『忍び寄る真の敵の影』-1

作者・ティアラロイド

1

***30世紀・地球 クリスタルトーキョー***

21世紀での天変地異から、数世紀の長きにわたるコールドスリープの期間を経て、
かつて聖居があった地に築かれたクリスタルパレス。
30世紀の地球と太陽系を治めるシルバーミレニアム王室の居城である。

「乾杯!!」
「プリンセスうさぎ・スモールレディ・セレニティに乾杯!!」
「おかえりなさい、プリンセス!」

闇の月の女王ネヘレニアとの戦いを乗り越え、
無事に30世紀へと帰還したちびうさを称え祝福するため、
その夜、クリスタルパレスでは宮中舞踏会が盛大に催されていた。

Kエンディミオン「スモールレディ、今夜のパーティーのヒロインはきみだ」
Qセレニティ「おかえりなさい。私たちの素敵なプリンセス」
ちびうさ「ありがとう。パパ! ママ!」

カッ!!
ゴロゴロッ!!

宮殿の窓から覗く外の様子は、険しい雷雲と激しい豪雨の音が轟いている。

ちびうさ「さっきまでは晴れていたのに…」

何か不吉な予感にとらわれるちびうさ。
30世紀に戻ってから、空はなぜかずっと不安定なままである。

衛兵「続きまして、時間保護局・レンジャー隊隊長、リュウヤ殿です」

王室一家に対する賓客たちの挨拶が続く中、
次に順番が回ってきたのは、リュウヤと名乗る時間保護局の幹部であった。

リュウヤ「キング、クィーン、そして可愛らしいプリンセス。
 本日はお招きにあずかり、大変光栄に存じます」
Qセレニティ「大義です」
ちびうさ「………(この人、何か冷たい)」

ちびうさは自分を見つめるリュウヤの目つきに、
何か言い知れぬ不安で不気味なものを感じたが、
口には出さなかった。

プルート「クィーン、恐れながら…」
Qセレニティ「何事です?」

そこへ時の扉の番人セーラープルートが、
ネオクィーンセレニティにそっと耳打ちし、
内緒の話があるらしく、二人だけで別室へと移動した。
それを偶然見かけたちびうさは、気になり後をつけていく。

2

Qセレニティ「――時空がゆがみ始めている――!?」
プルート「――遠い時空の彼方で巨大な渦が力を発しています。
 そして"過去"にも異変が起こっているようです」
Qセレニティ「………」
プルート「このままでは歴史が変わってしまうかもしれません」


ちびうさ「――!!」

話をこっそり盗み聞きしていたちびうさは衝撃を受ける。

ちびうさ「――"過去"っていつの事!? ――まさか
 セーラームーンたちの身に何か!? みんなは無事なんだろうか…。
 そしてみんなは知ってるんだろうか…この事を」

ちびうさは意を決する。

ちびうさ「戻らなきゃ! みんなのところへ!」

しかし、そんなちびうさの前に立ちはだかったのは、
冷徹な現実であった。

Qセレニティ「――スモールレディ、あなたの修行はもう終わったのです。
 時空のカギはプルートに返しました」
ちびうさ「そんな…」
Qセレニティ「あなたはこれからこの30世紀で多くの事を学ばなければなりません」
ちびうさ「でも!」
Qセレニティ「さあ、もうお休みなさい。あすは月島の離宮で
 教育カリキュラムを開始します」
ちびうさ「……はい、ママ」

しかしこのまま引き下がるちびうさではなかった。
次の日、ちびうさはこっそりと時空のカギを盗み出し、
城内の"時の扉"の前へと立っていた。

ちびうさ「ごめんね、プー。でもこうするしかないの…」

ネオクィーンセレニティが30世紀の世界を守らなければならないのと同じように、
今の自分にはセーラームーンを助けて戦うという使命があると自覚するちびうさは、
時空のカギを天高く掲げ、いざ21世紀へと向かわんとする。
だがその時に意外な人物が姿を現した!?

リュウヤ「フフフ…お待ちしていましたよ。プリンセス」
ちびうさ「あなたは…昨日の!?」
リュウヤ「あなたならきっと21世紀に向かおうとされると思っておりました。ですが――」

なんとリュウヤは懐からレーザー銃を取り出し、その銃口をちびうさへと向けたのだった。

ちびうさ「――!?」
リュウヤ「あなたに21世紀に行かれると些か困る御方がいるのです。
 可哀想ですが、ここで死んでいただく!!――」

3

プルート「――破滅喘鳴(デッド・スクリーム)!!

レーザーの凶光が危うくちびうさの胸を貫こうとした時、
間一髪で駆け付けたセーラープルートのガーネット・ロッド(時空の杖)の
オーブ部分に集中した荒ぶる風のエネルギー球がリュウヤの攻撃を防ぎ、
ちびうさの身を守ったのだった。

ちびうさ「プー!?」
プルート「ご無事でしたか!? スモールレディ!!」
リュウヤ「…チッ、邪魔が入ったか!」

リュウヤの執拗な銃の連射からちびうさを守りつつ、
時の扉を開いたセーラープルートはちびうさを21世紀へと送り出す!

プルート「この場はやむを得ません! スモールレディ、向こうに着いたら
 すぐにセーラームーンたちと合流するのです!」
ちびうさ「プー!!」
リュウヤ「おのれ逃がすものか!」

30世紀の未来で感知された時空の異変とは?
ちびうさの命を狙うリュウヤの目論見とは?
そして、21世紀へと向かったちびうさの運命は…!?

物語はいよいよ核心へと迫りつつ、
風雲急を告げようとしているのであった。
 →地球編>1205へと続く。

4

○キング・エンディミオン→30世紀に帰還したちびうさを祝うため、盛大なパーティーを催す。
○ネオ・クィーン・セレニティ→ちびうさに21世紀に再び向かうことを禁ずる。
○ちびうさ→母の制止を振り切り21世紀に向かおうとするが、直前でリュウヤに襲われる。
○セーラープルート→リュウヤに襲われていたちびうさを救う。
●リュウヤ→何者かの命令を受け、ちびうさを狙う。

【今回の新規登場】
○キング・エンディミオン(美少女戦士セーラームーンシリーズ)
 ネオ・クイーン・セレニティ(月野うさぎ)の夫となり、
 クリスタル・トーキョーの王となった未来の地場衛。

○ネオ・クィーン・セレニティ(美少女戦士セーラームーンシリーズ)
 21世紀初頭の22歳でクリスタル・トーキョーの女王に即位し、
 第一王女スモールレディ(ちびうさ)を産んだ、未来の月野うさぎ。
 幻の銀水晶の力で不老不死になり、大変動で壊滅的な被害を受けた30世紀の地球を
 再生させると同時にクリスタル・トーキョーという都市を創り、その都市の女王となった

○ちびうさ=セーラーちびムーン(美少女戦士セーラームーンシリーズ)
 30世紀の未来からやってきた、ネオ・クイーン・セレニティと
 キング・エンディミオン(未来の月野うさぎと地場衛)の娘。
 フルネームは「うさぎ・スモールレディ・セレニティ」であり、
 少しわがままな性格でおしゃまな女の子。殆どの外見や無茶をする性格はうさぎ似で、
 度々うさぎを不機嫌にさせるとこと、ピーマンが苦手だったところは衛似。
 月を守護星に持つ未来の戦士だが、必殺技は威力と射程に欠け、不発に終わることが多い。

○冥王せつな=セーラープルート(美少女戦士セーラームーンシリーズ)
 30世紀でのネオ・クィーン・セレニティに仕える側近である
 外部太陽系のセーラー戦士で、ちびうさ=スモールレディの傅役。
 冥王星を守護星に持つ時空と変革の戦士。時空の杖(ガーネット・ロッド)が武器。
 現代の時代における仮の姿は、KO大学理学部1年・基礎物理学科理論物理学専攻
 (アニメ版では無限学園大学理学部)、その後卒業し東京湾天文台に勤務し、
 原作16巻以降ではちびうさが通う港区立十番小学校の養護教諭となっている。

●リュウヤ(未来戦隊タイムレンジャー)
 時間保護局 レンジャー部隊隊長。タイムロボなどの発進承認を行い、組織内では高い地位にある。
 容姿は浅見竜也にそっくりだが、それは彼が浅見家の血を引いていたことに起因する。
 性格は竜也とは正反対で、クールかつ高圧的。ドン・ドルネロ脱走の件を含めた一連の事件の
 黒幕であり、自分の死ぬ未来を改変しようと企んだが、アヤセたちとの取っ組み合いの末に
 銃が暴発して、「死の運命から逃れられない」と呪いの言葉を吐きながら死亡した。