細切れの肉片と
化して飛び散る。すでに床には数十体の怪物が屍を晒していた。
異様な臭気と煙が屍骸から立ち上る部屋で、魔物達を産み落と
した者と、“彼女”の愛しい者達を残骸に変えた者が対峙している。

フォッグ「おのれぇぇ~よくも私の可愛い子供達を!!」

影の王子は各部の駆動音を響かせ、ゆっくりと部屋の主に歩み寄る。
血の色の剣が、鈍い空気を裂いて掲げられた。

シャドームーン「貴様がケダモノ共の母親というわけか…」

シャドーセイバーの刀身が、赤い光を纏い始める。
彼は女の声を発している人面のオブジェに狙いを定め、居合い抜きの
ような動作で剣を抜き放った。半月型の赤いエネルギー波が部屋の
中央を直撃し、オブジェ諸共爆発音を響かせ砕け散った。
崩れた壁のさらに奥から、醜悪なフォッグマザーの本体が姿を現す。

シャドームーン「…チェック・メイトだ、女狐」
フォッグ「ギィィィ…ッ!!」
フォッグマザーとシャドームーンが対峙している部屋の真下―――
そこは生贄の儀式の間。誕生を待つ無数の怪物達の卵の中心に、
鳥篭のような檻がぶら下げられている…
中には生贄に選ばれた少女、柴田茜が囚われていた。

フォッグ「こうなれば…せめて残った子供達に私の最後の力を与え、
 今すぐにこの星の全ての餌共を食らい尽くしてやるわ!!
 生まれ出でよフォッグマザーの申し子達!! 今こそ、大孵化の時!!」
 
女王の胎内である母艦の「血管」を通じて、急速に注ぎ込まれた
エネルギーを得た卵達が一斉に孵化を始めた。
あっという間に部屋中が、 寝床から這い出して来た怪物の群れに
埋め尽くされ、その集団は我先にと生贄が入った檻に群がって行く。
耳を劈くような悪鬼達 の飢えた叫びに、少女は目を覚ました。

茜「…ううん…。……!  き、きゃあああ―っ!!
 パパー! お兄ちゃーん!!」
 
救いを求めるその声は、狂宴に歓喜する者達の雄叫びにより掻き消され、
虚しく響くだけであった。泣き叫ぶ少女が入っている檻を、怪物達の集団

が引き裂き始める。彼女はあらんばかりの声を上げて自分の兄に救いを求めた。

茜「お兄ちゃぁーんっ 怖いよー怖いよぉーー! お兄ちゃーんっ!!!」
シャドームーン「――…ッ!」


シャドームーンの超感覚器官に、階下から聞こえる少女の叫びが届く。
自分の兄を呼ぶ少女の声に、もう一つ異なる声が影の王子には聞こえていた……
人では無くなってからも、過去の記憶を全て失ってからも―――
いつも夢で彼を呼んでいた声。耳を傾けようとしても、別の夢によって消えて行く声…
それが今だけは、はっきりと聞くことができた。

60

克美の声「信彦さん…私…」
杏子の声「だめっ! そこにいるのはお兄ちゃんなんかじゃない、ゴルゴムなのよ!」
RXの声「自分の目的の為なら、目の前で泣き叫ぶ子供を見殺しにする…
 そこまで落ちてしまったのかシャドームーン!! 俺はお前を…ッ 許さん!!」

いくつもの声が、現れては消えて行く。世紀王の闘争本能と、
秋月信彦として過ごした人の記憶が彼の中で反発を起こしていた。
 
シャドームーン「くっ…消えろ……ッ !」

突然、何かに憑かれたように苦しむ影の王子。
その隙をフォッグマザーは見逃していなかった。脈打つ「肉の壁」から
生えている醜悪な本体が、大蛇のように体を伸ばしてシャドームーン
に襲い掛かかった。さしもの彼も無防備状態を直撃され、背後の壁に
強烈に叩き付けられてしまう。両手に握られていたシャドーセイバーが、
激突の衝撃で床に転がり落ちていった。

シャドームーン「ぐぉ…っ」
フォッグ「アハハハ、愚かな王子よ…戦闘中に気をとられるとは!」
シャドームーン「チ、女狐が…」

さらに怒れる女王の猛攻が続く。シャドームーンがめり込んでいる壁が、
不気味に隆起しながら彼を喰らうように飲み込み始めた。
銀と黒の強化皮膚が負荷に反発して軋み、音を立てる。

フォッグ「ウフフフ…お前程の強大なエネルギーを持つ餌を、
 私の胎内で融合捕食すれば、新しいガライを生み出せる!!  
 お前の月の石を我が王子に与えてなぁ…!!」
シャドームーン「フン…バケモノが、世紀王を餌呼ばわりか」
 
????「…目覚めよ、目覚めるのだ…
 シャドームーンよ――…」
 
勝ち誇るフォッグマザーの高笑いが、ピタリと止まった。
今この部屋にいる彼らにだけ、それも脳に直接響いてくる謎の声。
蠢く蛇のような本体の頭についた、女王の顔に動揺が走る。
 
フォッグ「こ…この声…お、お前は…!!」
シャドームーン「貴様は何者だ…何故、私に語りかける?」
 
????「フフフフ…私の声を忘れたかシャドームーン。
 我が息子よ…―――…」

シャドームーン「うぅ…ぐぁぁあ!」


再び蘇る、記憶の断片。親しみと懐かしさを覚える夢を、
常に覆い尽くす悪夢の元凶。その声の持ち主は、
己に決して逃れられぬ宿命の烙印を刻んだ存在。

61

シャドームーン 「創…世…王…ッ!!」
フォッグ「ギィィィ…ッ!! ゴルゴム創世王… 遥か古の時代より、
 またしても私の邪魔をッ!!」
創世王の声「ククク…愚かな女め…貴様はまだ己の立場をよく
 理解しておらぬか…―――だがそれでよいのだ。
 お前達の企てが、我が息子をより完全な形で覚醒させてくれた…」
フォッグ「な…なんだと!? …では邪神達は最初から私を…ギ、ギャァァァッ!!」


突然苦しみ始める女王に、今度は創世王ではない、別の声が語りかけた。

????の声「フハハハハご苦労だったなフォッグマザーよ。
 諸君らの役目は終わった…潔く死ぬのだ!!」
創世王の声「シャドームーンよ…その黄泉帰りし魂で、再び我が王座を
 目指すがよい。真に次期創世王を望むならばこの剣を取り、
 お前の覇道を阻む者を全て、見事退けてみせよ――…!!」

フォッグ母艦の頭頂部を突き破り、天空から一筋の矢が部屋の床に
突き刺さる。立ち上る煙の中に、赤い光が煌いた。
そこに現れたのは、何処か優美な形をした金色の柄……

シャドームーン「あれは…サタンサーベル!!」

凄絶な“力”が解き放たれ、シャドームーンの全身から蒼い閃光が迸る。
彼を飲み込まんとしていた有機体の肉壁に亀裂が走り、内部から爆裂
して弾け飛んだ。金色の柄を持つ剣が、世紀王の手に戻る。

フォッグ「アアアアアア―ッ…!! …ヒ、ヒイイィ!」
 
苦しみの声を上げる女王には一瞥もくれず、世紀王はサタンサーベルの
赤い刀身を眺めていた。天・海・地の石で、初めて彼が復活を遂げた時の
記憶が、破壊者としての人格と共に心を支配して行くのが、今の彼には
バラバラの心が統制されるように心地良く感じられた。

シャドームーン「フフフ…ハハハハ…ッ! ハァーーーハハハハハ…
 我が名はシャドームーン、この剣は私の為に用意されたもの……
 フフ…、フフフフフ…そう…俺こそ、次期創世王だ―――ッ!!」
????の声「クックック…それでいいのだシャドームーン …
 …闇の月の仔よ―――…フフフ」

サタンサーベルを頭上に掲げ、高らかに宣言するシャドームーン。
まさしく、かつて日本を制した暗黒結社ゴルゴムを統べる世紀王の姿が
そこにあった。失われた自我の「半身」は取り戻した…
だが、彼の中には僅かに――――。

62

茜「お兄ちゃぁーーん…っ!」
シャドームーン「…! ………」

「生贄の間」では、我先にと群がる怪物の幼体共が、今まさに少女を
捕らえようとしていた。檻は半分以上が引き裂かれ、飢えた魔物達の
鉤爪が何度も籠の金属を引っ掻く。同胞達を踏み越えて跳躍して来た
一体が、彼女の着衣の一部を裂いた。

茜「あーん、あーん! 怖いよぅ、怖いよぉーーっ!」

ウオオオオオンッ


その時、フォッグ母艦の壁をブチ破って、ジェイクロッサーが
マシンの爆音を轟かせ狂宴の中へ飛び込んで来た。

ライダーJ「トォォォ―ッ!!」

大地の戦士は、中央にぶら下がる籠に群がる怪物共の数体を、
フロントタイヤの体当たりで吹っ飛ばして一団の前に躍り出る。

ライダーJ「茜ちゃんッ、今助けるぞッ!! …うぉっ!?」
怪物「エサダ…オレタチノエサダ…ジャマヲスルナ…グゲゲゲゲ!!」
ライダーJ「くそ、これではキリがない…!!」
 
しかし蹴散らしても蹴散らしても、狭い空間で雲霞の如く
押し寄せる魔物の群れは、怯むことなく少女に迫ろうとしていた。

シャドームーン「俺は……」
創世王の声「どうした…何をしているシャドームーン。
 サタンサーベルで、目の前にいる不良品種を粛清するのだ。
 それでお前は完全にゴルゴムの次期創世王に戻る…」
シャドームーン「…シャドー・パーンチッ!!」

創世王が望むフォッグマザーではなく、突然シャドームーンは足元の
床めがけて拳を叩き込んだ。蒼い閃光が「生贄の間」の天井を貫き、
真下にいた怪物の一角が消し飛んだ。

小規模のクレーター状に抉られたその場に立つのは、銀色の戦士。
ゆらりと振り返る緑の複眼に、赤い複眼の戦士が映り込む。

ライダーJ「お前は…?」
シャドームーン「…………」


影の王子は無言で周囲を見回し、半壊寸前の籠の中で
泣きじゃくる少女に視線を合わせた。

シャドームーン「…心配するな…家に送り届ける
 くらいの力はまだ残ってる」
ライダーJ「えっ…?」

銀色の戦士は静かにゆっくりと、籠の方向へ歩き始めた――――
 
怪物「グゲゲゲゲゲゲ!!」
シャドームーン「退け。貴様らに用はない…」


怪物の数体がシャドームーンに襲い掛かったが、
彼が一歩前に進む度にバラバラになって千切れ飛ぶ。

ライダーJ「(速い…!!)」
 
銀色の戦士がサタンサーベルを怪物の群れに突き付ける。
魔物達に恐怖が走り、じわじわと後ずさる。籠を取り巻く円が、
少しずつ大きくなっていく。檻の中で、正視に耐えぬ光景に目を
閉じていた少女が、薄く涙に濡れた瞼を開いた。
ぼやける視界に映る、銀色の人影と緑色の人影――――。

63

茜「仮面…ライダー…? それに、ぎんいろのひと…
 やっぱり、来てくれたのね…」
シャドームーン「さぁ、もう心配は要らない…」


銀色の戦士が檻を広げ、憔悴し切った表情の少女を抱きかかえた。

茜「よかった…きっとまた会えるって、お兄ちゃんも…
 言ってたから…嬉しい――…」


急に緊張の糸が切れたのか、それとも安堵した為か…
少女はそのまま再び気を失った。

言葉を交わす間もなく、少女を抱いたシャドームーンを
怖気づいた前列の集団を飛び越えた怪物共が取り囲む。
仮面ライダーJも跳躍し、銀の戦士と背中合わせに立った。

ライダーJ「あんたも仮面ライダー…なのか?」
シャドームーン「違う。我が名は…シャドームーンだ」
ライダーJ「でも、その子を助けに来たって事は…味方だよな?」
シャドームーン「…………」
 
銀の戦士はその問いには答えない。
しかし今は、彼が守ろうとした少女を救うという点で共闘する
理由はライダーにとって充分だった。大地の戦士は腹部のコアに
精霊エネルギーを充填させ敵の攻撃に備えた。

ライダーJ「これは…さっきと同じ…?」
シャドームーン「ほう…共鳴した原因は、貴様だったか」

仮面ライダーJの腹部に輝く赤い宝玉と、
シャドームーンのベルトの中心で蒼く煌く月の石。
 
月と大地を司る、超エネルギーを秘めた二つのキングストーンが
互いに反応を始める。増幅していく二つの光はやがて部屋を
飲み込み、機械獣母艦を突き破って外部へ放たれた…!!


***富士の樹海***


ヘビ女「なあっ!? ちょ…な、なんだいあれはっ!?」
ジェネラルシャドウ「仮面ライダーJ…それにもう一体は…まさか?」

樹海に鎮座するフォッグ要塞を挟むように、巨大な戦士が二人立っている。
銀色に輝く巨人は、掌に乗せたあの少女をライダーJに差し出した。

シャドームーン「我が力は破壊しか生まぬ…貴様、“守れる”か?」
ライダーJ「もちろんだ。俺の力はそのために在る…」

少女の体が光の玉に包まれ、ライダーの赤いコアの中へと吸い込まれた。
二人の巨大戦士は互いに頷くと、一気に上空目掛けてジャンプした。
150メートルを超える高空から繰り出されるWキック。

ライダーJ「ライダーキーック!!」
シャドームーン「シャドーキーック!!」

フォッグ「ギィィェェェェーッ…!! フォ…フォッグは、不滅なりー…ッ」

ドガァァァンン…
富士の裾野に、再び巨大な大爆発の轟音が響き渡った…

64

◇    ◇


ライダーJ「あんた…何処かで、会ってるような気がするよ。
 初対面のはずなのに…う~ん不思議だ?」
シャドームーン「貴様もか。実は私も…以前、お前に似た
 仮面ライダーと何処かで拳を交えた記憶があるらしい」
ライダーJ「そうか、あんたも…」
シャドームーン「私にはいくつもの記憶があるのでな……
 どれもが断片的で、何が本当の自分なのか思い出せずにいる」
ライダーJ「なあ、この子とはどういう――」

大地の戦士が呼び止めようとしたが、影の王子は振り返らずに歩き出す。

ライダーJ「やはり行くのか? Gショッカーに」
シャドームーン「仮面ライダー…その子はお前が、
 無事に家族の元に送り届けてやれ…」
ライダーJ「あんたに家族はいないのか…?」
シャドームーン「俺に…過去はない」
ライダーJ「分かった。この子は必ず送り届けよう」
シャドームーン「…頼んだぞ」
ライダーJ「過去はないといったのは嘘だな。
 あんたは、本当は失ったものを探してるんじゃないのか?」
シャドームーン「答える必要はない」

天から稲妻が降り注ぎ、その中へシャドームーンが消えようとした時、
仮面ライダーJは最後にもう一度、その背中に語りかけた。

ライダーJ「…いつか、見つかるといいな。本当の自分が」
シャドームーン「フッ…また会おう」

――雷鳴と共に、銀の戦士は姿を消した。


○柴田茜→無事に救出される
△シャドームーン→フォッグをライダーJとのWキックで倒す。
○仮面ライダーJ→フォッグをシャドームーンとのWキックで倒す。
●フォッグマザー→ついに全滅した…。
●ゴルゴム創世王→シャドームーンにサタンサーベルを与える。

【今回の新規登場】
●ゴルゴム創世王(仮面ライダーBLACK)
人類の歴史を影で操作して来た暗黒結社ゴルゴムの支配者。
復活後はGショッカー六柱至高邪神の一人として君臨している。
5万年ごとに交代し、その後継者に二人の世紀王となる若者を選び出し戦わせる。
キングストーン『太陽の石』と『月の石』が揃って初めて次期創世王となれるが、さらに
後一つ、『大地の石』がゴルゴムより分かれた種族により創造されたと言われている。
新たに選別が成されるGショッカー次期創世王に、シャドームーンを推しているのか、
それとも………。その老獪な真意は計り知れない。
太古の地球において、侵略して来たフォッグマザーとは何らかの因縁があるらしい。


『月と大地の邂逅』エピローグ

作者・シャドームーン

65

大爆発を起し、原子の塵に還る機械獣母艦フォッグマザー。
その光景を離れた場所から眺めている人物がいた。

ラ・ドルド・グ「ガライ王子…フォッグマザー、
 共にバトルファイトより脱落…」

黒いコートを羽織り、奇妙な形の算盤を手に何かを数えている
長身の人物。声は男性のものだが、顔は目深に被っている
黒のニット帽と、鼻の上までグルグルに巻かれた白いマフラーの
ためにほとんど判別がつかない。

その怪人物は、算盤を使い終わるとその場から姿を消した―――


◇    ◇


仮面ライダーJと別れた影の王子シャドームーンは、
爆発の余波で丸焼けになった樹海を歩いてた。

シャドームーン「…どうした、かかって来ないのか?」

突然指先から「シャドービーム」を放つ世紀王。
一点に収束された光線は、レーザーのように焼け残った
木々の一本を撃ち抜いた。

「ギェェェェ―ッ!!」

カン高い女の悲鳴を上げて、一匹の蛇が木から地面に
転がり落ちる。立ち上る煙と共に、女改造魔人が現れた。
 
ヘビ女「チィ、レディに向かってなんて乱暴な奴だい!」

傷口を押さえながら悪態をつく女改造魔人の首を、
突然白銀の鋼の手が掴み上げた。

ヘビ女「グゥゥ…!? な、何をする~苦しいじゃないか!」
シャドームーン「ずっと俺をつけていたな…言え、貴様は何者だ? 」

ジェネラルシャドウ「その女は私の命令で動いていたに
 過ぎぬ者――…どうかご容赦頂きたい」

突風が吹き、人間大のトランプ「スペードのキング」が出現した。
トランプが裏返り、ジェネラルシャドウが一礼しながら姿を見せる。

ヘビ女「シャ…、シャドウ様…ごぉっ!? 
  ガハッ、ゲホ…ッ…」

シャドームーンは白い改造魔人を見つめ、掴んでいた首を離した。

シャドウ「私はGショッカーデルザー軍主催のジェネラルシャドウ。
 失礼ながら、影の王子殿の実力が次期創世王候補として
 相応しいものか否か拝見する目的で一部始終を監視させてもらった。
 その非礼は謹んでお詫び致そう…が、これが私の流儀。
 右も左も分からぬ状態の貴方を、組織に案内するのはつまらぬ
 と思いましてな。噂通りの力、しかと見届けましたぞ…フフフフ…」
シャドームーン「この俺を試したというわけか…フン、丁寧過ぎる態度
 が気に障る奴だ。ゼネラルシャドーとやら…貴様、あまり周囲から
 快く思われてはいまい?」
シャドウ「ゼネラルではない、ジェネラルッ!
 俺の名はジェネラルシャドウ だ!! おっと…コホン、失礼ミスター
 …ですが以後はお間違え無きよう…」

シャドームーン「組織に案内する、とか言ったな…では少なくとも今は、
 俺に戦いを挑みに来たわけではないということか」

シャドウ「左様。私の仕事は貴方をGショッカーへ招聘すること。
 …私は他の連中のように、次期創世王の地位になど興味がないのでね」
シャドームーン「フッ…変わった男よ。では何が望みで黄泉帰った…?
 分かっている…俺だけではない、貴様も他の連中も…この世界で
 死して尚、果たさねばならぬ妄執を抱いているから蘇ったのだと。
 聞こう――…お前はその新しい魂で何を目的に生きているのだ…」
シャドウ「ハ…それは勿論…一度は不覚をとった好敵手に
 今一度勝負を挑み、今度こそ我が手でその男の息の根を
 止める事…にございます――」

顔を覆っているフードの奥で、シャドウの両目が一瞬だけ鋭い眼光を覗かせる。

シャドームーン「ほう。…貴様にも、宿敵がいるようだな…」
シャドウ「フフその通り…貴方と同じようにね、ミスター。…ククク」
シャドームーン「フッフッフッフ……」
ヘビ女「…(シャドウはこいつを高く買い過ぎじゃないかねぇ)」

66

宿命の敵の打倒に燃える男達。不適に笑う彼等の前に、
数人の兵士チャップを伴い歩いて来る人物がいた。

黒いマントを羽織り、獅子の彫刻をあしらった兜を被っている
軍人風の男。どことなく気品を漂わせる出立ちは高い地位に
ある事を思わせる。

ダスマダー「ゴルゴムの世紀王シャドームーン殿とお見受けする。
 私はクライシス帝国皇帝直属特別査察官、ダスマダー大佐だ!
 現在はGショッカー秘密警察副長官も兼任している。
 以後お見知りおき願おう!」
シャドウ「あんたか…珍しいな。秘密警察副長官が、
 わざわざお見えになるとは…」
ダスマダー「Gショッカーの造反者フォッグマザーを、我々に成り代わり
 成敗して頂いたシャドームーン殿に一言御礼申し上げたく参上したのだ。
 さすがはかつて皇帝陛下も一目置かれた、ゴルゴムの影の王子……
 世紀王最有力候補と目されるだけの事はある」

シャドウ「(…静観しておきながらよく言う。なるほど、地球を大孵化
 の為の餌場としてしか看做していないフォッグマザーとGショッカーの
 利害は必ずしも一致していない。影の王子覚醒の土台に利用し、
 ついでに始末できれば秘密警察にとっても有益というわけか…)」
シャドームーン「ダスマダーとやら…白々しい物言いだな。
 俺はフォッグの内部で貴様の声を聞いているはずだが――」
ジェネラルシャドウ「………?」
ダスマダー「フッフフ…どうやら貴公には、隠し事はできぬらしい…
 だが私は偽りを述べているつもりはないよ、シャドームーン。
 “この私”が君に会うのはこれが初めてさ…お分かり頂けたかな?」

その一瞬…査察官ダスマダーの瞳が赤い光を放ったのを、
シャドームーンもジェネラルシャドウも見逃してはいなかった。

ダスマダー「私の用件は済んだ。これで職務に戻らせて頂くが……
 我々Gショッカー秘密警察は貴殿の復活と参入を歓迎する。
 では影の王子殿――ようこそGショッカーへ…」

ダスマダーは一礼した後、供のチャップ達と共に
その場から立ち去った――。

シャドウ「ではシャドームーン殿…これより貴殿をGショッカー本部に
 ご案内致す。貴方の着任を待ちわびているゴルゴムの方々に、
 これ以上恨まれてはかないませんので…フフ」
シャドームーン「…断る、と言ったらどうする――…」
ヘビ女「何だって! お前さん…シャドウ様に恥をかかせる気かい?」

女改造魔人が蛇頭の腕と鞭を構え、シャドームーンを睨みつける。

シャドウ「よさんかヘビ女。…断ってどうするおつもりかね? 」
シャドームーン「…少し、気になる事があってな」
シャドウ「ではそれが済めば、私と共に来て頂けるのですな?
 とにかく貴方には、一度“謁見の間”にて至高邪神様に拝謁
 して頂かねば役目が立ちませぬゆえ、ご承知頂きたい」
シャドームーン「…承知した」
ヘビ女「キィィィ…ッ! 青二才の分際で、シャドウ様をなんだと…!」
シャドウ「かまわん。お前は黙っていろ…では、お待ちしておりますぞ」

シャドームーンは二人に背を向けると、何処かへ歩き始めた…

シャドームーン「ジェネラルシャドウ―――…」
シャドウ「ハ…」
シャドームーン「すまぬな…世話をかける。何、すぐに済む事だ…」
シャドウ「フフフ、これも仕事のうちですよ、ミスター」

67

***富士山麓 柴田牧場***
 
茜「お花…、枯れちゃった…グス…」
兄「元気だせよ~茜…あの人に会えただけでもいいじゃないか」
耕司「(フォッグマザーが地中に根を伸ばし、大地の生命エネルギー
 を吸い上げていたのか…すまない、君達の花畑を守れなくて…)」
茜「うん、お兄ちゃん……クスン……?  あっ…!」
弘「え…?  う、うわぁー花が!」
耕司「これは……!?」

見るも無惨に枯れ果てた花々が、みるみる瑞々しい輝きを
取り戻していく…そこには以前と変わらない、
美しく咲き乱れる花畑が蘇った。

ガシャン―――ッ…

耕司「あの音……!」

遠くで微かに鳴ったその音を、改造人間である彼だけが感知できた。

茜「うわーいっ! 耕司お兄ちゃん、見てー! お花が、お花がぁ!」
兄「すげーーーー!  ど、どうして!?」
耕司「ああ…きっと君達の優しい心が、お花に届いたんだよ
 …良かったね! (あいつ…)」


茜「…お兄ちゃん、いっちゃうの?」
耕司「うん。茜ちゃん、弘くん、元気でな。またきっと取材に来るから…」
茜「絶対また来てねっ! それまで私、一生懸命お花のお手入れしてる!」
耕司「ははは、そうだね…ここのお花は不思議な花だから…
 またたくさん写真を撮らせてもらうよ」

兄妹に別れを告げ、バイクのアクセルを吹かす瀬川耕司。

茜&兄「さようならぁーーっ!」
茜「あっ!」

少女が何かを言い忘れたように、去っていくオートバイの
後を追いかけ、精一杯手を振る。

茜「ありがとぉーーー!  仮面ライダぁーーーっ!」

段々と遠ざかる少女の声、バイクを走らせる瀬川耕司は、
ヘルメットの下で微笑を浮かべていた。

耕司「(シャドームーン…今度会う時は、敵同士か)」


◇    ◇


シャドウ「用は済んだようですな、ミスター」
ヘビ女「………」
シャドームーン「待たせたな…では行こう、Gショッカーとやらに」
シャドウ「畏まりました…おっと、俺からも貴殿に言わせて頂こう。
 ――Gショッカーへようこそ、影の王子殿…フフフ」
 
シャドウのトランプが舞い、三人の姿が消える。
太陽の子RXと、影の王子シャドームーン…煌き、ぶつかり合う心が
かつて二人を分かった富士の地で、知られざる戦いの記録が幕を閉じた―――。


△シャドームーン→シャドウの導きでGショッカー本部へ。
○仮面ライダーJ→シャドームーンの本心を見抜く。
●ジェネラルシャドウ→シャドームーンを本部に連れ帰る。
●ラ・ドルド・グ→フォッグの全滅を見届け、姿を消す。
●ダスマダー→シャドームーンに挨拶に現れる。

【今回の新規登場】

●ラ・ドルド・グ(仮面ライダークウガ)
超古代戦闘民族グロンギの数少ない“ラ”族に属する怪人。ラ族はゲゲルと呼ばれる
グロンギ族の行う殺人ゲームの進行役で、彼はゲリザキバスゲゲル(セミファイナルゲーム)
を行う“ゴ”集団の審判役ような存在。バグンダダなる算盤に似たカウンターを常に持ち歩いている。
Gショッカーでは秘密警察に属し、バトルファイト参加者(世紀王候補)の成績を計算している。
戦闘の必要がある時のみコンドル種怪人の姿に変身し、武器としてトンファーを用いる。

●ダスマダー大佐(仮面ライダーBLACKRX)
クライシス帝国の皇帝直属特別査察官。皇帝の所懐を代弁して、ジャーク将軍以下
地球攻撃兵団を独断で処罰できる大佐の権限を持つ。何度倒されても黒煙と化して
復活を果たす不滅の術を体得しているが、その秘密は彼自身が皇帝の分身だったからである。
Gショッカー秘密警察副長官として生前と変わらぬ暗躍ぶりから、組織内では煙たがられている。
なお皇帝の分身とはいえ彼には彼自身の人格も存在している模様。 


『社長復活!!』

作者・大魔女グランディーヌ

79

***富士・青木ヶ原樹海***

富士の麓にある青木ヶ原の樹海は、
溶岩流の上にツガ、ヒノキを主に、モミ、カエデ類、シダ類などの
高木が生育すし、樹齢200年~300年ともいわれる高木の根元には
ソヨゴ、アセビ、ミヤマンキミの常緑広葉樹林が多く、
昼なお暗く、まさに密林である。

零児「一気に叩き伏せる、いくぞ!」
小牟「ほっとばしっとるのぉ~。若い若い!」

その密林の奥地で、金属音と銃弾が飛び交う。
真っ黒い霧の様な塊――いや、時空の穴。
音もなく宙に漂うそれからは、あやしげな燐光に包まれた
異形なる未知の魔物たちが次々に飛び出してくる。

ベレス「キヤヤヤヤ!」
ブリザードマン「ゲヒッ、ゲヒッ、ゲヒッ!」
バアラック「グウォルルルオーン!」

巨大な大鎌を手にしたベレス、
凍りつく息を吐くブリザードマン、
蝙蝠の翼と額に一本角を生やしたバアラック。
それら魔物と戦う(無論彼らがこれら魔物たちの名や
素性など知る由もないが…)二人の男女。
一人は白の混じった黒髪と左額に古傷、
赤と黒の服をしていた男性。もう一人は九尾のような金髪のポニーテールと
赤と黒のチャイナドレスをした女性である。

零児「中央に踏み込めれば…!
 銃の型でいくっ!」
小牟「フォローはしようかの」
零児「仕掛ける!」

上空へと華麗に舞いながらジャンプする二人。

小牟「とっておきじゃ!」
零児「ひとつ! ふたつ! みっつ! よっつ! いつつ! むっつ!」
小牟「ほいほいっと~♪ あ、チョイな~♪ あ、もうひとつ~♪」
零児「フゥー…これで、終わりだ!」
小牟「ほとんど大道芸じゃのう」

小牟のフォローの下、零児の愛用の銃から発射された
『大霊体処理』の施されている弾丸は次々と地上の魔物たちに命中。
魔物の飛び散った肉片が無残に溶けていく。

小牟「興奮醒めやらぬ感じじゃなぁ!」
零児「調子に乗りすぎるなよ」

日本政府直属の特務機関『森羅』のメンバーである有栖零児と小牟。
この二人は組織の上層部から指令を受けて、
最近世界各地、そして日本でも発生している時空間の歪みらしき
幾つかの事例を調査して回っているのだった。

遭遇した魔物を全て片付け、改めて周囲を見回す二人。
さっきまで宙に浮いて動かなかった時空の穴はもう消えていた。

小牟「近頃は"ゆらぎ"から出てくる見たこともない魔物も増えおったな。
 おかげでわしらは大忙しじゃ」
零児「報告による"ゆらぎ"と思われる時空間の歪みは、
 過去例にないパターンの派生らしい。
 今までのゆらぎは逢魔の陰謀により生まれたもの、
 または無差別に起こる自然現象だった。
 それにもあてはまらないものとすればもしや。」
小牟「ところで零児、ぬしは"黄泉がえり"の噂は聞いとるか?」
零児「…どうした急に? 例の死人が生き返ったとかいう
 話だろう。まだ公式には確認されていないが、近々厚生労働省の方で
 調査に乗り出すとかいう……それがどうかしたのか?」
小牟「これはわし仙狐としての勘なんじゃがのう。
 もしかすると今回の"ゆらぎ"の現象とその騒ぎは
 何か関連があるような気がするぞ。ぬしはどう思う?」
零児「さあて、どうだろうな…。どちらにせよ
 今の俺たちの任務には関係ない。
 とりあえず一度撤収するぞ」

80

一方、その頃……。

山本アナウンサー「ニュースの時間です。死者が当時のままの姿で蘇るという事例が
 世界各地で報告されている問題について、厚生労働省が非公式に実態調査に乗り出しました。
 次のニュースです。世界各地で時空間の歪みが度々目撃されている件について、
 地球連邦政府の国際科学技術庁は声明を発表し、一般人は不用意に
 近づかないように注意を呼びかけています。
 ……たった今、新しいニュースが入ってきました。木場勇治前社長就任に基づく
 社内クーデター以来、行方不明になっていて死亡説も流れていた、
 スマートブレイン社・元社長、村上峡児氏が数ヶ月ぶりに元気な姿を現しました。
 現場にいる山田リポーター、聞こえますか?」

テレビの画面が切り換わり、記者会見場の建物の様子が映る……。
都内の中心繁華街にある某高級シティホテルでは、
ロビー前で多くの報道陣がごった返していた。

山田そら「はい、こちら会場の山田です。
 それでは村上氏の緊急記者会見の様子をご覧ください」

(テレビの画面が切り換わり、記者会見場である大ホールの
檀上に設けられた会見席に堂々と着席する村上の様子が映る……)

村上「……全国の皆様、ご心配をおかけし誠に申し訳ありません。
 私、村上峡児は健在であります。此の度、こうして私が
 再びスマートブレインの社長職に復帰した上は、花形前会長、
 木場前社長の意思を引き継ぎ、社会に貢献していく所存でございます。
 既にある極秘プロジェクトを進めており、まもなく皆様にもお知らせできるかと思います。
 どうか、これまで以上のご支援とご援助をお寄せくださいますよう、
 心からお願い申し上げます。思えば花形前会長、
 並びに木場前社長も公私共に我が社に偉大な業績を遺され――」

81

***スマートブレイン本社ビル・54階・社長室***

村上の社長復帰会見の録画放送の途中で、
リモコンからテレビのスイッチを切るスマートレディ。
そして村上に会話を振る。

レディ「本当はそんなこと露ほども思ってないんでしょ?」
村上「――当たり前だ! 私はこの国の全ての人間から、
 花形や木場勇治の記憶など消し去ってやりたい!
 スマートブレインの社長の地位に最も相応しいのはこの私だ。
 下らない社交辞令という奴ですよ……」

スマートレディの問いかけに村上は
社長の椅子に踏ん反り返りながら、激高してこう言い放った。
再びスマートブレインの社長の座へと返り咲いた村上は、
邪魔な旧花形派の役員達の粛清を密かに完了させ、
社内の権力基盤を以前より完璧に近い形に固めていたのである。

レディ「では社長さん、早速報告しておきますわ。
 地球連邦軍の極東支部で大規模な人事異動があったみたいです♪」
村上「…新しい極東基地の司令官は、あの三輪防人長官ですか。
 背後では十中八九ティターンズが糸を引いていますね」
レディ「ティターンズが?」
村上「現世に黄泉還ったのは我々だけではないという事ですよ。
 これをご覧なさい」

村上は何日か前の写真週刊誌を机の引き出しから取り出し、
ある1ページを指差して、スマートレディにそこを読むように促す。

レディ「――え~と、なになに?
 地球連邦軍の極東方面軍高官に相次ぐ汚職・不祥事の発覚…。
 ふ~ん…」
村上「日本駐留の地球防衛戦力を手に入れるために、
 邪魔者を更迭するべくでっち上げられたスキャンダルでしょうね。
 今後世界は否応なしに再び混沌の時代を迎える事でしょう。
 連邦軍自体も泥沼の内部抗争でこれからはどうなることやら……」

そう言って静かに席から立ち上がった村上は、
後ろへと振り返り、社長室の全面ガラス窓から階下を見下ろす。

村上「そういえば未確認生命体の騒ぎについて
 今のニュースでは何も触れられていませんでしたね」
レディ「本部からの報告ではグロンギの皆さんも
 かなり派手に動いているはずなのにん♪」
村上「これももしかすると"彼ら"の圧力か…? 極東基地に三輪防人が着任した以上、
 GUYS JAPANも"彼ら"――地球至上主義者たちによって掌握されるのは時間の問題…。
 メテオールが向こうの手に渡ると、少々厄介な事になるかもしれませんね。
 さて、どうしたものか。影の王子が復活した以上、我々オルフェノクも
 うかうかしてはいられません。フフフ…」

82

○有栖零児、小牟→日本各地での時空の歪み現象を調査すると同時に、
 時折、時空の穴から這い出して来る危険な生物を退治して回っている。
●村上峡児→復活し、スマートブレインの社長に復権。

【今回の新規登場】
○有栖零児(NAMCO×CAPCOM)
 超常現象を対処する日本の政府機関『森羅』所属のエージェント。
 10年前に死んだ、同じ組織の構成員であった父の形見、
 ”護業(ごぎょう)”と呼ばれる武器を駆使して戦う。
 頭の大きな傷も、10年前に受けたものである。


○小牟(NAMCO×CAPCOM)
 超常現象を対処する日本の政府機関『森羅』所属のエージェント。
 零児の先輩で、彼に任務のイロハを教えたのは彼女である。
 剣技、銃撃から妖術、符術、占術などに精通し、
 パートナーである零児をバックアップする。


●ベレス(ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち)
 大きなカマと翼を持つ悪魔のモンスター。
 呪文が得意で、ベギラマとマホカンタの呪文を唱えてくる。


●ブリザードマン(ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち/ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁)
 炎の戦士より上位種族である冷気使い。Ⅳではザキ、ザラキの呪文を唱え
 凍りつく息を吐く。Ⅴではヒャダルコの呪文と凍える吹雪で冷気攻撃をしてくる。


●バアラック(ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち)
 ピクシー系最強の種族。見た目以上に攻撃力が高い。
 同種のバアラックの他、ベホマスライムも仲間に呼んでくる。


○山本アナウンサー(仮面ライダー)
 『仮面ライダー』53話、55話等に登場するテレビニュースのアナウンサー。


○山田そら(超者ライディーン)
 女性芸能リポーター。


●村上峡児=ローズオルフェノク(仮面ライダー555)
 スマートブレイン社の代表取締役社長兼CEO。
 その実体は世界制覇と人類絶滅を目論むオルフェノクの総司令官。


●スマートレディ(仮面ライダー555)
 スマートブレイン社の社長秘書兼スポークスウーマン。その正体は不明。
 幼児に対するような独特の口調で喋る。 


『地球至上主義の台頭』-1

作者・大魔女グランディーヌ

83

***バルカンベース***

三輪「諸君、よく来てくれた。
 ワシが地球連邦軍極東支部長官の三輪防人准将である」
一条「同じく、極東支部の副長官として地球守備隊関東管区総司令と
 スカイキャンプ最高責任者を新たに任されることになった一条だ」
三輪「諸君らのこれまでの活躍はこのワシの耳にも届いている。
 まずはその労をねぎらおう」

鮫島欣也「よく言うぜ。ここ最近世界各地での
 Gショッカーの攻勢も全部俺達の責任だとかわめいていたくせに」
飛羽高之「(小声で)…やめろ、鮫島。長官がこっちをにらんだぞ」

三輪「ゴホン。これより諸君らはワシの指揮下で、
 軍事作戦に参加してもらうことになる」

三浦参謀長(やはり、そう来たか…)

三輪「そして、これだけは忘れずにいてもらいたい」
一条「諸君らの戦力は、あくまでも『地球』と『地球人』を
 防衛するためのものだ」
三輪「それら以外の者達のために戦う必要はない!」
久保田「長官、スペースノイドやコーディネーターは見捨てても
 構わないとおっしゃるのですか?」
三輪「久保田博士、君は地球人かね?」
久保田「は…?」
三輪「地球人か? それとも宇宙人かと聞いておるのだよ!」
久保田「………」
一条「いいかね、久保田博士。地球人類の基盤は地球にあるのだよ。
 スペースノイドなど、それに寄生するダニのようなものだ」
三輪「ましてや、空の化け物が如きコーディネーターまで
 守ってやる必要などどこにある?」
三浦「地球さえ守れば、コロニーやプラントは
 どうでもいいということですか?」
一条「当然だ。コロニーやプラントは破壊されれば
 作り直すことが可能だが…地球はそういうわけにはいかんのだ!」
三輪「それに、これまで宇宙人共は地球の恩恵にすがって生きてきたのだ。
 この有事に連中を構っている余裕はないわ!」

天堂竜(あの考え方…まるでティターンズと同じじゃないか…)
大空勇馬(なんで、あんな奴が極東支部の長官になれたんだよ…)
豹朝夫(よりにもよって三輪と一条の野郎が
 ティターンズの後押しで返り咲くだなんて…)
嵐山美佐(お父さんや倉間鉄山将軍、江戸川総司令が更迭されなければ…
 こんなことにはならなかったのに…)
四日市昌平(あのヒルカワとかいう記者のせいだ。
 あることないこといい加減な記事ばかり週刊誌に載せやがって!)

84

三輪「では、早速だが諸君には
 Gショッカー殲滅作戦に参加してもらう」
星野吾郎「Gショッカー殲滅作戦?」
一条「うむ。この地球上には依然として
 あのショッカーの名を冠した悪の一大勢力が
 世界各地で活動を続けており…ここ数ヶ月、奴らは
 偵察と思われる部隊を地上に送り込んで来て
 次々と怪事件を引き起こしている」
三輪「今回の作戦は今までのように
 奴らが何か悪事を仕出かすまで待っているのではなく、
 こちらからGショッカーの本拠地を探し出し、
 攻撃を仕掛けて殲滅するという画期的なものなのだ」

四日市(何を威張ってんだ。攻守が逆になっただけだろうが)

三輪「すでにゲッターチームと
 グレートマジンガーが奴らの本拠地の
 探索任務についておる」
一条「彼らからの報告が入り次第、
 諸君らには全力でGショッカーの勢力を叩き潰してもらいたい!」
小田切綾「しかし、三輪長官…それに一条総司令、
 我々がGショッカーの本拠地へ攻撃を仕掛ければ、
 日本の防衛が手薄になります」
三輪「戦力は諸君ら以外にも存在している。
 それに、Gショッカーを殲滅するためならば、少々の犠牲には目をつぶる」
伊吹「一般市民を犠牲にしても構わないとおっしゃるのですか?」
三輪「異星人は黙っていろ! 貴様に地球防衛を語る資格はない!」
伊吹「……!」
剣飛竜「三輪長官。伊吹長官や俺達は今まで
 命を懸けて大星団ゴズマと戦ってきました!
 今の発言は取り消してください!」
三輪「異星人の手先が何を言う!
 本来ならば、貴様ら電撃戦隊は敵対分子として
 捕えられてしかるべきなのだぞ!」
剣「敵…!?
 今まで地球と宇宙の平和のために戦って来た俺達が、
 敵だと言うんですか!?」
渚さやか「ひ…ひどいわ、そんな言い方…!」
タケル「三輪長官! 伊吹長官やチェンジマン達は
 今も地球のために戦っています!
 それが嘘でないことは俺達マスクマンが証明します!」
三輪「ほう、証明だと?
 チューブのスパイだった地底人の女王と不義密通していた貴様が
 一体何を証明するというのだ?」
タケル「な…!?」
一条「いいか? 今の極東支部は
 前任の岡や大塚、武田の時のように甘くはないぞ!」
三輪「貴様らスーパー戦隊には地球を守る兵士として
 ワシの指揮下で戦ってもらう! 覚悟しておけ!」

吾郎「………」
疾風翔「…やれやれ、これからはやりにくくなりそうだぜ…」

85

***東京・赤坂 某代議士の別邸***

???「よくやってくれたヒルカワ君。
 これで極東地区の地球防衛戦力の大半は我らの手に落ちたも同然。
 約束の報酬だ。受け取りたまえ」

政府の高官と思しき紳士風の男は、
用意した札束をテーブルの上に放り投げた。
それを手に取り、ニヤニヤ薄ら笑いを浮かべながら
大事そうに自分の懐にしまうジャーナリスト風の若い男。

ヒルカワ「まあこちらは頂ける物さえ頂ければ
 どんな記事だって書きますよ。フフフ…」
???「では最後の仕上げといこう。
 次はこの男のスキャンダルをマスコミで
 取り上げてもらいたい」

紳士風の男は一枚の写真を取り出す。
それに写っていたのは、一人の男性の顔だった。

ヒルカワ「…フフ、なるほどね。
 GUYS JAPAN総監サコミズ・シンゴですか。
 いいですよ。私もGUYSには恨みがありましてね」
???「GUYS JAPANの不祥事が明るみとなれば、
 ニューヨークのGUYS総本部においても
 きっと岸田長官あたりが騒ぎ出すだろう。
 そうなれば全ては我々の思うがままだ。フハハハ」

86

●三輪防人、一条総司令→ティターンズ派として、連邦軍極東支部の
 新任の長官と副長官としてそれぞれ赴任。
 すでに連邦軍はGショッカーの存在を察知し、対抗策を模索している。
●ヒルカワ→さる日本政府の大物らしき謎の人物より、
 GUYS JAPAN総監サコミズ追い落とし工作の指示を受ける。
○どうやらティターンズの差し金により、
 江戸川権八総司令、倉間鉄山将軍、嵐山大三郎長官の3人は、
 日本を離れて海外の部署に異動になったらしい。
○軍属のスーパー戦隊は、全て三輪長官の指揮下に配属されてしまう。

87

【今回の新規登場】
○飛羽高之=二代目バルイーグル(太陽戦隊サンバルカン)
 地球平和守備隊の空軍将校。同期である大鷲龍介の後を受け新バルイーグルに任命された。
 剣術は抜群の腕前で、普段から鍛錬を欠かさず日々剣の技に磨きをかけている。
 また、非番の際は町道場で剣道の師範を務めている。


○鮫島欣也=バルシャーク(太陽戦隊サンバルカン)
 地球平和守備隊の海軍将校。海洋学者でもあり、大学時代は海洋科学館の小坂教授に師事していた。
 海を愛しマリンスポーツを得意とするほかオートバイも自在に乗りこなす。


○豹朝夫=バルパンサー(太陽戦隊サンバルカン)
 地球平和守備隊レインジャー部隊所属。どんな絶壁でも軽々と昇り降りできるという、
 まるで豹のように俊敏な運動神経を持っている。細身ながらもカレーが大好物の大食漢。


○嵐山美佐(太陽戦隊サンバルカン)
 嵐山長官の最愛の一人娘。太陽戦隊の通信アシスタントや、
 長官の秘書として活躍する。 普段は「スナック・サファリ」で
 ウェイトレスとして父を手伝っている。


○剣飛竜=チェンジドラゴン(電撃戦隊チェンジマン)
 地球守備隊日本支部航空部隊将校。頭に血がのぼると突っ走ってしまう
 直情的で一本気な熱血漢だが、冷静に物事を見極めていくところもあり、
 リーダーとして責任感も人一倍である。


○疾風翔=チェンジグリフォン(電撃戦隊チェンジマン)
 地球守備隊レンジャー部隊将校。とにかく女性に甘く、一見軟派に見られがちだが、
 根は真面目で一本気な一面も持つ。常にクシを持っていて、
 戦闘中でも髪形を整えるなど、古典的なキザを披露する。


○大空勇馬=チェンジペガサス(電撃戦隊チェンジマン)
 地球守備隊陸上部将校。メカ工作のプロでもあり、小型ボール爆弾など、
 各種の秘密兵器を考案することも得意で、爆弾を扱った任務が得意。


○渚さやか=チェンジマーメイド(電撃戦隊チェンジマン)
 地球守備隊作戦部隊将校。作戦部隊一の頭脳の持ち主であり、
 コンピューターのように素早く敵の行動&作戦や戦略を見抜く。


○伊吹長官=ヒース星人ユイ・イブキ(電撃戦隊チェンジマン)
 電撃戦隊を組織した人物で、地球守備隊の有能な指揮官。人知を超えた科学力を持つ。
 宇宙の伝説や生物に関する知識が豊富で、チェンジマンの大きなバックボーン。
 その正体は、アースフォースの未知なる可能性に賭け、地球へやって来たヒース星人。

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○タケル=レッドマスク(光戦隊マスクマン)
 マスクマンのリーダーで、空手と剣技を駆使して戦う若者。
 夢はF1レーサーとなって、世界のF1を制覇すること。


○天堂竜=レッドホーク(鳥人戦隊ジェットマン)
 地球防衛隊スカイフォースの隊員。スカイフォースの全隊員の中から
 鳥人戦隊に抜擢された優秀な戦士で、使命感に強い。
 ホワイトスワン=鹿鳴館香と結婚。


○小田切綾長官(鳥人戦隊ジェットマン)
 鳥人戦隊を統括する女長官。地球防衛隊スカイフォースの指揮官幹部の一人。
 常にビシッとした制服を着て、滅多に感情を表には出さない。
 格闘技、戦闘機の操縦に関しては、第一級のプロフェッショナル。
 あらゆるメカの知識に精通している。


○星野吾郎大尉=オーレッド(超力戦隊オーレンジャー)
 空手、剣道、柔道など、日本武道を長じているオーレンジャーの隊長。
 U.A.時代には中尉だったが、オーレンジャーに配属されて大尉に昇格した。


○四日市昌平中尉=オーグリーン(超力戦隊オーレンジャー)
 ボクシングが得意なオーレンジャー副隊長。5人の中で最年長らしい
 落ち着きを持ち、事件の本質を見通す推理力を持っている。その実は、
 突拍子もない思考の持ち主。


○三浦尚之大佐(超力戦隊オーレンジャー)
 国際空軍UAOH超力戦隊参謀長。超力を発見した考古学者でもあり、
 古代文明の各種資料を分析してオーレンジャーの強化服やオーレンジャーロボ、
 レッドパンチャーを開発した優秀な科学者でもある。


○久保田衛吉博士(電磁戦隊メガレンジャー)
 世界科学連邦I.N.E.T.に所属する丸顔の科学者。研究のさなかに、
 三次元と別の次元が存在することに気づき、彼らの侵略の可能性があることを予見し、
 地球防衛プロジェクト「メガプロジェクト」をスタートさせた。
 邪電王国ネジレジアのDr.ヒネラー(鮫島博士)とは旧友にして因縁の間柄。


●一条総司令(鳥人戦隊ジェットマン)
 地球防衛隊スカイフォースの強硬派。元ネオジェットマンの指揮官。


●三輪防人准将(闘将ダイモス/階級は第4次スーパーロボット大戦S)
 防衛軍太平洋本部司令長官。筋金入りの軍国主義者。戦闘のことしか考えていない男で、
 「愛国主義者が暴走したらこうなる」という見本のような人物。


●ヒルカワ(ウルトラマンメビウス)
 記事の捏造も平然と行なう悪徳ジャーナリスト。その行動は自己中心的で卑怯。


『地球至上主義の台頭』-2

作者・大魔女グランディーヌ

89

***フェニックスネスト・総監室***

ここはGUYS JAPAN基地であるフェニックスネストである。
その総監室に、日本政府・国家安全保障局から
数人の人間たちが乗り込んで来ていた。

シキ「サコミズ総監、ご同行願います」
ミサキ「お待ちくださいシキ査察官、令状は!?」

サコミズを連行しに現れたシキの前にして、
ミサキ総監代行が逮捕状の提示を求めて抵抗する。

シキ「周囲の目もありますので、この場は任意同行ということで」
サコミズ「わかりました。参りましょう」
ミサキ「――総監!?」
サコミズ「大丈夫。疑いはすぐに晴れる。
 私が留守の間、GUYS JAPANの事をよろしく頼みます」
ミサキ「わかりました。お帰りをお待ちしています…」

総監服姿のサコミズは任意同行の求めに素直に従い、
シキら国家安全保障局の男達に伴われてフェニックスネストを後にした。


***東京・赤坂 某代議士の別邸***

南「先生、吉報です。たった今GUYS JAPAN総監の
 サコミズ・シンゴが逮捕されました」
???「ご苦労だった南君。これで全ては我々の予想通りに
 進んでいるようだな」

南と呼ばれた警察の制服姿(それも身につけている階級章からは、
警察内部でもかなり上位に位置すると思われる)の男から
報告を受ける謎の人物…。

南「これでGUYS JAPAN総監は空席になりましたが、
 後任には三輪長官に兼任させるのですか?」
???「いや、GUYSニューヨーク本部から
 岸田長官が暫定の総監として赴任してくる手筈だ」
南「…岸田長官をですか? しかし彼は我々ロゴスの同志ではありません。
 岸田長官よりも我らの正式な同志でもある高倉司令官の方が
 よろしいのでは?」
???「構わん。上手くいけば岸田長官も
 我々の同志に取り込む事が出来るかもしれん」
南「そこまでお考えでしたか…」
???「これで極東の連邦軍はほぼ我らの手中に収まった。
 残るは日本の警察機構だが、そちらの方はどうなっているかね?」
南「ご安心を。まもなく警視庁も我々の掌中に落ちるでしょう。 ところで宇宙警察の地球署の方はいかがなさいますか?」
???「まだ宇宙警察を敵に回すには早い。 しばらくは放っておけ。仮に宇宙警察が我らの目論見に感づいたとしても、 アリエナイザー絡みの犯罪でもない限り、奴らには手は出せん」

90

***ニューヨーク沖・GUYSインターナショナル総本部*** 

タケナカ「ではブラッドマン卿には、

 あくまでもサコミズ総監のスパイ容疑は明白であると言われるのか?」

ブラッドマン「さよう。かつて自身の部下であるGUY JAPANの隊員に異星人が潜り込んでいた事を 黙認していた事からしても、スパイの事実は歴然と申してよろしかろう」

 

 ニューヨークのGUY本部にいるタケナカ最高総議長に、

日本でのサコミズ逮捕の一報を通告に現れたのはフィクス・ブラッドマン卿。

地球連邦政府及び軍の重鎮である。 

 

タケナカ「お言葉だがその程度ではスパイの罪は歴然とはいえまい。 

 仮にもGUY JAPAN総監ほどの高い地位の人間を、確たる証拠もなしに――」

ブラッドマン「待たれい! この件には確たる証人がおる。 

 I.N.E.T.の来島副長官と米国政府のグラント国防長官の両名が 

 いつでも証言台に立つ用意があるそうだ。」

タケナカ「来島氏はともかく、ミスター・グラントと言えば 

 サンクフレシュ製薬との癒着の疑惑が取りざたされている人物ではないか。 

 そのような人物の証言を当局が取り上げるとは――」

ブラッドマン「タケナカ総議長、これも全ては地球連邦のため。 

 我々政治に携わる者は、清濁併せ呑む事もまた必要な事だ」

タケナカ「う、うぬぬ……!!」 

 

***フェニックスネスト*** 

 

サコミズ総監の逮捕から数日後、
GUYSニューヨーク本部から岸田長官が佐竹参謀を伴いフェニックスネストに姿を現した。
MATの岸田文夫隊員の叔父でもある岸田長官がGUYS JAPANを訪れるのは、
極めて異例の事であった。

岸田「諸君、サコミズ・シンゴ君は承知の通り国家安全保障局によって先日逮捕された。
 罪状はスパイ容疑。
 恐らく、彼が再び総監の座に――いや、GUYSに復帰する事はもうないだろう。
 ニューヨークのGUYS本部は今、彼の正式な追放処分を協議している所だ」

サコミズがGUYSから完全に追放される――。
フェニックスネストに召集されたGUYS各部隊の隊長達は、
事態の深刻さを伝える岸田長官の言葉に揃って息を呑む。

伊吹「岸田長官、サコミズ総監の有罪はもう証明されたのですか?」
岸田「…いや、今はまだ取り調べの最中だ。
 詳しい事はこれから分かって来るだろう」
日浦「でしたら、まずは真相を明らかにするのが先決ではないですか?
 それが分かる前に追放処分というのは――」
岸田「日浦君、気持ちは分かる。
 だが、既にサコミズ君の問題については憶測も含めた情報がマスコミに流れ、
 世論はGUYS JAPANの一大不祥事として騒ぎ始めてしまっている。
 サコミズ君にかけられた疑惑の真偽がどうであれ、
 このまま事を放置すれば、GUYS JAPANの日本国民からの信頼は揺らぎかねん」
佐竹「地球平和守備隊の方でも近頃はスキャンダル疑惑が相次ぎ、
 江戸川総司令らが異動になったばかりだ。
 問題続きの極東支部に、世論は毅然とした対応を求めているのだよ」
日浦「そんな…」

ある雑誌記事を発端に過熱したマスコミ報道の多くが事実無根なのは、
極東支部の現場にいる人間なら皆よく分かっている。
それなのに、世間への体面だけのためにあの清廉なサコミズを切ろうとは…。

岸田「ついては、ニューヨークのGUYS本部が正式な後任を発表するまで、
 この私がGUYS JAPANの新たな総監として指揮を執る」
佐竹「ちなみにトリヤマ補佐官とマル補佐官秘書の二人には
 伊豆の地球連邦軍極東支部基地に出向してもらった。
 諸君にはこれより、岸田新総監の指揮の下、
 三輪防人長官の連邦軍極東支部並びに一条総司令指揮下の
 地球平和守備隊関東管区とも共同して地球の防衛に励んでもらう事になる」
岸田「宇宙の果てから地球を狙う宇宙人は未だ多い。
 既に宇宙人の一部はGショッカーなどの組織の一員として地球に潜り込み、
 地球人を脅かす恐るべき侵略作戦を企てているんだ。
 そしてもしかすると、それはGUYSとて例外ではなかったのかも知れん。
 なあ、アイハラ君?」
アイハラ「な――」

CREW GUYS JAPANのアイハラ・リュウ隊長が絶句する。
M78星雲のウルトラ戦士としての正体を持ちながらかつてGUYSに所属し戦っていた、
“彼”――。
ウルトラマンメビウス=ヒビノ・ミライ元隊員の事を岸田は暗に批判しているのだ。

アイハラ「ミライは――、
 ウルトラマンメビウスは地球人の敵などではありません!」
岸田「今や宇宙の情勢は複雑怪奇。何が起こるか分からんという事だ。
 いいか、地球の平和は地球人の手で守ってこそ価値がある。
 諸君らには、かつてない地球の危機を自覚し、
 これまで以上に気合を入れて任務に取り組んでもらいたい」

アイハラ(何てこった。今度の総監はウルトラの星まで敵だと疑っているのか?
 かつてない地球の危機だからこそ、
 またあの時のように地球人と宇宙人との絆が必要だってのに…)
伊吹(おかしい。岸田長官の言動が以前より地球ナショナリズムに傾いている。
 さては三輪長官と同じく、岸田長官の、
 いや、この一連の騒動全体の背後にティターンズの存在が――?)

91

○サコミズ・シンゴ→国家安全保障局に逮捕される。

○タケナカ最高総議長→サコミズを擁護するが、ブラッドマンに押し切られる。

●フィクス・ブラッドマン→サコミズを弁護するタケナカの主張を押し切る。
●南雅彦→黒幕にサコミズ逮捕の一報を報告する。
△岸田長官→佐竹参謀を伴い、GUYS JAPANの暫定新総監に就任。
○トリヤマ補佐官、マル補佐官秘書→佐竹参謀の発言から、
 連邦軍極東支部の三輪長官の下に出向した事が判明。

【今回の新規登場】
○サコミズ・シンゴ(ウルトラマンメビウス)
 CREW GUYS前隊長にしてGUYS JAPAN総監。科学特捜隊時代の長期宇宙勤務の際の
 ウラシマ効果のため若く見えるが、実はタケナカ最高総議長と同年代の年齢。
 宇宙警備隊隊長ゾフィーが地球上で活動する際に、肉体を共有する存在でもある。


○ミサキ・ユキ(ウルトラマンメビウス)
 GUYS JAPAN総監代行。怪獣が出現した際には、
 総監に代わって作戦を直接GUYSのメンバーに伝える。


△シキ査察官(ウルトラマンメビウス)
 日本政府・国家安全保障局の人間。

 

○タケナカ最高総議長(ウルトラセブン/ウルトラマンメビウス) 

GUYSインターナショナル総本部の最高責任者。

連邦軍極東基地参謀時代は ウルトラ警備隊司令を兼任していた。

全世界のGUYSを全て統率・指揮する立場にある。冷静な判断力で事件を度々解決に導く。


●フィクス・ブラッドマン中将(機動新世紀ガンダムX) 

政府再建委員会の首班。新連邦軍総司令。


●南雅彦(仮面ライダー555)
 警視庁の幹部で、対オルフェノク秘密組織の責任者。
 "人にして人の心を失った男"である。


○伊吹竜(帰ってきたウルトラマン)
 怪獣攻撃隊MAT日本支部の2代目隊長。
 加藤勝一郎前隊長の元上官で、彼の後任としてニューヨーク本部から転任して来た。
 実戦経験も豊富でパイロットの腕は一流。信州の実家に妻と一人娘がいる。


○日浦晴光(ウルトラマンコスモス)
 国際的科学調査組織SRCの精鋭部隊・チームEYESの隊長。
 SRCの研究員出身で、理系の頭脳と豪快な行動力を兼ね備え、
 部下に慕われる大らかさの反面、断固として上層部に意見する果断さも持ち合わせる。


○アイハラ・リュウ(ウルトラマンメビウス)
 サコミズ・シンゴ前隊長の後任として隊員から昇格したCREW GUYS JAPAN隊長。
 隊員時代から「地球は地球人の手で守る」という信念を強く持った熱血漢で、
 ヒビノ・ミライ隊員=ウルトラマンメビウスとは初期の確執を越えて厚い友情で結ばれた。


△岸田長官(帰ってきたウルトラマン)
 MATの岸田文夫隊員の叔父でもある地球防衛庁長官。
 融通の利かない古風な軍人気質で、常に世論を気にして再三MATに解散を迫る。


△佐竹参謀(帰ってきたウルトラマン)
 岸田長官の部下で地球防衛庁の参謀。
 岸田と同じく常に世論を第一に考える傾向がある 。


『地球教の影』

作者・大魔女グランディーヌ

92

***ジャブロー・ティターンズ基地***

ここは南米アマゾン川流域地下にある巨大地下空洞に築かれた
地球連邦軍の旧司令部ジャブローである。
現在はティターンズが拠点のひとつとして接収し、使用していた。

ジャマイカン「閣下、ジュピトリスのパプティマス・シロッコから通信が入っております」
ジャミトフ「シロッコめ。ようやく、こちらの呼び出しに応じたか…」

〔通信のコール音〕

シロッコ「映像通信でのご無礼をお許し下さい、ジャミトフ閣下」
ジャミトフ「シロッコよ。こちらにはザフト軍がジェネシスを
 再建したという情報が入っているが…これはどういうことだ?
 貴様を介して結んだジュピトリアンと結んだ密約では、
 ジェネシスに関する項目は含まれていなかったはずだ」
シロッコ(………)
ジャミトフ「ザフトがヤキン・ドゥーエとボアズを再建することまでは
 容認していたが、ジェネシスの件は聞いておらんぞ」
シロッコ「我々の調査によりますと、ザフト軍ザラ派によるジェネシス再建は
 彼らの情報かく乱であるようです」
ジャミトフ「情報かく乱? 戯言はよせ。
 ザフトはこのジャブローをジェネシスで撃つつもりなのだろう?」
シロッコ「パトリック・ザラがそのつもりなら、とっくにジャブローは壊滅しております」
ジャミトフ「…ならば、単なる脅しだと言うのか?」
シロッコ「おそらくは。

 こちらでもザフトの手によって再建されたジェネシスの存在を
 確認しておりません。それよりも…ザフト軍が宇宙で足場を固めている今が、
 三輪長官の後押しをして一気に極東地区を全面占拠する絶好の機会かと…」
ジャミトフ「貴様も知っていようが、地球にはGショッカーの軍勢の他に、
 例の時空クレバスから現れる正体不明の怪物群が各地に現れておる。
 ティターンズ部隊はそれの対処で忙殺されているのだ」
シロッコ「ならば、早急に我々ジュピトリアンの部隊を地上へ降下させましょう」
ジャマイカン「…こちらには、ネオ・ジオンの降下部隊に
 木星帝国のモビルスーツらしき機体が混じっていたという情報があるが?」
シロッコ「…我々ジュピトリアンも一枚岩ではないのです。どうか、ご容赦頂きたい」
ジャマイカン(………)
シロッコ「それでは…」

〔通信を切る音〕

ジャマイカン「シロッコめ…涼しい顔をして、よくもぬけぬけと…」
バスク「閣下。自分はあのパプティマス・シロッコという男を信用することが出来ません。
 あの男…閣下への誓約書に血判を押すなど…やり方がいちいち気に入りませんな」
ジャミトフ「確かに、奴は危険だ。だが、これからのティターンズは
 ああいう男も使いこなさねばならん」
バスク「…はっ」

93

***月軌道外宙域・サウザンスジュピター***

ドゥガチ「…貴君の意図は理解した。かねてからの約束通り、
     我が木星帝国は火星の後継者に対し全面的に協力しよう」
草壁「感謝致します、ドゥガチ総統。では我々は早速、政権樹立のための準備に入ります。
   地球圏各地で続発する黄泉がえり現象、そして時空クレバスの発生……
   今までの経験上、現在のような状況は…様々な勢力が一斉に動き出す
   前触れだとも考えられますので」
ドゥガチ「忠告として受け止めておこう」
草壁「…では、私はこれにて」

草壁と入れ替わりにシロッコが入ってくる。

ドゥガチ「地球圏偵察及び調査の任務、ご苦労だったな、シロッコよ」
シロッコ「はっ…。全ては総統クラックス・ドゥガチの御心のままに!」
ドゥガチ「お前のおかげで、現在の地球上での貴重なデータを得ることが出来た。
     フフフ…やはり人類の支配に地球など要らぬ……」
シロッコ(ドゥガチの真の目的は地球侵攻ではないのか……?)
カラス「ところでドゥガチ様、テテニス様の行方が今だ……」
ドゥガチ「テテニスか…ワシは娘など愛してもおらぬし、どこで何をして死のうと構いはせぬ…。
     大方あの海賊の小僧と行動を共にしておるのだろう。放っておけ……」

94

***地球連邦宇宙軍・月基地・作戦会議室***

地球圏各地で続発している“黄泉がえり”現象は、
突然の強硬派指導者の復活により各勢力において主戦派が力を盛り返し、
皮肉にも再び世界に騒乱と戦争の火種をばら撒く結果となった。

火星にある小バームはオルバン派とエリカ派に、
プラントはザラ派とクライン派にそれぞれ分裂して内戦状態へと突入し、
それに加えて今回の木星帝国と火星の後継者が結託しての
ジュピトリアンの再蜂起である。
連邦軍の月基地では、そのことに対する事変報告がなされていた。

ジュン「草壁春樹、元木連(木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び
 他衛星国家間反地球共同連合体)の実質的№1で、階級は中将。
 反草壁派の若手将校達による熱血クーデターの際に失脚し、行方不明。
 その後、第一次火星極冠事変で身柄を拘束され……」
ムネタケ「見事に脱獄しましたな」

ジュンの報告にムネタケはやっかいそうにつぶやく。

秋山「いや、元木連組としてまことにすまんことです。この通り」
コウイチロウ「君のせいじゃあるまい」

謝る秋山少将を押さえるミスマル総司令。
秋山は強硬姿勢をとり続けた草壁に危機感を抱いて先のクーデターを仕掛けた張本人だった。

コウイチロウ「秋山君。草壁という男、どういう人間かね。
 直属の部下だった君の目に彼はどう映った?」
秋山「正義に燃える熱血漢、理想のためなら死ねる男。ただ問題なのは、
 自分の理想が他人にとっても理想であると思い込み、頑なに信じていることです」コウイチロウ「……ところで話は変わるのだが、 木星でジュドー・アーシタくんが行方不明になったというのは本当かね?」ジュン「はい。ブライト大佐たちロンド・ベル隊も懸命に捜索を続けていますが…」ムネタケ「心配ですな。ジュピトリアンがニュータイプを 放っておくとも思えませんからな…」

95

一方その頃、地球では…。

***東京・赤坂 白河尚純の別邸***

白河「よくやってくれました。
 これで極東の連邦軍は事実上我々の支配下に入りました。
 これもあなたのおかげですよ、来島副長官」
来島「………」

政界にその名を知られる大物――白河尚純。
ヒルカワを使って地球連邦軍極東支部のスキャンダルを次々とでっち上げ、
さらには今ここにいるI.N.E.T.副長官の来島を言葉巧みに抱きこみ、
一連の疑惑を偽証させた黒幕である。

来島「……白河さん、約束はわかってくれていると思うが…?」
白河「わかっていますよ。ティターンズはI.N.E.T.に手出しはしません。
 それは私の名において固くお約束します」
来島「………」
白河「そう気に病む事はありませんよ。
 貴方のした事は世界平和のために必要な事だったのです。
 決して悪いようにはしませんとも」

来島は額に汗をたらしながら席をゆっくりと立ち、
応接間の窓から外の風景に目を向ける。深呼吸した来島は、
ふと、邸宅玄関のすぐ前の街路を行進する
100人ほどの不気味な集団に気付いた。
赤く縁取った白い長衣を身に着け、“聖地を死守せよ”と記したプラカードを掲げ
なにやら詠唱しつつ、ゆるやかに歩んでいく。

来島「あれは何だね?」
白河「ああ、地球教の信者たちですよ」
来島「地球教?」
白河「昨今急激な勢いで信者の数が増えている宗教です。
 ご神体というか、崇拝しているのは地球そのものだそうで」
来島「地球をね……」
白河「人類の故郷である地球は、いわば最高の聖地です。
 それが今、幾多の異星人や怪物共によって侵略の危機に晒されている。
 地球を脅かす敵に対し百倍千倍の血の報復を与え、全人類の魂を導く
 大聖堂を建てようというのです。どんな犠牲を払っても、
 やがては地球を全宇宙の中心とするための聖戦に協力するとか……」

来島は呆気に取られた。

来島「馬鹿馬鹿しい。まさか本気ではないだろう。
 どうせよくある金目当てのインチキ宗教に決まっている!」
白河「…いや、案外不可能な事でもないかもしれませんよ」
来島「……白河さん、まさか貴方や三輪長官、
 それにティターンズの背後にいるというのは――!?」

いつの時代にも狂信者の種は尽きない。
遠い遠い昔、“十字軍”というものが地球上に存在した。
聖地を奪回すると称し、神の名のもとに他国を侵略し、
都市を破壊し、財宝を奪い、住民を虐殺して、
その非道を恥じるどころか、異教徒を迫害した功績を誇示すらしたのだ。
無知と狂信と自己陶酔と非寛容によって生み出された、歴史上の汚点。
神と正義を信じて疑わない者こそが、最も残忍に、狂暴になりえるという事実の、
それは苦い証明だったはずである。
その愚行を、今度は地球教徒たちが宇宙的規模で再現しようというのだろうか……。

96

***ジャブロー・ティターンズ基地***

ティターンズ総帥ジャミトフ・ハイマン大将は、基地内の一室に坐っていた。
窓のないその部屋は厚い鉛の壁にかこまれて密閉されており、空間そのものが極性化されている。

ジャミトフ「私です。お応えください」

極秘の定期通信を明確な言語の形で思考する。

???「私とはどの私だ?」

彼方から送られてきた返答は、この上なく尊大だった。

ジャミトフ「ティターンズ総指揮官、ジャミトフ・ハイマンにございます。
 総大主教(グランド・ビショップ)猊下には御機嫌麗しくあられましょうか?」

あのジャミトフとは思えないほどの腰の低さである。
ジャミトフを知る者が一人でもその場にいれば、この男でも冷たい汗を
肌ににじませることがあるのか、と目を見張ったであろう。

総大主教の声「機嫌のよい理由はあるまい……わが地球はいまだ正当な地位を回復してはおらぬ。
 地球が宇宙全ての知的生命に崇拝される日まで、わが心は晴れぬ。
 地球は長い年月に渡り、異星人どもの侵略を受け、不当に貶められてきた。
 だが、屈辱の晴れる日は近い。地球こそが人類のゆりかごであり、
 全宇宙を支配する中心なのだ、と、母星を捨て宇宙移民者となった亡恩の徒どもが
 思い知る季節が両三年中には来よう」
ジャミトフ「そのように早くでございますか?」
総大主教の声「疑うか、ティターンズの首領よ」

思考波が低く陰気な笑いの旋律を奏でた。総大主教(グランド・ビショップ)と称される
宗政一致の地球教統治者の笑いは、ジャミトフをぞっと総毛だたせる。

97

総大主教の声「歴史の流れとは加速するもの。ことに“黄泉がえり”の奇跡も重なり、
 地球圏の各勢力間において権力と武力の収斂化が進んでおる。それに間もなく、
 新たな民衆のうねりが加わろう。全宇宙に潜んでいた地球回帰の精神運動が具体化して現れる。
 その組織化と資金調達はブルーコスモスの者どもに任せておったはずだが、
 手抜かりはあるまいな?」
ジャミトフ「ムルタ・アズラエルからの話では、順調に進んでいるとの事にございます」
総大主教の声「われらの偉大なる先達は、そのためにこそ各地に
 忠実なる者を送り込んで富を蓄積せしめた。地球至上主義者たちが
 その特殊な地位と権力を生かした政治力と経済力によって世俗面を支配し……
 戦火を交えずして全宇宙は地球の支配下に入る。実現に数世紀を要する遠大な計画であった。
 わが代にいたってようやく先達の叡智が実を結ぶか……」

そこで思考の調子が一変し、鋭く呼ぶ。

総大主教の声「ジャミトフ」
ジャミトフ「は……!?」
総大主教の声「裏切るなよ」
ジャミトフ「こ、これは思いもかけぬことをおっしゃいます」
総大主教の声「汝には才幹も覇気もある……故に悪い誘惑に駆られぬよう、忠告したまでのこと。
 かのナポレオン、それにヒトラーがなぜにあのような末路を辿ったのか、充分に承知しておろう」
ジャミトフ「ティターンズがここまで勢力を回復することができましたのは、
 猊下のご支持があってのこと。私は亡恩の徒ではございません」
総大主教の声「ならよい。その殊勝さが、汝自身を守るであろう」

定期通信を終え、部屋を出たジャミトフは、大理石のテラスにたたずんで星空を見上げた。
ティターンズがただジャミトフ個人の所有物であったなら、彼こそが地球圏を実質的に支配する
存在になり得たかもしれない。しかし残念ながら現実は違う。
地球を群星の首都たらしめようとする“地球教”という名の偏執狂どもによって、
今の彼は一介の下僕に過ぎなかったのである。だが、独語するジャミトフの口の端が、
狐のように吊り上がった。

ジャミトフ「さて、誰が勝ち残るかな。Gショッカーか、ジュピトリアンか、地球教か……
 それとも私か……」

98

●パプティマス・シロッコ→自身はジュピトリアンに所属し、
 ジュピトリアンとティターンズの間の密約の仲介をしていた模様。
●草壁春樹→脱獄して火星の後継者を再結成。ジュピトリアンと合流。
●クラックス・ドゥガチ→草壁ら火星の後継者を迎え入れる。
●白河尚純→彼こそが江戸川総司令やサコミズ総監たちを追い落とした筋書きを書いた張本人。
△来島副長官→白河に抱き込まれ、連邦軍極東支部の一連のスキャンダルを公の場で偽証。
 それが江戸川総司令らの更迭やサコミズ逮捕の決め手になっていた。
●ジャミトフ・ハイマン→地球教総大主教より指令を受ける。
 ティターンズを背後から操っているのは、地球教と呼ばれる宗教団体。

【今回の新規登場】
●パプティマス・シロッコ(機動戦士Ζガンダム)
 木星船団の指揮官。木星帰りの男。あらゆる面での天才。
 人心の掌握にも長けており、ジュピトリアンの実質的な中心人物である。
 PMX-003ジ・オ (THE-O)パイロット。


●ジャミトフ・ハイマン大将(機動戦士Ζガンダム)
 ティターンズ総帥。


●バスク・オム大佐(機動戦士Ζガンダム)
 ティターンズの実質的な指揮官。ジャミトフ大将の指揮の下各部隊を指揮する。
 一年戦争時にジオン軍の捕虜となり拷問を受け、その際に視覚障害となり、
 それ以来スペースノイドを憎んでいる。


●ジャマイカン・ダニンガン少佐(機動戦士Ζガンダム)
 バスク・オムの副官でティターンズの実戦指揮をサポートする立場にある。
 直属の上官であるバスクには忠実だが、自分以下の者に対しては慇懃無礼な態度で臨む。


●クラックス・ドゥガチ(機動戦士クロスボーンガンダム)
 木星帝国総統。9体製作された自分のコピーを持つ。
 木星市民を手足のように使い、虫ケラのように始末する卑劣な支配者。


●カラス(機動戦士クロスボーンガンダム)
 ドゥガチ直属の工作員。総統直々の命令でのみ動く、悪魔のような男。


●草壁春樹中将(機動戦艦ナデシコ/劇場版機動戦艦ナデシコ-the prince of darkness-)
 元木連軍優人部隊総司令官。火星の後継者首班。蜥蜴戦争時の木連側の実質的指導者。


○アオイ・ジュン中佐(機動戦艦ナデシコ/劇場版機動戦艦ナデシコ-the prince of darkness-)
 地球連邦宇宙軍第三艦隊所属・戦艦アマリリス艦長。
 元ナデシコクルーの一人で、ミスマル・ユリカとは幼馴染である。


○ムネタケ・ヨシサダ中将(劇場版機動戦艦ナデシコ-the prince of darkness-)
 地球連邦宇宙軍参謀長。故ムネタケ・サダアキの父だが、息子とは性格が正反対の好々爺。


○秋山源八郎少将(機動戦艦ナデシコ/劇場版機動戦艦ナデシコ-the prince of darkness-)
 地球連邦宇宙軍の提督。熱血クーデターの中心人物で、
 地球と木星の和平の道を開いた現役の木連軍人。友好大使として
 地球連邦宇宙軍の月面本部にも籍を置く。


○ミスマル・コウイチロウ大将(機動戦艦ナデシコ/劇場版機動戦艦ナデシコ-the prince of darkness-)
 地球連邦宇宙軍総司令。ナデシコ独立部隊を結成した。
 ミスマル・ユリカの父親で、超がつくほどの底抜けの親バカ。


△来島副長官(電磁戦隊メガレンジャー)
 世界科学連邦I.N.E.T.の副長官。何事にも組織の論理を
 最優先させる傾向がある。


●白河尚純(仮面ライダーアギト)
 日本政界の大物。国会のアギト対策法案提出の中心人物。


●地球教総大主教(銀河英雄伝説)
 地球教の教主。外見は身体中の水分が枯れ果てたように見え、
 皺と筋の塊にしか見えない老人。地球を祭政一致の宇宙の中心にする事を目論む。